説明

板表面の液体除去装置及び板表面の液体の除去方法

【課題】騒音が小さく、エネルギー浪費量が少なく、再汚染の可能性が低く、幅広の鋼板に適用可能であり、かつ長期間の連続使用にも耐えられる板表面の液体除去装置及び鋼板表面の液体の除去方法を提供する。
【解決手段】板表面11aに付着した液体12を吸収可能な多孔質弾性体層2がロール面3aに備えられた水切ロール3と、多孔質弾性体層2を押し潰すように水切ロール3に押し当てられる絞りロール4と、を具備しており、絞りロール4によって多孔質弾性体層2から絞り出された液体12が、絞りロール4及び水切ロール3の回転軸方向に沿って排出されるように構成された鋼板表面の液体除去装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板表面の液体除去装置及び板表面の液体の除去方法に関し、特に鋼板、具体例として、薄板、厚板、めっき鋼板等の表面に付着した水や薬品等の液体を除去する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業生産の分野においては、種々の化学処理、洗浄または冷却の目的で、水または各種薬剤のような液体をワークに塗布または散布し、その後、表面に付着した液体を拭き取ってからワークを次工程処理に供することが多い。この時、前工程で使用した水または各種薬剤のような液体を除去する必要がある。
【0003】
一般的には、空気、窒素または除去したい液体と同種の液体をワーク表面に吹付ける方法、表面がゴム製のロールをワークの両面から押し当てて液体を絞り取る方法、またはワーク表面の液体をスポンジロールに吸収させる方法等の種々の方法が知られている。
【0004】
より具体的には、下記特許文献1には、鋼板表面に付着したクーラント液をエアーノズルから噴射するエアーパージによって除去する液切り装置が開示されている。また、下記特許文献2には、一対のロールにシート状物を挟み込んで、その表面に付着している水分を除去する装置において、ロールの一方又は両方が、スポンジ部分を備えた水切りロールであり、このスポンジ部分に水分吸引ノズルを圧着させた水分除去装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−65411号公報
【特許文献2】実用新案登録第3002532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された方法では、空気や窒素などの高圧ガスを連続して大量に鋼板表面に噴射する必要があり、高圧ガスの噴射に伴う騒音が大きく、また、高圧ガスを発生させるための動力が必要となり、エネルギー浪費量が多い問題がある。また、高圧ガスの噴射によって鋼板表面から飛び散ったスプラッシュにより、再度鋼板が汚染されるリスクがあった。
【0007】
また、表面がゴム製のロールをワークの両面から押し当てて液体を絞り取る方法では、ワーク表面の平坦性が低くてワーク表面にうねりがあるような場合に、ワークの全幅に渡ってロールの加圧力を均等に与えることが難しく、部分的に液が残る不良が発生する問題があった。また、ロール自体の撓みによるワークとの接触不良が発生しやすいので、幅広のワークには適用が難しい問題があった。
【0008】
さらに、スポンジロールによって液体を吸収する方法では、吸収後の液体等の排出に課題があった。特許文献2では、水切りロールのスポンジ部分に水分吸引ノズルを圧着させてスポンジ部分の水分を除去しているが、水切りロールが水分吸引ノズルに対して常に摺動するので、水切りロールのスポンジ部分が破れやすく、このため、数ヶ月に渡る連続使用には耐えられない問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、騒音が小さく、エネルギー浪費量が少なく、再汚染の可能性が低く、幅広の板に適用可能であり、かつ長期間の連続使用にも耐えられる板表面の液体除去装置及び板表面の液体の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 板表面に付着した液体を吸収可能な多孔質弾性体層がロール面に備えられている水切ロールと、前記多孔質弾性体層を押し潰すように前記水切ロールに押し当てられる絞りロールとを具備しており、前記絞りロールによって前記多孔質弾性体層から絞り出された前記液体が、前記絞りロール及び前記水切ロールの回転軸方向に沿って排出されるように構成されたことを特徴とする板表面の液体除去装置。
[2] 前記水切りロールと前記絞りロールとの間に排出用の溝が構成されていることを特徴とする[1]に記載の板表面の液体除去装置。
[3] 前記排出用の溝に、液体吸引用の吸引パイプが挿入されていることを特徴とする[2]に記載の板表面の液体除去装置。
[4] 前記絞りロールに水切り用ワイパーブレードが取り付けられ、前記水切り用ワイパーブレードに排出用の樋が取り付けられていることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の板表面の液体除去装置。
[5] 多孔質弾性体層がロール面に備えられている水切ロールを通板中の板の表面に接触させて、前記板の前記表面に付着している液体を前記多孔質弾性体層に連続的に吸収させるとともに、絞りロールを前記水切ロールに押し当てて前記多孔質弾性体層を押し潰すことにより、前記多孔質弾性体層に吸収された前記液体を連続して絞り出し、絞り出した前記液体を前記絞りロール及び前記水切ロールの回転軸方向に沿って排出することを特徴とする板表面の液体の除去方法。
[6] 前記水切りロールと前記絞りロールとの間に排出用の溝が構成され、前記溝によって前記液体を排出することを特徴とする[5]に記載の板表面の液体の除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の板表面の液体除去装置においては、板表面の液体を水切ロールの多孔質弾性体層に吸収させ、水切ロールに押し当てられた絞りロールによって、吸収させた液体を絞り出し、さらに、絞り出した液体を絞りロール及び水切ロールの幅方向に沿って排出させる。これにより、板表面の液体を除去する際に高圧ガスを使用しないので、騒音を発生させることがなく、また、エネルギー消費量も少なくできる。また、多孔質弾性体層に対して絞りロールが摺動しないため多孔質弾性体層が破れるおそれがなく、さらに、絞り出した液体を絞りロール及び水切ロールの回転軸方向に沿って連続して排出させるので、長期間に渡る連続操業が可能になる。
また、本発明の板表面の液体除去装置によれば、水切りロールと絞りロールとの間に排出用の溝が構成されるので、絞り出された液体を溝に溜め、かつ、溝を伝って液体を水切りロール及び絞りロールの回転軸方向に向けて連続して排出させることができる。
更に、本発明の板表面の液体除去装置によれば、溝に液体吸引用の吸引パイプが挿入されているので、絞り出された液体を素早く排出できる。
更にまた、本発明の板表面の液体除去装置によれば、絞りロールに水切り用ワイパーブレードが取り付けられ、水切り用ワイパーブレードに排出用の樋が取り付けられているので、絞りロールに付着した液体を除去することができ、絞りロールから多孔質弾性体層に液体が再付着するおそれがない。
【0012】
また、本発明の板表面の液体の除去方法によれば、板表面の液体を水切ロールの多孔質弾性体層に吸収させ、水切ロールに押し当てた絞りロールによって、吸収させた液体を絞り出し、さらに、絞り出した液体を絞りロール及び水切ロールの回転軸方向に沿って排出させるので、板表面の液体を除去する際に高圧ガスを使用せず、騒音を発生させることがなく、また、エネルギー消費量も少なくなる。また、多孔質弾性体層に対して絞りロールが摺動しないので多孔質弾性体層が破れるおそれがなく、さらに、絞り出した液体を絞りロール及び水切ロールの回転軸方向に沿って連続して排出させるので、長期間に渡って連続して操業できる。
更に、本発明の板表面の液体の除去方法によれば、水切りロールと絞りロールとの間に排出用の溝が構成されるので、絞り出された液体を溝に溜め、かつ、溝を伝って液体を水切りロール及び絞りロールの回転軸方向に向けて連続して排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態である板表面の液体除去装置を示す側面模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態である板表面の液体除去装置を示す平面模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態である板表面の液体除去装置の別の例を示す側面模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態である板表面の液体除去装置の他の例を示す側面模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態である板表面の液体除去装置のその他の例を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の板表面の除去装置1は、例えば、鋼板等の各種金属板または樹脂製の板等の表面に付着した液体を除去する際に用いられる。より詳細には、例えば、鋼板の超音波探傷検査工程、鋼板の酸洗工程、鋼板のめっき工程等に設置され、鋼板に、水、希塩酸、希硫酸等の酸性溶液、苛性ソーダ等のアルカリ性溶液、めっき浴液等の液体を付着させた後にその液体を除去する際に使用される。以下の説明では、鋼板表面の液体を除去する場合について説明する。
【0015】
図1に示す板表面の液体除去装置1は、多孔質弾性体層2がロール面3aに備えられている水切ロール3と、多孔質弾性体層2を押し潰すように水切ロール3に押し当てられる絞りロール4とを具備して構成されている。また、本実施形態の液体除去装置1には、水切りロール3を鋼板11の表面11aに押し当てるための水切ロール用圧下シリンダ5と、絞りロール4を水切りロール3に押し当てる絞りロール用圧下シリンダ6とが備えられている。図1及び図2に示す例では、水切りロール3の下側に鋼板11の搬送路Hが設置されている。
【0016】
水切ロール3は、ロール本体3bと、ロール本体3bの周面の全幅に渡って設けられた多孔質弾性体層2とから構成されている。多孔質弾性体層2の表面が水切りロール3のロール面3aとなっている。また、ロール本体3bの周面は、金属やセラミックス等の硬質の材料から構成されている。水切りロール3は、鋼板11の移動に合わせて回転するように構成されている。水切りロール3は、回転駆動装置等によって回転させてもよく、通板する鋼板11によって回転させてもよい。
【0017】
多孔質弾性体層2は、スポンジ、不織布、海綿等の多孔質な弾性体を例示できる。多孔質弾性体層2が鋼板表面に接することで、鋼板11の表面11aに付着している液体を、毛細管現象により吸収させることができる。また、後述するように、絞りロール4によって多孔質弾性体層2を押し潰すことで、吸収した液体を絞り出させることができる。また、多孔質弾性体層2の厚みtは、鋼板11の表面11aに付着した液体の量や、多孔質弾性体層2の体積当たりの吸液量等を勘案して決めればよい。
【0018】
また、図2に示すように、水切りロール3のロール幅wは、鋼板11の板幅wよりも大きくする必要がある。鋼板11の表面11aに付着する液体を除去するためにはロール幅wを鋼板11の板幅wと同じにすれば十分であるが、本実施形態の除去装置1では絞りロール4で絞り出した液体を水切りロールの幅方向両端から排出するので、ロール長さは板幅より長くしないと鋼板のエッジが汚れるため(排出した液体が鋼板11に再付着することを防止するためにも)、ロール幅wは鋼板11の板幅wよりも大きくする。
【0019】
水切ロール用圧下シリンダ5は、水切りロール3を適度な加圧力で鋼板11の表面11aに押し当てる。水切ロール用圧下シリンダ5による加圧力が高すぎると、鋼板11の表面11aにおいて多孔質弾性体層2が押し潰されて、表面11aに付着する液体を十分に吸収できないばかりか、多孔質弾性体層2に残留する液体が絞り出されてしまうので、多孔質弾性体層2の硬度に合わせて圧下量を調整するとよい。
【0020】
次に、図1及び図2に示す絞りロール4は、水切りロール3に隣接して配置されている。絞りロール4の回転軸4aが、水切りロール3の回転軸3cとほぼ平行になるように位置決めされている。これにより、絞りロール4のロール面4bがその全幅に渡って水切りロール3の多孔質弾性体層2に接触される。絞りロール4は、水切りロール3の回転に伴って回転させることが好ましい。各ロール3、4のロール面の周速度は一致させることが好ましい。各ロール3、4のロール面の周速度が異なっていると、多孔質弾性体層2にせん断力が加わって破損する虞があるので好ましくない。絞りロール4は、回転駆動装置によって回転させてもよく、水切りロール3によって回転させてもよい。
【0021】
また、図1においては、絞りロール4の回転軸4aの鋼板の表面11aからの高さhが、水切りロール3の回転軸3cの鋼板表面からの高さhとほぼ同じ高さに設定されている。これにより、絞りロール4と水切りロール3との間に、液体を保持可能な窪みが形成される。この窪みが液体の排出用の溝7になる。液体の排出用の溝7は、水切りロール3及び絞りロール4の回転軸方向に渡って延在している。なお、絞りロール4の回転軸4aの高さhは、必ずしも、水切りロール3の回転軸3cの鋼板表面からの高さhと完全に同じにする必要はないが、回転軸4aの高さhが低すぎると、絞りロール4が鋼板11に接触してしまうので好ましくなく、回転軸4aの高さhが高すぎると、液体を保持可能な窪みを各ロール3、4の間に形成できなくなる。従って、高さhは、絞りロール4が鋼板11と接触せず、かつ液体を保持可能な窪み(溝7)を形成可能な範囲で調整すればよい。
【0022】
更に、絞りロール4は、図1及び図2に示すように、水切りロール3と鋼板11とが接触する位置から、水切りロール3の回転軸3cを中心にして水切りロールの3の回転方向に180°以上回転した位置において、水切りロール3と接していることが好ましい。言い換えると、水切りロール3の回転軸3cを水平方向に向けたときに、水切りロール3のロール面3aが下方に向けて動く側に絞りロール4が配置されていることが好ましい。水切りロール3のロール面3aが上方に向けて動く側において、絞りロール4が水切りロール3に接していると、絞りロール4によって絞り出された液体が鋼板11上に落下してしまうので好ましくない。
【0023】
絞りロール4は、ロール面4bが硬質の材料で構成されることが好ましく、例えば、金属、セラミックス、硬質ゴム等で構成されていればよい。ロール面4bが硬質材料で構成されることで、絞りロール4と水切りロール3のロール本体3aとによって多孔質弾性体層2を挟んで確実に押し潰し、液体を絞り出させることができる。
【0024】
また、絞りロール4の直径は、水切りロール3の直径の30〜80%程度がよい。絞りロール4の直径が水切りロール3の直径の30%未満では、液体を保持可能な窪み(溝7)が小さくなりすぎて、絞り出した液体が溢れるおそれがあり、また、絞りロール4が撓むおそれがあるので好ましくない。また、絞りロール4の直径が水切りロール3の直径の80%を超えると、水切りロール3に対する絞りロール4の線圧が低下し、多孔質弾性体層2に吸収された液体を十分に絞り出せなくなるので好ましくない。
【0025】
更に、絞りロール4の幅wは、水切りロールの幅wと同一であることが好ましい。各ロール3、4の幅w、wに差があると、各ロール3、4の両端から排出される液体が、幅の大きなロールに伝ってしまい、排液がスムーズにできなくなるので好ましくない。また、絞りロール4の幅wが水切りロールの幅wよりも小さいと、多孔質弾性体層2の全幅に渡って液体を絞り出せなくなるので好ましくない。
【0026】
絞りロール用圧下シリンダ6は、絞りロール4を適度な加圧力で水切りロール3に押し当てさせる。最適な加圧力は、押し潰されたときの多孔質弾性体層2の厚みが、多孔質弾性体層2の元の厚みtの30〜80%程度になるように調整することが好ましい。絞りロール用圧下シリンダ6による絞りロール4の加圧力が低すぎて、多孔質弾性体層2の厚みが元の厚みtの80%超になると、多孔質弾性体層2に吸収された液体を十分に絞り出せないので好ましくない。また、絞りロール用圧下シリンダ6による加圧力が高すぎて、多孔質弾性体層2の厚みが元の厚みtの30%未満になると、多孔質弾性体層2が損傷する虞があるので好ましくない。
【0027】
次に、図1及び図2に示す除去装置1を用いた鋼板表面の液体の除去方法について説明する。本実施形態の除去方法に適用される鋼板11は、厚板、薄板、めっき鋼板の何れでもよい。また、鋼板11の表面11aに付着する液体は、水、希塩酸、希硫酸等の酸性溶液、苛性ソーダ等のアルカリ性溶液、めっき浴液、潤滑油等の油脂類などの何れでもよい。これらの液体は、鋼板の超音波探傷検査工程、鋼板の酸洗工程、鋼板のめっき工程等において鋼板に付着する。
【0028】
まず、図1及び図2に示すように、表面11aに各種液体12が付着した鋼板11を、矢印Aの方向に向けて、除去装置1に連続して通板させる。そして、鋼板11の表面11aに水切りロール3を接触させて、鋼板11の表面11aに付着している液体12を、多孔質弾性体層2に吸収させる。水切りロール3が鋼板11の通板速度に合わせて回転しながら、多孔質弾性体層2が液体12を連続的に吸収する。
【0029】
次に、液体12を吸収した多孔質弾性体層2は、水切りロール3の回転に伴い、絞りロール4との接触位置まで送られる。そして、絞りロール4によって多孔質弾性体層2が押し潰されて圧縮され、吸収していた液体が絞り出される。絞り出された液体12は、行き場を失って、各ロール3、4の間の窪み(溝7)に溜められる。そして、鋼板11が連続して通板されるのに伴い、溝7に溜まる液体12の液量が増加し、ついには、各ロール3,4の幅方向両端から排出される。
【0030】
絞りロール4によって液体12が絞り出された後の多孔質弾性体層2は、液体を吸収できる状態に戻る。そして、水切りロール3の回転により、再び鋼板11の表面11aに接触して液体12を吸収する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の除去装置1及び除去方法においては、鋼板11の表面11aの液体12を水切ロール3の多孔質弾性体層2に吸収させ、水切ロール3に押し当てられた絞りロール4によって、吸収させた液体12を絞り出し、さらに、絞り出した液体12を絞りロール4及び水切ロール3の回転軸に沿った方向に向けて排出させる。これにより、鋼板11の表面11aの液体12を除去する際に高圧ガスを使用せず、騒音を発生させることがなく、また、エネルギー消費量も少なくできる。また、多孔質弾性体層2に対して絞りロール4が摺動しないため多孔質弾性体層2が破れるおそれがなく、さらに、絞り出した液体12を絞りロール4及び水切ロール3の回転軸方向に沿って連続して排出させるので、長期間に渡る連続操業が可能になる。
また、水切りロール3と絞りロール4との間の窪みによって排出用の溝7が構成されるので、絞り出された液体12を溝7に溜め、かつ、溝7を伝って液体12を水切りロール3及び絞りロール7の回転軸方向に向けて連続して排出させることができ、鋼板11への再付着を防止できる。
【0032】
また、水切りロール3及び絞りロール4のロール幅w,wが、鋼板11の板幅wよりも大きいので、各ロール3、4の幅方向両端から排出させた液体が鋼板11に再付着するおそれがなく、鋼板11を汚染するおそれがない。
【0033】
更に、水切りロール3の回転軸3cを水平方向に向けたときに、水切りロール3のロール面3aが下方に向けて動く側に絞りロール4が配置されているので、絞りロール4によって絞り出された液体を溝7に溜めることができ、絞り出された液体がそのまま鋼板11上に落下するおそれがない。
【0034】
更にまた、絞りロール4の幅wと水切りロールの幅wとが同一なので、各ロール3、4の幅方向両端から液体を円滑に排出させることができる。
【0035】
更に、通板中の鋼板11が撓んで、表面11aが平坦面にならないような場合でも、水切りロール3のロール面に備えられた多孔質弾性体層2が、撓んだ表面11aに追従するように変形するので、鋼板11の両面11aから液体を吸収することができる。
【0036】
次に、除去装置の別の例について、図面を参照して説明する。図3には、本実施形態の別の例である除去装置21を示す。
図3に示す除去装置21には、水切りロール3と絞りロール4の間の溝7に、液体吸引用の吸引パイプ22が挿入されている。この吸引パイプ22は、図視略の吸引ポンプに接続されており、溝7に溜まった液体を吸引できるようになっている。
【0037】
図3に示す除去装置21は、図1及び図2に示す除去装置1と同様に、鋼板11の表面11aの液体12を水切ロール3の多孔質弾性体層2に吸収させ、水切ロール3に押し当てられた絞りロール4によって、吸収させた液体12を絞り出し、さらに、絞り出した液体12を絞りロール4及び水切ロール3の回転軸方向に沿って排出させる。このとき、溝7に多量の液体が溜まり、各ロール3、4の幅方向両端からの排出が間に合わない場合などには、吸引パイプ22によって液体を吸引させることで、液体を効率よく排出させることができる。
【0038】
次に、除去装置の他の例について、図面を参照して説明する。図4には、本実施形態の他の例である除去装置31を示す。
図4に示す除去装置31においては、絞りロール4に、水切り用ワイパーブレード32が絞りロール4の全幅に渡って取り付けられ、更に、水切り用ワイパーブレード32には排液用の樋33が取り付けられている。
【0039】
図4に示す除去装置31は、図1及び図2に示す除去装置1と同様に、鋼板11の表面11aの液体12を水切ロール3の多孔質弾性体層2に吸収させ、水切ロール3に押し当てられた絞りロール4によって、吸収させた液体12を絞り出し、さらに、絞り出した液体12を絞りロール4及び水切ロール3の回転軸方向に沿って排出させる。このとき、絞りロール4のロール面4aに付着した液体は、水切り用ワイパーブレード32によってワイピングされ、更にワイピングされた液体は排液用の樋33に流されて排出される。このように、絞りロール4に付着した液体を取り除くことで、除去装置31から液体を効率よく排出させることができる。また、絞りロール4から多孔質弾性体層2に液体が再付着するおそれもない。
【0040】
また、図4に示す除去装置31に、図3に示した除去装置21の吸引パイプ22を取り付けてもよい。
【0041】
次に、除去装置のその他の例について、図面を参照して説明する。図5には、本実施形態のその他の例である除去装置41を示す。
図5に示す除去装置41は、鋼板11の表面11aの液体を除去する除去装置1aと、鋼板11の表面とは反対側の面11bの液体を除去する除去装置1bとが備えられている。各除去装置1a、1bには、各水切りロール3、3と対になるターンロール42、42が備えられている。
【0042】
図5に示す除去装置41は、各ターンロール42によって円筒面状に曲げられた鋼板の両面11a、11bに、水切りロール3、3を接触させて、両面11a、11bに付着した液体を除去する。この除去装置41では、鋼板の両面11a、11bが円筒状に変形されていたとしても、水切りロール3のロール面に備えられた多孔質弾性体層2が、円筒状に変形した鋼板の両面11a、11bに追従するように変形して、鋼板11の両面11a、11bから液体を吸収することができる。
【0043】
本実施形態では、鋼板を例にして除去装置1について説明したが、本発明は鋼板に限られるものではなく、鋼板以外の金属板や、樹脂製の板等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、21、31、41…除去装置(鋼板表面の液体除去装置)、2…多孔質弾性体層、3…水切ロール、3a…ロール面、4…絞りロール、7…排出用の溝、11…鋼板、11a…鋼板の表面(鋼板表面)、12…液体、22…液体吸引用の吸引パイプ、31…水切り用ワイパーブレード、32…排出用の樋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板表面に付着した液体を吸収可能な多孔質弾性体層がロール面に備えられている水切ロールと、
前記多孔質弾性体層を押し潰すように前記水切ロールに押し当てられる絞りロールと、を具備しており、
前記絞りロールによって前記多孔質弾性体層から絞り出された前記液体が、前記絞りロール及び前記水切ロールの回転軸方向に沿って排出されるように構成されたことを特徴とする板表面の液体除去装置。
【請求項2】
前記水切りロールと前記絞りロールとの間に排出用の溝が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の板表面の液体除去装置。
【請求項3】
前記排出用の溝に、液体吸引用の吸引パイプが挿入されていることを特徴とする請求項2に記載の板表面の液体除去装置。
【請求項4】
前記絞りロールに水切り用ワイパーブレードが取り付けられ、前記水切り用ワイパーブレードに排出用の樋が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の板表面の液体除去装置。
【請求項5】
多孔質弾性体層がロール面に備えられている水切ロールを通板中の板の表面に接触させて、前記板の前記表面に付着している液体を前記多孔質弾性体層に連続的に吸収させるとともに、絞りロールを前記水切ロールに押し当てて前記多孔質弾性体層を押し潰すことにより、前記多孔質弾性体層に吸収された前記液体を連続して絞り出し、絞り出した前記液体を前記絞りロール及び前記水切ロールの回転軸方向に沿って排出することを特徴とする鋼板表面の液体の除去方法。
【請求項6】
前記水切りロールと前記絞りロールとの間に排出用の溝が構成され、前記溝によって前記液体を排出することを特徴とする請求項5に記載の鋼板表面の液体の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86127(P2013−86127A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228493(P2011−228493)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】