説明

杭頭結合構造及びその施工方法

【課題】杭の高強度化に伴う杭頭反力増大に対応した高強度でかつ施工の容易な杭頭結合構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る杭頭結合構造は、鋼管杭1と鉄筋コンクリート構造物3とを結合する杭頭結合構造であって、鋼管杭1の杭頭部に設けたずれ止め5a、5bと、杭頭部に挿通され、かつずれ止め5bよりも下方に配置されたリング部材7と、リング部材7に下端部が接合され、上端部が杭頭部より上方に延出する定着鉄筋9と、定着鉄筋9とリング部材7を含む杭頭部に打設されたコンクリート11とを有し、平面視でリング部材7の一部が定着鉄筋9よりも張り出していることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも杭頭部に鋼管部を有する杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造に関する。
なお、杭と結合される鉄筋コンクリート構造物とは、杭と直接結合されるものが鉄筋コンクリート造であることを意味しており、その上部の構造物まで鉄筋コンクリートであることを意味するものではない。
【背景技術】
【0002】
回転杭、鋼管ソイルセメント杭など高支持力タイプの鋼管杭が開発されたことにより杭1本あたりに作用する荷重(常時,地震時)が大きくなった。これに伴って、杭と上部構造の結合部にも大きな荷重が生じることになる。
従来の杭頭結合構造として、例えば鋼管杭の杭頭部内面にずれ止めを設置すると共に杭頭部内周部に中詰め補強筋を配置するという道路橋示方書に方法Bとして示された杭頭結合方法がある。しかし、この方法では杭本体の強度に対して、十分な杭頭結合部の強度を得ることは難しく、結合部の強度不足により基礎構造全体が不安定となってしまう懸念がある。
【0003】
また、道路橋示方書に記載の方法Bを強化した杭頭結合構造として、杭外周に鉄筋を現場溶接する方法があるが、鉄筋が増え過密配筋になって、施工性や品質信頼性が低下する恐れがある。また、この方法は建設現場において鉄筋を鋼管杭に溶接する作業を行うことから、雨天や強風などの悪天候時作業や溶接技術水準の差異により、溶接部の強度や耐久性が損なわれる恐れがある。
【0004】
安定した高い曲げ耐力を有する杭頭結合構造の例として、先行文献1に開示された「鋼管杭頭部の接合構造および鋼管杭頭部の施工方法」がある。この鋼管杭頭部の接合構造は、地盤中に打設された鋼管杭の頭部の周囲に、定着筋が固定された外鋼管が配置され、前記外鋼管と前記鋼管杭との間隙および前記外鋼管の少なくとも上端部の周囲にコンクリートが打設されて、前記鋼管杭とフーチングまたは基礎梁とが接合されている鋼管杭頭部の接合構造であって、前記外鋼管の下部に、内側に突出する定着部材が設けられていることを特徴とするものである(特許文献1の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-139731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の先行文献1に記載のものは、外鋼管の周囲に定着筋を固定し、かつ外鋼管の下端部に杭側に張り出す定着部材を設置するという構造である。
このような構造の場合、上部の鉄筋コンクリート構造物の配筋との干渉の危険が生ずること、また荷重伝達が不十分になること等の理由から外鋼管の上端を杭上端よりも上方に突出させるとことができない。
また、外鋼管の上端を杭上端よりも下方に位置させると荷重伝達が不十分になるので好ましくない。
このように先行文献1に記載のものでは外鋼管の上端位置を杭上端位置と一致させる必要があり、それ故に外鋼管は杭上端から下方に延びる所定の長さを有することが必須となる。
このように外鋼管が所定の長さを有することが必須となることから、先行文献1の鋼管杭頭部の接合構造では以下のような問題がある。
【0007】
杭の高止り、低止り、杭芯ずれなどの施工誤差が生じた場合、それに対する対応が難しい。以下、この点を具体的に説明する。
(a)杭が高止りした場合であっても、外鋼管の上端を杭上端に一致させなければならず、そのようにすると定着筋が上方に延出しすぎるため上部の鉄筋コンクリート構造物の配筋との取り合いに不具合が生ずる可能性がある。その場合に定着鉄筋の長さを調整することも考えられるが、そうすると荷重伝達が不十分になる可能性がある。
(b)他方、杭が低止りしたような場合には、外鋼管の上端を杭上端よりも上方に延出させることができず杭上端に一致させなければならないため、地盤の掘削をしなければならないと共に定着筋の長さが不足して荷重伝達が不十分になるという危険がある。
(c)また、杭芯ずれが生じた場合には、外鋼管と鋼管杭との間でずれを吸収することになるが、特許文献1の構造では定着部材が杭側に張り出しているため、外鋼管と鋼管杭との隙間でずれを吸収するだけの余裕がなく対応できない。また、杭芯ずれの他の態様として杭が斜めになったような場合には、外鋼管と杭との隙間が上下で不均等になり荷重伝達が不確実になるという危険もある。
このように、特許文献1のものでは、杭の施工誤差の影響を受けるという問題がある。
【0008】
また、先行文献1のものでは、外鋼管の周面に定着筋を溶接し、また定着部材を外鋼管の下端部に固定したりしなければならず、予め組み立てる部材が多く、製作に手間がかかるという問題がある。
さらに、外鋼管が所定の長さを必要としていることから、全体の形状が大きくなり現場までの運搬や現場でのハンドリングが容易でないという問題もある。
【0009】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、杭の高強度化に伴う杭頭反力増大に対応した高強度でかつ施工の容易な杭頭結合構造及びその施工方法を提供することを目的としている。
また、杭の高止り、低止り、杭芯ずれなどの杭の施工誤差によって施工の影響を受けず、製作が容易で、ハンドリングにも優れる杭頭結合構造及びその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る杭頭結合構造は、少なくとも杭頭部に鋼管部を有する杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造であって、前記鋼管部に設けたずれ止めと、前記鋼管部に挿通され、かつ前記ずれ止めよりも下方に配置されたリング部材と、該リング部材に下端部が接合され、上端部が前記杭頭部より上方に延出する定着鉄筋と、該定着鉄筋と前記リング部材を含む前記杭頭部に打設されたコンクリートとを有し、平面視で前記リング部材の一部が前記定着鉄筋よりも張り出していることを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記リング部材の上端面から最下段に設置された前記ずれ止めの下端位置までの距離H(mm)が下式を満たすように前記リング部材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の杭頭結合構造。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
【0012】
(3)上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記リング部材の幅W(mm)が下式を満たすことを特徴とするものである。
W≧t×s
但し、t:ずれ止め高さ(mm)
s:ずれ止めの段数
【0013】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記リング部材の中心と前記鋼管杭の杭芯が一致していることを特徴とするものである。
【0014】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記リング部材に水平方向に貫通する貫通孔を設けると共に前記定着鉄筋の下端部にボルト接合用の孔を有する接合板を設け、該接合板と前記リング部材とをボルト及びナットによって接合することで、前記定着鉄筋の下端部をリング部材に接合したことを特徴とするものである。
【0015】
(6)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記リング部材に上下方向に貫通する貫通孔を設けると共に前記定着鉄筋の下端部にねじ部を設け、該定着鉄筋の下端部を前記貫通孔に挿通させて定着ナットによって締結することで、前記定着鉄筋の下端部をリング部材に接合したことを特徴とするものである。
【0016】
(7)本発明に係る杭頭結合構造の施工方法は、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の杭頭結合構造の施工方法であって、前記杭を打設する杭打設工程と、前記リング部材を前記鋼管部に挿通して前記ずれ止めよりも下方になるように設置するリング部材設置工程と、該リング部材に定着鉄筋の下端部をボルト接合する定着鉄筋接合工程と、杭頭部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
(8)また、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の杭頭結合構造の施工方法であって、前記杭を打設する杭打設工程と、前記リング部材に定着鉄筋の下端部をボルト接合する定着鉄筋接合工程と、定着鉄筋が接合されたリング部材を前記鋼管部に挿通して前記ずれ止めよりも下方になるように設置するリング部材設置工程と、杭頭部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、杭頭部の鋼管部に設けたずれ止めと、前記鋼管部に挿通され、かつ前記ずれ止めよりも下方に配置されたリング部材と、該リング部材に下端部が接合され、上端部が前記杭頭部より上方に延出する定着鉄筋と、該定着鉄筋と前記リング部材を含む前記杭頭部に打設されたコンクリートとを有し、平面視で前記リング部材の一部が前記定着鉄筋よりも張り出しているようにしたので、前記リング部材の張り出し部が支圧部として機能し、杭の高強度化に伴う杭頭反力増大に対応した高強度でかつ、杭の施工誤差による施工の影響を受けず、製作が容易な杭頭結合構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図2】図1における矢視A−A線に沿う断面図であって、鋼管杭周囲のコンクリートを省略して示した図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の説明図であって、各部材の配置関係を説明する図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る杭頭結合構造の説明図であって、各部材の配置関係を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図6】図5における矢視B−B線に沿う断面図であって、鋼管杭周囲のコンクリートを省略して示した図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る杭頭結合構造の他の態様の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図10】図9における矢視C−C線に沿う断面図であって、鋼管杭周囲のコンクリートを省略して示した図である。
【図11】本発明の実施の形態4の他の態様に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図12】図11における矢視D−D線に沿う断面図であって、鋼管杭周囲のコンクリートを省略して示した図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図14】本発明の実施の形態6に係る杭頭結合構造の説明図である。
【図15】本発明の実施の形態7に係る杭頭結合構造の施工方法の説明図である。
【図16】本発明の実施の形態7に係る杭頭結合構造の施工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態1]
図1乃至図4に基づいて本発明の実施の形態1を説明する。
本発明の実施の形態1に係る杭頭結合構造は、図1乃至図4に示すように、鋼管杭1と鉄筋コンクリート構造物である基礎梁3とを結合する杭頭結合構造であって、鋼管杭1の杭頭部に設けた2段のずれ止め5a、5bと、鋼管杭1の杭頭部に挿通され、かつ下段のずれ止め5bよりも下方に配置されたリング部材7と、リング部材7に下端部が接合され、上端部が杭頭部より上方に延出する定着鉄筋9と、定着鉄筋9とリング部材7を含む杭頭部に打設されたコンクリート11とを有し、平面視でリング部材7の一部が鉄筋よりも張り出していることを特徴とするものである。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0021】
<鋼管杭>
鋼管杭1の杭頭内部には、図2に示すように、コンクリート12を充填してもよいし、あるいはコンクリートを充填しないものでもよい。
なお本実施の形態では鋼管杭1を例に挙げているが、本発明が対象としている杭は鋼管杭1に限らず少なくとも杭頭部に鋼管を有していれば杭頭部以外の下部構造は鋼管でないような杭や、杭内部の全長に亘ってコンクリートを充填した杭であってもよい。例えば、杭頭部に鋼管を巻いた耐震場所打コンクリート杭(通称TB杭)や、高強度コンクリートを鋼管の中空部に注入し、遠心締固めによって製造した鋼管コンクリート杭(SC杭)などが挙げられる。
【0022】
<基礎梁>
基礎梁3は、本発明の鉄筋コンクリート構造物に相当するものである。基礎梁3には下端筋14が配筋されている。
なお、本発明の鉄筋コンクリート構造物は、鋼管杭1と直接結合する部分を指している。したがって、鋼管杭1と直接結合される部分が鉄筋コンクリート構造物であれば、その上部構造物が例えば鉄骨造などの鉄筋コンクリート構造物ではない構造物であってもよい。
【0023】
<ずれ止め>
ずれ止め5a、5bは、杭頭部に設けられてコンクリート11を介してリング部材7との間で力の伝達を行なう部材である。ずれ止め5a、5bは、本実施の形態では、図1に示されるように、2段設けているがこれに限られるものではなく1段でもよく、あるいは3段以上でもよい。最上段のずれ止め5aは端板を杭径外に張り出させたものでもよいし、杭周面に固定したリング部材7でもよい。なお、本実施の形態における2段目のずれ止め5bはリング部材7を杭周面に固定したものである。
【0024】
ずれ止め5a、5bの形態は上記のような端板やリング部材7に限定されるものではく、例えば杭頭周面に形成した凹凸のようなものであってもよい。
【0025】
<リング部材>
リング部材7は、鋼管杭1の杭頭部に挿通され、ずれ止め5bよりも下方に配置されてコンクリート11を介してずれ止め5a、5bとの間で力の伝達を行なう部材である。
このように、リング部材7がずれ止め5a、5bとの間で応力伝達するためには、平面視でリング部材7の一部が鉄筋よりも張り出していることを要する。本実施の形態では、図1、図2に示されるように、リング部材7の上面が定着鉄筋9に対して杭中心方向及び杭周方向に張り出している。
【0026】
リング部材7の上端面から2段目のずれ止め5bの下端位置までの距離をH(図3参照)とすると、H(mm)が下式を満たすようにリング部材7を配置するのが好ましい。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
【0027】
Hの値を上記のように設定することにより、ずれ止め5a、5bとリング部材7との間での応力伝達を十分なものにすることができる。
【0028】
また、リング部材7の幅をW(図4参照)とすると、W(mm)が下式を満たすことが好ましい。
W≧t×s
但し、t:ずれ止め高さ(mm)
s:ずれ止めの段数
【0029】
Wが上式を満たすようにすることで、ずれ止め5a、5bとリング部材7間での応力伝達を十分なものにすることができる。
【0030】
リング部材7の水平方向位置は、ずれ止め5a、5bとリング部材7間の応力伝達で弱点箇所を作らないために、杭芯とリング部材7の中心が合致することが望ましい。
なお、リング部材7の径を大きくすることは可能であるが、その分、リング部材7の設置深さを深くする必要があり、定着鉄筋長やコンクリート打設量が大きくなって不経済になることが考えられる。そこで、リング部材7の内径Dinは杭径φの2倍程度以内とするのが望ましい。
【0031】
リング部材7の高さについては特に限定されるものではなく、定着鉄筋9から引張力を受けたときに定着鉄筋9との接合部が破壊せず、かつその際の支圧に抵抗できる強度を有する限り、特許文献1に記載の外鋼管のような長さを必要としない。リング部材7において通常想定できる高さとしては、100mm〜150mm程度であるが、さらに高強度を要求される場合には200mm〜300mm程度の場合も有り得る。
【0032】
<定着鉄筋>
定着鉄筋9はその下端部がリング部材7にボルト接合されている。具体的には、リング部材7に水平方向に貫通する貫通孔を設けると共に定着鉄筋9の下端部にボルト接合用の孔を有する接合板13を設け、接合板13とリング部材7とをボルト15及びナット17によって接合することで、定着鉄筋9の下端部をリング部材7に接合している。
【0033】
上記のように構成された本実施の形態においては、リング部材7が鉄筋固定部材であると共にずれ止め5a、5bとの間で応力伝達を行う支圧部材として機能し、高強度の杭頭結合構造を実現できる。
また、本実施の形態のリング部材7はその高さが特許文献1に記載の外鋼管よりも著しく小さいので、杭の高止り、低止りなどの杭の施工誤差に対して、より自由な位置にリング部材7を配置して対処することができ、杭の施工誤差の影響を受けない。
【0034】
また、本実施の形態においては、杭径よりも径の大きいリング部材7に定着鉄筋9を固定したことにより、定着鉄筋9の配筋径を大きくできる。このことにより杭頭結合部の断面性能(径の2乗に比例)が向上するため、杭頭部に作用する曲げモーメントに対する抵抗力(強度)が増し、鋼管杭の高強度化に伴う杭頭反力増大に対応した「杭頭結合構造」を得ることができる。
【0035】
さらに、配筋径が大きくなることにより隣り合う定着鉄筋9の間隔が大きくとれることから施工が容易になり、また過密配筋となりやすい基礎梁(フーチング)に定着鉄筋9が緩衝しないように鉄筋位置を調整することも可能である。
この点、特許文献1に示した外鋼管を用いるものでも外鋼管の径を大きくすることは可能ではあるが、外鋼管が所定の長さを必要としていることから外鋼管の径を大きくすると外鋼管が大きくなり、運搬やハンドリングが大変になるが、本実施の形態では上下方向に大きな長さを必要としないリング部材7を用いているのでそのようなことがない。
【0036】
また、本実施の形態ではリング部材7と定着鉄筋9を主要な構成要素としているシンプルな構造であることから施工が簡略化でき、かつ経済性に優れた「杭頭結合構造」となっている。
さらにまた、本実施の形態においては、定着鉄筋9とリング部材7とをボルト接合しているので、現場溶接が不要となり、現場溶接で生ずるような溶接不良が発生しないので、品質信頼性の高い「杭頭結合構造」ともなっている。
【実施例】
【0037】
本実施の形態の実施例として、以下に示す仕様で杭頭結合構造を実施した。
配筋径D(図1参照)=1640mm
鋼管杭径φ=1000mm
リング部材の外径:1600mm、内径:1520mm、断面形状:120mm(高さ)×40mm(幅)
定着鉄筋:D32-14本
ボルト・ナット:M33
【0038】
上記の実施例と同等の強度を有する杭頭結合構造を、前述した道路橋示方書に記載の方法Bによって実現したものと比較すると、鉄筋量を約45%程度まで削減できるとともに、隣り合う鉄筋間隔を4倍程度まで広げることができた。このことから、本実施例の杭頭結合構造がコスト面及び施工面において優れた構造であることが分かる。
【0039】
[実施の形態2]
図5、図6は本発明の実施の形態2に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1、図2と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。なお、図6は図5の矢視B−B線に沿う断面図であって、鋼管杭1周囲のコンクリート11を省略して示した図である。
本実施の形態においては、リング部材7の下面に型枠兼荷重伝達部材として機能するドーナツ状板19を設置したものである。
ドーナツ状板19を設けることにより、コンクリート打設時の型枠を簡略化できると共にずれ止め5a、5bとリング部材7間の応力伝達をより十分なものにすることができる。
【0040】
[実施の形態3]
図7は本発明の実施の形態3に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1、図2と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態においては、リング部材7に上下方向に貫通する貫通孔を設けると共に定着鉄筋9の下端部にネジ部21を設け、定着鉄筋9の下端部を貫通孔に挿通させてリング部材7の上下を定着ナット23a、23bによって締結したものである。
このようにすることで、部材点数を省略することができる。
【0041】
なお、図7に示した杭頭結合構造における上側の定着ナット23aは主としてリング部材7の位置決めを確実に行なうという機能を有し、下側の定着ナット23bは引き抜き力に抵抗する機能を有しているが、上側の定着ナット23aを省略して図8に示すような構造にしてもよい。
図8に示す構造にすれば、さらに部品点数を減らすことができる。
【0042】
[実施の形態4]
図9、図10は本発明の実施の形態4に係る杭頭結合構造の説明図であり、図8と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。なお、図10は図9の矢視C−C線に沿う断面図であって、鋼管杭1周囲のコンクリート11を省略して示した図である。
本実施の形態においては、図8に示した定着ナット23bとリング部材7との間に型枠兼荷重伝達部材として機能するドーナツ状板19を設置したものである。
ドーナツ状板19を設けることにより、コンクリート打設時の型枠を簡略化できると共にずれ止め5a、5bとリング部材7間の応力伝達をより十分なものにすることができる。
【0043】
なお、図11及び図11の矢視D−D線に沿う断面図であって、鋼管杭1周囲のコンクリート11を省略して示した図12に示すように、ドーナツ状板19に代えて矩形状の支圧板25をリング部材7の上面の各定着鉄筋設置部に設けるようにしてもよい。
【0044】
[実施の形態5]
図13は本発明の実施の形態5に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態においては、リング部材7を囲むように杭頭部にフープ筋27を設置したものである。フープ筋27を設置することにより、基礎梁3から鋼管杭1への荷重伝達能力を高めることができる。
【0045】
[実施の形態6]
図14は本発明の実施の形態6に係る杭頭結合構造の説明図であり、図1と同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態においては、リング部材7を囲むように杭頭部に鋼管29を設置したものである。鋼管29を設置することにより、コンクリート打設時の型枠として使用できると共にコンクリート打設後もコンクリート拘束部材として利用でき、基礎梁3から鋼管杭1への荷重伝達能力を高めることができる。
【0046】
[実施の形態7]
図15、図16は図1に示した杭頭結合構造の施工方法の説明図である。以下、図15、図16に基づいて本実施の形態を説明する。
鋼管杭1を地盤31に打設する(図15(a))。次に、リング部材7を杭頭部の所定位置に配置する(図15(b))。所定位置とは、実施の形態1で説明したように、リング部材7の上端面から2段目のずれ止め5bの下端位置までの距離H(mm)が下式を満たすような位置である。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
リング部材7を設置する際には、リング部材7の配置位置を正確にするために地盤31上に敷設板32を設置するのが好ましい。
【0047】
なお、リング部材7の設置に際して、リング部材7の杭頭部に対する上下方向の配置の自由度が高いので、仮に杭が高止りしたり、低止りしたりした場合であっても、杭頭部に対して最適の位置に設置することができる。また、杭芯がずれた場合であっても、リング部材7の鋼管杭1に対する水平方向の自由度が高いので、リング部材7を基礎梁3に対して最適位置に配置することができる。
【0048】
リング部材7を設置後、定着鉄筋9をボルト・ナットによってリング部材7に接合する(図15(c))。リング部材7、定着鉄筋9を囲むように型枠33を設置してコンクリート11を打設する(図16(d))。コンクリート11が固化した後、基礎梁3の配筋を行い、基礎梁のコンクリートを打設する(図16(e))。
【0049】
本実施の形態によれば、杭の施工誤差に影響されることなく確実な応力伝達できる杭頭結合構造を実現できる。
【0050】
なお、上記の実施の形態7においてはリング部材7と定着鉄筋9を現場で接合する例を示したが、リング部材7と定着鉄筋9を工場などで予め一体化しておき、現場において鋼管杭1の杭頭部に挿入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼管杭
3 基礎梁
5a、5b ずれ止め
7 リング部材
9 定着鉄筋
11 コンクリート
12 コンクリート
13 接合板
14 下端筋
15 ボルト
17 ナット
19 ドーナツ状板
21 ねじ部
23a、23b 定着ナット
25 支圧板
27 フープ筋
29 鋼管
31 地盤
32 敷設板
33 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも杭頭部に鋼管部を有する杭と鉄筋コンクリート構造物とを結合する杭頭結合構造であって、
前記鋼管部に設けたずれ止めと、前記鋼管部に挿通され、かつ前記ずれ止めよりも下方に配置されたリング部材と、該リング部材に下端部が接合され、上端部が前記杭頭部より上方に延出する定着鉄筋と、該定着鉄筋と前記リング部材を含む前記杭頭部に打設されたコンクリートとを有し、平面視で前記リング部材の一部が前記定着鉄筋よりも張り出していることを特徴とする杭頭結合構造。
【請求項2】
前記リング部材の上端面から最下段に設置された前記ずれ止めの下端位置までの距離H(mm)が下式を満たすように前記リング部材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の杭頭結合構造。
H≧Din-φ
但し、Din:リング部材の内径(mm)
φ :鋼管杭の杭径(mm)
【請求項3】
前記リング部材の幅W(mm)が下式を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の杭頭結合構造。
W≧t×s
但し、t:ずれ止め高さ(mm)
s:ずれ止めの段数
【請求項4】
前記リング部材の中心と前記鋼管杭の杭芯が一致していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭頭結合構造。
【請求項5】
前記リング部材に水平方向に貫通する貫通孔を設けると共に前記定着鉄筋の下端部にボルト接合用の孔を有する接合板を設け、該接合板と前記リング部材とをボルト及びナットによって接合することで、前記定着鉄筋の下端部をリング部材に接合したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭頭結合構造。
【請求項6】
前記リング部材に上下方向に貫通する貫通孔を設けると共に前記定着鉄筋の下端部にねじ部を設け、該定着鉄筋の下端部を前記貫通孔に挿通させて定着ナットによって締結することで、前記定着鉄筋の下端部をリング部材に接合したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭頭結合構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の杭頭結合構造の施工方法であって、前記杭を打設する杭打設工程と、前記リング部材を前記鋼管部に挿通して前記ずれ止めよりも下方になるように設置するリング部材設置工程と、該リング部材に定着鉄筋の下端部をボルト接合する定着鉄筋接合工程と、杭頭部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備えたことを特徴とする杭頭結合構造の施工方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の杭頭結合構造の施工方法であって、前記杭を打設する杭打設工程と、前記リング部材に定着鉄筋の下端部をボルト接合する定着鉄筋接合工程と、定着鉄筋が接合されたリング部材を前記鋼管部に挿通して前記ずれ止めよりも下方になるように設置するリング部材設置工程と、杭頭部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを備えたことを特徴とする杭頭結合構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−12520(P2011−12520A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160182(P2009−160182)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】