説明

枠練り石鹸の製造方法

【課題】残香性に優れた枠練り石鹸の製造方法を提供すること。
【解決手段】
(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩、(B)水溶性無機塩、(C)水との混合物と、(D)香料及び(E)金属石鹸の混合物とを混合する枠練り石鹸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残香性に優れた枠練り石鹸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの洗浄剤に香料が配合されている。香料が配合されることにより、洗浄剤のもつ生地臭をマスキングしたり、使用時の心地良さを付与することができる。また、毛髪、肌、衣類等に残る香りは、製品使用者本人だけでなく、他の人にも常に意識の対象となるため、大変重要なものである。更に香りは、その製品の商品コンセプトを代表するものであり、消費者の購買意欲にも大きく影響を与える。このように、香料は、製品の使用感や効果に影響を与え、生理的心理効果も大きい。従って、香料は、使用時に魅力的であると同時に、使用後香りを持続させることが求められている。
【0003】
近年、石鹸や液体洗浄剤等の洗い流して使用する身体洗浄剤にも香料が配合され、使用後においても香りが持続することが求められている。
たとえば、特許文献1には、香料を含む石鹸が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−157598号公報
【特許文献2】特開昭53−56313号公報
【特許文献3】特公昭52−21573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、石鹸のベースに香料、金属石鹸を配合する記載はあるが、その効果が泡立ちや泡質を改善する記載のみであり、香りを残すという技術的な記載はない。また、そのような方法では、身体に残香性を高める石鹸をつくることは非常に難しい。
【0006】
本発明は、残香性が高い枠練り石鹸の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、あらかじめ香料と、金属石鹸とを混合しておくことで、身体に残香性の高い枠練り石鹸を製造することができることを見出した。
すなわち、本発明によれば、
(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩、(B)水溶性無機塩、(C)水との混合物と、(D)香料及び(E)金属石鹸の混合物とを混合する枠練り石鹸の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、身体に残香性の高い枠練り石鹸の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の枠練り石鹸は、
(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩、(B)水溶性無機塩、(C)水との混合物と、(D)香料及び(E)金属石鹸の混合物とを混合する枠練り石鹸の製造方法である。
当該枠練り石鹸は、
(A)脂肪酸塩 25〜80質量%、
(B)水溶性塩類 0.1〜10質量%、
(C)水 5〜70質量%、
(D)香料
(E)金属石鹸 0.1〜10質量% 、
を含む枠練り石鹸であることが好ましい。
次に、各成分について詳細に説明する。
【0010】
(成分(A))
成分(A)は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩である。
成分(A)の脂肪酸塩を構成する脂肪酸としては、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸を用いることができる。具体的には、植物油脂や動物油脂(例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマシ油、大豆油、綿実油、ナタネ油、ヒマワリ油、牛脂、豚脂等)から得られるものが挙げられる。
なかでも、パーム核油又はヤシ油から得られる脂肪酸塩は、ラウリン酸、ミリスチン酸を多く含むため、速泡性が高く、泡量が多く、泡質がクリーミーになるので好ましい。
さらに好ましくは、パーム核油を加水分解して得られるパーム核油脂肪酸塩が、臭いの面で優れている。
【0011】
また、脂肪酸塩としては、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩(例えばモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等)が挙げられる。
なかでも、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)は、速泡性が高く、キメ細かな泡になるので好ましい。
さらに好ましくは、ナトリウム塩が、クラフト点を上げるので石けんが固くなり、溶けくずれが少なく好ましい。
【0012】
成分(A)の脂肪酸塩は、全組成中に合計で25〜80質量%、好ましくは27%〜47質量%含まれる。成分(A)の脂肪酸塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれか単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
脂肪酸塩の含有量を25質量%以上とすることで、十分な硬さと泡量が得られ、かつ石鹸形状を保持することができる。
また、80質量%以下とすることで、枠練り石鹸を製造する際の溶融石鹸の流動性を確保でき、外観のよい枠練り石鹸を得ることができる。
【0013】
(成分(B))
成分(B)は、水溶性無機塩である。
成分(B)の水溶性無機塩としては、塩素イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン等のアニオンとアルカリ金属との塩を示す。
なかでも、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムが好ましく、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら水溶性無機塩は、クラフト点を上げるので石けんを固くすることができる。また、溶融石鹸の流動性を向上し、型への流し込み性を良好になる。
【0014】
これらの水溶性無機塩は、全組成中に合計で0.1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%が含まれる。
0.1質量%以上とすることで、十分な硬度を有する枠練り石鹸とすることができる。また、10質量%以下とすることで、枠練り石鹸の起泡性を確保することができる。
【0015】
(成分(C))
成分(C)の水は全組成中に5〜70質量%である。水分量を5質量%以上とすることで、溶融石けんの流動性を向上し、型への流し込み性を良好とするという効果があり、70質量%以下とすることで石けんの硬さを保つという効果がある。
【0016】
(成分(D))
成分(D)の香料としては、特に制限はなく、天然香料及び合成香料のいずれも用いることができる。
一般に石鹸に配合される香料は、トップノート、ミドルノート及びベースノートに分類される。
トップノートに分類されるものとして、例えば、リモネン、レモンオイル、オレンジペラ、ベルガモットオイル、トリデセナール、シネオール、ライムオイル、グレープフルーツオイル、ヘキセノール、ヘキシルアルデヒド、シス-3-ヘキセノール、シス-3-ヘキセニルアセテート、シス-3-ヘキセニルブチレート、ヘキセニルアセテート、トランス-2-ヘキセナール、ジブチルスルファイド、ジメチルスルファイド、トリメチルヘキセナール、エチル-2-メチルブチレート、フラクトン、マンザネート、アリルヘプタノエート、アセタール、エチルアセテート、エチルアセトアセテート、エチルフォルメート、エチルヘプタノエート、エチルオクタノエート、エチルプロピオネート、ベンズアルデヒド、シス-6-ノネナール、メロナール、エチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルイソバレレート、イソアミルアセテート、イソアミルアルコール、イソアミルフォルメート、イソブチルアセテート、プレニルアセテート、ヘプチルアセテート、オクテノール、オクテニルアセテート、ジメトール、エチルアミルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘプテノン、スペアミントオイル、イソアミルイソバレレート、メチルベンゾエート、パラクレジルメチルエーテル、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ガルバナムオイル、マルトール、ラバンジングロッソ、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、ユーカリプトール、カンファー、ボルネオールイソボルニルアセテート、シトロネラオイル、ローズオキサイド、テトラヒドロゲラニアール、テトラヒドロリナロール、メチルベンジルアルコール等が挙げられる。
【0017】
ミドルノートに分類されるものとしては、例えば、メチルオクチルアセトアルデヒド、シトラール、レモングラスオイル、オレンジビターオイル、ヘキシルブチレート、イソシクロシトラール、メチルオクチンカルボネート、ブチュリーフオイル、ジエチルマロネート、アリルヘプタノエート、ガンマノナラクトンノネノール、タジェットオイル、リナリルアセテート、メチルノニルケトン、ペパーミントオイル、フェンチルアセテート、フェンチルアルコール、エチルサリシレート、メチルサリシレート、アネトール、エストラゴール、キャラウェイオイル、ブラックペッパーオイル、セロリーシードオイル、カラムスオイル、パセリシードオイル、シトロネリルフォルメート、デルタダマスコン、ダマセノン、エチルベンゾエート、エチルリナロール、リナロール、テルピネオール、メチルフェニルアセテート、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、ドデシルアルデヒド、スチラリルアルデヒド、アリルアミルグリコレート、ラベンダーオイル、ターピニルアセテート、メチルイソオイゲノール、ゲラニオール、ゼラニウムオイル、ゲラニルアセテート、ネロール、ネリルアセテート、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルアルコール、ローズドメアブソリュート、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロゲラニルアセテート、ベンジルアセテート、ベンジルアセトン、ベンジルアルコール、イランイランオイル、アニスアルデヒド、ターピネオール、フェニルアセトアルデヒド、ブチルシクロヘキシルアセテート、シベットアブソリュート、エチルフェニルアセテート等が挙げられる。
【0018】
ベースノートに分類されるものとして、例えば、リナロールオキサイド、ルボフィックス、ヘキセニルサリシレート、フローラロゾン、ヘリオナール、エチルメチルフェニルグリシデート、ラズベリーケトン、ウンデカラクトン、デルタデカラクトン、ガンマデカラクトン、デルタウンデカラクトン、デルタドデカラクトン、ガンマドデカラクトン、デルタノナラクトン、アリルフェノキシアセテート、アルファダマスコン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、デセノール、ジフェニルメタン、シスジャスモン、ジヒドロジャスモン、エディオン、ジメチルアンスラニレート、メチルアンスラニレート、ポルジョナール、シクラメンアルデヒド、アニシルアセトン、フェニルアセトアルデヒド、アリルイオノン、ジヒドロベータイオノン、イオノンアルファ、イオノンベータ、セドリルメチルエーテル、モスシンス、カシュメラン、セレストライド、エチレンブラシレート、ムスコン、ペンタライド、シベトン、フェニルエチルフェニルアセテート、エチルバニリン、バニリン、ヘリオトロピン、ヘリオトロピルアセトン、メチルノニルアセトアルデヒド、アリルシクロヘキサンプロピオネート、オイゲノール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、ジフェニルオキサイド、ロジノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リリアール、リラール、メチルイオノン、セダーウッドオイル、セドロール、セドリルアセテート、アセチルセドレン、セドリルメチルエーテル、イソイースーパー、サンダルシンス、パチュリオイル、パールライド、インドール、シンナミックアルコール、クマリン、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ヘキシルサリシレート等が挙げられる。
これらの香料は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を調合した調合香料として用いてもよい。
【0019】
成分(D)の香料の含有量は、0.01〜4質量%、特に0.5〜3.0質量%、さらに0.7〜2.0質量%が好ましい。0.01質量%以上とすることで、原料の臭いを確実にマスキングし、さらに、肌等に香りを確実に残すことができる。また、香料の含有量を4質量%以下とすることで、泡量を確実に確保することができる。
【0020】
((E)金属石鹸)
成分(E)の金属石鹸は、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸、もしくはそれらの混合物と非アルカリ金属との高級脂肪酸塩である。
非アルカリ金属としては、いずれでも良いが、アルミニウム、銀、バリウム、ベリリウム、カルシウム、セリウム、コバルト、クロム、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、ストロンチウム、トリウム、チタン、亜鉛等の金属が挙げられ、これらのうち、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛が好ましい。
具体的には、カルシウム石鹸としては、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、オクタン酸カルシウム等があげられる。アルミニウム石鹸としては、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ベヘン酸アルミニウム、オクタン酸アルミニウム等があげられる。マグネシウム石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム等があげられる。亜鉛石鹸としては、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
特に、カルシウム石鹸であるパルミチン酸カルシウム及びステアリン酸カルシウムが、洗浄後の肌がすべすべな使用感になり、しかも、香料との混合物として、枠練り石鹸と混合することで、身体に残香性が高く好ましい。
これらの金属石鹸は、それぞれ単独でも用いても良いし、2種類以上を組み合わせた金属石鹸として用いても良い。
【0021】
成分(E)の金属石鹸の含有量は、0.1〜10質量%、特に0.5〜5.0質量%、
さらに1.0〜4.0質量%が好ましい。
金属石鹸の含有量を0.1質量%以上とすることで、枠練り石鹸を使用した際、肌へのの残香性を高め、枠練り石鹸の変形を防ぐことができる。又、金属石鹸の含有量を10質量%以下とすることで十分な泡量を保つことができる。
【0022】
本発明は、(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩、(B)水溶性無機塩、(C)水との混合物と、(D)香料及び(E)金属石鹸の混合物とを混合する枠練り石鹸の製造方法である。従来の一般的な枠練り石鹸の製造方法では、香料が高温で揮散するのを防止する為、工程の最後に香料を添加していた。しかしながら、この方法では、香料の揮散を抑制することは難しく、また、身体への香りの残留性も悪かった。
これに対し、本発明のように、香料と金属石鹸を事前に混合し、金属石鹸に香料を吸着させることで、香料の揮散を確実に防止することができる。また、石鹸を身体に使用する際に、香料が吸着した金属石鹸が、身体に優先的に吸着するので、身体への香りの残留性をより高めることができる。
【0023】
本発明で用いる成分(D)/成分(E)の質量比は、1/10〜10/1が好ましい。
1/10以上とすることで、香料と金属石鹸とを確実に接触させることができ、使用時に香り立ちが早く、洗浄後の肌への残香性が高い石鹸とすることができる。また、10/1以下とすることで洗い上がりの肌がきしむことなく、肌への残香性が高い石鹸とすることができる。なかでも使用時の起泡性が高く、肌への残香性が高くなる1/1〜5/1が好ましい。
【0024】
さらに、本発明の枠練り石鹸には、変臭、変色等の品質劣化、金属スカムの発生を防止する観点から金属イオン封鎖剤(成分(F))を含むことができる。
特にヒドロキシエタンジホスホン酸若しくはその塩、又はエチレンジアミン四酢酸若しくはその塩は、洗い流す水中に含まれる金属イオンと脂肪酸との反応によって形成する金属石けんの生成を抑える機能を有する。この機能により、香料と接触させた金属石鹸を肌に効果的に吸着させる役割を有する。したがって、肌の残香性がより高くなる。
前記金属イオン封鎖剤の含有量が、0.01〜1質量%が好ましく、特に0.05〜0.5質量%が洗浄した際に素早く水中の石鹸を除去でき、残香性を高めることができる。
【0025】
本発明の枠練り石鹸には、タオルドライ後の保湿感を与える観点より、ポリオールを含有することができる。
これらのポリオールとしては例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性多糖類等が挙げられる。中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの分子量は8000以下であるのが好ましく、水溶性多糖類としてはショ糖、トレハロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、特にグリセリン、ソルビトールが好ましい。
これらのポリオールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。全組成中に0.1質量%以上、特に1質量%以上、30質量%以下、さらに15質量%以下、特に10質量%以下含有することが好ましい。
【0026】
本発明の枠練り石鹸には、泡量をより高める観点より、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、(A)成分以外のアニオン界面活性剤を含むことができる。
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミノキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤は1種類以上用いることができ、全組成中に0〜10質量%、特に0.1〜5質量%、さらに0.5〜4質量%含有することが好ましい。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ヒドロキシ酸エステル系界面活性剤、ショ糖エステル系界面活性剤、乳酸エステル系界面活性剤等のノニオン活性剤が挙げられる。
これらの非イオン界面活性剤は15質量%以下、さらには0.1質量%以上、8質量%以下含有することが好ましい。
(A)成分以外のアニオン界面活性剤としては、通常の洗浄剤組成物に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルアミドスルホコハク酸塩、アルキルサクシンアミド塩、アルキルスルホ酢酸塩、アシルサルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩;N−アシルタウリン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアスパラギン酸塩等のアシル化アミノ酸塩等が挙げられる。
これらのアニオン性界面活性剤は15質量%以下、さらには0.5質量%以上、10質量%以下含有することが好ましい。
前記の界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明の枠練り石鹸には、泡すべりを高める観点から、高分子ポリエチレングリコール、カチオンポリマー、セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の高分子化合物を含有することもできる。
これらの高分子化合物は、1種類以上用いることができ、全組成中の0〜5質量%、特に0.1〜3質量%、さらに0.25〜2質量%含有されることが好ましい。
【0028】
枠練り石鹸には、更に化粧料に通常用いられる成分、例えば、前記以外の界面活性剤、水溶性溶剤、増粘剤、殺菌剤、保湿剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、香料、抗菌炎症、美白剤、制汗剤、紫外線吸収剤等を適宜含有させることができる。
【0029】
さらに、本発明の枠練り石鹸には、泡立ちを早くする観点から、気泡を含有させることができる。枠練り石鹸は、以下のようにして製造することができる。
たとえば、成分(A)〜(E)、必要に応じて他の成分を加え、加熱溶解する。加熱温度は、65℃〜90℃程度である。これにより溶融石鹸が得られる。得られた溶融石鹸は、そのまま型枠に流し込まれて冷却固化される。これによって枠練り石鹸組成物が得られる。所望により、冷却固化前及び/又は冷却固化後に溶融石鹸に含まれる水分をある程度除去してもよい。特に、気泡を含有させて軽量(浮き)石鹸を製造する場合には、得られた溶融物に、家庭用あるいは工業用のホイップ装置でエアレーション処理を施して気泡を含有させ、得られた気泡含有溶融物を型枠に入れて冷却して固化させ、必要に応じて乾燥させることにより製造することができる。ここで言うエアレーションとは、溶融石鹸に空気または窒素などの気泡を噴出させる処理のことであり、曝気処理と言うこともある。
【0030】
以上のような枠練り石鹸は、次のようにして製造する。
(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩、(B)水溶性無機塩、(C)水との混合物と、(D)香料及び(E)金属石鹸の混合物とを混合して製造する。
より詳細に説明すると、成分(A)、(B)、(C)を55〜95℃で加熱攪拌しておく。
一方で、成分(D)と、成分(E)とを混合させた混合物を製造する。具体的には成分(D)と、成分(E)とを混ぜ、成分(D)と、成分(E)とが均一に分散するまで振とうする。
その後、成分(D)と、成分(E)との混合物を、12時間以上、好ましくは24時間以上常温で放置する。このようにあらかじめ成分(D)の香料と、成分(E)の金属石鹸とを混合しておくことで、枠練り石鹸を使用した際、残香性が高まる。特に、成分(D)と、成分(E)との混合物を所定時間(12時間以上)放置しておくことで、枠練り石鹸を使用した際の残香性がより高まる。
残香性の高まる理由としては、以下のようなことが推測される。香料が金属石鹸に付着し、担持されることとなる。そのため、枠練り石鹸を使用した際、香料が付着した金属石鹸が肌等に残り、残香性が高まる。
その後、成分(A)、(B)、(C)を含む混合物と、成分(D)、(E)を含む混合物とを混合し、溶融させて溶融石鹸とする。
次に、溶融石鹸を型枠に流し込み、冷却して固化、乾燥することにより枠練り石鹸を得ることができる。
なお、(A)〜(E)以外の他の成分は、(A)〜(C)の混合物に添加してもよく、また、(D)、(E)の混合物に添加してもよい。さらには、(A)〜(C)の混合物と、(D)、(E)の混合物とを混合させたあと、他の成分を混合してもよい。
ただし、香料を金属石鹸に確実に付着させるためには、(A)〜(C)の混合物に対し他の成分を添加することが好ましい。
以上のような製造方法にて得られた枠練り石鹸は、残香性の高いものとなる。
【0031】
ここで、残香性を高める方法として、特許文献2,3には、長時間の保香性を付与するために、サイクロデキストリンで香料を包みこんでカプセル化する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2,3に記載されたサイクロデキストリンを担体とする香料の製造に特殊な技術を必要とし、簡便性に欠けるとともにコストアップの要因になるという問題点があった。
これに対し、本実施形態では、香料と、金属石鹸をあらかじめ混合しておくだけでよく、特殊な担体を使用する必要がないので、従来から枠練り石鹸に使用している原料を使用しながら、簡単に製造でき、かつ、コストアップを抑制することができる。
【実施例】
【0032】
(混合溶液の組成)
表1に示した割合(質量部)に従い、成分(D)と成分(E)とをマイティーバイアルNo.5に入れた。成分(D)と成分(E)との合計は、20gとなるようにした。常温下においてボルティックス ミキサー(LAB−MIXER HM−10H メモリ5 iuchi社)で、均一に混ざるまで振とうし、その後常温下24時間静置し、成分(D)と成分(E)の混合溶液1〜5を作成した。
なお、ここでは、24時間放置したが、これに限らず、12時間以上とすることが好ましい。
ここで、成分(D)は、具体的には
ノニルアルデヒド 5重量部
ガルバナルオイル 5重量部
ラベンダーオイル 30重量部
ドデシルアルデヒド 5重量部
フェニルエチルアルコール 259重量部
ゲラニオール 100重量部
ベンジルアセテート 50重量部
ターピネオール 50重量部
リナリルアセテート 50重量部
ヘキシルシンナミックアルデヒド 150重量部
リリアール 100重量部
セダーウッドオイル 50重量部
パールライド 100重量部
クマリン 50重量部
ベンジルサリシレート 50重量部 の混合香料を使用した。
【0033】
【表1】

【0034】
(枠練り石鹸の組成および作製)
(実施例1)
表2に示す含有量で、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。表2の含有割合は、質量%である。
75℃の温水槽中に、1Lアルミ製のビーカーを浸して、ビーカー内の混合物を溶解し、攪拌しながら48%苛性ソーダを配合して混合物を得た。この混合物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(F)を含む混合物である。
次に、75℃に保った前記混合物中に上記表1に示した混合溶液1を適宜加えて、2分攪拌を行い、配合量全体が400gとなる溶融石鹸を得た。
この溶融石鹸を型(AS One社製バランスディッシュBD-2(容積100cc))に流し込んだ後に、冷凍庫(約−20℃)に30分静置冷却し石鹸を固化させた。その後、密閉したアルミピロー中に石鹸を入れて5℃、18時間放置して安定化させた枠練り石鹸を得た。
【0035】
(実施例2)
表2に示す含有量で、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。また、混合溶液1にかえて混合溶液2を使用した。他の点は、実施例1と同様である。
【0036】
(実施例3)
表2に示す含有量で、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。また、混合溶液1にかえて混合溶液3を使用した。製造方法は、実施例1と同様である。
【0037】
(実施例4)
表2に示す含有量で、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。また、混合溶液1にかえて混合溶液4を使用した。製造方法は、実施例1と同様である
【0038】
(実施例5)
表2に示す含有量で、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。また、混合溶液1にかえて混合溶液5を使用した。製造方法は、実施例1と同様である
【0039】
(実施例6)
表2に示した配合で、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)を1Lアルミ製のビーカーに入れた。
75℃の温水槽中に、1Lアルミ製のビーカーを浸して、ビーカー内の混合物を溶解し、攪拌しながら48%苛性ソーダを配合して混合物を得た(成分(A)、成分(B)、成分(C)を含む混合物)。
次に、75℃に保った前記混合物中に上記表1に示した混合溶液2を適宜加えて、2分攪拌を行い、配合量全体が400gとなる溶融石鹸を得た。
この溶融石鹸を型(AS One社製バランスディッシュBD-2(容積100cc))に流し込んだ後に、冷凍庫(約−20℃)に30分静置冷却し石鹸を固化させた。その後、密閉したアルミピロー中に石鹸を入れて5℃、18時間放置して安定化させた枠練り石鹸を得た。
【0040】
(比較例1)
表2に示したように、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。
75℃の温水槽中に、1Lアルミ製のビーカーを浸して、ビーカー内の混合物を溶解し、攪拌しながら48%苛性ソーダを配合して混合物を得た。
次に、75℃に保った混合物中に上記表2に示した配合割合となるように、香料(成分(D))を加えて、2分攪拌を行い、配合量全体が400gとなる溶融石鹸を得た。
この溶融石鹸を型(AS One社製バランスディッシュBD-2(容積100cc))に流し込んだ後に、冷凍庫(約−20℃)に30分静置冷却し石鹸を固化させた。その後、密閉したアルミピロー中に石鹸を入れて5℃18時間放置して安定化させた枠練り石鹸を得た。
【0041】
(比較例2)
表2に示したように、ラウリン酸、ミリスチン酸、塩化ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸液を1Lアルミ製のビーカーに入れた。
75℃の温水槽中に、1Lアルミ製のビーカーを浸して、ビーカー内の混合物を溶解し、攪拌しながら48%苛性ソーダを配合して溶融石鹸を得た。
次に、75℃に保った溶融石鹸中に上記表2に示す配合割合となるように、香料(成分(D))とステアリン酸カルシウム(成分(E))を別々に加え、2分攪拌を行い、配合量全体が400gとなる溶融石鹸を得た。
この溶融石鹸を型(AS One社製バランスディッシュBD-2(容積100cc))に流し込んだ後に、冷凍庫(約−20℃)に30分静置冷却し石鹸を固化させた。その後、密閉したアルミピロー中に石鹸を入れて5℃18時間放置して安定化させた枠練り石鹸を得た。
なお、この比較例2の製造方法は、特許文献1等に記載された従来の石鹸の製造方法に該当する。
【0042】
枠練り石鹸の配合時の組成を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
(残香性の評価)
上記の枠練り石鹸100gを、40℃のお湯で表面を濡らし、手のひらで濡れた枠練り石鹸を10回転させて後に、手のひらで30秒泡立たせた。その後、手のひらにあわ立てた泡を集め、その手と反対の腕を30秒洗浄し、40℃のお湯で30秒すすぎを行った。その後、紙タオル(日本製紙クレシア株式会社 キムタオル ワイパー ホワイト)を用いて軽く洗浄後の腕から水分を除去し、腕を2時間乾燥させた後の香りの強さを評価した(評価者は2名である)。
0:無臭
1:ごくわずかに匂う
2:弱く匂う
3:はっきり匂う
4:強く匂う
5:かなり強く匂う
6:非常に強く匂う
【0045】
枠練り石鹸の含有組成および評価結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
各実施例の枠練り石鹸は、比較例に比べ、いずれも、洗浄後、2時間乾燥させた後の肌の香りの強さが強かった。また、ヒドロキシエタンジホスホン酸若しくはその塩を含まない実施例6に比べ実施例2は、匂いの残りがわずかに強いようであった。
【0048】
(実施例7)
ミリスチン酸ナトリウム塩、パーム核脂肪酸ナトリウム塩、塩化ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビトール液、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ミリスチン酸、着色剤を1Lアルミ製のビーカーに入れた。
75℃の温水槽中に、1Lアルミ製のビーカーを浸して、ビーカー内の混合物を溶解し、攪拌しながら48%苛性ソーダを配合して混合物を得た。この混合物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含む混合物である。
次に、75℃に保った前記混合物中に上記表1に示した混合溶液4を適宜加えて、2分攪拌を行い、配合量全体が400gとなる溶融石鹸を得た。なお、溶融石鹸の各成分の配合は、表4に示す通りである。
この溶融石鹸を型(AS One社製バランスディッシュBD-2(容積100cc))に流し込んだ後に、冷凍庫(約−20℃)に30分静置冷却し石鹸を固化させた。その後、密閉したアルミピロー中に石鹸を入れて5℃、18時間放置して安定化させた枠練り石鹸を得た。
【0049】
(実施例8)
ミリスチン酸ナトリウム塩、パーム核脂肪酸ナトリウム塩、塩化ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、水(イオン交換水)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビトール液、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ミリスチン酸、着色剤を1Lアルミ製のビーカーに入れた。
75℃の温水槽中に、1Lアルミ製のビーカーを浸して、ビーカー内の混合物を溶解し、攪拌しながら48%苛性ソーダを配合して混合物を得た。この混合物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含む混合物である。
次に、75℃に保った前記混合物中に上記表1に示した混合溶液2を適宜加えて、2分攪拌を行い、配合量全体が400gとなる溶融石鹸を得た。なお、溶融石鹸の各成分の配合は、表5に示す通りである。
この溶融石鹸を型(AS One社製バランスディッシュBD-2(容積100cc))に流し込んだ後に、冷凍庫(約−20℃)に30分静置冷却し石鹸を固化させた。その後、密閉したアルミピロー中に石鹸を入れて5℃、18時間放置して安定化させた枠練り石鹸を得た。
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
実施例7,8の枠練り石鹸は、いずれも、洗浄後、2時間乾燥させた後の肌の香りの強さが強かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩、(B)水溶性無機塩および(C)水の混合物と、
(D)香料及び(E)金属石鹸の混合物と、を混合する枠練り石鹸の製造方法。
【請求項2】
当該枠練り石鹸は、
(A)アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩のいずれかの脂肪酸塩
25〜80質量%、
(B)水溶性無機塩 0.1〜10質量%、
(C)水 5〜70質量%、
(D)香料
(E)金属石鹸 0.1〜10質量% 、
を含むものである請求項1記載の枠練り石鹸の製造方法。
【請求項3】
前記成分(E)が、パルミチン酸カルシウム又はステアリン酸カルシウムである請求項1または2記載の枠練り石鹸の製造方法。

【公開番号】特開2011−37920(P2011−37920A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183523(P2009−183523)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】