架橋した高分子量重合体状材料の固体状態変形加工
架橋した高分子量重合体、例えばUHMWPE、を、例えば溶融転移未満で押し出すことにより、高引張強度および高酸化安定性を組み合わせた材料が製造される。これらの材料は、人工股関節および他の移植物における支持部品として使用するのに特に好適である。処理されたバルク材料は、異方性であり、軸方向に沿って高い強度を有する。この材料は、5気圧酸素を含む加圧容器中における4週間の促進エージング(ASTMF2003)後でも酸化に対して安定性である。その酸化安定性のために、この変形処理した材料は、再融解された、架橋したUHMWPEに以前から使用されている空気透過性包装およびガス滅菌に好適な候補である。
【発明の詳細な説明】
【序論】
【0001】
本発明は、架橋した高分子量重合体状材料および該材料を処理し、その特性を強化する方法に関する。特に、本発明は、高度の摩耗および酸化耐性を有する重合体状移植物の製造に使用する方法および材料を提供する。
【0002】
架橋した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、現在、医療用移植物、例えば人工股関節用の寛骨臼部品、に広く使用されている。整形外科学界では、放射線架橋したUHMWPEを処理し、その材料の耐摩耗性および酸化安定性を維持しながら、機械的特性を改良するための別の方法を見出すことが求められている。
【0003】
米国特許第6,168,626号、Hyon et al.は、圧縮変形可能な温度における変形加工により、架橋したUHMWPEの機械的特性を強化する方法を報告している。変形加工の後、変形状態を維持しながら、材料を冷却する。圧縮平面に対して平行な方向で結晶平面が配向している、配向したUHMWPE成形製品が得られる。圧縮は、好適なダイを使用して行うか、またはホットプレス機械を使用して行うことができる。
【0004】
重合体状材料、例えばUHMWPE、を架橋し、例えば摩耗特性が優れた材料を与えることができる。重合体状材料は、化学的に架橋させるか、または好ましくは照射、例えばγ線照射、により架橋させることができる。重合体に対するγ線照射の作用により、バルク材料中にフリーラジカルが形成される。フリーラジカルは、バルク材料の分子鎖を架橋させる反応箇所を与える。それに続く熱処理の後に生き残るすべてのフリーラジカルを含めて、フリーラジカルの存在は、酸化生成物を形成する酸素による攻撃に対しても敏感であることが認められている。そのような酸化生成物の形成により、一般的に機械的特性が低下する。
【0005】
フリーラジカルを完全に除去し、酸化安定性の高い重合体状材料を得るには、架橋した材料を重合体の結晶融点より上で熱処理するのが一般的である。これには、バルク材料中にあるすべてのフリーラジカルを破壊し、再結合する傾向がある。その結果、架橋した材料は、酸化による劣化に対する耐性が高くなる。しかし、この融解工程の際に、望ましい機械的特性の一部が失われる。
【0006】
高レベルの機械的特性と酸化による劣化に対する高い耐性を組み合わせた、架橋したUHMWPEのような材料を提供することが望ましい。
【概要】
【0007】
架橋した重合体の固体状態変形加工方法は、重合体バルク材料を、該バルク材料の主軸に対して直角方向で圧縮し、所望により該変形力を維持しながら該バルク材料を冷却することにより変形させることを包含する。重合体状材料がUHMWPEから製造され、架橋を照射、例えばγ線照射により行う場合、本方法の生成物は、人工股関節、等に使用する支持部品(bearing components) および移植物に使用するのに特に好適である。
【0008】
一態様で、本発明は、細長いバルク材料を、該材料が圧縮変形可能な温度にあり、好ましくは融点未満にある間に、絞りダイ(reducing die)を通して固体状態押出することを包含する。次いで、押し出されたバルク材料を、好ましくは変形状態に保持しながら、冷却する。冷却後、融点未満のアニーリング温度に、今回は圧力をかけずに、再加熱することにより、バルク材料をストレス除去する。
【0009】
配向したUHMWPE成形製品は、本発明の方法により、UHMWPE原料製品を高エネルギー線、例えばガンマ線照射、により架橋させ、該架橋したUHMWPEを圧縮変形可能な温度に加熱し、該UHMWPEを圧縮変形させ、続いて冷却および固化させることにより、得ることができる。この材料は、検出可能なレベルのフリーラジカルを有するが、促進エージング中のカルボニル基形成に対応する、UHMWPE材料の非常に低い、好ましくは検出不可能な、赤外線吸収帯域増加により確認される、酸化による劣化に対する耐性がある。
【0010】
バルク材料の主軸に対して直角方向で圧縮変形することにより、主軸方向における機械的特性が直角または横方向における機械的特性と異なった、異方性材料が形成される。応力除去の後、機械的特性は、直角方向に対して軸方向で20%以上異なることがある。
【0011】
本方法により処理した重合体は、高引張強度と酸化による劣化に対する耐性の望ましい組合せを示す。例えば、UHMWPEの横方向変形により、変形に対して直角の軸で測定して、破断点引張強度が50Mpaを超える、好ましくは60Mpaを超える材料が得られる。同時に、この材料は、酸化による劣化に対する耐性を有し、好ましい実施態様では、促進エージングにより、酸化指数に実質的に変化を示さない。
【0012】
本発明は、詳細な説明および添付の図面から、より深く理解される。
【詳細な説明】
【0013】
本明細書で使用する表題(例えば「序論」および「概要」)は、本発明の開示における主題を一般的に系統立てることだけを意図しており、本発明の開示またはいずれかの態様を制限するものではない。特に、「序論」に開示する主題は、本発明の範囲における技術の態様を包含し、先行技術を列挙するものではない。「概要」に開示する主題は、本発明の全範囲またはそのいずれかの実施態様を完全に説明または開示するものではない。同様に、説明における小表題は、読者の便宜上記載するのであり、その主題に関する情報が、その表題だけに記載されていることを表すものではない。
【0014】
説明および具体的な例は、本発明の実施態様を示すが、例示することだけが目的であり、本発明の範囲を制限するものではない。その上、記載する特徴を有する複数の実施態様を列挙しても、他の特徴を有する他の実施態様、または記載する特徴の異なった組合せを取り入れた他の実施態様を排除するものではない。具体的な例は、本発明の組成物および方法をどのように製造、使用および実行するかを例示するだけであり、他に指示がない限り、本発明の特定実施態様が製造または試験された、またはされなかったかを代表するものではない。
【0015】
本明細書で使用する用語「好ましい」および「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の有益性をもたらす本発明の実施態様を指す。しかし、ある種の、または他の状況下では、他の実施態様が好ましい場合もある。さらに、一つ以上の好ましい実施態様を列挙しても、他の実施態様が有用ではないことを意味するものではなく、他の実施態様を本発明の範囲から排除するものではない。
【0016】
本明細書で使用する用語「包含する」およびその変形は、非制限的であり、あるリストに品目を列挙しても、本発明の材料、組成物、装置および方法に有用である場合もある他の類似の品目を排除するものではない。
【0017】
一実施態様では、本発明は、架橋した重合体を圧縮変形可能な温度に加熱すること、該加熱された重合体に力を加えて変形させること、および該重合体を、該重合体を変形した状態に維持しながら、固化温度に冷却することを含んでなる、重合体状バルク材料を処理する方法を提供する。架橋した重合体は、軸方向により特徴付けられるバルク形態にあり、加熱された重合体に、軸方向に対して直角方向に力を加えて変形させる。他の望ましい物理的特性の中で、上記の方法により処理された重合体状バルク材料は、とりわけバルク材料の軸方向で高い強度を示す。バルク材料がUHMWPEである場合、この方法は、UHMWPEから製造された支持部品を含む医療用移植物を製造するのに特に好適である。
【0018】
別の実施態様では、本発明は、医療用移植物に使用するのに好適な材料を製造するための、架橋したUHMWPEを処理する方法を提供する。この方法では、γ線照射により架橋されているUHMWPEを約80℃より高く、その融点より低い温度に加熱する。該UHMWPEは、軸方向、該軸方向に対して直角の横方向、および本来の寸法により特徴付けられるバルク材料の形態にある。次いでこのバルク材料に横方向で圧縮力を作用させ、その方向でバルク材料の寸法を縮小させる。次いで、このバルクUHMWPEを固化温度に冷却する。一実施態様では、バルク材料がその本来の寸法に戻るのを阻止するのに十分な力を冷却の際に作用させる。様々な実施態様で、圧縮力は、絞りダイを通して、例えば円形ダイを通して、1を超える直径方向圧縮または絞り比でバルク材料を押し出しているラムにより作用させる。
【0019】
様々な実施態様で、加熱された、架橋したバルク材料を、バルク材料を横方向で本来の半径方向寸法より小さな寸法に保持するのに十分なサイズおよび形状を有するチャンバー中に押し出すことにより、冷却されつつあるUHMWPEに対して圧縮力を維持する。
【0020】
特別な実施態様では、医療用移植物に使用するのに好適な、UHMWPEから製造されたプリフォームの製造方法を提供する。この方法は、γ線照射により架橋した、結晶融点および直径d1により特徴付けられるUHMWPEロッドを圧縮変形可能な温度に加熱することを含んでなる。その後、架橋したUHMWPEに圧縮力を作用させ、直径を、d1より小さなd2に減少させる。直径が縮小したUHMWPEロッドを、所望により、圧縮力を維持しながら固化温度に冷却し、直径を、d1より小さなd3の値に維持する。その後の工程で、冷却したロッドを、そのロッドがd3より大きな直径d4に膨脹する温度に加熱することにより、応力除去する。様々な実施態様で、本方法では、絞りダイを通してロッドを冷却チャンバー中に押し出し、直径をd1からd2に減少させる。圧縮変形可能な温度は、好ましくは、融点未満で、融点−50℃の温度を超える。好ましい実施態様では、圧縮変形可能な温度は、約100℃〜約135℃である。好ましくは、UHMWPEロッドは、γ線照射により、0.1〜10Mradの線量で架橋されている。上記の方法により処理したUHMWPEから医療用移植物用の支持部品を製造する方法、ならびに上記の方法により製造されたプリフォームから機械加工されたUHMWPEを含んでなる移植物も提供する。
【0021】
一態様で、本発明は、軸方向により特徴付けられる細長い材料、例えばシリンダー、の形態にあるγ線架橋したUHMWPEを提供する。軸方向または縦方向における引張強度は、50Mpaを超え、好ましくは、60Mpaを超える。好ましい実施態様では、支持部品は、そのようなγ線架橋したUHMWPEから機械加工または形成されたUHMWPEを含んでなる。医療用移植物は、この支持部品を含む。
【0022】
別の態様で、本発明は、検出可能な濃度レベルのフリーラジカルを有するが、標準的な試験により測定して、酸化に対して安定しているγ線架橋したUHMWPEを提供する。例えば、非限定的な例で、UHMWPE中のフリーラジカル濃度は、約0.06x1015スピン/gを超え、約3x1015スピン/g未満である。好ましくは、フリーラジカル濃度は、1.5x1015スピン/g以下である。好ましい実施態様では、70℃で4週間、5気圧の酸素に露出する間、カルボニルIR吸収帯域の検出可能な増加はない。架橋したUHMWPEは、直径約2〜4インチ、好ましくは約3インチの円筒形ロッドの形態で製造するのが有利である。支持部品は、この架橋したUHMWPEから部品を機械加工することにより形成し、この支持部品を含む医療用移植物を提供する。
【0023】
別の態様では、異方性の架橋したUHMWPEを、軸方向および軸方向に対して直角の横方向により特徴付けられるバルク材料の形態で提供する。様々な実施態様で、異方性は、軸方向における引張強度が半径方向における引張強度より20%以上大きく、少なくとも50Mpa、好ましくは少なくとも60Mpaの値を達成することを特徴とする。
【0024】
別の態様で、γ線照射した、架橋したUHMWPEを固体状態変形加工する方法は、UHMWPEを、その溶融転移または結晶融点未満の温度で変形させることを含んでなる。それに続く工程で、押し出されたUHMWPEを、その固化温度で、所望により押し出されたロッドを変形した状態に維持しながら、冷却する。
【0025】
別の実施態様では、破断点引張強度が50Mpaを超える、圧縮変形した、架橋したUHMWPEが、本方法によりUHMWPEを加工して得られる。好ましい実施態様では、この材料は、検出可能なフリーラジカル濃度が0.06x1015スピン/gを超えているにも関わらず、70℃で4日間、5気圧の酸素に露出した後の酸化指数0.5未満により特徴付けられる、酸化による劣化に対する耐性も有する。
【0026】
別の態様で、本発明は、UHMWPEから製造された支持部品を含む医療用移植物の製造方法を提供する。この方法は、バルク材料の形態にあるUHMWPEを放射線架橋させる工程、該架橋したUHMWPEを、80℃を超え、その融点未満の温度に予備加熱する工程、次いで、該予備加熱されたUHMWPEを、1を超える直径方向圧縮比に固体状態押出する工程、該押し出されたUHMWPEを、直径方向の圧縮を維持しながら、30℃未満の固化温度に冷却する工程、該冷却したUHMWPEを融点未満の温度で、該ロッドが、アニーリングに応答して直径増加するのに十分な時間、アニーリングする工程、および該アニーリングされたUHMWPEから該支持部品を機械加工する工程を包含する。該UHMWPEは、所望により、支持部品を機械加工した後、滅菌する。滅菌は、非照射手段、例えばエチレンオキシドのようなガスに露出、により行う。
【0027】
様々な実施態様で、移植物を、本明細書に記載する構造を有し、本明細書に記載する方法により製造された、予備形成された重合体状組成物を使用して製造する。移植物の非限定的な例としては、股関節、膝関節、踝関節、肘関節、肩関節、脊柱、側頭下顎骨関節、および指関節がある。例えば、股関節では、予備形成された重合体状組成物を使用して寛骨臼カップ、またはカップの挿入物またはライナーを製造する。膝関節では、該組成物を使用して頸骨高平部(plateau)、膝蓋骨ボタン、および砲耳(trunnion)または関節の設計に応じて他の支持部品を製造する。踝関節では、該組成物を使用してタラー(talar)表面および他の支持部品を製造する。肘関節では、該組成物を使用してradio-numeralまたはulho-humeral関節および他の支持部品を製造する。型関節では、該組成物を使用してglenero-humeral関節および他の支持部品を製造する。脊柱では、該組成物から、椎間板置換骨およびfacet関節置換骨を製造することができる。
【0028】
様々な実施態様で、重合体状組成物から支持部品を、公知の方法、例えば機械加工、により製造し、従来の手段により移植物中に取り入れる。
【0029】
重合体
移植物に好ましい重合体としては、耐摩耗性があり、耐薬品性があり、酸化に対する耐性があり、生理学的構造と相容性がある材料が挙げられる。様々な実施態様で、重合体はポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ナイロンまたはポリアミド、ポリカーボネート、およびポリ炭化水素、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、である。高分子量および超高分子量重合体が、様々な実施態様で好ましい。非限定的な例としては、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、および超高分子量ポリプロピレンがある。様々な実施態様で、重合体は、約400,000〜約10,000,000の分子量範囲にある。
【0030】
UHMWPEは、摩擦係数が低く、耐摩耗性が高く、体の組織との相容性があるので、関節置換骨として使用される。UHMWPEは、圧縮成形またはラム押出された棒原料またはブロックとして市販されている。市販されている例としては、Hoechstから市販のGURシリーズがある。上記の好ましい範囲内の分子量を有する、数多くの等級が市販されている。
【0031】
架橋
本発明の様々実施態様で、架橋した重合体状バルク材料は、一連の加熱、変形、冷却、および機械加工工程により、さらに加工される。重合体状バルク材料は、様々な化学的および放射線方法により架橋させることができる。
【0032】
様々な実施態様で、化学的架橋は、重合体状材料を架橋性薬品と組み合わせ、混合物を、架橋を起こすのに十分な温度にさらすことにより、達成される。様々な実施態様で、化学的架橋は、架橋性薬品を含む重合体状材料を成形することにより、達成される。成形温度は、重合体が成形される温度である。様々な実施態様で、成形温度は重合体の融解温度以上である。
【0033】
架橋性薬品が成形温度で長い半減期を有する場合、架橋性薬品はゆっくり分解し、生じたフリーラジカルが重合体中に拡散し、成形温度で均質な架橋網目を形成することができる。従って、成形温度も、重合体を流動させ、架橋性薬品を分布または拡散させ、生じたフリーラジカルが均質な網目を形成するのに十分に高いことが好ましい。UHMWPEには、好ましい成形温度は約130℃〜220℃で、成形時間は約1〜3時間である。非限定的な実施態様では、成形温度および時間はそれぞれ170℃および2時間である。
【0034】
架橋性薬品は、成形温度で分解し、重合体と反応して架橋した網目を形成する、反応性の高い中間体、例えばフリーラジカル、を形成するすべての化学物質でよい。フリーラジカルを発生する化学物質の例としては、過酸化物、過エステル、アゾ化合物、ジスルフィド、ジメタクリレート、テトラゼン、およびジビニルベンゼンがある。アゾ化合物の例は、アゾビス−イソブチロニトリル、およびジメチルアゾジ−イソブチレートである。過エステルの例は、t−ブチルペルアセテートおよびt−ブチルペルベンゾエートである。
【0035】
好ましくは、重合体は、有機過酸化物で処理することにより、架橋させる。好適な過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(Lupersol 130、Atochem Inc.、フィラデルフィア、PA)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、t−ブチルα−クミルペルオキシド、ジ−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−第3級ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブタン、および2,2−ジ−(t−アミルペルオキシ)プロパンがある。好ましい過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンである。好ましい過酸化物は、半減期が2分間〜1時間であり、より好ましくは、半減期は成形温度で5分間〜50分間である。
【0036】
一般的に、0.2〜5.0重量%の過酸化物を使用し、より好ましくは過酸化物の範囲は0.5〜3.0重量%、最も好ましくは、0.6〜2重量%である。
【0037】
過酸化物は、不活性溶剤に溶解させてから、重合体粉末に加えることができる。不活性溶剤は、好ましくは重合体が成形される前に蒸発する。そのような不活性溶剤の例はアルコールおよびアセトンである。
【0038】
便宜上、重合体と架橋性薬品、例えば過酸化物、との間の反応は、一般的に成形圧で行うことができる。一般的に、反応物は、成形温度で1〜3時間、より好ましくは約2時間、温置する。
【0039】
反応混合物は、好ましくは徐々に加熱して成形温度を達成する。温置時間の後、架橋した重合体は、好ましくは室温に徐々に冷却させる。例えば、重合体は、室温で放置し、自然に冷却させる。徐々に冷却することにより、安定した結晶構造が形成される。
【0040】
重合体を過酸化物で架橋させるための反応パラメータ、および過酸化物の選択は、当業者が決定することができる。例えば、ポリオレフィンとの反応には多種多様な過酸化物があり、それらの相対的な効率の研究が報告されている。分解速度の差は、恐らく、意図する用途に特定の過酸化物を選択する上で、主要なファクターであろう。
【0041】
UHMWPEの過酸化物架橋も報告されている。UHMWPEは、溶融物中、180℃で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3で架橋させることができる。
【0042】
様々な実施態様で、重合体状バルク材料を照射に露出することにより、架橋させる。重合体を架橋させるための照射の例としては、電子線、X線、およびガンマ線照射があるが、これらに限定するものではない。様々な実施態様で、ガンマ線照射が、放射線がバルク材料に容易に透過するので、好ましい。電子線を使用してバルク材料を照射することもできる。e−線放射では、透過深度は、この分野で良く知られているように、電子線のエネルギーによって異なる。
【0043】
ガンマ(γ)線照射には、重合体状バルク材料を固体状態で線量約0.01〜100Mrad(0.1〜1000kGy)、好ましくは0.01〜10Mradで、この分野で公知の方法、例えば同位元素、例えば60Co、から放出されるガンマ線に露出、を使用して照射する。様々な実施態様で、ガンマ線照射は、線量0.01〜6、好ましくは約1.5〜6Mradで行う。非限定的な実施態様では、照射は線量約5Mradまでである。
【0044】
重合体状バルク材料の照射は、通常、不活性雰囲気または真空中で行う。例えば、重合体状バルク材料を、照射工程の際に酸素不透過性包装物中に包装することができる。不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、およびヘリウムも使用できる。真空を使用する場合、包装された材料を、不活性ガスによる1サイクル以上のフラッシングにかけ、真空を作用させて酸素を包装物から除去する。包装材料の例としては、熱密封真空包装用に市販されている金属ホイル小袋、例えばアルミニウムまたはMylar(登録商標)被覆包装ホイル、がある。重合体状バルク材料を不活性雰囲気中で照射することにより、照射の際に起こり得る酸化の影響および付随する鎖切断反応が軽減される。照射中に存在する雰囲気中にある酸素により引き起こされる酸化は、一般的には重合体状材料の表面に限定される。一般的に、低レベルの表面酸化は、酸化された表面をその後に続く機械加工の際に除去できるので、許容される。
【0045】
照射、例えばγ線照射は、重合体状材料に、好適な照射装置を有する特別な設備で行うことができる。照射を、他の加熱、圧縮、冷却、および機械加工操作を行う場所以外で行う場合、他の操作を行う場所へ輸送する際、照射したバルク材料を酸素不透過性包装物中に入れておくのが好都合である。
【0046】
材料のバルク形態
架橋した重合体は、軸方向、および軸方向を横切る、または軸方向に対して直角な方向で特徴付けられるバルク形態で与えられる。その後に続く加工工程で、変形圧を架橋したバルク材料に作用させ、横方向で寸法を縮小する。
【0047】
軸方向は、以下にさらに記載するように、高い引張強度が発生する方向でもある。この態様では、バルク材料の軸方向は、その軸方向で高い引張強度の発生を引き起こす変形力の作用に対して直角の方向である。このようにして、軸方向に対して直角に変形圧または力を作用させることにより、横方向よりも軸方向における、より高い引張強度により特徴付けられる異方性材料が得られる。
【0048】
バルク材料の軸方向は、移植物の支持部品、例えば寛骨臼カップ、を機械加工する好ましい方向も限定する。すなわち、支持部品は、好ましくは、処理されたバルク重合体から、高引張強度軸が生体内で移植物の支持部品の、負荷を支える軸または方向に対応する向きで製造または機械加工される。
【0049】
代表的な例では、バルク材料は、円形断面を有するロッドまたはシリンダーの形態にある。軸方向は、シリンダーの主軸に対して平行であり、横方向は、軸方向に対して直角にある。つまり、軸方向の存在が、本願で「横」と呼ばれる直角方向を限定する。バルク材料の断面が、シリンダーの場合のように等方性である場合、横方向は、「半径方向」と呼び、横軸は半径方向軸と呼ぶことができる。バルク材料の主軸は、縦軸とも呼ぶことができる。本明細書で使用するように、縦軸は軸方向に対して平行である。
【0050】
ロッドまたはシリンダーの非限定的な場合、バルク材料の軸方向または縦軸に対して直角の断面は円形である。軸方向により特徴付けられる、他の直角断面を有する他のバルク材料も使用できる。非限定的な例では、軸方向に対して直角の正方形断面を有する正方形シリンダーを形成することができる。軸方向により特徴付けられる他のバルク材料は、軸方向に対して直角の、長方形、多角形、星形、丸い突出部がある、および他の断面を有することができる。
【0051】
様々な実施態様で、バルク重合体状材料の軸方向は、直角または半径方向と比較して、伸長されている。例えば、UHMWPEの場合、市販のバルク材料は、直径約3インチ、長さ14インチのシリンダーである。この長さは軸方向に対応し、直径は半径方向に対応する。以下に記載するように、移植物用の支持部品は、軸方向で切断したビレットから機械加工するのが好ましい。製造効率から、本発明の方法により処理した単一のバルク材料から複数の支持部品を製造するのが好都合である。この理由から、バルク材料は、通常、軸方向に伸びているべきであり、これによって、複数のビレットをこの材料から切断し、支持部品のその後の機械加工に使用することができる。
【0052】
上記のように、軸方向により特徴付けられるバルク材料は、軸方向に対して直角の様々な断面積を有する材料として、さらに特徴付けられる。様々な実施態様で、軸方向に対して直角である断面積の寸法は、バルク材料の最初から最後まで、または最上部から底部まで、軸方向に沿って多かれ少なかれ一定である。他の様々な実施態様で、バルク材料は、バルク材料の長さまたは軸方向に沿って変化する断面積を備えることができる。バルク材料の断面積が、バルク材料の軸方向に沿って一定である場合、以下に記載するように加えられる圧縮力は、一般的に、軸方向に対して直角の方向でバルク材料に作用する。断面積がバルク材料の軸方向に沿って変化する場合、バルク材料に加えられる圧縮力は、バルク材料の幾何学的構造のために、軸方向における成分を有することができる。しかし、すべての場合で、圧縮力の少なくとも一成分が、軸方向に対して直角の方向でバルク材料に作用する。
【0053】
予備加熱
その後の処理を行う前に、架橋した重合体を圧縮変形可能な温度に加熱する。圧縮変形可能な温度は、重合体状バルク材料が軟化し、圧縮源の作用により流動し、その圧縮力が作用する方向で寸法が変化する温度である。UHMWPEおよび他の重合体状材料に関して、圧縮変形可能な温度は、具体的には、ほぼ融点−50℃〜融点+80℃である。
【0054】
様々な実施態様で、圧縮変形可能な温度は、重合体状材料の融点未満である。圧縮変形可能な温度の例としては、融点〜融点より10℃低い、融点〜融点より20℃低い、融点〜融点より30℃低い、融点〜融点より40℃低い温度がある。UHMWPEには、UHMWPEの融点が約136℃〜139℃であるので、圧縮変形可能な温度は80℃を超える、または約86℃〜約136℃である。様々な実施態様で、UHMWPEの圧縮変形可能な温度は、約90℃〜135℃好ましくは約100℃〜130℃である。好ましい温度は125〜135℃、または130℃±5℃である。
【0055】
様々な実施態様で、架橋した材料は、その重合体の融点より高い圧縮変形可能な温度に加熱する。UHMWPEおよび他の重合体状材料に関して、そのような圧縮変形可能な温度は、融点のすぐ上の温度〜融点より約80℃高い温度である。例えば、UHMWPEは、温度160℃〜220℃または180℃〜200℃に加熱することができる。
【0056】
様々な実施態様で、バルク重合体状材料を、融点に近いが、融点以下の圧縮変形温度に加熱するのが好ましい。様々な実施態様で、圧縮変形可能な温度は、融点と、融点より20℃低い温度との間、または融点と、融点より10℃低い温度との間である。
【0057】
架橋したバルク材料は、図に示す変形チャンバー中で圧縮変形可能な温度に加熱するか、または加熱炉中で圧縮変形可能な温度に予備加熱することができる。様々な実施態様で、バルク材料は、融点のすぐ下の温度、例えば融点−5℃または融点−10℃、に加熱し、加熱された変形チャンバー中に入れる。変形チャンバーは、好ましくは圧縮変形可能な温度を維持する。所望により、変形チャンバーは、一定温度を維持するように加熱するか、またはサーモスタット制御することができる。あるいは、変形チャンバーは、それ自体を加熱しないが、以下に説明する絞りダイを通して押出する際に、バルク材料を圧縮変形可能な温度に維持するように、十分な絶縁特性を有する。様々な実施態様で、変形チャンバーの温度は、融点より数度低く保持し、融解を避ける。
【0058】
変形
架橋したバルク材料が圧縮変形可能な温度にある時、変形圧力をバルク材料に、軸方向に対して直角方向で作用させる。直角方向の力をかけることにより、加熱されたバルク材料の材料が流動する。その結果、力が加えられる横方向におけるバルク材料の寸法が、本来の寸法と比較して、減少する。上記のように、圧縮力は、力の少なくとも一成分がバルク材料の軸方向に対して直角になるように作用させる。円筒形のロッドおよびバルク材料の軸方向に沿って一定の断面を有する他のバルク材料に関して、圧縮力は、軸方向に対して直角に作用させる。
【0059】
軸方向に対して直角の方向で圧縮力を作用させるための、どのような好適な方法でも使用できる。非限定的な例としては、ローラー、クランプ、および同等の手段がある。
【0060】
押出
様々な実施態様で、変形力は、絞りダイを通してバルク材料を押し出すことにより、バルク材料の軸方向に対して直角の方向で作用させる。押出の際に軸方向に対して直角の方向でバルク材料に加えられる圧力により、バルク材料の寸法が、バルク材料の本来の寸法と比較して減少する。つまり、押出後のバルク材料の直径または他の横方向寸法は、押出前の寸法より小さい。
【0061】
バルク材料の横方向における相対的な寸法低下は、本来の寸法d1と減少した寸法d2との比として表すことができる。圧縮力をかけることにより寸法を縮小する方法に応じて、比d1/d2の数値を、延伸比または直径圧縮と呼ぶことができる。押出に関しては、延伸比が一般的であり、他に指示がない限り、本明細書では、全ての幾何学的構造に関して、用語延伸比を使用する。
【0062】
無論、変形圧力または力が作用する横方向(軸方向に対して直角の方向)は、それ自体、縦軸に対して直角に引くことができる2つの軸を含む。様々な実施態様で、バルク材料は、2本の横軸に沿って異なった量により変形させることができ、延伸比は両方の軸に対して規定することができる。横方向の向きは任意であり、解析に必要であれば、作用する力の幾何学的構造を簡素化するために、軸を選択することができる。バルク材料の断面が等方性である場合、全ての横方向で等しい変形力を作用させることができる。この非限定的な場合、寸法d2は、押し出された材料の半径または直径に対応し、延伸比は、d1をd2で割ることにより定義される分数である。
【0063】
様々な実施態様で、この延伸比は1.1以上で、約3未満である。様々な実施態様で、この延伸比は1.2以上であり、好ましくは約1.2〜1.8である。非限定的な例では、この延伸比は約1.5である。高レベルの縮小では、導入されるひずみが大きすぎ、架橋した重合体状材料の特性が低下する。従って、様々な実施態様で、延伸比は2.5以下、好ましくは約2.0以下である。好ましい実施態様では、圧縮力を、縦軸に対して横方向でバルク材料の周りに多かれ少なかれ等方的に作用させる。従って、寸法縮小は、通常、全ての横方向に作用する。例えば、円形断面は丸いままであるが、直径が減少するのに対し、多角形断面、例えば正方形または長方形、は、全ての辺が縮小する。
【0064】
絞りダイを通す押出の幾何学的構造を図1および2に図式的に示す。絞りダイ6を変形チャンバー2と冷却チャンバー4との間に配置する。図に示すように、絞りダイ6は、押し出されるロッドの直径または寸法を、本来の寸法d1から押し出された寸法d2に縮小する。架橋した、加熱されたバルク材料が変形チャンバーから絞りダイ6を通る時に、材料は、ダイ壁5を通過し、冷却チャンバー4の直径d2を有する締め付け部10に至る。
【0065】
絞りダイの様々な幾何学的構造を、図2に非限定的な形態で例示する。図2a〜2eは、変形チャンバー壁20および冷却チャンバー壁10の相対的な形状を示す。ダイ壁5は、冷却変形チャンバーを冷却チャンバーに接続していることが分かる。図2aでは、変形チャンバー2および冷却チャンバー4の両方の断面が円形であり、寸法d1およびd2がそれぞれの直径に対応する。図2bでは、変形チャンバーが正方形または長方形であり、対角線に沿って、または辺に沿って任意に取ることができる寸法d1により特徴付けられる。図2bでは、冷却チャンバー4も長方形であるが、より小さい寸法d2を有する。図2c〜2eは、非限定的な例として、円形、正方形、および三角形変形の他の組合せおよびダイ壁5を有する絞りダイ6により接続された冷却チャンバーを例示する。
【0066】
上記のように、変形チャンバー2中のバルク材料は、圧縮変形可能な温度に保持される。そのような温度では、材料は、材料に作用する圧力に応答して流動することができる。圧縮変形可能な温度が融点未満である場合、材料は、絞りダイ6を通して固体状態流動する。ラムによりバーの末端に加えられる圧力または力は、ダイにより圧縮力に変換され、その圧縮力が、バルク材料の寸法を横方向で減少させる。便宜上、押し出すべきバルク材料の直径は、図1に示す変形チャンバーの直径または寸法d1に比較的近い。
【0067】
冷却
様々な実施態様で、軸方向により特徴付けられるバルク形態にある押し出されたUHMWPEロッドまたは他の架橋した重合体状材料は、冷却されてから、さらに加工される。あるいは、押し出されたバルク材料は、以下に説明する応力除去工程により、直接加工することができる。非限定的な実施態様では、軸方向により特徴付けられるロッドまたは他のバルク材料は、冷却チャンバーまたは他の手段で、押し出されたバルク材料の、架橋したバルク材料の本来の寸法より小さい寸法を維持するのに十分な圧力を維持しながら、固化温度に冷却される。押出または他の圧縮力実施態様では、寸法を本来の寸法未満に維持するのに必要な圧力は、例えば押出により重合体の形状を最初に変化させるのに必要な圧力より大きくても小さくてもよい。上記のように、バルク材料、例えば押し出されたUHMWPE、は、冷却チャンバーまたは類似の装置中で、圧力を除去してもバルク材料が最早寸法増加する傾向が無い温度に到達するのに十分な時間保持される。この温度は、固化温度と呼ばれ、UHMWPEでは、冷却壁中に(内壁表面から約1mmに)埋め込まれたサーモスタットの読みが約30℃である時、この固化温度に達する。固化温度は、相変化、例えば融解または凝固、の温度ではない。UHMWPEのような材料は、その材料が、前の処理工程で融点より上または下に加熱されたか、否かに関係なく、固化温度に冷却することができることにも注意する。
【0068】
様々な実施態様で、架橋した重合体状バルク材料の軸方向に対して直角の方向で、押出または他の変形力を作用させた後、バルク材料が固化温度に冷却されるまで、バルク材料に対する圧縮変形力を保持する。このような圧縮力の保持は、図1および2に例示する絞りダイ実施態様で都合良く与えられる。絞りダイ6を通して押し出した後、バルク材料を冷却チャンバー4中に保持する。これらの図面に示す実施態様では、冷却チャンバーは、押し出されたバルク材料を、バルク材料の本来の寸法d1より小さく、非限定的な例では押し出された寸法d2と便宜上ほぼ等しい寸法または直径d3に保持するようなサイズおよび形状を有する。架橋した材料には、温度が固化温度より高い時に、膨脹により本来の寸法に戻る傾向がある。バルク材料の膨脹力は、冷却チャンバーの壁により反作用を受け、その結果、バルク材料が冷却する間、圧縮力がバルク材料に対して維持される。様々な実施態様で、冷却チャンバーは、冷却手段、例えば冷却ジャケットまたはコイル、を備え、冷却チャンバーおよび押し出された重合体バルク材料から熱を除去する。
【0069】
例示のための図面に関して、押し出された重合体状バルク材料が冷却チャンバー中で冷却される時、材料がその本来の寸法d1に膨脹または回復する傾向が最早無くなる温度に到達する。固化温度と呼ばれるこの温度で、バルク材料は、冷却チャンバーの壁に最早圧力を加えず、取り出すことができる。好ましい実施態様では、チャンバーの壁中にあるサーモスタットにより測定して、材料を約30℃に冷却してから、取り出す。
【0070】
変形チャンバーおよび冷却チャンバーの温度は、従来の手段により、例えば各チャンバーの壁中に埋め込んだ熱電対により、測定することができる。例えば、冷却チャンバーの壁中にある熱電対が温度30℃を示した場合、UHMWPEから製造された、押し出されたバルク材料は、その材料がその膨脹傾向を失う固化温度より低いバルク温度に到達していることが分かっている。例えば冷却チャンバーの壁中に埋め込まれた熱電対で測定した温度は、冷却チャンバー中の材料のバルクまたは平衡温度を必ずしも代表してはいない。熱交換流体、例えば水または水とグリコールの混合物、を使用することにより、冷却チャンバー中に適切な冷却速度を与えることができ、バルク材料をチャンバーから取り出しても直径が大きく増加しないことが観察される温度に達するまでの時間、冷却チャンバー中にバルク材料を保持する。例えば、様々な実施態様で、例えば90°Fまたは30℃の固化温度に冷却することは、押し出されたバルク材料を冷却チャンバー中に、冷却チャンバーの壁中に埋め込まれた熱電対の読みが90°Fまたは30℃になるまで放置することを意味する。上記のように、そのような冷却期間で、バルク材料の内側のバルク平衡温度が測定された温度より高くても、バルク材料を取り出すのに十分であることが分かっている。
【0071】
様々な実施態様で、埋め込んだ熱電対の読みが90°Fまたは30℃になった後、さらにある時間、例えば10分間、押し出されたバルク材料を冷却チャンバー中に保持する。この追加冷却期間により、冷却された材料を冷却チャンバーから、より容易に取り出すことができる。一実施態様では、熱電対が30℃の読みに達した時、プログラム化できるロジックコントローラー(plc)がタイマーを始動させ、そのタイマーが、所望の時間が経過した時に信号を発する。その時点で、操作員は、圧縮変形した架橋した材料をチャンバーから取り出すか、またはラムまたは他の好適な装置を作動させ、取り出すことができる。
【0072】
犠牲パック
好ましい実施態様では、いわゆる犠牲パックを使用し、押出工程の効率を改良する。図3に関して、変形チャンバー2に対して後退した位置にラム30がある。図3bは、後退したラム30およびロッド状バルク材料50および犠牲パック40で満たされた変形チャンバー2を示す。犠牲パック40は、架橋したバルク材料50と同じものでよい架橋した重合体から製造される。この犠牲パックは、断面形状および断面積が、押し出すべきバルク材料50とほぼ等しいのが好ましい。図3cは、ラム30が犠牲パック40を押し、その犠牲パックがバルク材料50を押し、絞りダイ6を通してバルク材料50を冷却チャンバー4の中に移動させる様子を示している。図3dは、ラム30の行程の最後における状況を示している。バルク材料50が冷却チャンバー4の中に完全に入っているのに対し、犠牲パック30は絞りダイ6を占有している。図3eに示す様に、ラム30を後退させることにより、犠牲パック40は、バルク材料50のように冷却チャンバーの中で冷却されていないので、その本来の寸法に戻る傾向がある。その結果、犠牲パックは、図3fに示すように、絞りダイから出る傾向がある。次いで、犠牲パック40を変形チャンバーから取り出し、バルク材料50が上記のような好適な固化温度に冷却するサイクル時間の後、この製法を反復することができる。
【0073】
応力除去
押出および所望により行なう固化温度への冷却の後、バルク材料を応力除去するのが好ましい。一実施態様では、応力除去は、好ましくは重合体状バルク材料の融点より低い応力除去温度に加熱することにより行う。先行する行程における冷却が、変形力を維持しながら行われる場合、バルク材料は、応力除去により、膨脹し、その本来の寸法に近い寸法に戻る傾向がある。押し出されたロッドの非限定的な例では、バルク材料を加熱するにつれて、ロッドの直径d3が、本来のバルク材料のd1に近い直径に増加する傾向がある。様々な非限定的な実施態様で、バルク材料は、応力除去または応力除去加熱により、その本来の寸法の約90〜95%を維持することが観察されている。
【0074】
応力除去工程は、温度が高い程、より急速に、より効率的に進行する。従って、融点に近いが、それより低い応力除去温度、例えば融点〜融点−30または40℃、が好ましい。UHMWPEに関しては、好ましい応力除去温度は、約100℃〜約135℃、110℃〜約135℃、120℃〜135℃、好ましくは125℃〜約135℃である。
【0075】
応力除去は、応力除去工程を完了させる時間行う。様々な実施態様で、好適な時間は数分間〜数時間である。非限定的な例では、加熱炉または他の、応力除去温度を維持するのに好適な手段の中で、1〜12時間、2〜10時間、および2〜6時間である。応力除去は、真空、不活性雰囲気、または大気を排除するように設計された包装物の中で行うことができるが、大気中で行うのが好ましい。
【0076】
ある種の条件下では、押し出された、固化したバルク形態が、応力除去に関連する加熱または他の処理の際に、好ましい真っ直ぐまたは直線的な向きから、曲がる、または他の偏位する傾向を示す。この傾向に対処するために、一実施態様では、バルク材料を、応力除去工程の際にバルク材料を(軸方向で測定して)真っ直ぐに維持するように機能する機械的装置の中に保持する。非限定的な例では、バルク材料をV字形チャネルの中に配置し、バルク材料を真っ直ぐに維持する。例えば、幾つかのV字形チャネルが、互いに等間隔に配置され、同じ物理的構造の一部である。幾つかのV字形チャネルは、例えばその構造に等間隔で溶接することができる。押し出されたバーを、V字形チャネルの一番下にある組の中に配置し、次いで別の組のV字形チャネルを押し出されたバーの上に、バーの上に乗るように配置する。これらのチャネルは、応力除去の際に、バーを真っ直ぐに維持するのに役立つ。
【0077】
様々な実施態様で、架橋、加熱、圧縮、冷却および応力除去工程の製品は、架橋前の本来のバルク材料にほぼ等しい寸法を有するバルク材料である。バルク材料に対して行われる、これらの工程の結果、バルク材料は、軸方向における高い引張強度、低いが検出可能なレベルのフリーラジカル濃度、および高度の耐酸化性を示す。
【0078】
上記の方法は、工程の様々な段階で、架橋した重合体の寸法に関して追跡することができる。様々な実施態様で、本来の寸法または直径d1を有するバルク材料を、架橋させ、圧縮変形温度に加熱する。次いで、架橋した、加熱された材料を、d1より小さい寸法または直径d2に圧縮する。所望により行なう工程では、次いで材料を、d2と同じでよいが、いずれの場合も、本来の寸法または直径d1よりは小さい直径d3で冷却しながら保持する。冷却後、応力除去により、バルク材料は、d3より大きく、幾つかの実施態様では本来の寸法または直径d1とほぼ等しい直径d4に戻る。例えば、本来のバルク材料がUHMWPEの3”x14”シリンダーである場合、上記の工程から得られる処理されたプリフォームは、好ましくは、典型的には直径が約2.7〜3インチである。
【0079】
上記の処理工程に続いて、軸方向により特徴付けられるバルク材料を公知の方法により機械加工し、移植物用の支持部品を製造する。円筒形の処理されたバルク材料プリフォームの場合、先ずシリンダーの外側直径を丸く削り、酸化された外側層を全て除去し、その後の処理を行うための真っ直ぐで丸いシリンダーを形成する。好ましい実施態様では、次いでこのシリンダーを軸方向に沿ってビレットに切断し、各ビレットを好適な支持部品に機械加工する。好ましくは、支持部品を、このビレットから、支持部品の生体内負荷支持軸が、支持部品を機械加工するバルクプリフォームの軸方向に相当するように、機械加工する。このように機械加工することにより、プリフォームの軸方向で引張強度および他の物理的特性が増加するので有利である。
【0080】
例えば、関節置換骨用の支持部品では、支持表面における応力は典型的には多軸的であり、応力の大きさは、関節の適合性によってさらに異なる。股用途には、カップの極性軸は、押し出されたロッドの縦軸と整列し、軸方向に対応する。カップの壁は、赤道およびリムで、ロッドの縦軸に対して平行であり、偏心した、リムに負荷がかかる状況では、この方向における強度が高くなるので有利である。
【0081】
耐酸化性
本発明により製造されたUHMWPE、プリフォーム、および支持部品は、バルク材料中にフリーラジカルを検出することができるが、高レベルの耐酸化性を有することが分かっている。重合体状材料の耐酸化性を測定し、定量するには、この分野では、赤外線方法、例えばASTM F2102−01に基づく方法、により酸化指数を測定するのが一般的である。ASTM方法では、1650cm−1〜1850cm−1間のカルボニルピークの下にある酸化ピーク面積を積分する。次いで、酸化ピーク面積を、1330cm−1〜1396cm−1間のメタン伸縮の下にある積分面積を使用して規格化する。酸化指数は、酸化ピーク面積を規格化ピーク面積で割ることにより、計算する。規格化ピーク面積は、試料、等の厚さによる変動を説明する。これによって、酸化安定性を、促進エージングによる酸化指数の変化により表すことができる。あるいは、安定性は、露出開始時における酸化指数はゼロに近いので、一定露出後に得られる酸化の値として表すことができる。様々な実施態様で、本発明の架橋した重合体の酸化指数は、70℃で5気圧酸素に4日間露出した後、0.5未満変化する。好ましい実施態様では、5気圧酸素に4日間露出することにより、酸化指数は0.2以下の変化を示すか、または実質的に変化を示さない。非限定的な例では、酸化指数は、70℃で5気圧酸素に2週間露出した後、1.0以下、好ましくは約0.5以下の値に達する。好ましい実施態様では、酸化指数は、70℃で5気圧酸素に2または4週間露出した後、0.2以下、好ましくは0.1以下の値になる。特に好ましい実施態様では、試料は、2週間または4週間の露出中に赤外線スペクトルに酸化を実質的に示さない(すなわちカルボニル帯の発達がない)。これらの方法により製造されたUHMWPEの酸化安定性を解釈する際、酸化指数測定における背景ノイズまたは初期値が0.1または0.2のオーダーにある場合があり、これが、出発材料における背景ノイズまたは僅かな量の酸化を反映することがある、ということに注意すべきである。
【0082】
上記のような酸化安定性は、様々な実施態様で、検出可能なレベルのフリーラジカルが架橋した重合体状材料中に存在するにも関わらず、達成される。様々な実施態様で、フリーラジカル濃度は、約0.06x1015スピン/gのESR検出限界を超えており、ガンマ線滅菌処理し、その後の、フリーラジカル濃度を下げるための熱処理(滅菌後の)に全くかけていないUHMWPEにおける濃度よりも低い。様々な実施態様で、フリーラジカル濃度は、3x1015未満、好ましくは1.5x1015未満、より好ましくは1.0x1015スピン/g未満である。様々な実施態様で、本発明により、UHMWPEは融点未満でのみ処理するが、酸化安定性は、溶融処理したUHMWPEの酸化安定性に匹敵する。
【0083】
本発明は理論により制限すべきではないが、上記の変形処理されたUHMWPE中のフリーラジカルは、高度に安定化されており、酸化による劣化に対して本来耐性であろう。あるいは、またはそれに加えて、これらのフリーラジカルがバルク材料の結晶性区域中に捕獲されており、その結果、酸化過程に関与できないのであろう。材料の酸化安定性のため、様々な実施態様で、ガス透過性包装およびガスプラズマ滅菌を、押出処理された放射線UHMWPEに使用することが正当化される。これには、フリーラジカル濃度を増加させ、酸化安定性を下げる傾向があるガンマ線滅菌を回避する利点がある。
【0084】
様々な実施態様で、固体状態変形加工により、結晶および分子配向により特徴付けられる重合体が得られる。分子配向とは、重合体鎖が圧縮の方向に対して直角に向いていることを意味する。結晶配向とは、ポリエチレン中の結晶面、例えば200面および110面、が圧縮面に対して平行な方向に向いていることを意味する。このように、結晶面は配向している。配向の存在は、複屈折測定、赤外線スペクトル、およびX線回折により示すことができる。
【0085】
半径方向で圧縮された物体の圧縮面は、本発明により処理されたバルク材料の半径方向表面をとりかこみ、その表面に対して平行な表面と理解する。円筒形ロッドの非限定的な例では、軸方向沿った一連の円形断面が、半径方向表面およびその表面に対して直角の圧縮面を規定する。半径方向面周囲の圧縮に応答して、重合体鎖が、圧縮の方向に対して直角に配向する。これには、シリンダー中で、半径方向面に対して一般的に平行な分子配向を与える効果がある。この分子および結晶配向により、機械的特性が強化され、軸および横(または半径)方向に対する機械的特性の異方性が得られると考えられる。
【0086】
様々な実施態様で、少なくとも一つの方向で高レベルの引張強度を示す架橋したUHMWPEが得られる。有利なことに、支持材料の強度増加の利点を活かした支持部品および移植物が得られる。例えば、架橋したUHMWPEで、少なくとも50MPa、好ましくは少なくとも55MPa、より好ましくは少なくとも60MPaの破断点引張強度を達成することができる。様々な実施態様で、50〜100MPa、55〜100MPa、60〜100MPa、50〜90MPa、50〜80MPa、50〜70MPa、55〜90MPa、55〜80MPa、55〜70MPa、60〜90MPa、60〜80MPa、および60〜70MPaの破断点引張強度を有する材料が得られる。非限定的な実施態様では、本発明により製造されるUHMWPEの引張強度は、軸方向で約64MPaである。
【例】
【0087】
比較例
平衡状態成形したUHMWPE粒子状物質原料(Ticona, Inc., Bishop, TX)をアルゴン雰囲気中で包装し、線量25〜40kGyでガンマ線滅菌する。
【0088】
例1
放射線架橋し、変形処理したUHMWPEを、下記の工程を使用して製造する。
1.放射線架橋 寸法3”x14”の平衡状態成形したUHMWPEロッド(Ticona, Inc., Bishop, TX)をホイル張りした(foilized)袋の中に入れて真空包装し、公称線量50kGyでガンマ放射線架橋する。
2.予備加熱 変形処理の前に、ロッドをホイル張りした袋から取り出し、加熱炉中、133℃に4〜12時間加熱する。
3.固体状態静水圧押出 次いで、加熱したロッドを加熱炉から取り出し、プレスの保持チャンバー中に保持する。保持チャンバーの温度は130℃±5℃である。次いで、このバーを、架橋したUHMWPE製の犠牲パックを使用し、円形ダイを通して、直径方向の圧縮比1.5(直径3”から2”に縮小)で、冷却チャンバー中にラム押出する。
4.冷却および固化 冷却チャンバーは、押し出されたロッドが変形状態に維持されるようなサイズを有する。冷却チャンバーの壁は水で冷却されている。壁中(内側壁から約1mmに)埋め込まれた熱電対の読みが30℃になった時、所望により非限定的な例ではさらに10分間の冷却期間の後、固化したロッドを取り出す。所望により、温度が約30℃に達した後、第二バーをラム押出し、冷却したバーを冷却チャンバーから取り出す。
5.応力除去、アニーリング 次いで、変形したロッドを133±2℃で5時間加熱する。このアニーリングにより、材料中の寸法安定性も改良される。次いで、ロッドを室温に徐々に冷却する。押し出されたロッドは、応力除去工程の後、その初期直径の約90〜95%を維持している。
6.ガスプラズマ滅菌 冷却後、ライナーまたは他の支持材料を機械加工し、機械加工下部分を非照射的に滅菌する(例えばエチレンオキシドまたはガスプラズマ)。
【0089】
試料調製および配向
圧縮試験および促進エージングには、直角長方形プリズム形試料を評価する。これらの試料の寸法は、12.7mmx12.7mmx25.4mm(0.50inx0.50inx1.00in)である。これらの試料は、ロッド原料から、縦軸に対して平行に(軸方向)または直角(横方向)に機械加工する。
【0090】
引張試験には、ASTM−D638−02aに記載されているタイプIVおよびV規格に適合するダンベル形引張試料を試験する。試料は、厚さが3.2±0.1mmである。試料は、縦軸に対して平行または直角に向け、それぞれ軸方向および横方向を反映する。
【0091】
物理的および機械的特性
破断点引張強度は、ASTM−638−02aにより測定する。
【0092】
UHMWPE材料中のフリーラジカル濃度は、以前にJahan et al.、J. Biomedical Materials Research, 1991; Vol. 25, pp 1005-1017に記載されているように、ESR分光計(Bruker EMX)を使用して分析する。分光計は、9.8GHz(X帯)マイクロ波周波数および100kHz変調/検出周波数で操作し、高感度共振器キャビティを備えている。良好なスペクトル分解能および/または信号/ノイズ比を得るために、変調振幅を0.5〜5.0ガウス、マイクロ波電力を0.5〜2.0mWで変化させる。
【0093】
促進エージング
試料をASTM F2003−00により酸素5気圧中でエージングさせる。幾つかの試料はこの標準に従って2週間エージングさせ、他は4週間エージングさせる。エージングは、ステンレス鋼製圧力容器中で行う。試験試料は、試験軸が垂直になるように選択し、向きを決める。例えば、最上面および底面は試験軸に対して直角である。最上面には、後で識別するためのラベルを貼る。次いで、容器を酸素で満たし、5回掃気し、エージング環境の純粋性を確保する。プリズムを圧力容器中の平らな表面上に置き、各プリズムの底面は酸素に露出されないが、その外側表面のそれぞれがエージング期間を通して酸素に露出されるようにする。
【0094】
容器を室温(24±2℃)で加熱炉中に入れ、加熱炉を、70.0±0.1℃のエージング温度に速度0.1℃/分で加熱した。
【0095】
FTIR分析
材料を促進エージングの前後に、透過光におけるフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)(UMA-500顕微鏡を取り付けたExcaliburシリーズFTS3000、Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により評価した。FTIR輪郭作成(profiling)は、横方向に対して直角で行う。
【0096】
酸化指数の測定および計算は、ASTM F2102−01に基づいている。酸化ピーク面積を、1650〜1850cm−1のカルボニルピークの下で積分する。規格化ピーク面積は、1330〜1396cm−1のメチレン伸縮の下にある積分面積である。酸化指数は、酸化ピーク面積を規格化ピーク面積で割ることにより、計算する。
【0097】
結果
比較例および例1に関するデータを表に示す。
比較例 例1 例1軸方向 例1横方向
破断点引張強度 46.8±2.0 64.7±4.5 46.1±3.5
[MPa]
フリーラジカル 3.82x1015 0.22x1015
濃度、スピン/g
エージング前の 0.2 <0.1
酸化指数
(表面における)
エージング後の 1.2 <0.1
酸化指数
(表面における)
【0098】
本発明を、本発明を実行するのに最も有利であると考えられる実施態様を含む、様々な実施態様で上に説明したが、無論、本発明は開示された実施態様に制限されるものではない。明細書を読むことにより、当業者に考えられる変形および修正も、請求項に規定される本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】押出工程の幾何学的構造を例示する。
【図2】押出装置およびダイの様々な実施態様を示す。
【図3】押出工程の一実施態様を例示する。
【序論】
【0001】
本発明は、架橋した高分子量重合体状材料および該材料を処理し、その特性を強化する方法に関する。特に、本発明は、高度の摩耗および酸化耐性を有する重合体状移植物の製造に使用する方法および材料を提供する。
【0002】
架橋した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、現在、医療用移植物、例えば人工股関節用の寛骨臼部品、に広く使用されている。整形外科学界では、放射線架橋したUHMWPEを処理し、その材料の耐摩耗性および酸化安定性を維持しながら、機械的特性を改良するための別の方法を見出すことが求められている。
【0003】
米国特許第6,168,626号、Hyon et al.は、圧縮変形可能な温度における変形加工により、架橋したUHMWPEの機械的特性を強化する方法を報告している。変形加工の後、変形状態を維持しながら、材料を冷却する。圧縮平面に対して平行な方向で結晶平面が配向している、配向したUHMWPE成形製品が得られる。圧縮は、好適なダイを使用して行うか、またはホットプレス機械を使用して行うことができる。
【0004】
重合体状材料、例えばUHMWPE、を架橋し、例えば摩耗特性が優れた材料を与えることができる。重合体状材料は、化学的に架橋させるか、または好ましくは照射、例えばγ線照射、により架橋させることができる。重合体に対するγ線照射の作用により、バルク材料中にフリーラジカルが形成される。フリーラジカルは、バルク材料の分子鎖を架橋させる反応箇所を与える。それに続く熱処理の後に生き残るすべてのフリーラジカルを含めて、フリーラジカルの存在は、酸化生成物を形成する酸素による攻撃に対しても敏感であることが認められている。そのような酸化生成物の形成により、一般的に機械的特性が低下する。
【0005】
フリーラジカルを完全に除去し、酸化安定性の高い重合体状材料を得るには、架橋した材料を重合体の結晶融点より上で熱処理するのが一般的である。これには、バルク材料中にあるすべてのフリーラジカルを破壊し、再結合する傾向がある。その結果、架橋した材料は、酸化による劣化に対する耐性が高くなる。しかし、この融解工程の際に、望ましい機械的特性の一部が失われる。
【0006】
高レベルの機械的特性と酸化による劣化に対する高い耐性を組み合わせた、架橋したUHMWPEのような材料を提供することが望ましい。
【概要】
【0007】
架橋した重合体の固体状態変形加工方法は、重合体バルク材料を、該バルク材料の主軸に対して直角方向で圧縮し、所望により該変形力を維持しながら該バルク材料を冷却することにより変形させることを包含する。重合体状材料がUHMWPEから製造され、架橋を照射、例えばγ線照射により行う場合、本方法の生成物は、人工股関節、等に使用する支持部品(bearing components) および移植物に使用するのに特に好適である。
【0008】
一態様で、本発明は、細長いバルク材料を、該材料が圧縮変形可能な温度にあり、好ましくは融点未満にある間に、絞りダイ(reducing die)を通して固体状態押出することを包含する。次いで、押し出されたバルク材料を、好ましくは変形状態に保持しながら、冷却する。冷却後、融点未満のアニーリング温度に、今回は圧力をかけずに、再加熱することにより、バルク材料をストレス除去する。
【0009】
配向したUHMWPE成形製品は、本発明の方法により、UHMWPE原料製品を高エネルギー線、例えばガンマ線照射、により架橋させ、該架橋したUHMWPEを圧縮変形可能な温度に加熱し、該UHMWPEを圧縮変形させ、続いて冷却および固化させることにより、得ることができる。この材料は、検出可能なレベルのフリーラジカルを有するが、促進エージング中のカルボニル基形成に対応する、UHMWPE材料の非常に低い、好ましくは検出不可能な、赤外線吸収帯域増加により確認される、酸化による劣化に対する耐性がある。
【0010】
バルク材料の主軸に対して直角方向で圧縮変形することにより、主軸方向における機械的特性が直角または横方向における機械的特性と異なった、異方性材料が形成される。応力除去の後、機械的特性は、直角方向に対して軸方向で20%以上異なることがある。
【0011】
本方法により処理した重合体は、高引張強度と酸化による劣化に対する耐性の望ましい組合せを示す。例えば、UHMWPEの横方向変形により、変形に対して直角の軸で測定して、破断点引張強度が50Mpaを超える、好ましくは60Mpaを超える材料が得られる。同時に、この材料は、酸化による劣化に対する耐性を有し、好ましい実施態様では、促進エージングにより、酸化指数に実質的に変化を示さない。
【0012】
本発明は、詳細な説明および添付の図面から、より深く理解される。
【詳細な説明】
【0013】
本明細書で使用する表題(例えば「序論」および「概要」)は、本発明の開示における主題を一般的に系統立てることだけを意図しており、本発明の開示またはいずれかの態様を制限するものではない。特に、「序論」に開示する主題は、本発明の範囲における技術の態様を包含し、先行技術を列挙するものではない。「概要」に開示する主題は、本発明の全範囲またはそのいずれかの実施態様を完全に説明または開示するものではない。同様に、説明における小表題は、読者の便宜上記載するのであり、その主題に関する情報が、その表題だけに記載されていることを表すものではない。
【0014】
説明および具体的な例は、本発明の実施態様を示すが、例示することだけが目的であり、本発明の範囲を制限するものではない。その上、記載する特徴を有する複数の実施態様を列挙しても、他の特徴を有する他の実施態様、または記載する特徴の異なった組合せを取り入れた他の実施態様を排除するものではない。具体的な例は、本発明の組成物および方法をどのように製造、使用および実行するかを例示するだけであり、他に指示がない限り、本発明の特定実施態様が製造または試験された、またはされなかったかを代表するものではない。
【0015】
本明細書で使用する用語「好ましい」および「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の有益性をもたらす本発明の実施態様を指す。しかし、ある種の、または他の状況下では、他の実施態様が好ましい場合もある。さらに、一つ以上の好ましい実施態様を列挙しても、他の実施態様が有用ではないことを意味するものではなく、他の実施態様を本発明の範囲から排除するものではない。
【0016】
本明細書で使用する用語「包含する」およびその変形は、非制限的であり、あるリストに品目を列挙しても、本発明の材料、組成物、装置および方法に有用である場合もある他の類似の品目を排除するものではない。
【0017】
一実施態様では、本発明は、架橋した重合体を圧縮変形可能な温度に加熱すること、該加熱された重合体に力を加えて変形させること、および該重合体を、該重合体を変形した状態に維持しながら、固化温度に冷却することを含んでなる、重合体状バルク材料を処理する方法を提供する。架橋した重合体は、軸方向により特徴付けられるバルク形態にあり、加熱された重合体に、軸方向に対して直角方向に力を加えて変形させる。他の望ましい物理的特性の中で、上記の方法により処理された重合体状バルク材料は、とりわけバルク材料の軸方向で高い強度を示す。バルク材料がUHMWPEである場合、この方法は、UHMWPEから製造された支持部品を含む医療用移植物を製造するのに特に好適である。
【0018】
別の実施態様では、本発明は、医療用移植物に使用するのに好適な材料を製造するための、架橋したUHMWPEを処理する方法を提供する。この方法では、γ線照射により架橋されているUHMWPEを約80℃より高く、その融点より低い温度に加熱する。該UHMWPEは、軸方向、該軸方向に対して直角の横方向、および本来の寸法により特徴付けられるバルク材料の形態にある。次いでこのバルク材料に横方向で圧縮力を作用させ、その方向でバルク材料の寸法を縮小させる。次いで、このバルクUHMWPEを固化温度に冷却する。一実施態様では、バルク材料がその本来の寸法に戻るのを阻止するのに十分な力を冷却の際に作用させる。様々な実施態様で、圧縮力は、絞りダイを通して、例えば円形ダイを通して、1を超える直径方向圧縮または絞り比でバルク材料を押し出しているラムにより作用させる。
【0019】
様々な実施態様で、加熱された、架橋したバルク材料を、バルク材料を横方向で本来の半径方向寸法より小さな寸法に保持するのに十分なサイズおよび形状を有するチャンバー中に押し出すことにより、冷却されつつあるUHMWPEに対して圧縮力を維持する。
【0020】
特別な実施態様では、医療用移植物に使用するのに好適な、UHMWPEから製造されたプリフォームの製造方法を提供する。この方法は、γ線照射により架橋した、結晶融点および直径d1により特徴付けられるUHMWPEロッドを圧縮変形可能な温度に加熱することを含んでなる。その後、架橋したUHMWPEに圧縮力を作用させ、直径を、d1より小さなd2に減少させる。直径が縮小したUHMWPEロッドを、所望により、圧縮力を維持しながら固化温度に冷却し、直径を、d1より小さなd3の値に維持する。その後の工程で、冷却したロッドを、そのロッドがd3より大きな直径d4に膨脹する温度に加熱することにより、応力除去する。様々な実施態様で、本方法では、絞りダイを通してロッドを冷却チャンバー中に押し出し、直径をd1からd2に減少させる。圧縮変形可能な温度は、好ましくは、融点未満で、融点−50℃の温度を超える。好ましい実施態様では、圧縮変形可能な温度は、約100℃〜約135℃である。好ましくは、UHMWPEロッドは、γ線照射により、0.1〜10Mradの線量で架橋されている。上記の方法により処理したUHMWPEから医療用移植物用の支持部品を製造する方法、ならびに上記の方法により製造されたプリフォームから機械加工されたUHMWPEを含んでなる移植物も提供する。
【0021】
一態様で、本発明は、軸方向により特徴付けられる細長い材料、例えばシリンダー、の形態にあるγ線架橋したUHMWPEを提供する。軸方向または縦方向における引張強度は、50Mpaを超え、好ましくは、60Mpaを超える。好ましい実施態様では、支持部品は、そのようなγ線架橋したUHMWPEから機械加工または形成されたUHMWPEを含んでなる。医療用移植物は、この支持部品を含む。
【0022】
別の態様で、本発明は、検出可能な濃度レベルのフリーラジカルを有するが、標準的な試験により測定して、酸化に対して安定しているγ線架橋したUHMWPEを提供する。例えば、非限定的な例で、UHMWPE中のフリーラジカル濃度は、約0.06x1015スピン/gを超え、約3x1015スピン/g未満である。好ましくは、フリーラジカル濃度は、1.5x1015スピン/g以下である。好ましい実施態様では、70℃で4週間、5気圧の酸素に露出する間、カルボニルIR吸収帯域の検出可能な増加はない。架橋したUHMWPEは、直径約2〜4インチ、好ましくは約3インチの円筒形ロッドの形態で製造するのが有利である。支持部品は、この架橋したUHMWPEから部品を機械加工することにより形成し、この支持部品を含む医療用移植物を提供する。
【0023】
別の態様では、異方性の架橋したUHMWPEを、軸方向および軸方向に対して直角の横方向により特徴付けられるバルク材料の形態で提供する。様々な実施態様で、異方性は、軸方向における引張強度が半径方向における引張強度より20%以上大きく、少なくとも50Mpa、好ましくは少なくとも60Mpaの値を達成することを特徴とする。
【0024】
別の態様で、γ線照射した、架橋したUHMWPEを固体状態変形加工する方法は、UHMWPEを、その溶融転移または結晶融点未満の温度で変形させることを含んでなる。それに続く工程で、押し出されたUHMWPEを、その固化温度で、所望により押し出されたロッドを変形した状態に維持しながら、冷却する。
【0025】
別の実施態様では、破断点引張強度が50Mpaを超える、圧縮変形した、架橋したUHMWPEが、本方法によりUHMWPEを加工して得られる。好ましい実施態様では、この材料は、検出可能なフリーラジカル濃度が0.06x1015スピン/gを超えているにも関わらず、70℃で4日間、5気圧の酸素に露出した後の酸化指数0.5未満により特徴付けられる、酸化による劣化に対する耐性も有する。
【0026】
別の態様で、本発明は、UHMWPEから製造された支持部品を含む医療用移植物の製造方法を提供する。この方法は、バルク材料の形態にあるUHMWPEを放射線架橋させる工程、該架橋したUHMWPEを、80℃を超え、その融点未満の温度に予備加熱する工程、次いで、該予備加熱されたUHMWPEを、1を超える直径方向圧縮比に固体状態押出する工程、該押し出されたUHMWPEを、直径方向の圧縮を維持しながら、30℃未満の固化温度に冷却する工程、該冷却したUHMWPEを融点未満の温度で、該ロッドが、アニーリングに応答して直径増加するのに十分な時間、アニーリングする工程、および該アニーリングされたUHMWPEから該支持部品を機械加工する工程を包含する。該UHMWPEは、所望により、支持部品を機械加工した後、滅菌する。滅菌は、非照射手段、例えばエチレンオキシドのようなガスに露出、により行う。
【0027】
様々な実施態様で、移植物を、本明細書に記載する構造を有し、本明細書に記載する方法により製造された、予備形成された重合体状組成物を使用して製造する。移植物の非限定的な例としては、股関節、膝関節、踝関節、肘関節、肩関節、脊柱、側頭下顎骨関節、および指関節がある。例えば、股関節では、予備形成された重合体状組成物を使用して寛骨臼カップ、またはカップの挿入物またはライナーを製造する。膝関節では、該組成物を使用して頸骨高平部(plateau)、膝蓋骨ボタン、および砲耳(trunnion)または関節の設計に応じて他の支持部品を製造する。踝関節では、該組成物を使用してタラー(talar)表面および他の支持部品を製造する。肘関節では、該組成物を使用してradio-numeralまたはulho-humeral関節および他の支持部品を製造する。型関節では、該組成物を使用してglenero-humeral関節および他の支持部品を製造する。脊柱では、該組成物から、椎間板置換骨およびfacet関節置換骨を製造することができる。
【0028】
様々な実施態様で、重合体状組成物から支持部品を、公知の方法、例えば機械加工、により製造し、従来の手段により移植物中に取り入れる。
【0029】
重合体
移植物に好ましい重合体としては、耐摩耗性があり、耐薬品性があり、酸化に対する耐性があり、生理学的構造と相容性がある材料が挙げられる。様々な実施態様で、重合体はポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ナイロンまたはポリアミド、ポリカーボネート、およびポリ炭化水素、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、である。高分子量および超高分子量重合体が、様々な実施態様で好ましい。非限定的な例としては、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、および超高分子量ポリプロピレンがある。様々な実施態様で、重合体は、約400,000〜約10,000,000の分子量範囲にある。
【0030】
UHMWPEは、摩擦係数が低く、耐摩耗性が高く、体の組織との相容性があるので、関節置換骨として使用される。UHMWPEは、圧縮成形またはラム押出された棒原料またはブロックとして市販されている。市販されている例としては、Hoechstから市販のGURシリーズがある。上記の好ましい範囲内の分子量を有する、数多くの等級が市販されている。
【0031】
架橋
本発明の様々実施態様で、架橋した重合体状バルク材料は、一連の加熱、変形、冷却、および機械加工工程により、さらに加工される。重合体状バルク材料は、様々な化学的および放射線方法により架橋させることができる。
【0032】
様々な実施態様で、化学的架橋は、重合体状材料を架橋性薬品と組み合わせ、混合物を、架橋を起こすのに十分な温度にさらすことにより、達成される。様々な実施態様で、化学的架橋は、架橋性薬品を含む重合体状材料を成形することにより、達成される。成形温度は、重合体が成形される温度である。様々な実施態様で、成形温度は重合体の融解温度以上である。
【0033】
架橋性薬品が成形温度で長い半減期を有する場合、架橋性薬品はゆっくり分解し、生じたフリーラジカルが重合体中に拡散し、成形温度で均質な架橋網目を形成することができる。従って、成形温度も、重合体を流動させ、架橋性薬品を分布または拡散させ、生じたフリーラジカルが均質な網目を形成するのに十分に高いことが好ましい。UHMWPEには、好ましい成形温度は約130℃〜220℃で、成形時間は約1〜3時間である。非限定的な実施態様では、成形温度および時間はそれぞれ170℃および2時間である。
【0034】
架橋性薬品は、成形温度で分解し、重合体と反応して架橋した網目を形成する、反応性の高い中間体、例えばフリーラジカル、を形成するすべての化学物質でよい。フリーラジカルを発生する化学物質の例としては、過酸化物、過エステル、アゾ化合物、ジスルフィド、ジメタクリレート、テトラゼン、およびジビニルベンゼンがある。アゾ化合物の例は、アゾビス−イソブチロニトリル、およびジメチルアゾジ−イソブチレートである。過エステルの例は、t−ブチルペルアセテートおよびt−ブチルペルベンゾエートである。
【0035】
好ましくは、重合体は、有機過酸化物で処理することにより、架橋させる。好適な過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(Lupersol 130、Atochem Inc.、フィラデルフィア、PA)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、t−ブチルα−クミルペルオキシド、ジ−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−第3級ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブタン、および2,2−ジ−(t−アミルペルオキシ)プロパンがある。好ましい過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンである。好ましい過酸化物は、半減期が2分間〜1時間であり、より好ましくは、半減期は成形温度で5分間〜50分間である。
【0036】
一般的に、0.2〜5.0重量%の過酸化物を使用し、より好ましくは過酸化物の範囲は0.5〜3.0重量%、最も好ましくは、0.6〜2重量%である。
【0037】
過酸化物は、不活性溶剤に溶解させてから、重合体粉末に加えることができる。不活性溶剤は、好ましくは重合体が成形される前に蒸発する。そのような不活性溶剤の例はアルコールおよびアセトンである。
【0038】
便宜上、重合体と架橋性薬品、例えば過酸化物、との間の反応は、一般的に成形圧で行うことができる。一般的に、反応物は、成形温度で1〜3時間、より好ましくは約2時間、温置する。
【0039】
反応混合物は、好ましくは徐々に加熱して成形温度を達成する。温置時間の後、架橋した重合体は、好ましくは室温に徐々に冷却させる。例えば、重合体は、室温で放置し、自然に冷却させる。徐々に冷却することにより、安定した結晶構造が形成される。
【0040】
重合体を過酸化物で架橋させるための反応パラメータ、および過酸化物の選択は、当業者が決定することができる。例えば、ポリオレフィンとの反応には多種多様な過酸化物があり、それらの相対的な効率の研究が報告されている。分解速度の差は、恐らく、意図する用途に特定の過酸化物を選択する上で、主要なファクターであろう。
【0041】
UHMWPEの過酸化物架橋も報告されている。UHMWPEは、溶融物中、180℃で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3で架橋させることができる。
【0042】
様々な実施態様で、重合体状バルク材料を照射に露出することにより、架橋させる。重合体を架橋させるための照射の例としては、電子線、X線、およびガンマ線照射があるが、これらに限定するものではない。様々な実施態様で、ガンマ線照射が、放射線がバルク材料に容易に透過するので、好ましい。電子線を使用してバルク材料を照射することもできる。e−線放射では、透過深度は、この分野で良く知られているように、電子線のエネルギーによって異なる。
【0043】
ガンマ(γ)線照射には、重合体状バルク材料を固体状態で線量約0.01〜100Mrad(0.1〜1000kGy)、好ましくは0.01〜10Mradで、この分野で公知の方法、例えば同位元素、例えば60Co、から放出されるガンマ線に露出、を使用して照射する。様々な実施態様で、ガンマ線照射は、線量0.01〜6、好ましくは約1.5〜6Mradで行う。非限定的な実施態様では、照射は線量約5Mradまでである。
【0044】
重合体状バルク材料の照射は、通常、不活性雰囲気または真空中で行う。例えば、重合体状バルク材料を、照射工程の際に酸素不透過性包装物中に包装することができる。不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、およびヘリウムも使用できる。真空を使用する場合、包装された材料を、不活性ガスによる1サイクル以上のフラッシングにかけ、真空を作用させて酸素を包装物から除去する。包装材料の例としては、熱密封真空包装用に市販されている金属ホイル小袋、例えばアルミニウムまたはMylar(登録商標)被覆包装ホイル、がある。重合体状バルク材料を不活性雰囲気中で照射することにより、照射の際に起こり得る酸化の影響および付随する鎖切断反応が軽減される。照射中に存在する雰囲気中にある酸素により引き起こされる酸化は、一般的には重合体状材料の表面に限定される。一般的に、低レベルの表面酸化は、酸化された表面をその後に続く機械加工の際に除去できるので、許容される。
【0045】
照射、例えばγ線照射は、重合体状材料に、好適な照射装置を有する特別な設備で行うことができる。照射を、他の加熱、圧縮、冷却、および機械加工操作を行う場所以外で行う場合、他の操作を行う場所へ輸送する際、照射したバルク材料を酸素不透過性包装物中に入れておくのが好都合である。
【0046】
材料のバルク形態
架橋した重合体は、軸方向、および軸方向を横切る、または軸方向に対して直角な方向で特徴付けられるバルク形態で与えられる。その後に続く加工工程で、変形圧を架橋したバルク材料に作用させ、横方向で寸法を縮小する。
【0047】
軸方向は、以下にさらに記載するように、高い引張強度が発生する方向でもある。この態様では、バルク材料の軸方向は、その軸方向で高い引張強度の発生を引き起こす変形力の作用に対して直角の方向である。このようにして、軸方向に対して直角に変形圧または力を作用させることにより、横方向よりも軸方向における、より高い引張強度により特徴付けられる異方性材料が得られる。
【0048】
バルク材料の軸方向は、移植物の支持部品、例えば寛骨臼カップ、を機械加工する好ましい方向も限定する。すなわち、支持部品は、好ましくは、処理されたバルク重合体から、高引張強度軸が生体内で移植物の支持部品の、負荷を支える軸または方向に対応する向きで製造または機械加工される。
【0049】
代表的な例では、バルク材料は、円形断面を有するロッドまたはシリンダーの形態にある。軸方向は、シリンダーの主軸に対して平行であり、横方向は、軸方向に対して直角にある。つまり、軸方向の存在が、本願で「横」と呼ばれる直角方向を限定する。バルク材料の断面が、シリンダーの場合のように等方性である場合、横方向は、「半径方向」と呼び、横軸は半径方向軸と呼ぶことができる。バルク材料の主軸は、縦軸とも呼ぶことができる。本明細書で使用するように、縦軸は軸方向に対して平行である。
【0050】
ロッドまたはシリンダーの非限定的な場合、バルク材料の軸方向または縦軸に対して直角の断面は円形である。軸方向により特徴付けられる、他の直角断面を有する他のバルク材料も使用できる。非限定的な例では、軸方向に対して直角の正方形断面を有する正方形シリンダーを形成することができる。軸方向により特徴付けられる他のバルク材料は、軸方向に対して直角の、長方形、多角形、星形、丸い突出部がある、および他の断面を有することができる。
【0051】
様々な実施態様で、バルク重合体状材料の軸方向は、直角または半径方向と比較して、伸長されている。例えば、UHMWPEの場合、市販のバルク材料は、直径約3インチ、長さ14インチのシリンダーである。この長さは軸方向に対応し、直径は半径方向に対応する。以下に記載するように、移植物用の支持部品は、軸方向で切断したビレットから機械加工するのが好ましい。製造効率から、本発明の方法により処理した単一のバルク材料から複数の支持部品を製造するのが好都合である。この理由から、バルク材料は、通常、軸方向に伸びているべきであり、これによって、複数のビレットをこの材料から切断し、支持部品のその後の機械加工に使用することができる。
【0052】
上記のように、軸方向により特徴付けられるバルク材料は、軸方向に対して直角の様々な断面積を有する材料として、さらに特徴付けられる。様々な実施態様で、軸方向に対して直角である断面積の寸法は、バルク材料の最初から最後まで、または最上部から底部まで、軸方向に沿って多かれ少なかれ一定である。他の様々な実施態様で、バルク材料は、バルク材料の長さまたは軸方向に沿って変化する断面積を備えることができる。バルク材料の断面積が、バルク材料の軸方向に沿って一定である場合、以下に記載するように加えられる圧縮力は、一般的に、軸方向に対して直角の方向でバルク材料に作用する。断面積がバルク材料の軸方向に沿って変化する場合、バルク材料に加えられる圧縮力は、バルク材料の幾何学的構造のために、軸方向における成分を有することができる。しかし、すべての場合で、圧縮力の少なくとも一成分が、軸方向に対して直角の方向でバルク材料に作用する。
【0053】
予備加熱
その後の処理を行う前に、架橋した重合体を圧縮変形可能な温度に加熱する。圧縮変形可能な温度は、重合体状バルク材料が軟化し、圧縮源の作用により流動し、その圧縮力が作用する方向で寸法が変化する温度である。UHMWPEおよび他の重合体状材料に関して、圧縮変形可能な温度は、具体的には、ほぼ融点−50℃〜融点+80℃である。
【0054】
様々な実施態様で、圧縮変形可能な温度は、重合体状材料の融点未満である。圧縮変形可能な温度の例としては、融点〜融点より10℃低い、融点〜融点より20℃低い、融点〜融点より30℃低い、融点〜融点より40℃低い温度がある。UHMWPEには、UHMWPEの融点が約136℃〜139℃であるので、圧縮変形可能な温度は80℃を超える、または約86℃〜約136℃である。様々な実施態様で、UHMWPEの圧縮変形可能な温度は、約90℃〜135℃好ましくは約100℃〜130℃である。好ましい温度は125〜135℃、または130℃±5℃である。
【0055】
様々な実施態様で、架橋した材料は、その重合体の融点より高い圧縮変形可能な温度に加熱する。UHMWPEおよび他の重合体状材料に関して、そのような圧縮変形可能な温度は、融点のすぐ上の温度〜融点より約80℃高い温度である。例えば、UHMWPEは、温度160℃〜220℃または180℃〜200℃に加熱することができる。
【0056】
様々な実施態様で、バルク重合体状材料を、融点に近いが、融点以下の圧縮変形温度に加熱するのが好ましい。様々な実施態様で、圧縮変形可能な温度は、融点と、融点より20℃低い温度との間、または融点と、融点より10℃低い温度との間である。
【0057】
架橋したバルク材料は、図に示す変形チャンバー中で圧縮変形可能な温度に加熱するか、または加熱炉中で圧縮変形可能な温度に予備加熱することができる。様々な実施態様で、バルク材料は、融点のすぐ下の温度、例えば融点−5℃または融点−10℃、に加熱し、加熱された変形チャンバー中に入れる。変形チャンバーは、好ましくは圧縮変形可能な温度を維持する。所望により、変形チャンバーは、一定温度を維持するように加熱するか、またはサーモスタット制御することができる。あるいは、変形チャンバーは、それ自体を加熱しないが、以下に説明する絞りダイを通して押出する際に、バルク材料を圧縮変形可能な温度に維持するように、十分な絶縁特性を有する。様々な実施態様で、変形チャンバーの温度は、融点より数度低く保持し、融解を避ける。
【0058】
変形
架橋したバルク材料が圧縮変形可能な温度にある時、変形圧力をバルク材料に、軸方向に対して直角方向で作用させる。直角方向の力をかけることにより、加熱されたバルク材料の材料が流動する。その結果、力が加えられる横方向におけるバルク材料の寸法が、本来の寸法と比較して、減少する。上記のように、圧縮力は、力の少なくとも一成分がバルク材料の軸方向に対して直角になるように作用させる。円筒形のロッドおよびバルク材料の軸方向に沿って一定の断面を有する他のバルク材料に関して、圧縮力は、軸方向に対して直角に作用させる。
【0059】
軸方向に対して直角の方向で圧縮力を作用させるための、どのような好適な方法でも使用できる。非限定的な例としては、ローラー、クランプ、および同等の手段がある。
【0060】
押出
様々な実施態様で、変形力は、絞りダイを通してバルク材料を押し出すことにより、バルク材料の軸方向に対して直角の方向で作用させる。押出の際に軸方向に対して直角の方向でバルク材料に加えられる圧力により、バルク材料の寸法が、バルク材料の本来の寸法と比較して減少する。つまり、押出後のバルク材料の直径または他の横方向寸法は、押出前の寸法より小さい。
【0061】
バルク材料の横方向における相対的な寸法低下は、本来の寸法d1と減少した寸法d2との比として表すことができる。圧縮力をかけることにより寸法を縮小する方法に応じて、比d1/d2の数値を、延伸比または直径圧縮と呼ぶことができる。押出に関しては、延伸比が一般的であり、他に指示がない限り、本明細書では、全ての幾何学的構造に関して、用語延伸比を使用する。
【0062】
無論、変形圧力または力が作用する横方向(軸方向に対して直角の方向)は、それ自体、縦軸に対して直角に引くことができる2つの軸を含む。様々な実施態様で、バルク材料は、2本の横軸に沿って異なった量により変形させることができ、延伸比は両方の軸に対して規定することができる。横方向の向きは任意であり、解析に必要であれば、作用する力の幾何学的構造を簡素化するために、軸を選択することができる。バルク材料の断面が等方性である場合、全ての横方向で等しい変形力を作用させることができる。この非限定的な場合、寸法d2は、押し出された材料の半径または直径に対応し、延伸比は、d1をd2で割ることにより定義される分数である。
【0063】
様々な実施態様で、この延伸比は1.1以上で、約3未満である。様々な実施態様で、この延伸比は1.2以上であり、好ましくは約1.2〜1.8である。非限定的な例では、この延伸比は約1.5である。高レベルの縮小では、導入されるひずみが大きすぎ、架橋した重合体状材料の特性が低下する。従って、様々な実施態様で、延伸比は2.5以下、好ましくは約2.0以下である。好ましい実施態様では、圧縮力を、縦軸に対して横方向でバルク材料の周りに多かれ少なかれ等方的に作用させる。従って、寸法縮小は、通常、全ての横方向に作用する。例えば、円形断面は丸いままであるが、直径が減少するのに対し、多角形断面、例えば正方形または長方形、は、全ての辺が縮小する。
【0064】
絞りダイを通す押出の幾何学的構造を図1および2に図式的に示す。絞りダイ6を変形チャンバー2と冷却チャンバー4との間に配置する。図に示すように、絞りダイ6は、押し出されるロッドの直径または寸法を、本来の寸法d1から押し出された寸法d2に縮小する。架橋した、加熱されたバルク材料が変形チャンバーから絞りダイ6を通る時に、材料は、ダイ壁5を通過し、冷却チャンバー4の直径d2を有する締め付け部10に至る。
【0065】
絞りダイの様々な幾何学的構造を、図2に非限定的な形態で例示する。図2a〜2eは、変形チャンバー壁20および冷却チャンバー壁10の相対的な形状を示す。ダイ壁5は、冷却変形チャンバーを冷却チャンバーに接続していることが分かる。図2aでは、変形チャンバー2および冷却チャンバー4の両方の断面が円形であり、寸法d1およびd2がそれぞれの直径に対応する。図2bでは、変形チャンバーが正方形または長方形であり、対角線に沿って、または辺に沿って任意に取ることができる寸法d1により特徴付けられる。図2bでは、冷却チャンバー4も長方形であるが、より小さい寸法d2を有する。図2c〜2eは、非限定的な例として、円形、正方形、および三角形変形の他の組合せおよびダイ壁5を有する絞りダイ6により接続された冷却チャンバーを例示する。
【0066】
上記のように、変形チャンバー2中のバルク材料は、圧縮変形可能な温度に保持される。そのような温度では、材料は、材料に作用する圧力に応答して流動することができる。圧縮変形可能な温度が融点未満である場合、材料は、絞りダイ6を通して固体状態流動する。ラムによりバーの末端に加えられる圧力または力は、ダイにより圧縮力に変換され、その圧縮力が、バルク材料の寸法を横方向で減少させる。便宜上、押し出すべきバルク材料の直径は、図1に示す変形チャンバーの直径または寸法d1に比較的近い。
【0067】
冷却
様々な実施態様で、軸方向により特徴付けられるバルク形態にある押し出されたUHMWPEロッドまたは他の架橋した重合体状材料は、冷却されてから、さらに加工される。あるいは、押し出されたバルク材料は、以下に説明する応力除去工程により、直接加工することができる。非限定的な実施態様では、軸方向により特徴付けられるロッドまたは他のバルク材料は、冷却チャンバーまたは他の手段で、押し出されたバルク材料の、架橋したバルク材料の本来の寸法より小さい寸法を維持するのに十分な圧力を維持しながら、固化温度に冷却される。押出または他の圧縮力実施態様では、寸法を本来の寸法未満に維持するのに必要な圧力は、例えば押出により重合体の形状を最初に変化させるのに必要な圧力より大きくても小さくてもよい。上記のように、バルク材料、例えば押し出されたUHMWPE、は、冷却チャンバーまたは類似の装置中で、圧力を除去してもバルク材料が最早寸法増加する傾向が無い温度に到達するのに十分な時間保持される。この温度は、固化温度と呼ばれ、UHMWPEでは、冷却壁中に(内壁表面から約1mmに)埋め込まれたサーモスタットの読みが約30℃である時、この固化温度に達する。固化温度は、相変化、例えば融解または凝固、の温度ではない。UHMWPEのような材料は、その材料が、前の処理工程で融点より上または下に加熱されたか、否かに関係なく、固化温度に冷却することができることにも注意する。
【0068】
様々な実施態様で、架橋した重合体状バルク材料の軸方向に対して直角の方向で、押出または他の変形力を作用させた後、バルク材料が固化温度に冷却されるまで、バルク材料に対する圧縮変形力を保持する。このような圧縮力の保持は、図1および2に例示する絞りダイ実施態様で都合良く与えられる。絞りダイ6を通して押し出した後、バルク材料を冷却チャンバー4中に保持する。これらの図面に示す実施態様では、冷却チャンバーは、押し出されたバルク材料を、バルク材料の本来の寸法d1より小さく、非限定的な例では押し出された寸法d2と便宜上ほぼ等しい寸法または直径d3に保持するようなサイズおよび形状を有する。架橋した材料には、温度が固化温度より高い時に、膨脹により本来の寸法に戻る傾向がある。バルク材料の膨脹力は、冷却チャンバーの壁により反作用を受け、その結果、バルク材料が冷却する間、圧縮力がバルク材料に対して維持される。様々な実施態様で、冷却チャンバーは、冷却手段、例えば冷却ジャケットまたはコイル、を備え、冷却チャンバーおよび押し出された重合体バルク材料から熱を除去する。
【0069】
例示のための図面に関して、押し出された重合体状バルク材料が冷却チャンバー中で冷却される時、材料がその本来の寸法d1に膨脹または回復する傾向が最早無くなる温度に到達する。固化温度と呼ばれるこの温度で、バルク材料は、冷却チャンバーの壁に最早圧力を加えず、取り出すことができる。好ましい実施態様では、チャンバーの壁中にあるサーモスタットにより測定して、材料を約30℃に冷却してから、取り出す。
【0070】
変形チャンバーおよび冷却チャンバーの温度は、従来の手段により、例えば各チャンバーの壁中に埋め込んだ熱電対により、測定することができる。例えば、冷却チャンバーの壁中にある熱電対が温度30℃を示した場合、UHMWPEから製造された、押し出されたバルク材料は、その材料がその膨脹傾向を失う固化温度より低いバルク温度に到達していることが分かっている。例えば冷却チャンバーの壁中に埋め込まれた熱電対で測定した温度は、冷却チャンバー中の材料のバルクまたは平衡温度を必ずしも代表してはいない。熱交換流体、例えば水または水とグリコールの混合物、を使用することにより、冷却チャンバー中に適切な冷却速度を与えることができ、バルク材料をチャンバーから取り出しても直径が大きく増加しないことが観察される温度に達するまでの時間、冷却チャンバー中にバルク材料を保持する。例えば、様々な実施態様で、例えば90°Fまたは30℃の固化温度に冷却することは、押し出されたバルク材料を冷却チャンバー中に、冷却チャンバーの壁中に埋め込まれた熱電対の読みが90°Fまたは30℃になるまで放置することを意味する。上記のように、そのような冷却期間で、バルク材料の内側のバルク平衡温度が測定された温度より高くても、バルク材料を取り出すのに十分であることが分かっている。
【0071】
様々な実施態様で、埋め込んだ熱電対の読みが90°Fまたは30℃になった後、さらにある時間、例えば10分間、押し出されたバルク材料を冷却チャンバー中に保持する。この追加冷却期間により、冷却された材料を冷却チャンバーから、より容易に取り出すことができる。一実施態様では、熱電対が30℃の読みに達した時、プログラム化できるロジックコントローラー(plc)がタイマーを始動させ、そのタイマーが、所望の時間が経過した時に信号を発する。その時点で、操作員は、圧縮変形した架橋した材料をチャンバーから取り出すか、またはラムまたは他の好適な装置を作動させ、取り出すことができる。
【0072】
犠牲パック
好ましい実施態様では、いわゆる犠牲パックを使用し、押出工程の効率を改良する。図3に関して、変形チャンバー2に対して後退した位置にラム30がある。図3bは、後退したラム30およびロッド状バルク材料50および犠牲パック40で満たされた変形チャンバー2を示す。犠牲パック40は、架橋したバルク材料50と同じものでよい架橋した重合体から製造される。この犠牲パックは、断面形状および断面積が、押し出すべきバルク材料50とほぼ等しいのが好ましい。図3cは、ラム30が犠牲パック40を押し、その犠牲パックがバルク材料50を押し、絞りダイ6を通してバルク材料50を冷却チャンバー4の中に移動させる様子を示している。図3dは、ラム30の行程の最後における状況を示している。バルク材料50が冷却チャンバー4の中に完全に入っているのに対し、犠牲パック30は絞りダイ6を占有している。図3eに示す様に、ラム30を後退させることにより、犠牲パック40は、バルク材料50のように冷却チャンバーの中で冷却されていないので、その本来の寸法に戻る傾向がある。その結果、犠牲パックは、図3fに示すように、絞りダイから出る傾向がある。次いで、犠牲パック40を変形チャンバーから取り出し、バルク材料50が上記のような好適な固化温度に冷却するサイクル時間の後、この製法を反復することができる。
【0073】
応力除去
押出および所望により行なう固化温度への冷却の後、バルク材料を応力除去するのが好ましい。一実施態様では、応力除去は、好ましくは重合体状バルク材料の融点より低い応力除去温度に加熱することにより行う。先行する行程における冷却が、変形力を維持しながら行われる場合、バルク材料は、応力除去により、膨脹し、その本来の寸法に近い寸法に戻る傾向がある。押し出されたロッドの非限定的な例では、バルク材料を加熱するにつれて、ロッドの直径d3が、本来のバルク材料のd1に近い直径に増加する傾向がある。様々な非限定的な実施態様で、バルク材料は、応力除去または応力除去加熱により、その本来の寸法の約90〜95%を維持することが観察されている。
【0074】
応力除去工程は、温度が高い程、より急速に、より効率的に進行する。従って、融点に近いが、それより低い応力除去温度、例えば融点〜融点−30または40℃、が好ましい。UHMWPEに関しては、好ましい応力除去温度は、約100℃〜約135℃、110℃〜約135℃、120℃〜135℃、好ましくは125℃〜約135℃である。
【0075】
応力除去は、応力除去工程を完了させる時間行う。様々な実施態様で、好適な時間は数分間〜数時間である。非限定的な例では、加熱炉または他の、応力除去温度を維持するのに好適な手段の中で、1〜12時間、2〜10時間、および2〜6時間である。応力除去は、真空、不活性雰囲気、または大気を排除するように設計された包装物の中で行うことができるが、大気中で行うのが好ましい。
【0076】
ある種の条件下では、押し出された、固化したバルク形態が、応力除去に関連する加熱または他の処理の際に、好ましい真っ直ぐまたは直線的な向きから、曲がる、または他の偏位する傾向を示す。この傾向に対処するために、一実施態様では、バルク材料を、応力除去工程の際にバルク材料を(軸方向で測定して)真っ直ぐに維持するように機能する機械的装置の中に保持する。非限定的な例では、バルク材料をV字形チャネルの中に配置し、バルク材料を真っ直ぐに維持する。例えば、幾つかのV字形チャネルが、互いに等間隔に配置され、同じ物理的構造の一部である。幾つかのV字形チャネルは、例えばその構造に等間隔で溶接することができる。押し出されたバーを、V字形チャネルの一番下にある組の中に配置し、次いで別の組のV字形チャネルを押し出されたバーの上に、バーの上に乗るように配置する。これらのチャネルは、応力除去の際に、バーを真っ直ぐに維持するのに役立つ。
【0077】
様々な実施態様で、架橋、加熱、圧縮、冷却および応力除去工程の製品は、架橋前の本来のバルク材料にほぼ等しい寸法を有するバルク材料である。バルク材料に対して行われる、これらの工程の結果、バルク材料は、軸方向における高い引張強度、低いが検出可能なレベルのフリーラジカル濃度、および高度の耐酸化性を示す。
【0078】
上記の方法は、工程の様々な段階で、架橋した重合体の寸法に関して追跡することができる。様々な実施態様で、本来の寸法または直径d1を有するバルク材料を、架橋させ、圧縮変形温度に加熱する。次いで、架橋した、加熱された材料を、d1より小さい寸法または直径d2に圧縮する。所望により行なう工程では、次いで材料を、d2と同じでよいが、いずれの場合も、本来の寸法または直径d1よりは小さい直径d3で冷却しながら保持する。冷却後、応力除去により、バルク材料は、d3より大きく、幾つかの実施態様では本来の寸法または直径d1とほぼ等しい直径d4に戻る。例えば、本来のバルク材料がUHMWPEの3”x14”シリンダーである場合、上記の工程から得られる処理されたプリフォームは、好ましくは、典型的には直径が約2.7〜3インチである。
【0079】
上記の処理工程に続いて、軸方向により特徴付けられるバルク材料を公知の方法により機械加工し、移植物用の支持部品を製造する。円筒形の処理されたバルク材料プリフォームの場合、先ずシリンダーの外側直径を丸く削り、酸化された外側層を全て除去し、その後の処理を行うための真っ直ぐで丸いシリンダーを形成する。好ましい実施態様では、次いでこのシリンダーを軸方向に沿ってビレットに切断し、各ビレットを好適な支持部品に機械加工する。好ましくは、支持部品を、このビレットから、支持部品の生体内負荷支持軸が、支持部品を機械加工するバルクプリフォームの軸方向に相当するように、機械加工する。このように機械加工することにより、プリフォームの軸方向で引張強度および他の物理的特性が増加するので有利である。
【0080】
例えば、関節置換骨用の支持部品では、支持表面における応力は典型的には多軸的であり、応力の大きさは、関節の適合性によってさらに異なる。股用途には、カップの極性軸は、押し出されたロッドの縦軸と整列し、軸方向に対応する。カップの壁は、赤道およびリムで、ロッドの縦軸に対して平行であり、偏心した、リムに負荷がかかる状況では、この方向における強度が高くなるので有利である。
【0081】
耐酸化性
本発明により製造されたUHMWPE、プリフォーム、および支持部品は、バルク材料中にフリーラジカルを検出することができるが、高レベルの耐酸化性を有することが分かっている。重合体状材料の耐酸化性を測定し、定量するには、この分野では、赤外線方法、例えばASTM F2102−01に基づく方法、により酸化指数を測定するのが一般的である。ASTM方法では、1650cm−1〜1850cm−1間のカルボニルピークの下にある酸化ピーク面積を積分する。次いで、酸化ピーク面積を、1330cm−1〜1396cm−1間のメタン伸縮の下にある積分面積を使用して規格化する。酸化指数は、酸化ピーク面積を規格化ピーク面積で割ることにより、計算する。規格化ピーク面積は、試料、等の厚さによる変動を説明する。これによって、酸化安定性を、促進エージングによる酸化指数の変化により表すことができる。あるいは、安定性は、露出開始時における酸化指数はゼロに近いので、一定露出後に得られる酸化の値として表すことができる。様々な実施態様で、本発明の架橋した重合体の酸化指数は、70℃で5気圧酸素に4日間露出した後、0.5未満変化する。好ましい実施態様では、5気圧酸素に4日間露出することにより、酸化指数は0.2以下の変化を示すか、または実質的に変化を示さない。非限定的な例では、酸化指数は、70℃で5気圧酸素に2週間露出した後、1.0以下、好ましくは約0.5以下の値に達する。好ましい実施態様では、酸化指数は、70℃で5気圧酸素に2または4週間露出した後、0.2以下、好ましくは0.1以下の値になる。特に好ましい実施態様では、試料は、2週間または4週間の露出中に赤外線スペクトルに酸化を実質的に示さない(すなわちカルボニル帯の発達がない)。これらの方法により製造されたUHMWPEの酸化安定性を解釈する際、酸化指数測定における背景ノイズまたは初期値が0.1または0.2のオーダーにある場合があり、これが、出発材料における背景ノイズまたは僅かな量の酸化を反映することがある、ということに注意すべきである。
【0082】
上記のような酸化安定性は、様々な実施態様で、検出可能なレベルのフリーラジカルが架橋した重合体状材料中に存在するにも関わらず、達成される。様々な実施態様で、フリーラジカル濃度は、約0.06x1015スピン/gのESR検出限界を超えており、ガンマ線滅菌処理し、その後の、フリーラジカル濃度を下げるための熱処理(滅菌後の)に全くかけていないUHMWPEにおける濃度よりも低い。様々な実施態様で、フリーラジカル濃度は、3x1015未満、好ましくは1.5x1015未満、より好ましくは1.0x1015スピン/g未満である。様々な実施態様で、本発明により、UHMWPEは融点未満でのみ処理するが、酸化安定性は、溶融処理したUHMWPEの酸化安定性に匹敵する。
【0083】
本発明は理論により制限すべきではないが、上記の変形処理されたUHMWPE中のフリーラジカルは、高度に安定化されており、酸化による劣化に対して本来耐性であろう。あるいは、またはそれに加えて、これらのフリーラジカルがバルク材料の結晶性区域中に捕獲されており、その結果、酸化過程に関与できないのであろう。材料の酸化安定性のため、様々な実施態様で、ガス透過性包装およびガスプラズマ滅菌を、押出処理された放射線UHMWPEに使用することが正当化される。これには、フリーラジカル濃度を増加させ、酸化安定性を下げる傾向があるガンマ線滅菌を回避する利点がある。
【0084】
様々な実施態様で、固体状態変形加工により、結晶および分子配向により特徴付けられる重合体が得られる。分子配向とは、重合体鎖が圧縮の方向に対して直角に向いていることを意味する。結晶配向とは、ポリエチレン中の結晶面、例えば200面および110面、が圧縮面に対して平行な方向に向いていることを意味する。このように、結晶面は配向している。配向の存在は、複屈折測定、赤外線スペクトル、およびX線回折により示すことができる。
【0085】
半径方向で圧縮された物体の圧縮面は、本発明により処理されたバルク材料の半径方向表面をとりかこみ、その表面に対して平行な表面と理解する。円筒形ロッドの非限定的な例では、軸方向沿った一連の円形断面が、半径方向表面およびその表面に対して直角の圧縮面を規定する。半径方向面周囲の圧縮に応答して、重合体鎖が、圧縮の方向に対して直角に配向する。これには、シリンダー中で、半径方向面に対して一般的に平行な分子配向を与える効果がある。この分子および結晶配向により、機械的特性が強化され、軸および横(または半径)方向に対する機械的特性の異方性が得られると考えられる。
【0086】
様々な実施態様で、少なくとも一つの方向で高レベルの引張強度を示す架橋したUHMWPEが得られる。有利なことに、支持材料の強度増加の利点を活かした支持部品および移植物が得られる。例えば、架橋したUHMWPEで、少なくとも50MPa、好ましくは少なくとも55MPa、より好ましくは少なくとも60MPaの破断点引張強度を達成することができる。様々な実施態様で、50〜100MPa、55〜100MPa、60〜100MPa、50〜90MPa、50〜80MPa、50〜70MPa、55〜90MPa、55〜80MPa、55〜70MPa、60〜90MPa、60〜80MPa、および60〜70MPaの破断点引張強度を有する材料が得られる。非限定的な実施態様では、本発明により製造されるUHMWPEの引張強度は、軸方向で約64MPaである。
【例】
【0087】
比較例
平衡状態成形したUHMWPE粒子状物質原料(Ticona, Inc., Bishop, TX)をアルゴン雰囲気中で包装し、線量25〜40kGyでガンマ線滅菌する。
【0088】
例1
放射線架橋し、変形処理したUHMWPEを、下記の工程を使用して製造する。
1.放射線架橋 寸法3”x14”の平衡状態成形したUHMWPEロッド(Ticona, Inc., Bishop, TX)をホイル張りした(foilized)袋の中に入れて真空包装し、公称線量50kGyでガンマ放射線架橋する。
2.予備加熱 変形処理の前に、ロッドをホイル張りした袋から取り出し、加熱炉中、133℃に4〜12時間加熱する。
3.固体状態静水圧押出 次いで、加熱したロッドを加熱炉から取り出し、プレスの保持チャンバー中に保持する。保持チャンバーの温度は130℃±5℃である。次いで、このバーを、架橋したUHMWPE製の犠牲パックを使用し、円形ダイを通して、直径方向の圧縮比1.5(直径3”から2”に縮小)で、冷却チャンバー中にラム押出する。
4.冷却および固化 冷却チャンバーは、押し出されたロッドが変形状態に維持されるようなサイズを有する。冷却チャンバーの壁は水で冷却されている。壁中(内側壁から約1mmに)埋め込まれた熱電対の読みが30℃になった時、所望により非限定的な例ではさらに10分間の冷却期間の後、固化したロッドを取り出す。所望により、温度が約30℃に達した後、第二バーをラム押出し、冷却したバーを冷却チャンバーから取り出す。
5.応力除去、アニーリング 次いで、変形したロッドを133±2℃で5時間加熱する。このアニーリングにより、材料中の寸法安定性も改良される。次いで、ロッドを室温に徐々に冷却する。押し出されたロッドは、応力除去工程の後、その初期直径の約90〜95%を維持している。
6.ガスプラズマ滅菌 冷却後、ライナーまたは他の支持材料を機械加工し、機械加工下部分を非照射的に滅菌する(例えばエチレンオキシドまたはガスプラズマ)。
【0089】
試料調製および配向
圧縮試験および促進エージングには、直角長方形プリズム形試料を評価する。これらの試料の寸法は、12.7mmx12.7mmx25.4mm(0.50inx0.50inx1.00in)である。これらの試料は、ロッド原料から、縦軸に対して平行に(軸方向)または直角(横方向)に機械加工する。
【0090】
引張試験には、ASTM−D638−02aに記載されているタイプIVおよびV規格に適合するダンベル形引張試料を試験する。試料は、厚さが3.2±0.1mmである。試料は、縦軸に対して平行または直角に向け、それぞれ軸方向および横方向を反映する。
【0091】
物理的および機械的特性
破断点引張強度は、ASTM−638−02aにより測定する。
【0092】
UHMWPE材料中のフリーラジカル濃度は、以前にJahan et al.、J. Biomedical Materials Research, 1991; Vol. 25, pp 1005-1017に記載されているように、ESR分光計(Bruker EMX)を使用して分析する。分光計は、9.8GHz(X帯)マイクロ波周波数および100kHz変調/検出周波数で操作し、高感度共振器キャビティを備えている。良好なスペクトル分解能および/または信号/ノイズ比を得るために、変調振幅を0.5〜5.0ガウス、マイクロ波電力を0.5〜2.0mWで変化させる。
【0093】
促進エージング
試料をASTM F2003−00により酸素5気圧中でエージングさせる。幾つかの試料はこの標準に従って2週間エージングさせ、他は4週間エージングさせる。エージングは、ステンレス鋼製圧力容器中で行う。試験試料は、試験軸が垂直になるように選択し、向きを決める。例えば、最上面および底面は試験軸に対して直角である。最上面には、後で識別するためのラベルを貼る。次いで、容器を酸素で満たし、5回掃気し、エージング環境の純粋性を確保する。プリズムを圧力容器中の平らな表面上に置き、各プリズムの底面は酸素に露出されないが、その外側表面のそれぞれがエージング期間を通して酸素に露出されるようにする。
【0094】
容器を室温(24±2℃)で加熱炉中に入れ、加熱炉を、70.0±0.1℃のエージング温度に速度0.1℃/分で加熱した。
【0095】
FTIR分析
材料を促進エージングの前後に、透過光におけるフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)(UMA-500顕微鏡を取り付けたExcaliburシリーズFTS3000、Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により評価した。FTIR輪郭作成(profiling)は、横方向に対して直角で行う。
【0096】
酸化指数の測定および計算は、ASTM F2102−01に基づいている。酸化ピーク面積を、1650〜1850cm−1のカルボニルピークの下で積分する。規格化ピーク面積は、1330〜1396cm−1のメチレン伸縮の下にある積分面積である。酸化指数は、酸化ピーク面積を規格化ピーク面積で割ることにより、計算する。
【0097】
結果
比較例および例1に関するデータを表に示す。
比較例 例1 例1軸方向 例1横方向
破断点引張強度 46.8±2.0 64.7±4.5 46.1±3.5
[MPa]
フリーラジカル 3.82x1015 0.22x1015
濃度、スピン/g
エージング前の 0.2 <0.1
酸化指数
(表面における)
エージング後の 1.2 <0.1
酸化指数
(表面における)
【0098】
本発明を、本発明を実行するのに最も有利であると考えられる実施態様を含む、様々な実施態様で上に説明したが、無論、本発明は開示された実施態様に制限されるものではない。明細書を読むことにより、当業者に考えられる変形および修正も、請求項に規定される本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】押出工程の幾何学的構造を例示する。
【図2】押出装置およびダイの様々な実施態様を示す。
【図3】押出工程の一実施態様を例示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向により特徴付けられるバルク材料の形態のガンマ線架橋したUHMWPEであって、前記軸方向における引張強度が50MPaを超える、ガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項2】
前記引張強度が55MPaを超える、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項3】
前記引張強度が60MPaを超える、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項4】
前記引張強度が50〜100MPaである、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項5】
前記引張強度が55〜90MPaである、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項6】
前記引張強度が60〜80MPaである、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項7】
フリーラジカル濃度が0.06×1015スピン/gを超える、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項8】
70℃で5気圧の酸素中に2日間露出した時、酸化指数が測定可能な増加を示さない、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項9】
70℃で5気圧の酸素中に4日間露出した時、酸化指数が測定可能な増加を示さない、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項10】
請求項1に記載のUHMWPEを含んでなる医療用移植物。
【請求項11】
請求項1に記載のUHMWPEから機械加工された寛骨臼カップ。
【請求項12】
フリーラジカル濃度が、0.06×1015スピン/gを超えて3×1015スピン/g未満であり、0.2以下の前記酸化指数の増加によって測定されるように、70℃で5気圧の酸素中における4週間の酸化に対して安定している、ガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項13】
前記酸化指数の増加が0.1以下である、請求項12に記載のガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項14】
酸素に対する露出中に、前記酸化指数の検出可能な増加がない、請求項12に記載のガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項15】
軸方向により特徴付けられるバルク材料の形態にある、請求項12に記載のガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項16】
前記UHMWPEが、前記軸方向で少なくとも50MPaの引張強度を有する、請求項15に記載のUHMWPE。
【請求項17】
前記UHMWPEが、前記軸方向で少なくとも60MPaの引張強度を有する、請求項15に記載のUHMWPE。
【請求項18】
直径約2インチ〜約4インチの円筒形ロッドの形態にある、請求項12に記載のUHMWPE。
【請求項19】
請求項12に記載のUHMWPEを含んでなる医療用移植物。
【請求項20】
請求項16に記載のUHMWPEを含んでなる医療用移植物。
【請求項21】
医療用移植物用の支持部品を製造する方法であって、前記部品を請求項12に記載のUHMWPEから機械加工することを含んでなる、方法。
【請求項22】
医療用移植物用の支持部品を製造する方法であって、前記部品を請求項14に記載のUHMWPEから機械加工することを含んでなる、方法。
【請求項23】
前記移植物が人工股関節である、請求項19に記載の医療用移植物。
【請求項24】
ガンマ線照射されたUHMWPEを固体状態変形加工する方法であって、前記UHMWPEをその融解転移未満の温度で押し出すことにより、前記UHMWPEを変形させることを含んでなる、方法。
【請求項25】
前記UHMWPEが、ガンマ線照射線量0.1〜10Mradで架橋されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記UHMWPEが、ガンマ線照射線量0.1〜5Mradで架橋されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
延伸比1.1〜3.0で押し出すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
延伸比1.2〜2.0で押し出すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
延伸比1.2〜1.8で押し出すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記押し出されたロッドを変形した状態に維持しながら、前記UHMWPEを、前記UHMWPEの固化温度未満に冷却することをさらに含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
医療用移植物における使用に好適な、UHMWPEから製造された支持部品の製造方法であって、
UHMWPEを放射線架橋させ、
前記架橋したUHMWPEを、80℃を超え、UHMWPEの融点未満の温度に予備加熱し、
前記UHMWPEを、1を超える延伸比で固体状態押出し、
前記押し出されたUHMWPEを固化温度に冷却し、
前記冷却されたUHMWPEを、100℃を超え、融点未満の温度でアニーリングし、
前記部品を前記アニーリングしたUHMWPEから機械加工すること
を含んでなる、方法。
【請求項32】
前記UHMWPEが、直径約2インチ〜約4インチのシリンダーの形態にある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記UHMWPEが、約3インチからの直径を有するシリンダーの形態にある、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記放射線架橋が線量0.1〜10Mradで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記放射線架橋が線量2〜10Mradで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記放射線架橋が線量5Mradで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記予備加熱が温度100℃〜130℃で行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記直径方向の圧縮が3.0未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記直径方向の圧縮が2.0未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記直径方向の圧縮が約1.5である、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
アニーリングが、90℃〜135℃における加熱を含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記部品を機械加工する前に、前記UHMWPEを滅菌することをさらに含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記滅菌が非照射型である、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
機械加工の後に前記部品を滅菌することをさらに含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
請求項31に記載の方法により製造される支持部品を含んでなる人工関節。
【請求項46】
請求項31に記載の方法により製造される支持部品を含んでなる移植物。
【請求項1】
軸方向により特徴付けられるバルク材料の形態のガンマ線架橋したUHMWPEであって、前記軸方向における引張強度が50MPaを超える、ガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項2】
前記引張強度が55MPaを超える、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項3】
前記引張強度が60MPaを超える、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項4】
前記引張強度が50〜100MPaである、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項5】
前記引張強度が55〜90MPaである、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項6】
前記引張強度が60〜80MPaである、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項7】
フリーラジカル濃度が0.06×1015スピン/gを超える、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項8】
70℃で5気圧の酸素中に2日間露出した時、酸化指数が測定可能な増加を示さない、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項9】
70℃で5気圧の酸素中に4日間露出した時、酸化指数が測定可能な増加を示さない、請求項1に記載のUHMWPE。
【請求項10】
請求項1に記載のUHMWPEを含んでなる医療用移植物。
【請求項11】
請求項1に記載のUHMWPEから機械加工された寛骨臼カップ。
【請求項12】
フリーラジカル濃度が、0.06×1015スピン/gを超えて3×1015スピン/g未満であり、0.2以下の前記酸化指数の増加によって測定されるように、70℃で5気圧の酸素中における4週間の酸化に対して安定している、ガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項13】
前記酸化指数の増加が0.1以下である、請求項12に記載のガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項14】
酸素に対する露出中に、前記酸化指数の検出可能な増加がない、請求項12に記載のガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項15】
軸方向により特徴付けられるバルク材料の形態にある、請求項12に記載のガンマ線架橋したUHMWPE。
【請求項16】
前記UHMWPEが、前記軸方向で少なくとも50MPaの引張強度を有する、請求項15に記載のUHMWPE。
【請求項17】
前記UHMWPEが、前記軸方向で少なくとも60MPaの引張強度を有する、請求項15に記載のUHMWPE。
【請求項18】
直径約2インチ〜約4インチの円筒形ロッドの形態にある、請求項12に記載のUHMWPE。
【請求項19】
請求項12に記載のUHMWPEを含んでなる医療用移植物。
【請求項20】
請求項16に記載のUHMWPEを含んでなる医療用移植物。
【請求項21】
医療用移植物用の支持部品を製造する方法であって、前記部品を請求項12に記載のUHMWPEから機械加工することを含んでなる、方法。
【請求項22】
医療用移植物用の支持部品を製造する方法であって、前記部品を請求項14に記載のUHMWPEから機械加工することを含んでなる、方法。
【請求項23】
前記移植物が人工股関節である、請求項19に記載の医療用移植物。
【請求項24】
ガンマ線照射されたUHMWPEを固体状態変形加工する方法であって、前記UHMWPEをその融解転移未満の温度で押し出すことにより、前記UHMWPEを変形させることを含んでなる、方法。
【請求項25】
前記UHMWPEが、ガンマ線照射線量0.1〜10Mradで架橋されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記UHMWPEが、ガンマ線照射線量0.1〜5Mradで架橋されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
延伸比1.1〜3.0で押し出すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
延伸比1.2〜2.0で押し出すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
延伸比1.2〜1.8で押し出すことを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記押し出されたロッドを変形した状態に維持しながら、前記UHMWPEを、前記UHMWPEの固化温度未満に冷却することをさらに含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
医療用移植物における使用に好適な、UHMWPEから製造された支持部品の製造方法であって、
UHMWPEを放射線架橋させ、
前記架橋したUHMWPEを、80℃を超え、UHMWPEの融点未満の温度に予備加熱し、
前記UHMWPEを、1を超える延伸比で固体状態押出し、
前記押し出されたUHMWPEを固化温度に冷却し、
前記冷却されたUHMWPEを、100℃を超え、融点未満の温度でアニーリングし、
前記部品を前記アニーリングしたUHMWPEから機械加工すること
を含んでなる、方法。
【請求項32】
前記UHMWPEが、直径約2インチ〜約4インチのシリンダーの形態にある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記UHMWPEが、約3インチからの直径を有するシリンダーの形態にある、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記放射線架橋が線量0.1〜10Mradで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記放射線架橋が線量2〜10Mradで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記放射線架橋が線量5Mradで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記予備加熱が温度100℃〜130℃で行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記直径方向の圧縮が3.0未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記直径方向の圧縮が2.0未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記直径方向の圧縮が約1.5である、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
アニーリングが、90℃〜135℃における加熱を含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記部品を機械加工する前に、前記UHMWPEを滅菌することをさらに含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記滅菌が非照射型である、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
機械加工の後に前記部品を滅菌することをさらに含んでなる、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
請求項31に記載の方法により製造される支持部品を含んでなる人工関節。
【請求項46】
請求項31に記載の方法により製造される支持部品を含んでなる移植物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【公表番号】特表2008−515671(P2008−515671A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535793(P2007−535793)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035907
【国際公開番号】WO2006/041969
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504378526)バイオメット、マニュファクチュアリング、コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOMET MANUFACTURING CORP.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035907
【国際公開番号】WO2006/041969
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504378526)バイオメット、マニュファクチュアリング、コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOMET MANUFACTURING CORP.
【Fターム(参考)】
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