説明

杭頭処理装置

【課題】伸縮装置を杭頭内部の所定の位置に簡便かつ迅速に固定して、杭頭を確実に破壊する。
【解決手段】この装置1は、上下に長い柱体構造の正面71の上下方向中央で動作時の油圧シリンダ3を支持し、上下に長い柱体構造の背面72の上下で反力を得る構造を採り、油圧シリンダ3の支持プレート8を、装置1を杭頭内部に挿入するためのガイドとして、H型柱7を、油圧シリンダ8を杭頭内部に位置決めするためのガイドとしてそれぞれ構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に打設されるコンクリート杭の特に杭頭を破壊するための杭頭処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物や橋梁などの構造物の荷重を地盤に伝達支持する基礎として、コンクリート杭、鋼管杭など各種の杭が各種の工法により用いられている。このうち、コンクリート杭による工法の一つで、予め工場などで作られたPC杭(鉄筋コンクリート杭)などを回転圧入やハンマーで打ち込む既製コンクリート杭による工法が知られている。この工法の場合、既製コンクリート杭の規格が統一されており、長さが均一であるのに対して、地表から上部の構造物を支持させる基礎地盤までの深さは必ずしも均一ではないために、同一の長さの既製コンクリート杭を一様にして打設しなければならず、基礎地盤までの深さが浅い箇所においては、杭頭が地上に残ることは避けられず、この杭頭を破壊撤去する必要がある。この場合、PC杭と上部の構造物とを一体化させるのが一般的であり、杭頭を破壊撤去する際に、杭頭のコンクリート部分のみを破壊撤去して内部に配筋された鉄筋を劣化させることなく露出させ、この鉄筋と後に構築される上部の構造物の鉄筋とを連結する必要がある。従来、この種の杭頭処理では、ブレイカーやたがねなどを用いて、内部の鉄筋を切断しないようにコンクリート部分のみを慎重に破壊して、地中に埋設された杭部分との縁を切り、ある程度破壊が終了した時点で、クレーンなどの揚重機を用いてコンクリート塊を吊るし上げて、鉄筋を残してコンクリート部分のみを撤去する方法が採られていた。ところが、この方法では、ブレイカーを使用した場合、その振動、騒音及び粉塵がすさまじく、労働環境を悪化して、作業員の健康を著しく害し、しかも杭頭のコンクリート部分のみを破壊するには相当の熟練を必要とするという問題があり、また、たがねを用いた場合は、ブレイカーなどの振動により切削する場合に生じる問題は回避できるものの、人力による作業であるために、多大な労力と時間を要し、工期の遅延を招くとともに、工費が嵩むという問題があり、いずれの場合も、その改善が待たれていた。
【0003】
そして、このような要請から、近年、コンクリート杭の破壊に際して、振動、騒音及び粉塵の発生を防止し、コンクリート杭の本体部分もしくは杭頭内部に配筋された鉄筋などを損傷させることなく、杭頭のコンクリート部分のみを容易に破壊することを可能とすることを目的として、油圧ジャッキを利用したコンクリート杭の破壊方法が提案された。この種の破壊方法の一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
この文献1の破壊方法では、予め、コンクリート杭の杭頭外周に周方向に沿ってスリットを形成するとともに、杭頭内部に伸縮ジャッキを短縮した状態で、その両端部を杭頭の内面に当接させつつ懸吊し、次いで伸縮ジャッキを伸長させて、杭頭のコンクリート部分を割裂するようにした。このように伸縮ジャッキを用いることで、コンクリート杭の杭頭を簡易に破壊処理することができるとともに、破壊時の振動、騒音及び粉塵の発生を防止することができる。さらに、杭頭のコンクリート部分のみを圧壊できるので、コンクリート杭の本体部分もしくは杭頭内部に配筋された鉄筋などを損傷させることなく露出することができる。これにより、この鉄筋を上部に構築する構造体と接合して、コンクリート杭と上部の構造体とを容易に一体化することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−26557公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の伸縮ジャッキを利用したコンクリート杭の杭頭処理方法では、伸縮ジャッキが油圧式で、破壊を所望する部分に当接される破壊部と、破壊部を軸方向に進退する伸縮部と、この伸縮部に油圧を伝達するパイプと、コンクリート杭の直径に応じて適宜交換され、伸縮ジャッキの伸縮力をコンクリート杭内に好適に伝える伝達部とを備え、全体が水平方向に長い軸体構造に構成され、この伸縮ジャッキそれ自体をワイヤで吊るすために、コンクリート杭の杭頭処理に当たり、この伸縮ジャッキをワイヤで吊り、杭頭内部に下ろすときに、水平方向又は垂直方向に振れが生じやすく、杭頭内部に入れにくいという問題があり、また、伸縮ジャッキを杭頭内部に入れて下ろしていく過程でも、水平方向に又は垂直方向に振れが生じやすく、先端の破壊部を杭頭内部の所定の位置(圧壊位置)に位置決めしにくいという問題があり、さらに、伸縮ジャッキをコンクリート部分の所定の位置に下ろすまで作業者が終始監視して位置決めしなければならないため、伸縮ジャッキを杭頭内部に下ろす作業が簡便でなく、全体として、伸縮ジャッキを杭頭内部の所定の位置に簡便かつ迅速に固定することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、この種の伸縮装置を利用した杭頭処理装置において、伸縮装置をワイヤなどで杭頭内部に吊り下ろすときに、水平方向又は垂直方向に振れを生じにくくして、杭頭内部に入れやすくすること、また、この伸縮装置を杭頭内部に入れて下ろしていく過程でも、水平方向又は垂直方向に振れを生じにくくして、伸縮装置の動作部を杭頭内部の所定の位置(圧壊位置)に容易に位置決めすること、さらに、この伸縮装置を杭頭内部に下ろす過程を作業者が終始監視することなく、伸縮装置を所定の位置まで簡易に下ろすこと、全体として、伸縮装置を杭頭内部の所定の位置に簡便かつ迅速に固定し、杭頭を確実に破壊すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明の杭頭処理装置は、伸縮装置と、前記伸縮装置の伸縮方向一端側に前記伸縮装置の伸縮動作により進退可能に設けられ、コンクリートを圧壊するための動作部、及び前記伸縮装置の伸縮方向他端側に固定され、反力を得るための反力部とを備え、前記伸縮装置を懸吊手段によりコンクリート杭の杭頭内部に吊り下ろし、前記杭頭内部で前記伸縮装置を伸長させて前記杭頭を破壊する形式の杭頭処理装置において、前記伸縮装置を支持し、前記懸吊手段に吊るすための本体サポートユニットを備え、前記本体サポートユニットは、前記杭頭内部に配置可能な上下方向に長い柱状部材と、前記柱状部材に水平方向に向けて突設され、前記杭頭内部に配置可能な平面形状を有する支持部材と、前記支持部材又は前記柱状部材に形成され、前記懸吊手段に係止可能な吊り部材とを有し、前記伸縮装置は前記支持部材上に、前記伸縮装置の伸縮方向他端側を前記柱状部材に固定されて、水平方向に向けて伸縮可能に据え付けられ、前記柱状部材の前記伸縮装置の伸長方向とは逆向きの面に、前記反力部が前記伸縮装置に対して上下に分割して形成される、ことを要旨とする。
【0009】
この場合、柱状部材又は支持部材又はその両方は各部材の全部又は一部に杭頭内部の内周に対応する形状を有し、装置全体を杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成される。さらに、柱状部材は杭頭の長さに関連付ける所定の長さを有し、前記柱状部材の特定部位の前記杭頭内部に対する相対位置により、伸縮装置を杭頭内部に位置決めするガイドとして構成される。また、動作部は断面略I形のレール形状に形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭頭処理装置は、上記のとおり、伸縮装置を柱体構造の本体サポートユニットにより支持し、懸吊手段に吊るして、杭頭内部に吊り下ろすので、伸縮装置それ自体をワイヤなどで杭頭内部に吊り下ろす場合に比べて、装置(杭頭処理装置)を水平方向又は垂直方向に振れを生じにくくして、杭頭内部に入れやすくすることができ、また、この装置(杭頭処理装置)を杭頭内部に入れて下ろしていく過程でも、水平方向又は垂直方向に振れを生じにくくして、伸縮装置の動作部を杭頭内部の所定の位置(圧壊位置)に容易に位置決めすることができる。この場合、柱状部材又は支持部材又はその両方を、上記のとおり、杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成することで、この装置(杭頭処理装置)を杭頭内部にさらに入れやすく、さらに位置決めし易くすることができる。また、柱状部材を、上記のとおり、伸縮装置を杭頭内部に位置決めするガイドとして構成することにより、この装置(杭頭処理装置)を杭頭内部に下ろす過程を作業者が終始監視することなく、伸縮装置を所定の位置まで簡易に下ろすことができる。したがって、全体として、伸縮装置を杭頭内部の所定の位置に簡便かつ迅速に固定することができ、杭頭を確実に破壊することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の一実施の形態について、図1乃至図4を用いて説明する。図1に示すように、杭頭処理装置1(以下、単に装置1という。)は、伸縮装置3を含む本体2と、この本体2を支持し、クレーンなどの懸吊手段に吊るすための本体サポートユニット6とを備えて構成される。
【0012】
本体2は、伸縮装置3と、動作部4と、反力部5と、を備える。これらの各部を図2乃至図4に具体的に示している。
【0013】
伸縮装置3は、軸を流体圧又は電動により水平方向に往復直線運動するアクチュエータで、この実施の形態では、油圧シリンダが採用される。なお、以下の説明でこの伸縮装置3を油圧シリンダ3という。
【0014】
動作部4は、油圧シリンダ3の伸縮方向一端側に油圧シリンダ3の伸縮動作により進退可能に設けられて、杭頭内部のコンクリートを圧壊する機能部で、丸棒、角棒など棒形のもの、棒形のものよりも体積の大きいブロック状のもの、先端が曲面のもの又は平面のもの、あるいは尖ったもの又は鋭利なもの、(コンクリート杭との)接触面積が大きいもの又は小さいものなど、コンクリート杭の破壊に適切な形状に形成されて、油圧シリンダ3の作動ロッド31の先端に設けられる。この実施の形態では、動作部4は、断面I形の短いレール形状に形成され、油圧シリンダ3の作動ロッド31の先端に一体的に取り付けられる。この場合、動作部4は作動ロッド31に固定されていてもよく、また作動ロッド31に着脱可能に取り付けられて、各種形状の動作部と取り替え可能な形式にしてもよい。なお、動作部4を取り替え形式にした場合、動作部4は丸棒、角棒など棒形のもの、棒形のものよりも体積の大きいブロック状のもの、先端が曲面又は平面のもの、あるいは尖ったもの又は鋭利なもの、(コンクリート杭との)接触面積が大きいもの又は小さいものなど、コンクリート杭の破壊に適切な形状のものが用意され、この中から適宜選定される。なお、以下の説明で、この動作部4をレール形状ブロック4という。
【0015】
反力部5は油圧シリンダ3の伸縮方向他端側に固定され、油圧シリンダ3の動作時に反力を得る機能部で、反力を受けるのに適切な面形状に形成されて、油圧シリンダ3の後端側に設置される。この実施の形態では、反力部5は、矩形の平板状に形成され、後述する本体サポートユニット6の柱状部材7の背面72の上端部及び下端部に固着される。なお、以下の説明で、この反力部5を反力プレート5という。
【0016】
本体サポートユニット6は、柱状部材7と、支持部材8と、吊り部材9、とを備える。これらの各部を図2乃至図4に具体的に示している。
【0017】
柱状部材7は、金属その他の所定の重量を有する材料により、杭頭内部に配置可能に、水平方向の寸法を杭頭内部の内径よりも小さい所定の寸法で、上下方向の寸法を杭頭の長さと略同じか又はそれよりも小さい所定の寸法の、柱形状に形成される。この場合、柱形状は、角柱、円柱、(断面)H型柱などが好ましい。また、この柱状部材7は、杭頭の長さに関連付ける所定の長さを有し、柱状部材7の特定部位の杭頭内部に対する相対位置により、油圧シリンダ3を杭頭内部に挿入し、位置決めするためのガイドとして構成される。この柱状部材7はまた、外周の全部又は一部に杭頭内部の内周に対応する形状が形成されることで、装置1を杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成することもできる。この実施の形態では、柱状部材7は、杭頭内部に配置可能に、上記の所定の寸法及び重量に適合するH型鋼により形成される。この場合、H型鋼の中間の板702を挟んで両側の板701、703のうち、片側一方の板701の外側面(外側向きの面)を正面71とし、他方の板703の外側面(外側向きの面)を背面72とする。そして、この柱状部材7の正面71を油圧シリンダ3の基端部を固定する支持面とし、この正面71に、油圧シリンダ3の基端部側を両側から挟持可能な一対の突状711、711が形成されて、これが油圧シリンダ3の振れ止めとなる。また、この柱状部材7の背面72を油圧シリンダ3の伸長方向と逆向きの面とし、この背面72に、反力プレート5が既述のとおり固着され、この柱状部材7(の上下方向中央)に支持される油圧シリンダ3に対して上下に分割して取り付けられる。また、この柱状部材7の場合、柱状部材7の全長を杭頭の長さと略同じにして杭頭の長さに関連付け、この柱状部材7の上端部の杭頭内部に対する相対位置により、この柱状部材7に支持される油圧シリンダ3を杭頭内部で位置決めする。この場合、例えば、柱状部材7を垂直に杭頭内部に挿入し、柱状部材7の上端部と杭頭の上端部を一致させることにより、この柱状部材7に支持される油圧シリンダ3の杭頭内部における高さ位置を特定することができ、これを基準にすることにより、柱状部材7を下方に下げる場合は、杭頭の上端部から柱状部材7の上端部までの距離から、油圧シリンダ3の位置を所定の高さ位置に位置決めすることができ、反対に柱状部材7を上げる場合、同様に、杭頭の上端部から柱状部材7の上端部までの距離から、油圧シリンダ3の位置を所定の高さ位置に位置決めすることができ、装置1を杭頭内部の所望の高さ位置に簡易に位置決めすることができる。また、この柱状部材7の場合、柱状部材7の周囲に杭頭内部の内周に対応する形状、この場合、後述する支持部材8と同じ又は類似の小判形のプレートが後述する支持部材8と同じ取り付け方で取り付けられることにより、この柱状部材7を、装置1を杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成することもできる。なお、以下の説明で、この柱状部材7をH型柱7という。
【0018】
支持部材8は、金属その他の剛性を有する板材により、杭頭内部に配置可能な平面形状に形成される。この場合、支持部材7は、外形の全部又は一部に杭頭内部に対応する形状を有し、装置1全体を杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成される。この実施の形態では、支持部材8は、杭頭内部に嵌合可能な略小判形の平面形状に、かつ両端縁部(この場合、前後の縁部)が杭頭内部の内周形状に対応する円弧形状81に形成され、後縁部の中央にH型柱7が挿通可能な矩形の凹部82が形成される。このようにして支持部材8の前部に油圧シリンダ3を設置するための平面形状の支持面が形成され、後部にこの支持部材8をH型柱7に取り付けるための凹部82が形成される。また、この支持部材8は外形の一部に杭頭内部の内周に対応する円弧形状81が形成されたことで、支持部材8は装置1を杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成される。そして、この支持部材8は、後部の凹部82にH型柱7を通して、このH型柱7の上下方向中央にH型柱7に対して直角に溶接その他の固着手段により取り付けられて、H型柱7の正面71から水平に突設される。なお、以下の説明で、この支持部材8を支持プレート8という。
【0019】
吊り部材9は、装置1全体がクレーンなどの懸吊手段に吊り下げ可能に、支持プレート8又はH型柱7に略逆U字形又はこれに類似の形状に形成される。この場合、支持プレート8の両側に一対の吊りプレート91、91が立ち上げ形成され、これら吊りプレート91、91の上端部間に吊り金具92が架設されて構成される。この実施の形態では、一対の吊りプレート91、91は、H型柱7の長さの半分程度の長さを有する細長い平板で、支持プレート8の左右両側の中央に上方に向けて直角に溶接その他の固着手段により固着され、支持プレート8の両側に立ち上げ固定される。吊り金具92は丸棒材など棒状の鋼材を三角形状に曲げて形成され、一対の吊りプレート91、91の上端部間に架け渡されて、溶接その他の固着手段により固着される。なお、この吊り部材9は支持プレート8に代えて、H型柱7に取り付けられてもよい。また、このような吊り部材9に代えて、H型柱7の両側上部にそれぞれブラケットが固着されて、これらのブラケット間に吊り金具92が取り付けられてもよく、さらに、H型柱7の両側上部に吊り金具92が直接固着されてもよい。なお、以下の説明で、この吊り部材9を吊り部9という。
【0020】
本体サポートユニット6はこのような構成を有し、この本体サポートユニット6に本体2が一体的に取り付けられる。この本体サポートユニット6の場合、油圧シリンダ3がレール形状ブロック4を前方に向けて支持プレート8の支持面上に平行に、かつ油圧シリンダ3の基端部がH型柱7の正面71に支持固定されるとともに正面71の一対の突状711、711間に挟持(振れ止め)されて設置され、油圧シリンダ3と支持プレート8が固着手段を介して取り付けられる。そして、反力プレート8が、既述のとおり、H型柱7の背面72に油圧シリンダ3に対して上下に分割して取り付けられる。このようにして装置1は、上下に長い柱体構造の正面71の上下方向中央で動作時の油圧シリンダ3を支持し、上下に長い柱体構造の背面72の上下で反力を得る構造を採るとともに、支持プレート8を、装置1全体を杭頭内部に挿入するためのガイドとして、H型柱7を、油圧シリンダ3を杭頭内部に位置決めするガイドとしてそれぞれ構成する。
【0021】
図5乃至図8にこの装置1による、コンクリート杭Cの杭頭C1の破壊処理を示している。なお、コンクリート杭CはPC杭で、コンクリート内部に鉄筋が配筋されている。まず、この装置1を杭頭C1内部に挿入し、設置する。この場合、図5に示すように、まず、本体サポートユニット6に設けた吊り金具92にクレーンなどのフックを係止して、クレーンの昇降動作により、装置1を杭頭C1の上方に吊り上げる。なお、このとき、油圧シリンダ3は作動ロッド31が収縮した状態になっている。続いて、クレーンの昇降動作により、装置1を杭頭C1内部に向けて吊り下ろす。このとき、この装置1の上下に長い柱体構造により、装置1は水平方向又は垂直方向に振れ難く、また杭頭C1内部に向けて入れやすく、装置1のH型柱7を下端から杭頭C1内部に円滑かつ迅速に挿入することができる。続いて、このH型柱7を杭頭C1内部に入れて下ろしていく過程でも、この装置1の上下に長い柱体構造により、装置1は水平方向又は垂直方向に振れが生じにくく、H型柱7を円滑かつ迅速に入れていくことができる。続いて、H型柱7中間の油圧シリンダ3の支持プレート8を杭頭C1内部に挿入する。このとき、図6に示すように、支持プレート8の外形の一部に杭頭C1内部の内周に対応する円弧形状81が形成されているので、これをガイドにして、支持プレート8を杭頭C1内部に円滑かつ迅速に挿入することができ、また、装置1全体を適切な姿勢(油圧シリンダ3を水平な状態)に維持することができる。さらに、この装置1の場合、H型柱7の全長を杭頭C1の長さと略同じにして杭頭C1の長さに関連付けているので、このH型柱7の上端部の杭頭C1内部に対する相対位置により、油圧シリンダ3を杭頭C1内部の所定の位置に簡易に位置決めすることができる。したがって、装置1を下ろす過程を作業者が終始監視することなく、油圧シリンダ3のレール形状ブロック4を所定の位置(圧壊位置)まで簡易に下ろすことができる。このようにして装置1を杭頭C1内部に挿入し、図7に示すように、油圧シリンダ3のレール形状ブロック4を杭頭1内部の所定の位置に位置決めする。そして、ここで油圧シリンダ3を作動させ、図8に示すように、レール形状ブロック4を進退駆動する。このとき、H型柱7の背面72上下の各反力プレート5、5は杭頭C1内部の壁面に当接された状態で、油圧シリンダ3のレール形状ブロック4が杭頭C1内部の所定の位置のコンクリートの壁面を押圧する。この場合、油圧シリンダ3の動作によるコンクリートの壁面を押す力は、当該壁面とは反対側の壁面に、H型柱7の背面72上下の各反力プレート5、5によって上下に分散して伝達され、反対側の壁面は破壊されることなく保持される。そして、これらの反力プレート5、5で得られた反力によって、油圧シリンダ3のレール形状ブロック4が杭頭C1内部の所定の位置を一定の力で押圧し、コンクリートの壁面を圧壊する。このようにして杭頭内部の当該壁面を圧壊したら、この装置1を杭頭C1内部で上下方向又は回転方向に移動することによって杭頭C1内部の圧壊位置を変え、油圧シリンダ3を同様に駆動して、杭頭C1内部の壁面を同様に圧壊し、これを繰り返し行なって、杭頭C1を破壊する。
【0022】
以上説明したように、この装置1では、油圧シリンダ3を柱体構造の本体サポートユニット6に支持し、懸吊手段に吊るして、杭頭C1内部に吊り下ろすので、油圧シリンダ3それ自体をワイヤなどで杭頭C1内部に吊り下ろす場合に比べて、装置1に水平方向又は垂直方向の振れを生じにくくして、杭頭C1内部に入れやすくすることができ、また、この装置1を杭頭C1内部に入れて下ろしていく過程でも、水平方向又は垂直方向に振れを生じにくくして、油圧シリンダ3のレール形状ブロック4を杭頭C1内部の所定の位置(圧壊位置)に容易に位置決めすることができる。そして、この装置1の場合、H型柱7又は支持プレート8又はその両方7、8を、既述のとおり、杭頭C1内部に挿入するためのガイドとして構成することで、この装置1を杭頭C1内部にさらに入れやすく、さらに位置決めし易くすることができる。また、H型柱7を、上記のとおり、油圧シリンダ3を杭頭C1内部に位置決めするガイドとして構成することで、この装置1を杭頭C1内部に下ろす過程を作業者が終始監視することなく、油圧シリンダ3を所定の位置まで簡易に下ろすことができる。したがって、全体として、油圧シリンダ3を杭頭C1内部の所定の位置に簡便かつ迅速に固定することができ、杭頭C1を確実に破壊することができる。
【0023】
なお、上記実施の形態では、油圧シリンダ3の基端部をH型柱7の正面71で支持固定したが、H型柱7の正面71又はその他の周面に固定プレートを固着して支持プレート8上に突出させ、この固定プレートで油圧シリンダ3(の基端部側)を支持固定するようにしてもよい。この場合、固定プレートに油圧シリンダ3の振れ止めを備えることが好ましい。
【0024】
また、上記実施の形態では、支持プレート8をH型柱7に固着したが、この支持プレート8をH型柱7に着脱可能に取り付け、支持プレート8の取り付け位置をH型柱7の上下方向又は左右方向に変更可能にしてもよい。さらに、H型柱7にレールを設け、支持プレート8に当該レールを移動可能なガイドを設け、油圧シリンダやモータ駆動のボールねじ機構を利用した駆動装置により、支持プレート8をH型柱7上で移動可能に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態における杭頭処理装置の全体斜視図
【図2】同装置の平面図
【図3】同装置の側面図
【図4】同装置の正面図
【図5】同装置のH型柱を杭頭内部に挿入する状態を示す斜視図
【図6】同装置の支持プレートを杭頭内部に挿入する状態を示す斜視図
【図7】同装置を杭頭内部に設置した状態を示す側面断面図
【図8】同装置を杭頭内部に設置して、杭頭を破壊する状態を示す側面断面図
【符号の説明】
【0026】
1 杭頭処理装置
2 本体
3 伸縮装置(油圧シリンダ)
31 作動ロッド
4 動作部(レール形状ブロック)
5 反力部(反力プレート)
6 本体サポートユニット
7 柱状部材(H型柱)
701 一方の板
711、711 一対の突状(油圧シリンダの振れ止め)
702 中間の板
703 他方の板
71 正面
72 背面
8 支持部材(支持プレート)
81 円弧形状
82 凹部
9 吊り部材(吊り部)
91、91 一対の吊りプレート
92 吊り金具
C コンクリート杭
C1 杭頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮装置と、前記伸縮装置の伸縮方向一端側に前記伸縮装置の伸縮動作により進退可能に設けられ、コンクリートを圧壊するための動作部、及び前記伸縮装置の伸縮方向他端側に固定され、反力を得るための反力部とを備え、前記伸縮装置を懸吊手段によりコンクリート杭の杭頭内部に吊り下ろし、前記杭頭内部で前記伸縮装置を伸長させて前記杭頭を破壊する形式の杭頭処理装置において、
前記伸縮装置を支持し、前記懸吊手段に吊るすための本体サポートユニットを備え、
前記本体サポートユニットは、
前記杭頭内部に配置可能な上下方向に長い柱状部材と、
前記柱状部材に水平方向に向けて突設され、前記杭頭内部に配置可能な平面形状を有する支持部材と、
前記支持部材又は前記柱状部材に形成され、前記懸吊手段に係止可能な吊り部材と、
を有し、
前記伸縮装置は前記支持部材上に、前記伸縮装置の伸縮方向他端側を前記柱状部材に固定されて、水平方向に向けて伸縮可能に据え付けられ、
前記柱状部材の前記伸縮装置の伸長方向とは逆向きの面に、前記反力部が前記伸縮装置に対して上下に分割して形成される、
ことを特徴とする杭頭処理装置。
【請求項2】
柱状部材又は支持部材又はその両方は各部材の全部又は一部に杭頭内部の内周に対応する形状を有し、装置全体を杭頭内部に挿入するためのガイドとして構成される請求項1に記載の杭頭処理装置。
【請求項3】
柱状部材は杭頭の長さに関連付ける所定の長さを有し、前記柱状部材の特定部位の前記杭頭内部に対する相対位置により、伸縮装置を杭頭内部に位置決めするガイドとして構成される請求項1又は2に記載の杭頭処理装置。
【請求項4】
動作部は断面略I形のレール形状に形成される請求項1乃至3のいずれかに記載の杭頭処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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