説明

板状の加工物を積層するためのプレス機および方法

【課題】膜交換時間を短縮化させる構成によりプレス作業の休止時間の短縮を可能とする積層プレス技術を提供する。
【解決手段】閉状態において周回シール6を用いて真空チャンバ7を作り出している下側プレス台1と上側プレス台1と、加工物を収容するために設けられた排気可能な製品側ハーフチャンバ9と圧力形成可能な加圧側ハーフチャンバ10とに真空チャンバを区分する柔軟な膜8とを備えている。製品側ハーフチャンバと加圧側ハーフチャンバとの圧力差によって加工物が真空チャンバの下側面に圧接されるように構成された膜が膜フレーム2に取り付けられ、この膜フレーム2が上側プレス台に着脱式に装着可能で、個別に取り扱い可能である。膜を取り付けている膜フレームを交換フレームとして使用可能状態で用意している膜フレームマガジンが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に板状の加工物を熱圧作用下で積層するためのプレス機ならびに、プレス機を用いて実質的に板状の加工物を熱圧作用下で積層するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
したがって、この種のプレス機は、閉状態において単一構成または複数構成の周回シールにより、内部が柔軟な膜によって製品側ハーフチャンバと加圧側ハーフチャンバとに区分された1つの真空チャンバを作り出す下側プレス台と上側プレス台とを備えている。この真空チャンバの製品側ハーフチャンバは少なくとも1つの加工物を収容するために使用されるとともに排気可能であり、他方、加圧側ハーフチャンバは圧力付与可能に形成されている。製品側ハーフチャンバの排気作用または加圧側ハーフチャンバの圧力形成(圧力付与)作用あるいはその両方の作用によって生じるこの真空チャンバ内の圧力差に基づき、加工物は上記の膜の働きで直接または間接にこの真空チャンバの下側面に圧接されて、積層プロセスが実施される。
【0003】
実質的に板状の加工物を熱圧作用下で積層するためのこの種の方法は、上述したようなプレス機を使用して実施される。その際、少なくとも1つの加工物が、下側プレス台と上側プレス台とによって形成されて柔軟な膜により製品側ハーフチャンバと加圧側ハーフチャンバとに区分された真空チャンバ内に搬入され、この真空チャンバの製品側ハーフチャンバ内に配置される。その後に、製品側ハーフチャンバの排気作用または加圧側ハーフチャンバは圧力増強作用あるいはその両方の作用を通じて生じる真空チャンバ内の圧力差により上記の膜は加工物を直接または間接に真空チャンバの下側面に圧接し、結果として、積層プロセスが実施される。
【0004】
この種のプレス機は、太陽電池モジュールの積層に使用される。そのため、好ましくは一定枚数の加熱台を備え、これら加熱台の間にそれぞれ1つのプレス段が形成される多段プレス機が使用される。それぞれの加熱台の上方、したがって上方に設けられた加熱台の下側面には、真空チャンバを構成するシールフレームがそれぞれ配置されており、この真空チャンバはプレス段の閉時に下側に配置された加熱台上にシールフレームが密接されることにより排気可能となる。シールフレームにはその全体にわたって弾性を有する、つまり柔軟な膜が取り付けられており、この膜は真空チャンバを製品側ハーフチャンバと加圧側ハーフチャンバとに区分するとともに太陽電池モジュールの積層に必要な下側加熱台に対する圧接力を付与する圧接手段としても使用される。そのため、プレス段の閉時にこの膜の下側、つまりこの膜と下側加熱台との間にあって真空チャンバの製品側ハーフチャンバを形成する空間が排気され、これによって膜は加工物に密着する。さらに、必要に応じ、上側加熱台に対するシールフレームの密接によって作り出される、下側が膜によって境界付けられた真空チャンバ加圧側ハーフチャンバに圧縮空気が供給されて、膜と加工物との間の密着力がさらに増強される。この場合、製品側ハーフチャンバの排気によって加工物が気泡なしで積層されることが可能となるが、それは、万一空気などが閉じ込められていてもなお、加工物に使用された接着剤の軟化温度到達前にそれらが排出されるからである。加工物が下側加熱台と接触することにより、加工物は、通例、加工物の接着層に含まれている接着剤の軟化温度を経て硬化温度に至るまで徐々に加熱されるため、積層プロセスは接着剤が完全に硬化するまで持続させることが可能である。
【0005】
この種のプレス機による加工物の積層に際して、できるだけ高いコストパフォーマンスを達成するため、各工程の所要時間をできるだけ短縮することが要求される。ただし、積層プロセスの所要時間は任意に短縮することができないために、各工程の所要時間の短縮化には限界がある。したがって、高いコストパフォーマンスの達成には、本来の積層プロセス以外のその他の時間、例えば加熱プロセスや冷却プロセスを短縮すること、特に製造休止時間を短縮することも重要である。
【0006】
また、欠陥を生じた膜の交換も過小評価されてはならない時間要素であることが判明した。この種のプレス機の上記の柔軟な膜は高い機械負荷に耐えなければならず、膜には作業時間経過とともに相応の損耗が生ずる。一般に2.000〜3.000回の積層サイクルが経過すると膜は損耗するので、交換されなければならない。
【0007】
この種の積層プレス機の膜を交換するため、プレス機は運転停止され、冷却されて、操作員が膜の交換のために膜を取り扱えるように接近できるようにしなければならない。欠陥を生じた、例えば損耗した膜を取り外した後、新たな膜を取り付けなければならない。その後、プレス作業を再開し得るようにするには、プレス機ないしプレス機の加熱台を再び使用温度にまで加熱されなければならない。したがって、膜の交換は一般に2〜3時間に及ぶ製造休止をもたらすことになる。
【0008】
下側プレス台と上側プレス台によって作り出される一連の上下に配置された真空チャンバを有する多段プレス機(この場合、一般に、1つの真空チャンバの上側プレス台は、すぐ上に位置する真空チャンバの下側プレス台を兼用する加熱台によって構成されている)の場合には、上記の問題はより深刻なものとなる。なぜなら、一方で、個々の真空チャンバ内の上記の膜に対する取り扱いアクセスは単一の真空チャンバしか持たないプレス機に比較して著しく困難であり、また他方で、冷却プロセスや加熱プロセスに著しく長い時間が要求されるからである。加えてさらに、上下に配置された複数の真空チャンバのいずれかでそれぞれの膜に欠陥が生ずるたびに、多段プレス機全体が運転停止されなければならないという深刻な問題も生じる。
【0009】
しかも、損耗に起因する欠陥以外に膜の欠陥が生じない場合でも、損耗に起因する最初の欠陥が膜に生ずると、信頼性の確保のため直ちにすべての膜の交換を行わなければならず、これによって相応な超過コストが必要となり、また、損耗に起因する膜の欠陥による製造休止は多段プレス機全体にかかわるので、単段プレス機に比較してその製造休止は増大することになる。
【0010】
この膜の交換作業を容易にするために、欧州公開第1609597号では、上側プレス台に着脱式に取り付けられた、個別に取り扱い可能な膜フレームに膜を取り付けることが提案されている。この構成では、膜はプレス機の外部で、個別に取り扱い可能な膜フレームに取り付けられる。その後に膜は工具を使用することなく、上側プレス台の下側面に設けられたスライドガイドによってプレス機内に装着することができる。これによって、損傷ないし損耗した膜の交換を非常に速やかに実施し得ることは言うまでもない。ただし、この従来の技術による膜交換には、膜フレームをプレス機から手作業で取り外して再び挿着することのできる熟達した作業員が必要である。さらにこの場合、積層プレス機があらかじめ冷却されていなければ、作業員にとって不都合である。最後に、数平方メートルに達することも例外ではない膜の大きさを考慮すると、そのような大きさの膜フレームではスライドガイドによる挿し込み、あるいはそれから取り外すことが時としてほぼ不可能なことがある。いずれにしてもこの作業には複数名の作業員が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州公開第1609597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来の技術を鑑み、本発明の目的は、冒頭に述べたタイプの積層プレス機において、膜交換時間を短縮化させる構成によりプレス作業の休止時間の短縮を可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
板状の加工物を熱圧作用下で積層するためのプレス機において、上記課題を解決するために、本発明では、
プレスの閉状態において下側のプレス台と上側のプレス台との間に単一構成または複数構成の周回シールを用いて作り出される真空チャンバを、少なくとも1つの加工物を収容するために設けられた排気可能な製品側ハーフチャンバと圧力形成可能な加圧側ハーフチャンバとに区分する柔軟な膜が備えられ、前記製品側ハーフチャンバに対する排気作用または前記加圧側ハーフチャンバの圧力形成作用あるいはその両方の作用を通じて生じる前記真空チャンバ内の圧力差によって前記加工物が直接または間接に前記真空チャンバの下側面に圧接するように前記膜が構成され、前記膜が前記上側プレス台に着脱式に装着されるとともに個別に取り扱い可能な膜フレームに取り付けられ、前記膜を取り付けた少なくとも1つの前記膜フレームを交換フレームとして使用可能状態で用意している膜フレームマガジンが備えられている。
なお、本発明によるプレス機の好ましい実施態様は請求項2〜9に記載されている。
【0014】
上述したようなプレス機を用いて板状の加工物を熱圧作用下で積層するための方法において、上記課題を解決するため、本発明では、少なくとも1つの加工物が下側のプレス台と上側のプレス台とによって形成されるとともに柔軟な膜により製品側ハーフチャンバと加圧側ハーフチャンバとに区分される真空チャンバに搬送され、当該加工物が前記製品側ハーフチャンバ内に配置され、その後、前記製品側ハーフチャンバに対する排気作用または前記加圧側ハーフチャンバの圧力形成作用あるいはその両方の作用を通じて生じる前記真空チャンバ内の圧力差に基づく前記膜の変形によって前記加工物を直接または間接に前記真空チャンバの下側面に圧接する積層プロセスが実施され、その際、個別に取り扱い可能な膜フレームに前記膜が前記プレス機の外部で取り付けられ、当該膜フレームがプレス段を構成する上側のプレス台に装着され、さらに、前記膜が取り付けられた少なくとも1つの膜フレームが交換フレームとして前記プレス機の外部に用意されている。
なお、本発明による方法の好ましい実施態様は請求項11〜14に記載されている。
【0015】
本発明によれば、少なくとも1つの膜フレームとこの膜フレームに取り付けられた膜とが交換フレームとしてプレス機の外部に用意されることとなり、その際、本発明によるプレス機では膜フレームマガジンが使用される。この特徴的な構成により、欠陥を生じた膜の交換に要する時間は、真空チャンバからの膜付き膜フレームの取り出し時間と交換フレームとして使用可能状態で用意された膜付きの膜フレームの装着に要する時間とに限定されることになる。
【0016】
本発明によれば、プレス作業中に続行中に、交換フレームに新たな膜を取り付けることが可能であり、また、好ましいことに時間にせかされることなく慎重に上記交換フレームに新しい膜を取り付けることが可能である。多段プレス機が使用される場合には、単に1または2個の余分な膜フレームを交換フレームとして用意しておくだけで十分である。
【0017】
この場合、膜フレームはワンタッチでの装着を可能にするクランプ機構で取り付け可能とされれば、特にプレス段を構成する上側のプレス台に取り付け可能とされれば、好適である。こうしたクランプ機構は、好ましくは操作員によりプレス機が使用温度下にあっても操作可能であるため、欠陥を生じた膜の交換のために冷却・再加熱サイクルが要求されるという無駄が抑制される。
【0018】
膜フレームは上側膜フレーム部分(ハーフボディ)と下側膜フレーム部分とに分割され、両者の間に膜が取り付けられるように構成されると好適である。これにより、膜の保護が「フレーム内」配置によって改善されているため、膜が取り付けられた膜フレームの取り扱いが容易になる。
【0019】
膜フレームが特に上記のように二部材構成にされていれば、膜フレームは上側と下側とにシールを備えることができ、その他についてはフラットに形成された2枚の(多段プレス機の個々の加熱台であってよい)プレス台の間に真空チャンバを作り出すためのシールフレームを形成することができる。ただし、膜フレームは真空チャンバよりも若干小さく形成され、こうして、真空チャンバの内側で上側のプレス台に固定可能とされるのが好ましい。膜フレームが真空チャンバのシール部材とされていなければ、プレス機の外部で行われる膜フレームの取り扱いに際しも、自由度がえられ、不測の損傷を生じる可能性が少なくなる。
【0020】
真空チャンバ内への本発明による膜フレームの機械的な装着およびそこからの機械的な取り出しのためには、膜フレーム搬送用の搬送台が設けられ、膜フレームはこの搬送台上に載置されて、加工物を真空チャンバ内に搬入されかつまたそこからから搬出するためのコンベヤ等を用いた移載装置が備えられると好適である。膜フレームのこのような機械式の装着や取り外しの取り扱い作業はプレス機が使用温度に保持されていても膜交換を実施することを可能にするだけではなく、機械的な自動化による交換時間の短縮も可能となる。
【0021】
移載装置には、使用可能状態の膜フレームを用意するとともに、これを適宜に必要とする箇所に供給するために適した膜フレームマガジンが適用できるように構成することが好ましい。これにより、移載装置ないし膜フレームマガジンは、必要に応じて、膜フレームを保管する膜フレーム交換ステーションに組み込まれるのが好ましい。そのような膜フレーム交換ステーションは、プレス機が多段プレス機として形成されているとともに、多段を有する装入ケージが利用される場合に、特に有利である。この場合、この装入ケージは好ましくは、膜が取り付けられた使用可能状態の膜フレームが常に用意されている専用の膜フレームステージを備えているとよい。
【0022】
特に太陽電池モジュールの積層に際し、本発明によるプレス機が、相互連係することで真空チャンバを作り出すことができる下側のプレス台と上側のプレス台とから作り出されるプレス段を上下方向に複数配置した多段プレス機として構成され、各プレス段はそれぞれの上側のプレス台に前記膜を取り付けた膜フレームを備えていると好適である。なぜなら、太陽電池モジュールの電気エネルギー収率はモジュールの面積に直接比例しているからである。複数のプレス段の上下方向の積み重ね配置は積層されるモジュール面積を高めるが、しかも設備の設置面積の拡大はともなわない。
【0023】
単段プレス機が使用されるか、多段プレス機が使用されるかにかかわりなく、本発明による方法には好ましくは少なくとも2段を有する膜フレームマガジンが使用され、これによって膜フレームは真空チャンバ内に挿設されかつまた真空チャンバ内から取出される。この膜フレームマガジンの第1段には、新しい完璧な膜を備えた膜フレームが交換フレームとして用意されている。膜に欠陥が生じると、欠陥を生じた膜を備えた膜フレームは真空チャンバから膜フレームマガジンの第2段に搬出され、その後に、交換フレームとして用意された膜フレームが第1段から真空チャンバ内に搬入される。特に、膜フレームがクランプ機構によって上側プレス台に取り付け可能であれば、それにより、欠陥を生じた膜のいっそう速やかな交換が実現されて、製造休止時間は相応して短縮されることとなるが、これは膜フレームが搬送台に載置されて真空チャンバ内に搬入され、しかもこの搬送台が好ましくはリフト手段、特に膜フレームを上側のプレス台に向かって持ち上げるための外部から手動操作可能なリフト手段を備えていればさらに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るプレス機における複数のプレス段を模式的に示す部分側面図である。
【図2】図1に示したプレス機に並置される装入ケージを模式的に示す部分側面図である。
【図3】図2による装入ケージに類似する別形態を示す部分側面図である。
【図4】膜フレーム交換ステーションを構成する膜フレームマガジンの側面図である。
【図5】膜フレーム交換ステーションを構成する膜フレームマガジンの平面図である。
【図6】別実施形態における膜フレーム交換ステーションを構成する膜フレームマガジンの側面図である。
【図7】別実施形態における膜フレーム交換ステーションを構成する膜フレームマガジンの平面図である。
【図8】さらに別な実施形態における膜フレームマガジンの側面図である。
【図9】さらに別な実施形態における膜フレームマガジンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のプレス機の実施形態を、添付の図面および詳細な説明に基づいて詳細に記載する。図1には、本発明によって形成されたプレス機の複数のプレス段を作り出しているプレス台である加熱台が部分概略図の形で模式的に示されている。なお、ここでは、プレス台はプレス面とみなした方がわかりやすい。つまり、4台の加熱台1はそれらの間に作り出される、互いに上下に配置された3つのプレス段(加熱台によって挟まれたプレス作業領域)を作り出している。図1において、一番上側の加熱台1は最上位プレス段の上側プレス台を形成し、その下側の加熱台1は最上位プレス段の下側のプレス台を形成すると同時に中間のプレス段の上側プレス台をも形成している。同様に、順次加熱台は下側のプレス台と上側のプレス台を兼用形成している。なお、一番下側の加熱台は下側のプレス台を形成するだけでよい。なお、このような複数プレス段を備えたプレス機に関して、上述した特許文献1(欧州特許出願1609597号)に類似する構造が詳しく開示されているので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0026】
それぞれの上側のプレス台には、例えば一番上側のプレス段を例とするなら、最上位の加熱台1(詳しくはその下面側領域:上側のプレス台)には、個別に取り扱い可能な1つの膜フレーム2がワンタッチ操作可能なクランプ機構3で取り付けられている。クランプ機構3を側方外側から操作することができるため、加熱台を冷やさなくともそれを離脱操作することが可能である。この実施形態では、クランプ機構は、加熱台1に旋回揺動式に構成され、膜フレーム2に形成された窪み19に係入するクイックピンチレバーを備えている。ただし、公知のその他のあらゆるクイックカップリング手段等をクランプ機構として利用することができる。
【0027】
膜フレーム2は上側膜フレーム部分(上側半分)4ならびに下側膜フレーム部分(下側半分)5からなり、プレス機の閉状態において周回シール6によって上下の加熱台に対して封止作用を行うことで、その内部に真空チャンバ7を形成する。この真空チャンバ7が柔軟な膜8により製品側ハーフチャンバ9と加圧側ハーフチャンバ10とに区分されるように、当該膜8は上側膜フレーム部分4と下側膜フレーム部分5の間に張り付くように取り付けされている。膜フレーム2への膜8の取り付け(張設)はプレス機の外部で行われる。膜8は膜フレーム2とともに必要に応じてプレス機から取り出しあるいはプレス機に装着することができる。上から2番目の加熱台1と上から3番目の加熱台1とによって形成される中間のプレス段を例とすると、図1では部分断面の形で示されていることで、膜フレーム2の内部の様子および膜8が膜フレーム2によって形成された真空チャンバ7を製品側ハーフチャンバ9と加圧側ハーフチャンバ10とに区分している様子が具体的に理解できる。
【0028】
図2は、図1に示したような多段プレス機用の装入ケージ11を模式的に示す側面図である。この装入ケージ11は個々のプレス段に板状の加工物を搬入・搬出するためのコンベアベルト12を備えた複数の段からなっている。例えば、図2では、最上位のコンベアベルト12は膜8が取り付けられた使用可能状態の予備の膜フレーム2を載せており、これによりこのコンベアベルト12が使用可能状態の予備膜フレーム2を補充のために仮置きしている膜フレームステージを構成していることになる。これにより、予備の膜フレームは、膜に欠陥を生じた膜フレームと入れ替わりに当該プレス段に搬入される。その際、欠陥膜フレームはプレス段の出口側から搬出され、取り除いてもよいし、空いているコンベアベルトに載せることも可能である。このような作業は、既述したように、クランプ機構3,19にプレス機の側方外側から達することができ、膜フレーム2の搬出入が機械式に行われるため、プレス機の使用温度保持下で行うことが可能である。
【0029】
図2に示した装入ケージ11の中間のコンベアベルト12(上から3番目)上には、分かりやすくするために、さらに別の膜フレーム2が模式的な部分断面図の形で示されているが、この実施形態において装入ケージ11のこの段は通例(他の実施形態にあってはそうすることも十分可能であるが)膜フレーム2に取り付けられた膜8を用意しておくのではなく、膜8が欠陥を生じた膜フレーム2の搬出用に装入ケージ11のこの段を空けておくとよい。
【0030】
図3は図2に示した装入ケージ11のコンベアベルト12の変形例を示しており、ここでは、膜8とクランプ機構3に利用される窪み19とを有する膜フレーム2は、搬送台15上に載置された状態で、次の使用機会に備えて用意されている。搬送台15は積層される加工物用の搬送台(不図示)と同一の寸法を有しているために、搬送台15上に載置された膜フレーム2はこのプレス機設備全体のすべての搬送手段により、積層される加工物とまったく同様にして運搬可能である。
【0031】
図4は膜フレーム交換ステーション13として構成された膜フレームマガジンの側面図であり、図5はその平面図である。膜フレーム交換ステーション13は装入ケージ11に前置きされており、さらに、膜フレーム交換ステーション13と装入ケージ11との間には、積層される加工物を搬入するためのトラバーサ14が介在している。膜フレーム交換ステーション13では膜8が取り付けられた膜フレーム2が、詳細には、積層される加工物ないしその搬送台と同様に形成された搬送台15上に載置されて用意されるため、膜フレーム2はこの搬送手段と装入ケージ11とによって問題なくプレス機に装入され、プレス機から搬出されることが保証される。フォークリフト16は、別なステーション(不図示)において新たな膜8を取り付けるために、膜フレーム交換ステーション13から膜フレーム2を搬出するために使用される。
【0032】
図6と図7は、上記と同様な図によって、図4と図5に示した膜フレーム交換ステーション13の変形例を示す図である。この変形例の特徴は、膜フレーム交換ステーション13が実質的にトラバーサ14(これは縦方向と横方向のいずれの形態の搬送装置であってもよい)と装入ケージ11との間の搬送区間として構築されている点にあり、ここでは、フォークリフト16は、もしも搬出された膜フレーム2があればそれを(搬送台15とともに)膜交換ステーション13から運び出し、新たな膜フレーム2を(搬送台15とともに)再び膜交換ステーション13に載置して、装入ケージ11を経て膜フレーム2を必要とするプレス段に搬入することができる。
【0033】
図8と図9は、側面図と平面図とによって、さらに別の膜フレームマガジン17の変形例を示す図である。この膜フレームマガジン17は装入ケージ11に前置きされているが、積層される加工物を搬送するトラバーサ14は、膜フレームマガジン17に対して前置きも後置きもされておらず、その側方に配置されている。これは、膜フレームマガジン17がトラバーサ14と短い縦方向搬送区間18との上方に配置され、装入ケージ11に直接向き合うようなレイアウトを実現している。これによって、装入ケージ11の高さ変位可能な能力を最適に利用することができる。膜フレームマガジン17には、即時に使用可能状態におかれている一定数の膜フレーム2が搬送台15上に載置されることで、この膜フレームマガジン17を通じて膜フレーム2が供給される構成が実現している。これにより、多段プレス機に短時間のうちに複数の新たな膜を供給することが可能となる。
【0034】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスの閉状態において下側のプレス台と上側のプレス台との間に単一構成または複数構成の周回シール(6)を用いて作り出される真空チャンバ(7)を、少なくとも1つの加工物を収容するために設けられた排気可能な製品側ハーフチャンバ(9)と圧力形成可能な加圧側ハーフチャンバ(10)とに区分する柔軟な膜(8)を備えた、板状の加工物を熱圧作用下で積層するためのプレス機であって、
前記製品側ハーフチャンバ(9)に対する排気作用または前記加圧側ハーフチャンバ(10)の圧力形成作用あるいはその両方の作用を通じて生じる前記真空チャンバ(7)内の圧力差によって前記加工物が直接または間接に前記真空チャンバ(7)の下側面に圧接するように前記膜(8)が構成され、前記プレス台(1)に着脱式に装着可能で個別に取り扱い可能な膜フレーム(2)に前記膜(8)が取り付けられ、
前記膜(8)を取り付けた少なくとも1つの前記膜フレーム(2)を交換フレームとして使用可能状態で用意している膜フレームマガジン(17)が備えられているプレス機。
【請求項2】
前記加工物を前記真空チャンバ(7)に対して搬入搬出する移載装置が備えられ、前記移載装置はさらに前記膜フレーム(2)を前記真空チャンバ(7)内に搬入しかつまた前記真空チャンバ(7)内から搬出するように構成されている請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記真空チャンバ(7)内に搬入されかつまた前記真空チャンバ(7)内から搬出される際に前記移載装置によって前記膜フレーム(2)が載置される搬送台(15)が備えられている請求項2に記載のプレス機。
【請求項4】
前記搬送台(15)が前記膜フレーム(2)を持ち上げるための手動操作可能なリフト手段を備えている請求項3に記載のプレス機。
【請求項5】
前記移載装置が膜フレーム交換ステーション(13)に組み込まれている請求項2〜4のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項6】
前記膜フレーム(2)がクランプ機構(3)によって前記プレス台に装着可能である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項7】
前記膜フレーム(2)が前記真空チャンバ(7)内で上側の前記プレス台に取り付けられている請求項1〜6のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項8】
相互連係することで真空チャンバ(7)を作り出すことができる下側のプレス台と上側のプレス台とから作り出されるプレス段を上下方向に複数配置した多段プレス機として構成され、
各プレス段は前記膜(8)を取り付けた膜フレーム(2)をそれぞれの上側のプレス台に備えている請求項1〜6のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項9】
前記膜フレーム(2)を仮置きしている膜フレームステージ(12)を有する多段装入ケージ(11)が前記膜フレーム(2)の前記プレス段への装入のために設けられている請求項8に記載のプレス機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のプレス機を用いて、板状の加工物を熱圧作用下で積層するための方法であって、
少なくとも1つの加工物が下側のプレス台と上側のプレス台とによって形成されるとともに柔軟な膜により製品側ハーフチャンバと加圧側ハーフチャンバとに区分される真空チャンバに搬送され、当該加工物が前記製品側ハーフチャンバ内に配置され、その後、前記製品側ハーフチャンバに対する排気作用または前記加圧側ハーフチャンバの圧力形成作用あるいはその両方の作用を通じて生じる前記真空チャンバ内の圧力差に基づく前記膜の変形によって前記加工物を直接または間接に前記真空チャンバの下側面に圧接する積層プロセスが実施され、その際、個別に取り扱い可能な膜フレームに前記膜が前記プレス機の外部で取り付けられ、当該膜フレームがプレス段を構成する上側のプレス台に装着され、さらに、前記膜が取り付けられた少なくとも1つの膜フレームが交換フレームとして前記プレス機の外部に用意されている方法。
【請求項11】
前記プレス機には少なくとも2段を有した膜フレームマガジンが並設され、前記膜フレームマガジンの第1段には膜フレームが交換フレームとして用意されており、前記真空チャンバ内にある膜フレームの膜に欠陥を生じた場合には、当該膜フレームが前記膜フレームマガジンの第2段に搬出され、その後に、前記交換フレームとして用意されている使用可能状態の膜フレームが前記真空チャンバ内に搬入される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加工物を前記真空チャンバに対して搬入搬出する移載装置が、さらに前記膜フレームを前記真空チャンバ内に搬入しかつまた前記真空チャンバ内から搬出するためにも使用される請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
搬送台に載置された状態で前記膜フレームが前記真空チャンバ内に搬入されかつ前記真空チャンバ内から搬出される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記膜フレームが前記真空チャンバ内に搬入された後、前記搬送台に設けられた手動操作可能なリフト手段によって前記上側プレス台に向かって持ち上げられて前記上側プレス台に装着される請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−285731(P2009−285731A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130238(P2009−130238)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(599098714)ロベルト・ビュルクレ・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BUERKLE GMBH
【住所又は居所原語表記】STUTTGARTER STRASSE 123, D‐72250 FREUDENSTADT, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】