説明

枠練り透明固形石鹸

【課題】ハチミツを高濃度に含有しながらも、泡立ちが良く、透明性に優れ、良好な硬度を備えた枠練り透明固形石鹸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)脂肪酸石鹸、(B)多価アルコール、(C)ハチミツ、及び(D)水性溶媒を必須成分として含有する枠練り透明固形石鹸であって、ハチミツの配合量が仕込量で15〜25重量%であることを特徴とする枠練り透明固形石鹸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠練りで製造される透明固形石鹸及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、ハチミツを高濃度に含有しながらも、泡立ちが良く、透明性に優れた透明固形石鹸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級脂肪酸のナトリウム塩を主剤にした脂肪酸石鹸の中には、グリセリン、ソルビトール、ショ糖等の透明化剤を配合することで、石鹸の結晶化を抑制して微細結晶化させ、透明な外観とした透明固形石鹸が知られている。かかる固形石鹸は透明であることから、一般の石鹸よりも高級品というイメージがある。
【0003】
このような透明固形石鹸は、脂肪酸石鹸に透明化剤を配合し、エチルアルコール等の低級アルコールと水との混合溶媒に加熱溶解した後、型枠に流し込んで冷却固化し、次いで型抜きした後、さらに2ヶ月もの長期間をかけて徐々に溶媒を蒸発乾燥させ熟成させる方法、いわゆる「枠練り法」によって製造される(非特許文献1、特許文献1〜2参照)。
【0004】
一方、ハチミツは、蜜蜂が巣に集めた甘味物であり、ブドウ糖、果糖及び少量の麦芽糖を主成分とし、オリゴ糖、ビタミン、ミネラル等の特殊な栄養成分を含有する甘味料として広く用いられている。また当該ハチミツには保湿作用があり、これが美肌効果を発揮するとして、従来から石鹸や化粧料の成分として使用されている。
【0005】
しかしながら、固形石鹸にハチミツを10重量%以上も配合すると、固形石鹸が脆弱化し溶け崩れしやすくなるという現象、および経時的に透明性が低下するという現象が生じるとともに、泡立ちが低下して洗浄力や使用感が低下するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−30798号公報
【特許文献2】特開2002−80896号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「化粧品学」 出版社:南山堂 編集:池田鉄作、出版(1版):1957.4.10、該当頁:P197-207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、固形石鹸にハチミツを高含量配合する場合の上記不具合(透明性の低下、泡立ちの低下、脆弱化、洗浄効果及び使用感の低下)を解決することで、ハチミツを15〜25重量%(仕込量)もの高い割合で配合することを可能とした枠練り透明固形石鹸を提供することを目的とする。すなわち、ハチミツを15〜25重量%もの多量に配合することで、保湿効果および美肌効果に優れるとともに、泡立ちがよく洗浄効果および使用感に優れた、透明で高級感のある固形石鹸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、枠練り法によって、上記課題を解決した透明固形石鹸を製造すべく検討を重ねていたところ、必須成分として(A)脂肪酸石鹸、(B)多価アルコール、(C)ハチミツ、および(D)水性溶媒を含む透明固形石鹸において、脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸に占めるラウリン酸とステアリン酸の配合割合がそれぞれ28〜34重量%および9〜11重量%となるように調整することで、石鹸にハチミツを仕込量で15重量%以上配合しても、経時的に透明性が低下するという現象および脆弱化し溶け崩れしやすくなるという現象が抑制できることを見出し、しかもハチミツの配合割合を仕込量で15〜25重量%の範囲になるように設定することで、逆にハチミツを配合しない場合よりも泡立ちが顕著に向上すること、さらに泡の質も向上し、クリーミーで弾力性あるきめ細かな泡が得られ、これにより使用感が著しく上昇することを見出した。
【0010】
本願発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の構成を有するものである:
(I)枠練り透明固形石鹸
(I-1)脂肪酸石鹸、(B)多価アルコール、(C)ハチミツ、及び(D)水性溶媒を必須成分として含有する枠練り透明固形石鹸であって、ハチミツの配合量が、仕込量で15〜25重量%であることを特徴とする枠練り透明固形石鹸。
(I-2)(A)脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸が、少なくともラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸であり、当該脂肪酸全量(100重量%)に占めるラウリン酸及びステアリン酸の配合割合がそれぞれ20〜40重量%及び5〜15重量%であることを特徴とする、(I-1)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-3)ラウリン酸及びステアリン酸の配合割合がそれぞれ25〜35重量%及び5〜12重量%であることを特徴とする、(I-2)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-4)ラウリン酸及びステアリン酸の配合割合がそれぞれ28〜34重量%及び9〜11重量%であることを特徴とする、(I-2)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-5)オレイン酸の配合割合が10〜30重量%であることを特徴とする、(I-2)乃至(I-4)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-6)オレイン酸の配合割合が15〜25重量%であることを特徴とする、(I-2)乃至(I-4)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-7)オレイン酸の配合割合が19〜23重量%であることを特徴とする、(I-2)乃至(I-4)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-8)ミリスチン酸及びパルミチン酸の配合割合がそれぞれ5〜15重量%及び20〜40重量%であることを特徴とする、(I-2)乃至(I-7)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-9)ミリスチン酸及びパルミチン酸の配合割合がそれぞれ8〜12重量%及び20〜32重量%であることを特徴とする、(I-2)乃至(I-7)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-10)ミリスチン酸及びパルミチン酸の配合割合がそれぞれ9〜11重量%及び24〜29重量%であることを特徴とする、(I-2)乃至(I-7)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-11)(A)脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸が、少なくともラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸であり、当該脂肪酸全量(100重量%)に占めるラウリン酸およびステアリン酸の配合割合がそれぞれ28〜34重量%および9〜11重量%であることを特徴とする、(I-1)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-12)オレイン酸の配合割合が19〜23重量%であることを特徴とする、(I-11)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-13)パルミチン酸の配合割合が24〜29重量%であることを特徴とする、(I-11)または(I-12)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-14)ステアリン酸の配合割合が9〜11重量%であることを特徴とする、(I-11)乃至(I-13)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-15)(A)脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸が、少なくともラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸であり、当該脂肪酸全量(100重量%)に占める各脂肪酸の配合割合が、ラウリン酸:28〜34重量%、ミリスチン酸:9〜11重量%、パルミチン酸:24〜29重量%、ステアリン酸:9〜11重量%、およびオレイン酸:19〜23重量%であることを特徴とする、(I-1)に記載する枠練り透明固形石鹸。
(I-16)ハチミツの配合量が、仕込量で15〜20重量%であるであることを特徴とする、(I-1)乃至(I-15)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【0011】
(II)枠練り透明石鹸の製造方法
(II-1)(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸の製造方法であって、(A)〜(D)の全成分を混合して調製した透明鹸化石鹸膠を流し込んだ型枠内での冷却を、8〜13℃で3時間以上行い、透明鹸化石鹸膠を固化することを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明固形石鹸は、ハチミツが仕込量15〜25重量%、好ましくは15〜20重量%もの高い含有割合で配合されており、その結果、保湿効果及び美肌効果に優れている。またハチミツが仕込量15〜25重量%、好ましくは15〜20重量%もの高い含有割合で配合されながらも、経時的に透明性が低下するという現象、および脆弱化し溶け崩れしやすくなるという現象が抑制されてなるものである。しかも本発明の透明固形石鹸は、起泡性に優れ、クリーミーできめ細かな泡が立ちやすく、また泡持ちがよいことを特徴とする。これにより洗浄力や使用感に優れ、特に洗顔用の洗浄料として有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の透明固形石鹸の製造工程の概略を示す図である。
【図2】実験例1で行った気泡力試験の結果を示す。
【図3】実験例3で行った泡直径測定試験の結果を示す。
【図4】実験例4で行った洗顔後の皮膚状態(水分量、皮脂量)の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)枠練り透明固形石鹸
本発明の枠練り透明固形石鹸は、(A)脂肪酸石鹸、(B)多価アルコール、(C)ハチミツ、および(D)水性溶媒を必須成分として含有する枠練り透明固形石鹸であって、ハチミツの含有量が15〜25重量%であることを特徴とする。
【0015】
(A)脂肪酸石鹸
ここで(A)脂肪酸石鹸としては、これを構成する脂肪酸が8〜22、好ましくは12〜18の炭素数を有する直鎖、分岐、または飽和若しくは不飽和の脂肪酸であるものを挙げることができる。好ましくは構成脂肪酸が、少なくともラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸である脂肪酸石鹸を挙げることができる。
【0016】
ここで脂肪酸石鹸の構成脂肪酸100重量%に占めるラウリン酸の割合としては20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%、より好ましくは28〜34重量%、最も好ましくは29〜32重量%を;またステアリン酸の割合としては5〜15重量%、好ましくは5〜12重量%、より好ましくは9〜11重量%、最も好ましくは9.5〜10.5重量%を挙げることができる。またオレイン酸の占める割合としては10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、より好ましくは19〜23重量%、最も好ましくは20〜23重量%を挙げることができる。その他、ミリスチン酸の占める割合としては5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%、より好ましくは9〜11重量%、最も好ましくは9.5〜10.5重量%;パルミチン酸の占める割合としては20〜40重量%、好ましくは20〜32重量%、より好ましくは24〜29重量%、最も好ましくは25〜28重量%を挙げることができる。
【0017】
また脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸の対イオンとしては、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属原子、アンモニウム基、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を有するアルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸のカチオン残基等を挙げることができる。かかる脂肪酸石鹸は、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、パーム核油などの動物または植物油脂由来の高級脂肪酸、またはこれらの脂肪酸エステル類を苛性ソーダなどによって中和することによって調製することができる。
【0018】
本発明の透明固形石鹸に配合する当該(A)脂肪酸石鹸の割合としては、使用する脂肪酸石鹸の種類や、所望の石鹸硬度などに応じて適宜設定することができる。仕込量として通常20〜55重量%、好ましくは28〜51重量%、より好ましくは32〜40重量%を挙げることができる。後述するように、製造過程における乾燥工程で水性溶媒が蒸散することで、最終製品(透明固形石鹸)の重量は仕込総重量(100重量%)の66〜88重量%程度になることを鑑みれば、上記仕込量の1.13〜1.6倍(重量比)が、透明固形石鹸中に含まれる(A)脂肪酸石鹸の割合になると考えられる(通常22.6〜88重量%、好ましくは31.6〜81.6重量%、より好ましくは36.1〜64重量%)。
【0019】
(B)多価アルコール
本発明の透明固形石鹸において、(B)多価アルコールは透明化剤として機能するものであり、従来の透明石鹸で透明化剤として使用されている多価アルコールが、本発明でも同様に使用される。
【0020】
具体的には、ここで多価アルコールとは、一分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する、常温で液表の化合物であり、例えば2価のアルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどを挙げることができる。また3価のアルコールとしては、グリセリンなどを挙げることができる。さらに4価以上のアルコールとしては、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、トレハロース、マルトース、プルラン、ペクチン、乳糖、キシリット、カラギーナン、アルギン酸等を挙げることができる。好ましくは4〜6炭糖の単糖または二糖の糖アルコールである。
【0021】
これらの多価アルコールは、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。好ましくはグリセリン、ソルビトール、ショ糖を挙げることができる。
【0022】
本発明の透明固形石鹸に配合する当該(B)多価アルコールの割合としては、使用する多価アルコールの種類によっても異なり、これらに応じて適宜設定することができる。仕込量として通常5〜30重量%、好ましくは8〜20重量%、より好ましくは9〜13重量%を挙げることができる。(A)脂肪酸石鹸と同様に、製造過程における乾燥工程で水性溶媒が蒸散することで、最終製品(透明固形石鹸)の重量は仕込総重量(100重量%)の66〜88重量%程度になることを鑑みれば、上記仕込量の1.13〜1.6倍(重量比)が、透明固形石鹸中に含まれる(B)多価アルコールの割合になると考えられる(通常5.6〜48重量%、好ましくは9.0〜32重量%、より好ましくは10.1〜20.8重量%)。
【0023】
(C)ハチミツ
本発明の透明固形石鹸において、(C)ハチミツは、保湿作用および美肌効果を発揮する有効成分であるとともに、15〜25重量%(仕込量)、より好ましくは15〜20重量%(仕込量)の割合で配合されることで起泡剤としても機能するものである。
【0024】
ハチミツは、蜜蜂が、花から集めた蜜を主原料として作りだし巣の中に貯蔵している天然の甘味物である。花の種類によってハチミツも、レンゲハチミツ、クローバーハチミツ、およびアカシアハチミツなどに分類されるが、本発明においてはその種類を特に制限されることなく、いずれのハチミツをも使用することができる。また2種以上のハチミツを混合して用いることもできる。
【0025】
また本発明が対象とするハチミツには、第十五改訂日本薬局方で規定される「ハチミツ」が含まれる。第十五改訂日本薬局方解説書((株)廣川書店発行、編者:日本薬局方解説書編集委員会)の「ハチミツ」の欄には下記のように記載されている。
【0026】
「本品はヨーロッパミツバチApis mellifera Linne又はトウヨウミツバチApis indica Radoszkowski (Apidae)がその巣に集めた甘味物を最終したものである。
生薬の性状:本品は淡黄色〜淡黄褐色のシロップように液で、通例、透明であるが、しばしば結晶を生じて不透明となる。本品は特異なにおいがあり、味は甘い。
比重:本品50.0gを水100mLに混和した液は比重d2020:1.111以上を示す。
【0027】
純度試験
(1)酸:本品10gを水50mLに混和し、1mol/L水酸化カリウム液で滴定するとき、その消費量は0.5mL以下である(指示薬:フェノールフタレイン試液2滴)
(2)硫酸塩:本品1.0gを水2.0mLに混和し、ろ過し、ろ液に塩化バリウム試液2滴を加えるとき、液は直ちに変化しない。
(3)アンモニア呈色物:本品1.0gを水2.0mLに混和し、ろ過し、ろ液にアンモニア試液2mLを加えるとき、液は直ちに変化しない。
(4)レソルシノール呈色物:本品5gをジエチルエーテル15mLを加えてよく混和し、ろ過して得たジエチルエーテル液を常温で蒸発し、残留物にレソルシノール試液1〜2滴を加えるとき、残留物及び液は黄赤色を呈することがあっても1時間以上持続する赤色〜赤紫色を呈しない。
(5)でんぷん及びデキストリン:
(i)本品7.5gに水15mLを加えて振り混ぜ、水浴上で加温し、これにタンニン酸試液0.5mLを加え、冷後、ろ過した液1.0mLに塩酸2滴を含むエタノール(99.5)1.0mLを加えるとき、液は混濁しない。
(ii)本品2.0gに水10mLを加え、水浴上で加温して混和し、冷後、この液1.0mLにヨウ素試液1滴を加えて振り混ぜるとき、液は青色、緑色又は赤褐色を呈しない。
(6)異物:本品1.0gを水2.0mLに混和した後、遠心分離し、得られる沈殿を鏡検すると、花粉以外の異物を認めない。
灰分:0.4%以下」。
【0028】
また、本発明が対象とするハチミツには、ハチミツの国際規格である「ハチミツCodex規格」で定められているハチミツの定義「植物の花蜜、植物の生組織上からの分泌物、または植物の生即死記上で植物の汁液を吸う昆虫が排出する物質からApis mellifera種(セイヨウミツバチ)がつくりだす天然の甘味物質であって、ミツバチが集め、ミツバチが持つ特殊な物質による化合で変化させ、貯蔵し、脱水し、巣の中で熟成のためにおいておかれたもの」に該当するものも含まれる。なお、「ハチミツCodex規格」で定める品質規格値は下記のように定められている。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明の透明固形石鹸に配合する当該(C)ハチミツの割合としては、仕込量で通常15〜25重量%、好ましくは15〜20重量%を挙げることができる。(A)脂肪酸石鹸や(B)多価アルコールと同様に、製造過程における乾燥工程で水性溶媒が蒸散することで、最終製品(透明固形石鹸)の重量は仕込総重量(100重量%)の66〜88重量%程度になることを鑑みれば、上記仕込量の1.13〜1.6倍(重量比)が、透明固形石鹸中に含まれる(C)ハチミツの割合になると考えられる(通常16.9〜40重量%、好ましくは16.9〜32重量%)。
【0031】
(D)水性溶媒
本発明の透明固形石鹸において、(D)水性溶媒は、脂肪酸石鹸の溶解剤および/または溶解促進剤として機能するものである。溶解剤または溶解促進剤としては従来の透明石鹸で溶解剤または溶解促進剤として使用されている水または水溶解性の低級アルコールの1種または2種以上が、本発明でも同様に使用される。
【0032】
ここで低級アルコールとは、炭素数が1〜6の直鎖状または分枝状のアルコールを挙げることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール及びtert−ブタノール等を挙げることができる。好ましくはエタノールである。
【0033】
これらの水性溶媒は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。好ましくは水とエタノールとの組み合わせ、水とプロパノールとの組み合わせを挙げることができる。このように水と低級アルコールを組み合わせて使用する場合、水100重量部に対する低級アルコールの割合として、通常74〜90重量部、好ましくは78〜86重量部、より好ましくは80〜85重量部を挙げることができる。
【0034】
本発明の透明固形石鹸に配合する当該(D)水性溶媒の割合としては、仕込量で通常15〜65重量%、好ましくは25〜50重量%、より好ましくは32〜40重量%を挙げることができる。なお、(D)水性溶媒として水と低級アルコールとを組み合わせて使用する場合、水は透明固形石鹸中に仕込量で通常5〜35重量%、好ましくは10〜25重量%、より好ましくは13〜20重量%の割合で、低級アルコールは透明固形石鹸中に仕込量で通常10〜30重量%、好ましくは115〜25重量%、より好ましくは18〜20重量%の割合で配合することが好ましい。
【0035】
前述するように、当該水性溶媒(水+低級アルコール)は、製造過程における乾燥工程で蒸散し、最終製品(透明固形石鹸)中の水性溶媒の含量は、9〜28重量%程度になる。詳細には、最終製品(透明固形石鹸)中の水含量は、9〜28重量%程度、好ましくは13〜25重量%、より好ましくは18〜21重量%;また、低級アルコール含有量は、0.1〜8重量%程度、好ましくは2〜5重量%、より好ましくは3〜4重量%程度を挙げることができる。
【0036】
なお、最終製品(透明固形石鹸(試料))中に含まれる水含量(重量%)は、下記に説明する「揮発分測定法」(JIS K 3304に準拠)により測定し、得られた揮発分(揮発した水含量)から、算出することができる。
【0037】
<揮発分測定法>
(1)試験対象である透明固形石鹸をJIS K 3304:1997「試料の調整」の四分割法で切断した透明固形石鹸(試料)をなるべく細かく切り、試料皿に5g載せ、試料をまんべんなく広げる。
(2)赤外線水分計のランプを8.0cmの高さに合わせ、30分加熱する。
(3)加熱後、赤外線水分計で乾燥により生じた減量を量り、これを揮発分とする。
【0038】
また、透明固形石鹸(試料)中に含まれる低級アルコール含量(重量%)は、下記に説明する「ガスクロマトグラフ FID法」により測定し、得られた揮発分(揮発した水分含量)から、算出することができる。
【0039】
<ガスクロマトグラフ FID法>
(1)100mL容量のメスフラスコに半分程度水を入れる。アセトン0.2g、測定対象とする低級アルコール0.2gを精秤してメスアップし、これを「標準溶液」とする。
(2)上記で調製した「標準溶液」をガスクロマトグラフィーに0.5μL注入する。3回測定して補正係数を算出する。
【0040】
【数1】

【0041】
(3)100mL容量のメスフラスコに半分程度水を入れる、アセトン4gを精秤してメスアップする(内部標準溶液)
(4)100mL容量のメスフラスコに半分程度水を入れる。透明固形石鹸(試料)1gを精秤する。これを密栓して、ゆるやかに加熱溶解する。溶解後、常温まで冷却する。
(5)ここに、(3)で調製した「内部標準溶液」5mLをホールピペットで加え、メスアップする(試料溶液)。
(6)上記で調製した「試料溶液」をガスクロマトグラフィーに0.5μL注入して、エタノール分を算出する。
【0042】
【数2】

【0043】
(E)その他の成分
本発明の透明固形石鹸には、上記する作用を損なわない範囲で、次の成分を配合することもできる。この任意成分としては、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤;マルチトール、ソルビトール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等の保湿剤;エチレンジアミン4酢酸、エデト酸3ナトリウム2水和物、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸塩(エチドロン酸の塩)等のキレート剤;グリチルリチン酸ジカリウム、オオバコエキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、チャ、カミツレ、胎盤抽出エキス等の天然抽出物;非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の界面活性剤、好ましくはラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウムまたはN−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン等のN−アシルアミノ酸塩;乳酸エステルなどの使用性向上剤;アルキルエーテルカルボン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ジナトリウム、アルキルイセチオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルコシン酸ナトリウム等の起泡性向上剤;ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤;アラントインやグリチルリチン酸塩等の抗炎症剤(消炎剤);養蜂産品(例えばローヤルゼリー、プロポリス、ミツロウ、蜂パン、花粉荷またはハチノコ等の加工品(例えば抽出エキス等))など;紫外線吸収剤;油分;香料;色素等を挙げることができる。
【0044】
(2)枠練り透明固形石鹸の製造方法
前述する本発明の透明固形石鹸は、固形石鹸の製造法のうち、通常透明石鹸の製造に使用される枠練り法によって製造される。その製造工程の概略を図1に示す。
【0045】
図1に示すように、まず第1工程である「加熱・溶解工程」において、前述する(A)脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸に(D)水性溶媒を加え、加熱溶解する。ここで温度条件は、(D)水性溶剤に脂肪酸が溶解する温度であればよく、特に制限されないが、50〜55℃程度、好ましくは50〜53℃程度が用いられる。ここで脂肪酸の仕込量としては、(1)で記載するように、使用する脂肪酸の種類等に応じて適宜設定することができるものの、第2工程「中和工程」で生成する(A)脂肪酸石鹸の量に換算して、通常20〜50重量%、好ましくは24〜44重量%、より好ましくは27〜35重量%を挙げることができる。また、この際、脂肪酸に対して配合する(D)水性溶媒の割合としては、脂肪酸の総量100重量部に対して40〜66重量部、好ましくは43〜63重量部を挙げることができる。なお、ここで(D)水性溶媒としては、低級アルコールを使用することが好ましい。より好ましくはエタノールである。
【0046】
次いで、第2工程である「中和工程」において、上記脂肪酸の加熱溶解物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアルカノールアミン等のアルカリ剤を水に溶解した水溶液を加えて、脂肪酸を中和する。この際使用するアルカリ剤の割合としては、脂肪酸を中和し、本発明で使用する(A)脂肪酸石鹸を生成する量であればよく、脂肪酸のケン化価に応じて適宜設定することができる。なお、脂肪酸の中和の程度は90%以上であればよく、透明化を良くするためアルカリ過剰な条件で中和を行っても良い。当該脂肪酸の中和には、通常70〜75℃程度の温度条件、好ましくは70〜73℃程度の温度条件が用いられる。
【0047】
中和反応終了後、若干冷却させた後(70℃以下、63〜67℃程度)、透明化剤として(B)多価アルコールを配合し、混合溶解して、透明石鹸膠を作り、これに(C)ハチミツ、および必要に応じて(E)その他の成分を配合し混合溶解する(第3工程)。
【0048】
斯くして調製した透明石鹸膠を所定の型枠に流し込み、8〜15℃程度、好ましくは8〜13℃程度の冷却水を用いて冷却しながら、3時間以上放置することで冷却固化する(第4工程)。
【0049】
ここで冷却時間は、3時間以上であればよく、その限りにおいて特に制限されないが、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上、特に好ましくは18時間以上である。冷却時間は長ければ長いほど、出来上がった石鹸の硬度が高くなり脆弱性が改善されるため好ましいが、製造効率を考慮すると、好ましくは18〜40時間程度、より好ましくは18〜30時間程度である。
【0050】
次いで固化した透明石鹸膠を切断して(第5工程)、乾燥工程に供する(第6工程)。
【0051】
当該乾燥は、切断した透明石鹸膠を温度20〜30℃程度、相対湿度50〜70%程度で30〜50日程度、その後、温度15〜30℃程度、相対湿度30〜80%程度の条件下に、通常10〜20日間程度配置することで実施され、斯くして中に含まれる水分および低級アルコールが徐々に揮発し、より強固な透明固形石鹸が形成される。
【0052】
こうして乾燥して調製された透明固形石鹸は、荒拭きして所望の形状に型打ちされ(第7工程)、次いで、再度温度15〜30℃程度、相対湿度30〜80%程度の条件下で通常10〜20日間程度の乾燥に供される(第8工程)。
【0053】
斯くして調製される本発明の透明固形石鹸は、乾燥工程により、水性溶媒の含量が9〜28重量%程度、詳細には水分含量が9〜28重量%程度、低級アルコール含量が0.1〜8重量%程度まで低減されて強固に固化してなるものであり、次いで包装されて、商品として提供される。
【実施例】
【0054】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、これによって限定されるものではない。
【0055】
実施例1〜4
表1に記載する処方(仕込量)に従って透明固形石鹸を調製した。また脂肪酸はその組成、すなわち脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸の組成が、表2に示す範囲内になるように設定した。
【0056】
具体的には、反応釜に溶剤としてエタノールを仕込み、これに脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸など)を添加し、53℃で加熱混合して溶解させた。これに別途水酸化ナトリウムを水に溶解した水溶液を、少しづつ13分間かけて注入し、73℃に保ち、脂肪酸の中和反応を終了した。反応終了後、64℃に保ちながら、これにグリセリン、ソルビトール、キレート剤(エチドロン酸4ナトリウム)およびハチミツを添加溶解して、透明石鹸膠を得た。
【0057】
斯くして得られた透明石鹸膠を、1時間以内に所定の型枠に直接流し込み、これを10℃の冷却水を用いて、20時間以上かけて冷却、固化して、透明固形石鹸を得た。次いで得られた透明固形石鹸を、適当な大きさに切断し、温度25℃、相対湿度60%程度で30日間、その後、温度25℃程度、相対湿度60%程度の条件下に、15日間乾燥させた。乾燥後、荒拭きした後型打ちし、再度温度25℃、常湿(相対湿度65±15%)の条件で15日間乾燥させて、透明固形石鹸を得た(被験石鹸1〜7)。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
なお、透明固形石鹸中に含まれる脂肪酸の組成は、下記の「脂肪酸組成測定法」(日本油化学協会基準油脂分析試験法に準拠)によって測定することができる。
【0061】
<脂肪酸組成測定法>
(1)被験石鹸約500mgをエステル化用フラスコに取り、三フッ化ホウ酸−メタノール試薬7mLを加える。
(2)フラスコに還流冷却器を付けて2分間沸騰させた後、ヘキサン5mLを冷却器上部から加え、更に1分間沸騰させる。
(3)加熱を止めて、フラスコを還流冷却器から外し、ヘキサン溶液がフラスコの首に達するまで塩化ナトリウム飽和溶液を加える。
(4)約1mLのヘキサン溶液を試験管に移し、少量の硫酸ナトリウム(無水物)を加えて乾燥し、そのままガスクロマトグラフ(FIDガスクロマトグラフ法)に注入する。
(5)ガスクロマトグラフの結果から、標準検量線を用いて、脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸)の組成を算出する。
【0062】
次に、上記で調製した被験石鹸1〜7(実施例1〜4、比較例1〜2、対照例)について、起泡力試験(実験例1)、泡弾力性試験(実験例2)、泡直径計測試験(実験例3)、洗顔後の皮膚状態の測定(水分量、皮脂量)(実験例4)、使用感評価(実験例5)、並びに経時的安定性試験(実験例6)を行った。
【0063】
実験例1 起泡力試験
下記の方法に従って、被験石鹸1〜7(実施例1〜4、比較例1〜2、対照例)について試験し、起泡力(泡立ちのよさ)を評価した。
【0064】
<試験方法>
1.各被験石鹸1〜7(ハチミツ配合量(仕込量)0、10、15、18、20、25、30重量%)を蒸留水に溶解して、1重量%水溶液を調製する。
2.比色管に20g秤量し、比色管の上下を手のひらで押さえ、10回上下に振る。
3.10回振った後、比色管を比色管立てに立てて、泡の様子を振動直後の画像として撮影する。
4.据立ててから15分後および30分後の状態を撮影する。
5.振動直後、15分後および30分後の画像から、液面上の泡の高さを、画像処理ソフト(WinROOF:三谷商事株式会社製)を用いて測定する。
6.被験石鹸のうち被験石鹸1(ハチミツ配合量0%)について得られた泡高さを100%として、他の被験石鹸2〜7について得られた泡高さを相対比(%)として求めた。
【0065】
<結果>
結果を図2に示す。この結果からわかるように、ハチミツを10重量%および30重量%の割合で配合した透明固形石鹸(被験石鹸2および7:比較例1〜2)は、起泡力が対照例(被験石鹸1:ハチミツ配合量0%)よりも低下するのに対して、ハチミツを15〜25重量%、特に15〜20重量%の割合で配合した透明固形石鹸(被験石鹸3〜6:実施例1〜4)は、起泡力が顕著に増加することが判明した。
【0066】
実験例2 泡弾力性試験
下記の方法に従って、被験石鹸1〜7(実施例1〜4、比較例1〜2、対照例)を用いて作製した泡について試験し、泡の弾力性を評価した。
【0067】
<試験方法>
1.被験石鹸1〜7(ハチミツ配合量(仕込量)0、10、15、18、20、25、30重量%)を蒸留水に溶解して、10重量%水溶液を調製する。
2.これをポンプフォーム容器に充填し、5回ポンプして時計皿上に泡を吐出する。
3.時計皿上に吐出された泡を、泡作製直後の画像として撮影する。
4.上記撮影後、1円玉を泡の上に置き、15秒後および60秒後の1円玉の状態を撮影する。
【0068】
<結果>
ハチミツを含有しない透明固形石鹸(被験石鹸1:対照例)は、15秒後に既に1円玉が泡中に沈み、またハチミツを10重量%含有する透明固形石鹸(被験石鹸2:比較例1)も、60秒後には1円玉が泡中に沈んだ。これに対して、ハチミツを15〜30重量%含有する固形石鹸(被験石鹸3〜7:実施例1〜4、比較例2)は、60秒後でも1円玉が泡上に保持されており、弾力性の高い泡が形成されていることが確認された。
【0069】
実験例3 泡直径測定
下記の方法に従って、被験石鹸1〜7(実施例1〜4、比較例1〜2、対照例)を用いて作製した泡の平均直径を測定し、泡のきめ細かさを評価した。
【0070】
<試験方法>
1.被験石鹸1〜7(ハチミツ配合量(仕込量)0、10、15、18、20、25、30重量%)を蒸留水に溶解して、10重量%水溶液を調製する。
2.これをポンプフォーム容器に充填し、スライドガラスに泡を吐出する。
3.その泡の状態をマイクロスコープ(マイクロスコープVHX-900;キーエンス社製)を用い観察し、撮影する。
4.解析システムにより各被験石鹸1〜7を用いて作成した泡の直径(nm)を計測し、その平均を各被験石鹸の平均泡直径(nm)として算出する。
【0071】
<結果>
結果を図3に示す。この結果からわかるように、ハチミツを15重量%以上の割合で配合した透明固形石鹸(被験石鹸3〜7:実施例1〜4、比較例2)、特にハチミツを15〜25重量%の割合で配合した透明固形石鹸(被験石鹸3〜6:実施例1〜4)は、ハチミツを含有しないか、配合してもハチミツ配合量(仕込量)が10重量%以下である透明固形石鹸(被験石鹸1〜2:対照例、比較例1)に比して、泡の平均直径が有意に小さく、きめの細かい泡が形成されていることが確認された。
【0072】
実験例4 洗顔後の皮膚状態の測定(水分量、皮脂量)
3名のパネラー(女性)に、被験石鹸1〜3および5〜7(実施例1、3および4、比較例1〜2、対照例)を用いて洗顔してもらい、洗顔前後で皮膚の水分量と皮脂量の変化を測定し、被験石鹸を用いた洗顔による肌(しっとり感・潤い感、つっぱり感)に対する影響を評価した。
【0073】
<試験方法>
1.被験石鹸5(ハチミツ配合量(仕込量)20重量%:実施例3)を基準石鹸として用い、これを泡立てて、顔の半分を洗顔する。
2.顔の残りの半分は、被験石鹸1〜2および5〜7(ハチミツ配合量(仕込量):0、10、15、25、30重量%)を泡立てて洗顔する。
3.洗顔前と洗顔後(洗顔5分後)で、肌の水分量と皮脂量を、それぞれ皮表角層水分量測定装置(SKICON-010:アイ・ビイ・エス株式会社製)および油分計(セブメーターSM815:SK社製)を用いて、測定する。
4.基準石鹸(被験石鹸5)で洗顔した顔半分および他の被験石鹸(被験石鹸1〜3および6〜7)で洗顔した残りの顔半分について、洗顔前と洗顔後の測定値の変化率(洗顔前後での測定値の減少率)を算出する。
【0074】
<結果>
結果を図4に示す。図4は、基準石鹸(被験石鹸5:ハチミツ配合量(仕込量)20重量%)に関する洗顔前後での測定値(水分量、皮脂量)の低下率を100%とし、それに対する他の被験石鹸1〜3および6〜7(ハチミツ配合量(仕込量):0、10、15、25および30重量%)の洗顔前後での測定値の変化を上記に対する相対比(%)で示したものである(これを「肌変化率%」と称する)。
【0075】
その結果、ハチミツ含量が0重量%の被験石鹸1の、洗顔前後の水分量変化および皮脂量変化の相対比(%)(肌変化率%)は、それぞれ75%および55%であった。またハチミツ配合量(仕込量)が10重量%の被験石鹸2の、洗顔前後の水分量変化および皮脂量変化の相対比(%)(肌変化率%)は、それぞれ70%および76%であった。これは、洗顔によって水分含量および皮脂含量が低下していることを示す。一方、ハチミツ配合量(仕込量)が15重量%の被験石鹸3の、洗顔前後の水分量変化および皮脂量変化の相対比(%)(肌変化率%)はそれぞれ108%および105%、ハチミツ配合量(仕込量)が25重量%の被験石鹸6の、洗顔前後の水分量変化および皮脂量変化の相対比(%)(肌変化率%)はそれぞれ112%および110%、ハチミツ配合量(仕込量)が30重量%の被験石鹸7の、洗顔前後の水分量変化および皮脂量変化の相対比(%)(肌変化率%)はそれぞれ112%および113%であった。これは、洗顔によって水分含量および皮脂含量が上昇していることを示す。このことは、ハチミツ配合量(仕込量)が15〜30重量%の透明固形石鹸は、洗顔しても水分量保持率が高く、また皮脂分を必要以上に落とさないことを意味している。
【0076】
実験例5 使用感評価
3名のパネラー(女性)に、被験石鹸1〜3および5〜7(実施例1、3および4、比較例1〜2、対照例)を用いて、泡立てて洗顔してもらい、泡の感触(a.泡がクリーミー、b.泡が滑らか、c.泡がやわらかい、d.泡に弾力がある、e.泡持ちがいい)および洗顔後の肌の状態(f.肌がしっとりする、g.肌の潤いが持続する、h.肌がつっぱる)について、下記の5段階で評価してもらった。
【0077】
<評価基準>
1:そう思わない
2:どちらかというとそうは思わない
3:どちらでもない
4:どちらかというとそう思う
5:そう思う。
【0078】
<結果>
結果を表3に示す。結果は3名の評価の平均値を示す。
【0079】
【表3】

【0080】
この結果は、実験例1〜3で試験した泡の状態、ならびに実験例4で試験した肌状態とよく一致していた。
【0081】
これらの結果から、ハチミツを15〜25重量%の割合で配合した本発明の透明固形石鹸(被験石鹸3〜6:実施例1〜4)は起泡性(泡立ち)に優れており、これによればきめ細かなクリーミーな持続する泡が作成できることが確認できた(実験例1〜3)。一般に、泡、特にきめ細かな泡には、汚れを吸い取って包み込む働き(汚れ除去作用)があることが知られている。また、実験例5に示すように、本発明の透明固形石鹸によって形成される泡は、きめ細かなクリーミーで滑らかな泡であるため肌に優しく、このため特に洗顔に適していると判断される。
【0082】
また実験例4および実験例5の結果からわかるように、本発明の透明固形石鹸を用いると、必要以上に皮脂分をとりすぎないため、肌がつっぱることなく、逆に肌がしっとりと潤いが持続することが確認された。
【0083】
実験例6 経時的安定性試験
被験石鹸1〜7(ハチミツ配合量(仕込量):0、10、15、18、20、25、30重量%)を、室温で3ヶ月放置して、外観の変化(透明性と析出現象)を観察した。
【0084】
その結果、ハチミツ配合量が30重量%の透明固形石鹸は、糖の析出現象により、石鹸の透明度が徐々に低下し、透明性が消失する傾向が見られた。また全体に細かく白い斑点が現れた。しかし、ハチミツ配合量が0〜25重量%の透明固形石鹸は、析出もなく透明性が維持されていた。このことから、ハチミツ配合量が15〜25重量%の透明固形石鹸は、ハチミツを比較的高い割合で含有しながらも、経時的に析出することなく、透明性が安定に維持されていることが確認された。
【0085】
実験例7 硬度試験
被験石鹸1〜7(ハチミツ配合量(仕込量):0、10、15、18、20、25、30重量%)を、室温で3ヶ月放置した後、下記の方法に従って硬度を測定した。
【0086】
<硬度の測定>
(1)被験石鹸を20℃、相対湿度60%に調節した恒温恒湿器内に入れて1時間放置する。
(2)測定台に被験石鹸を乗せて、JIS K 6301-1975スプリング式硬さ試験A形に準じた性能を有する硬度計(島津ゴム硬度計200型:島津製作所製)の昇降軸ツマミを用いて硬度計を静かに降ろす。(3)3秒放置した後、硬度を記録する。
【0087】
上記方法に従って硬度を測定した値を下記の基準に基づいて評価した結果を表4に示す。
【0088】
<評価基準>
++:硬度50以上
+ :硬度30〜50未満
− :硬度30未満。
【0089】
【表4】

【0090】
上記結果からわかるように、ハチミツの配合量(仕込量)が15〜25重量%である本発明の透明固形石鹸は、硬度が30〜50未満と、実用上問題のない硬さを備えていることが確認された。
【0091】
実施例5
下記組成からなる透明固形石鹸を実験例1に記載する方法に従って調製した。当該透明固形石鹸中に含まれる脂肪酸石鹸の脂肪酸の構成は、脂肪酸総量を100重量%とすると、ラウリン酸30.9重量%、ミリスチン酸10.65重量%、パルミチン酸26.9重量%、ステアリン酸10.65重量%、オレイン酸20.9重量%である。
【0092】
<透明固形石鹸の組成>
パーム核脂肪酸 15.8(重量%)
パーム脂肪酸 5.3
ヤシ脂肪酸 6.0
ステアリン酸 1.5
オレイン酸 1.5
28%水酸化ナトリウム 17.7
エタノール 18.0
グリセリン 7.1
ソルビトール 1.0
ココイルグルタミン酸ナトリウム 3.0
エチドロン酸4Na 0.1
ハチミツ 20.0
水 適 量
合 計 100.0重量%。
【0093】
実施例6
下記組成からなる透明固形石鹸を実験例1に記載する方法に従って調製した。当該透明固形石鹸中に含まれる脂肪酸石鹸の脂肪酸の構成は、脂肪酸総量を100重量%とすると、ラウリン酸29.2重量%、ミリスチン酸10.65重量%、パルミチン酸26.9重量%、ステアリン酸10.65重量%、オレイン酸22.6重量%である。
【0094】
<透明固形石鹸の組成>
ラウリン酸 C12 8.8(重量%)
ミリスチン酸 C14 3.2
パルミチン酸 C16 8.1
ステアリン酸 C18 3.2
オレイン酸 C18F1 6.8
28%水酸化ナトリウム 17.7
エタノール 18.0
グリセリン 7.0
ソルビトール 1.0
ココイルグルタミン酸ナトリウム 3.0
エチドロン酸4Na 0.2
ハチミツ 15.0
水 適 量
合 計 100.0重量%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸石鹸、(B)多価アルコール、(C)ハチミツ、及び(D)水性溶媒を必須成分として含有する枠練り透明固形石鹸であって、ハチミツの配合量が、仕込量で15〜25重量%であることを特徴とする枠練り透明固形石鹸。
【請求項2】
(A)脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸が、少なくともラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸であり、当該脂肪酸全量(100重量%)に占めるラウリン酸及びステアリン酸の配合割合がそれぞれ20〜40重量%及び5〜15重量%であることを特徴とする、請求項1に記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項3】
ラウリン酸及びステアリン酸の配合割合がそれぞれ25〜35重量%及び5〜12重量%であることを特徴とする、請求項2に記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項4】
ラウリン酸及びステアリン酸の配合割合がそれぞれ28〜34重量%及び9〜11重量%であることを特徴とする、請求項2に記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項5】
オレイン酸の配合割合が10〜30重量%であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項6】
オレイン酸の配合割合が15〜25重量%であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項7】
オレイン酸の配合割合が19〜23重量%であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項8】
ミリスチン酸及びパルミチン酸の配合割合がそれぞれ5〜15重量%及び20〜40重量%であることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項9】
ミリスチン酸及びパルミチン酸の配合割合がそれぞれ8〜12重量%及び20〜32重量%であることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項10】
ミリスチン酸及びパルミチン酸の配合割合がそれぞれ9〜11重量%及び24〜29重量%であることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項11】
ハチミツの配合量が、仕込量で15〜20重量%であるであることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載する枠練り透明固形石鹸の製造方法であって、(A)〜(D)の全成分を混合して調製する透明鹸化膠を流し込んだ型枠内での冷却を、8〜13℃で3時間以上行い、透明鹸化膠を固化することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−57765(P2011−57765A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206394(P2009−206394)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(598162665)株式会社山田養蜂場本社 (32)
【Fターム(参考)】