説明

板状外装材を用いた外装構造及びその施工方法

【課題】屋根や壁に用いられる窯業系の板状外装材を葺いて屋根面等の外装面を施工し、暴風雨等の特殊環境(突発的な自然災害)に対しても極めて高い耐性を備え、万が一その一部の板状外装材が破損したとしても破片等が落下することがない板状外装材を用いた外装構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の板状外装材を用いた外装構造は、少なくとも水上側と水下側の2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部11,12を有する板状外装材1Aと、前記板状外装材1Aの少なくとも2箇所の係止部11,12に係合して下地4に取り付ける支持材2Aと、前記板状外装材1Aの水上側の端部であって水上側に重合して隣接する板状外装材1Aの裏面側に配される弾性材3Aと、からなり、各板状外装材1Aは前記支持材3Aにて下地4に取り付けられると共に前記弾性材3Aにて水下側へ弾性付勢されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根や壁に用いられる窯業系の板状外装材を葺いて屋根面等の外装面を施工し、暴風雨等の特殊環境(突発的な自然災害)に対しても極めて高い耐性を備え、万が一その一部の板状外装材が破損したとしても破片等が落下することがなく、しかも破損した板状外装材のみを容易に新たな板状外装材と交換することができる板状外装材を用いた外装構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、瓦やルーフタイル等の板状屋根材は、耐食性や耐火性、また質感、伝統美といった特徴を有し、主に一般住宅や比較的低層の建築物の屋根として広く普及しているが、固定方法が簡易なため、使用(敷設)箇所に制限を受けるといった問題が指摘されている。例えば建築物の立地、屋根の勾配、高さ等に制限を受け、どのような建築物に採用できるものではなかった。これらの問題はこの種の板状屋根材の固定構造に起因する部分が多く、横桟に瓦の棟端のみを係止するだけとか、釘や銅線を併用するといった固定(保持)構造では、前述の問題を解決することができないため、確実な保持ができる構造が求められている。
【0003】
例えば本願出願人が提案した特許文献1には、左右に並列状の金属性垂木に対する桟の固定作業性を改善することを目的とし、裏面側の水下側に係止部を設けた平瓦タイプの屋根材を桁行き方向に配された桟(横桟)にて下地(垂木)に固定する例や、裏面側の水上側先端に係止部を設けた和瓦タイプの屋根材を桟にて下地に固定する例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−3248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1などでは、突発的な自然災害に対して十分な強度を備えるものではなかった。即ち屋根材は一箇所のみの係合であるため、決して安定性が高いとは言えず、前述の使用(敷設)箇所に制限を受けるという問題を解消するものでもなかった。
さらに、万が一その一部の屋根材に割れが発生した場合には、一箇所のみの係止では、バタつき等にて割れが大きくなり易く、割れが発生したまま放置しておくと、破損した欠片等が屋根面から落下する事故を生じ、特に屋根勾配の急な施工面においては落下衝撃も大きく、近隣に多大な迷惑をかけたり、重大な二次災害を引き起こすおそれがあった。
【0006】
そこで、例えば暴風雨等の特殊環境(突発的な自然災害)に対しても極めて高い耐性を備え、万が一暴風雨等による木々の衝突等により、その一部の板状外装材が破損したとしても、破片等が落下することがなく、しかも破損した板状外装材のみを容易に新たな板状外装材に交換することができる板状外装材を用いた外装構造、及びその施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、水上側と水下側の少なくとも2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部を有する板状外装材と、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部に係合する係合部を有する支持材と、前記板状外装材の水上側の端部であって水上側に重合して隣接する(=上段側の)板状外装材の裏面側に配される弾性材と、からなり、各板状外装材は前記支持材にて下地に取り付けられると共に前記弾性材にて水下側へ弾性付勢されていることを特徴とする板状外装材を用いた外装構造に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記板状外装材を用いた外装構造において、弾性材は、支持材に一体的に取り付けられている、例えば支持材は、その表面側へ突出する縦片部を有し、その水上側には、水上側が開放する係合部を備え、前記縦片部の水下側には弾性材を配設することを特徴とする板状外装材を用いた外装構造をも提案する。
【0009】
また、本発明は、前記板状外装材を用いた外装構造において、支持材は、水上側の(=上段側の)板状外装材の水下側の係止部に係合する上方係合部と、水下側の(=下段側の)板状外装材の水上側の係止部に係合する下方係合部とを備えることを特徴とする板状外装材を用いた外装構造をも提案する。
【0010】
さらに、本発明は、水上側と水下側の少なくとも2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部を有する板状外装材と、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部に係合する係合部を有する支持材と、前記板状外装材の水上側の端部であって水上側に重合して隣接する(=上段側の)板状外装材の裏面側に配される弾性材と、を用いた板状外装材を用いた外装構造の施工方法であって、下地上に支持材を固定する第1の工程と、前記支持材に弾性材を配すると共に該弾性材が圧縮されるように板状外装材を配する第2の工程と、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部を、前記支持材に係合させると共に前記弾性材にて弾性付勢して取り付ける第3の工程と、からなることを特徴とする板状外装材を用いた外装構造の施工方法をも提案するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の板状外装材を用いた外装構造は、それぞれ簡易な構成の板状外装材、支持材、弾性材からなり、板状外装材の少なくとも二箇所の係止部が支持材の係合部に係止し、且つ弾性材にて水下側へ弾性付勢される状態で安定に取り付けられいる。即ち複数箇所を係合すること、弾性材を用いることで、板状外装材と下地の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する外装材の自由度を高めている。
また、暴風雨等の特殊環境(突発的な自然災害)にて万が一その一部の板状外装材が完全に中央付近にて分断するような破損が生じたとしても、水上側の破損部分も水上側に設けた係止部が支持材に係止した状態で保持され、水下側の破損部分も水下側に設けた係止部が支持材に係止した状態で保持されるため、それぞれ継続的に支持材に保持され、落下等の重大な落下事故を引き起こすことがない。即ち落下や飛散の事故を減らし、事後のメンテナンスを容易に行うことができるものである。
さらに、本発明では、破損した板状外装材を新たな板状外装材と交換するに際し、隣接する板状外装材に殆ど影響を与えることがなく、破損した板状外装材のみを容易に取り外すことができ、新たな板状外装材も容易に取り付けることができるので、補修工事に要する費用と時間を大幅に削減することができる。
【0012】
また、弾性材が、支持材に一体的に取り付けられている場合には、弾性材は取付安定性に優れ、それによって板状外装材の敷設安定性も向上する。
【0013】
また、支持材が、上段側の板状外装材の水下側の係止部に係合する上方係合部と、下段側の板状外装材の水上側の係止部に係合する下方係合部とを備える場合、一段の板状外装材につき、一つの支持材と、一つの弾性材とを用意すればよく、使用する部材点数が極めて少なく、部材管理や施工を極めて容易に行うことができる。しかも弾性材を上方係合部と下方係合部との間の空間に取り付けることができるため、余計な保持用部材を用いる必要がなく安定に取り付けることができる。
【0014】
さらに、本発明の施工方法は、下地に支持材を固定した後、弾性材を圧縮させて板状外装材を配設し、弾性材の弾性付勢にて2箇所の係止部を係合させるものであり、容易に板状外装材を取り付けることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)第1実施例の板状外装材を用いた外装構造を示す側断面図、(b)第2実施例の板状外装材を用いた外装構造を示す側断面図、(c)第3実施例の板状外装材を用いた外装構造を示す側断面図である。
【図2】(a)板状外装材の一態様を示す側断面図、(b)板状外装材の他の一態様を示す側断面図、(c)支持材の一態様を示す側断面図、(d)支持材の他の一態様を示す側断面図、(e)支持材の他の一態様を示す側断面図、(f)弾性材を兼ねる支持材の一態様を示す側断面図、(g)弾性材の一態様を示す側断面図、(h)弾性材の他の一態様を示す側断面図、(i)弾性材の他の一態様を示す側断面図である。
【図3】(a)第2実施例の板状外装材を用いた外装構造において、中央の板状外装材に破損が生じた場合を示す断面図、(b)当該板状外装材を取り外す第1段階を示す側断面図、(c)当該板状外装材を取り外す第2段階を示す側断面図、(d)当該板状外装材を取り外す第3段階を示す側断面図である。
【図4】(a)第2実施例の板状外装材を用いた外装構造の施工方法における第1の工程を示す側断面図、(b)第2の工程(前半)を示す側断面図、(c)第2の工程(後半)を示す側断面図、(d)第3の工程(前半)を示す側断面図である。
【図5】(a)第4実施例の板状外装材を用いた外装構造を示す側断面図、(b)第5実施例の板状外装材を用いた外装構造を示す側断面図、(c)第6実施例の板状外装材を用いた外装構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の板状外装材を用いた外装構造は、(A)板状外装材と、(B)支持材と、(C)弾性材とからなり、各板状外装材は前記支持材にて下地に取り付けられると共に前記弾性材にて水下側へ弾性付勢されていることを特徴とする。
【0017】
(A)板状外装材
本発明に用いる板状外装材は、屋根や壁に用いられる窯業系の外装材(屋根用としてルーフタイルという)であり、少なくとも水上側と水下側との2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部(掛止部)を有する。
前記係止部は、後述する図示実施例に示すように略L字状に設けてもよいし、後述する支持材の係合部に係止されるものであれば、特にこれに限定されるものではない。
また、この係止部は、水下側が開放する係合溝が形成される構成と説明することもできる。その場合、後述する支持部に設けられる係合部は、後述する図示実施例に示すように水上側へ向く係止片が形成される構成と説明されるべきである。
なお、本発明の説明において、「水上側の」と「水下側の」という文言が必然的に多用されるので、水上側の板状外装材に関しては「上段側の」板状外装材と記し、水下側の板状外装材に関しては「下段側の」板状外装材と記す。
【0018】
(B)支持材
本発明に用いる支持材は、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部に係合して下地に取り付けるものであり、一種のみの支持材を用いてもよいし、二種以上の支持材を併用してもよい。即ち前者は、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部にそれぞれ係合する少なくとも2つの係合部を有する構成となり、後者は、少なくとも、前記板状外装材の水上側の係止部に係合する水上側支持材と、前記板状外装材の水下側の係止部に係合する水下側支持材とを含む構成である。
一種のみの支持材を用いる具体例を示すと、後述する図示実施例のように上段側の板状外装材の水下側の係止部に係合する上方係合部と、下段側の板状外装材の水上側の係止部に係合する下方係合部とを備える一種のみの支持材を用いる例があり、使用する部材点数が極めて少なく、部材管理や施工を極めて容易に行うことができる。
【0019】
(C)弾性材
弾性材は、板状外装材の水上側の端部で、その水上側に重合して隣接する板状外装材の裏面側に配されるものであって、板状外装材を水上側から弾性付勢するものであれば、特にその素材(材質)等を限定するものではない。例えば円柱状又は円管(パイプ)状の弾性体で形成されるものでも、バネ弾性を有する金属成形体でもよい。
この弾性材が、支持材に一体的に取り付けられていると、取付安定性に優れ、それによって板状外装材の敷設安定性も向上するので望ましい。その具体的態様としては、前述のように金属成形体で弾性体を形成する場合に、後述する図示実施例(図1(c))に示すように支持材にビス固定されている態様、或いは後述する図示実施例(図1(a),(b))に示すように支持材が、その表面側へ突出する縦片部を有し、その水下側に弾性材を係止状に配設する態様が挙げられる。
【0020】
なお、特に弾性材がバネ弾性を有する金属成形体である場合には、後述する図示実施例(図1(c))のように該金属成形体に前記支持材の係合部を設けるようにしてもよい。
このような態様は、支持材の一部が弾性体を兼ねる構成と言い換えることができる。
【0021】
本発明の板状外装材を用いた外装構造は、このように極めて簡易な構成の板状外装材、支持材、弾性材からなり、板状外装材の少なくとも2箇所の裏面側に設けた係止部が支持材の係合部に係止し、且つ弾性材にて水下側へ弾性付勢されているので、板状外装材と下地の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する外装材の自由度を高めている。
また、暴風雨等にて万が一その一部の板状外装材が完全に中央付近にて分断するような破損が生じたとしても、水上側の破損部分も水下側の破損部分も継続的に支持材に係止した状態で保持されるため、重大な落下事故を引き起こすことがない。即ち落下や飛散の事故を減らし、事後のメンテナンスを容易に行うことができる。
さらに、破損した板状外装材を新たな板状外装材と交換するに際し、隣接する板状外装材に殆ど影響を与えることがなく、破損した板状外装材のみを容易に取り外すことができ、新たな板状外装材も容易に取り付けることができるので、補修工事に要する費用と時間を大幅に削減することができる。
【0022】
また、前記支持材が、上段側の板状外装材の水下側の係止部に係合する上方係合部と、下段側の板状外装材の水上側の係止部に係合する下方係合部とを備える場合には、一段の板状外装材につき、一つの支持材と、一つの弾性材とを用意すればよく、使用する部材点数が極めて少なく、部材管理や施工を極めて容易に行うことができる。しかも弾性材を上方係合部と下方係合部との間の空間に取り付けることができるため、余計な保持用部材を用いる必要がなく安定に取り付けることができる。
【0023】
これらの各部材から構成される本発明の板状外装材を用いた外装構造は、板状外装材の少なくとも二箇所の係止部が支持材の係合部に係止し、且つ弾性材にて水下側へ弾性付勢される状態で安定に取り付けられているので、板状外装材と下地の係合強度が高められ、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する外装材の自由度を高め、極めて高い耐性を備えている。
【0024】
また、本発明の板状外装材を用いた外装構造の施工方法は、下地上に支持材を固定する第1の工程と、前記支持材に弾性材を配すると共に該弾性材が圧縮されるように板状外装材を配する第2の工程と、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部を、前記支持材に係合させると共に前記弾性材にて弾性付勢して取り付ける第3の工程と、からなる。
そして、これらの各工程は、特殊な治具や熟練技術を必要なく極めて容易に行うことができ、実用的価値が高いものである。
【実施例】
【0025】
本発明の板状外装材を用いた外装構造は、図1(a)〜(c)に示す第1〜第3実施例、図5(a)〜(c)に示す第4〜第6実施例のように窯業系の焼き付け等により製造された板状外装材1A,1Bと、支持材2A〜2Dと、弾性材3A〜3Dとからなり、各板状外装材1A,1Bは前記支持材2A〜2Dにて下地4に取り付けられると共に前記弾性材3A〜3Dにて水下側へ弾性付勢されていることを特徴とする。
【0026】
図1(a)〜(c)の第1〜第3実施例に用いられる板状外装材1Aは、窯業系の焼き付け等により製造されたもので、図2(a)に示すように水上側と水下側との2箇所の裏面側に、水下側へ向く略L字状の係止部11,12(水上側に位置する係止部を11、水下側に位置する係止部を12とする)を有する構成であり、水下側が開放する係合溝11',12'が形成される構成と説明することもできる。
図5(a)〜(c)の第4〜第6実施例に用いられる板状外装材1Bは、水上側と水下側との2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部11,12を含み、更に図2(b)に示すように係止部11,12間に水下側へ向く略L字状の係止部13,14を備える構成である。
【0027】
図1(a),(b)の第1実施例及び第2実施例、図5(a),(b)の第4実施例及び第5実施例に用いられる支持材2Aは、図2(c)に示すように下地4上に沿わせる横片部21の表面側に、上段側の板状外装材1Aの水下側の係止部12に係合する上方係合部22と、下段側の板状外装材1Aの水上側の係止部11に係合する下方係合部23とを備える構成であり、各係合部22,23は水上側及び下方が開放する隅状に形成されている。
これらの上方係合部22も下方係合部23も、横片部21から表面側へ略鉛直状に起立する縦片24,25の上端を水上側のやや下方へ折り曲げて形成される隅部を指すが、前記板状外装材1Aの係止部11,12が形成される構成を「水下側が開放する係合溝11',12'」が形成される構成と見なした場合には、この支持材2Aの水上側及び下方が開放する隅状の係合部22,23は、「水上側やや下方へ向く係止片22',23'」が形成される構成と説明できる。
【0028】
図1(a)の第1実施例に用いられる弾性材3Aは、図2(h)に示すように中空状の弾性体、即ち敷設状態よりも大径の円管(パイプ)状弾性体で形成されている。
図5(a)の第4実施例に用いられる弾性材3Bは、図2(g)に示すように中実状の弾性体、即ち敷設状態よりも大径の円柱状弾性体で形成されている。
図1(b)の第2実施例、及び図5(b)の第5実施例に用いられる弾性材3Cは、図2(i)に示すようにバネ弾性を有する金属成形体、即ち敷設状態よりも広角の略V字状に成形された金属成形体で形成されている。
これらの弾性材3A〜3Cは、上方から嵌め込むように配設しているだけで、特別な固定手段を用いていないが、その施工状態において上段側の板状外装材1A,1Bが上方を覆うため、想定外の外れを生ずることは決してない。
【0029】
図1(c)の第3実施例、及び図5(c)の第5実施例に用いる支持材2Dは、図2(f)に示すように下段側の板状外装材1A,1Bの水上側の係止部11が係合される隅状の下方係合部23d(≒水上側やや下方へ向く係止片23d')を備える支持基材2d1と、弾性材3Dを兼ねる金属成形材2d2とからなる。この金属成形材2d2の略U字状部分が弾性材3Dの役割を果たし、その水上側に位置する縦片の上端を水上側のやや下方へ折り曲げて形成される隅部が上段側の板状外装材1Aの水下側の係止部12が係合される隅状の上方係合部22d(≒水上側やや下方へ向く係止片22d')となる。
【0030】
また、図5(a)〜(c)の第4〜第6実施例には、前記支持材2A,2Dばかりでなく、図2(d),(e)に示す支持材2B,2Cをも用いて板状外装材1Bを下地4に取り付けており、係止部11,12間に設けられた係止部13,14を、支持材2C,2Bに設けられた水上側及び下方が開放する隅状の係合部26c,26bに係合させて取り付けている。
【0031】
次に、前記図1(b)の第2実施例にて、仮に暴風雨等にて一部の板状外装材1Aが完全に中央付近にて分断するような破損が生じたケースを想定し、その取り外し手順を図3に基づいて説明する。
なお、ここでは第2実施例を例にしたが、他の第1,第3〜第6実施例でもほぼ同様の取り外し手順にて施工できることを確認している。
【0032】
図3(a)に示すように図示中央の板状外装材1Aが破損を受け、これを取り外す対象と仮定する。
なお、同図では破損を受けた箇所を模式的に表示したが、以降の図3(b)〜(d)ではこの表示を省略した。
【0033】
まず、当該板状外装材1Aを取り外す第1段階として、図3(b)に示すように当該板状外装材1Aを水下側(図では左側)から押圧して水上側へずらし(摺動させ)、水上側の端部を弾性材3Cに当接させて圧縮させる。図では当初略V字状の弾性材が圧縮されて略縦長ハート状に見える弾性材を「3C"」と示している。この状態で、板状外装材1Aの水上側の係止部11及び水下側の係止部12は、支持材2A,2Aの係合部23,22から離反している。
【0034】
次に、当該板状外装材1Aを取り外す第2段階として、図3(c)に示すように当該板状外装材1Aの水下側を上方へ持ち上げ、係止部12を係止片23'の上方まで持ち上げ、それと共に隣接する上段側(図では右側)の板状外装材1Aを同じ要領で水上側へずらし(摺動させ)、その水下側を上方へ持ち上げる。
【0035】
そして、当該板状外装材1Aを取り外す第3段階として、図3(d)に示すように当該板状外装材1Aの水上側(図では右側)を上方へ持ち上げて取り外せば当該板状外装材1Aのみを取り外すことができる。その際、弾性材3Cは、板状外装材1Aの押圧から開放されるため、弾性回復した状態(略V字状)で所定位置に残っている。なお、当該板状外装材1Aの水上側を持ち上げる際に、支障(邪魔)にならないように隣接する上段側の板状外装材1Aを水上側へずらしてその水下側を持ち上げたが、特に問題なければ必ずしもこのような操作(手間)を行わなくてもよい。
【0036】
その後、新たな板状外装材1Aを当該部位に配設する際には、前述の操作を逆に行えばよく、即ち図3(d)の状態から順に、図3(c)、図3(b)、図3(a)となるように取り付ければよい。
そして、隣接する上段側の板状外装材1Aは、図3(c)の状態となっている筈であるから、同様に順に、図3(b)、図3(a)となるように元に戻せばよい。
【0037】
前記前記図1(b)の第2実施例の板状外装材を用いた外装構造を施工する方法を図4(a)〜(d)に基づいて説明する。
なお、ここでは第2実施例を例にしたが、他の第1,第3〜第6実施例でもほぼ同様の施工手順にて施工できることを確認している。
【0038】
第1の工程として、図4(a)に示すように下地4上に前記構成の支持材2Aを固定する。
具体的には、下地4上に横片部21を沿わせ、該横片部21の端縁をビスや押さえ具等にて固定している。
なお、同図は下地4上に予め所定の位置に支持材2Aを取り付けた状態を示したが、以後の図4(b)〜(d)はその下段側に板状外装材1Aを配設している状態を示している。
【0039】
第2の工程として、図4(b)に示すように前記支持材2Aに前記構成の弾性材3Cを配すると共に、図4(c)に示すように該弾性材3Cが圧縮されるように前記構成の板状外装材1Aを配する。
なお、その上段側に板状外装材1Aが配設されていない以外は、図4(b)は前記図3(d)と、図4(c)は前記図3(c)とほぼ同様である。
【0040】
第3の工程として、図4(d)に示すように前記板状外装材1Aの係止部11,12を、前記支持材2A,2Aに係合させると共に、前記図3(a)に示すように板状外装材1Aを水下側へずらして(摺動して)前記弾性材3Cにて係止部11,12を支持材2A,2Aの下方係合部23、上方係合部22に弾性付勢して取り付ける。
なお、その上段側に板状外装材1Aが配設されていない以外は、図4(d)は前記図3(b)とほぼ同様である。
【0041】
このように、本発明の板状外装材を用いた外装構造の施工方法を構成する第1の工程〜第3の工程は、何れも特殊な治具や熟練技術を必要なく極めて容易に行うことができ、実用的価値が高いものである。
【0042】
そして、このように施工された本発明の板状外装材を用いた外装構造は、それぞれ簡易な構成の板状外装材1A,1B、支持材2A〜2D、弾性材3A〜3Dからなり、板状外装材1A,1Bの少なくとも二箇所の係止部11,12(13,14)が支持材2A〜2Dの係合部22,23,26b,26cに係止し、且つ弾性材3A〜3Dにて水下側へ弾性付勢される状態で安定に取り付けられ、板状外装材1A,1Bと下地4の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する外装材の自由度を高めている。
特に中央付近にも係止部13,14を備える板状外装材1Bは、より安定に取り付けられるものとなる。
【0043】
また、仮に暴風雨等にて一部の板状外装材1A,1Bが完全に中央付近にて分断するような破損が生じたとしても、水上側の破損部分も水上側に設けた係止部11が支持材3A,3Dに係止した状態で保持され、水下側の破損部分も水下側に設けた係止部12が支持材3Aに係止した状態で保持されるため、それぞれ継続的に支持材3A,3Dに保持され、落下等の重大な落下事故を引き起こすことがない。即ち落下や飛散の事故を減らし、事後のメンテナンスを容易に行うことができる。
この場合にも、特に中央付近にも係止部13,14を備える板状外装材1Bは、破損部分が複数箇所にて保持されるために、より安定に保持され、落下事故を起こす可能性が極めて低い。
【0044】
さらに、本発明では、破損した板状外装材1A,1Bを新たな板状外装材1A.1Bと交換するに際し、隣接する板状外装材1A,1Bに殆ど影響を与えることがなく、破損した板状外装材1A,1Bのみを容易に取り外すことができ、新たな板状外装材1A,1Bも容易に取り付けることができるので、補修工事に要する費用と時間を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B 板状外装材
11〜14 係止部
11'〜12' 係止溝
2A〜2D 支持材
2d1 支持基材
2d2 金属成形材
21 横片部
22,22d 上方係合部
22',22d' 係止片
23,23d 下方係合部
23',23d' 係止片
24,25 縦片
26b,26c 係合部
3A〜3D 弾性材
4 下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水上側と水下側の2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部を有する板状外装材と、
前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部に係合する係合部を有する支持材と、
前記板状外装材の水上側の端部であって水上側に重合して隣接する板状外装材の裏面側に配される弾性材と、からなり、
各板状外装材は前記支持材にて下地に取り付けられると共に前記弾性材にて水下側へ弾性付勢されていることを特徴とする板状外装材を用いた外装構造。
【請求項2】
弾性材は、支持材に一体的に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の板状外装材を用いた外装構造。
【請求項3】
支持材は、水上側の板状外装材の水下側の係止部に係合する上方係合部と、水下側の板状外装材の水上側の係止部に係合する下方係合部とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の板状外装材を用いた外装構造。
【請求項4】
水上側と水下側の少なくとも2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部を有する板状外装材と、前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部に係合する係合部を有する支持材と、前記板状外装材の水上側の端部であって水上側に重合して隣接する板状外装材の裏面側に配される弾性材と、を用いた板状外装材を用いた外装構造の施工方法であって、
下地上に支持材を固定する第1の工程と、
前記支持材に弾性材を配すると共に該弾性材が圧縮されるように板状外装材を配する第2の工程と、
前記板状外装材の少なくとも2箇所の係止部を、前記支持材に係合させると共に前記弾性材にて弾性付勢して取り付ける第3の工程と、
からなることを特徴とする板状外装材を用いた外装構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144921(P2012−144921A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4721(P2011−4721)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000165505)元旦ビューティ工業株式会社 (159)
【Fターム(参考)】