説明

杭穴充填物からの試料採取方法及び試料採取装置

【課題】所望の深さに至る埋設途中で泥水等の混入を防止して、所望の深さの杭穴充填物のみを採取する。
【解決手段】下端部に試料取入口13、上端部に排出口15を有する試料容器1内に、上下動自在の内栓20を嵌挿する。試料容器1の下端部に、上下動可能な外栓28を嵌装して採取装置40とする(a)。内栓20を試料容器1の下端部に位置させ、試料取入口13を塞いで、採取装置40を杭穴44内で下降する。試料採取深さで、内栓20を上昇させ、試料採取口13から試料容器1内に「目的とする深さの杭穴充填物」のみを充填する(b)。内栓20で排出口15を隔離して、外栓26で試料取入口13を塞いで密封して(c)、途中での杭穴充填物の混入せずに採取装置40を地上に引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントミルク、ソイルセメントなどの流動性を有する充填物で満たされた杭穴内に設置して、所定深さ・位置から充填物の一部を試料として、採取することを目的とする杭穴充填物からの試料採取方法及び試料採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上構造物を支える基礎杭は、例えば、地面に杭穴を掘削して、杭穴内に既製杭を埋設して構成していた。この場合、杭穴底を支持地盤に位置させ、杭穴底部の根固め部に、セメントミルクなどを充填して、根固め部と既製杭と一体で基礎杭に作用する鉛直支持力を負担していた。この場合、最近では、1本の基礎杭が負担すべき支持力が増加し、根固め部の固化強度もより強いものが求められると同時に、根固め部の強度管理が重要となっていた。
【0003】
従来は、根固め部の強度を確認するために、根固め部が固化した後、コアボーリングにより根固め部を採取する方法などが行われていた。しかし、コアを採取すると強度の確認は行えるが、コアを採取することによりコアを採取した基礎杭自体の性能が低下する考えられること、根固め部が固化するまでコアの採取が行えないこと、コアボーリングに多大な費用がかかることなど問題があった。
【0004】
そこで、根固め部を築造した後、セメントミルク等の充填物が固化する前に、試料を採取すれば上記の問題点を解決でき、固化強度もより短時間で正確に確認できた。
【0005】
そこで、出願人は、試料を収容するホッパーに外枠を相対位置を変更できるように取り付けた採取装置を提案している(特許文献1)。この採取装置では、ホッパーの内窓と外窓を一致させて、試料を採取して、内窓と外窓を不一致にしてホッパーを密封していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−73360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の採取装置では、ホッパーを中空状態で、杭穴底(地上から50mを越える場合もある)まで沈めるため、何らかの原因で杭穴底に至る途中で、少量の杭穴充填物がホッパー内に流入するおそれもあった。途中で流入した不純物がある場合には、所定深度で採取した充填物と不純物が混合してしまい、実際に採取されるものは所定の充填物とは異なる性状となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、「目的の深さの杭穴充填物」を収容する試料容器の容積を一旦減少させ(できるだけゼロに近づける)、試料容器内の空気や流動物を収容部外に排出して、その後に、試料容器内に試料(=「目的の深さの杭穴充填物」)を採取するので、前記問題点を解決した。
【0009】
即ちこの採取方法の発明は、以下のような工程で行う、杭穴充填物の採取方法である。
(1) 採取装置は、試料容器内の一端に杭穴充填物を取り入れる試料取入口、他端に排出口を夫々形成する。前記採取装置は、前記試料容器内に、前記試料取入口と前記排出口との間を摺動すると共に、前記試料取入口又は前記排出口を封鎖できる第一栓を、嵌挿する。
(2) 前記試料取入口を塞いで、前記第一栓を試料取入口側に位置させて、前記試料容器の試料取入口側の容積を略ゼロにして、前記採取装置を前記杭穴内に沈設する。
(3) 続いて、所定の採取予定深さで、前記第一栓を前記排出口側に移動して、前記試料容器の排出口側の容積を略ゼロとしつつ、前記試料容器の前記試料取入口を開放して、前記試料取入口から「目的の深さの杭穴充填物」を前記試料容器内に取り入れる。
(4) 続いて、前記第一栓で、前記試料取入口又は前記排出口を略密封して、前記採取装置を地上に引き上げる。
【0010】
また、他の採取方法の発明は、以下のような工程で行う、杭穴充填物の採取方法である。
(1) 採取装置は、試料容器内の一端に杭穴充填物を取り入れる試料取入口、他端に排出口を夫々形成する。前記採取装置は、前記試料容器内に、前記試料取入口と前記排出口との間を摺動すると共に、前記試料取入口又は前記排出口を封鎖できる第一栓を、嵌挿する。
(2) 前記試料取入口を塞いで、前記第一栓を試料取入口側に位置させて、前記試料容器の試料取入口側の容積を略ゼロにして、前記排出口から試料容器内に「他の深さの杭穴充填物」を取入ながら、前記採取装置を前記杭穴内に沈設する。
(3) 続いて、所定の採取予定深さで、前記第一栓を前記排出口側に移動して、試料容器内の「他の深さの杭穴充填物」を前記排出口から排出すると共に、前記試料容器の前記試料取入口を開放して、前記試料取入口から「目的の深さの杭穴充填物」を前記試料容器内に取り入れる。
(4) 続いて、前記第一栓及び第二栓で、前記試料取入口及び前記排出口を略密封して、前記採取装置を地上に引き上げる。
【0011】
また、他の採取方法の発明は、以下のような工程で行う、杭穴充填物の採取方法である。
(1) 採取装置は、試料容器内の一端に杭穴充填物を取り入れる試料取入口、他端に排出口を夫々形成する。前記採取装置は、第一栓及び第二栓を設け、前記試料取入口及び排出口を、封鎖可能とした。前記試料容器は第一栓及び第二栓を操作して、容積を略ゼロ又は最大に可変できるように形成する。
(2) 前記試料取入口を前記第1栓又は第二栓で塞いで、前記試料容器の容積を略ゼロにして、前記採取装置を、前記杭穴内の試料採取深さまで沈設する。
(3) 続いて、所定の採取予定深さで、前記試料容器の試料取入口を開放して、試料容器内に「目的の深さの杭穴充填物」を取り入れると共に、前記試料容器の容積を最大にして、前記試料容器内に「目的の深さの杭穴充填物」を満たす。
(4) 続いて、前記第一栓及び第二栓で、前記試料取入口及び前記排出口を略密封して、前記採取装置を地上に引き上げる。
【0012】
また、この採取装置の発明は、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置である。
(1) 試料容器内の両端部に、それぞれ開口を形成し、一方の開口を試料取込口、他方を排出口とする。
(2) 前記試料容器内に中栓を嵌挿して、該中栓を、前記試料取込口と前記排出口の間を移動可能とし、前記中栓又は前記試料容器の移動を地上から操作する第1操作手段を設ける。
(3) 前記中栓は、前記試料取込口又は前記排出口のいずれか一方を封鎖可能とする。
また、他の採取装置の発明は、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置である。
(1) 試料容器の上部及び下部に、それぞれ開口を形成し、一方の開口を試料取込口、他方を排出口とする。
(2) 前記試料容器内に第一栓を嵌挿して、該第一栓を前記試料取入口と前記排出口との間に移動可能とし、前記第一栓又は前記試料容器の移動を地上から操作する第1操作手段を設ける。
(3) 前記試料容器内又は前記試料容器外で、移動可能な第二栓を設けて、該第二栓又は前記試料容器の移動を地上から操作できる第2操作手段を連結する。
(4) 前記第一栓又は第二栓は、前記試料取込口又は前記排出口の一方を夫々封鎖可能とする。
【0013】
また、他の採取装置の発明は、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置である。
(1) 試料容器の上部及び下部に、それぞれ開口を形成し、一方の開口を試料取込口、他方を排出口とする。
(2) 前記試料容器内に中栓を嵌挿して、該中栓を前記試料取入口と前記排出口との間に移動可能とし、前記中栓又は前記試料容器の移動を地上から操作する第1操作手段を設ける。
(3) 前記試料容器の外周に、外蓋を開閉自在に設け、前記外蓋の開閉を地上から操作できる第2操作手段を連結する。
(4) 前記中栓又は前記外蓋は、前記試料取込口又は前記排出口の一方を夫々封鎖可能とする。
【0014】
また、前記各採取装置の発明において、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置とすることもできる。
(1) 試料容器の上端に、埋設用ロッドに連結する連結部を形成し、前記埋設用ロッド及び連結部は上下に連通する中空部を有する構造とする。
(2) 第1操作手段は、下端部を第一栓に連結して、中間部を前記連結部及び掘削ロッドの中空部を通過して、上端部を地上で操作できるように位置させる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、試料容器内に、試料取入口と排出口との間で摺動する中栓を設け、あるいは試料容器の試料取入口側の容積をゼロから最大まで変化できる中栓を設けて、採取装置を構成した。従って、所望の深さに至る埋設途中で採取装置内に入った泥水を排除して、所望の深さの杭穴充填物を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はこの発明の実施例1の採取装置の構成部品を表す図で、(a)は外栓、(b)は試料容器、(c)は内栓、をそれぞれ表す。
【図2】図2は図1を構成部品とする採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図3】図3はこの発明の実施例2の採取装置の構成部品を表す図で、(a)は試料容器、(b)は内栓、をそれぞれ表す。
【図4】図4は、実施例2の図3を構成部品とする採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図5】図5はこの発明の実施例2の他の採取装置の構成部品で、(a)は試料容器、(b)は内栓、をそれぞれ表す。
【図6】図6は、実施例2の他の採取装置であり、図5を構成部品とする採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図7】図7は実施例2の他の採取装置であり、(a)は試料容器、(b)は内栓、(c)は採取装置で中栓が上昇位置、(d)は採取装置で中栓が下降位置を夫々表す。
【図8】図8はこの発明の実施例3の採取装置の構成部品で、(a)は試料容器、(b)は内栓、をそれぞれ表す。
【図9】図9は、実施例3の採取装置であり、図8を構成部品とする採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図10】図10はこの発明の実施例4の採取装置の構成部品で、(a)は中栓及び外栓、(b)は試料容器、をそれぞれ表す。
【図11】図11は、実施例4の採取装置であり、図10を構成部品とする採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)(c)は採取状態、(d)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図12】図12は、この発明の概略を説明する縦断面図で、(a)は下降途中の状態、(b)(c)は採取状態、(d)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図13】図13は、同じくこの発明の概略を説明する縦断面図で、(a)は下降途中の状態、(b)(c)は採取状態、(d)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図14】図14はこの発明の実施例2の他の採取装置の構成部品で、(a)は試料容器、(b)は内栓を表す。
【図15】図15は実施例2の他の採取装置であり、図14の構成部品を使った採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図16】図16(a)(b)は実施例2の他の採取装置の構成部品である内栓である。
【図17】図17は、実施例2の他の採取装置であり、図16(a)の内栓を使った採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図18】図18は実施例2の他の採取装置であり、図16(b)の内栓を使った採取装置の使用状態で、(a)は下降途中の状態、(b)は採取状態、(c)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図19】図19は実施例2の他の採取装置であり、(a)は中栓が上昇位置、(d)は中栓が下降位置を夫々表す。
【図20】図20は実施例3の他の採取装置であり、(a)は構成部品の中栓、(b)は下降途中の状態、(c)は採取状態、(d)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図21】図21は実施例5の採取装置であり、(a)は構成部品の中栓、(b)は構成部品の試料容器、(c)は下降途中の状態、(d)は採取途中、(e)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【図22】図21は実施例5の他の採取装置であり、(a)は構成部品の中栓、(b)は構成部品の試料容器、(c)は下降途中の状態、(d)は採取途中、(e)は採取終了状態をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第一の実施形態
【0018】
(1) 試料容器1は、上面に試料取入口13を有し、下面に排出口15を有する密封できる筒状に形成する。試料容器1は、筒状の側面板10の上下を天板3、底板7で塞いで形成する。側面板10内には、側面板10内を上下に摺動して、試料容器1内を、試料取入口13側の第一スペース1Aと排出口15側の第二スペース1Bとに区分する内栓20を、嵌挿する。第一スペース1Aは略ゼロ〜最大容量(≒試料容器1の容量)、対応して第二スペース1Bは最大容量(≒試料容器1の容量)〜略ゼロ、に可変できる。
内栓20は、地上からの操作で、試料取入口13に近づく側(第一スペース1Aを略ゼロにする)から、排出口に近づく側(第二スペース1Bの容量を略ゼロにする)まで移動可能とする。また、試料容器1も地上からの操作で、杭穴44を昇降できるよう各種ロッド(掘削ロッドなど)に連結して構成する。
以上のようにして、採取装置40を構成する(図12(a))。
【0019】
(2) 採取装置40は、内栓20を上端に位置させ、第一スペース1Aの容量を略ゼロの状態に保ったまま、泥水やセメントミルク(杭穴充填物)で満たされた杭穴44内を下降させる(図12(a))。この際、排出口15は第二スペース1Bに開放しているので、排出口15から第二スペース内に入り込む場合もある。
予め定めた試料採取深さ(例えば、杭穴底46の直上)に至ったならば、採取装置40の下降を停止して、その高さ位置を保つ。
続いて、内栓20を下降させると、下降にともなって、第一スペース1Aの容積が略ゼロから拡大して、伴って、第二スペース1Bの容量は減少する。この容量変化に伴い(第一スペース1Aの容量が拡大するにつれて、試料採取口13からその深さの杭穴充填物(セメントミルク)のみが充填される(図12(b))。
第二スペース1Bの容量が略ゼロになり、第一スペース1Aの容量が最大の状態で、第一スペース1A内に、その深さの杭穴充填物のみが満たされる(図12(c))。
続いて、この内栓20と試料容器1の関係を維持して、採取装置40を地上に引き上げる。この際、排出口15は内栓20で封鎖されるので、試料取入口13から杭穴充填物がもれるおそれはないが、試料取入口13に栓をすることもできる。試料取入口13に栓をする機構は、地上からの操作で行い、別途操作ロッドを設けることもでき、あるいは内栓20を操作するロッド類と共通させて連動させることもできる。
採取装置を地上にあげたならば、第一スペース1A内の杭穴充填物を取り出し、固化させる等して分析する。
【0020】
(3) この採取装置40で、内栓20をロッドで昇降させる場合には、上面の試料取入口13にロッドを通し、あるいは天板3に別途ロッドを通す穴を設ける、この穴は必要ならばロッドに連動する栓で塞ぐ。
前記において、所定深さで内栓20を下降させたが、内栓20をその位置で保持して、試料容器1を上昇させることもできる。要は、内栓20と試料容器1の相対位置を変更できればよい。
【0021】
2.第二の実施形態
【0022】
(1) 第二の実施態様の採取装置40は、前記第一の実施態様で上面に設けた試料取入口13を下面として、下面に設けた排出口15を上面に形成したものである。同様に側面板10内に、側面板10内を上下に摺動する内栓20を、嵌挿する。内栓20により試料取入口13側の第一スペース1A(下側)と排出口15側の第二スペース1B(上側)とに区分する(図13(a))。同様に第一スペース1Aは略ゼロ〜最大容量(≒試料容器1の容量)、対応して第二スペース1Bは最大容量(≒試料容器1の容量)〜略ゼロ、に可変できる。
【0023】
(2) 採取装置40は、第一の実施態様とは逆に、内栓20を下端に位置させ、第一スペース1Aの容量を略ゼロの状態に保ったまま、杭穴44内を下降させる(図13(a))。この際、排出口15は第二スペース1Bに開放しているので、排出口15から第二スペース内に入り込む場合もある。
予め定めた試料採取深さ(例えば、杭穴底46の直上)に至ったならば、採取装置40の下降を停止して、その高さ位置を保つ。
続いて、内栓20を上昇させると、上昇にともなって、第一スペース1Aの容積が略ゼロから拡大して、伴って、第二スペース1Bの容量は減少する。この容量変化に伴い(第一スペース1Aの容量が拡大するにつれて、試料採取口13からその深さの杭穴充填物(セメントミルク)のみが充填される(図13(b))。同様に第二スペース1Bの容量が略ゼロになり、第一スペース1Aの容量が最大の状態で、第一スペース1A内に、その深さの杭穴充填物のみが満たされる(図13(c))。
続いて、この内栓20と試料容器1の関係を維持して、採取装置40を地上に引き上げる。この際、排出口15は内栓20で封鎖されるので、試料取入口13から杭穴充填物がもれるおそれはないが、同様に、試料取入口13に栓をすることもできる。
前記において、所定深さで内栓20を上昇させたが、内栓20をその位置で保持して、試料容器1を下降させることもできる。要は、内栓20と試料容器1の相対位置を変更できればよい。
【0024】
3.杭穴充填物の取り出し
【0025】
前記各実施形態で採取した試料容器1内の杭穴充填物の取り出し処理は任意であるが、第一の方法は、採取装置40の試料容器1の任意の開口部を開き、下方に位置させたバケツ(分析容器)などに移して、その後供試体用の型枠(分析容器)に移して固化させ、圧縮強度など必要な試験をする。また、第二の方法は、地上に取り出した採取装置40を分解して、または試料容器1を取り外して、または試料容器1の開口部から、試料容器1内の杭穴充填物は杓やポンプで同様にバケツに移し、その後同様に処理する。また、第三の方法は、地上に取り出した採取装置40を分解して、または試料容器1を取り外して、または試料容器1の開口部から、試料容器1を斜めに傾けて杭穴充填物をバケツに移し、その後同様に処理する。
【実施例1】
【0026】
図1、図2、図14及び図15に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0027】
1.採取装置40の構成
【0028】
(1) 試料容器1は、略筒状の側面板10の上下開口を天板3と、底板7とで塞いで形成する(図1(b))。天板3の上面(外面)4aに地上からの掘削ロッド42と連結する連結部31を上方に向けて設ける。側面板10の上下端縁は内側に向けて環状リブ12、12aを形成して、環状リブ12を天板3の内面4、環状リブ12aを底板7の内面8に夫々固定してある。ここでは、円筒としたが、四角、6角など角筒でも可能である。
また、底板7の下面(外面)8a中央部に、杭穴底に差込んで、試料容器1を安定させるための先端尖り部33を、下方に向けて設ける。
天板3であって、連結部31の外周側で環状リブ12の内周側に、透孔5、5を直径対称な位置に形成する。
側面板10の下端部に高さHの開口を同一高さで複数設けて、試料取入口13、13とする。また、側面板10の上端部に高さHの開口を同一高さに複数設けて、排出口15、15とする。また、側面板10で、排出口15の上方に、補助排出口15a、15aを適宜箇所に設ける。試料取込口13、13と排出口15、15の間の側面板10の部分を閉鎖部とする。
【0029】
(2) 試料容器1の側面板10内径に対応した外径を有する高さ(厚さ)Hの円盤から中栓20を構成する。中栓20の外径は、中栓20の外周面と側面板10の内周面とが水密となり、かつ中栓20が側面板10内を摺動できるように形成する。
また、中栓20の外周部に、地上から中栓20の上下動を操作する内ロッド24(第1操作ロッド)の下端部を連結する。内ロッド24、24は、直径対称な位置に2つ設け、試料容器1の天板3の透孔5、5に挿通して、中栓20の上下動を操作できる位置に取り付ける。この場合、内ロッド24は、透孔5、5を挿通した総ての内ロッド24が平行となるように形成することが望ましい。従って、内ロッド24、24は内栓20の外周に沿って配置されている。
また、内ロッド24は、最低2つ設けるが、直径対称な位置に3つ以上設けることもできる(図示していない)。この場合には、試料容器1の天板3に対応するように必要数の透孔5を設ける。以下の各実施例においても同様に可能である。
【0030】
(3) 試料容器1の外径に対応した内径を有する短円筒状の外栓25を形成し、外筒25の上端部外周に、外ロッド29、29(第2操作ロッド)を取り付ける。外栓25の下縁部に中心側に向けて略水平の環状のストッパー28を形成する。ストッパー28の形成は、別体又は外栓25の下端部を屈曲しても、いずれでも可能である。ストッパー28の中心側は、試料容器1の先端尖り部33が通過できる開口28aが形成される。
外栓25の内径は、外栓25を、側面板10の下端部に嵌装して摺動できるように形成する。また、外栓25の長さ(高さ)は、外栓25を、試料容器1の下方から側面板10の下端部に嵌装して、ストッパー28が底板7の外面8aに当接した状態で、外栓25が試料取入口13を塞ぐことができるように形成する。さらに、外栓25の長さ(高さ)は、外栓25の上縁が試料取入口13の下方のある状態で、外栓25の下縁が、先端尖り部33の下端部より上方位置するように形成する。
【0031】
(4) 以上のようにして、試料容器1、中栓20、外栓25を形成する。
【0032】
(5) 天板3の透孔5、5を貫通した内ロッド24、24の下端部を内栓20に固定し、試料容器1内に中栓20を摺動自在に嵌挿する。内栓20は、下方位置(第1位置)で内栓20の外周面が試料取込口13、13を塞ぎ(即ち、H<H)、この状態で、内栓20は最下端位置にある。また、内栓20は上方位置(第2位置)で、内栓20の下縁が排出口15、15の下縁より下方にあり、この位置で、内栓25は最上端位置にある。従って、内栓25の上方位置で、排出口15、15と試料取込口13、13とは、間に中栓20があり、試料容器1の内側を介して連通しない。以上の上方位置、下方位置の操作は、地上から内ロッド24、24を昇降させることにより行う。
また、内栓20の安定した摺動のためには、排出口15の高さH<内栓20の高さH、とすることが望ましい。
【0033】
(6) 試料容器1の下端部外周に、外栓25を摺動自在に嵌装し、嵌装した状態で、あるいは嵌装する前に、外栓25に外ロッド29、29の先端を固定する。この状態で試料容器1の先端尖り部33の先端部は外筒25の開口28aから下方に突出している。
【0034】
(7) 以上のようにして、この発明の試料採取装置40を構成する(図2(a))。
【0035】
2.採取方法
【0036】
(1) 次ぎに、前記実施例に基づく、試料採取装置40の使用について説明する。
【0037】
(2) 掘削ロッド42の掘削ヘッドで所定の杭穴44を掘削し、杭穴44内にセメントミルクを充填して、掘削ロッド42を引き上げる。掘削ロッド42の下端部に、試料採取装置40の連結部31を挿入して、掘削ロッド42に試料採取装置40を取り付ける。この場合、掘削に使用した掘削ロッド42から掘削ヘッドを取り外して使用し、あるいは別途の掘削ロッド42を使用することもできる。
試料採取装置40は、試料容器1に対して、内ロッド24が下方位置で、内栓20が試料取込口13を塞ぎ、外ロッド29は任意位置である(図2(a))。図2(a)では外ロッド29は下方位置にある。この試料容器1、内ロッド24の相対位置を保ったまま、試料採取装置40を、杭穴44内で下降させる。この試料採取装置40の内ロッド24及び外ロッド29は、掘削ロッド42に沿って配置されて上方に伸び地上から内ロッド24及び外ロッド29の昇降を操作できるようになっている。地上から操作できれば、内ロッド24及び外ロッド29の上端は必ずしも地上に至っている必要は無い。
杭穴44が深い場合には、掘削ロッド42、内ロッド24、外ロッド29を繋ぎながら、試料採取装置40を所定の深さまで、下降する(図2(a))。この状態で、試料採取装置40の試料容器1内には、埋設途中の深さで、排出口15、15から泥水(多少のセメントミルクも含む)が流入する場合もある。
【0038】
(3) 所定の試料採取深さに至ったならば(通常は根固部内)、掘削ロッド42の下降を停止して、その位置で保持する。この場合、杭穴底付近の試料を採取する場合には、杭穴底46に先端尖り部33を押しつければ、水平方向で試料採取装置40が、より安定する(図2(b)参照)。前記のように、この状態で、試料容器1内で、内栓20の上方には途中の深さの泥水(多少のセメントミルクも含む)が充満させている。
また、この状態で、外ロッド39(外栓25)が下方位置にあるので、外栓25は試料取込口13を塞いでいない。この状態で、地上からの操作で、内ロッド24を上昇させて、内栓20を上昇させる。この際、内栓20の上昇により、内栓20上方の泥土は排出口15から試料容器1外に(杭穴内に)押し出される。
これと同時に、内栓20の上昇により、試料採取口13からその深さのセメントミルクが試料容器1内に引き込まれる(図2(b))。ここで、上記のように、排出口15からは試料容器1の内容物を排出しつつ試料採取口13から取り入れるので、内栓20、内ロッド24の操作に支障が無い。
【0039】
(4) 内栓20が上方位置に至ったならば、内ロッド24をその位置で保持して、外ロッド29を上昇させて、試料取込口13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封する(図2(c))。この状態で試料容器1(即ち、掘削ロッド42)と内ロッド24と外ロッド29との相対位置を保持して、掘削ロッド42を地上に引き上げる。伴って、採取装置40も地上に引き上げられる。
【0040】
(5) 地上に引き上げた採取装置40の試料容器1からソイルセメントを取り出し、分析容器(供試体作成用型枠、分析用の一時保管容器など)内に、任意の方法で移す。例えば、採取装置40を掘削ロッド42に取付たまま、分析容器(図示していない)の上方に移動して、外ロッド29を下方に下げて、更には内ロッド24を下方に下げて、試料容器1内のソイルセメントを試料取込口13から分析容器内に放出する。あるいは、試料容器1内からひしゃくやポンプを使用して分析容器に移し、または、掘削ロッド42から採取装置40を取り外して、同様の作業をすることもできる。
【0041】
(6) このように、試料容器1内に入っている内容物を出しながら、所定の深さでセメントミルクを採取するので、採取装置40(試料容器1)を埋設途中で他の深さの泥水やソイルセメントが試料容器1内に留まることがない。従って、より正確にその深さのセメントミルクを採取できるので、設計強度を保証できる。
【0042】
3.他の実施例
【0043】
(1)前記実施例において、内ロッド24を内栓20の外周側に2つ以上を取り付けたが、内栓20の中心付近に1本の内ロッド24を設けることもできる(図14(b))。この場合には、試料容器1の天板3の透孔5も内ロッド24に対応させて、天板3の中心付近に1つ形成する(図14(a))。
また、この場合には、内ロッド24の中間部は、天板3の透孔5を通過して、連結部31の中空部、連結した掘削ロッド42の中空部を通って(図15(a))、上方に伸びて、地上から昇降を操作できるようになっている。
【0044】
また、この場合には、試料採取装置40による試料採取は前記実施例と同様である。即ち、試料容器1に対して、内ロッド24が下方位置で、内栓20が試料取込口13を塞いだ状態で所定の深さまで下降する(図15(a))。続いて、杭穴底46に先端尖り部33を押しつけ、内ロッド24を上昇させて、内栓20を上昇させ、上方の泥土を排出口15から押し出し、試料採取口13からその深さのセメントミルクが試料容器1内に引きこむ(図15(b))。内栓20が上方位置に至ったならば、内ロッド24を保持して、外ロッド29を上昇させて、試料取込口13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封する(図15(c))。この状態で内ロッド24と外ロッド29との相対位置を保持して、掘削ロッド42と共に採取装置40を地上に引き上げる。
この場合、内ロッド24は採取装置40、掘削ロッド42内に位置するので、杭穴44内の固形物の影響を受けずに、確実に内ロッド24の昇降操作ができる。
また、この場合、一般的な掘削装置に用いる掘削ロッド42であれば通常掘削ロッド42内に中空部を有するので、掘削ロッド42を地上で支持して昇降させる掘削装置の種類によらず、任意の掘削装置を採用することもできる。
【実施例2】
【0045】
図3〜図7に基づきこの発明の他の実施例を説明する。
【0046】
前記実施例1は、内ロッド24及び外ロッドを使用して、試料取入口13及び排出口15の密封、開放を操作したが、この実施例は内ロッド24のみで操作する実施例である。
【0047】
1.採取装置40の構成
【0048】
(1) 実施例1と同様に、試料容器1は、略筒状の側面板10の上下開口を天板3と、底板7とで塞いで形成する(図3(a))。天板3の上面(外面)4aに地上からの掘削ロッド42と連結する連結部31を上方に向けて設け、底板7の下面(外面)8a中央部に、杭穴底に差込んで、試料容器1を安定させるための先端尖り部33を、下方に向けて設ける。
天板3であって、連結部31の外周側に試料取入口13、13を直径対称な位置に形成する。試料取入口13、13は、前記実施例の透孔5、5と兼用する。
また、側面板10の下端部に高さHの開口を同一高さに複数設けて、排出口15、15とする。排出口15の高さをHとする。
【0049】
(2) 試料容器1の側面板10内径に対応した外径を有する高さ(厚さ)Hの円盤から中栓20を構成する。中栓20の外径は、中栓20の外周面と側面板10の内周面とが水密となり、かつ中栓20が側面板10内を摺動できるように形成する(図3(b))。
また、中栓20の外周部近傍に、地上から中栓20の上下動を操作する内ロッド24(第1操作ロッド)の下端部を連結する。内ロッド24、24は、試料容器1の天板3の試料採取口13に挿通して、中栓20の上下動を操作できる位置に取り付ける。内ロッド24、24の中間部で中栓20の上方に、第二中栓35を同一高さに夫々固定する。ここで、
中栓の高さH>試料取入口13の高さH
としてある。
【0050】
(3) 以上のようにして、試料容器1、中栓20を形成する。
【0051】
(4) 試料容器1内に中栓20を摺動自在に嵌挿し、天板3の試料取入口13、13を貫通した内ロッド24、24の下端部を内栓20に固定する。
【0052】
内栓20は、上昇位置(第1位置)で内栓20が天板3に当たり、試料取込口13、13を塞ぎ、この状態で、内栓20は最上端位置にある(図4(a))。
また、内栓20は下方位置(第2位置)で、内栓20の外周面22が排出口15、15を塞ぐ。この状態で、内栓25は最下端位置にあり、第二中栓35が試料取入口13を塞ぐ(図4(c)。ここで、排出口15、15と試料取込口13、13とは、間に中栓20があり、試料容器1の内側を介して連通しない。以上の上方位置、下方位置の操作は、地上から内ロッド24、24を昇降させることにより行う。
【0053】
(5) 以上のようにして、この発明の試料採取装置40を構成する(図4(a))。
【0054】
2.採取方法
【0055】
(1) 次ぎに、前記実施例に基づく、試料採取装置40の使用について説明する。
【0056】
(2) 実施例1と同様に、杭穴44を形成し、セメントミルクを充填する。
試料採取装置40を掘削ロッド42の下端に取り付け、試料容器1に対して、内ロッド24が上方位置で、内栓20が試料取込口13を塞いた状態となっている(図4(a))。内ロッド24は掘削ロッド42に沿って配置され、上方に伸びて、地上から昇降を操作できるようになっている。
この試料容器1、内ロッド24の相対位置を保ったまま、試料採取装置40を、杭穴44内で下降させる。同様に、杭穴44が深い場合には、掘削ロッド42、内ロッド24を繋ぎながら、試料採取装置40を所定の深さまで、下降する(図4(a))。この状態で、試料採取装置40の試料容器1内には、埋設途中の深さで、排出口15、15から泥水(多少のセメントミルクも含む)が流入する場合もある。
【0057】
(3) 所定の試料採取深さに至ったならば(通常は根固部内)、掘削ロッド42の下降を停止して、その位置で保持する。この場合、杭穴底付近の試料を採取する場合には、杭穴底46に先端尖り部33を押しつければ、水平方向で試料採取装置40が、より安定する(図4(b)参照)。前記のように、この状態で、試料容器1内で、内栓20の下方には途中の深さの泥水(多少のセメントミルクも含む)が充満させている。
【0058】
(4) この状態で、地上からの操作で、内ロッド24を下降させて、内栓20を下降させる。この際、内栓20の下降により、試料容器1で内栓20下の泥土は排出口15から試料容器1外に(杭穴内に)押し出される。この場合、内ロッド24を下降させたが、内ロッド24を保持して、掘削ロッド42を上昇させて、試料容器1に対して内栓20を相対的に下降させることもできる(図示していない)。
これと同時に、内栓20の下降により、試料採取口13からその深さのセメントミルクが試料容器1内に引き込まれる(図4(b))。ここで、上記のように、排出口15からは試料容器1の内容物を排出しつつ試料採取口13からセメントミルクを取り入れるので、内栓20、内ロッド24の操作に支障が無い。
【0059】
(5) 内栓20が下方位置に至ったならば、内ロッド24をその位置で保持する。この状態で、内栓20は排出口15を塞いで、第二内栓35、35が試料取入口13、13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封する(図4(c))。この状態で試料容器1(即ち、掘削ロッド42)と内ロッド24との相対位置を保持して、掘削ロッド42を地上に引き上げる。伴って、採取装置40も地上に引き上げられる。
【0060】
(6) 前記実施例と同様に、任意な方法で、地上に引き上げた採取装置40の試料容器1からソイルセメントを取り出す。例えば、掘削ロッド42に取付けたまま、分析容器(図示していない)の上方に移動して、内ロッド24を上昇させれば、試料容器1内のソイルセメントを排出口15、15等の開口から分析容器内に放出する。あるいは、掘削ロッド42から採取装置40を取り外して、あるいは杓などで汲みだして同様の作業をすることもできる。
【0061】
(7) このように、試料容器1内に入っている内容物を出しながら、所定の深さでセメントミルクを採取するので、採取装置40(試料容器1)を埋設途中で他の深さの泥水やソイルセメントが試料容器1内に留まることがない。従って、より正確にその深さのセメントミルクを採取できるので、設計強度を保証できる。
【0062】
3.他の実施例
【0063】
(1) 前記実施例において、試料容器1の上端部に試料取入口13を設け、下端部に排出口15を設けたが、逆に、試料容器1の下端部に試料取入口13を設け、上端部に排出口15を設けることもできる(図5、6)。
この場合、天板3であって、連結部31の外周側に排出口15、15を直径対称な位置に形成し、透孔5、5と兼用する。また、側面板10の下端部に高さHの開口を同一高さに設けて、試料取入口13、13とし、また、底板7で、前記排出口15の鉛直下方位置(即ち、底板7で、周縁部または先端尖り部33の外周側)にも試料取入口13、13を形成する(図5(a))。
内ロッド24、24の中間部で、中栓20の下方に第二中栓35を同一高さに夫々固定する(図5(b))。ここで、
中栓20の高さH>試料取入口13の高さH
第二中栓20の高さH>試料取入口13の高さH
としてある。
試料容器1内に中栓20を摺動自在に嵌挿し、底板7の試料取入口13、13を貫通した内ロッド24、24を内栓20に固定する。
内栓20は、下方位置(第1位置)で内栓20が底板7に当たり、試料取込口13、13を塞ぎ、この状態で、内栓20は最下端位置にある(図6(a))。
また、内栓20は上方位置(第2位置)で、内栓20が天板3に当たり、排出口15、15を塞ぐ(図6(b))。この状態で、内栓25は最上端位置にあり、第二中栓35が試料取入口13、13を塞ぐ。
【0064】
(2) 従って、図5、図6の実施例では、試料採取装置40の使用時に、内ロッド24の上下動の操作は、前記実施例とは逆になる(図6(a)(b)(c))。
即ち、内ロッド24を下降させた状態で、内栓20で試料取入口13を塞ぎ、試料採取装置40を杭穴44内で下降させ(図6(a))、試料採取深さに至ったならば、試料採取装置40をその位置で保持し、内ロッド24を上昇させて内栓20を上昇させ、内栓20上の泥土を、上の排出口15から出し、かつ下の試料採取口13からその深さのセメントミルクを試料容器1内に取り入れる(図6(b))。内栓20が上方位置(内栓20の上面が天板3の下面に対向した状態)に至ったならば、内栓20が排出口15を塞ぎ、第二内栓35、35が試料取入口13、13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封するので(図6(c))、そのまま掘削ロッド42及び採取装置40も地上に引き上げる。
【0065】
(3) また、前記実施例において、排出口15を側面板10の下端部に形成したが(図3(a))、排出口15を底板7の中央に形成して採取装置40を構成することもできる(図7(a)(c))。この場合、先端尖り部33を省略し、更に、第二中栓35を省略することもできる(図7(a)(b))。
前記実施例と同様に、中栓20を上方位置とした状態で、杭穴44内に埋設し(図7(c))、所定の深さで、内栓20を下降させて、排出口15から途中流入物を放出しつつ試料取入口13、13からセメントミルクを試料容器1内に充填させる(図7(d))。
【0066】
(4) また、前記実施例において、図3、図4に記載の試料採取装置40で、内ロッド24に第二中栓35を固定したが、前記実施例の内ロッド24の位置に、補助内ロッド37、37を設けて夫々第二中栓35を固定し、地上から中栓20を操作する内ロッド24を別途、内栓20の中心付近に設けることもできる(図16(a))。この場合には、補助内ロッド37は、短くて良く、第二中栓35の位置まで形成されていれば良い。また、前記実施例では天板3で試料取入口13、13と、透孔5、5とを兼用したが、補助内ロッド37及び第二中栓35に対応した試料取入口13、13とは別に、天板3の中心付近に内ロッド24が通過できる透孔5を形成する(図17(a))。
また、この場合、試料採取装置40による試料採取は前記実施例(図4)と同様である。即ち、内ロッド24を上昇させた状態(内栓20の上面が天板3の下面に対向した状態)で、試料採取装置40を、杭穴44内で下降させ(図17(a))、試料採取深さに至ったならば、試料採取装置40をその位置で保持し、内ロッド24を下降させて内栓20を下降させ、内栓20下の泥土を排出口15から出し、かつ試料採取口13からその深さのセメントミルクを試料容器1内に取り入れる(図17(b))。内栓20が下方位置に至ったならば、内栓20が排出口15を塞ぎ、第二内栓35、35が試料取入口13、13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封するので(図17(c))、そのまま掘削ロッド42及び採取装置40も地上に引き上げる。
この場合、内ロッド24は採取装置40及び掘削ロッド42内に位置するので、杭穴44内の固形物の影響を受けずに、確実に内ロッド24の昇降操作ができる。
【0067】
(5) また、前記実施例において、図5、図6に記載した記載の試料採取装置40で、内ロッド24に第二中栓35を固定したが、上記(4)と同様に、前記実施例の内ロッド24の位置に、補助内ロッド37、37を設けて夫々第二中栓35を固定し、地上から中栓20を操作する内ロッド24を別途、内栓20の中心付近に設けることもできる(図16(b))。この場合には、図16(a)と同様に、補助内ロッド37は、短くて良く、第二中栓35の位置まで形成されていれば良い。また、前記実施例(図5、図6)では天板3で排出口15、15と、透孔5、5とを兼用したが、補助内ロッド37及び第二中栓35に対応した排出口15、15とは別に、天板3の中心付近に内ロッド24が通過できる透孔5を形成する(図18(a))。
また、この場合、試料採取装置40による試料採取は前記実施例(図6)と同様である。
即ち、内ロッド24を下降させた状態で、内栓20で試料取入口13を塞ぎ、口試料採取装置40を杭穴44内で下降させ(図16(a))、試料採取深さに至ったならば、内ロッド24を上昇させて内栓20を上昇させ、内栓20上の泥土を、上の排出口15から出し、かつ下の試料採取口13からその深さのセメントミルクを試料容器1内に取り入れる(図18(b))。内栓20が上方位置(内栓20の上面が天板3の下面に対向した状態)に至ったならば、内栓20が排出口15を塞ぎ、第二内栓35、35が試料取入口13、13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封するので(図18(c))、そのまま掘削ロッド42及び採取装置40も地上に引き上げる。
【実施例3】
【0068】
図8、9に基づきこの発明の他の実施例を説明する。この実施例は、実施例2と同様に外ロッド29を使用しない実施例で、底板7の中央部に試料取入口13を設ける実施例である。
【0069】
1.採取装置40の構成
【0070】
(1) 実施例1と同様に、試料容器1は、略筒状の側面板10の上下開口を天板3と、底板7とで塞いで形成する(図8(a))。天板3の上面(外面)4aに地上からの掘削ロッド42と連結する連結部31を上方に向けて設け、底板7の下面(外面)8a外周部に、杭穴底に差込んで、試料容器1を安定させるための先端尖り部33を、下方に向けて設ける。
天板3であって、連結部31の外周側に排出口15、15を直径対称な位置に形成する。試料取入口15、15は、前記実施例の透孔5、5と兼用する。
また、底板7の中央部に試料取入口13を形成する。底板7の厚さ高さをHとする。
【0071】
(2) 試料容器1の側面板10内径に対応した外径を有する高さ(厚さ)Hの円盤から中栓20を構成する。中栓20の外径は、中栓20の外周面と側面板10の内周面とが水密となり、かつ中栓20が側面板10内を摺動できるように形成する(図9)。
また、中栓20の外周部近傍に、地上から中栓20の上下動を操作する内ロッド24(第1操作ロッド)の下端部を連結する。内ロッド24、24は、試料容器1の天板3の排出口15に挿通して、中栓20の上下動を操作できる位置に取り付ける。内ロッド24、24の下面21aの中央部に下方に向けて補助内ロッド37を設けて、補助内ロッド37の下端部に第二中栓35を固定する(図8(b)。第二中栓35は試料取入口13を塞ぐことができるように構成する。ここで、
第二中栓35の高さH>底板7の厚さH
としてある。
【0072】
(3) 以上のようにして、試料容器1、中栓20を形成する。
【0073】
(4) 試料容器1内に中栓20を摺動自在に嵌挿し、天板3の排出口15、15を貫通した内ロッド24、24の下端部を内栓20に固定する。補助内ロッド37、37は試料取入口13から下方に突出している(図8)。
【0074】
内栓20は、下方位置(第1位置)で内栓20の下面21aが底板7に当たり、試料取込口13を塞ぎ、この状態で、内栓20は最下端位置にある(図9(a))。
また、内栓20は上方位置(第2位置)で、内栓20の上面20が排出口15、15を塞ぐ。この状態で、内栓25は最上端位置にあり、第二中栓35が試料取入口13に嵌挿して、これを塞ぐ(図9(c))。ここで、排出口15、15と試料取込口13とは、間に中栓20があり、試料容器1の内側を介して連通しない。以上の上方位置、下方位置の操作は、地上から内ロッド24、24を昇降させることにより行う。
【0075】
(5) 以上のようにして、この発明の試料採取装置40を構成する(図9(a))。
【0076】
2.採取方法
【0077】
(1) 次ぎに、前記実施例に基づく、試料採取装置40の使用について説明する。
【0078】
(2) 実施例1、2と同様に、杭穴44を形成し、セメントミルクを充填する。
試料採取装置40を掘削ロッド42の下端に取り付け、試料容器1に対して、内ロッド24が下方位置で、内栓20が試料取込口13を塞いた状態となっている(図9(a))。
この試料容器1、内ロッド24、24の相対位置を保ったまま、試料採取装置40を、杭穴44内で下降させる。この試料採取装置40の内ロッド24は掘削ロッド42の外側に沿って配置され、上方に伸びて、地上から昇降を操作できるようになっている。
同様に、杭穴44が深い場合には、掘削ロッド42、内ロッド24を繋ぎながら、試料採取装置40を所定の深さまで、下降する(図9(a))。この状態で、試料採取装置40の試料容器1内には、埋設途中の深さで、排出口15、15から泥水(多少のセメントミルクも含む)が流入する場合もある。
【0079】
(3) 所定の試料採取深さに至ったならば(通常は根固部内)、掘削ロッド42の下降を停止して、その位置で保持する。この場合、杭穴底付近の試料を採取する場合には、杭穴底46に先端尖り部33を押しつければ、水平方向で試料採取装置40が、より安定する(図9(b)参照)。前記のように、この状態で、試料容器1内で、内栓20の上方には途中の深さの泥水(多少のセメントミルクも含む)が充満させている。
【0080】
(4) この状態で、地上からの操作で、内ロッド24を上昇させて、内栓20を上昇させる。この際、内栓20の上昇により、試料容器1で内栓20上の泥土は排出口15、15から試料容器1外に(杭穴内に)押し出される。
これと同時に、内栓20の上昇により、試料採取口13からその深さのセメントミルクが試料容器1内に引き込まれる(図9(b))。ここで、上記のように、排出口15からは試料容器1の内容物を排出しつつ試料採取口13からセメントミルクを取り入れるので、内栓20、内ロッド24の操作に支障が無い。
【0081】
(5) 内栓20が上方位置に至ったならば、内ロッド24をその位置で保持する。この状態で、内栓20は排出口15を塞いで、第二内栓35、35が試料取入口13、13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封する(図9(c))。この状態で試料容器1(即ち、掘削ロッド42)と内ロッド24との相対位置を保持して、掘削ロッド42を地上に引き上げる。伴って、採取装置40も地上に引き上げられる。
【0082】
(6) 前記各実施例と同様に、任意な方法で、地上に引き上げた採取装置40の試料容器1からセメントミルク(ソイルセメント)を取り出す。例えば、地上に引き上げた採取装置40を、掘削ロッド42に取付たまま、分析容器(図示していない)の上方に移動して、内ロッド24を下降させれば、試料容器1内のソイルセメントを試料取入口13から分析容器内に放出する(図9(b)参照)。あるいは、掘削ロッド42から採取装置40を取り外して、同様の作業をすることもできる。
【0083】
(7) このように、試料容器1内に入っている内容物を出しながら、所定の深さでセメントミルクを採取するので、採取装置40(試料容器1)を埋設途中で他の深さの泥水やソイルセメントが試料容器1内に留まることがない。従って、より正確にその深さのセメントミルクを採取できるので、設計強度を保証できる。
【0084】
3.他の実施例
【0085】
(1) 前記実施例において、内ロッド24を内栓20の外周側に2つ以上を取り付けたが、内栓20の中心付近に1本の内ロッド24を設けることもできる(図20(a))。この場合には、前記実施例では天板3で排出口15、15と、透孔5、5とを兼用したが、排出口15、15とは別に、天板3の中心付近に内ロッド24が通過できる透孔5を形成する(図20(b))。
また、この場合には、内ロッド24の中間部は、天板3の透孔5を通過して、連結部31の中空部、連結した掘削ロッド42の中空部を通って(図20(b))、上方に伸びて、地上から昇降を操作できるようになっている。
【0086】
また、この場合には、試料採取装置40による試料採取は前記実施例と同様である。即ち、内ロッド24が下方位置で、内栓20が試料取込口13を塞いた状態で試料採取装置40を採取深さまで下降する(図20(b))。内ロッド24を上昇させて内栓20を上昇させ、内栓20上の泥土を排出口15、15から上方に押し出し、同時に、試料採取口13からその深さのセメントミルクを試料容器1内に引き込む(図20(c))。内栓20が上方位置で内栓20が排出口15を塞いで、第二内栓35、35が試料取入口13、13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封し(図20(c))採取装置40を地上に引き上げる。
この場合、内ロッド24は採取装置40、掘削ロッド42内に位置するので、杭穴44内の固形物の影響を受けずに、確実に内ロッド24の昇降操作ができる。
【実施例4】
【0087】
図10、図11に基づきこの発明の他の実施例を説明する。この実施例は、試料容器1を内ロッド7側に設けて、中栓20を掘削ロッドに連結した実施例である。
【0088】
1.採取装置40の構成
【0089】
(1) 試料容器1は、略筒状の側面板10の上下開口を天板3と、底板7とで塞いで形成する(図10(b))。天板3は、周縁部を除いて中心側に開口を有し、開口を試料取入口13とする。底板7も、周縁部を除いて中心側に開口を有し、開口を排出口15とする。側板10の外面11aの上端部に内ロッド24、24の下端部を連結する。
側面板10内に嵌挿して摺動でき、かつ底板7の上面8に当接して排出口15を塞ぐことができる中栓20と、中栓20の上方に配置して、天板3に当接して試料取入口13を塞ぐことができる外栓25とを円筒体38で連結する。中栓20の下面に下円筒体38aを下方に向けて連結して、更に、下円筒体38aの下面に先端尖り部33を連設する。
また、外栓25の上面に地上からの掘削ロッド42と連結する連結部31を上方に向けて連設する。連結部31、外栓25、円筒体38、内栓20、下円筒体38a及び先端尖り部33とは同軸に配置される。
【0090】
(2) 中栓20は、側面板10内径に対応した外径を有する円盤からなり、中栓20の外径は、中栓20の外周面と側面板10の内周面とが水密となり、かつ中栓20が側面板10内を摺動できるように形成する(図11)。
また、下円筒体38aの外面で、中栓20の下面から高さHを離して、水平方向に出没する三角形のストッパー51を設ける。ストッパー51は上縁が水平となるように配置され、バネにとり突出した状態となっている(図10(a))。ここで、
高さH>底板7の厚さH
となるように形成されている。
【0091】
(3) 以上のようにして、試料容器1、中栓20を形成する。
【0092】
(4) 試料容器1の側面板10内に中栓20を摺動自在に嵌挿する。円筒体38は試料取入口13内に充分な隙間をもって貫通して、補助円筒体38aは排出口15内に充分な隙間をもって貫通する(図12)。中栓20の下面が底板7の上面8に当接して排出口15を塞いだ状態で、外栓25の下面が天板3の上面4に当接して試料取入口13を塞ぐ(図11(d))。
内栓20は、上方位置(第1位置)で内栓20の上面21が底板7の下面8aに当たり、試料取込口13を塞ぎ、この状態で、内栓20は最上端位置にある(図11(a))。
また、内栓20は下方位置(第2位置)で、内栓20の下面2aが排出口15を塞ぐ。この状態で、内栓20は最下端位置にあり、外栓35の下面26aが天板3の上面4aに当接して試料取入口13を塞ぐ(図11(d))。ここで、排出口15と試料取込口13とは、間に中栓20があり、試料容器1の内側を介して連通しない。以上の上方位置、下方位置の操作は、地上から内ロッド24、24を昇降させることにより行う。
【0093】
(5) 以上のようにして、この発明の試料採取装置40を構成する(図11(a))。
【0094】
2.採取方法
【0095】
(1) 次ぎに、前記実施例に基づく、試料採取装置40の使用について説明する。
【0096】
(2) 実施例1、2と同様に、杭穴44を形成し、セメントミルクを充填する。
試料採取装置40を掘削ロッド42の下端に取り付け、試料容器1に対して、内ロッド24が下方位置で、内栓20が試料取込口13を塞いた状態となっている(図11(a))。この試料容器1、内ロッド24、24の相対位置を保ったまま、試料採取装置40を杭穴44内で下降させる。この試料採取装置40の内ロッド24は上方に伸びて、地上から昇降を操作できるようになっている。
同様に、杭穴44が深い場合には、掘削ロッド42、内ロッド24を繋ぎながら、試料採取装置40を下降する。この状態で、試料採取装置40の試料容器1内には、埋設途中の深さで、排出口15、15から泥水(多少のセメントミルクも含む)が流入する。
【0097】
(3) 所定の試料採取深さに至ったならば(通常は根固部内)、掘削ロッド42の下降を停止して、その位置で保持する。この場合、杭穴底付近の試料を採取する場合には、杭穴底46に先端尖り部33を押しつければ、水平方向で試料採取装置40が、より安定する。前記のように、この状態で、試料容器1内で、内栓20の下方には途中の深さの泥水(多少のセメントミルクも含む)が充満させている。
【0098】
(4) この状態で、地上からの操作で、内ロッド24を上昇させて、相対的に内栓20を下降させる(図11(b))。この際、内栓20の下降により、試料容器1で内栓20下方の泥土は排出口15、15から試料容器1外に(杭穴内に)押し出される。
これと同時に、内栓20の下降により、試料採取口13からその深さのセメントミルクが試料容器1内に引き込まれる(図11(b)(c))。ここで、上記のように、排出口15からは試料容器1の内容物を排出しつつ試料採取口13からセメントミルクを取り入れるので、内ロッド24の操作に支障が無い。
【0099】
(5) 内栓20が下方位置に至る直前に、底板7の排出口15の周縁が、ストッパー51の斜辺を下方から押すので、ストッパー51はバネに抗して、下円筒体38aの中心側に向けて没する(図11(b)(c))。
続いて、内栓20が更に下降すれば、底板7の排出口15の周縁が、ストッパー51の斜辺を越えて、水平面に至り、ストッパー51はバネにより、当初の突出した状態に戻る(図11(d))。この状態で、内栓20が下方位置に至り、底板7が中栓20とストッパー51に挟まれ、移動が規制され、内ロッド24をその位置を保持する。この状態で、内栓20は排出口15を塞いで、外栓35、35が試料取入口13を塞いで、収容したセメントミルクを略密封する(図11(d))。この状態で、掘削ロッド42を地上に引き上げる。伴って、採取装置40も地上に引き上げられる。
【0100】
(6) 前記各実施例と同様に、任意な方法で、地上に引き上げた採取装置40の試料容器1からセメントミルク(ソイルセメント)を取り出す。例えば、地上に引き上げた採取装置40を、掘削ロッド42に取付たまま、分析容器(図示していない)の上方に移動して、ストッパー51を押し込んで、内ロッド24を下降させれば、試料容器1内のソイルセメントを試料取入口13から分析容器内に放出する。あるいは、掘削ロッド42から採取装置40を取り外して、同様の作業をすることもできる。
【0101】
(7) このように、試料容器1内に入っている内容物を出しながら、所定の深さでセメントミルクを採取するので、採取装置40(試料容器1)を埋設途中で他の深さの泥水やソイルセメントが試料容器1内に留まることがない。従って、より正確にその深さのセメントミルクを採取できるので、設計強度を保証できる。
【実施例5】
【0102】
図21、図22に基づいて、他の実施例を説明する。前記実施例では、試料容器1に掘削ロッド42を連結する連結部31を形成したが、この実施例では、内栓20に掘削ロッド42を連結する連結部31を形成し、試料容器1に内ロッド24を連結して試料容器1を昇降させたものである。
【0103】
1.採取装置40の構成
【0104】
(1) 実施例1と同様に、試料容器1は、略筒状の側面板10の上下開口を天板3と、底板7とで塞いで形成する。天板1の中央部に、透孔5を形成し、側板10の上端部に排出口15、15を形成し、底板7の中央部に試料取込口13を形成する。また、天板3の外周側の上面(外面)に、試料容器1の昇降を地上から操作する内ロッド24、24の下端部を連結する(図21(b))。内ロッド24は複数本設ける。
試料容器1の側面板10内径に対応した外径を有する高さ(厚さ)Hの円盤から中栓20を構成する。中栓20の外径は、中栓20の外周面と側面板10の内周面とが水密となり、かつ中栓20が側面板10内を摺動できるように形成する。中栓20の上面中央部に、地上からの掘削ロッド42と連結する連結部31を上方に向けて設ける。連結部31は延長部32を介して中栓20の上面に固定され、連結部31が中栓の上面から所定距離(少なくとも、試料容器1の高さ程度)を離して配置されるように形成する(図21(a))。
以上のようにして、試料容器1、中栓20を形成する。
【0105】
(2) 試料容器1内に中栓20を摺動自在に嵌挿し、天板3の透孔5を延長部32が貫通して留いる。内栓20は、上昇位置(第1位置)で内栓20が天板3に当たり、内栓20の高さHの側面が試料取込口13、13を塞ぎ、この状態で、内栓20は最上端位置にある(図21(c))。
また、内栓20は下方位置(第2位置)で、内栓20の下面が排出口15、15を塞ぐ。この状態で、内栓25は最下端位置にある(図21(e)。ここで、排出口15、15と試料取込口13、13とは、間に中栓20があり、試料容器1の内側を介して連通しない。以上の上方位置、下方位置の操作は、地上から内ロッド24、24を昇降させることにより行う。
以上のようにして、この発明の試料採取装置40を構成する(図21)。
【0106】
2.採取方法
【0107】
(1) 次ぎに、前記実施例に基づく、試料採取装置40の使用について説明する。
【0108】
(2) 前記各実施例と同様に、杭穴44を形成し、セメントミルクを充填する。
試料採取装置40を掘削ロッド42の下端に取り付け、試料容器1に対して、内ロッド24、24が下方位置で、内栓20が試料取込口13、13を塞いた状態で、排出口15は開放した状態となっている(図21(c))。内ロッド24は掘削ロッド42に沿って配置され、上方に伸びて、地上から昇降を操作できるようになっている。
この試料容器1、内ロッド24の相対位置を保ったまま、試料採取装置40を杭穴44内で下降させ、所定の試料採取深さまで下降して、その位置で試料採取装置40を保持する。
【0109】
(3) この状態で、地上からの操作で、内ロッド24を上昇させて、試料容器1を上昇させる。この際、相対的に試料容器1内で内栓20が下降し、試料容器1で内栓20下の泥土は排出口15から試料容器1外に(杭穴内に)押し出される。
これと同時に、内栓20の下降により、試料採取口13からその深さのセメントミルクが試料容器1内に引き込まれる(図21(d))。ここで、上記のように、排出口15からは試料容器1の内容物を排出しつつ試料採取口13からセメントミルクを取り入れるので、内栓20、内ロッド24の操作に支障が無い。
【0110】
(4) 内栓20が下方位置に至ったならば、内栓20の下面が排出口15、15を塞ぎ、内ロッド24をその位置で保持して(図21(e))、掘削ロッド42を地上に引き上げる。伴って、採取装置40も地上に引き上げられる。
【0111】
(5) 前記実施例と同様に、任意な方法で、地上に引き上げた採取装置40の試料容器1からソイルセメントを取り出す。
【0112】
(6) このように、試料容器1内に入っている内容物を出しながら、所定の深さでセメントミルクを採取するので、採取装置40(試料容器1)を埋設途中で他の深さの泥水やソイルセメントが試料容器1内に留まることがない。従って、より正確にその深さのセメントミルクを採取できるので、設計強度を保証できる。
【0113】
3.他の実施例
【0114】
(1) 前記実施例において、内ロッド24、24を試料容器1の天板3の外周側に2つ取り付けたが、1本の内ロッド24を設けることもできる(図22(b))。この場合には、天板3の透孔5を通過した内ロッド24の下端部を、底板7の上面(内面)で中央部に固定する。従って、底板7の中央部以外の部分に排出口15、15を形成する(図22(b))。
また、この場合、中栓20の中央部にも内ロッド24を挿通できる透孔23を形成する(図22(a))。
従って、試料容器1に中栓20を入れて採取装置40を構成した状態で、試料容器1の底板7の上面(内面)に固定した内ロッド24は、中栓20の透孔23、延長部32の中空部、連結部31の中空部、掘削ロッド42の中空部を通過して上方に伸びて、途上から昇降を操作できるように構成する(図22(c))。
この場合、操作は前記実施例と同様である。即ち、試料容器1に対して内ロッド24、24が下方位置で、内栓20が試料取込口13、13を塞ぎ排出口15が開放した状態である(図22(c))。杭穴44内の試料採取深さで、地上からの操作で、内ロッド24を上昇させる(図22(d))。伴い、試料容器1内で、内栓20下の泥土を排出口15から試料容器1外に(杭穴内に)押し出し、同時に、試料採取口13からその深さのセメントミルクを試料容器1内に引き込む(図22(d))。内栓20が最も下方位置で内栓20の下面が排出口15、15を塞ぐので(図22(e))、そのまま内ロッド24をその位置で保持して、掘削ロッド42と共に採取装置40を地上に引き上げる。
【符号の説明】
【0115】
1 試料容器
3 天板
4 天板の内面
4a 天板の外面
5 透孔
7 底板
8 底板の内面
8a 底板の外面
10 側面板
11 側面板の内面
11a 側面板の外面
12、12a 側面板のリブ
13 試料取入口
15 排出口
16 排出口の下縁
20 中栓
21 中栓の上面
21a 中栓の下面
22 中栓の外周
23 中栓の透孔(実施例5)
24 内ロッド
25 外栓
26 外栓の上面
26a 外栓の下面
27 外栓の内面
27a 外栓の外面
28 外ストッパー
29 外ロッド
31 連結部
32 連結部の延長部
33 先端尖り部
35 第二内栓
37 補助内ロッド
38 円筒体
38a 下円筒体
40 試料採取装置
42 掘削ロッド
44 杭穴
45 杭穴の根固め部
46 杭穴の底
51 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のような工程で行う、杭穴充填物の採取方法。
(1) 採取装置は、試料容器内の一端に杭穴充填物を取り入れる試料取入口、他端に排出口を夫々形成する。前記採取装置は、前記試料容器内に、前記試料取入口と前記排出口との間を摺動すると共に、前記試料取入口又は前記排出口を封鎖できる第一栓を、嵌挿する。
(2) 前記試料取入口を塞いで、前記第一栓を試料取入口側に位置させて、前記試料容器の試料取入口側の容積を略ゼロにして、前記採取装置を前記杭穴内に沈設する。
(3) 続いて、所定の採取予定深さで、前記第一栓を前記排出口側に移動して、前記試料容器の排出口側の容積を略ゼロとしつつ、前記試料容器の前記試料取入口を開放して、前記試料取入口から「目的の深さの杭穴充填物」を前記試料容器内に取り入れる。
(4) 続いて、前記第一栓で、前記試料取入口又は前記排出口を略密封して、前記採取装置を地上に引き上げる。
【請求項2】
以下のような工程で行う、杭穴充填物の採取方法。
(1) 採取装置は、試料容器内の一端に杭穴充填物を取り入れる試料取入口、他端に排出口を夫々形成する。前記採取装置は、前記試料容器内に、前記試料取入口と前記排出口との間を摺動すると共に、前記試料取入口又は前記排出口を封鎖できる第一栓を、嵌挿する。
(2) 前記試料取入口を塞いで、前記第一栓を試料取入口側に位置させて、前記試料容器の試料取入口側の容積を略ゼロにして、前記排出口から試料容器内に「他の深さの杭穴充填物」を取入ながら、前記採取装置を前記杭穴内に沈設する。
(3) 続いて、所定の採取予定深さで、前記第一栓を前記排出口側に移動して、試料容器内の「他の深さの杭穴充填物」を前記排出口から排出すると共に、前記試料容器の前記試料取入口を開放して、前記試料取入口から「目的の深さの杭穴充填物」を前記試料容器内に取り入れる。
(4) 続いて、前記第一栓及び第二栓で、前記試料取入口及び前記排出口を略密封して、前記採取装置を地上に引き上げる。
【請求項3】
以下のような工程で行う、杭穴充填物の採取方法。
(1) 採取装置は、試料容器内の一端に杭穴充填物を取り入れる試料取入口、他端に排出口を夫々形成する。前記採取装置は、第一栓及び第二栓を設け、前記試料取入口及び排出口を、封鎖可能とした。前記試料容器は第一栓及び第二栓を操作して、容積を略ゼロ又は最大に可変できるように形成する。
(2) 前記試料取入口を前記第1栓又は第二栓で塞いで、前記試料容器の容積を略ゼロにして、前記採取装置を、前記杭穴内の試料採取深さまで沈設する。
(3) 続いて、所定の採取予定深さで、前記試料容器の試料取入口を開放して、試料容器内に「目的の深さの杭穴充填物」を取り入れると共に、前記試料容器の容積を最大にして、前記試料容器内に「目的の深さの杭穴充填物」を満たす。
(4) 続いて、前記第一栓及び第二栓で、前記試料取入口及び前記排出口を略密封して、前記採取装置を地上に引き上げる。
【請求項4】
以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置。
(1) 試料容器内の両端部に、それぞれ開口を形成し、一方の開口を試料取込口、他方を排出口とする。
(2) 前記試料容器内に中栓を嵌挿して、該中栓を、前記試料取込口と前記排出口の間を移動可能とし、前記中栓又は前記試料容器の移動を地上から操作する第1操作手段を設ける。
(3) 前記中栓は、前記試料取込口又は前記排出口のいずれか一方を封鎖可能とする。
【請求項5】
以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置。
(1) 試料容器の上部及び下部に、それぞれ開口を形成し、一方の開口を試料取込口、他方を排出口とする。
(2) 前記試料容器内に第一栓を嵌挿して、該第一栓を前記試料取入口と前記排出口との間に移動可能とし、前記第一栓又は前記試料容器の移動を地上から操作する第1操作手段を設ける。
(3) 前記試料容器内又は前記試料容器外で、移動可能な第二栓を設けて、該第二栓又は前記試料容器の移動を地上から操作できる第2操作手段を連結する。
(4) 前記第一栓又は第二栓は、前記試料取込口又は前記排出口の一方を夫々封鎖可能とする。
【請求項6】
以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置。
(1) 試料容器の上部及び下部に、それぞれ開口を形成し、一方の開口を試料取込口、他方を排出口とする。
(2) 前記試料容器内に中栓を嵌挿して、該中栓を前記試料取入口と前記排出口との間に移動可能とし、前記中栓又は前記試料容器の移動を地上から操作する第1操作手段を設ける。
(3) 前記試料容器の外周に、外蓋を開閉自在に設け、前記外蓋の開閉を地上から操作できる第2操作手段を連結する。
(4) 前記中栓又は前記外蓋は、前記試料取込口又は前記排出口の一方を夫々封鎖可能とする。
【請求項7】
以下のように構成したことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の杭穴充填物の採取装置。
(1) 試料容器の上端に、埋設用ロッドに連結する連結部を形成し、前記埋設用ロッド及び連結部は上下に連通する中空部を有する構造とする。
(2) 第1操作手段は、下端部を第一栓に連結して、中間部を前記連結部及び掘削ロッドの中空部を通過して、上端部を地上で操作できるように位置させる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−80350(P2011−80350A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175312(P2010−175312)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】