説明

板材および板材の組み立て構造

【課題】部品点数を少なくして、組み立て工程の簡素化を可能にするとともに、組み立ての際の接合強度に優れた板材の組み立て構造と、これに使用される板材を提供する。
【解決手段】板材1は、金属板、樹脂板、ガラス板、木板等の平面板によって形成されており、板材1にはその一端側から順に、凸部2、本体部3、凹部4、補強部5、固定部6が設けられている。凸部2と、凹部4の一部とは、同一の形状を有するように形成されている。具体的には、凸部2の第1面2a、第2面2b、第3面2cによって形成される形状は、凹部4の第1面4a、第2面4b、第3面4cによって形成される形状と同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根や床を形成するにあたり、少ない部品で簡便に組み立て作業を行うことができるとともに、強度に優れ、雨樋の機能を充分に発揮することが可能な板材の組み立て構造と、これに使用される板材に関する。
【背景技術】
【0002】
フラット屋根を形成するにあたって、部品点数の削減や、雨水の排水性を向上するための技術が開発されており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−115054号公報
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたものは、複数の板材を組み合わせて屋根を形成するにあたり、板材とは別個の嵌合部材を用いており、部品点数の削減と、組み立て工程の簡素化が充分であるとは言えない。また、板材を固定するために、嵌合部材のばねの作用を利用した点接触や線接触によるものであり、面接触による固定に比べると固定が不安定になりやすく、強固な固定がなされているとはいえない。さらに、使用される板材を鋭角的に折り曲げることが必要であるため、折り曲げによる損傷や腐食が発生しやすい。特に、雨水に濡れる屋根では、腐食は大きな問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、部品点数を少なくして、組み立て工程の簡素化を可能にするとともに、組み立ての際の接合強度に優れた板材の組み立て構造と、これに使用される板材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の板材は、平面板を複数箇所折り曲げて、凸部と凹部とが平面状の本体部を挟んで形成された板材であって、前記凸部と前記凹部とは複数の折り曲げ面によって形成され、前記折り曲げ面によって形成される前記凸部と前記凹部とが同一の形状を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の板材は、一枚の板を折り曲げて形成された一体型の部品であり、この一体型の部品を複数組み合わせるだけで屋根や床を構成することができ、他の部材を必要としないため、製造が簡単であるとともに、組み立て工程も極めて簡便である。
【0008】
また、複数の板材の接合は、一方の板材の凹部と他方の板材の凸部とを嵌合することによって行われ、一方の板材の凹部と他方の板材の凸部とを構成するそれぞれの面同士の接触によってなされているため、点接触あるいは線接触による接合と比べて接合部位を広くとることができ、接合が強固となる。
【0009】
本発明の板材においては、前記凹部に連接して、平面板を折り曲げて形成された補強部が設けられていることが好ましい。
複数の板材が接合されることによって、一方の板材の補強部の上に、他方の板材の本体部の一部が配置されることになり、補強部によって板材の本体部が支持されることとなって、板材の接合が安定化する。
【0010】
本発明の板材においては、前記補強部に連接して、下地材に固定するための平面状の固定部が設けられていることが好ましい。
下地材に固定するための固定部が平面状に設けられているため、板材と下地材への固定が面状になされるため、固定が強固となる。
【0011】
本発明の板材においては、前記折り曲げ面は、平面板を略直角に折り曲げて形成されていることが好ましい。
略直角に折り曲げることにより、鋭角的に折り曲げる場合と比べて、折り曲げによる損傷や腐食が少ない。
【0012】
本発明の板材の組み立て構造は、上記のいずれかに記載の板材を複数組み合わせて形成される板材の組み立て構造であって、一方の板材の凹部に対して他方の板材の凸部が嵌め込まれて形成されていることを特徴とする。
【0013】
この板材の組み立て構造は、一枚の板を折り曲げて形成された一体型の板材を、面同士の接触によって組み合わせるものであるため、組み立てが簡単であるとともに、組み立ての強度も優れている。また、組み合わせたときに凹部は雨樋として機能するため、屋根あるいは排水性が要求される床を構成する際に有効である。
【0014】
前記板材の組み合わせは、同一の材料からなる板材の組み合わせとすることもでき、あるいは異なる材料からなる板材の組み合わせとすることもできる。
必要に応じて異なる材料で形成された板材を適宜組み合わせることによって、多様な用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、少ない部品点数で屋根や床を形成することができ、組み立てが簡単であるとともに、複数の板材の接合は、一方の板材の凹部と他方の板材の凸部とを構成するそれぞれの面同士の接触によってなされているため、接合が強固である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
図1(a)に、本発明の実施形態に係る板材の構造を示す。なお、以下の説明においては、板材を屋根材として用いる場合を前提としているが、これに限定されるものではなく、板材を組み合わせて使用できるものであれば、床材等の他の用途としても用いることもできる。
板材1は、金属板、樹脂板、ガラス板、木板等の平面板によって形成されており、板材1にはその一端側から順に、凸部2、本体部3、凹部4、補強部5、固定部6が設けられている。
【0017】
凸部2は、金属板等を3カ所について折り曲げて形成されており、折り曲げ角はいずれも略直角となっている。板材1が取り付けられる下地材10に対して、凸部2を構成する第1面2aは略垂直、第2面2bは略平行、第3面2cは略垂直となっている。
この凸部2に連なって本体部3が形成され、この本体部3は金属板等を折り曲げずに、平面が広く確保されている。
【0018】
本体部3に連なって凹部4が設けられており、この凹部4は、金属板等を6カ所について折り曲げて形成されており、折り曲げ角はいずれも略直角となっている。板材1が取り付けられる下地材10に対して、凹部4を構成する第1面4aは略垂直、第2面4bは略平行、第3面4cは略垂直、第4面4dは略平行、第5面4eは略垂直となっている。
【0019】
以上説明した凸部2と、凹部4の一部とは、同一の形状を有するように形成されている。具体的には、凸部2の第1面2a、第2面2b、第3面2cによって形成される形状は、凹部4の第1面4a、第2面4b、第3面4cによって形成される形状と同一である。
【0020】
凹部4に連なって補強部5が設けられており、この補強部5は、金属板等を1カ所折り曲げて形成されており、その折り曲げ角は略直角となっている。板材1が取り付けられる下地材10に対して、補強部5を構成する第1面5aは略平行、第2面5bは略垂直となっている。第1面5aは、後述するように、複数の板材を組み合わせたときに、板材を支持する部位として機能する。
【0021】
補強部5に連なって固定部6が設けられており、この固定部6は、板材1が取り付けられる下地材10に対して略平行である平面6aからなり、この固定部6は、座金7を介して固定用ビス8によって下地材10に固定される。固定部6の平面6aの面積は、状況に応じて適宜定められる。
【0022】
なお、図1(a)に示すものは、金属板等を折り曲げて形成される各面は平面となっているが、必要に応じて曲面としてもよい。例えば、図1(b)、(c)に示すように、凸部2の第3面2c、凹部4の第3面4cを曲面とすることができる。また、折り曲げ面の数や長さは状況に応じて適宜選択される。
【0023】
図2に、図1に示す板材を組み合わせた状態のものを示す。図2(a)は2枚の板材の組み合わせ位置を示しており、図2(b)は板材を複数枚組み合わせたものの平面図、図2(c)はそのA−A断面図である。
板材1の凹部4に対して、板材11の凸部2が嵌め込まれることによって、板材1と板材11とが組み合わせられている。具体的には、板材1の凹部4の第1面4a、第2面4b、第3面4cに対して、板材11の凸部2の第1面2a、第2面2b、第3面2cが各々当接し、凸部2の第1面2a、第2面2b、第3面2cによって形成される形状が、凹部4の第1面4a、第2面4b、第3面4cによって形成される形状と同一であるため、板材11の凸部2は板材1の凹部4に密着して接合される。このような接合は、板材1の凹部4と板材11の凸部2とを構成するそれぞれの面同士の接触によってなされているため、点接触あるいは線接触による接合と比べて接合が強固である。
【0024】
板材1と板材11とが接合されることによって、板材1の補強部5の上に、板材11の本体部3の一部が配置されることになり、補強部5によって板材11の本体部3が支持されることとなって、板材1と板材11との接合が安定化する。補強部5を設けない場合には、板材1に接合された板材11を、2つの板材の接合部である凸部2と凹部4の近傍で支持するものがないため、板材11が傾くなどして接合状態が不安定になりやすいが、接合部の近傍に補強部5を設けることによって、接合状態が安定化する。
【0025】
また、金属板等を折り曲げるにあたって、折り曲げ角はいずれも略直角となっているため、鋭角的に折り曲げる場合と比べて、折り曲げによる損傷が少ない。特に、金属板によって板材を形成する際には、金属板に腐食防止のための処理が施されており、このような金属板を鋭角的に折り曲げると、折り曲げによる力によって金属板の表面処理が劣化し、腐食防止効果が低下するおそれがあるが、本発明の板材においては、このような折り曲げによる損傷が少ない。特に、板材を屋根材として用いる場合には、雨水によって板材が濡れる状況が必ず発生するが、このような場合であっても腐食しにくい。
【0026】
上述した方法で、必要な枚数の板材を適宜組み合わせることによって、屋根や床を形成することができる。2つの板材の接合部において、凸部2を凹部4に嵌め込む際に、凸部2を構成する第1面2a、第2面2b、第3面2cと、凹部4を構成する第1面4a、第2面4b、第3面4cとの間に多少の隙間を生じるため、雨水はこの隙間を通じて凹部4内に流れ込む。従って、凹部4は雨樋として機能し、屋根あるいは排水性が要求される床を構成する際に有効に機能する。
【0027】
本発明の板材は、一枚の板を折り曲げて形成された一体型の部品であり、この一体型の部品を複数組み合わせるだけで屋根や床を構成することができ、他の部材を必要としない。従って、製造が簡単であるとともに、組み立て工程も極めて簡便であり、利便性が高い。
【0028】
また、板材を構成する材料も特に限定されないため、組み合わせる板材を使用目的に応じて使い分けることができる。例えば、屋根材として用いる場合に、太陽光を透過させたい領域にはガラスや樹脂からなる透明材料によって形成された板材を使用し、遮光が必要な領域には金属からなる板材を使用して、両者を上記の方法で組み合わせると、用途に適合する屋根材とすることができる。ガラスや樹脂によって板材を形成したときに強度を確保する必要がある場合には、網目状の金属を板材に敷き詰めることによって強度を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、組み立てが簡単であり、接合が強固な屋根材や床材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る板材の構造を示す図である。
【図2】図1に示す板材を組み合わせた状態のものを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 板材
2 凸部
2a 第1面
2b 第2面
2c 第3面
3 本体部
4 凹部
4a 第1面
4b 第2面
4c 第3面
4d 第4面
4e 第5面
5 補強部
5a 第1面
5b 第2面
6 固定部
6a 平面
7 座金
8 固定用ビス
10 下地材
11 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面板を複数箇所折り曲げて、凸部と凹部とが平面状の本体部を挟んで形成された板材であって、前記凸部と前記凹部とは複数の折り曲げ面によって形成され、前記折り曲げ面によって形成される前記凸部と前記凹部とが同一の形状を有することを特徴とする板材。
【請求項2】
前記凹部に連接して、平面板を折り曲げて形成された補強部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の板材。
【請求項3】
前記補強部に連接して、下地材に固定するための平面状の固定部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の板材。
【請求項4】
前記折り曲げ面は、平面板を略直角に折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の板材。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の板材を複数組み合わせて形成される板材の組み立て構造であって、一方の板材の凹部に対して他方の板材の凸部が嵌め込まれて形成されていることを特徴とする板材の組み立て構造。
【請求項6】
前記板材の組み合わせは、同一の材料からなる板材の組み合わせ、または異なる材料からなる板材の組み合わせによるものであることを特徴とする請求項5記載の板材の組み立て構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−41221(P2009−41221A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205411(P2007−205411)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【特許番号】特許第4083206号(P4083206)
【特許公報発行日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(507265823)
【Fターム(参考)】