説明

枚葉印刷機

【課題】搬送胴からの枚葉紙の浮き上りを確実に検知することのできるセンサを備えた枚葉印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】センサ本体30は常に高周波を発振しており、アンテナ部31に導電体が接触すると発振回路の定数が変化して発振が停止し、スイッチング回路が動作して出力信号を出すタイプのタッチ式リミットスイッチである。よってスイッチの動作力が不要であり、また微少変位を検知することができる。つまり、枚葉紙Pがわずかに接触しただけで検知が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送胴に設けられたグリッパで枚葉紙の先端を把持し、搬送胴表面に枚葉紙を沿わせながら搬送する枚葉印刷機に関するものであり、より具体的には、搬送中の枚葉紙の搬送胴からの浮き上りを検知するセンサを備えた枚葉印刷機に関する。なお、搬送胴とは、枚葉紙を把持しながら搬送する胴のことであり、具体的には圧胴、渡し胴、乾燥用胴、給紙胴等がこれに該当する。
【背景技術】
【0002】
例えば印刷機内に設けられた乾燥部においては、枚葉紙を搬送する搬送胴の上方に近接して、紫外線を照射可能な発光ダイオード等で構成される乾燥装置が配置されている。乾燥装置を搬送胴に近接させるのは、高速で通過する枚葉紙を効率的かつ確実に乾燥させるためである。また、インクジェット式印刷機においても上記と同様、印字装置であるインクジェットヘッドが搬送胴の上方に近接して設けられる。他に、印刷後の枚葉紙の品質を印刷機内で検査する印刷検査装置においても、ラインCCD等の撮像手段が搬送胴の上方に近接して設けられる。
【0003】
枚葉紙はその先端のみがグリッパに把持されることにより、搬送胴に保持されて搬送されるため、枚葉紙の後端が上流側の搬送胴との間に挟まれている時は比較的搬送胴表面に密着しているが、挟まれた状態がなくなると枚葉紙は主にその後端付近が搬送胴表面に対して浮き上ることがあり、更に浮き上った後端付近がばたつくこともある。このため、枚葉紙の浮き上りを検知するセンサを設け、このセンサの検知状態によってエア量等を調整し、枚葉紙を搬送胴表面に密着させようとする技術がある。例えば特許文献1には搬送胴表面から枚葉紙までの距離である跳ね量を検出する跳ね量検出手段を備えた印刷検査装置の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−73421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の跳ね量検出手段は、レーザ距離計や超音波距離計が用いられ、枚葉紙の跳ね量を非接触で検知するよう構成されている。しかしながら、このような跳ね量検出手段は、投/受光部や送/受信部が汚れて誤検知をする可能性がある。また、吹付けられるエアにより飛散する塵芥(紙粉等)を枚葉紙の浮き上りとして誤検知してしまう可能性もある。また、このような検出手段は高価であるという問題もある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、搬送胴からの枚葉紙の浮き上りを確実に検知することのできるセンサを備えた枚葉印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、枚葉紙の先端を把持するグリッパを有する搬送胴により枚葉紙を搬送可能な枚葉印刷機において、該搬送胴近傍に設けられ、枚葉紙が当接することにより枚葉紙の浮き上りを検知するセンサを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、該搬送胴近傍にはエア吹付け手段が設けられており、該センサが枚葉紙の浮き上りを検知した時、該センサが枚葉紙の浮き上がりを検知しなくなるまで該エア吹付け手段を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷機においては、枚葉紙が当接することによりセンサは枚葉紙の浮き上りを検知するので、枚葉紙の浮き上りを確実に検知することが可能となる。
【0010】
また、センサが枚葉紙の浮き上りを検知しなくなるまでエア吹付け手段を調整するので、枚葉紙は搬送胴に密着しながら安定して搬送され、枚葉紙が搬送胴近傍に配置される処理手段に当接して枚葉紙の印刷品質に影響を与えることがなく、処理手段の処理を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る乾燥装置を備えた印刷機の概略側面図である。
【図2】(a)は乾燥用胴と発光ダイオードとの配置関係を示す斜視図、(b)は発光ダイオードを備えた基板の正面図である。
【図3】乾燥用胴と乾燥装置付近を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明に係る乾燥装置を供えた印刷機の一例である。図1の概略側面図に示す通り、本実施例に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙Pを送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙Pに印刷を行うための印刷部Bと、枚葉紙Pを排紙するための排紙装置Cを備えている。ここで印刷部Bは、5色の印刷が行えるように5台の印刷ユニット5を備えた印刷部Bとしているが、5色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙装置Cは、グリッパを備えるチェーン搬送装置12にて構成しているが、この排紙装置Cのない印刷機であってもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0014】
前記印刷ユニット5は、版胴1とゴム胴2とインキローラ群4、そして圧胴3と渡し胴6とを備えている。図示していないが、前記胴3、6のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号7は給紙胴であり、フィーダーボード8、口板9上を搬送される枚葉紙Pをスイングアーム10から受け取り、圧胴3に渡す役割を果たす。給紙胴7、スイングアーム10にも前記の爪台と爪が設けられている。
【0015】
最終の印刷ユニット5と排紙装置Cとの間には乾燥部が設けられている。すなわち、最終の印刷ユニット5の圧胴3により搬送された枚葉紙Pは渡し胴6に受け渡される。そして枚葉紙Pは渡し胴6から乾燥用胴11に受け渡される。乾燥用胴11の上部には乾燥装置Dが設けられている。なお、乾燥用胴11にも前記の爪台と爪が設けられている。
【0016】
乾燥装置Dは具体的には紫外線照射部であり、図2(a),(b)にも示すように、乾燥用胴11の表面にほぼ直交する方向に照射軸を有する66個の発光ダイオード13を備え、それら発光ダイオード13が乾燥用胴11の上方に配置されている。発光ダイオード13は、枚葉紙P(乾燥用胴11)の幅方向に沿って一直線上に所定間隔(等間隔)をおいて配置され、乾燥用胴11の幅方向全域に渡って紫外線を照射できるようになっている。
【0017】
これら66個のうちの11個の発光ダイオード13を、横長状の1つの基板14に設け、6台の基板14を枚葉紙P(乾燥用胴11)の幅方向に連結するとともに、両側に位置する基板14の端それぞれに支持部材15(図2(b)では一端のみを図示している)を取り付けて、6台の基板14を乾燥用胴11の表面に対して所定距離(所定高さ)隔てて左右の支持部材15,15にて支持させている。6台の基板14はAからFまでの符号が付けられている(図2(b)では14(A),14(B)のみを図示している)。
【0018】
印刷部Bにて印刷された枚葉紙Pは最終の印刷ユニット5の圧胴3から渡し胴6に渡され、枚葉紙Pの印刷面が渡し胴6に当接してインキが用紙に十分馴染むこととなる。そして渡し胴6から乾燥用胴11に受け渡された枚葉紙Pは乾燥装置Dにて乾燥され、排紙装置Cのチェーン搬送装置12に受け渡される。このようにして印刷される枚葉紙Pは光沢を損なうことがなく、良好な仕上がりとなる。
【0019】
図3は乾燥用胴11と乾燥装置D付近を示す拡大側面図である。乾燥装置Dは乾燥用胴11に近接して設けられている。これは、高速で搬送される枚葉紙Pを確実かつ効率的に乾燥させるためであるが、紫外線を照射する発光ダイオード13は発熱がなく、枚葉紙Pにかなりの至近距離まで近接させることが可能となる。よって、枚葉紙Pが乾燥装置Dに当接する可能性があるため、センサSが乾燥用胴11近傍に配置されている。また、複数のエア吹付け手段21A、21B、21Cも乾燥用胴11近傍に配置される。
【0020】
センサSについて、センサ本体30のアンテナ部31の先端には板バネ部材32がビス33により固定されており、該板バネ部材32の先端にはブラシコロ34が固定されている。センサ本体30には延出部材35が固定されており、延出部材35の先端にはアースネジ36が設けられている。
【0021】
このセンサ本体30は常に高周波を発振しており、アンテナ部31に導電体が接触すると発振回路の定数が変化して発振が停止し、スイッチング回路が動作して出力信号を出すタイプのタッチ式リミットスイッチである。よってスイッチの動作力が不要であり、また微少変位を検知することができる。つまり、枚葉紙Pがわずかに接触しただけで検知が可能である。
【0022】
具体的にはブラシコロ34が枚葉紙Pの接触により図3中右上方向に移動(回動)し、板バネ部材32がアースねじ36に接触してセンサ本体30は出力信号を出すこととなる。なお、アースねじ36を延出部材35に対して螺進させて板バネ部材32との間隔を変化させることにより、センサSの検知距離(感度)を調節できるようになっている。
【0023】
なお、センサSは、センサ本体30が印刷機の図示しないフレーム間に設けられた軸Oに対して回動可能かつ軸方向移動可能に設けられており、枚葉紙Pの幅方向(乾燥用胴11の軸方向)に2つ設けられている。センサSは使用される枚葉紙Pの幅方向両側、あるいは一般的に「どぶ」と称される非画像部(印刷されない箇所)に位置するように設置される。また、センサSの非使用時には軸Oに対して図3中反時計方向にセンサSを回転させて退避させることができる。
【0024】
図3において、乾燥装置Dを搬送方向で挟むようにエア吹付け手段21A,21Bが配置されている。エア吹付け手段21Bよりも搬送方向上流には上述のセンサSが配置されている。センサSの更に搬送方向上流にはエア吹付け手段21Cが配置されている。エア吹付け手段21A〜21Cは枚葉紙Pの幅方向に長く延在しており、図示しないが該幅方向に延びるスリットからエアを吹付け可能に構成されている。なお、図3中の破線はエアの吹き出し方向を示している。
【0025】
下流側のエア吹付け手段21Aのエアが乾燥用胴11の表面に吹付けられる箇所の(乾燥用銅11の回転方向における)中心と、乾燥装置Dの紫外線が乾燥用胴11の表面に照射される箇所(発光ダイオード13と乾燥用胴11の中心を結ぶ線が乾燥用胴11表面と交わる箇所)との胴表面における距離をL1とし、乾燥装置Dの紫外線が乾燥用胴11の表面に照射される箇所と、上流側のエア吹付け手段21Bのエアが乾燥用胴11の表面に吹付けられる箇所の(乾燥用銅11の回転方向における)中心との胴表面における距離をL2とする。
【0026】
エア吹付け手段21Bのエアが乾燥用胴11の表面に吹付けられる箇所の(乾燥用銅11の回転方向における)中心と、センサSのブラシコロ34と乾燥用胴11の中心とを結ぶ線が乾燥用胴11表面と交わる箇所との胴表面における距離はL1となるように、センサSが配置される。また、センサSのブラシコロ34と乾燥用胴11の中心とを結ぶ線が乾燥用胴11表面と交わる箇所と、更に上流側のエア吹付け手段21Cのエアが乾燥用胴11の表面に吹付けられる箇所の(乾燥用銅11の回転方向における)中心との胴表面における距離はL2となるように、エア吹付け手段21Cが配置される。
【0027】
また、乾燥装置Dと乾燥用胴11の表面との距離をHとすると、ブラシコロ34と乾燥用胴11の表面との距離をH−αとなるようにしている。つまり、ブラシコロ34の方が乾燥装置Dよりも乾燥用胴11の近傍に配置される。
【0028】
次に、このように構成された印刷機の動作について説明する。給紙部Aから給紙された枚葉紙Pは印刷部Bにて印刷が行われ、排紙部Cに排紙される前に乾燥装置Dによって乾燥が行われる。枚葉紙Pは乾燥用胴11に密着するべくエア吹付け手段21A〜21Cのエア供給を受けながら搬送され、乾燥装置Dの発光ダイオード13により枚葉紙Pに印刷されたインクの乾燥、硬化が行われる。
【0029】
乾燥装置Dの通過前に枚葉紙PはセンサSを通過するが、枚葉紙Pの浮き上りにより、ブラシコロ34が枚葉紙Pを検知すると、図示しない制御部にその検知信号が入力され、制御部はエア吹付け手段21A〜21Cを調整する。この調整は、例えばインバータ等でモータの回転数を変え、エア吹付け手段の吹付け量を増やすことにより行われる。この吹付け量増加は、定期間隔で一定量ずつ増やすのが好ましい。
【0030】
他に、エア吹付け手段21A〜21Cを乾燥用胴11に対して接離可能としておき、エア吹付け手段21A〜21Cを乾燥用胴11に接近させてもよい。このようにエア吹付け手段を調整し、センサSが枚葉紙Pを検知しなくなったところで制御部はこの調整を終了する。
【0031】
上述の通り、2つのエア吹付け手段の間にそれぞれ位置する乾燥装置DとセンサSとの位置関係は同一になるように設定されているので、エア吹付け手段21Aとエア吹付け手段21Bのエア供給を受けながら乾燥用胴11上を図示しないグリッパにて先端を把持されながら搬送される枚葉紙Pの、乾燥装置Dを通過する時の浮き上り具合をセンサSにて検知することが可能となる。すなわち、枚葉紙Pが乾燥装置Dを通過する状態を事前検証することが可能となる。
【0032】
しかもセンサSと乾燥用胴11との距離の方がα分乾燥用胴11に近く設置されているので、センサSで枚葉紙Pの浮き上りが検知されなければ、乾燥装置Dに接することはなく、枚葉紙Pの傷つき等を確実に防ぐことが可能となる。すなわち、処理手段としての乾燥装置Dに当接して枚葉紙の品質に影響を与えることがなく、処理手段の処理を確実に行うことが可能となる。
【0033】
本実施例における乾燥装置Dは紫外線を照射可能な発光ダイオード13で構成されるが、枚葉紙Pを確実かつ効率的に乾燥させるために乾燥用胴11に対してかなりの至近距離まで近接させている。これは、発光ダイオード13が発熱しないという特性もあるが、発光ダイオード13自体が高価であるためでもある。
【0034】
他の乾燥装置においては、乾燥装置と乾燥用胴との間にガイドを設け、枚葉紙Pの浮き上りによる乾燥装置との接触を防止するものもある。この場合、ガイドは乾燥用胴の周面から所定量離間した略半円状の棒体で、枚葉紙Pの幅方向に複数設けられる。ところが上述の通り、発光ダイオードを使用した乾燥装置はガイドを設置するスペースがなく、ガイドを設けることができないため、本発明が非常に有用となる。
【0035】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前述の実施形態では、エア吹付け手段を乾燥用胴近傍に配置していたが、乾燥用胴に吸引部を設けて枚葉紙Pを乾燥用胴に吸引密着可能に構成し、センサSの検知状態により、吸引部を調整するようにしてもよい。また、前述の実施形態では処理手段として乾燥装置が用いられたが、これに限らず、ラインCCD等の撮像手段を有し、印刷後の枚葉紙の品質を印刷機内で検査する印刷検査装置に本発明を適用してもよい。また、印字装置であるインクジェットヘッドが搬送胴の上方に近接するインクジェット式印刷機においても上記と同様、本発明を適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る印刷機は、グリッパを備えた搬送胴を有する印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0037】
3 圧胴
6 渡し胴
7 給紙胴
11 乾燥用胴
13 発光ダイオード
21A エア吹付け手段
21B エア吹付け手段
21C エア吹付け手段
30 センサ本体
32 板バネ部材
34 ブラシコロ
D 乾燥装置
S センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙の先端を把持するグリッパを有する搬送胴により枚葉紙を搬送可能な枚葉印刷機において、該搬送胴近傍に設けられ、枚葉紙が当接することにより枚葉紙の浮き上りを検知するセンサを備えたことを特徴とする枚葉印刷機。
【請求項2】
該搬送胴近傍にはエア吹付け手段が設けられており、該センサが枚葉紙の浮き上りを検知した時、該センサが枚葉紙の浮き上がりを検知しなくなるまで該エア吹付け手段を調整することを特徴とする請求項1記載の枚葉印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75424(P2013−75424A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216564(P2011−216564)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】