説明

架橋ゴム発泡シートの製造方法

【課題】 本発明は、柔軟でありながら長期間に亘って優れたシール性を維持することができる架橋ゴム発泡シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の架橋ゴム発泡シートの製造方法は、ゴムポリマーを含有する架橋ゴム独立気泡発泡シートを上記ゴムポリマーのガラス転移温度以下に冷却した後、上記架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させ独立気泡を破泡させて連続気泡とすることを特徴とし、得られる架橋ゴム発泡シートは、その独立気泡の一部又は全部が連続気泡化されてなり、優れた柔軟性を有し且つ圧縮永久歪みが小さいので、車輛や電子機器などを構成している部材(被シール部材)間に形成された隙間を埋めるためのシール材として好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴム発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気、エレクトロニクス、車輌などに用いられるシール材として、発泡体が広く使用されている。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などからなる熱可塑性樹脂発泡体や、合成ゴム又は天然ゴムからなるゴム発泡体などの発泡体が挙げられる。
【0003】
車輛や電子機器に用いられるシール材では、間隙を埋めるだけでなく、衝撃を緩和し或いは塵の侵入を防ぐことも求められている。発泡体からなるシール材は圧縮された状態で取り付けられるため、発泡体の柔軟性が低いと、発泡体が圧縮された形状から回復するときの反発力により、被シール部材を変形させ、被シール部分と発泡体との間に隙間が生じるといった問題があった。
【0004】
そこで、連続気泡構造を持つ圧縮柔軟性に優れたウレタン発泡体が提案されていたが、連続気泡構造を持つ発泡体は、圧縮柔軟性に優れているものの、気泡同士が連通しているので塵の侵入を完全に防ぐことが難しいといった問題点を有していた。
【0005】
又、特許文献1には、独立気泡と連続気泡との双方を有する発泡シートが提案され、発泡シートに存在する連続気泡が柔軟性を与え、独立気泡が防塵性を与えると記載されている。
【0006】
しかしながら、シール材として用いた場合、独立気泡と連続気泡との双方を有する発泡シートは、時間の経過に伴って発泡シートの反発応力が弱まりシール性が低下するといった問題があった。
【特許文献1】特開平09−111899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、柔軟でありながら長期間に亘って優れたシール性を維持することができる架橋ゴム発泡シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の架橋ゴム発泡シートの製造方法は、ゴムポリマーを含有する架橋ゴム独立気泡発泡シートを上記ゴムポリマーのガラス転移温度以下に冷却した後、上記架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させ独立気泡を破泡させて連続気泡とすることを特徴とする。
【0009】
架橋ゴム独立気泡発泡シートを構成しているゴムポリマーとしては、室温でゴム弾性(rubber elasticity)を有するものであれば、特に限定されず、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0010】
上記合成ゴムとしては、例えば、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムなどが挙げられ、架橋ゴム発泡シートが柔軟性や耐久性に優れているので、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれた少なくとも一種の合成ゴムが好ましく、ニトリル−ブタジエンゴムがより好ましい。なお、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)は、ニトリルゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムと呼ばれている合成ゴムも包含する。スチレン−ブタジエンゴム(SBR)は、ブタジエンとスチレンの共重合ゴムを意味し、スチロールゴムと呼ばれているゴムも包含する。
【0011】
又、上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0012】
架橋ゴム独立気泡発泡シートは、この架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させて連続気泡を形成する前に独立気泡を有していればよく、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡率は、80〜100%が好ましい。なお、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡率及び連続気泡率は下記の要領で測定されたものをいう。
【0013】
なお、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡率の測定方法としては、先ず、架橋ゴム独立気泡発泡シートから一辺5cmの平面正方形状で且つ一定厚みの試験片を切り出す。続いて、上記試験片の重量W1を測定し、更に、試験片の厚みを測定して試験片の見掛け体積V1を算出する。
【0014】
次に、上記のようにして得られた値を下記式(1)に代入し、気泡の占める体積V2を算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度はρg/cm3とする。
気泡の占める体積V2=V1−W1/ρ ・・・(1)
【0015】
続いて、上記試験片を23℃の蒸留水中に、試験片の上面から水面までの距離が100mmになるように沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。しかる後、試験片を蒸留水中から取り出して、試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の重量W2を測定し、下記式(2)に基づいて連続気泡率F1を算出して、この連続気泡率F1から独立気泡率F2を求める。
連続気泡率F1(%)=100×(W2−W1)/V2 ・・・(2)
独立気泡率F2(%)=100−F1 ・・・(3)
【0016】
上記架橋ゴム独立気泡発泡シートの製造方法について説明する。架橋ゴム独立気泡発泡シートの製造方法は、特に限定されず、例えば、(1)ゴムポリマー、発泡剤及び架橋剤を含有する発泡性樹脂組成物をバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、得られた発泡性シートに電離性放射線による架橋処理を施した後、この発泡性シートを架橋剤が分解しない温度にて加熱し発泡させた上で架橋剤が分解する温度に加熱して架橋し架橋ゴム独立気泡発泡シートを製造する方法、(2)ゴムポリマー及び発泡剤を含有する発泡性樹脂組成物をバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、得られた発泡性シートに電離性放射線による架橋処理を施した後、この発泡性シートを加熱し発泡させて架橋ゴム独立気泡発泡シートを製造する方法、(3)ゴムポリマー、発泡剤及び架橋剤を添加してなる発泡性樹脂組成物をバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、得られた発泡性シートを加熱して架橋しつつ発泡させて独立気泡を有する架橋ゴム独立気泡発泡シートを製造する方法などが挙げられる。なかでも、電離性放射線による架橋は発泡性シートを均一に架橋することができるので、均一に変形応力を加えることができる架橋ゴム独立気泡発泡シートが得られる。従って、上記(1)(2)の方法が好ましい。
【0017】
電離性放射線としては、特に限定されず、例えば、α線、β線、γ線、電子線などが挙げられ、電子線が好ましい。そして、電離性放射線の照射量は、ゴムポリマーの特性によって適宜調整すればよいが、0.5〜10Mradが好ましく、0.7〜5.0Mradがより好ましい。
【0018】
架橋剤としては、ゴムポリマーの架橋に用いられている公知の有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物などが挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
【0019】
上記硫黄化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
【0020】
架橋剤の配合量は、ゴムポリマー100重量部に対して1〜20重量部が好ましい。
【0021】
発泡剤としては、例えば、加熱によって分解してガスを発生させる熱分解型発泡剤が挙げられる。熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。熱分解型発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱分解型発泡剤の配合量は、ゴムポリマー100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0022】
発泡性樹脂組成物には、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、軟化剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、防カビ剤、発泡助剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤などが含有されていてもよい。
【0023】
上記加硫促進剤としては、例えば、アルデヒドアンモニア化合物、アルデヒドアミン化合物、グアニジン化合物やチアゾール化合物、スルフェンアミド化合物、チューラム化合物、ジチオカルバミン酸化合物、キサントゲン酸化合物、チオウレア化合物などの加硫促進剤が挙げられる。
【0024】
又、上記加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸などの有機酸、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−フェニル−β−ナフチルアミンなどのアミン化合物、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどのアクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0025】
更に、上記軟化剤としては、例えば、塩素化パラフィンなどのパラフィン、ワックス、アマニ油などの天然オイル、石油由来の合成オイル、低分子量ポリマー、フタル酸エステル、リン酸エステル、ステアリン酸及びそのエステル、アルキルスルホン酸エステルが挙げられる。
【0026】
又、上記充填材としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、フュームドシリカ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、カーボンブラック、アルミニウム粉が挙げられる。
【0027】
上記架橋ゴム独立気泡発泡シートをその厚み方向に深さが厚みの50%となる位置(以下「中心位置」という)が上記架橋ゴム独立気泡発泡シートを構成しているゴムポリマーのガラス転移温度以下となるまで冷却する。なお、架橋ゴム独立気泡発泡シートの厚み方向とは、発泡シートの表面に対して垂直方向をいう。架橋ゴム独立気泡発泡シートを冷却する方法としては、特に限定されず、例えば、架橋ゴム独立気泡発泡シートを構成しているゴムポリマーのガラス転移温度以下に冷却された冷却液中に架橋ゴム独立気泡発泡シートを通過させる方法が挙げられる。
【0028】
上記冷却液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールや、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテルが挙げられる。
【0029】
なお、ゴムポリマーのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて測定したtanδのピーク値での温度である。tanδとは、せん断モードで動的粘弾性を測定したときの損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)との比(G”/ G’)である。tanδの測定条件は、−100℃〜30℃、昇温速度2℃/分、測定周波数1Hz、測定試料の歪み1%とする。動的粘弾性測定装置としては、例えば、レオメトリックス社から商品名「ARES 2KFRTNI」で市販されている装置が挙げられる。
【0030】
そして、架橋ゴム独立気泡発泡シートを上記冷却状態を維持したまま変形させて独立気泡を破泡させ連続気泡として架橋ゴム発泡シートを製造する。架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させる方法としては、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡を圧壊して破泡させ、独立気泡の気泡壁に貫通孔を形成させることができればよい。例えば、所定間隔を存して配設され且つ対向面における回転方向が同一で等速にて回転している二本のロール間に架橋ゴム独立気泡発泡シートを供給し、二本のロールで架橋ゴム独立気泡発泡シートをその厚み方向に圧縮、変形させて架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡を破泡させて連続気泡化する方法、架橋ゴム独立気泡発泡シートを二枚の板の間に配設し、この二枚の板を互いに近接する方向に移動させることによって架橋ゴム独立気泡発泡シートをその厚み方向に圧縮、変形させて架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡を破泡させて連続気泡化する方法などが挙げられる。
【0031】
得られた架橋ゴム発泡シートのゲル分率は、70重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95〜100重量%が特に好ましい。ゲル分率が低いと、架橋ゴム発泡シートの形状回復力が低下することがある。
【0032】
なお、架橋ゴム発泡シートのゲル分率は、架橋ゴム発泡シート100mgを金属メッシュ製のかごに入れ、70℃のエチルメチルケトン25ミリリットル中に22時間に亘って浸漬した後、金属メッシュ内の残った残留物の乾燥重量(mg)を測定して下記式に基づいて算出する。
ゲル分率(重量%)=100×残留物の乾燥重量(mg)/100
【0033】
架橋ゴム発泡シートの連続気泡率は、30〜90%が好ましい。架橋ゴム発泡シートの連続気泡率が低いと、架橋ゴム発泡シートの柔軟性が低下し、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際にシール性能が低下することがある。架橋ゴム発泡シートの連続気泡率が高いと、架橋ゴム発泡シートに形成した穿孔によって、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際にかえってシール性能が低下することがある。なお、架橋ゴム発泡シートの連続気泡率は、架橋ゴム独立気泡発泡シートの連続気泡率の測定要領と同一であるので説明を省略する。
【0034】
架橋ゴム発泡シートのJIS K7222に準拠して測定された見掛け密度は、40〜300kg/m3が好ましい。見掛け密度が低いと、架橋ゴム発泡シートが脆くなり機械的強度が低下し、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際に防塵性が低下することがある。見掛け密度が高いと、架橋ゴム発泡シートが硬くなり、圧縮時の柔軟性が低下することがある。従って、架橋ゴム発泡シートを圧縮した時の反発力が大きくなり、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際に被シール部材を変形させることがある。その結果、シール性が低下することがある。
【0035】
又、架橋ゴム発泡シートにおける24時間経過後に測定された圧縮永久歪みは、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。圧縮永久歪みが高いと、圧縮された架橋ゴム発泡シートが回復しにくくなる。従って、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた場合に時間の経過と共にシール性能が低下することがある。
【0036】
更に、架橋ゴム発泡シートにおけるJIS K6767に準拠して測定された50%圧縮応力は、100kPa以下が好ましく、10〜70kPaがより好ましい。50%圧縮応力が高いと、架橋ゴム発泡シートが硬くなり圧縮時の柔軟性が低下することがある。従って、架橋ゴム発泡シートを圧縮した時の反発力が大きくなり、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際に被シール部材を変形させることがある。その結果、架橋ゴム発泡シートのシール性能が低下することがある。
【0037】
架橋ゴム発泡シートの発泡倍率は3倍以上が好ましく、5〜10倍がより好ましい。発泡倍率が低いと、架橋ゴム発泡シートが硬くなり圧縮時の柔軟性が低下し、架橋ゴム発泡シートを圧縮した時の反発力が大きくなることがある。従って、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際に被シール部材を変形させることがある。その結果、シール性能が低下することがある。発泡倍率が高いと、架橋ゴム発泡シートが脆くなり機械的強度が低下することがある。したがって、架橋ゴム発泡シートをシール材として用いた際に防塵性が低下することがある。なお、本明細書における架橋ゴム発泡シートの発泡倍率は、架橋ゴム発泡シートを構成しているゴムポリマーの密度をJIS K7222に準拠して測定された架橋ゴム発泡シートの見掛け密度で除して求めた値である。
【0038】
そして、本発明の架橋ゴム発泡シートは、電気、エレクトロニクス、車輌などの分野において、各種シール材用として好適に用いることができる。防塵対象となる被シール部材との間に隙間が生じず、長期間に亘って優れた防塵性を維持できるので、本発明の架橋ゴム発泡シートは、特に、パッキンやガスケット材として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の架橋ゴム発泡シートの製造方法は、ゴムポリマーを含有する架橋ゴム独立気泡発泡シートを上記ゴムポリマーのガラス転移温度以下に冷却した後、上記架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させ独立気泡を破泡させて連続気泡とすることを特徴とし、得られる架橋ゴム発泡シートは、その独立気泡の一部又は全部が連続気泡化されてなり、優れた柔軟性を有し且つ圧縮永久歪みが小さいので、車輛や電子機器などを構成している部材(被シール部材)間に形成された隙間を埋めるためのシール材として好適に用いることができる。
【0040】
そして、架橋ゴム発泡シートは優れた柔軟性を有しているので、複雑な形状の被シール部材に沿って隙間なく密着させることができる。更に、架橋ゴム発泡シートは永久圧縮歪みが小さいので長期間に亘って優れた密着性を持続し、被シール部材間に形成された隙間を確実にシールすることができる。
【0041】
更に、架橋ゴム発泡シートは、ゴムポリマーを含有しているので気泡壁は弾性を有しており、架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させることによって気泡壁に形成された貫通孔は常態において略閉塞された状態となっている一方、架橋ゴム発泡シートが圧縮された場合には気泡壁に形成された貫通孔が空気圧によって自動的に開放し、気泡内の空気を外部に排出することによって架橋ゴム発泡シートは小さな圧縮力で円滑に圧縮される。
【0042】
よって、架橋ゴム発泡シートをシール部材として用いた場合、被シール部材間に配設するために架橋ゴム発泡シートを圧縮する際には小さな圧縮力で所望形状に簡単に圧縮することができる。更に、被シール部材間に架橋ゴム発泡シートを配設した後は気泡壁に形成された貫通孔を通じて気泡内に空気が流入して、架橋ゴム発泡シートは被シール部材間の隙間形状に合致するまで膨張し、膨張後は気泡壁の貫通孔は自動的に閉塞状態となる。従って、架橋ゴム発泡シートはその膨張状態を確実に維持し長期間に亘って優れたシール性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(実施例1)
ニトリル−ブタジエンゴム(JSR社製 商品名「N222L」、ガラス転移温度:−20℃)100重量部、アゾジカルボンアミド(永和化成工業社製 商品名「FE−788」、分解開始温度:140℃)6重量部、及び、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(日油社製 商品名「パークミルD−40」、1分半減期温度:175.2℃)12重量部を押出機に供給して90℃にて溶融混練し厚みが1mmの発泡性シートを押出した。
【0044】
得られた発泡性シートに電子線を加速電圧500keVにて線量0.8Mrad照射して発泡性シートを架橋した。この発泡性シートを発泡炉に供給して150℃に加熱することによってアゾジカルボンアミドを分解させて発泡性シートを発泡させることによって厚みが2mmの独立気泡有する架橋ゴム独立気泡発泡シートを得た。なお、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡率は99%であった。
【0045】
次に、架橋ゴム独立気泡発泡シートを加熱炉に供給して230℃に加熱することによってジクミルパーオキサイドを分解して架橋ゴム独立気泡発泡シートを更に架橋させた。
【0046】
又、エタノール中にドライアイスを添加してエタノールを−68℃に冷却した。しかる後、上記架橋ゴム独立気泡発泡シートをエタノール中に通過させて、架橋ゴム独立気泡発泡シートをその中心位置が−20℃となるまで冷却した。
【0047】
次に、回転軸が互いに平行で且つ対向面間の間隔が0.2mmである二本の回転ロールを用意した。これらの二本の回転ロールは、その対向面間の回転方向が同一で且つ外周の線速度が共に1000mm/分であった。
【0048】
そして、二本の回転ロール間に上記架橋ゴム独立気泡発泡シートを供給して架橋ゴム独立気泡発泡シートをその厚み方向に圧縮、変形させることによって、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡を圧壊させて破泡させ、独立気泡を連続気泡化させて厚みが2.5mm、連続気泡率が82.3%の架橋ゴム発泡シートを得た。
【0049】
(実施例2)
アゾジカルボンアミドを6重量部の代わりに8重量部としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが2.5mmの架橋ゴム発泡シートを得た。なお、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡率は99%であった。
【0050】
(実施例3)
アゾジカルボンアミドを6重量部の代わりに10重量部としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが3mmの架橋ゴム発泡シートを得た。なお、架橋ゴム独立気泡発泡シートの独立気泡率は99%であった。
【0051】
(実施例4)
エタノールの代わりに、ドライアイスを添加して−86℃に冷却したアセトンを用いて架橋ゴム独立気泡発泡シートをその中心位置が−20℃となるまで冷却したこと以外は実施例1と同様にして厚みが2.5mmの架橋ゴム発泡シートを得た。
【0052】
(実施例5)
アゾジカルボンアミドを6重量部の代わりに8重量部としたこと、エタノールの代わりに、ドライアイスを添加して−86℃に冷却したアセトンを用いて架橋ゴム独立気泡発泡シートをその中心位置が−20℃となるまで冷却したこと以外は実施例1と同様にして厚みが2.5mmの架橋ゴム発泡シートを得た。
【0053】
(実施例6)
アゾジカルボンアミドを6重量部の代わりに10重量部としたこと、エタノールの代わりに、ドライアイスを添加して−86℃に冷却したアセトンを用いて架橋ゴム独立気泡発泡シートをその中心位置が−20℃となるまで冷却したこと以外は実施例1と同様にして厚みが2.5mmの架橋ゴム発泡シートを得た。
【0054】
(比較例1)
架橋ゴム独立気泡発泡シートを冷却しなかったこと以外は実施例1と同様にして架橋ゴム発泡シートを得た。
【0055】
(比較例2)
架橋ゴム独立気泡発泡シートを冷却しなかったこと以外は実施例2と同様にして架橋ゴム発泡シートを得た。
【0056】
(比較例3)
架橋ゴム独立気泡発泡シートを冷却しなかったこと以外は実施例3と同様にして架橋ゴム発泡シートを得た。
【0057】
得られた架橋ゴム発泡シートについて、JIS K7222に準拠した見掛け密度、JIS K6262に準拠して80℃、24時間経過後に測定された圧縮永久歪み、及び、JIS K6767に準拠して測定された50%圧縮応力、ゲル分率、連続気泡率及び発泡倍率を測定し、その結果を表1に示した。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムポリマーを含有する架橋ゴム独立気泡発泡シートを上記ゴムポリマーのガラス転移温度以下に冷却した後、上記架橋ゴム独立気泡発泡シートを変形させ独立気泡を破泡させて連続気泡とすることを特徴とする架橋ゴム発泡シートの製造方法。
【請求項2】
JIS K7222に準拠して測定された見掛け密度が40〜300kg/m3、JIS K6262に準拠して80℃、24時間経過後に測定された圧縮永久歪みが50%以下、及び、JIS K6767に準拠して測定された50%圧縮応力が100kPa以下である架橋ゴム発泡シートを製造することを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム発泡シートの製造方法。
【請求項3】
ゴムポリマーは、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム及びクロロプレンゴムから選ばれた少なくとも一種の合成ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム発泡シートの製造方法。
【請求項4】
架橋ゴム独立気泡発泡シートを二本のロール間に供給して上記架橋ゴム独立気泡発泡シートをその厚み方向に圧縮、変形させることを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム発泡シートの製造方法。
【請求項5】
架橋ゴム独立気泡発泡シートは、電離性放射線により物理的に架橋され、又は、有機過酸化物若しくは硫黄化合物によって化学的に架橋されたものであることを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム気泡シートの製造方法。
【請求項6】
架橋ゴム発泡シートのゲル分率が70重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム気泡シートの製造方法。
【請求項7】
架橋ゴム発泡シートの連続気泡率が30〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム発泡シートの製造方法。

【公開番号】特開2010−83908(P2010−83908A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250984(P2008−250984)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】