説明

板材収納装置

【課題】板材の載置面積を低減することができ、板材を容易かつ安価に収納することができる板材収納装置を提供する。
【解決手段】搬送ラインL上の板材Pを下面Pu側から支持する複数の支持アーム2と、支持アーム2の一端側を回動支点Sとして支持アーム2を回動させて搬送ラインLから起立させる駆動手段3と、駆動手段3により起立された支持アーム2上に載置された板材Pを上面Pt側から支持する転倒防止手段4と、を備え、支持アーム2は、回動支点S側に形成されるとともに起立時に板材Pを支持するストッパ部21を有し、駆動手段3は、複数の支持アーム2の中から少なくとも二本以上の支持アーム2を同期して回動できるように構成されており、搬送ラインL上に載置された板材Pは、支持アーム2の同期回動により順次起立した状態で収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材の保管や搬送等に使用される板材収納装置に関し、特に、加工工程中における板材の保管や搬送等に適した板材収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶の外殻に使用される鋼板は、船体曲面を形成するために、平板状の板材である鋼板に対して線上加熱等により曲げ加工が施される。かかる曲げ加工は、例えば、板材一枚の加工時間が2〜4時間、一日の加工枚数は4〜5枚程度であり、4〜5枚の板材を2〜4時間毎に加工工程に搬送しなければならない。そして、加工工程に鋼板を搬送するためには、鋼板を一時的に収納又は保管しておく必要がある。鋼材の収納や保管には、例えば、工場等の床面上に敷いた枕木の上に鋼材をバラ積みして平置きする場合、工場等の床面に平置きされた鋼材の上に枕木を敷いて積み重ねて保管する場合、自動倉庫のような装置を使用して収納する場合等がある。
【0003】
鋼材等の板材を収納する自動倉庫は、一般的に、複数の鋼板を収納する収納棚と、鋼板の搬出入を行うハンドリング装置と、を有する(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。ここで、特許文献1には、板材を横置きに収納する収納棚が開示され、特許文献2には、板材を縦置きに収納する収納棚が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−61526号公報
【特許文献2】特開平7−172525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、板材をバラ積みして平置きする場合には、板材の枚数分だけ載置面積を必要とし、広大な面積を用意しなければならないという問題があった。特に、船舶の外殻に使用される鋼板は、例えば、3m×10m以上の大きさを有し、4〜5枚程度でも120〜150m以上の面積を確保しなければならなかった。
【0006】
また、板材を積み重ねて平置きする場合には、板材一枚分の載置面積を用意するだけでよいが、板材の搬出入毎に枕木の配置や除去を行わなければならず、板材の積み重ね時にクレーンを使用する必要があり、玉掛け作業等を必要とし、板材の積み重ね作業に時間及び手間を要するという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1や特許文献2に記載された自動倉庫を使用する場合には、一般に、自動倉庫は保管枚数が数十枚以上を前提としており、広い設置場所が必要となり、4〜5枚の板材の保管には無駄が多く、高価な装置となってしまう、という問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、板材の載置面積を低減することができ、板材を容易かつ安価に収納することができる板材収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、板材の加工工程に板材を搬入する又は板材の加工工程から板材を搬出する搬送ラインに配置される板材収納装置であって、前記搬送ライン上の板材を下面側から支持する複数の支持アームと、該支持アームの一端側を回動支点として前記支持アームを回動させて前記搬送ラインから起立させる駆動手段と、該駆動手段により起立された前記支持アーム上に載置された前記板材を上面側から支持する転倒防止手段と、を備え、前記支持アームは、前記回動支点側に形成されるとともに起立時に前記板材を支持するストッパ部を有し、前記駆動手段は、前記複数の支持アームの中から少なくとも二本以上の支持アームを同期して回動できるように構成されており、前記搬送ライン上に載置された前記板材は、前記支持アームの同期回動により順次起立した状態で収納される、ことを特徴とする板材収納装置が提供される。
【0010】
前記支持アームは、同期回動される前記支持アームの回動支点が同心軸上に配置されており、最初に回動される前記支持アームの回動支点は、前記搬送ラインから最も離間した位置に設定され、順次、前記搬送ラインに接近する方向に前記支持アームの回動支点の位置が設定されるように構成されていてもよい。
【0011】
前記支持アームは、同期順序に配列された支持アーム群を有し、該支持アーム群が前記搬送ラインに沿って複数配置されていてもよい。
【0012】
前記支持アームは、前記搬送ラインに配置された複数の駆動ローラの隙間を通過可能な幅に形成されていてもよい。
【0013】
前記支持アームは、前記板材を支持する反対側の面に、次の同期回動により起立される板材と接触する位置に配置された弾性体を有していてもよい。
【0014】
前記駆動手段は、カウンターバランスウェイトを有していてもよい。
【0015】
前記転倒防止手段は、最初に回動される前記支持アームの回動が停止した状態で、前記板材の上面と対峙する面に配置された弾性体を有していてもよい。
【0016】
前記板材収納装置の前記搬送ラインを挟んで反対側に配置された前記板材の載置場所と、該載置場所から前記搬送ライン上に前記板材を運搬可能なクレーンと、を有していてもよい。
【0017】
前記板材収納装置は、走行可能に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係る板材収納装置によれば、板材を搬送ライン上で略垂直に起立させて収納していることから、板材を平置きする必要がなく、板材の載置面積を低減することができる。また、支持アームを回動させるだけで板材を収納することができることから、板材の収納に際し枕木やクレーンを使用する必要がなく、容易かつ短時間に板材を収納することができる。また、3〜5枚程度の少量の板材の収納に適していることから、装置の小型化及び低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る板材収納装置を示す側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る板材収納装置を示す平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る板材収納装置を示す正面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る板材収納装置の作用を示す説明図であり、(a)は待機状態、(b)は一枚目収納状態、(c)は二枚目収納状態、(d)は三枚目収納状態、を示している。
【図5】本発明の第二実施形態に係る板材収納装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る板材収納装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は背面図、である。
【図7】図6に示した板材収納装置の変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の第一実施形態及び第三実施形態に係る板材収納装置を使用した板材加工ラインを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る板材収納装置の第一実施形態について、図1〜図3を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る板材収納装置を示す側面図である。図2は、本発明の第一実施形態に係る板材収納装置を示す平面図である。図3は、本発明の第一実施形態に係る板材収納装置を示す正面図である。
【0021】
本発明の第一実施形態に係る板材収納装置1は、図1〜図3に示したように、板材Pの加工工程に板材Pを搬入する搬送ラインLに配置される板材収納装置1であって、搬送ラインL上の板材Pを下面Pu側から支持する複数の支持アーム2と、支持アーム2の一端側を回動支点Sとして支持アーム2を回動させて搬送ラインLから起立させる駆動手段3と、駆動手段3により起立された支持アーム2上に載置された板材Pを上面Pt側から支持する転倒防止手段4と、を備え、支持アーム2は、回動支点S側に形成されるとともに起立時に板材Pを支持するストッパ部21を有し、駆動手段3は、複数の支持アーム2の中から少なくとも二本以上の支持アーム2を同期して回動できるように構成されており、搬送ラインL上に載置された板材Pは、支持アーム2の同期回動により順次起立した状態で収納される。なお、説明の便宜上、図2では駆動手段3の図を省略し、図3では支持アーム2の支持構造及び転倒防止手段4の図を省略してある。
【0022】
前記板材Pは、例えば、船舶の外殻に使用される鋼板である。特に、本実施形態は、板材Pが重量物(例えば、数トン)であって、収納枚数が数枚(例えば、3〜5枚程度)である場合に効果的である。ただし、板材Pはかかる鋼板に限定されるものではなく、アルミニウム等の他の金属板であってもよいし、木材やプラスチック等の金属以外の板材であってもよい。
【0023】
前記搬送ラインLは、例えば、コンベア装置5を有する。コンベア装置5は、複数の駆動ローラ51を有する。かかる駆動ローラ51の駆動により、板材Pは、板材収納装置1の位置から下流の加工工程に搬送される。また、コンベア装置5への板材Pの供給は、コンベア装置5の上流側から搬送するようにしてもよいし、板材収納装置1の反対側に、板材Pを搬送台車、クレーン、フォークリフト等の搬送手段により搬送し、クレーンによりコンベア装置5の駆動ローラ51上に板材Pを載置するようにしてもよい。
【0024】
コンベア装置5は、支持アーム2が通過できる構造であることが好ましく、図示したように、複数の駆動ローラ51のみによって構成してもよいし、支持アーム2が通過しない部分はベルトコンベア式等の他の公知の搬送手段であってもよい。なお、第一実施形態では、板材Pを加工工程に搬入する場合について説明するが、搬送ラインLは、板材Pを加工工程から搬出するラインであってもよい。
【0025】
前記支持アーム2は、コンベア装置5上の載置された板材Pを持ち上げて板材Pを一時的に搬送ラインLから退避させる機能を有する。具体的には、板材Pの下面Puを支える支持部22と、支持部22との段差部を構成するストッパ部21と、支持アーム2の回動支点Sを構成する回動軸23と、駆動手段3に接続される把手部24と、支持アーム2を固定する支持台25と、を有する。
【0026】
支持部22は、図2に示したように、搬送ラインLに配置された複数の駆動ローラ51の隙間を通過可能な幅に形成されている。また、支持部22の長さは、板材Pの重心位置を支持できる長さ(例えば、板幅の半分以上の長さ)を有する。収納する板材Pによって板幅や重心位置が変わる場合には、支持部22の長さは、駆動ローラ51の回転軸方向長さの全長と略同等の長さに形成しておけばよい。支持部22の上面には、板材Pとの摩擦力を高めるための工夫がなされていてもよい。また、支持部22(支持アーム2)は、板材Pを支持する反対側の面(裏面)に、次の同期回動により起立される板材Pと接触する位置に配置された弾性体22aを有していてもよい。弾性体22aの配置する位置や大きさは任意である。また、弾性体22aは、最後に起立される支持アーム2(第三支持アーム2c)には配置しなくてもよい。
【0027】
ストッパ部21は、支持部22との段差部によって構成される。この段差部で板材Pの側面部を支持する。ストッパ部21は、図2に示したように、支持アーム2を水平にして待機状態とした時に、搬送ラインL上の破線で示した板材Pの側面に沿って配置されるように形成される。
【0028】
回動軸23は、支持アーム2に挿通され、その両端は軸受23aにより支持される。軸受23aは、支持台25に固定される。なお、支持アーム2のみで回動軸23を支持できる場合には、軸受23aを省略するようにしてもよい。
【0029】
把手部24は、回動軸23を挟んで支持部22の反対側に配置される。把手部24は、支持部22と鈍角の交差角度を有するように配置してもよいし、支持部22の延長線上に配置するようにしてもよい。かかる把手部24の端部を駆動手段3により移動させることによって、支持部22は回動軸23を中心に回動される。
【0030】
支持台25は、鋼材により組まれたテーブルであり、上面に支持アーム2及び転倒防止手段4が固定されている。支持台25は、支持アーム2及び転倒防止手段4を固定することができ、支持アーム2の回動を阻害しないものであれば、どのような構成であってもよく、図示したものに限定されるものではない。
【0031】
また、支持アーム2は、図1に示したように、転倒防止手段4側からコンベア装置5側に向かって、第一支持アーム2a、第二支持アーム2b、第三支持アーム2cを有する。板材Pの収納時には、第一支持アーム2a、第二支持アーム2b、第三支持アーム2cの順に起立される。また、支持アーム2は、図2に示したように、同期順序に配列された支持アーム群(第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Z)を有し、支持アーム群(第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Z)が搬送ラインLに沿って複数配置されている。すなわち、各支持アーム群2X,2Y,2Zは、それぞれ第一支持アーム2a、第二支持アーム2b、第三支持アーム2cを有する。そして、第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Zの三本の第一支持アーム2aは同期して回動され、第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Zの三本の第二支持アーム2bは同期して回動され、第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Zの三本の第三支持アーム2cは同期して回動される。
【0032】
したがって、支持アーム2は、同期回動される支持アーム2の回動支点Sが同心軸上に配置されており、最初に回動される支持アーム2(第一支持アーム2a)の回動支点Sは、搬送ラインLから最も離間した位置に設定され、順次、搬送ラインLに接近する方向に支持アーム2の回動支点Sの位置が設定されているといえる。かかる構成により、複数の支持アーム2(例えば、第一支持アーム2a〜第三支持アーム2c)を有する場合であっても、支持アーム2の間隔を狭く配置することができ、コンベア装置5の駆動ローラ51の間隔に合わせて支持アーム2を配置することができる。なお、第一支持アーム2a〜第三支持アーム2cは、各間隔を広く取れる場合や軸受23aを省略できる場合には、第一支持アーム2a〜第三支持アーム2cの回動軸23(回動支点S)を同心軸上に配置するようにしてもよい。
【0033】
また、第一支持アーム2a〜第三支持アーム2cを同期順序に配列した支持アーム群(第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Z)を構成することにより、板材Pの大きさ、重量、重心位置等の条件に応じて、最適な支持アーム2(第一支持アーム2a〜第三支持アーム2c)の間隔を確保することができるように支持アーム群(第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群2Z)を配置することができる。なお、支持アーム群を構成しない場合には、複数の支持アーム2を並列して配置し、任意の二本以上の支持アーム2を選択して同期して回動させるようにしてもよい。
【0034】
上述した第一実施形態では、三本の支持アーム2(第一支持アーム2a〜第三支持アーム2c)を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、収納したい板材Pの枚数に合わせて適宜増減することができ、支持アーム2は、一本であってもよいし、二本であってもよいし、四本以上であってもよい。
【0035】
前記駆動手段3は、支持アーム2を回動軸23中心に回動させる機能を有する。駆動手段3は、支持アーム2の把手部24を待機位置と起立位置との間で移動させることができる手段であれば、電動モータやアクチュエータ等の種々の動力源を使用することができ、歯車機構やリンク機構等と組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0036】
第一実施形態における駆動手段3は、動力源である電動モータ31と、電動モータ31に接続されたスプロケット32と、スプロケット32に掛け回されるチェーンベルト33と、チェーンベルト33の端部に接続されたカウンターバランスウェイト34と、カウンターバランスウェイト34とスプロケット32との間に配置された補助スプロケット35と、を有する。
【0037】
図1に示したように、チェーンベルト33は、一端が支持アーム2の把手部24に接続され、他端がカウンターバランスウェイト34に接続されている。カウンターバランスウェイト34は、補助スプロケット35を介して垂下されており、自重によりチェーンベルト33に張力を負荷している。カウンターバランスウェイト34は、錘の枚数を変更することにより重さを任意に変更することができる。かかるカウンターバランスウェイト34を利用することにより、電動モータ31の出力を小さくすることができ、装置の小型化や低廉化を図ることができる。
【0038】
電動モータ31は、コンベア装置5の下部に配置される。支持アーム2を待機位置と起立位置とに切り換える際には、支持アーム2の把手部24をコンベア装置5(駆動ローラ51)の駆動軸方向に直進移動させる必要がある。そこで、第一実施形態では、把手部24を移動させるストロークを確保するために、電動モータ31をコンベア装置5の下部に配置している。電動モータ31は、図3に示したように、大きさや配置場所等との関係により、スプロケット32の左右いずれかの側に配置される。なお、スプロケットの配置等を工夫することにより、電動モータ31を支持アーム2の支持台25に配置するようにしてもよい。
【0039】
上述した第一実施形態における駆動手段3は、各支持アーム2と一対一に対応するように配置されているが、一つの駆動手段3により複数の支持アーム2を連動して駆動できるように構成した場合には、駆動手段3の個数を減らすようにしてもよい。
【0040】
前記転倒防止手段4は、第一支持アーム2aにより収納される板材Pの上面Ptを支える機能を有する。図1に示したように、転倒防止手段4は、支持台25上に立設された支柱41と、板材Pとの衝撃を緩和する弾性体42と、を有する。すなわち、転倒防止手段4は、最初に回動される支持アーム2(第一支持アーム2a)の回動が停止した状態で、板材Pの上面Ptと対峙する面に配置された弾性体42を有する。かかる転倒防止手段4は、図2に示したように、例えば、第一支持アーム群2Xと第二支持アーム群2Yとの間及び第二支持アーム群2Yと第三支持アーム群2Zとの間に配置される。板材Pの重量が大きい場合には、転倒防止手段4の個数を増加したり、弾性体42の面積を拡大したりするようにしてもよい。
【0041】
次に、上述した第一実施形態に係る板材収納装置1の作用について説明する。ここで、図4は、本発明の第一実施形態に係る板材収納装置の作用を示す説明図であり、(a)は待機状態、(b)は一枚目収納状態、(c)は二枚目収納状態、(d)は三枚目収納状態、を示している。
【0042】
図4(a)は、板材収納装置1が板材Pを収納する前の状態である待機状態を示している。待機状態では、全ての支持アーム2がコンベア装置5の駆動ローラ51と並列に略水平状態に配置されている。具体的には、駆動手段3を駆動させることによって、カウンターバランスウェイト34を持ち上げ、支持アーム2に接続されたチェーンベルト33を緩めると、支持アーム2は自重により回動軸23中心に回動する。そして、支持アーム2が水平状態になるまで駆動手段3は駆動される。
【0043】
図4(b)は一枚目の板材Pを第一支持アーム2aにより収納した状態を示している。図4(a)の待機状態において、コンベア装置5上に一枚目の板材Pが配置されると、駆動手段3が駆動し、第一支持アーム2aを起立させる。コンベア装置5上に板材Pを配置する際には、板材Pを支持アーム2のストッパ部21に当接させることによって、板材Pを持ち上げた際の衝撃を緩和することが好ましい。第一支持アーム2aを起立させる際には、駆動手段3を駆動させ、カウンターバランスウェイト34を下に降ろし、支持アーム2に接続されたチェーンベルト33を引っ張ると、支持アーム2は回動軸23中心に回動する。そして、支持アーム2が略垂直状態(例えば、約85°)になるまで駆動手段3は駆動される。
【0044】
また、図2及び図3に示したように、複数の支持アーム群2X〜2Zを有する場合には、第一支持アーム群2Xの第一支持アーム2a、第二支持アーム群2Yの第一支持アーム2a及び第三支持アーム群2Zの第一支持アーム2aは、同期して回動され、三本の第一支持アーム2aで板材Pを支持し起立させる。
【0045】
図4(c)は二枚目の板材Pを第二支持アーム2bにより収納した状態を示している。図4(b)の待機状態において、コンベア装置5上に二枚目の板材Pが配置されると、駆動手段3が駆動し、第二支持アーム2bを起立させる。第二支持アーム2bの起立方法は、第一支持アーム2aの場合と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0046】
図4(d)は三枚目の板材Pを第三支持アーム2cにより収納した状態を示している。図4(c)の待機状態において、コンベア装置5上に三枚目の板材Pが配置されると、駆動手段3が駆動し、第三支持アーム2cを起立させる。第三支持アーム2cの起立方法は、第一支持アーム2aの場合と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
かかる操作によって、三枚の板材Pが板材収納装置1に収納される。その後、四枚目の板材Pをコンベア装置5上に配置し、次の加工工程に備える。加工工程の準備ができたら、四枚目の板材Pを加工工程に搬送する。四枚目の板材Pの加工中に、板材収納装置1に収納された三枚目の板材Pをコンベア装置5上に戻す。具体的には、三本の第三支持アーム2cを同期回動させ、待機位置に変更することにより、三枚目の板材Pはコンベア装置5の駆動ローラ51上に配置される。四枚目の板材Pの加工が終了したら、三枚目の板材Pが加工工程に搬送される。以下同様にして、三枚目の板材Pの加工中に、板材収納装置1に収納された二枚目の板材Pをコンベア装置5上に戻し、二枚目の板材Pの加工中に、板材収納装置1に収納された一枚目の板材Pをコンベア装置5上に戻す。
【0048】
次に、本発明に係る板材収納装置1の他の実施形態について説明する。ここで、図5は、本発明の第二実施形態に係る板材収納装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、である。図6は、本発明の第三実施形態に係る板材収納装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は背面図、である。また、図7は、図6に示した板材収納装置の変形例を示す平面図である。
【0049】
図5に示した第二実施形態は、板材収納装置1の搬送ラインLを挟んで反対側に配置された板材Pの載置場所6と、載置場所6から搬送ラインL上に板材Pを運搬可能なクレーン7と、を有する。載置場所6には、図5(a)に示したように、例えば、搬送台車61に載置された板材Pが搬送される。クレーン7は、コンベア装置5の搬送方向と垂直な方向に延設された一対に走行レール71と、走行レール71を所定の高さに支持する支持部材72と、走行レール71上に配置された走行台車73と、走行台車73に配置された把持部74と、を有する。
【0050】
走行台車73は、図5(b)に示したように、板材Pの長手方向に沿って配置され、短手方向に沿って移動可能に構成されている。また、走行台車73には複数の把持部74が配置されている。把持部74は、例えば、吸盤、磁石、電磁石等により板材Pを吸着して把持するものであるが、板材Pの種類や重量によって適宜変更するようにしてもよい。かかる第二実施形態は、工場内にクレーン等の板材Pを搬送する装置がない場合に有効である。
【0051】
図6に示した第三実施形態は、曲げ加工を施した板材Pを収納するようにしたものである。図6(a)に示したように、曲げ加工を施した板材Pは波打っており、収納時に広い収納幅を必要とする。そこで、ストッパ部21を収納幅まで広げるための補助部材26がストッパ部21の上部に配置されている。また、収納幅が広いことから、回動軸23の回動範囲を第一実施形態ほど大きく確保できず、第三実施形態における板材収納装置1では、二枚の板材Pを収納する構成となっている。具体的には、第三実施形態における板材収納装置1は、第一支持アーム2aと第二支持アーム2bとを有する。なお、図6(a)では板材Pを支持した状態の第一支持アーム2aのみを起立させた場合を図示し、図6(b)では板材Pを収納していない状態の第一支持アーム2a及び第二支持アーム2bを起立させた場合を図示している。
【0052】
また、駆動手段3にはアクチュエータ36を使用している。具体的には、支持アーム2の把手部24にアクチュエータ36の先端部が回動可能に接続されており、アクチュエータ36の伸縮により把手部24を上下に移動できるように構成されている。アクチュエータ36は、把手部24の回動による水平移動を吸収するために支持台25に回動可能に接続されている。すなわち、支持アーム2と駆動手段3は、リンク機構により連結されている。
【0053】
また、図6(b)に示したように、転倒防止手段4は、第一支持アーム2aの背後に配置されている。かかる転倒防止手段4は、例えば、一対の鋼材により構成される支柱41と、支柱41間に掛け渡された複数の弾性体42と、を有する。また、第二支持アーム2bにより収納される板材Pは、第一支持アーム2aの下面により転倒が防止される。第一実施形態と同様に、第一支持アーム2aの板材Pを支持する反対側の面(裏面)に弾性体を配置するようにしてもよい。
【0054】
また、第二支持アーム2bの回動する角度を安定させるために、補助部材26の背面を支持する補助部材支持手段4aを配置するようにしてもよい。かかる補助部材支持手段4aは、転倒防止手段4と同様に、例えば、一対の鋼材により構成される支柱と、支柱間に掛け渡された弾性体42と、を有する。
【0055】
図6(b)に示すように、板材収納装置1は、二本の支持アーム2(第一支持アーム2a及び第二支持アーム2b)を備えた三つの支持アーム群(第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群Z)を有する。かかる第一支持アーム群2X〜第三支持アーム群Zは、支持台25上に配置され、支持台25は台車27上に配置されている。台車27は、工場等の床面に敷設されたレール28を走行する複数の車輪27aを有する。台車27は、自走式であってもよいし牽引式であってもよい。また、レール28の両脇には、図6(a)に示したように、台車27の走行を補助するレールガイド28aが配置されていてもよい。なお、図6(b)では、レールガイド28aの図を省略してある。かかる構成によって、二枚の板材Pを収納した板材収納装置1は、レール28に沿って移動可能に構成され、所定の場所に板材Pを搬送することができる。
【0056】
図7に示した第三実施形態の変形例は、図6に示した板材収納装置1を二台並列に配置したものである。図6に示した板材収納装置1は、二枚の板材Pしか収納できないため、三枚以上の板材Pを収納する場合には、板材収納装置1を往復搬送させる必要がある。そこで、図7に示したように、二台の板材収納装置1を配置することによって、一台目の板材収納装置1が二枚の板材Pを収納して移動することによって、二台目の板材収納装置1に二枚の板材Pを収納することができ、合計四枚の板材Pを収納することができる。
【0057】
最後に、上述した板材収納装置1を使用した板材加工ラインについて説明する。ここで、図8は、本発明の第一実施形態及び第三実施形態に係る板材収納装置を使用した板材加工ラインを示す平面図である。なお、板材収納装置1の図は、適宜簡略化している。
【0058】
図8に示した板材加工ラインは、板材搬入部8と、コンベア装置5と、第一実施形態に係る板材収納装置1aと、板材加工部9と、第三実施形態に係る板材収納装置1bと、板材搬出部10と、を有する。板材搬入部8に搬送された板材Pは、クレーンやフォークリフトによりコンベア装置5上に移載される。このとき、板材収納装置1aは待機状態にセットされている。
【0059】
板材収納装置1aは、図4(a)〜(d)に示した手順で板材Pを三枚の板材Pを収容する。四枚目の板材Pは、板材収納装置1aに収納されず、コンベア装置5上で搬送され、板材加工部9に搬入される。板材加工部9では、例えば、板材Pの曲げ加工が行われる。板材加工部9は、塗装工程、切削工程等の他の加工を行うものであってもよい。なお、一枚目の板材Pを先に板材加工部9に搬送し、その加工中に、二枚目〜四枚目の板材Pを板材収納装置1aに収納するようにしてもよい。
【0060】
加工が終了した板材Pは、第三実施形態に係る板材収納装置1bに収納される。板材収納装置1bは、二枚の板材Pを収納した後、レール28上を走行し、板材搬出部10に隣接した位置まで板材Pを搬送する。その後、板材収納装置1bは、図示しない搬送装置や荷台に板材Pを受け渡す。二枚の板材Pを搬出した板材収納装置1bは、再び板材加工部9と隣接した位置に帰送する。なお、図7に示したように、板材収納装置1b(1)を二列に配置した場合には、一回の処理で合計四枚の板材Pを収納することができる。
【0061】
このように、上述した本発明に係る板材収納装置1によれば、板材Pを搬送ラインL上で略垂直に起立させて収納していることから、板材Pを平置きする必要がなく、板材Pの載置面積を低減することができる。また、支持アーム2を回動させるだけで板材Pを収納することができることから、板材Pの収納に際し枕木やクレーンを使用する必要がなく、容易かつ短時間に板材Pを収納することができる。また、3〜5枚程度の少量の板材Pの収納に適していることから、装置の小型化及び低廉化を図ることができる。
【0062】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、第一実施形態〜第三実施形態を適宜組み合わせてもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1,1a,1b 板材収納装置
2 支持アーム
2a 第一支持アーム
2b 第二支持アーム
2c 第三支持アーム
2X 第一支持アーム群
2Y 第二支持アーム群
2Z 第三支持アーム群
3 駆動手段
4 転倒防止手段
4a 補助部材支持手段
21 ストッパ部
22a 弾性体
34 カウンターバランスウェイト
42 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材の加工工程に板材を搬入する又は板材の加工工程から板材を搬出する搬送ラインに配置される板材収納装置であって、
前記搬送ライン上の板材を下面側から支持する複数の支持アームと、
該支持アームの一端側を回動支点として前記支持アームを回動させて前記搬送ラインから起立させる駆動手段と、
該駆動手段により起立された前記支持アーム上に載置された前記板材を上面側から支持する転倒防止手段と、を備え、
前記支持アームは、前記回動支点側に形成されるとともに起立時に前記板材を支持するストッパ部を有し、
前記駆動手段は、前記複数の支持アームの中から少なくとも二本以上の支持アームを同期して回動できるように構成されており、
前記搬送ライン上に載置された前記板材は、前記支持アームの同期回動により順次起立した状態で収納される、
ことを特徴とする板材収納装置。
【請求項2】
前記支持アームは、同期回動される前記支持アームの回動支点が同心軸上に配置されており、最初に回動される前記支持アームの回動支点は、前記搬送ラインから最も離間した位置に設定され、順次、前記搬送ラインに接近する方向に前記支持アームの回動支点の位置が設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項3】
前記支持アームは、同期順序に配列された支持アーム群を有し、該支持アーム群が前記搬送ラインに沿って複数配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項4】
前記支持アームは、前記搬送ラインに配置された複数の駆動ローラの隙間を通過可能な幅に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項5】
前記支持アームは、前記板材を支持する反対側の面に、次の同期回動により起立される板材と接触する位置に配置された弾性体を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、カウンターバランスウェイトを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項7】
前記転倒防止手段は、最初に回動される前記支持アームの回動が停止した状態で、前記板材の上面と対峙する面に配置された弾性体を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項8】
前記板材収納装置の前記搬送ラインを挟んで反対側に配置された前記板材の載置場所と、該載置場所から前記搬送ライン上に前記板材を運搬可能なクレーンと、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。
【請求項9】
前記板材収納装置は、走行可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の板材収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−51724(P2012−51724A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197788(P2010−197788)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【出願人】(503223223)株式会社IHIエスキューブ (27)
【Fターム(参考)】