説明

板材の切断方法、板材の切断装置、ヘッドサスペンション及び板材の積層品

【課題】回転磁気ディスクのヘッドサスペンションの製造時におけるフレームの切断の位置決め精度を保持しながら、切断に用いる切断装置のパンチ、ダイ、パッド及び被切断部品の位置決め装置等に必要な精度を下げて低コスト化を図る。
【解決手段】ヘッドサスペンション10Aのヒンジ部材19にはフレーム12が連結されたままである。切断部(易切断部)90gは、切断されるフレーム12及び切断時の基準位置となる端面E9を有するダイとしてのスティフナー14とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に内蔵されるディスク装置用のヘッドサスペンション及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する磁気ディスクあるいは光磁気ディスク等を備えたディスク装置において、ディスクの記録面にデータを記録したりデータを読取るために磁気ヘッドが使われている。この磁気ヘッドは、ディスクの記録面と対向するスライダと、スライダに内蔵されたトランスジューサなどを含んでおり、ディスクが高速回転することによってスライダがディスクから僅かに浮上し、ディスクとスライダとの間にエアベアリングが形成されるようになっている。前記磁気ヘッドを保持するためのヘッドサスペンションは、ロードビームと呼ばれるビーム部材と、ロードビームに固定された極薄い板ばねからなるフレキシャと、ロードビームの基部に設けるベースプレートなどを備えている。フレキシャの先端部に磁気ヘッドを構成するスライダが装着される。
【0003】
これらのヘッドサスペンションのロードビームやベースプレート等の各部品は、ステンレス鋼等からなる薄板を打ち抜き又はエッチングにより精密加工されたものからなり、これらの部品がレーザー溶接等によって融着されてヘッドサスペンションを構成している。
【0004】
これらのロードビームやベースプレート等の各部品は、複数個の部品が所定のピッチで列状に並ぶ連鎖品の形で作製(打ち抜き又はエッチング加工)され、連鎖品の形のままレーザー溶接等により融着され、その後切断装置によって、連鎖品のフレーム部分を切断することによって個別のヘッドサスペンションが作製される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−57723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来方法によるフレームの切断方法について図8に示す。
【0007】
図8(A)は、サスペンションのヒンジ部材19とスティフナー14がレーザー溶接によって融着されている状態での断面図である。ヒンジ部材は、連鎖品となっており、フレーム12で連結されており、切断位置90において切断されて個別の部品に分けられる。
【0008】
フレームの切断の際には、切断装置P70を用いる。図8(B)に示すように切断装置P70のダイP75上の窪みDにスティフナー14を納め、ダイP75のクランプ部CとパッドP73でフレーム12の一部を挟んで固定し、パッドP73の摺動面PS3にパンチP71の摺動面PS1が接してフレーム12の上方より下方に滑らせて(図8(C)参照)、パンチP71のエッジPE1でフレームを切断位置90で切断する。
【0009】
他の切断方法の従来例について図9に示す。
【0010】
本方法では、切断される部品を図8に示す例とは上下逆に置く。すなわち図9(B)に示すように切断装置P70のダイP75側にフレーム12を、そしてパッドP73側にスティフナー14を配置して、ダイP75とパッドP73で連鎖品を挟んで固定し、前項と同様にパッドP73の摺動面PS3にパンチP71の摺動面PS1が接して、フレーム12の上方より下方に滑らせて(図9(C)参照)、パンチP71のエッジPE1でフレームを切断位置90で切断する。
【0011】
上記の2例のいずれの方法であっても、フレームの切断位置90の精度は、ダイP75とパッドP73に挟まれる被切断部品の位置決めの精度で決定される。さらに、その高い位置決め精度を出すために、摺動面PS1及びPS3の高い表面精度、さらに摺動面PS1と摺動面PS1に対向するダイP75の非摺動面PS5との間の狭いクリアランスCLを正確に維持する必要があり、切断装置P70のパンチP71、パッドP73、ダイP75の加工にサブミクロンの精度が必要で、切断装置P70が非常にコスト高となる問題がある。
【0012】
解決しようとする課題は、ダイ、パッド及びパンチを備えた切断装置により部品を保持するためのフレームを切断する切断方法において、切断位置の精度を落とすことなく、前記ダイ、パッド、パンチにかかる製造コストやメインテナンスコスト、位置決め装置のコストを下げることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の板材の切断方法は、少なくとも2枚の板を重ねて結合した積層品をダイ及びパッドで挟み、一方の板から突出する他方の板の切断部をパッドに沿って下降するパンチにより切断する板材の切断方法であって、前記パッド及びダイ間に前記一方の板の縁部を臨ませる段差を設け、前記段差に臨む一方の板を前記他方の板を切断するためのダイとして利用することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の板材の切断方法は、前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであることを特徴としてもよい。
【0015】
本発明の板材の切断装置は、少なくとも2枚の板を重ねて結合した積層品をダイ及びパッドで挟み、一方の板から突出する他方の板の切断部をパッドに沿って下降するパンチにより切断する板材の切断装置であって、前記パッド及びダイ間に前記一方の板の縁部を臨ませる段差を設け、前記段差に臨む一方の板を前記他方の板を切断するためのダイとして利用することを特徴とする。
【0016】
本発明の板材の切断装置の前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであることを特徴とする。
【0017】
本発明のヘッドサスペンションは、請求項1の板材の切断方法であって、前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであり、前記切断によって前記ロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかを前記フレームから切り分けることを特徴とする。
【0018】
本発明の板材の積層品は、一方の板をダイとして他方の板を切断するために重ねた板材の積層品であって、前記他方の板に易切断部を設けたことを特徴とする。
【0019】
本発明の板材の積層品の前記易切断部は、前記他方の板の断面積を小さくしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の板材の積層品の前記易切断部は、厚み方向の一部を取り除いた溝によるか、又は厚み方向の貫通孔によるか、又はそれらの組み合わせによりなることを特徴とする。
【0021】
本発明の板材の積層品の前記溝は、ハーフエッチングにより形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の板材の切断方法は、少なくとも2枚の板を重ねて結合した積層品をダイ及びパッドで挟み、一方の板から突出する他方の板の切断部をパッドに沿って下降するパンチにより切断する板材の切断方法であって、前記パッド及びダイ間に前記一方の板の縁部を臨ませる段差を設け、前記段差に臨む一方の板を前記他方の板を切断するためのダイとして利用することを特徴とする。
【0023】
このため、切断部の位置は、一方と他方の板の取付け時に定まるため、切断部の切断位置の精度を落とすことなく、切断装置の加工精度や、切断装置に対する被切断部材の位置合わせ精度を大きく落とすことが可能となり、低コスト化が可能となる。
【0024】
また、本発明の板材の切断方法は、前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであることを特徴としてもよい。
【0025】
このため、ヘッドサスペンションの製造時にフレームと各種部品との切断精度を落とさずに、低コスト化が可能となる。
【0026】
本発明の板材の切断装置は、少なくとも2枚の板を重ねて結合した積層品をダイ及びパッドで挟み、一方の板から突出する他方の板の切断部をパッドに沿って下降するパンチにより切断する板材の切断装置であって、前記パッド及びダイ間に前記一方の板の縁部を臨ませる段差を設け、前記段差に臨む一方の板を前記他方の板を切断するためのダイとして利用することを特徴とする。
【0027】
このため、切断部の位置は、一方と他方の板の取付け時に定まるため、切断部の切断位置の精度を落とすことなく、切断装置の加工精度や、切断装置に対する被切断部材の位置合わせ精度を大きく落とすことが可能となり、低コスト化が可能となる。
【0028】
本発明の板材の切断装置の前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであることを特徴とする。
【0029】
このため、ヘッドサスペンションの製造時にフレームと各種部品との切断精度を落とさずに、低コスト化が可能となる。
【0030】
本発明のヘッドサスペンションは、請求項1の板材の切断方法であって、前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであり、前記切断によって前記ロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかを前記フレームから切り分けることを特徴とする。
【0031】
このため、ヘッドサスペンションの製造時にフレームと各種部品との切断精度を落とさずに、低コスト化が可能となる。
【0032】
本発明の板材の積層品は、一方の板をダイとして他方の板を切断するために重ねた板材の積層品であって、前記他方の板に易切断部を設けたことを特徴とする。
【0033】
このため、易切断部により容易に他方の板を切断可能となる。
【0034】
本発明の板材の積層品の前記易切断部は、前記他方の板の断面積を小さくしたことを特徴とする。
【0035】
このため、断面積の影響とクリアランスを大きくとることによる相乗効果で引きちぎりカットの状態となる。これにより切断モードが剪断モードから破断モードへと代わり、剪断モードで発生するバリやパーティクル等の塵埃の発生を抑制する。
【0036】
本発明の板材の積層品の前記易切断部は、厚み方向の一部を取り除いた溝によるか、又は厚み方向の貫通孔によるか、又はそれらの組み合わせによりなることを特徴とする。
【0037】
このため、打ち抜きやエッチング等の簡単な加工により切断部を形成可能である。
【0038】
本発明の板材の積層品の前記溝は、ハーフエッチングにより形成されることを特徴とする。
【0039】
このため、エッチングにより簡単に溝加工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明実施例により作製されるヘッドサスペンションの(A)各部品の切り離された状態の平面図、(B)フレームに連結された状態での溶接完了後の平面図、(C)フレームから切断された状態での平面図である。
【図2】本発明実施例により作製されるヘッドサスペンションのフレームに連結された状態での溶接完了後の連状態での平面図である。
【図3】ヘッドサスペンションの製造工程のフローチャートである。
【図4】本発明実施例により作製される(A)ヘッドサスペンションの断面図、(B)フレーム切断機にヘッドサスペンションが挟まれて切断前の状態の断面図、(C)同切断後の断面図である。
【図5】本発明実施例のフレーム切断部の異なる形状の平面図((A)から(C)と(E)から(G))及び(D)は(C)の断面図、(H)は(G)の断面図である。
【図6】本発明実施例のフレーム切断部の切断前の上面からの写真である。
【図7】本発明実施例のフレーム切断部の切断面の写真である。
【図8】従来例の(A)ヘッドサスペンションの断面図、(B)フレーム切断機にヘッドサスペンションが挟まれて切断前の状態の断面図、(C)同切断後の断面図である。
【図9】従来例の(A)ヘッドサスペンションの断面図、(B)フレーム切断機にヘッドサスペンションが挟まれて切断前の状態の断面図、(C)同切断後の断面図である。
【図10】従来例のフレーム切断部の切断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
回転磁気ディスクのヘッドサスペンション等の精密部品製造時におけるフレームの切断の位置決め精度を保持しながら、切断に用いる切断装置のパンチ、ダイ、パッド及び被切断部品の位置決め装置等に必要な精度を下げて低コスト化を図る目的を製品内の切断する部品から製品内相手部品方向に切断する際に、製品内相手部品をダイの代わりの基準部材として切断位置を決めて切断する方法により解決した。
【実施例】
【0042】
本発明の実施例のフレームの切断方法について以下に説明する。
【0043】
[サスペンションの製造工程]
図1は、本発明実施例により作製されるヘッドサスペンション10Aの(A)各部品の切り離された状態の平面図、(B)フレームに連結された状態での溶接完了後のヘッドサスペンション10A(積層品)の平面図、(C)フレームから切断された状態でのヘッドサスペンション10Aの平面図である。
【0044】
ヘッドサスペンション10A(積層品)は、ベースプレート13(一方の板)、スティフナー14(一方の板)、ロードビーム11(一方の板)、フレキシャ15、ヒンジ部材19(他方の板)の各部品をレーザー溶接によって融着されることによって作製される。
【0045】
ベースプレート13は、厚さ150μm程度のステンレス鋼等の金属板からなり、打ち抜き又はエッチングによって形成される。ベースプレート13は、ボイスコイルモータ(不図示)に接続されたアーム部(不図示)にヘッドサスペンション10Aを取り付けるための部品である。
【0046】
スティフナー14は、厚さ150μm程度のステンレス鋼等の金属板からなり、主としてエッチングにより形成される。スティフナー14は、ベースプレート13とヒンジ部材19を接続するための部品である。マイクロアクチュエータ部を備えたデュアル・アクチュエータ方式のヘッドサスペンションでは、マイクロアクチュエータのセラミック素子を保持する役割を有する場合がある。
【0047】
ロードビーム11は、厚さ30μm程度のステンレス鋼等の金属板からなり、主としてエッチングにより形成される。ロードビーム11は、磁気ヘッドのスライダを保持するための部品であり、エアベアリングを形成するために重要なばね部品としての働きを有する。
【0048】
フレキシャ15は、厚さ20μm程度のステンレス鋼と配線用の銅線及び絶縁材としてのポリイミドなどの積層構造からなる。フレキシャ15は、磁気ヘッドのスライダをとりつける支持部品としての機能と、その電気配線をヘッドサスペンション基部のアンプ回路に送るための配線部品としての機能を有する。
【0049】
ヒンジ部材19は、厚さ30μm程度のステンレス鋼等の金属板からなり、主としてエッチングにより形成される。ヒンジ部材19は、スティフナー14とロードビームの接続を担う役割と、最終的に部品を連状態(図2参照)で保持するための最終のフレーム(板材)としての役割りも有する。
【0050】
上記の各部品は、例えばヒンジ部材19に示すように、フレーム12と切断部(易切断部)90aを介して一体化して作製されている。図1(A)に示すようにこれら各部品が、ヒンジ部材19のように、フレーム12に取り付けられたまま互いに溶接されて取り付けられてゆき、最終的に図1(B)のようにヘッドサスペンション10A(積層品)ができる(図2参照)。この場合、フレーム12で繋がった連鎖品のままのヘッドサスペンション10Aは、その後切断部(易切断部)90aで切断されて、図1(C)に示すように個別のヘッドサスペンション10Aに分けられる。
【0051】
図3にこの製造工程をフローチャートにして示す。
【0052】
S11:各部品のアートワーク(打ち抜きやエッチング等による部品の形成)を行う。この状態で、各部品は図2でのフレーム12に示すような連鎖品として作製される。
【0053】
S13:必要な部品の曲げ(プレス)を行う。例えばロードビーム11の磁気ヘッドの支持部の曲げ加工等を行う。
【0054】
S15:各部品の組み立てを行う。各部品は連鎖品のままレーザ溶接機により面が重ねられて上下に融着される。必要に応じて(例えば、高い精度を出すために)部分的に連鎖品を用いずに個別にレーザ溶接する方法をとってもよい。
【0055】
S17:切断装置によってフレームをカットして単品として切り出す。
【0056】
以上の一連の動作によりヘッドサスペンションが完成される。本発明は、S17における、単品切り出しの際のフレームの切断に関するものである。
【0057】
[部品の切断]
図4を用いて本発明実施例によるフレームの切断方法について説明する。
【0058】
図4(A)は、切断されるヘッドサスペンション10Aの断面図である。
【0059】
ヘッドサスペンション10Aは、スティフナー14とヒンジ部材19が連鎖品状態のままレーザー溶接されており、ヒンジ部材19にはフレーム12が連結されたままである。切断部(易切断部)90gは、切断されるフレーム12及び切断時の基準位置となる端面E9を有するダイとしてのスティフナー14とからなる。切断部(易切断部)90gのフレーム12部分には、切断されやすくするための孔加工や溝加工等がされていてもよい。これら切断部(易切断部)の加工については詳細を後述する。
【0060】
図4(B)は、切断装置70のダイ75とパッド73に挟まれたヘッドサスペンション10Aの断面図である。ヘッドサスペンション19Aのダイとしてのスティフナー14がダイ75側に、切断されるフレーム12側がパッド73側に接して挟まれて固定される。ここで、パッド73の摺動面S3にパンチ71の摺動面S1が接して、上方から滑り降りてフレーム12を押し下げてスティフナー14の端面E9の上部において切断する。
【0061】
この場合、フレーム12を製品内部品であるスティフナー14が従来例におけるダイ75の代わりとなり(図8(C)及び図9(C)参照)フレーム12を切断する。スティフナー14の端面E9は、パッド73の摺動面S3とダイ75の非摺動面S5の間に位置させる必要がある。
【0062】
本方法により、すでに溶接されているヒンジ部材19(それはフレーム12でもある)とスティフナー14により、切断位置はスティフナー(ダイ;一方の板)14の端面E9となる。このため、従来例(図8、図9)で必要であった切断装置に対する切断部品の位置合わせ精度や、それに伴う切断装置のCLの精度、摺動面S1、S3及び非摺動面S5の高い工作精度を必要としなくなる。
【0063】
従来は、サブミクロン単位の切断位置を出すために、上記位置合わせや切断装置の面の合わせ精度にサブミクロンレベルの精度が必要であったが、本実施例方法によりパンチ73の摺動面S3とダイ75の非摺動面S5とのクリアランスCL2(図4(C)参照)を0.1mm程度と大きくとることが可能となる。また、切断部位置の位置合わせ精度についても、基準部材の端面E9が摺動面S3と非摺動面S5の間に位置するようにすればよいので、位置合わせ精度についてもCL2(0.1mm)の1/2程度の精度(0.05mm)があればよい。
【0064】
ダイ75に比較して、製品内部品であるスティフナー14は硬度的には弱い材料であるが、同じ部分を2度切断することはなく、切断に関してのスティフナー14の材料に問題が発生することは無い。
【0065】
[切断部(易切断部)形状]
次に切断部(易切断部)についての形状の変化形について説明する。
【0066】
図5の(A),(B),(C),(E),(F),(G)に6種類の異なる構造の切断部(易切断部)の上面図を示す。また、図5(C)の断面図を図5(D)に、図5(G)の断面図を図5(H)に示す。
【0067】
図5(A)に示すように切断部(易切断部)90aは、フレーム12の下面に接してスティフナー14がレーザー溶接されており、フレーム12の切断部(易切断部)分には、特別な加工は行われていない。
【0068】
図5(B)の例では、フレーム12の切断部(易切断部)90bは、ひとつの貫通孔とその両脇にエッチングにより厚みを薄く加工(ハーフエッチング加工)した長円部が直線状に並んでいる。
【0069】
図5(C)の例では、フレーム12の切断部(易切断部)90cは、長円部形状にエッチングにより厚みを薄く加工してある。その断面図を図5(D)に示す。
【0070】
図5(E)の例では、フレーム12の切断部(易切断部)90eは、ひとつの貫通孔とその両脇にエッチングにより厚みを薄く加工した直線部が直線状に並んでいる。
【0071】
図5(E)の例では、フレーム12の切断部(易切断部)90fは、エッチングにより厚みを薄く加工した直線部がフレームの切断幅方向全部にわたって存在する。
【0072】
図5(G)の例では、フレーム12の切断部(易切断部)90gは、ふたつの貫通孔が直線状に並んでいる。その断面図を図5(H)に示す。
【0073】
図6にふたつの貫通孔とエッチング加工により厚みを薄くした切断部(易切断部)90jの上部からの顕微鏡写真を示す。
【0074】
図7に本実施例によるフレームの切断方法により切断した切断部(易切断部)90jの電子顕微鏡写真を示す。ハーフエッチング加工した部分90juの下側に切断された断面90jlが写っている。図7の切断面90jlの写真より、切断は破断モードにより行われていることが分かる。一方、このような厚みを薄くした加工や、貫通孔と組み合わせて断面面積を小さくする加工の全く行われていない例での切断面の顕微鏡写真を図10に示す。この場合に、切断面の上部90uは剪断モードにより切断されており、切断面の下部90lは破断モードにより切断されている。剪断モードの場合には、バリやパーティクルが発生する欠点がある。
【0075】
よって、本実施例に示すように切断面の厚みを薄く加工した場合、ないしは、貫通孔90jhにより切断面の断面積を小さくした場合、又はそれらの組み合わせでは、断面積減少の効果と、切断時のクリアランスが大きく取られたこととの相乗効果により、フレームの切断時の切断面のモードが剪断より破断が大きくなるため、フレームのバリやパーティクルの発生をより効果的に抑制することができる。
【0076】
[実施例の効果]
本発明実施例のフレームの切断方法及びフレームの切断部(易切断部)により以下の効果が得られる。
【0077】
パンチ、ダイのクリアランスを例えば0.1mm程度と大きくとることが可能となり、組立て精度の維持が容易となり、低コスト化が可能となる。
【0078】
パンチ、ダイ等の加工にサブミクロンでの精度が不要となり、型部品製作が容易となり、低コスト化が可能となる。
【0079】
切断部(易切断部)の位置は、重ねられた基準部材(実施例ではスティフナー14)の端面によって決定されるため、被切断部品と切断装置との位置合わせ精度に大きく余裕が出て低コスト化が可能となる。
【0080】
型部品に従来より耐摩耗性の低い安価な材料、処理を使用することが可能となり、低コスト化が可能となる。
【0081】
基準部材となる部品は製品内部品(製品として用いられる部品)であるので、本方法により工程数や部品数を増やしたりする必要がない。
【0082】
使用時のメンテナンス停止時間、メンテナンス工数を削減することが可能となる。
【0083】
製品カット部に予め孔や溝加工を行った場合は、切断面のモードがせん断より破断が大きくなるため、ばり、パーティクルの発生をより効果的に抑制することができる。そのため、製造装置内での塵埃の発生を大きく抑制可能となり、製品の欠陥発生度を抑制する。また、磁気回転ディスク装置の中に装着するヘッドサスペンションとして、装置内での塵埃発生等が大きく抑制されて、磁気回転ディスク装置の信頼性を大きく高める。
【0084】
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うヘッドサスペンション、アームその他回転磁気ディスク内で用いられる他部品や、さらに他の精密機器装置において用いられる部品もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含されるものである。
【0085】
本実施例においては、ヒンジ部材19のみが連鎖品となっている例について示したが、他のベースプレート13、スティフナー14、ロードビーム11等も同様に連鎖品として形成されて、他部品との溶接後に同様にフレームの切断が行われる。よって、これら他部品のフレーム切断時にも本発明が適用可能であることはもちろんである。
【0086】
本実施例においては、フレームの切断部の厚みを薄くする加工については、ハーフエッチングによる方法について説明したが、ハーフエッチングに限らず、例えばプレス加工機によるプレスによって厚みを薄くする加工法をとってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10A…ディスク装置用ヘッドサスペンション(積層品)
11…ロードビーム(一方の板)
12…フレーム(他方の板)
13…ベースプレート(一方の板)
14…スティフナー(一方の板;ダイ)
15…フレキシャ
19…ヒンジ部材(他方の板)
71…パンチ
73…パッド
75…ダイ
90…切断位置(従来例)
90a,b,c,e,f,g,j…切断部(易切断部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の板を重ねて結合した積層品をダイ及びパッドで挟み、一方の板から突出する他方の板の切断部をパッドに沿って下降するパンチにより切断する板材の切断方法であって、
前記パッド及びダイ間に前記一方の板の縁部を臨ませる段差を設け、
前記段差に臨む一方の板を前記他方の板を切断するためのダイとして利用する
ことを特徴とする板材の切断方法。
【請求項2】
請求項1の板材の切断方法であって、
前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、
前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームである
ことを特徴とする板材の切断方法。
【請求項3】
少なくとも2枚の板を重ねて結合した積層品をダイ及びパッドで挟み、一方の板から突出する他方の板の切断部をパッドに沿って下降するパンチにより切断する板材の切断装置であって、
前記パッド及びダイ間に前記一方の板の縁部を臨ませる段差を設け、
前記段差に臨む一方の板を前記他方の板を切断するためのダイとして利用する
ことを特徴とする板材の切断装置。
【請求項4】
請求項3の板材の切断装置であって、
前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、
前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームである
ことを特徴とする板材の切断装置。
【請求項5】
請求項1の板材の切断方法であって、
前記一方の板は、ヘッドサスペンションのロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかであり、
前記他方の板は、ヘッドサスペンションを複数の連鎖品として組み立てるフレームであり、
前記切断によって前記ロードビーム、スティフナー又はベースプレートの何れかを前記フレームから切り分ける
ことを特徴とするヘッドサスペンション。
【請求項6】
一方の板をダイとして他方の板を切断するために重ねた板材の積層品であって、
前記他方の板に易切断部を設けた
ことを特徴とする板材の積層品。
【請求項7】
請求項6の板材の積層品であって、
前記易切断部は、前記他方の板の断面積を小さくした
ことを特徴とする板材の積層品。
【請求項8】
請求項6又は7の板材の積層品であって、
前記易切断部は、厚み方向の一部を取り除いた溝によるか、又は厚み方向の貫通孔によるか、又はそれらの組み合わせによりなる
ことを特徴とする板材の積層品。
【請求項9】
請求項8の板材の積層品であって、
前記溝は、ハーフエッチングにより形成される
ことを特徴とする板材の積層品。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201438(P2010−201438A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47334(P2009−47334)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】