説明

板ガラス管理方法

【課題】高温、高圧で処理される板ガラス製品の生産、出荷、回収工程において板ガラスを適切に管理することができる板ガラス管理方法を提供する。
【解決手段】ガラス素板から所定の大きさの板ガラス1を切り出す切断工程(ステップS1)と、切り出した板ガラス1に熱履歴を与える曲げ工程(ステップS4)とを有する板ガラス11の生産工程、生産した板ガラス製品を出荷する出荷工程及び使用済み板ガラスを回収する回収工程における板ガラス1を管理する方法であって、切断工程(ステップS1)後の板ガラス1の端面に耐熱性及び耐候性塗料を用いてカラーコード2を印刷し、カラーコード2に対応させて各板ガラス1に関する個別情報を管理し、個別情報に基づいて板ガラス1に所定の処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス管理方法に関し、特に、自動車又は建築用として適用される板ガラス製品の生産、出荷、回収工程における板ガラスを個別に管理する板ガラス管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者のニーズの多様化に対応して各種製品の多品種、多機能化が進められており、各種製品の生産工程、出荷工程等における製品管理、商品管理の重要性はますます高まっている。
【0003】
小売業、流通業等における商品管理においては、例えば一次元バーコードが広く採用されている。また、より多くの情報を付加することを目的として、例えばQR(クイックレスポンス)コード等の二次元バーコードの開発が進められ、実用化されている。このようなバーコードは、白地に黒色バーを印刷したものが主流であるが、近年、カラーバーコードの開発も進められている。
【0004】
カラーバーコードに関する従来技術を開示する文献として、例えば特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、所定数の色のバーを混色させて形成したバーコードであって、所定数の色の全てを混色させたとき以外は黒色とならない色で構成されたカラーバーコードが開示されている。このカラーバーコードによれば、単色だけでなく混色を用いて印刷されたバーの色をも検出できるようにし、これによって多値又は多重に書き込まれた情報を読み取ることができるということである。
【0006】
また、特許文献2には、背景が白色の上に、シアン、マゼンタ、イエローから選ばれた色又はそれらの混合色で記録されたカラーバーコードが開示されており、このカラーバーコードによれば、3色のバーコードを合成することにより、従来のバーコードに比べて多くの情報密度を確保できるということである。
【0007】
一方、製品管理を目的とした従来技術を開示する文献として、例えば特許文献3が挙げられる。特許文献3は、ガラス基板へのマーキング方法に関するものであり、波長500〜980nmのレーザビームをカラーフィルタ付ガラス基板に照射してカラーフィルタを溶融し、これによってカラーフィルタの表面形状を変化させてガラス基板にマーキングする方法を開示している。このマーキング方法によれば、発塵がなく、クリーンルーム内のクリーン度を低下させることなくマーキングを施すことができるということである。
【0008】
また、製品管理を目的とする別の従来技術を開示する文献として、例えば特許文献4が挙げられる。特許文献4は、ガラス製品管理用ラベルの固着方法に関するものであり、ガラス製品の表面に、管理情報を記録した印刷物を、フェノキン樹脂を主成分とする材料によって固着させる方法を開示している。このラベル固着方法によれば、ラベルに耐久性が付与され、アルカリ洗浄工程においても脱落を回避できるということである。
【特許文献1】特開平05−174204号公報
【特許文献2】特開平08−096097号公報
【特許文献3】特開2001−199747号公報
【特許文献4】特開平07−248728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術は、被管理製品への識別コードの印刷もしくは貼着方法又は位置、印刷又は貼着された識別コードの耐久性等を考慮した場合、大面積の平板状であって、高温、高圧で処理される板ガラス製品の製造、出荷、回収工程における板ガラスの管理に適用することは困難である。
【0010】
すなわち、例えば自動車用の板ガラスは、同じ車種においてもグレードやオプション選択に基づいてガラスの機能、特性が大きく異なる一方、形状が同一であることから、多種多様のガラスの品種が存在し、これらの特性等を特定し、管理することは困難である。また、建築用ガラスにおいても防犯を目的とした合わせガラスの採用、保温目的、結露対策、デザイン性等を考慮した多機能化が進んでいるものの、外見上大きな差異がない場合もあり、個々のガラス製品における品種、特性等を正確に判別し、管理することは必ずしも容易ではない。
【0011】
また、バーコードの読み取りは光学式であり、製品に付与されたIDを判断する際、バーコードに光を照射できる環境が必要となる。ところが、板ガラスのように1枚1枚が、薄く、数ミリ間隔で収容される製品にバーコードを付与することは困難であり、例え付与できたとしてもその読み取りが困難となる。さらに、板ガラス生産工程においては、例えば600℃以上の高温処理工程があり、識別コードの耐熱性、耐久性等の問題もある。
【0012】
このような背景の下、読み取り技術を改良し、非接触に識別子を解読する自動認識技術を利用した製品管理システムが開発されている。しかしながら、このような、いわゆるRFID(Radio Frequency Identification)を利用した製品管理方法は、ロケーション管理に適しているとは言えず、また、ICチップの耐薬品性又は耐久性が不十分であること、及び周辺装置が高価であり、使用環境によって電波特性が変化する等の問題もある。
【0013】
本発明の目的は、高温、高圧で処理され、天日に曝されることがある板ガラス製品の生産、出荷、回収工程において板ガラスを適切に管理することができる板ガラス管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載の板ガラス管理方法は、ガラス素板から所定の大きさの板ガラスを切り出す切断工程と、切り出した板ガラスに熱履歴を与える熱処理工程とを含む板ガラス製品の生産工程における前記板ガラスを管理する方法であって、前記切断工程後の板ガラスの可視部に耐熱性材料を用いて識別コードを付与し、前記識別コードに対応させて各板ガラスに関する個別情報を記憶し、該個別情報に基づいて前記板ガラスに所定の処理を施すことを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の板ガラス管理方法は、請求項1記載の板ガラス管理方法において、前記耐熱性材料は、耐水性及び耐薬品性を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の板ガラス管理方法は、製品板ガラスを出荷する板ガラス出荷工程及び/又は使用済み板ガラスを回収する板ガラス回収工程における前記板ガラスを管理する方法であって、前記板ガラスの可視部に耐候性材料を用いて識別コードを付与し、前記識別コードに対応させて各板ガラスに関する個別情報を記憶し、該個別情報に基づいて前記板ガラスに所定の処理を施すことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の板ガラス管理方法は、請求項3記載の板ガラス管理方法において、前記耐候性材料は、耐水性及び耐薬品性を有することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の板ガラス管理方法は、ガラス素板から所定の大きさの板ガラスを切り出す切断工程と、切り出した板ガラスに熱履歴を与える熱処理工程とを含む生産工程によって板ガラス製品を生産し、生産した板ガラスを出荷し、使用済み板ガラスを回収する板ガラス製品の生産、出荷、回収工程における板ガラスを管理する方法であって、前記切断工程後の板ガラスの可視部に耐熱性及び耐候性材料を用いて識別コードを付与し、前記識別コードに対応させて各板ガラスに関する個別情報を記憶し、該個別情報に基づいて前記板ガラスに所定の処理を施すことを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の板ガラス管理方法は、請求項5記載の板ガラス管理方法において、前記耐熱性及び耐候性材料は、耐水性及び耐薬品性を有することを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の板ガラス管理方法は、請求項1、2及び請求項5、6のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記生産工程は、前記板ガラスを洗浄する洗浄工程、前記板ガラスにマスキング材又はアンテナ用もしくはセンサ用の導電体を印刷する印刷工程、前記板ガラスに曲げを施す曲げ工程、前記板ガラスの強度を増大させる強化工程、複数の前記板ガラスを貼り合わせる合わせ工程、前記板ガラスの状態を検査する検査工程及び前記板ガラスに付加価値を付与するアッセンブリ工程のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項8記載の板ガラス管理方法は、請求項7記載の板ガラス管理方法において、前記強化工程において、前記識別コードに対応して記憶された個別情報に基づく強化処理を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項9記載の板ガラス管理方法は、請求項7記載の板ガラス管理方法において、前記合わせ工程において、前記識別コードに基づいて前記板ガラスを貼り合わせる際の位置決め又は位置ずれの検出を行うことを特徴とする。
【0023】
請求項10記載の板ガラス管理方法は、請求項7又は9記載の板ガラス管理方法において、前記合わせ工程において、前記貼り合わせられる板ガラス相互間に配置される中間膜の可視部に前記識別コードと同様の識別コードが付与されていることを特徴とする。
【0024】
請求項11記載の板ガラス管理方法は、請求項9又は10記載の板ガラス管理方法において、前記貼り合わせられた複数の板ガラス及び/又は中間膜に印刷された前記識別コードの組み合わせに基づいて合わせガラスの個別情報を管理するか又は新たな識別コードを付与することを特徴とする。
【0025】
請求項12記載の板ガラス管理方法は、請求項3乃至6の何れか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記出荷工程において、前記板ガラスの搬送はパレットを用いて行われ、前記パレットに載置した複数の板ガラスを前記識別コードに基づいてロケーション管理することを特徴とする。
【0026】
請求項13記載の板ガラス管理方法は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記回収工程は、納品先、製造元、品種又は組成別に使用済み板ガラスを回収する分別回収工程、合わせガラスから中間膜を回収する中間膜回収工程、
板ガラスのアンテナ用又はセンサ用導電体から導電体を回収する導電体回収工程
回収した板ガラス、中間膜又は導電体を再利用するリユース工程、及び回収した板ガラスを原料として使用するリサイクル工程のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0027】
請求項14記載の板ガラス管理方法は、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記可視部は、前記板ガラス又は中間膜の端部側面及び/又は端部側面に近接する主表面であることを特徴とする。
【0028】
請求項15記載の板ガラス管理方法は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記板ガラス製品の生産、出荷、回収工程における少なくとも一つの工程において、前記識別コードの読み取り、及び読み取り結果に対応する情報に応じて施された処理に関する情報の書き込みを行うことを特徴とする。
【0029】
請求項16記載の板ガラス管理方法は、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記識別コードは、着脱自在であることを特徴とする。
【0030】
請求項17記載の板ガラス管理方法は、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法において、前記識別コードは、カラーコードであり、前記カラーコードの読み取りは、画像読み取り装置を用いて行うことを特徴とする。
【0031】
請求項18記載の板ガラス管理方法は、請求項17記載の板ガラス管理方法において、前記カラーコードにおいて使用される色に基づいて前記板ガラスの個別情報を管理することを特徴とする。
【0032】
請求項19記載の板ガラス管理方法は、請求項18記載の板ガラス管理方法において、前記個別情報は、品種情報及び/又は品質情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
請求項1記載の板ガラス管理方法によれば、板ガラス製品の生産工程において、切断工程後の板ガラスの可視部に耐熱性材料を用いて識別コードを付与し、この識別コードに基づいて各板ガラスに関する個別情報を記憶させ、個別情報に基づいて板ガラスに所定の処理を施すようにしたので、高温、高圧で処理される板ガラスを適切に管理することができる。また、例えば特定の処理工程において不具合が生じた場合であっても、識別コードごとに対応づけられた個別情報に基づいて原因の究明、不具合回避のための措置等を講ずることができ、また、多種多様の板ガラスを個別に管理してその生産効率を向上させることができる。
【0034】
請求項2記載の板ガラス管理方法によれば、耐熱性材料が、耐水性及び耐候性を有するので、上記発明の効果に加え、高温処理工程後のアルコール洗浄等においても識別コードが脱落、損傷等することがない。
【0035】
請求項3記載の板ガラス管理方法によれば、板ガラスの出荷工程及び/又は回収工程において、板ガラスの可視部に耐候性材料を用いて識別コードを印刷し、この識別コードに基づいて各板ガラスに関する個別情報を記憶させ、個別情報に基づいて板ガラスに所定の処理を施すようにしたので、板ガラスを適切に管理することができる。
【0036】
請求項4記載の板ガラス管理方法によれば、耐候性材料が、耐水性及び耐候性を有するので、上記発明の効果に加え、各処理工程にける識別コードの脱落、損傷等を回避することができる。
【0037】
請求項5記載の板ガラス管理方法によれば、板ガラス製品の生産、出荷、回収工程において、板ガラスの可視部に耐熱性及び耐候性材料を用いて識別コードを印刷し、この識別コードに基づいて各板ガラスに関する個別情報を記憶させ、個別情報に基づいて板ガラスに所定の処理を施すようにしたので、板ガラスを適切に管理することができる。
【0038】
請求項6記載の板ガラス管理方法によれば、耐熱性及び耐候性材料が、耐水性及び耐候性を有するので、上記発明の効果に加え、各処理工程にける識別コードの脱落、損傷等を回避することができる。
【0039】
請求項7記載の板ガラス管理方法によれば、生産工程が各種工程を含むので、上記発明の効果に加え、各種生産工程における板ガラスを適切に管理することができる。
【0040】
請求項8記載の板ガラスの管理方法によれば、強化工程において識別コードに対応する個別情報に基づいて強化処理を施すようにしたので、上記発明の効果に加え、各板ガラスごとに適切な処理を施して高品質の強化ガラスを得ることができる。
【0041】
請求項9記載の板ガラス管理方法によれば、合わせ工程において、識別コードに基づいて、板ガラスを貼り合わせる際の位置決め又は位置ずれの検出を行うようにしたので、上記発明の効果に加え、合わせガラスの品質が向上し、歩留まり率が向上する。
【0042】
請求項10記載の板ガラス管理方法によれば、前記合わせ工程において、板ガラス相互間に配置される中間膜の可視部に識別コードが付与されているので、上記発明の効果に加え、合わせガラスのガラス部分が割れ、紛失等した場合であっても、中間膜に付与された識別コードで管理することができる。
【0043】
請求項11記載の板ガラス管理方法によれば、合わせガラスを形成する複数の板ガラス及び/又は中間膜に付与された識別コードの組み合わせに基づいて合わせガラスの個別情報を管理するか又は新たな識別コードを付与するようにしたので、上記発明の効果に加え、合わせガラスに関する多くの個別情報を有効に管理することができる。
【0044】
請求項12記載の板ガラス管理方法によれば、複数の板ガラスを識別コードに基づいてロケーション管理するようにしたので、上記発明の効果に加え、商品の日付管理や出荷作業のスピードアップを図ることができる。
【0045】
請求項13記載の板ガラス管理方法によれば、回収工程が各種工程を含むので、上記発明の効果に加え、各種回収工程における板ガラスを適切に管理することができる。
【0046】
請求項14記載の板ガラス管理方法によれば、識別コードが印刷される可視部を、板ガラス又は中間膜の端部表面及び/又は端部表面に近接する主表面としたので、上記発明の効果に加え、板ガラスに付与された識別コードを、板ガラスの向きを変えることなく正確に読み取ることができると共に、ガラスが損傷等した場合であっても有効に管理することができる。
【0047】
請求項15記載の板ガラス管理方法によれば、板ガラス製品の生産、出荷、回収工程における少なくとも一つの工程において、識別コードの読み取り、及び読み取り結果に対応する情報に応じて施された処理に関する情報の書き込みを行うようにしたので、上記発明の効果に加え、板ガラスの個別情報を有効に管理、利用することができる。
【0048】
請求項16記載の板ガラス管理方法によれば、前記識別コードを着脱自在としたので、上記発明の効果に加え、一旦付与した識別コードを必要に応じて取り去り、また中間の工程において新たに識別コードを付与する等、識別コードの適用範囲が拡がって板ガラスをより有効に管理することができる。
【0049】
請求項17記載の板ガラス管理方法によれば、識別コードとして、カラーコードを用い、カラーコードの読み取りを画像読み取り装置を用いて行うようにしたので、上記発明の効果に加え、特別な読み取り装置を新設することなく、板ガラス管理を簡素化することができる。
【0050】
請求項18記載の板ガラス管理方法によれば、カラーコードにおいて使用される色に基づいて板ガラスの個別情報を管理するようにしたので、上記発明の効果に加え、カラーコードの位置又は基本となる色の組み合わせに意味づけを行うことができ、作業者の目視判定に利用することができる。
【0051】
請求項19記載の板ガラス管理方法によれば、個別情報を、品種情報及び/又は品質情報としたので、上記発明の効果に加え、異品種の混入の検出、品質に適合した有効な処理等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳述する。
【0053】
図1は、強化ガラスの生産・出荷工程を示すフローチャートである。
【0054】
図1において、強化ガラスを生産する際は、先ず、ガラス素板を所定の大きさに切断し、端面処理を行う(ステップS1)。端面処理が施された板ガラスは、洗浄工程に搬送され、洗浄される(ステップS2)。図2は、洗浄工程を示す説明図である。図2において、板ガラス1は、例えば上下に一対配置された洗浄ブラシ6相互間に供給され、例えば60℃の水を噴射しつつブラッシングされ、これによって異物の洗い落としが行われる。異物の洗い落とし後、例えば再度水を吹きかけてすすぎ洗いが施される。
【0055】
次いで、洗浄処理を施した板ガラスの可視部、例えばその厚さを規定する端部側面(以下、単に「端面」という)又は/及びこの端面に隣接する主表面に、識別コードとして複数の色を組み合わせたカラーコードを例えば印刷によって付与する(ステップS3)。なお、主表面とは、板ガラスの表面又は裏面をいい、端面と区別する概念である。
【0056】
図3は、端面にカラーコードが印刷された板ガラスを示す図である。図3において、長方形に切断された板ガラス1の上部端面に、所定面積に印刷された例えば黄、赤、青、黄、赤、青からなるカラーコード2が印刷されている。
【0057】
板ガラス1の保管及び搬送には、通常パレットが使用されるので、板ガラス1の主表面のみに管理情報、識別子等を印刷した場合は視認性が悪く、容易に判別することができない。また、ガラス製品の生産ラインにおいて、板ガラスは通常、平置き状態で移動することが多いので、主表面に識別子を印刷した場合は鏡面反射によってその判別が困難となる。また、主表面に識別子を印刷することはその大きさによっては商品価値を低下させる原因となる場合があり、制約を受ける。従って、本実施の形態においては、板ガラス1の端面に識別子としてのカラーコード2を印刷する。
【0058】
カラーコード印刷用の材料として、耐熱性材料が使用されるが、生産工程のみならず、出荷工程、回収工程をも考慮すると、耐熱性及び耐候性材料を用いることが好ましい。耐熱性及び耐候性材料としては、例えば、耐熱性及び耐候性の印刷インクが用いられるが、耐熱性及び耐候性のシールを適用した粘着物を貼り付けることもできる。耐熱性及び耐候性の印刷用インクとしては、例えばガラス粉末を有する無機顔料を含有するインク、耐熱性及び耐候性のシールとしては、例えば印刷可能な耐熱性及び耐候性の吸着シートが好適に使用される。これらの材料は、例えば800℃における耐熱性並びに耐薬品性及び耐水性(塩水を含む)等を有する。従って、加熱処理等によってカラーコードが損傷、劣化することはなく、その識別性が変化することはない。
【0059】
カラーコードは、例えばスクリーン印刷法、インクジェット印刷法又はスタンプ印刷法等により形成することができる。カラーコードは、隣接する色の差に基づいて解読されるものであり、形状に依存せず、印刷精度にもほとんど影響されない。
【0060】
カラーコード2と該カラーコード2が印刷された板ガラス1とは1対1に対応する。カラーコードは、識別コードであり、製造工程、出荷、回収工程における板ガラスの個別情報を管理するための識別子となる。識別子であるカラーコード2に対応して当該板ガラス1の個別情報が図示省略した電子情報処理装置(コンピュータ)の記憶媒体(以下、単に「記憶媒体」という)に記憶される。
【0061】
個別情報としては、例えば板ガラス1の厚さ、及び透明、グリーン、IRカット等の種類をはじめとする品種情報、切断条件、研磨条件、割れ発生の有無等の品質情報が挙げられる。
【0062】
図1において、カラーコードが印刷された板ガラスは、次工程である印刷工程に送られ、例えばマスキング材、アンテナ用又はセンサ用の導電体が印刷される(ステップS4)。このとき、印刷工程に搬入された板ガラス1に付与されたカラーコード2が画像読み取り装置によって判読され、これに基づいて当該板ガラス1の品種情報、品質情報等の個別情報が読み取られ、個別情報に基づいて必要な印刷処理が施される。
【0063】
印刷処理後に、印刷処理に基づく個別情報が、カラーコード2に対応して記憶媒体に追加、記憶される。印刷工程において追加される個別情報としては、例えば、マスキング膜の有無、アンテナ、カメラ・センサ用窓等に関する情報、印刷条件、ピンホール、カスレ、汚れの有無等に関する情報が挙げられる。
【0064】
印刷が施された板ガラス1は、後流の曲げ工程に搬送され、曲げ処理が施される(ステップS5)。このとき、曲げ工程においても、搬入された板ガラス1に対し、画像読み取り装置によるカラーコード2の判読が行われ、これに基づいて、当該板ガラス1の品種情報、前工程である切断工程、洗浄工程又は印刷工程においてどのような条件でどのような切断、洗浄又は印刷処理が行われたかに関する個別情報の読み取りが行われる。
【0065】
個別情報の読み取り後、当該板ガラス1に適合した曲げ処理が施される。図4は、板ガラス1の曲げ工程を示す説明図である。
【0066】
図4は、プレスによる曲げ工程を示す説明図である。図4において、プレス成形による曲げ工程は、例えば板ガラス1を加熱炉8によって加熱して軟化させ、その後、所定の曲率を有する型9でプレスする。
【0067】
曲げ工程終了後、板ガラス1のカラーコードに対応して曲げ工程における個別情報が記憶媒体に記憶される。曲げ工程における個別情報としては、例えば曲げ方法、曲げ処理が行われた時刻、加熱炉温度、板ガラス温度等の曲げ条件、及び割れ発生の有無、ダブリ、型当たり等に関する品質情報が挙げられる。
【0068】
曲げ工程が終了した板ガラス1は、後流の強化工程に送られ、強化処理が施される(ステップS6)。このとき、強化工程に搬入された板ガラス1に対し、画像読み取り装置によるカラーコード2の判読が行われ、これに基づいて当該板ガラス1の品種情報、品質情報等の個別情報が読み取られる。
【0069】
そして、読み取った個別情報に応じて当該板ガラス1に適応した強化処理が施される。図5は、強化工程を示す説明図である。図5において、板ガラス1は、強化炉5に収容され、例えば500℃〜800℃に加熱されたのち(熱履歴を与える熱処理工程)、表面に空気が吹き付けられて急冷される。このような強化処理を施すことによって、板ガラス1は、ガラス強度が例えば3〜5倍の強化ガラス11となる。このとき、加熱温度、空気吹きつけ量等は、板ガラス1の個別情報に基づいて変更、調整することができる。
【0070】
なお、強化ガラスは、例えば自動車のサイドウインドウ、リヤウインドウ用の窓ガラスとして使用されものであり、強化処理を施すことによって衝撃を受けた場合に粉々に砕けるようになる。
【0071】
強化処理後の板ガラス(強化ガラス)11に対し、例えば加熱温度、加熱時間等の処理条件、及び割れ発生の有無等の個別情報が板ガラス11のカラーコードに対応して記憶媒体に追加、記憶される。
【0072】
強化工程(ステップS6)終了後の強化ガラス11は、後流の検査工程に送られ、所定の検査を受ける(ステップS7)。このとき検査工程に搬入された強化ガラス11に対し、先ず画像読み取り装置によって当該強化ガラス11に印刷されたカラーコードの判読が行われ、カラーコードに基づいて強化ガラス11の品種情報及び品質情報等の個別情報の読み取りが行われる。個別情報の読み取り後、各項目に関する検査が実行される。
【0073】
図6は、検査工程を示す説明図である。図6において、強化ガラス11に対し、画像読み取り装置7を用いて欠陥、キズ等の有無の検査が行われる。異常が見つかった場合は、カラーコード12に基づいて前工程における加熱炉番号、曲げ処理用の型番号等の工程履歴を抽出し、異常の原因を特定する。画像読み取り装置7の代わりにレーザー光照射装置等を用いて検査することもできる。
【0074】
検査の結果、所定の基準を満たしている強化ガラス11は、合格と判定され、輸送工程(ステップS9)を経て、第1製品アッセンブリ工程に送られる(ステップS10)。一方、基準を満たしていない強化ガラス11は、例えばNG製品として廃棄工程に送られる(ステップS8)。
【0075】
第1製品アッセンブリ工程(ステップS10)に搬入された強化ガラス11に対し、画像読み取り装置によって当該強化ガラス11に付与されたカラーコード12の判読が行われ、これに基づいて、強化ガラス11の品種情報及び品質情報が読み取られる。読み取った個別情報に問題がなければ、予め決定された付加価値を付与するための第1のアッセンブリ処理が施される。第1のアッセンブリ処理とは、例えばモールもしくはミラーベース等の取り付け、アンテナ部品や各種センサの取り付けをはじめとする付加価値を付与するための処理をいう。
【0076】
第1のアッセンブリ処理が終了したのち、強化ガラス11に対して付与された付加価値に関する個別情報が当該強化ガラス11のカラーコード12に対応して記憶媒体に追加、記憶される。
【0077】
付加価値が付与された強化ガラス11は、輸送工程(ステップ11)を経て、必要に応じて例えば第2製品アッセンブリ工程に送られる(ステップS12)。第2製品アッセンブリ工程においても、上記と同様に個別情報の判読が行われ、個別情報に応じて上記第1のアッセンブリ処理とは異なる第2のアッセンブリ処理が施され、別の付加価値が付与される。
【0078】
第2製品アッセンブリ工程における処理が終了した強化ガラス11に対し、そのカラーコード12に対応して第2のアッセンブリ処理における付加価値の内容、その付与条件、処理後の割れ発生の有無等の情報が記憶手段に追加、記憶される。
【0079】
第2製品アッセンブリ工程で、付加価値が付与された強化ガラス11は、輸送工程(ステップS13)を経て出荷工程に搬入される(ステップS14)。
【0080】
出荷工程に搬入された強化ガラス11に対してもカラーコード12の判読に基づく品種、品質情報等の個別情報の読み取りが行われる。個別情報の読み取り後、出荷検査が行われる。
【0081】
図7は、出荷検査を示す説明図である。図7において、図示省略されたパレットに搭載された複数の製品強化ガラス11に対し、画像読み取り装置17を用いて品種、品質、数量等の出荷検査が例えばロケーション管理として行われる。
【0082】
ここで、ロケーション管理とは、例えばパレット内を住所番地のように、区画ごとに番号をつけ、いつ、どこに、どんな品物が、何個あるか等を番地ごとに管理する、管理手法をいう。すなわち、ロケーション管理には、例えば、一の顧客向けのパレット上に、自動車生産工程における生産順又は車種順に配列された各種製品板ガラスを番地ごとに管理すること、パレット上に配置された同一品種群中への異種品種の混入の有無を管理すること、パレット上に配置された板ガラス製品の配置方向の適否を管理すること等が含まれる。
【0083】
出荷検査が終了した製品としての強化ガラス11は、例えば需要が少ないために、出荷をせずにストックしておく必要がある一部の製品を除き、カーメーカからオーダーされた品種順に従って、所定枚数ごとにパレットに搭載して出荷され、本処理を終了する。
【0084】
ここで、カラーコードとして使用される色は、基本的に例えば3色であり、それぞれ使用する3色を規定することによって、意味づけを行うことができる。例えば、基本3色が青、赤、黄の場合はカーメーカA社向け、基本3色が青、茶、緑の場合はカーメーカB社向け、基本3色が青、赤、緑の場合はカーメーカC社向けという意味づけをし、また、色の配列パターンによって品質の同一性を判定するための意味づけをすることもできる。
【0085】
意味づけすることによって、出荷検査として、画像読み取り装置によるロケーション管理と、作業者による目視判定を併用することができる。
【0086】
図8は、製品強化ガラス11の出荷状態を示す説明図である。図8(A)〜(C)において、複数枚の強化ガラス11がパレット(図示省略)に搭載され、例えば等間隔に立てかけられた状態で配列されている。
【0087】
図8(A)において、作業者は、各強化ガラス11の上部端面に印刷されたカラーコード12を目視することにより、カラーコード12の塗布位置の同一性によって例えば納品先のカーメーカが同一であること、塗布カラーパターンの同一性によって例えば品種・品質の同一性を確認することができる。
【0088】
また、図8(B)において、奥から3枚目の強化ガラス11に印刷されたカラーコード12は、他の強化ガラス11のカラーコード12に比べて印刷位置が異なっている。従って、作業者は、カラーコード12の印刷位置が異なる強化ガラス11の存在によって、例えば異なるカーメーカ向けの強化ガラス11が混入していることを目視判定することができる。
【0089】
また、図8(C)において、図中、奥から3枚目の強化ガラス11に印刷されたカラーコード12は、他の強化ガラス11に印刷されたカラーコード12に比べて色の配列パターンが異なっている。従って、作業者は、カラーコード12の塗布位置が同じでもカラーパターンが異なる強化ガラス11が存在することによって、例えば品種又は品質が異なる強化ガラス11が混入していることを目視によって判別することができる。
【0090】
本実施の形態によれば、強化ガラス生産工程における最も上流側の切断工程(ステップS1)及び洗浄工程(ステップS2)後に、板ガラスに1に対して識別子であるカラーコード2を付与し、カラーコード2に対応して個別情報を記憶するようにしたので、生産から出荷に至るまで、多種多様の板ガラス1を個別に管理することができる。また、カラーコードの印刷を耐熱性及び耐候性材料を用いて行うようにしたので、耐久性が向上し、例えば曲げ工程又は強化工程等において不具合が生じた場合であっても、カラーコード2ごとに対応づけられた加熱ライン、加熱炉、加熱条件等を特定して原因の追及及び不具合回避のための措置等を講ずることができる。また、このとき正常な生産ラインを停止させることがないので、生産効率の著しい低下を回避することができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、カラーコード2を板ガラス1の端面に印刷するようにしたので、板ガラス1の向きを変えることなく、複数枚重ねるように運搬される場合でも、その読み取りが容易であり、適切な管理が可能となる。また、洗浄工程、研磨工程等における識別子の消滅、劣化等を回避することができる。
【0092】
本実施の形態によれば、画像読み取り装置、例えばカメラによってカラーコード2を判読するようにしたので、従来品を適用することができ、特別な判読装置を新規に導入する必要がない。また、各処理工程ごとにカラーコードを判読し、対応する個別情報の読み取り及び書き込みを行うようにしたので、個別情報を有効に管理して異常を発見した際のピックアップも容易となる。
【0093】
また、本実施の形態によれば、カラーコード2に基づいてロケーション管理を行うようにしたので、読み落とし率が小さくなり、例えば商品の日付管理、出荷作業のスピードアップを図ることができる。
【0094】
本実施の形態によれば、識別子としてカラーコードを採用し、色パターンの相違等に応じて板ガラスの個別情報を管理するようにしたので、その印刷位置又は基本となる色の組み合わせに付加的な意味づけを行うことができ、これによって、作業者の目視判定を併用することができる。
【0095】
本実施の形態によれば、個別情報を品種情報及び/又は品質情報としたので、板ガラスごとの品種、品質に対応した適切な処理が可能となる。
【0096】
本実施の形態において、カラーコード2を印刷する可視部は、板ガラス1の端面だけでなく、端面に近接する主表面であってもよい。図9は、端面と、端面近傍の主表面の双方にカラーコード2が印刷された板ガラスを示す説明図である。
【0097】
図9において、板ガラス1の上部端面と、下部端面の近傍の主表面にそれぞれカラーコード2が印刷されている。上部端面のカラーコード2は、所定面積に塗り潰された数種の色の組み合わせであり、下部端面近傍の主表面のカラーコード2は、カラーコードをロゴとして印刷したものである。なお、カラーコード2を板ガラスの特定の角を挟んで連続する二つの端面に連続して印刷することもできる。
【0098】
本実施の形態において、カラーコードをロゴとして適用することにより、画像読み取り装置で解読される識別子としての機能の外、目視判定可能な識別子としての機能を付加することができる。すなわち、カラーコードをロゴとして適用することにより、製品製造工程における例えば外国人作業者が母国語(ロゴ)で印刷されたカラーコードを目視判別し、文字情報に基づく特定の情報を取得することができるようになる。
【0099】
本実施の形態において、画像読み取り装置の解像度を上げてカラーコードを拡大して識別できる場合は、板ガラス1に印刷するカラーコード2の大きさを小さくしてもよい。また、カラーコード用の塗料として特殊な光を照射しないと色が認識できない塗料を使用することにより、特定の場合のみカラーコード2が判読されるようにしてもよい。カラーコードの読み取りは、画像読み取り装置又は目視による直接的な読み取りの外、所定角度に配置された反射鏡等を組み合わせて読み取ることもできる。この方法は、カラーコードを直視できない場合に有効である。
【0100】
本実施の形態において、識別コードとしてのカラーコードを着脱自在とすることが好ましい。カラーコードを着脱自在にする付与する方法としては、例えば、印字可能な吸着シートに印刷してそのシートを貼着する方法等が挙げられる。カラーコードを着脱自在とすることにより、一旦付与した識別コードを必要に応じて取り外し、また中間の工程において新たに識別コードを付与する等、識別コードの適用範囲が拡がって板ガラスをより有効に管理することができる。なお、生産工程においてシリアルナンバーに対応するコードだけを付与しておき、出荷時に品種に対応した品種コードを付与するようにしてもよい。
【0101】
本実施の形態において、図1の切断工程(ステップS1)から検査工程(ステップS7)までを、例えば上流側工程、検査工程(ステップS7)以降の工程を例えば下流側工程ということがある。
【0102】
本実施の形態において、特定の処理工程を回避、すなわちスキップすることができ、また、必要に応じて別の工程を付加することもできる。
【0103】
本実施の形態において、出荷工程後に、使用済みの板ガラスを回収する回収工程を設け、この回収工程においても、識別コードとしてのカラーコードを用いて板ガラスを管理することが好ましい。
【0104】
回収工程は、例えば、納品先、製造元、品種又は組成別に使用済み板ガラスを回収する分別回収工程、合わせガラスから中間膜を回収する中間膜回収工程、板ガラスから例えばアンテナ用又はセンサ用導電体として機能する銀を回収する導電体回収工程、回収した板ガラス、中間膜又は導電体を再利用するリユース工程、及び回収した板ガラスを原料として使用するリサイクル工程のうち少なくとも1つを含む。板ガラス製品は、製品品種等によってその組成が異なる場合が多いので、使用済み板ガラスの回収は、納品先、品種等ごとに個別に行う必要がある。また、中間膜もメーカ毎に組成が異なる場合が多いので、使用済み中間膜の回収は、同様に個別に行う必要がある。ガラス及び中間膜は、原料として再利用されるリサイクル品である。
【0105】
出荷工程及び回収工程において、カラーコードを付与する材料として、主として耐候性材料が用いられるが、耐候性及び耐熱性材料であることが好ましい。また、耐候性及び耐熱性材料は、耐水性及び耐薬品性であることが好ましく、生産工程で採用される耐熱性及び耐候性材料が好適に適用される。
【0106】
次に、本発明の第2の実施の形態である合わせガラスの製造・出荷工程における板ガラス管理ついて説明する。
【0107】
合わせガラスの生産工程と上述した強化ガラスの生産工程とは、重複する部分があるので、以下、合わせガラスの生産・出荷工程について、強化ガラスの生産・出荷工程とは異なる工程に着目して説明する。
【0108】
図10は、合わせガラスの生産・出荷工程を示すフローチャートである。図10において、合わせガラスは、例えば以下のようにして生産される。すなわち、先ず、強化ガラスの生産工程と同様、ガラス素板を所定の大きさに切断し(ステップS101)、洗浄し(ステップS102)、その端面にカラーコードを印刷したのち(ステップS103)、印刷処理を施し(ステップS104)、その後、所定の湾曲面を付与するための曲げ処理が施される(ステップS105)。
【0109】
曲げ工程に搬入された板ガラス1に対し、画像読み取り装置を用いて板ガラスに印刷されたカラーコードが判読され、これに基づいて、品種情報、及び上流の各工程においてどのような条件でどのような処理が施されたかの個別情報が読み取られ、所定の曲げ処理が施される。
【0110】
図11は、合わせガラス生産工程における曲げ工程を示す図である。図11において、板ガラス1は、例えば自重成形工程によって曲げ成形される。板ガラス1は、例えば所定の曲率を有する型3上に載置され、この状態で、自重曲げ炉4に収容され、例えば500℃〜800℃に加熱される(熱履歴を与える熱処理工程)ことによって軟化し、板ガラス1自身の自重によって型3に沿って変形する。合わせガラスを構成する例えば2枚の板ガラスは、同様に処理されて同様の曲率に曲げられる。
【0111】
なお、合わせガラスの曲げ工程においては、自重曲げの外、プレス曲げが採用されることもある。
【0112】
曲げ工程(ステップS105)後の板ガラスは、再度洗浄された後(ステップS106)、合わせ工程に送られ、所定の条件で合わせ処理が施される(ステップS107)。
【0113】
合わせ工程に搬入された板ガラスに対し、画像読み取り装置を用いて板ガラスに印刷されたカラーコードが判読され、これに基づいて、品種情報、及び上流の各工程においてどのような条件でどのような処理が施されたかの個別情報が読み取られ、所定の合わせ処理が施される。
【0114】
図12は、合わせ工程を示す説明図である。
【0115】
図12において、合わせ工程に搬入され、カラーコードの判読によって個別情報が読み取られた板ガラス21と、この板ガラス21に続いて搬入され、同様に個別情報が読み取られた別の板ガラス31とが、例えば遮音用又はヘッドアップディスプレイ用の中間膜10を介して貼り合わせられて合わせガラス41となる。
【0116】
このとき、合わせ工程に搬入された板ガラス21、31に対し、画像読み取り装置又は作業者の目視によって、板ガラス21、31に印刷されたカラーコードを観察して、合わせ処理における位置合わせ、及び位置合わせの良不良の判定等を行うようにしてもよい。
【0117】
合わせガラス41を構成する2枚の板ガラス21及び31にそれぞれ印刷されたカラーコード12の組み合わせが、例えば合わせガラス41の識別子として用いられる。
【0118】
図13は、合わせガラスのカラーコードを示す説明図である。図13(A)において、貼り合わせられた2枚の板ガラス21、31の図中右上端面にそれぞれ印刷された二つのカラーコード12の組み合わせが、合わせガラス41の識別子となる。
【0119】
また、図13(B)において、図中右上端部に印刷されたカラーコード12を有する板ガラス21と、左上端部に印刷されたカラーコード12を有する板ガラス31が中間膜10を介して貼り合わせられており、上端部における離れた位置に印刷された2つのカラーコード12の組み合わせが合わせガラス41の識別子として用いられる。
【0120】
また、図13(C)において、板ガラス21、31だけでなく、中間膜10の上端部にもカラーコード12が印刷されており、2枚の板ガラス21、31にそれぞれ印刷されたカラーコード12と、中間膜10に印刷されたカラーコード12との組み合わせが合わせガラス41の識別子として用いられる。このとき、合わせガラス形成後に、新たに別のカラーコードを付与して個別情報を管理することもできる。
【0121】
中間膜にもカラーコードを付与しておくことによって、例えば、合わせガラスのガラス部分が割れ、紛失等した場合であっても、中間膜に付与された識別コードで管理することができる。従って、特に合わせガラスの回収工程における板ガラス管理に好適である。
【0122】
合わせ工程終了後の合わせガラス41に対し、例えば当該合わせガラス41のカラーコードに対応して合わせ工程おける板ガラスの種類、中間膜の種類等の品種情報、温室度、クリーン度、割れの有無等の品質情報が個別情報として記憶媒体に記憶される。このとき、合わせ工程前の各板ガラス21、31における個別情報は合わせガラス41の個別情報に引き継がれる。
【0123】
次に、合わせガラス41は、後流の仮接着工程に搬入され、仮接着処理が施される(ステップS108)。
【0124】
このとき、仮接着工程に搬入された合わせガラス41に対し、画像読み取り装置によって当該合わせガラス41のカラーコードの判読及びこれに基づく合わせガラス41の個別情報の読み取りが行われる。個別情報の読み取り後、当該合わせガラス41に対応した適切な仮接着処理が施される。
【0125】
図14は、仮接着工程を示す説明図である。図14において、合わせガラス(図14中、便宜上、合わせガラスを単なる板状体として示した)41は、中間膜及び2枚のガラス板がずれないように保持された状態で、例えば上下の仮接着ロール13相互間に供給され、所定の圧力で押圧されて仮接着する。
【0126】
仮接着処理後、合わせガラス41のカラーコードに対応して温度、圧力、時間等の仮接着条件及び割れの有無等に関する品種情報が管理データとして記憶媒体に記憶される。
【0127】
仮接着工程が終了した合わせガラス41は、後流の本接着工程に搬入される(ステップS109)。本接着工程に搬入された合わせガラス41に対し、画像読み取り装置によって当該合わせガラス41のカラーコードの判読及びこれに基づく個別情報の読み取りが行われ、情報の読み取り後、当該合わせガラス41に対応した適切な本接着処理が施される。
【0128】
図15は、本接着工程を示す説明図である。図15において、仮接着された合わせガラス41は、所定枚数が、例えばパレット14に載置された状態でオートクレーブ(釜)15に搬入され、例えば150℃、15気圧で90分加熱加圧処理して本接着される。この加圧加熱処理によって、板ガラス21、31と中間膜10との間に残存する空気が取り除かれ、板ガラス21、31と中間膜10とが密着する。また、このとき、中間膜10は例えば透明になる。合わせガラス41は、例えば自動車のフロントガラス用として用いられる。
【0129】
本接着工程が終了した合わせガラス41に対し、当該合わせガラス41のカラーコードに対応して温度、圧力、時間等の本接着条件及び割れの有無等に関する品種条件が管理データとして記憶媒体に記憶される。
【0130】
本接着工程(ステップS109)が終了した合わせガラス41は、後流の洗浄工程に搬入され、例えばステップS102、ステップS106、第1の実施の形態のステップS2に準じて洗浄される(ステップS110)。洗浄工程(ステップS110)が終了した合わせガラス41は、第1の実施の形態と同様、後流の検査工程に搬送され、品質検査が行われる(ステップS111)。検査工程における検査項目は、例えば型当たり、異物の有無、透視歪の有無、ハイライトの有無、エッジ状態、泡残りの有無等である。検査終了後、当該合わせガラス41のカラーコードに対応して記憶媒体に検査結果が追加、記憶される。
【0131】
検査工程における検査結果に基づいて、例えば合格、不合格(NG)廃棄または本接着工程に戻して再度本接着工程を繰り返す等の決定がなされる。検査に合格した合わせガラス41は、後流の輸送工程に送られ(ステップS113)、その後、強化ガラスと同様、必要に応じてアッセンブリ工程(ステップS114、ステップS116)によって付加価値が付与された後、製品合わせガラス41としてカーメーカに出荷され、(ステップS118)本処理を終了する。
【0132】
一方、廃棄処分が決定した合わせガラス41は、廃棄工程に搬送され、廃棄される(ステップS112)。また、本接着工程(ステップS109)への差し戻し(再圧)が決定された合わせガラス41は、本接着工程に戻して再度本接着処理が施される。
【0133】
本実施の形態によれば、合わせガラス製造工程における最も上流側の工程である切断工程(ステップS101)、洗浄工程(ステップS102)後に、各板ガラスの端面にカラーコードを印刷することによって、多種多様の板ガラスを個別に管理して合わせガラス41の生産効率を向上させることができる。また、カラーコードは、耐熱性及び耐候性塗料によって印刷されるので、高温、高圧雰囲気で処理を施した場合であっても、劣化、損傷等せず、識別子としての機能を十分発揮することができる。
【0134】
本実施の形態によれば、カラーコードに基づいて、板ガラス21、31を貼り合わせる際の位置決め又は位置ずれの検出を行うことができ、これによって合わせガラスの品質が向上し、歩留まり率が高くなる。
【0135】
本実施の形態によれば、接合される2枚の板ガラス21、31又はこれに挟持される中間膜10に印刷されたカラーコード12の組み合わせを合わせガラス41のカラーコードとして用いることができるので、合わせガラス41の製造、出荷工程における多くの個別情報を有効に管理することができる。
【0136】
本実施の形態において、強化ガラスの場合と同様、使用済みの合わせガラスを回収する回収工程を設け、この回収工程においても、生産時、又は出荷時に付与した識別コードとしてのカラーコードを用いて個々の合わせガラスを管理することが好ましい。
【0137】
本実施の形態において、レーザ光を用いて識別コードを付与するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】強化ガラスの製造・出荷方法を示すフローチャートである。
【図2】洗浄工程を示す説明図である。
【図3】端面にカラーコードが印刷された板ガラスを示す図である。
【図4】プレスによる曲げ工程を示す説明図である。
【図5】強化工程を示す説明図である。
【図6】検査工程を示す説明図である。
【図7】出荷検査を示す説明図である。
【図8】製品強化ガラスの出荷状態を示す説明図である。
【図9】端面と、端面近傍の主表面にカラーコードが印刷された板ガラスを示す図である。
【図10】合わせガラスの製造・出荷方法を示すフローチャートである。
【図11】曲げ工程を示す説明図である。
【図12】合わせ工程を示す説明図である。
【図13】合わせガラスのカラーコードを示す説明図である。
【図14】仮接着工程を示す説明図である。
【図15】本接着工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0139】
1 板ガラス
2 カラーコード
3 型
4 自重曲げ炉
5 強化炉
6 洗浄ブラシ
7 画像読み取り装置
8 加熱炉
9 型
10 中間膜
11 強化ガラス
12 カラーコード
13 仮接着ロール
14 パレット
15 オートクレーブ
16 冷却装置
17 画像読み取り装置
21 板ガラス
31 板ガラス
41 合わせガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス素板から所定の大きさの板ガラスを切り出す切断工程と、切り出した板ガラスに熱履歴を与える熱処理工程とを含む板ガラス製品の生産工程における前記板ガラスを管理する方法であって、
前記切断工程後の板ガラスの可視部に耐熱性材料を用いて識別コードを付与し、
前記識別コードに対応させて各板ガラスに関する個別情報を記憶し、該個別情報に基づいて前記板ガラスに所定の処理を施すことを特徴とする板ガラス管理方法。
【請求項2】
前記耐熱性材料は、耐水性及び耐薬品性を有することを特徴とする請求項1記載の板ガラス管理方法。
【請求項3】
製品板ガラスを出荷する板ガラス出荷工程及び/又は使用済み板ガラスを回収する板ガラス回収工程における前記板ガラスを管理する方法であって、
前記板ガラスの可視部に耐候性材料を用いて識別コードを付与し、
前記識別コードに対応させて各板ガラスに関する個別情報を記憶し、該個別情報に基づいて前記板ガラスに所定の処理を施すことを特徴とする板ガラス管理方法。
【請求項4】
前記耐候性材料は、耐水性及び耐薬品性を有することを特徴とする請求項3記載の板ガラス管理方法。
【請求項5】
ガラス素板から所定の大きさの板ガラスを切り出す切断工程と、切り出した板ガラスに熱履歴を与える熱処理工程とを含む生産工程によって板ガラス製品を生産し、生産した板ガラスを出荷し、使用済み板ガラスを回収する板ガラス製品の生産、出荷、回収工程における板ガラスを管理する方法であって、
前記切断工程後の板ガラスの可視部に耐熱性及び耐候性材料を用いて識別コードを付与し、
前記識別コードに対応させて各板ガラスに関する個別情報を記憶し、該個別情報に基づいて前記板ガラスに所定の処理を施すことを特徴とする板ガラス管理方法。
【請求項6】
前記耐熱性及び耐候性材料は、耐水性及び耐薬品性を有することを特徴とする請求項5記載の板ガラス管理方法。
【請求項7】
前記生産工程は、
前記板ガラスを洗浄する洗浄工程、
前記板ガラスにマスキング材又はアンテナ用もしくはセンサ用の導電体を印刷する印刷工程、
前記板ガラスに曲げを施す曲げ工程、
前記板ガラスの強度を増大させる強化工程、
複数の前記板ガラスを貼り合わせる合わせ工程、
前記板ガラスの状態を検査する検査工程、
及び前記板ガラスに付加価値を付与するアッセンブリ工程
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1、2及び請求項5、6のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項8】
前記強化工程において、前記識別コードに対応して記憶された個別情報に基づく強化処理を行うことを特徴とする請求項7記載の板ガラス管理方法。
【請求項9】
前記合わせ工程において、前記識別コードに基づいて前記板ガラスを貼り合わせる際の位置決め又は位置ずれの検出を行うことを特徴とする請求項7記載の板ガラス管理方法。
【請求項10】
前記合わせ工程において、前記貼り合わせられる板ガラス相互間に配置される中間膜の可視部に前記識別コードと同様の識別コードが付与されていることを特徴とする請求項7又は9に記載の板ガラス管理方法。
【請求項11】
前記貼り合わせられた複数の板ガラス及び/又は中間膜に印刷された前記識別コードの組み合わせに基づいて合わせガラスの個別情報を管理するか又は新たな識別コードを付与することを特徴とする請求項9又は10記載の板ガラス管理方法。
【請求項12】
前記出荷工程において、前記板ガラスの搬送はパレットを用いて行われ、前記パレットに載置した複数の板ガラスを前記識別コードに基づいてロケーション管理することを特徴とする請求項3乃至6の何れか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項13】
前記回収工程は、
納品先、製造元、品種又は組成別に使用済み板ガラスを回収する分別回収工程、
合わせガラスから中間膜を回収する中間膜回収工程、
板ガラスのアンテナ用又はセンサ用導電体から導電体を回収する導電体回収工程、
回収した板ガラス、中間膜又は導電体を再利用するリユース工程、
及び回収した板ガラスを原料として使用するリサイクル工程
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項14】
前記可視部は、前記板ガラス又は中間膜の端部側面及び/又は端部側面に近接する主表面であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項15】
前記板ガラス製品の生産、出荷、回収工程における少なくとも一つの工程において、前記識別コードの読み取り、及び読み取り結果に対応する情報に応じて施された処理に関する情報の書き込みを行うことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項16】
前記識別コードは、着脱自在であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項17】
前記識別コードは、カラーコードであり、前記カラーコードの読み取りは、画像読み取り装置を用いて行うことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の板ガラス管理方法。
【請求項18】
前記カラーコードにおいて使用される色に基づいて前記板ガラスの個別情報を管理することを特徴とする請求項17記載の板ガラス管理方法。
【請求項19】
前記個別情報は、品種情報及び/又は品質情報であることを特徴とする請求項18記載の板ガラス管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−132572(P2009−132572A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310566(P2007−310566)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】