説明

板状体冷却装置及び熱処理システム

【課題】本発明は、熱処理された板状体をスムーズに冷却可能な板状体冷却装置、並びに、当該板状体冷却装置を備えた熱処理システムの提供を課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明の板状体冷却装置10は、冷却対象である基板Wが配置される板状体配置部15と、板状体配置部15に配置される基板Wを側方から挟むように配され、空気の吹出方向が互いに対向する一対の吹出口30、30と、吹出口30、30に対して送風する送風機17と、送風機17を制御する制御部と、を備え、一対の吹出口30、30から吹き出される空気によって板状体配置部15に配された基板Wが冷却されることを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の板状体を熱処理した後に冷却を行うための板状体冷却装置や、当該板状体冷却装置を採用した熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス基板などの板状体を熱処理するための熱処理装置と、熱処理された板状体を冷却するための板状体冷却装置とを有する熱処理システムが、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display)、有機ELディスプレイ等のようなフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の製作に使用されている。このような熱処理システムにおいて採用されている板状体冷却装置の一例として、下記特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている従来技術では、板状体を加熱して熱処理を行う熱処理槽と、冷却を行う冷却槽を別にし、熱処理が終わった板状体を熱処理槽から冷却槽に搬送して冷却が行われる。このような装置で連続して熱処理を行う場合、熱処理槽の温度をほとんど低下させることなく冷却を行うことができるため、熱処理槽で使用されるエネルギーを低減させることができる。
【特許文献1】特開2002−71936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術のように熱処理槽と冷却槽とを別にした装置の場合、それぞれの槽での工程の処理能力をほぼ同じぐらいとしなければ、一方の能力が余って効率的な処理を行うことができない。そして、冷却槽での冷却時間が長いと、単位時間当たりに冷却できる板状体の枚数が少なくなってしまう。そのため、従来技術のような構成を採用した場合は、冷却槽における処理能力を確保するため、冷却槽が大型化してしまうといった問題があった。
【0005】
また、板状体の冷却は、特許文献1にも示されているように、一般的に、上下に間隔を空けて板状体を並べ、板状体の間に冷却のための空気を一方側から他方側へと横断するように流して行われる。そのため、このような構成とした場合は、空気の流れ方向下流側近傍における空気流が緩やかになってしまい、板状体の冷却に時間を要したり、板状体の冷却が部位によって不均一になってしまったり、下流側の温度が上流側よりも高くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱処理された板状体をスムーズに冷却可能な板状体冷却装置、並びに、当該板状体冷却装置を備えた熱処理システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の板状体冷却装置は、冷却対象である板状体が配置される板状体配置部と、前記板状体配置部に配置される板状体を側方から挟むように配され、空気の吹出方向が互いに対向する一対の吹出口と、前記吹出口に対して送風する送風手段と、前記送風手段を制御する制御部と、を備え、前記一対の吹出口から吹き出される空気によって前記板状体配置部に配された板状体が冷却されることを特徴とした。
【0008】
本請求項の板状体冷却装置は、板状体配置部に板状体が配置されると、板状体が一対の吹出口によって挟み込まれた状態になり、一対の吹出口から吹き出される空気は、板状体の両側から互いに対向するように吹き出される。そのため吹出口の一方から吹き出された空気は、板状体の面に沿って板状体配置部内を流れ、途中で他方の吹出口から吹き出された空気と衝突する。即ち、吹出口の一方から吹き出された空気は、他方の吹出口から吹き出される空気と衝突するまでの領域でその領域内の板状体の部分を主として冷却する。
【0009】
したがって本請求項の板状体冷却装置は、吹出口から吹き出される空気が板状体に沿って流れる距離を、空気の流れ方向の板状体の長さよりも短くすることで、空気流が緩やかになるのを防止することができる。また本請求項の板状体冷却装置は、板状体の両側から空気を流すことができるため、板状体全体を略均一に冷却することができる。
【0010】
また吹出口から吹き出された空気の流れ方向下流側近傍においては、空気流が多少緩やかになるため、板状体の冷却効率が悪化するおそれがある。これに対し、本請求項の板状体冷却装置は、吹出口から吹き出された空気の流れ方向下流側近傍において、空気を衝突させて乱流を生じさせることにより、空気の流れ方向下流側近傍における板状体の冷却効率を特に向上させることが可能である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記一対の吹出口は、前記板状体配置部の一方の側に配される第一吹出口と、前記板状体配置部の他方の側に配される第二吹出口と、を備え、前記送風手段は、前記第一吹出口に送風する第一送風機と、前記第二吹出口に送風する第二送風機と、を備え、前記制御部は、前記第一送風機の送風量および前記第二送風機の送風量をそれぞれ独立に制御して、第一吹出口から吹き出される空気と第二吹出口から吹き出される空気との衝突位置を変更可能であることを特徴とした。
【0012】
第一吹出口から吹き出される空気と第二吹出口から吹き出される空気とが衝突する位置では、空気流が乱流になり空気と板状体との間の熱交換が促進されるため、板状体の冷却効率が高い。本請求項の板状体冷却装置は、板状体の温度降下が遅い位置に空気の衝突位置を変化させることで、板状体を迅速に冷却させることが可能である。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第一送風機の送風量および前記第二送風機の送風量を連続的に変更可能であることを特徴とした。
【0014】
本請求項の板状体冷却装置は、空気の衝突位置を滑らかに移動させることにより、板状体全体を斑なく冷却することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記板状配置部に板状体を搬入又は搬出するための開口が開放されていることを特徴とした。
【0016】
これにより本請求項の板状体冷却装置は、板状体の冷却で昇温した空気を開口から外部に放出し、板状体配置部に高温の空気が溜まり、板状体の冷却が妨げられるのを防止することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記送風手段は、前記板状体配置部の下方に配置されることを特徴とした。
【0018】
本請求項の板状体冷却装置は、重量の大きな送風手段を板状体配置部の下方に配置することで、装置全体の重心を下げ、振動に対する安定性を向上させることができる。
【0019】
請求項6の発明は、板状体の熱処理を行う熱処理装置と、請求項1〜5のいずれかに記載の板状体冷却装置と、熱処理された板状体を取り出して前記板状体冷却装置に搬入する移載装置とを有することを特徴とする熱処理システムである。
【0020】
本請求項の熱処理システムは、上述の板状体冷却装置を備えているため、熱処理された板状体全体を略均一に迅速に冷却することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の板状体冷却装置及び熱処理システムは、熱処理された板状体全体を略均一に迅速に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、本発明の一実施形態に係る熱処理システム1及び板状体冷却装置10について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように、熱処理システム1は、ガラス板等の基板W(板状体)を熱処理する熱処理装置2と、熱処理装置2によって熱処理された基板Wを冷却する板状体冷却装置10(以下、単に冷却装置10とも称す)と、熱処理装置2で熱処理された基板Wを冷却装置10に搬入する第一移載装置11と、冷却装置10で冷却された基板Wを冷却装置10から搬出する第二移載装置12と、を備えている。冷却装置10は、第一移載装置11と第二移載装置12との間に配置され、第一移載装置11は、熱処理装置2と冷却装置10との間に配置されている。
【0023】
図2に示すように、冷却装置10は、冷却対象である基板Wが配置される板状体配置部15と、基板Wを冷却するための送風を行う冷却ユニット16と、板状体配置部15の下方に位置して冷却ユニット16が収容される空調部20と、空調部20と板状体配置部15とを繋ぐ送風ダクト21と、冷却装置10の動作を司る制御部(図示せず)と、を備えている。以下の説明において、冷却装置10の側面のうち、第一移載装置11に面する面を前面とし、第二移載装置12に面する面を後面とする。また上下左右の位置関係については、第一移載装置11側から見た冷却装置10を基準とする。
【0024】
図3に示すように、板状体配置部15は、複数の水平板23によって上下方向に複数の領域に区分されており、各領域が基板Wを冷却する冷却空間22として機能している。本実施形態では、上下5層にわたって冷却空間22(以下、上方から順に冷却空間22a〜22eとも称す)が形成されており、各冷却空間22a〜22eには、基板Wを一枚ずつ水平に配置することができる。
【0025】
また図3や図5に示すように、水平板23の上面の所定位置には、複数の支持ピン25が取り付けられている。全ての支持ピン25は、同じ長さに形成され、先端部がテーパー状に形成されている。支持ピン25の長さは、冷却空間22の底面から天井までの約半分の長さである。
【0026】
図3や図4に示すように、空調部20は、仕切板26によって内部が幅方向左右に二等分されており、仕切板27によって内部が奥行き方向前後に二等分されている。即ち、空調部20の内部は、仕切板26、27によって四つの空調空間28に分割されており、各空調空間28には、冷却ユニット16が1ユニットずつ収容されている。また図4に示すように、空調部20の前面及び後面の所定位置には、各空調空間28と外部とを繋ぐ吸込口37が設けられている。
【0027】
図2や図4に示すように、冷却ユニット16は、ファンの回転数を変えて風量の調整が可能な送風機17(送風手段)と、空調空間28内の空気を冷却可能な冷却器18とを備えている。本実施形態の送風機17は、インバータによりファンの回転数を制御し、送風量を連続的に変化させることができる。以下、図4に示す位置関係を基準に、前方左側の空調空間を28a、前方右側の空調空間を28b、後方左側の空調空間を28c、後方右側の空調空間を28dと称する。
【0028】
図3に示すように、送風ダクト21は、空調部20の各空調空間28a〜28dと、板状体配置部15の各冷却空間22a〜22eと、をつなぐ空気流路を形成する。送風ダクト21、21は、冷却装置10の幅方向の両側に板状体配置部15及び空調部20を挟み込むように配置されている。図3や図4に示すように、空調部20に面する送風ダクト21の所定位置には、各空調空間28a〜28dから空気を導入するための導入口38が設けられている。また、図3や図5に示すように、板状体配置部15に面する送風ダクト21の所定位置には、各冷却空間22a〜22eに向けて空気を吹き出すための吹出口30が設けられている。そのため各冷却空間22a〜22eには、空気の吹出方向が互いに対向する一対の吹出口30、30が設けられている。したがって、各空調空間28a〜28dの送風機17から供給される空気は、送風ダクト21、21を通って各冷却空間22a〜22eに吹き出される。
【0029】
図3や図5に示すように、吹出口30近傍には、フィルタ31が取り付けられている。本実施形態において、フィルタ31には、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が用いられている。冷却ユニット16の送風機17から供給された空気は、フィルタ31を通過して清浄化された後に各冷却空間22a〜22eに放出される。またフィルタ31によって、送風機17から送られる空気の流れが整流されるため、略均一な風量の空気を吹出口30全体から吹き出すことができる。
【0030】
制御部は、冷却装置10の動作を司るものであり、マイクロコンピュータ、メモリ、冷却ユニット16等を制御するインバータ回路等を有している。制御部は、各冷却ユニット16および各種センサ(図示せず)に対して電気的に接続されており、各種センサからの検出信号に基づき、各冷却ユニット16の送風機17及び冷却器18の動作を制御することができる。
【0031】
冷却装置10は、基板Wを板状体配置部15に搬入するための搬入口35が、第一移載装置11に面する側面(前面)に設けられており、基板Wを板状体配置部15から搬出するための搬出口36が、第二移載装置12に面する側面(後面)に設けられている。冷却装置10の搬入口35及び搬出口36は、冷却装置10の外部と板状体配置部15とをつなぐ開口であり、冷却装置10の奥行き方向に互いに対向して配置され、外部に開放されている。即ち、本実施形態の冷却装置10は、搬入口35と搬出口36とが互いに対向した位置に配置されている。そのため、本実施形態の冷却装置10は、熱処理システム1を構成する場合に、第一移載装置11、冷却装置10、および第二移載装置12の各装置を、熱処理システム1における工程の順序に沿った直線状に配置することができる。また本実施形態の冷却装置10において、搬入口35と搬出口36とが対向する方向は、一対の吹出口30、30が対向する方向と交差しており、本実施形態ではこれらが直交するように搬入口35及び搬出口36が設けられている。
【0032】
第一移載装置11及び第二移載装置12は、ロボットハンドを備えた移載装置である。ロボットハンドの先端には、5本のフォーク爪13aを備えたフォーク部13が設けられている。
【0033】
続いて、熱処理システム1による基板Wの処理方法について、冷却装置10の動作を中心に説明する。熱処理システム1により処理される基板Wは、ロボットハンド等を用いて熱処理装置2に投入され、所定時間にわたって所定の温度(本実施形態では230℃〜250℃)に調整された雰囲気下にさらすことにより熱処理される。
【0034】
上記したようにして熱処理装置2による熱処理が完了すると、第一移載装置11により基板Wが熱処理装置2から取り出される。そして、この熱処理済みの基板Wは、冷却装置10を構成する板状体配置部15の複数の冷却空間22a〜22eのうち、基板Wが収容されていない冷却空間22に配される。
【0035】
図3に示すように、冷却空間22に配された基板Wは、支持ピン25上に載置される。支持ピン25は、先端部がテーパー状に形成されているため、基板Wを点接触に近い状態で支持することができる。また上記したように支持ピン25が冷却空間22の底面から天井までの長さの約半分の長さであるため、冷却空間22に基板Wが配置されると、基板Wの上方及び下方には略同じ大きさの空間が形成される。
【0036】
板状体配置部15の冷却空間22に基板Wが配置された状態において、冷却ユニット16の送風機17を作動させると、冷却装置10内には、図2に矢印で示すような気流が発生する。さらに詳細に説明すると、冷却ユニット16の送風機17が作動すると、図4に示すように、冷却装置10の前面又は後面に設けられた空調部20の吸込口37から空気が吸い込まれる。吸込口37から空調空間28に吸い込まれた空気は、冷却器18で冷却された後、導入口38から送風ダクト21に導入される。その後、図3に示すように、送風ダクト21に導入された空気は、吹出口30を通ってフィルタ31によって清浄化された後、板状体配置部15の各冷却空間22a〜22eに吹き出される。
【0037】
冷却空間22に吹き出された空気は、基板Wの上下に形成されたそれぞれの空間に分かれ、基板Wの上下面に沿って移動しながら基板Wとの間で熱交換を行い、基板Wを冷却する。ここで、図3及び図5に示すように、本実施形態の冷却空間22には、空気の吹出方向が互いに対向するように一対の吹出口30が設けられている。そのため一方の吹出口30から吹き出された空気は、他方の吹出口30から吹き出された空気と対向するように流され、所定位置(図3、5では、基板Wの略中央)で衝突する。空気は、冷却空間22の中央方向に流れるに従って温度が上昇し、冷却能力が少しずつ低下するが、対向して流れる空気が衝突して気流が乱流になるため空気と基板Wとの間の熱交換効率が向上し、その部分における基板Wの冷却が促進される。本実施形態の冷却空間22は、搬入口35及び搬出口36のそれぞれが開放されているため、吹出口30から吹き出された空気は、基板Wを冷却した後、搬入口35又は搬出口36から排出される。
【0038】
吹出口30、30から吹き出される空気流により基板Wが所定の温度まで冷却されると、第二移載装置12により、基板Wが冷却装置10の搬出口36から取り出され、一連の冷却処理が完了する。
【0039】
本実施形態の冷却装置10は、板状体配置部15に基板Wが配置されると、基板Wが一対の吹出口30、30によって挟み込まれた状態になる。一対の吹出口30、30から吹き出される空気は、基板Wの両側から互いに対向するように吹き出される。そのため吹出口30の一方から吹き出された空気は、基板Wの上下面に沿って板状体配置部15内を流れ、途中で他方の吹出口30から吹き出された空気と衝突する。即ち、吹出口30の一方から吹き出された空気は、他方の吹出口30から吹き出される空気と衝突するまでの領域に配置された基板Wを主として冷却することができる。
【0040】
また本実施形態の冷却装置10は、吹出口30から吹き出される空気が基板Wに沿って流れる距離を、基板Wの空気の流れ方向の長さよりも短くすることで、空気流の流速が下流側で緩やかになるのを防止している。そのため本実施形態の冷却装置10は、基板Wの全面に略均一な流速の空気流を流すことが可能であり、基板W全体を略均一に冷却することができる。また本実施形態の冷却装置10は、基板Wの両側から空気が流されるため、基板W全体に略均一に空気を流すことが可能であり、基板Wの冷却が部位によって不均一になるのを防止する。
【0041】
また吹出口30から吹き出された空気の流れ方向下流側近傍では、空気流が多少緩やかになり、基板Wの冷却効率が阻害されるおそれがある。これに対し、本実施形態の冷却装置10は、吹出口30から吹き出された空気の流れ方向下流側近傍において、空気を衝突させて乱流を生じさせることにより、空気の流れ方向下流側近傍における板状体の冷却効率を特に向上させることが可能である。
【0042】
また本実施形態の冷却装置10は、一方の吹出口30に空気を供給する送風機17、及び他方の吹出口30に空気を供給する送風機17のそれぞれの送風量を制御し、左右の送風機の送風量の比率を変化させることにより、空気の衝突位置を移動させることも可能である。具体的に、左右の送風機17、17の送風量が略同一であれば、空気の衝突位置は、基板Wの幅方向略中央になる。また左側の送風機17の送風量が右側の送風機17の送風量よりも少なければ、空気の衝突位置は、基板Wの幅方向略中央よりも左側に移動する。さらに右側の送風機17の送風量が左側の送風機17の送風量よりも少なければ、空気の衝突位置は、基板Wの幅方向略中央よりも右側に移動する。
【0043】
空気が衝突する位置では、空気流が乱流になり空気と基板Wとの間の熱交換が促進されるため、基板Wの冷却効率が高い。そのため、左右の送風機17、17の送風量の比率を制御し、基板Wの温度降下が遅い位置に空気の衝突位置を移動させることで、基板Wをより迅速に冷却させることが可能である。
【0044】
また本実施形態の冷却装置10は、インバータ制御によって送風機17の送風量を連続的に増減させることができる。そのため左右の送風機17、17の送風量の比率を連続的に増減させ、空気の衝突位置を、基板Wの幅方向に滑らかに移動させ、基板W全体を斑なく冷却させることが可能である。
【0045】
上記実施形態において、板状体配置部15を構成する冷却空間22の数は、5層であったが本発明は冷却空間22の数に限定があるわけではない。冷却空間22の数は、熱処理装置2や冷却ユニット16の能力を考慮し、単位時間当たりに冷却を行う基板Wの枚数によって任意に決定することができる。
【0046】
また上記実施形態の冷却装置10は、冷却ユニット16を4台搭載するものであったが、本発明は、冷却ユニット16の数に限定があるわけではない。例えば、冷却ユニット16が幅方向の左右それぞれに1台ずつ配置された構成であってもよく、冷却ユニットを1台のみ搭載する構成であってもよい。冷却装置10が、冷却ユニット16を1台だけ搭載する場合には、冷却ユニット16から供給される空気が左右に分岐されて、基板Wの両側から空気が吹き出される。
【0047】
上記実施形態の冷却装置10は、送風機17の送風量をインバータ制御によって連続的に増減させる構成であったが、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。例えば、送風機17の送風量を段階的に増減させて、左右の送風機17、17の送風量の比率を変化させることにより、空気の衝突位置を移動させる構成であってよい。このような構成を採用することで、空気の衝突位置を所定の位置に瞬時に移動させることが可能になる。
【0048】
また上記実施形態の冷却装置10は、搬入口35及び搬出口36が外部に開放されており、板状体配置部15への空気の出入りが自由な構成であったが、本発明はこのような構成に限られるわけではない。例えば、搬入口35や搬出口36に、シャッターやエアカーテンを設け、板状体配置部15への空気の出入りを制限し、冷却装置10内で空気が循環する構成であってもよい。
【0049】
上記実施形態の冷却装置10は、板状体配置部15に基板Wを水平に配置する構成であったが、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。例えば、板状体配置部15に基板Wが鉛直に立てられて配置される構成であってもよい。この構成が採用される場合、板状体配置部15の底面及び天井に一対の吹出口30、30が設けられ、基板Wの上下両側から冷却用の空気が吹き出される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱処理システムを示す装置構成図である。
【図2】板状体冷却装置を示す透視斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】図3のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 熱処理システム
2 熱処理装置
10 板状体冷却装置
11 第一移載装置(移載装置)
15 板状体配置部
17 送風機(送風手段)
30 吹出口
35 搬入口
36 搬出口
W 基板(板状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象である板状体が配置される板状体配置部と、
前記板状体配置部に配置される板状体を側方から挟むように配され、空気の吹出方向が互いに対向する一対の吹出口と、
前記吹出口に対して送風する送風手段と、
前記送風手段を制御する制御部と、を備え、
前記一対の吹出口から吹き出される空気によって前記板状体配置部に配された板状体が冷却されることを特徴とする板状体冷却装置。
【請求項2】
前記一対の吹出口は、前記板状体配置部の一方の側に配される第一吹出口と、前記板状体配置部の他方の側に配される第二吹出口と、を備え、
前記送風手段は、前記第一吹出口に送風する第一送風機と、前記第二吹出口に送風する第二送風機と、を備え、
前記制御部は、前記第一送風機の送風量および前記第二送風機の送風量をそれぞれ独立に制御して、第一吹出口から吹き出される空気と第二吹出口から吹き出される空気との衝突位置を変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の板状体冷却装置。
【請求項3】
前記第一送風機の送風量および前記第二送風機の送風量を連続的に変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の板状体冷却装置。
【請求項4】
前記板状配置部に板状体を搬入又は搬出するための開口が開放されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板状体冷却装置。
【請求項5】
前記送風手段は、前記板状体配置部の下方に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の板状体冷却装置。
【請求項6】
板状体の熱処理を行う熱処理装置と、請求項1〜5のいずれかに記載の板状体冷却装置と、熱処理された板状体を取り出して前記板状体冷却装置に搬入する移載装置とを有することを特徴とする熱処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−48467(P2010−48467A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213208(P2008−213208)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】