架橋剤を含む複合電解質
スルホン酸基を介するイオン伝導性材料の共有結合的架橋は、このようなベース材料に対して改良された燃料電池の性能特性のために、種々の低コスト電解質膜に適用され得る。この提案されるアプローチは、修飾が電気化学的性能を犠牲にすることも、その材料コストおよび生産コストを大きく増大させることもなく、それらの物理的安定性および化学的安定性を増大させ得る場合、プロトン交換膜としてかなりの潜在能力を有するという観察に、一部、起因する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、イオノマーに関する。より具体的には、本発明は、プロトン交換材料、ならびにイオン伝導性材料の物理的特性および機械的特性を改良するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
水素/酸素燃料電池および直接メタノール燃料電池(DMFC)適用において使用するための、高性能、低コストの、ポリマー電解質材料に関しては、かなりの需要が存在する。いくつかのポリマー型が、プロトン交換膜として使用されてきた。これらのポリマーとしては、ペルフルオロスルホン酸、スルホン化された芳香族、酸性化されたイミダゾール、および他の有機ベースの複合材/無機ベースの複合材が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、今日まで、燃料電池が実現性のある産業的技術になり得るために必要とされる要件全てを満たす材料はなかった。高い生産コスト、高いメタノール浸透性、低い物理的強度、および/または乏しい電気化学的性能が、種々の候補材料を悩ませており、燃料電池適用における広範な使用に適した材料の出現を妨げていた。
【0003】
最近の30年間で、産業標準のプロトン伝導性電解質膜は、DuPontによって製造されるNafion(登録商標)(ポリペルフルオロスルホン酸)(特許文献1および2)であった。Nafion(登録商標)の性能は、水素/酸素PEM燃料電池の状況においては、膜として中程度に効率的である一方で、このポリマーは、プロトン交換膜(PEM)燃料電池設計の出現を妨げた種々の制限を有する。これらの中でも、Nafion(登録商標)の制限とは、高いメタノール浸透性、低い熱安定性、およびその高コストである。
【0004】
Nafion(登録商標)は、低温から中温の全ての燃料電池に最も一般に組み込まれている材料であるが、Nafion(登録商標)は、直接メタノール燃料電池(DMFC)膜としては十分には機能しない。DMFC状況におけるNafion(登録商標)の不十分な性能は、主に、その高いメタノール浸透性およびその結果としてのメタノールの横断に起因する。横断を最小にするために、数名の研究者らが、特許文献3に記載されるように、Nafion(登録商標)に添加剤を組み込み、そして電池のアノード側にこれを導入する前に、メタノールを揮発させた。しかし、添加剤の組み込みは、Nafion(登録商標)の高い製造コストを軽減せず、メタノールの揮発は、燃料電池系の複雑性を増大させる。
【0005】
Nafion(登録商標)と競合する他のペルフルオロ化スルホン酸材料が開発されてきた。1つの代替的な膜は、Nafion(登録商標)またはNafion(登録商標)様ポリマーを、多孔性ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標))構造体に組み込んでいる。これらの膜は、W.L.Gore&Associates,Inc.から商標名GORE−SELECT(登録商標)の下で市販されており、そして特許文献4〜6に記載される。他の類似の膜は、Asahi Chemical Co.から商標名ACIPLEX(登録商標)の下で、およびAsahi GlassからFLEMION(登録商標)の下で市販されている。それらの開発業者に拘わらず、これらの代替的な膜は、Nafion(登録商標)と同じ不足の多く、すなわち、その高いコストおよびDMFC適用における高い燃料の横断を示す。
【0006】
ペルフルオロ化スルホン酸材料の使用で直面しているコストおよび性能の制限に対処するために、最近の研究では、PEM燃料電池におけるプロトン交換膜として使用するための酸官能化芳香族ポリマーの開発に焦点が当てられている。サーモプラスチック(thermoplastic)(例えば、特許文献7〜9に記載されるポリスルホン−udel(PS−Udel)またはポリ−エーテル−エーテルケトン(PEEK))は、イオン伝導性材料として徹底的に研究されており、非特許文献1および2、ならびに特許文献7および10(非特許文献1および2を参照のこと)により記載されている。これらの芳香族ポリマーの官能化は、ペルフルオロ化ベースのポリマーが直面している、コストおよび生産の難題に対処する可能性を有するが、燃料電池作動のための問題となる2つの特性、水和条件下での過度の浸透膨張(osmotic swelling)および低い機械的強度、を有する。
【0007】
芳香族ベースの膜(例えば、PEEK)は、特許文献8、特許文献11〜13
に記載されており、スルホン酸基をポリマー骨格に結合するために後スルホン化プロセスを利用する。スルホン化の頻度または他の酸の部位は、イオノマーの電気化学的特性を改良するが、浸透膨張を増大させ、かつその材料の機械的強度を低下させもする。浸透膨潤の増大は、その材料の伝導性を増大させる助けとなり得る一方で、過剰に水和された材料は、燃料電池適用に不適切になる。
【0008】
一般に、潜在的に低コストの芳香族ベースのポリマーの全てが、スルホン化PEEKと同じ難題を抱えている。スルホン化(または酸の部位)を増大させると、膜の電気化学的性能は増大するが、水和後のその機械的特性が低下する。この芳香族ポリマー(例えば、特許文献7(Union Carbide Corporation)に記載されるポリエーテルスルホンおよびポリマーアリールケトン)の多くは、高い電気化学的特性を有し得ると同時に高い機械的特性もまた保持し得るように、これらのポリマーの弱さを克服することができるのであれば、かなりの潜在能力を有する。
【0009】
酸官能化プロトン交換材料の欠点を克服するために使用された1つの方法は、架橋剤を組み込むことである。Kerresらは、特許文献14に記載されるように、スルフィン化(−SO2)ポリマー鎖をハロゲン化アルカンとを結合させて、浸透膨潤を低下させ、このポリマーの機械的強度を改良した。この反応により、ポリマー鎖のスルフィン化官能基を中間長のアルカンにより連結させ、それによりその材料の浸透膨潤を低下させた。しかし、このプロセスは、実験的に複雑であり、プロトン交換膜生成物のプロトン伝導性を減少させた。さらに、この材料を架橋するために使用されたアルカン(架橋剤)は、酸の部位のような官能性を欠いており、それによって、この材料に電気化学的性能特性を与えることができなかった。
【0010】
燃料電池膜性能を改良するために実行されてきた別の架橋ストラテジーは、スチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー化を必要とした(非特許文献3を参照のこと)。この方法において、得られた架橋イオノマーは、制限された酸化的抵抗性を有した。なぜなら、スチレンおよびジビニルベンゼンは両方とも、酸化に対して感受性を示すからである(非特許文献4)。この材料の架橋は、その性能特性を確かに改良したが、この基材が、化学分解の影響を受けやすく、よって膜の寿命に制限があった。
【0011】
従って、良好な電気化学的性能(例えば、プロトン伝導性)を有する、よりよい物理的特性および化学的特性を有する改良されたプロトン交換膜材料が必要である。
【特許文献1】米国特許第3,282,875号明細書
【特許文献2】米国特許第4,330,654号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0094466 A1号明細書
【特許文献4】米国特許第5,635,041号明細書
【特許文献5】米国特許第5,547,551号明細書
【特許文献6】米国特許第5,599,614号明細書
【特許文献7】米国特許第4,625,000号明細書
【特許文献8】米国特許第4,320,224号明細書
【特許文献9】米国特許第6,248,469 B1号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/0091225号明細書
【特許文献11】米国特許第4,419,486号明細書
【特許文献12】米国特許第5,122,587号明細書
【特許文献13】米国特許第6,355,149 B1号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/0032739号明細書
【非特許文献1】Tchicaya,L.ら、Hybrid Polyaryletherketone Membranes for Fuel Cell Applications,Fuel Cells,2002,2,No 1.
【非特許文献2】Xiao,G.ら、Synthesis and Characterization of Novel Sulfonated Poly(arylene ether ketone)s derived form 4,4’−sulfonyldiphenol,Polymer Bulletin(2002)48,p.309−315
【非特許文献3】Tsyurupa M.P.,Hypercrosslinked Polymers:Basic Principle of Preparing the New Class of Polymeric Materials,Reactive and Functional Polymers,Dec 2002,Vol.53,Issues 2−3,p.193−203
【非特許文献4】Assink,R.A.;Arnold C.;Hollandsworth,R.P.,J.Memb.Sci.(1993)56,p.143−151
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の開示)
本発明は、スルホン酸基を介するイオン伝導性材料の共有結合的架橋に基づき、このことは、基材に対して改良された燃料電池性能計測量のために、代替的な低コスト膜に適用され得る。本発明は、多くの芳香族ポリマー材料および脂肪族ポリマー材料が、修飾が電気化学的性能を犠牲にすることも、その材料コストおよび生産コストを大きく増大させることもなく、それらの物理的安定性および化学的安定性を増大させ得る場合、プロトン交換膜としてかなりの潜在能力を有するという観察に、一部、起因する。より具体的には、非フルオロ化ポリマー材料(例えば、芳香族ポリエーテルケトンおよびポリエーテルスルホン)は、これらの低コストおよび高プロトン伝導性に起因して、この材料の浸透特性および電気化学的性能は、PEMFCにおいて使用するために最適化され得る場合、かなりの潜在能力を示す。他のフルオロ化材料(例えば、ペルフルオロ化ポリマー)は、より大きな官能性およびより低いメタノール浸透性が達成され得る場合に改良され得る(しかし、コストはまだ要因である)。
【0013】
架橋剤は、この基材の肯定的な特性を大きく低下させることなく、水の取り込み、メタノールの横断、熱安定性および機械的強度のような特性を改良する。官能化された架橋成分または添加剤の組み込みは、燃料電池適用についての材料修飾のための有望な技術を提供する。
【0014】
本発明に従う複合材の形成は、主に、(i)イオン伝導性基材、および(ii)官能化架橋成分を必要とする。架橋剤とベースとなるイオン交換材料とを組合せることにより、その物理的特性、そして潜在的に、燃料電池においてプロトン交換膜として使用するためのイオン交換材料の性能全体が改良される。さらに、この架橋成分は、官能基を基材に付加することを可能にし、燃料電池用途について、得られた膜のその物理的性能および電気化学的性能を改良し得る。
【0015】
本発明の一実施形態において、電気化学的燃料電池は、(i)アノード;(ii)カソード;(iii)燃料をアノードに供給するための燃料供給手段;(iv)カソードに酸化剤を供給するための酸化剤供給手段;(v)アノードとカソードの間に配置された上記のポリマー電解質;ならびに(vi)膜電極アセンブリ(MEA)を備える。
【0016】
本発明のなお別の実施形態において、電気化学的燃料電池における使用に適したポリマー膜を製造する方法は、(i)(粘性性質の)ポリマー材料を合成する工程であって、このポリマー材料は、(a) 架橋されたポリマー鎖、(b)ポリマー材料を溶解し得る適合している溶媒、(c)無機添加剤(ありまたはなし)を含む、工程、(ii)この粘性液体材料を拡げて、その基板の上に均一な厚みの層を形成する工程;(iii)この溶媒を制御された雰囲気下で粘性液体からエバポレートして、ポリマー電解質膜を得る工程;ならびに(iv)酸性化により、燃料電池における使用のための膜を調製する工程、を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、性能を増強する(performance enhancing)架橋剤、その架橋剤をイオン伝導性材料に組み込むための方法、および高性能膜材料としてのその架橋剤の燃料電池への組み込みを提供する。
【0018】
本発明に従ってイオン伝導性材料を形成することは、主に、(i)架橋添加剤または架橋成分、および(ii)この架橋剤をイオン伝導性基材に組み込むための方法を必要とする。この架橋剤とベースとなるイオン交換材料とを組合せることにより、燃料電池においてプロトン交換材料として使用するためのそのイオン交換材料の物理的特性および潜在的に全体的性能が改良される。さらに、この架橋成分は、低コストイオン交換基材をより高性能のイオノマーへと目的に合わせて作ることを容易にし得る。
【0019】
具体的に設計される架橋成分は、種々の組成を有し得る;しかし、この架橋添加剤およびベースとなるイオン伝導性ポリマーを結合させるために、1つの成分は、一級、二級または三級のヒドロキシル基またはアミン基を有さなければならず、他の成分は、一級、二級、または三級のスルホン酸基を有さなければならない。これらの基は、架橋成分またはベースとなるイオン交換成分上に存在し得る。この架橋剤の主鎖は、長さおよび構造、ならびに組成および配座が変動し得る。さらに、架橋する鎖としては、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機/無機のポリマー網目、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。この架橋剤は、性質が重合性である必要は必ずしもない。同じ官能基を有する低分子量化合物もまた、使用され得る。
【0020】
この架橋剤は、独立した官能基(例えば、イオン伝導性基)または他の化学修飾を有し得、その結果、この架橋剤は、基材に、独特の特性を導入する。修飾は、機械的特性、化学的特性、および/または電気化学的特性、あるいはこれらの任意の組み合わせの改良を促進し得る。この架橋剤は、1種以上のアミン基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基を有し得るが、少なくとも1つの官能基(これは、イオン交換基材の官能基と反応して、共有結合的架橋結合を形成し得る)を有さねばならない。
【0021】
このイオン伝導性基材は、無機構造、有機構造または混合構造であり得る。好ましくは、このイオン伝導性材料は、組成が、芳香族または脂肪族の有機物質ベースであり、そして無機単位を安定化する構造を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。考えられる芳香族構造としては、ポリ−アリールエーテルケトンおよびポリ−アリールエーテルスルホンが挙げられるが、これらに限定されず、ここでこの材料のポリマーの性質は、少なくとも10,000amuの分子量を有する。考えられる脂肪族材料としては、ペルフルオロ化コポリマー型またはたスチレンコポリマー型が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、好ましいイオン伝導性材料は、適切な分子量および/または官能基を有するポリマー構造を有さねばならず、この官能基としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸、イミダゾール、アミン、およびアミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基は、その材料の電気化学的機能性を増大させるための助けとなる。しかし、考えられる多くの官能基とは無関係に、このイオン伝導性基材は、開示される方法により、架橋成分と効率的にその材料が架橋され得るように、アミン基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基を含まねばならない。
【0022】
式1における反応スキームは、末端ヒドロキシル化された架橋剤とスルホン化されたベースとなるイオン伝導性材料(base ion−conducting material)との間の直接共有結合的架橋法の一般化である。
【0023】
【化9】
R1は、架橋成分の主鎖であり、主鎖としては、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、および有機分子/無機分子が挙げられるが、これらに限定されない。R2は、スルホン化され得る任意の基材であり、そして芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、ならびに有機分子/無機分子および有機構造体/無機構造体が挙げられるが、これらに限定されない。この架橋剤上の官能基は、鎖の末端においてまたは骨格のどこかにおいて出現し得る。架橋成分とこのイオン伝導性基材の結合は、非水性環境において起こる。水の存在は、反応の程度を制限し得る。さらに、この反応温度、持続時間および成分濃度は全て、架橋度および反応組成物の動的性質に影響を及ぼす。
【0024】
末端アミン化された架橋剤とイオン伝導性基材との間の反応は、以下の反応式において一般化される:
【0025】
【化10】
式2は、アミン化された架橋剤とスルホン化された基材との間の直接共有結合的架橋法についての一般化である。R1およびR2は、式1に列挙されたものと同じ材料を示す。
【0026】
さらに、この反応は、この架橋添加剤上のスルホン酸基およびこのイオン伝導性基材の上のアミン基またはヒドロキシル基に対して起こり得る。これらの反応は、以下の式3および式4において一般化される:
【0027】
【化11】
ここでR3は、架橋成分の主鎖であり、この主鎖としては、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、および有機分子/無機分子が挙げられるが、これらに限定されない。R4は、スルホン化され得る任意の基材であり、そして芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、ならびに有機分子/無機分子および有機構造体/無機構造体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
全ての反応スキームにおいて使用される反応溶媒としては、高沸点の、非極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)またはジメチルホルムアミド(DMF))が挙げられるが、これらに限定されない。この反応は、トルエンによる水の除去を介して共沸蒸留下で進行させて、反応速度(reaction kinetics)を促進し得る。反応時間は、使用される条件に依存して変動し得るが、代表的には、1〜12時間、より好ましくは、3〜10時間の範囲である。この架橋添加剤が、アミンまたはヒドロキシルで官能化されている場合、この反応混合物は、ベースポリマーのスルホン酸の部位に関して0.1%〜100% 架橋成分モル当量からなり得るが、好ましくは、0.1〜8%の間である。この架橋添加剤が、スルホン酸で官能化されている場合、この反応混合物は、ベースポリマーのアミン基またはヒドロキシル基に関して0.1%〜100% 架橋成分モル当量からなり得るが、好ましくは、0.1%〜8%である。
【0029】
この開示される架橋成分は、湿潤条件および乾燥条件の両方で、基材の引張り強度を改良する。これは、主に、分子量の増加および隣接するポリマー鎖間の連結の強化に起因する。さらに、この架橋剤の本質的な性質により、疎水性領域または親水性領域のいずれかが付与され、これらの領域は、得られる材料の流体力学的性質全体に影響を及ぼす。種々の分子量の特定の架橋剤の使用は、引張り強度を犠牲にすることなく、この材料の伸びを調節することを可能にする。
【0030】
ポリマー鎖において、この材料の伸びは、シート状にする前の材料のコイル形成(coiling)および配向に直接依存し、共有結合的架橋は、材料の伸び性能に影響を及ぼす。架橋剤が長くなるほど、材料の伸びは増大するが、材料の引張り強度は犠牲にならない。図1における表は、この現象を強調している。スルホン酸基を介して共有結合的架橋により形成される架橋網目は、この基材の物理的特性の重大な制御レベルを可能にする。引張り強度、ヤング率、および破断時伸びの改良は、架橋剤を基材に組み込んだことの直接的な結果である。図1に示されるように、一般に、この材料の伸びは、架橋剤の長さが増大するにつれて増大している;一方で引張り強度は、架橋剤のパーセンテージが上がるにつれて増大している。
【0031】
さらに、架橋成分は、ベースとなるイオン伝導性材料に微小構造変化を付与し得、それにより、得られる材料の透過性を制限し得る。イオン伝導性チャネルサイズが小さくなると、この材料のメタノール浸透性もまた、減少する。プロトン交換膜のメタノール浸透性の低下は、直接メタノール燃料電池(DMFC)の性能の改良に重要である。図2は、この架橋成分がベースとなるイオン伝導性ポリマーにもたらした、メタノールの横断の減少を示す。この架橋剤を組み込むことで、厚みおよびポリマー型を正規化したときにメタノールの横断が30%減少する。
【0032】
この材料の共有結合性架橋により形成される微小構造網目は、図3の走査型電子顕微鏡写真により示されるように、目に見える。これらの走査型電子顕微鏡写真は、種々の架橋剤で架橋されたベースとなるイオン伝導性材料を示す。これらの顕微鏡写真の間で目に見えるクモの巣様の網目の大きさは、架橋剤の差と相関する。この微小構造の目に見える差は明らかであり、そして、膜の全ての物理的特性における増加と相関する。材料の水の取込みのような他の特性もまた、共有結合性の架橋、ならびに架橋剤の構造および量にわたる制御により操作され得る。
【0033】
ベースとなるイオン伝導性材料は、その対象とする目的には高すぎるかまたは低すぎるかのいずれかである、固有の水の取込み特性を有し得る。この高すぎる水の取込みは、材料の物理的特性の弱化をもたらし得る一方で、低すぎる水の取込みは、高い効率で、プロトンを伝導する、イオン伝導性材料の能力を制限し得る。膜の水分平衡は、高い燃料電池の性能に重要である。用法にあった材料を仕立てるために、共有結合性の架橋は、ポリマー電解質膜のための理想的なモディファイアーとして作用し得る。図4〜6に見られるように、基材材料内への架橋成分の組込みは、ベースとなるイオン伝導性材料の水の取込みを増加または減少させ得る。
【0034】
これまでに言及したように、燃料電池におけるプロトン交換膜としての可能性を有する多くの安価な酸官能化芳香族ポリマーが、その親水性の性質に起因して、水の存在下で、過剰に膨潤する。この過剰な浸透圧性の膨潤は、燃料電池におけるイオノマーとしてのこれらの使用を制限する。Kerresらによる以前の研究は、これらの材料が架橋され、よって、浸透圧性の膨潤が改善され得るが、得られる材料は、低いプロトン伝導性を有したことを示した(米国特許出願第2003/0032739号を参照のこと)。本発明において開示される架橋成分は、電気化学的性能の損失(例えば、プロトン伝導性)を最小限にし得る、スルホン酸のような官能基を組込み得、かつ、この材料の酸化抵抗性を増大し得る。
【0035】
燃料電池の使用における膜の材料寿命は、操作可能な酸化的大気中の材料の安定性に大いに依存する。官能基が化学骨格に直接結合した非修飾(非架橋)ポリマー材料は、その主骨格から取り除かれた官能基を有する他の材料よりも、程度が大きい酸化を生じ得る。いくつかの場合、開示される架橋剤は、材料の化学的安定性を増加し得る。図9に見られるように、高い酸化的大気中のベース材料の安定性は、架橋剤と結合されたベース材料の安定性よりも低い。ベース材料単独では、3% H2O2および0.4M硫酸鉄の溶液中、4時間後に、その材料の10%の損失を示すが、架橋剤と共に組み込まれたベース材料は、5%の損失のみを示す。明らかなように、性能を改良する架橋剤は、多くの局面においてこの材料を改善する。
【0036】
図6〜8は、酸官能化芳香族ポリエーテルポリマー(35% sPEK)に対する、本発明の効果を強調する。いくつかの場合、スルホン化架橋剤の組込みは、プロトン伝導性を有意に減少させることなく、浸透圧性の膨潤を減少するのに役立つ。この結果は、燃料電池において使用するために、酸官能化芳香族ポリマーの特徴を改善する際に、非常に有用であり得る。さらに、図7および8は、IECとプロトン伝導性の結果の不整合を示す。架橋剤成分の量が増えるにつれ、得られるポリマーのIECが減少する。この結果により、得られる構成についての、スルホン酸部位の量が組込まれた架橋添加物につき1つずつ減少すると認められた。この減少は、図8で観察されたものと一致した。しかし、同じ材料について、プロトン伝導性は、実際は、3%の架橋剤のサンプルと5%の架橋剤のサンプルとの間で増加した。この結果は、予想外であり、架橋添加物が組込まれた後に得られた材料の微小構造の変化に起因する可能性が最も高くあり得る。導電性が増加しつつ、IECが減少する様式で微小構造を変更する本発明の能力は、プロトン交換膜としての使用に適切な様式で酸官能化芳香族ポリマーを修飾するための有意な可能性などが存在することを示唆する。性能を改良する架橋剤は、ベース材料の特性を変化させ、ならびに、特定の使用に合ったこの材料の仕立てを可能にする。
【0037】
本発明の共有結合性架橋電解質は、図10、11および12に図示される電気化学的燃料電池においてプロトン交換膜として使用するために特に適している。電気化学的電池10は、一般に、アノード流れ場構造(flow field structure)およびカソード流れ場構造により挟まれた膜電極アセンブリ12を備える。アノード側では、この電池は、終板(endplate)14、ガスの分配を促進するための開口部22を備えるグラファイトブロックまたは二極性プレート18、ガスケット26、およびカーボンクロス集電体30を備える。逆に、カソード側では、この電池は、ステンレス鋼終板16、ガス分配を促進するための開口部24を備えるグラファイトブロックまたは二極性プレート20、ガスケット28、およびカソードカーボンクロス集電体32を備える。カーボンクロス材料は、分配層のための多孔性導電性支持体である。
【0038】
この電気化学的電池はまた、図11および12に示すような膜電極アセンブリ(MEA)12を備える。このMEAは、アノード電極42およびカソード電極44に挟まれた、プロトン交換膜46を備える。各々の電極は、カーボンクロスまたはカーボン紙のような多孔性電極材料から作製される。本発明の複合電解質を含むプロトン交換膜46は、燃料電池の作動の間に、プロトン伝導媒体を提供する。アノード集電体30およびカソード集電体32は、それぞれ、リード線31、33によって、外部回路50に接続される。この外部回路は、米国特許第5,248,566号、同第5,272,017号、同第5,547,777号および同第6,387,556号(これらは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるもののような、任意の従来の電子デバイスまたは電子負荷装置を含み得る。この構成要素(主に、MEA)は、公知の技術によって、密閉シールされ得る。
【0039】
作動中、燃料供給源37からの燃料は、アノードを通って拡散し、そして、酸化剤供給源39(例えば、容器またはアンプル)からの酸化剤は、MEAのカソードを通って拡散する。MEAにおける化学反応は、起電力を生じ、電子が、電子負荷装置を通って輸送される。水素燃料電池は、水素を燃料として、そして酸素を酸化剤として使用する。直接メタノール燃料電池については、燃料は液体メタノールである。
【0040】
本発明の複合電解質は、例えば、米国特許第5,248,566号および同第5,547,777号に記載される従来の燃料電池において使用され得る。さらに、いくつかの燃料電池が、燃料電池スタックを製造または組立てるための従来の手段によって、直列で接続され得る。
【0041】
以下の実施例は、プロトン交換膜として処方および試験される、多数の架橋膜電解質を例示する。これらは、全ての可能な実施形態を包含することは意味せず、そして、これらは、単に、読み手に本発明の意義を提供するのみである。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
第1の実施例は、有機カチオン交換材料を含む架橋電解質材料を製造するプロセスを記載する。芳香族ポリマー基材である、60,000amuを超える分子量を有するジスルホン化ポリエーテルケトンを、米国特許出願第2002/0091225 A1号に記載されるように製造する。この基材のスルホン化の程度を、この基材を、0.5M硫酸中で還流することによりプロトン化した後に、イオン交換容量に基づいて計算する。次いで、このプロトン化したポリマーを、減圧下で完全に乾燥させる。
【0043】
2500amuの分子量を有するフェノール末端ポリエーテルケトンの架橋剤を製造し、米国特許出願第2002/0091225 A1号に記載される方法と同様に乾燥させる。次いで、この乾燥した基材ポリマーおよび架橋剤を、DMSOのような高沸点溶媒中で混合する。この溶液を、ディーン−スターク(dean−stark)装置にて、135℃と175℃との間で4時間、トルエンと共に共沸蒸留する。次いで、トルエンを除去し、この反応を、6時間進行させる。次いで、この得られた粘性溶液を、平坦なプレート上に注ぎ、ドクターブレード装置にて平たく成型する。この溶媒を、90℃にて12時間エバポレートさせ、その後、130℃にて12時間、そして150℃にて12時間、さらに乾燥させる。次いで、このフィルムを、成型表面から取り外し、H2O中で1時間還流する。次いで、この水和したフィルムを、0.5Mの沸騰したH2SO4中で1時間プロトン化し、次いで、洗浄水のpHが中性に近くなるまで、脱イオン(DI)水中でリンスする。次いで、この膜を、その物理的特性および電気化学的性能特性について試験し、イオン伝導性基材と比較する。
【0044】
(実施例2)
第2の実施例は、官能化架橋材料を製造するプロセスを記載する:市販のポリマー材料(Victrex製のPEEK)を、濃硫酸中に溶解し、一定温度で所定の時間、スルホン化させる。次いで、このポリマーを、氷水中で沈殿させ、洗浄水が中性になるまでリンスし、次いで、減圧下で乾燥させる。次いで、このフェノールスルホン化架橋剤を、スルホン化ジフルオロジフェノールケトンとビスフェノールAとのコポリマー化により合成する。各モノマーのモル比を用いて、架橋成分の得られる分子量およびそのスルホン化レベルを計算する。次いで、このフェノール末端ポリマー鎖から構成される得られる架橋成分をリンスし、そして、減圧下で乾燥させる。
【0045】
次いで、このスルホン化ポリマー基材を、スルホン化架橋剤と混合し、DMSO中に溶解する。ポリマー基材の架橋剤に対する比を計算し、その結果、この架橋剤は、1〜50モル%を表した。この反応物を、ディーン−スターク装置にて、135℃と175℃との間で、トルエンと共に共沸蒸留する。次いで、トルエンを175℃にて除去し、この反応を8時間継続させる。その後、1つ以上の無機添加物を添加し得る。次いで、この得られた混合物を、トレイ内で成型し、そして、90℃にて12時間エバポレートさせ、その後、135℃にて24時間、減圧下で加熱する。次いで、この乾燥したフィルムを、1M H2SO4溶液中でプロトン化し、dH2Oでリンスする。次いで、この膜を、その物理的特性および電気化学的特性について試験する。
【0046】
無機添加物は、Taftらによる米国特許出願第10/219,083号(2002年8月13日出願、発明の名称「Composite Electrolyte For Fuel Cells」、この出願は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるものであり得る。具体的には、無機添加物は、例えば、クレイ、ゼオライト、含水酸化物および無機塩類を含む群から選択される。粘土は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、マイカ、ベントナイト、ノントロナイト、バイデライト(beidellite)、ヴォルコンスキー石(volkonskoite)、サポナイト、マガディアイト(magadite)、ケニヤアイト(kenyaite)、ゼオライト、アルミナ、ルチルからなる群より選択される、アルミノケイ酸ベースの交換材料が挙げられる。
【0047】
(実施例3)
第3の実施例は、比較として、スルホンアミド結合がまた、スルホン酸官能基のアミン末端架橋剤への直接的な架橋により形成されることを示す。この架橋反応は、反応条件または組成が変化なしで、実施例1および2に詳述した方法と同様に進み得る。この得られるゲルを、上記のような様式で成型し得る。次いで、スルホンアミド架橋膜を、燃料電池内へのその取り込みのために、または、さらなる、物理的試験および電気化学的試験のために調製し得る。
【0048】
(実施例4)
第4の実施例は、アミン末端架橋剤の、スルホン化イオン伝導性基材への間接的な反応によって、スルホンアミド架橋材料を形成するプロセスを記載する。この反応は、実施例1および実施例2に列挙したものと同じ架橋剤および基材を使用する。第1に、スルホン化基材をプロトン化する。次いで、この基材を、n−メチル−ピロリジノン(10wt%溶液)のような高沸点溶媒中に溶解する。次いで、カルボニルジイミジゾール(CDI)の基材のスルホン酸基に関する化学量論的な量を、この溶液に添加し、60℃にて6時間反応させる。スルホン酸部位のCDIへの中間が反応が生じた後、次いで、このアミン末端架橋剤を添加する。アミン末端架橋剤の化学量論的な添加をして、90℃にて12時間反応させ、その後、このフィルムを、実施例1に記載される方法と同じ方法により成型する。次いで、このフィルムを、乾燥させ、プロトン化し、そして、試験のために準備する。
【0049】
まとめると、本発明は、性能を改良する架橋剤、イオン伝導性材料へとこれらを組込むための方法、および、高性能電解質膜材料として燃料電池内へのこれらの組込みを提供する。ベースとなるイオン交換材料と共に架橋剤を組込むことにより、燃料電池においてプロトン交換材料として使用するための、イオン交換材料の物理的な特徴が改善され、そして、潜在的に、全体的な性能が改善される。さらに、架橋成分は、低コストイオン交換基材を高性能イオノマー中への容易な仕立てを可能にする。
【0050】
本発明は、示される実施例に従って説明されてきたが、これらの実施形態に対するバリエーションが、当業者に明らかであり、そして、これらのバリエーションは、本発明の範囲および精神の範囲内である。従って、示される説明および実施形態は、例示目的のみとして考えられ、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって示されることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の性能を改良する架橋膜は、所望の架橋成分をイオン伝導性基材と反応させることによって製造され得る。好ましい溶媒であるDMSOのような高沸点溶媒が、この化学反応のための反応物を溶解するために使用される。さらに、NMP、DMSO、DMACおよびDMFのような他の溶媒が、使用され得る。これらは、広範なリストであることは意味しないが、読み手に、使用され得る他の溶媒についての意味(sense)を与えることを意味する。この反応は、共沸蒸留または他の形態の水を含まない反応条件のいずれかによって、乾燥した大気中で生じる。
【0052】
基材が首尾よく所望の架橋成分で架橋された後、粘性溶液が、基板上に注がれ、均一な厚さになるように平らにされる。あるいは、この混合物はまた、ドクターブレードによって成型され得る。この得られるフィルムを乾燥させ、基板から取り外し、そして、使用前に大きさを合わせて切断される。乾燥中のこの膜の加熱、またはこの膜への減圧の適用がまた、エバポレーションを促進するために使用され得る。
【0053】
本発明のための好ましい製造技術は、テープ成型法であるが、この方法により、分散剤中の成分の混合物が、平らなシート上に注がれる。ゲルを横断して移動するドクターブレードが、その高さを、約0.5μm〜約500μm、そして好ましくは、約50μm〜約300μmの範囲の所望の厚さへと調節する。溶媒のエバポレーションは、温度および湿度が制御された環境において行なわれる。その後、この膜は基板から取り外され、そして、プロトン交換膜として使用するために調整される。調製としては、加水分解、焼なまし、プロトン化および水和が挙げられ得るが、これらに限定されない。膜の調製は、得られるフィルムの特定の処方に依存する。テープ成型は、開示される膜を製造するために使用され得るが、押出し成形およびトレイ成型のような他の方法が使用され得る。
【0054】
試験する際、この膜は、その水の取込み、プロトン伝導性、イオン交換容量、および機械的特性について評価される。
【0055】
水の取込みは、取込み百分率によってなされる:
%水の取込み=(重量湿潤−重量乾燥)*100/(重量乾燥)。
【0056】
この評価のために、架橋膜のサンプルは、対流オーブン内で、100℃にて24時間乾燥され、そして、乾燥重量を量られ、次いで、90℃のdH2O内に48時間置き、湿重量を量る。
【0057】
プロトン伝導性の測定について、評価は、例えば、1Hz〜50kHzの間のSolatron周波数応答分析器(Solartron frequency response analyzer)を用いて実施される。X−遮蔽における抵抗性を、抵抗としてみなし、次いで、これを使用して、以下の等式により、材料の導電性を計算する:
導電性(S/cm)=厚さ(cm)/(抵抗(Ω)*電極面積(cm2))。
【0058】
材料のイオン交換容量(IEC)を測定する際に、IECは、湿式化学法による架橋反応の前後に決定される。そのために、この材料は、1N H2SO4中に12時間浸すことによって、まずプロトン化され、次いで、リンス水が中性pH近くになるまでリンスされる。この膜は、乾燥され、秤量され、次いで、1M NaCl溶液中に12時間置かれる。この溶液内の遊離したH+は、次いで、標準的な0.01N NaOH溶液で滴定され、そして、IECが計算される。
【0059】
架橋材料の機械的特性が、例えば、Instron機械式試験装置を用いて試験することによって決定される。これらの材料を、プロトン化し、リンスし、そして、24時間23℃のdH2O中に置かれ、加水分解平衡させる。このフィルムは、標準的な大きさに切断され、次いで、水の外で試験され(tested out of water)、23℃で水和させ、そして、70℃にて水中に浸される。機械的特性が観察され、そして、50mm/分の引き速度下で、Instronソフトウェアにより記録される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
添付の図面は、本明細書の一部に組み込まれかつ本明細書の一部を構成し、本発明のいくつかの実施形態を例示し、明細書とともに、本発明の原理を説明するために役立つ。都合がよい場合は常に、同じまたは類似の要素を指すために、同じ参照番号が図面全体を通して使用される。
【図1】図1は、変動量の架橋成分を有するスルホン化ポリエーテルケトン(sEK)膜についての引張り強さおよび伸び値を例示する。
【図2】図2は、非修飾スルホン化ポリエーテルケトン(sEK)膜、5000amuポリエーテルケトン(EK)ベースの架橋剤での架橋sEK膜、およびNafion(登録商標)−115についての、メタノール横断流の値のグラフを示す。
【図3】図3は、sPEKベースの膜についての架橋網目のSEM写真を示す。
【図4】図4は、種々の架橋パーセント(5000amuの非スルホン化PEK架橋添加剤)を有するsPEK膜の水取り込み値の棒グラフを示す。
【図5】図5は、種々の架橋添加剤のパーセンテージ(3000amu 非スルホン化PEK架橋添加剤)を有するsPEK膜の水取り込み値の棒グラフを示す。
【図6】図6は、種々のスルホン化架橋添加剤パーセンテージ(2500amu スルホン化PEK架橋添加剤)を有するsPEK膜の水取り込み値の棒グラフを示す。
【図7】図7は、変動量の架橋成分(2500amu スルホン化PEK架橋添加剤)を含むsPEK膜についてのプロトン伝導性値のグラフを示す。
【図8】図8は、変動量の架橋成分(2500amu スルホン化PEK架橋添加剤)を含む非修飾sPEK膜についてのイオン交換容量(IEC)値の棒グラフを示す。
【図9】図9は、非修飾sPEKおよび架橋sPEKについての酸化抵抗性値の棒グラフを示す。
【図10】図10は、分解した燃料電池を示す。
【図11】図11は、単一の電気化学的燃料電池の部分断面図を示す。
【図12】図12は、膜電極アセンブリの部分断面図を示す。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、イオノマーに関する。より具体的には、本発明は、プロトン交換材料、ならびにイオン伝導性材料の物理的特性および機械的特性を改良するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
水素/酸素燃料電池および直接メタノール燃料電池(DMFC)適用において使用するための、高性能、低コストの、ポリマー電解質材料に関しては、かなりの需要が存在する。いくつかのポリマー型が、プロトン交換膜として使用されてきた。これらのポリマーとしては、ペルフルオロスルホン酸、スルホン化された芳香族、酸性化されたイミダゾール、および他の有機ベースの複合材/無機ベースの複合材が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、今日まで、燃料電池が実現性のある産業的技術になり得るために必要とされる要件全てを満たす材料はなかった。高い生産コスト、高いメタノール浸透性、低い物理的強度、および/または乏しい電気化学的性能が、種々の候補材料を悩ませており、燃料電池適用における広範な使用に適した材料の出現を妨げていた。
【0003】
最近の30年間で、産業標準のプロトン伝導性電解質膜は、DuPontによって製造されるNafion(登録商標)(ポリペルフルオロスルホン酸)(特許文献1および2)であった。Nafion(登録商標)の性能は、水素/酸素PEM燃料電池の状況においては、膜として中程度に効率的である一方で、このポリマーは、プロトン交換膜(PEM)燃料電池設計の出現を妨げた種々の制限を有する。これらの中でも、Nafion(登録商標)の制限とは、高いメタノール浸透性、低い熱安定性、およびその高コストである。
【0004】
Nafion(登録商標)は、低温から中温の全ての燃料電池に最も一般に組み込まれている材料であるが、Nafion(登録商標)は、直接メタノール燃料電池(DMFC)膜としては十分には機能しない。DMFC状況におけるNafion(登録商標)の不十分な性能は、主に、その高いメタノール浸透性およびその結果としてのメタノールの横断に起因する。横断を最小にするために、数名の研究者らが、特許文献3に記載されるように、Nafion(登録商標)に添加剤を組み込み、そして電池のアノード側にこれを導入する前に、メタノールを揮発させた。しかし、添加剤の組み込みは、Nafion(登録商標)の高い製造コストを軽減せず、メタノールの揮発は、燃料電池系の複雑性を増大させる。
【0005】
Nafion(登録商標)と競合する他のペルフルオロ化スルホン酸材料が開発されてきた。1つの代替的な膜は、Nafion(登録商標)またはNafion(登録商標)様ポリマーを、多孔性ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標))構造体に組み込んでいる。これらの膜は、W.L.Gore&Associates,Inc.から商標名GORE−SELECT(登録商標)の下で市販されており、そして特許文献4〜6に記載される。他の類似の膜は、Asahi Chemical Co.から商標名ACIPLEX(登録商標)の下で、およびAsahi GlassからFLEMION(登録商標)の下で市販されている。それらの開発業者に拘わらず、これらの代替的な膜は、Nafion(登録商標)と同じ不足の多く、すなわち、その高いコストおよびDMFC適用における高い燃料の横断を示す。
【0006】
ペルフルオロ化スルホン酸材料の使用で直面しているコストおよび性能の制限に対処するために、最近の研究では、PEM燃料電池におけるプロトン交換膜として使用するための酸官能化芳香族ポリマーの開発に焦点が当てられている。サーモプラスチック(thermoplastic)(例えば、特許文献7〜9に記載されるポリスルホン−udel(PS−Udel)またはポリ−エーテル−エーテルケトン(PEEK))は、イオン伝導性材料として徹底的に研究されており、非特許文献1および2、ならびに特許文献7および10(非特許文献1および2を参照のこと)により記載されている。これらの芳香族ポリマーの官能化は、ペルフルオロ化ベースのポリマーが直面している、コストおよび生産の難題に対処する可能性を有するが、燃料電池作動のための問題となる2つの特性、水和条件下での過度の浸透膨張(osmotic swelling)および低い機械的強度、を有する。
【0007】
芳香族ベースの膜(例えば、PEEK)は、特許文献8、特許文献11〜13
に記載されており、スルホン酸基をポリマー骨格に結合するために後スルホン化プロセスを利用する。スルホン化の頻度または他の酸の部位は、イオノマーの電気化学的特性を改良するが、浸透膨張を増大させ、かつその材料の機械的強度を低下させもする。浸透膨潤の増大は、その材料の伝導性を増大させる助けとなり得る一方で、過剰に水和された材料は、燃料電池適用に不適切になる。
【0008】
一般に、潜在的に低コストの芳香族ベースのポリマーの全てが、スルホン化PEEKと同じ難題を抱えている。スルホン化(または酸の部位)を増大させると、膜の電気化学的性能は増大するが、水和後のその機械的特性が低下する。この芳香族ポリマー(例えば、特許文献7(Union Carbide Corporation)に記載されるポリエーテルスルホンおよびポリマーアリールケトン)の多くは、高い電気化学的特性を有し得ると同時に高い機械的特性もまた保持し得るように、これらのポリマーの弱さを克服することができるのであれば、かなりの潜在能力を有する。
【0009】
酸官能化プロトン交換材料の欠点を克服するために使用された1つの方法は、架橋剤を組み込むことである。Kerresらは、特許文献14に記載されるように、スルフィン化(−SO2)ポリマー鎖をハロゲン化アルカンとを結合させて、浸透膨潤を低下させ、このポリマーの機械的強度を改良した。この反応により、ポリマー鎖のスルフィン化官能基を中間長のアルカンにより連結させ、それによりその材料の浸透膨潤を低下させた。しかし、このプロセスは、実験的に複雑であり、プロトン交換膜生成物のプロトン伝導性を減少させた。さらに、この材料を架橋するために使用されたアルカン(架橋剤)は、酸の部位のような官能性を欠いており、それによって、この材料に電気化学的性能特性を与えることができなかった。
【0010】
燃料電池膜性能を改良するために実行されてきた別の架橋ストラテジーは、スチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー化を必要とした(非特許文献3を参照のこと)。この方法において、得られた架橋イオノマーは、制限された酸化的抵抗性を有した。なぜなら、スチレンおよびジビニルベンゼンは両方とも、酸化に対して感受性を示すからである(非特許文献4)。この材料の架橋は、その性能特性を確かに改良したが、この基材が、化学分解の影響を受けやすく、よって膜の寿命に制限があった。
【0011】
従って、良好な電気化学的性能(例えば、プロトン伝導性)を有する、よりよい物理的特性および化学的特性を有する改良されたプロトン交換膜材料が必要である。
【特許文献1】米国特許第3,282,875号明細書
【特許文献2】米国特許第4,330,654号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0094466 A1号明細書
【特許文献4】米国特許第5,635,041号明細書
【特許文献5】米国特許第5,547,551号明細書
【特許文献6】米国特許第5,599,614号明細書
【特許文献7】米国特許第4,625,000号明細書
【特許文献8】米国特許第4,320,224号明細書
【特許文献9】米国特許第6,248,469 B1号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/0091225号明細書
【特許文献11】米国特許第4,419,486号明細書
【特許文献12】米国特許第5,122,587号明細書
【特許文献13】米国特許第6,355,149 B1号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/0032739号明細書
【非特許文献1】Tchicaya,L.ら、Hybrid Polyaryletherketone Membranes for Fuel Cell Applications,Fuel Cells,2002,2,No 1.
【非特許文献2】Xiao,G.ら、Synthesis and Characterization of Novel Sulfonated Poly(arylene ether ketone)s derived form 4,4’−sulfonyldiphenol,Polymer Bulletin(2002)48,p.309−315
【非特許文献3】Tsyurupa M.P.,Hypercrosslinked Polymers:Basic Principle of Preparing the New Class of Polymeric Materials,Reactive and Functional Polymers,Dec 2002,Vol.53,Issues 2−3,p.193−203
【非特許文献4】Assink,R.A.;Arnold C.;Hollandsworth,R.P.,J.Memb.Sci.(1993)56,p.143−151
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の開示)
本発明は、スルホン酸基を介するイオン伝導性材料の共有結合的架橋に基づき、このことは、基材に対して改良された燃料電池性能計測量のために、代替的な低コスト膜に適用され得る。本発明は、多くの芳香族ポリマー材料および脂肪族ポリマー材料が、修飾が電気化学的性能を犠牲にすることも、その材料コストおよび生産コストを大きく増大させることもなく、それらの物理的安定性および化学的安定性を増大させ得る場合、プロトン交換膜としてかなりの潜在能力を有するという観察に、一部、起因する。より具体的には、非フルオロ化ポリマー材料(例えば、芳香族ポリエーテルケトンおよびポリエーテルスルホン)は、これらの低コストおよび高プロトン伝導性に起因して、この材料の浸透特性および電気化学的性能は、PEMFCにおいて使用するために最適化され得る場合、かなりの潜在能力を示す。他のフルオロ化材料(例えば、ペルフルオロ化ポリマー)は、より大きな官能性およびより低いメタノール浸透性が達成され得る場合に改良され得る(しかし、コストはまだ要因である)。
【0013】
架橋剤は、この基材の肯定的な特性を大きく低下させることなく、水の取り込み、メタノールの横断、熱安定性および機械的強度のような特性を改良する。官能化された架橋成分または添加剤の組み込みは、燃料電池適用についての材料修飾のための有望な技術を提供する。
【0014】
本発明に従う複合材の形成は、主に、(i)イオン伝導性基材、および(ii)官能化架橋成分を必要とする。架橋剤とベースとなるイオン交換材料とを組合せることにより、その物理的特性、そして潜在的に、燃料電池においてプロトン交換膜として使用するためのイオン交換材料の性能全体が改良される。さらに、この架橋成分は、官能基を基材に付加することを可能にし、燃料電池用途について、得られた膜のその物理的性能および電気化学的性能を改良し得る。
【0015】
本発明の一実施形態において、電気化学的燃料電池は、(i)アノード;(ii)カソード;(iii)燃料をアノードに供給するための燃料供給手段;(iv)カソードに酸化剤を供給するための酸化剤供給手段;(v)アノードとカソードの間に配置された上記のポリマー電解質;ならびに(vi)膜電極アセンブリ(MEA)を備える。
【0016】
本発明のなお別の実施形態において、電気化学的燃料電池における使用に適したポリマー膜を製造する方法は、(i)(粘性性質の)ポリマー材料を合成する工程であって、このポリマー材料は、(a) 架橋されたポリマー鎖、(b)ポリマー材料を溶解し得る適合している溶媒、(c)無機添加剤(ありまたはなし)を含む、工程、(ii)この粘性液体材料を拡げて、その基板の上に均一な厚みの層を形成する工程;(iii)この溶媒を制御された雰囲気下で粘性液体からエバポレートして、ポリマー電解質膜を得る工程;ならびに(iv)酸性化により、燃料電池における使用のための膜を調製する工程、を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、性能を増強する(performance enhancing)架橋剤、その架橋剤をイオン伝導性材料に組み込むための方法、および高性能膜材料としてのその架橋剤の燃料電池への組み込みを提供する。
【0018】
本発明に従ってイオン伝導性材料を形成することは、主に、(i)架橋添加剤または架橋成分、および(ii)この架橋剤をイオン伝導性基材に組み込むための方法を必要とする。この架橋剤とベースとなるイオン交換材料とを組合せることにより、燃料電池においてプロトン交換材料として使用するためのそのイオン交換材料の物理的特性および潜在的に全体的性能が改良される。さらに、この架橋成分は、低コストイオン交換基材をより高性能のイオノマーへと目的に合わせて作ることを容易にし得る。
【0019】
具体的に設計される架橋成分は、種々の組成を有し得る;しかし、この架橋添加剤およびベースとなるイオン伝導性ポリマーを結合させるために、1つの成分は、一級、二級または三級のヒドロキシル基またはアミン基を有さなければならず、他の成分は、一級、二級、または三級のスルホン酸基を有さなければならない。これらの基は、架橋成分またはベースとなるイオン交換成分上に存在し得る。この架橋剤の主鎖は、長さおよび構造、ならびに組成および配座が変動し得る。さらに、架橋する鎖としては、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機/無機のポリマー網目、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。この架橋剤は、性質が重合性である必要は必ずしもない。同じ官能基を有する低分子量化合物もまた、使用され得る。
【0020】
この架橋剤は、独立した官能基(例えば、イオン伝導性基)または他の化学修飾を有し得、その結果、この架橋剤は、基材に、独特の特性を導入する。修飾は、機械的特性、化学的特性、および/または電気化学的特性、あるいはこれらの任意の組み合わせの改良を促進し得る。この架橋剤は、1種以上のアミン基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基を有し得るが、少なくとも1つの官能基(これは、イオン交換基材の官能基と反応して、共有結合的架橋結合を形成し得る)を有さねばならない。
【0021】
このイオン伝導性基材は、無機構造、有機構造または混合構造であり得る。好ましくは、このイオン伝導性材料は、組成が、芳香族または脂肪族の有機物質ベースであり、そして無機単位を安定化する構造を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。考えられる芳香族構造としては、ポリ−アリールエーテルケトンおよびポリ−アリールエーテルスルホンが挙げられるが、これらに限定されず、ここでこの材料のポリマーの性質は、少なくとも10,000amuの分子量を有する。考えられる脂肪族材料としては、ペルフルオロ化コポリマー型またはたスチレンコポリマー型が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、好ましいイオン伝導性材料は、適切な分子量および/または官能基を有するポリマー構造を有さねばならず、この官能基としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸、イミダゾール、アミン、およびアミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基は、その材料の電気化学的機能性を増大させるための助けとなる。しかし、考えられる多くの官能基とは無関係に、このイオン伝導性基材は、開示される方法により、架橋成分と効率的にその材料が架橋され得るように、アミン基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基を含まねばならない。
【0022】
式1における反応スキームは、末端ヒドロキシル化された架橋剤とスルホン化されたベースとなるイオン伝導性材料(base ion−conducting material)との間の直接共有結合的架橋法の一般化である。
【0023】
【化9】
R1は、架橋成分の主鎖であり、主鎖としては、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、および有機分子/無機分子が挙げられるが、これらに限定されない。R2は、スルホン化され得る任意の基材であり、そして芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、ならびに有機分子/無機分子および有機構造体/無機構造体が挙げられるが、これらに限定されない。この架橋剤上の官能基は、鎖の末端においてまたは骨格のどこかにおいて出現し得る。架橋成分とこのイオン伝導性基材の結合は、非水性環境において起こる。水の存在は、反応の程度を制限し得る。さらに、この反応温度、持続時間および成分濃度は全て、架橋度および反応組成物の動的性質に影響を及ぼす。
【0024】
末端アミン化された架橋剤とイオン伝導性基材との間の反応は、以下の反応式において一般化される:
【0025】
【化10】
式2は、アミン化された架橋剤とスルホン化された基材との間の直接共有結合的架橋法についての一般化である。R1およびR2は、式1に列挙されたものと同じ材料を示す。
【0026】
さらに、この反応は、この架橋添加剤上のスルホン酸基およびこのイオン伝導性基材の上のアミン基またはヒドロキシル基に対して起こり得る。これらの反応は、以下の式3および式4において一般化される:
【0027】
【化11】
ここでR3は、架橋成分の主鎖であり、この主鎖としては、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、および有機分子/無機分子が挙げられるが、これらに限定されない。R4は、スルホン化され得る任意の基材であり、そして芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、ならびに有機分子/無機分子および有機構造体/無機構造体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
全ての反応スキームにおいて使用される反応溶媒としては、高沸点の、非極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)またはジメチルホルムアミド(DMF))が挙げられるが、これらに限定されない。この反応は、トルエンによる水の除去を介して共沸蒸留下で進行させて、反応速度(reaction kinetics)を促進し得る。反応時間は、使用される条件に依存して変動し得るが、代表的には、1〜12時間、より好ましくは、3〜10時間の範囲である。この架橋添加剤が、アミンまたはヒドロキシルで官能化されている場合、この反応混合物は、ベースポリマーのスルホン酸の部位に関して0.1%〜100% 架橋成分モル当量からなり得るが、好ましくは、0.1〜8%の間である。この架橋添加剤が、スルホン酸で官能化されている場合、この反応混合物は、ベースポリマーのアミン基またはヒドロキシル基に関して0.1%〜100% 架橋成分モル当量からなり得るが、好ましくは、0.1%〜8%である。
【0029】
この開示される架橋成分は、湿潤条件および乾燥条件の両方で、基材の引張り強度を改良する。これは、主に、分子量の増加および隣接するポリマー鎖間の連結の強化に起因する。さらに、この架橋剤の本質的な性質により、疎水性領域または親水性領域のいずれかが付与され、これらの領域は、得られる材料の流体力学的性質全体に影響を及ぼす。種々の分子量の特定の架橋剤の使用は、引張り強度を犠牲にすることなく、この材料の伸びを調節することを可能にする。
【0030】
ポリマー鎖において、この材料の伸びは、シート状にする前の材料のコイル形成(coiling)および配向に直接依存し、共有結合的架橋は、材料の伸び性能に影響を及ぼす。架橋剤が長くなるほど、材料の伸びは増大するが、材料の引張り強度は犠牲にならない。図1における表は、この現象を強調している。スルホン酸基を介して共有結合的架橋により形成される架橋網目は、この基材の物理的特性の重大な制御レベルを可能にする。引張り強度、ヤング率、および破断時伸びの改良は、架橋剤を基材に組み込んだことの直接的な結果である。図1に示されるように、一般に、この材料の伸びは、架橋剤の長さが増大するにつれて増大している;一方で引張り強度は、架橋剤のパーセンテージが上がるにつれて増大している。
【0031】
さらに、架橋成分は、ベースとなるイオン伝導性材料に微小構造変化を付与し得、それにより、得られる材料の透過性を制限し得る。イオン伝導性チャネルサイズが小さくなると、この材料のメタノール浸透性もまた、減少する。プロトン交換膜のメタノール浸透性の低下は、直接メタノール燃料電池(DMFC)の性能の改良に重要である。図2は、この架橋成分がベースとなるイオン伝導性ポリマーにもたらした、メタノールの横断の減少を示す。この架橋剤を組み込むことで、厚みおよびポリマー型を正規化したときにメタノールの横断が30%減少する。
【0032】
この材料の共有結合性架橋により形成される微小構造網目は、図3の走査型電子顕微鏡写真により示されるように、目に見える。これらの走査型電子顕微鏡写真は、種々の架橋剤で架橋されたベースとなるイオン伝導性材料を示す。これらの顕微鏡写真の間で目に見えるクモの巣様の網目の大きさは、架橋剤の差と相関する。この微小構造の目に見える差は明らかであり、そして、膜の全ての物理的特性における増加と相関する。材料の水の取込みのような他の特性もまた、共有結合性の架橋、ならびに架橋剤の構造および量にわたる制御により操作され得る。
【0033】
ベースとなるイオン伝導性材料は、その対象とする目的には高すぎるかまたは低すぎるかのいずれかである、固有の水の取込み特性を有し得る。この高すぎる水の取込みは、材料の物理的特性の弱化をもたらし得る一方で、低すぎる水の取込みは、高い効率で、プロトンを伝導する、イオン伝導性材料の能力を制限し得る。膜の水分平衡は、高い燃料電池の性能に重要である。用法にあった材料を仕立てるために、共有結合性の架橋は、ポリマー電解質膜のための理想的なモディファイアーとして作用し得る。図4〜6に見られるように、基材材料内への架橋成分の組込みは、ベースとなるイオン伝導性材料の水の取込みを増加または減少させ得る。
【0034】
これまでに言及したように、燃料電池におけるプロトン交換膜としての可能性を有する多くの安価な酸官能化芳香族ポリマーが、その親水性の性質に起因して、水の存在下で、過剰に膨潤する。この過剰な浸透圧性の膨潤は、燃料電池におけるイオノマーとしてのこれらの使用を制限する。Kerresらによる以前の研究は、これらの材料が架橋され、よって、浸透圧性の膨潤が改善され得るが、得られる材料は、低いプロトン伝導性を有したことを示した(米国特許出願第2003/0032739号を参照のこと)。本発明において開示される架橋成分は、電気化学的性能の損失(例えば、プロトン伝導性)を最小限にし得る、スルホン酸のような官能基を組込み得、かつ、この材料の酸化抵抗性を増大し得る。
【0035】
燃料電池の使用における膜の材料寿命は、操作可能な酸化的大気中の材料の安定性に大いに依存する。官能基が化学骨格に直接結合した非修飾(非架橋)ポリマー材料は、その主骨格から取り除かれた官能基を有する他の材料よりも、程度が大きい酸化を生じ得る。いくつかの場合、開示される架橋剤は、材料の化学的安定性を増加し得る。図9に見られるように、高い酸化的大気中のベース材料の安定性は、架橋剤と結合されたベース材料の安定性よりも低い。ベース材料単独では、3% H2O2および0.4M硫酸鉄の溶液中、4時間後に、その材料の10%の損失を示すが、架橋剤と共に組み込まれたベース材料は、5%の損失のみを示す。明らかなように、性能を改良する架橋剤は、多くの局面においてこの材料を改善する。
【0036】
図6〜8は、酸官能化芳香族ポリエーテルポリマー(35% sPEK)に対する、本発明の効果を強調する。いくつかの場合、スルホン化架橋剤の組込みは、プロトン伝導性を有意に減少させることなく、浸透圧性の膨潤を減少するのに役立つ。この結果は、燃料電池において使用するために、酸官能化芳香族ポリマーの特徴を改善する際に、非常に有用であり得る。さらに、図7および8は、IECとプロトン伝導性の結果の不整合を示す。架橋剤成分の量が増えるにつれ、得られるポリマーのIECが減少する。この結果により、得られる構成についての、スルホン酸部位の量が組込まれた架橋添加物につき1つずつ減少すると認められた。この減少は、図8で観察されたものと一致した。しかし、同じ材料について、プロトン伝導性は、実際は、3%の架橋剤のサンプルと5%の架橋剤のサンプルとの間で増加した。この結果は、予想外であり、架橋添加物が組込まれた後に得られた材料の微小構造の変化に起因する可能性が最も高くあり得る。導電性が増加しつつ、IECが減少する様式で微小構造を変更する本発明の能力は、プロトン交換膜としての使用に適切な様式で酸官能化芳香族ポリマーを修飾するための有意な可能性などが存在することを示唆する。性能を改良する架橋剤は、ベース材料の特性を変化させ、ならびに、特定の使用に合ったこの材料の仕立てを可能にする。
【0037】
本発明の共有結合性架橋電解質は、図10、11および12に図示される電気化学的燃料電池においてプロトン交換膜として使用するために特に適している。電気化学的電池10は、一般に、アノード流れ場構造(flow field structure)およびカソード流れ場構造により挟まれた膜電極アセンブリ12を備える。アノード側では、この電池は、終板(endplate)14、ガスの分配を促進するための開口部22を備えるグラファイトブロックまたは二極性プレート18、ガスケット26、およびカーボンクロス集電体30を備える。逆に、カソード側では、この電池は、ステンレス鋼終板16、ガス分配を促進するための開口部24を備えるグラファイトブロックまたは二極性プレート20、ガスケット28、およびカソードカーボンクロス集電体32を備える。カーボンクロス材料は、分配層のための多孔性導電性支持体である。
【0038】
この電気化学的電池はまた、図11および12に示すような膜電極アセンブリ(MEA)12を備える。このMEAは、アノード電極42およびカソード電極44に挟まれた、プロトン交換膜46を備える。各々の電極は、カーボンクロスまたはカーボン紙のような多孔性電極材料から作製される。本発明の複合電解質を含むプロトン交換膜46は、燃料電池の作動の間に、プロトン伝導媒体を提供する。アノード集電体30およびカソード集電体32は、それぞれ、リード線31、33によって、外部回路50に接続される。この外部回路は、米国特許第5,248,566号、同第5,272,017号、同第5,547,777号および同第6,387,556号(これらは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるもののような、任意の従来の電子デバイスまたは電子負荷装置を含み得る。この構成要素(主に、MEA)は、公知の技術によって、密閉シールされ得る。
【0039】
作動中、燃料供給源37からの燃料は、アノードを通って拡散し、そして、酸化剤供給源39(例えば、容器またはアンプル)からの酸化剤は、MEAのカソードを通って拡散する。MEAにおける化学反応は、起電力を生じ、電子が、電子負荷装置を通って輸送される。水素燃料電池は、水素を燃料として、そして酸素を酸化剤として使用する。直接メタノール燃料電池については、燃料は液体メタノールである。
【0040】
本発明の複合電解質は、例えば、米国特許第5,248,566号および同第5,547,777号に記載される従来の燃料電池において使用され得る。さらに、いくつかの燃料電池が、燃料電池スタックを製造または組立てるための従来の手段によって、直列で接続され得る。
【0041】
以下の実施例は、プロトン交換膜として処方および試験される、多数の架橋膜電解質を例示する。これらは、全ての可能な実施形態を包含することは意味せず、そして、これらは、単に、読み手に本発明の意義を提供するのみである。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
第1の実施例は、有機カチオン交換材料を含む架橋電解質材料を製造するプロセスを記載する。芳香族ポリマー基材である、60,000amuを超える分子量を有するジスルホン化ポリエーテルケトンを、米国特許出願第2002/0091225 A1号に記載されるように製造する。この基材のスルホン化の程度を、この基材を、0.5M硫酸中で還流することによりプロトン化した後に、イオン交換容量に基づいて計算する。次いで、このプロトン化したポリマーを、減圧下で完全に乾燥させる。
【0043】
2500amuの分子量を有するフェノール末端ポリエーテルケトンの架橋剤を製造し、米国特許出願第2002/0091225 A1号に記載される方法と同様に乾燥させる。次いで、この乾燥した基材ポリマーおよび架橋剤を、DMSOのような高沸点溶媒中で混合する。この溶液を、ディーン−スターク(dean−stark)装置にて、135℃と175℃との間で4時間、トルエンと共に共沸蒸留する。次いで、トルエンを除去し、この反応を、6時間進行させる。次いで、この得られた粘性溶液を、平坦なプレート上に注ぎ、ドクターブレード装置にて平たく成型する。この溶媒を、90℃にて12時間エバポレートさせ、その後、130℃にて12時間、そして150℃にて12時間、さらに乾燥させる。次いで、このフィルムを、成型表面から取り外し、H2O中で1時間還流する。次いで、この水和したフィルムを、0.5Mの沸騰したH2SO4中で1時間プロトン化し、次いで、洗浄水のpHが中性に近くなるまで、脱イオン(DI)水中でリンスする。次いで、この膜を、その物理的特性および電気化学的性能特性について試験し、イオン伝導性基材と比較する。
【0044】
(実施例2)
第2の実施例は、官能化架橋材料を製造するプロセスを記載する:市販のポリマー材料(Victrex製のPEEK)を、濃硫酸中に溶解し、一定温度で所定の時間、スルホン化させる。次いで、このポリマーを、氷水中で沈殿させ、洗浄水が中性になるまでリンスし、次いで、減圧下で乾燥させる。次いで、このフェノールスルホン化架橋剤を、スルホン化ジフルオロジフェノールケトンとビスフェノールAとのコポリマー化により合成する。各モノマーのモル比を用いて、架橋成分の得られる分子量およびそのスルホン化レベルを計算する。次いで、このフェノール末端ポリマー鎖から構成される得られる架橋成分をリンスし、そして、減圧下で乾燥させる。
【0045】
次いで、このスルホン化ポリマー基材を、スルホン化架橋剤と混合し、DMSO中に溶解する。ポリマー基材の架橋剤に対する比を計算し、その結果、この架橋剤は、1〜50モル%を表した。この反応物を、ディーン−スターク装置にて、135℃と175℃との間で、トルエンと共に共沸蒸留する。次いで、トルエンを175℃にて除去し、この反応を8時間継続させる。その後、1つ以上の無機添加物を添加し得る。次いで、この得られた混合物を、トレイ内で成型し、そして、90℃にて12時間エバポレートさせ、その後、135℃にて24時間、減圧下で加熱する。次いで、この乾燥したフィルムを、1M H2SO4溶液中でプロトン化し、dH2Oでリンスする。次いで、この膜を、その物理的特性および電気化学的特性について試験する。
【0046】
無機添加物は、Taftらによる米国特許出願第10/219,083号(2002年8月13日出願、発明の名称「Composite Electrolyte For Fuel Cells」、この出願は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるものであり得る。具体的には、無機添加物は、例えば、クレイ、ゼオライト、含水酸化物および無機塩類を含む群から選択される。粘土は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、マイカ、ベントナイト、ノントロナイト、バイデライト(beidellite)、ヴォルコンスキー石(volkonskoite)、サポナイト、マガディアイト(magadite)、ケニヤアイト(kenyaite)、ゼオライト、アルミナ、ルチルからなる群より選択される、アルミノケイ酸ベースの交換材料が挙げられる。
【0047】
(実施例3)
第3の実施例は、比較として、スルホンアミド結合がまた、スルホン酸官能基のアミン末端架橋剤への直接的な架橋により形成されることを示す。この架橋反応は、反応条件または組成が変化なしで、実施例1および2に詳述した方法と同様に進み得る。この得られるゲルを、上記のような様式で成型し得る。次いで、スルホンアミド架橋膜を、燃料電池内へのその取り込みのために、または、さらなる、物理的試験および電気化学的試験のために調製し得る。
【0048】
(実施例4)
第4の実施例は、アミン末端架橋剤の、スルホン化イオン伝導性基材への間接的な反応によって、スルホンアミド架橋材料を形成するプロセスを記載する。この反応は、実施例1および実施例2に列挙したものと同じ架橋剤および基材を使用する。第1に、スルホン化基材をプロトン化する。次いで、この基材を、n−メチル−ピロリジノン(10wt%溶液)のような高沸点溶媒中に溶解する。次いで、カルボニルジイミジゾール(CDI)の基材のスルホン酸基に関する化学量論的な量を、この溶液に添加し、60℃にて6時間反応させる。スルホン酸部位のCDIへの中間が反応が生じた後、次いで、このアミン末端架橋剤を添加する。アミン末端架橋剤の化学量論的な添加をして、90℃にて12時間反応させ、その後、このフィルムを、実施例1に記載される方法と同じ方法により成型する。次いで、このフィルムを、乾燥させ、プロトン化し、そして、試験のために準備する。
【0049】
まとめると、本発明は、性能を改良する架橋剤、イオン伝導性材料へとこれらを組込むための方法、および、高性能電解質膜材料として燃料電池内へのこれらの組込みを提供する。ベースとなるイオン交換材料と共に架橋剤を組込むことにより、燃料電池においてプロトン交換材料として使用するための、イオン交換材料の物理的な特徴が改善され、そして、潜在的に、全体的な性能が改善される。さらに、架橋成分は、低コストイオン交換基材を高性能イオノマー中への容易な仕立てを可能にする。
【0050】
本発明は、示される実施例に従って説明されてきたが、これらの実施形態に対するバリエーションが、当業者に明らかであり、そして、これらのバリエーションは、本発明の範囲および精神の範囲内である。従って、示される説明および実施形態は、例示目的のみとして考えられ、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって示されることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の性能を改良する架橋膜は、所望の架橋成分をイオン伝導性基材と反応させることによって製造され得る。好ましい溶媒であるDMSOのような高沸点溶媒が、この化学反応のための反応物を溶解するために使用される。さらに、NMP、DMSO、DMACおよびDMFのような他の溶媒が、使用され得る。これらは、広範なリストであることは意味しないが、読み手に、使用され得る他の溶媒についての意味(sense)を与えることを意味する。この反応は、共沸蒸留または他の形態の水を含まない反応条件のいずれかによって、乾燥した大気中で生じる。
【0052】
基材が首尾よく所望の架橋成分で架橋された後、粘性溶液が、基板上に注がれ、均一な厚さになるように平らにされる。あるいは、この混合物はまた、ドクターブレードによって成型され得る。この得られるフィルムを乾燥させ、基板から取り外し、そして、使用前に大きさを合わせて切断される。乾燥中のこの膜の加熱、またはこの膜への減圧の適用がまた、エバポレーションを促進するために使用され得る。
【0053】
本発明のための好ましい製造技術は、テープ成型法であるが、この方法により、分散剤中の成分の混合物が、平らなシート上に注がれる。ゲルを横断して移動するドクターブレードが、その高さを、約0.5μm〜約500μm、そして好ましくは、約50μm〜約300μmの範囲の所望の厚さへと調節する。溶媒のエバポレーションは、温度および湿度が制御された環境において行なわれる。その後、この膜は基板から取り外され、そして、プロトン交換膜として使用するために調整される。調製としては、加水分解、焼なまし、プロトン化および水和が挙げられ得るが、これらに限定されない。膜の調製は、得られるフィルムの特定の処方に依存する。テープ成型は、開示される膜を製造するために使用され得るが、押出し成形およびトレイ成型のような他の方法が使用され得る。
【0054】
試験する際、この膜は、その水の取込み、プロトン伝導性、イオン交換容量、および機械的特性について評価される。
【0055】
水の取込みは、取込み百分率によってなされる:
%水の取込み=(重量湿潤−重量乾燥)*100/(重量乾燥)。
【0056】
この評価のために、架橋膜のサンプルは、対流オーブン内で、100℃にて24時間乾燥され、そして、乾燥重量を量られ、次いで、90℃のdH2O内に48時間置き、湿重量を量る。
【0057】
プロトン伝導性の測定について、評価は、例えば、1Hz〜50kHzの間のSolatron周波数応答分析器(Solartron frequency response analyzer)を用いて実施される。X−遮蔽における抵抗性を、抵抗としてみなし、次いで、これを使用して、以下の等式により、材料の導電性を計算する:
導電性(S/cm)=厚さ(cm)/(抵抗(Ω)*電極面積(cm2))。
【0058】
材料のイオン交換容量(IEC)を測定する際に、IECは、湿式化学法による架橋反応の前後に決定される。そのために、この材料は、1N H2SO4中に12時間浸すことによって、まずプロトン化され、次いで、リンス水が中性pH近くになるまでリンスされる。この膜は、乾燥され、秤量され、次いで、1M NaCl溶液中に12時間置かれる。この溶液内の遊離したH+は、次いで、標準的な0.01N NaOH溶液で滴定され、そして、IECが計算される。
【0059】
架橋材料の機械的特性が、例えば、Instron機械式試験装置を用いて試験することによって決定される。これらの材料を、プロトン化し、リンスし、そして、24時間23℃のdH2O中に置かれ、加水分解平衡させる。このフィルムは、標準的な大きさに切断され、次いで、水の外で試験され(tested out of water)、23℃で水和させ、そして、70℃にて水中に浸される。機械的特性が観察され、そして、50mm/分の引き速度下で、Instronソフトウェアにより記録される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
添付の図面は、本明細書の一部に組み込まれかつ本明細書の一部を構成し、本発明のいくつかの実施形態を例示し、明細書とともに、本発明の原理を説明するために役立つ。都合がよい場合は常に、同じまたは類似の要素を指すために、同じ参照番号が図面全体を通して使用される。
【図1】図1は、変動量の架橋成分を有するスルホン化ポリエーテルケトン(sEK)膜についての引張り強さおよび伸び値を例示する。
【図2】図2は、非修飾スルホン化ポリエーテルケトン(sEK)膜、5000amuポリエーテルケトン(EK)ベースの架橋剤での架橋sEK膜、およびNafion(登録商標)−115についての、メタノール横断流の値のグラフを示す。
【図3】図3は、sPEKベースの膜についての架橋網目のSEM写真を示す。
【図4】図4は、種々の架橋パーセント(5000amuの非スルホン化PEK架橋添加剤)を有するsPEK膜の水取り込み値の棒グラフを示す。
【図5】図5は、種々の架橋添加剤のパーセンテージ(3000amu 非スルホン化PEK架橋添加剤)を有するsPEK膜の水取り込み値の棒グラフを示す。
【図6】図6は、種々のスルホン化架橋添加剤パーセンテージ(2500amu スルホン化PEK架橋添加剤)を有するsPEK膜の水取り込み値の棒グラフを示す。
【図7】図7は、変動量の架橋成分(2500amu スルホン化PEK架橋添加剤)を含むsPEK膜についてのプロトン伝導性値のグラフを示す。
【図8】図8は、変動量の架橋成分(2500amu スルホン化PEK架橋添加剤)を含む非修飾sPEK膜についてのイオン交換容量(IEC)値の棒グラフを示す。
【図9】図9は、非修飾sPEKおよび架橋sPEKについての酸化抵抗性値の棒グラフを示す。
【図10】図10は、分解した燃料電池を示す。
【図11】図11は、単一の電気化学的燃料電池の部分断面図を示す。
【図12】図12は、膜電極アセンブリの部分断面図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性材料の物理的特性および機械的特性を改良するための方法であって、該方法は、以下の工程:
イオン伝導性基材を提供する工程;
架橋剤を提供する工程;および
該架橋剤を、ヒドロキシルとスルホン酸との縮合を介して、またはアミンとスルホン酸との縮合を介して該イオン伝導性基材に組み込む工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込む工程は、非水性環境において生じる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機ポリマー網目もしくは無機ポリマー網目、または任意のこれらの組み合わせを含む鎖を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、アミン基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基のうちの1つ以上に加えて、前記架橋剤は、前記イオン伝導性基材との共有結合的な架橋結合を形成するための少なくとも1つの官能基を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、有機物質ベースの材料、無機物質ベースの材料、またはこれらの組成物である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、有機物質ベースであり、かつ芳香族構造または脂肪族構造を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記芳香族構造は、ポリ−アリールエーテルケトンおよびポリ−アリールスルホンを含む、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記脂肪族構造は、ペルフルオロ化コポリマー型またはスチレンコポリマー型を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、1種以上の無機添加剤を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記無機添加剤は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記クレイは、アルミノケイ酸ベースの交換材料を含み、該アルミノシリケートベースの交換材料は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、マイカ、ベントナイト、ノントロナイト、バイデル石、ヴォルコンスキー石、サポナイト、マガディアイト、ケニヤアイト、ゼオライト、アルミナ、ルチルからなる群より選択される、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、所定の分子量、ならびに/またはスルホン酸、リン酸、カルボン酸、イミダゾール、アミン、およびアミドを含む官能基を含有するポリマー構造を有する、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、末端ヒドロキシル化されており、前記イオン伝導性基材は、スルホン化されており、前記組み込みは、該末端ヒドロキシル化された架橋剤と該スルホン化されたイオン伝導性基材との間の直接共有結合的な架橋を含み、その結果、該架橋剤と該イオン伝導性基材との反応は、以下の形態:
【化1】
であり、
ここでR1は、該末端ヒドロキシル化された架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されたイオン伝導性基材である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、末端アミン化されており、前記イオン伝導性基材は、スルホン化されており、前記組み込みは、該末端アミン化された架橋剤と該スルホン化されたイオン伝導性基材との間の直接共有結合的な架橋を含み、その結果、該架橋剤と該イオン伝導性基材との反応は、以下の形態:
【化2】
であり、
ここでR1は、該アミンが末端にある架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されているイオン伝導性基材である、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、末端スルホン酸化されており、前記イオン伝導性基材は、末端アミン化または末端ヒドロキシル化されており、前記組み込みは、該末端スルホン酸化された架橋剤と該末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたベースとなるイオン伝導性材料との間の直接共有結合的な架橋を含み、その結果、該架橋剤と該ベースとなるイオン伝導性材料との反応は、それぞれ、以下の形態:
【化3】
または
【化4】
であり、
ここでR3は、該スルホン酸が末端にある架橋剤の主鎖であり、R4は、該アミンまたはヒドロキシルが末端にあるイオン伝導性基材である、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、反応溶媒を必要とし、該反応溶媒は、高沸点の非極性溶媒を含み、該高沸点の非極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリジン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群より選択される、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、トルエンによる水の除去を介する共沸蒸留下で進行させて、反応速度を促進する、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、イオン伝導性基材のスルホン酸部位に関して、0.1%〜8% 架橋剤モル当量を必要とする、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、イオン伝導性基材のアミン基部位またはヒドロキシル基部位に関して、0.1%〜8% 架橋剤モル当量を必要とする、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、方法。
【請求項25】
イオン伝導性材料に官能性を付加するための方法であって、該方法は、以下の工程:
イオン伝導性基材を提供する工程;
修飾された架橋剤を提供する工程;および
該修飾された架橋剤を、ヒドロキシルとスルホン酸との縮合を介して、またはアミンとスルホン酸との縮合を介して、該イオン伝導性基材に組み込む工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
以下:
アノード;
カソード;
該アノードへの燃料供給手段;
該カソードへの酸化剤供給手段;
ポリマー電解質膜であって、該ポリマー電解質膜は、該カソードと該アノードとの間に配置され、そしてヒドロキシルとスルホン酸との縮合を介して、またはアミンとスルホン酸との縮合を介して、イオン伝導性基材に架橋された架橋剤で形成されている、ポリマー電解質膜;および
該ポリマー電解質膜を含む膜電極アセンブリ(MEA)、
を含む、を含む燃料電池。
【請求項27】
電気化学的燃料電池における使用に適したポリマー膜を製造する方法であって、該方法は、以下の工程:
以下の(a)〜(c):
(a)架橋されたポリマー鎖、
(b)該ポリマー鎖を溶解するための溶媒、および
(c)任意の量の無機添加剤、
を含む、粘性性質のポリマー材料を合成する工程、
該合成されたポリマー材料を拡げて、均一な厚みの層を基板上に形成する工程;
該溶媒を、該合成されたポリマー材料から制御雰囲気下でエバポレートさせて、該ポリマー電解質膜を得る工程;ならびに
プロトン化および精製により、燃料電池における使用のためのポリマー電解質膜を調製する工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
目的に合わせて作ることができる微細構造を有する材料であって、以下:
スルホン化されたイオン伝導性基材;および
末端ヒドロキシル化されておりかつ該スルホン化されたイオン伝導性基材に直接共有結合的な架橋を介して架橋された、架橋剤、
を含み、該直接共有結合的な架橋は、以下:
【化5】
を特徴とし、ここでR1は、該末端ヒドロキシル化された架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されたイオン伝導性基材である、
材料。
【請求項29】
請求項28に記載の材料であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、材料。
【請求項30】
請求項29に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、材料。
【請求項31】
請求項29に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、材料。
【請求項32】
請求項28に記載の材料であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項33】
請求項28に記載の材料であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項34】
目的に合わせて作ることができる微細構造を有する材料であって、以下:
スルホン化されたイオン伝導性基材;および
末端アミン化されておりかつ該スルホン化されたイオン伝導性基材に直接共有結合的な架橋を介して架橋された、架橋剤、
を含み、該直接共有結合的な架橋は、以下:
【化6】
を特徴とし、ここでR1は、該アミンが末端にある架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されたイオン伝導性基材である、
材料。
【請求項35】
請求項34に記載の材料であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、材料。
【請求項36】
請求項35に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、材料。
【請求項37】
請求項35に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、材料。
【請求項38】
請求項34に記載の材料であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項39】
請求項34に記載の材料であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項40】
目的に合わせて作ることができる微細構造を有する材料であって、以下:
末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたイオン伝導性基材;および
末端スルホン酸化されており、かつ該末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたイオン伝導性基材に直接共有結合的な架橋を介して架橋された、架橋剤、
を含み、該直接共有結合的な架橋は、以下:
【化7】
または
【化8】
を特徴とし、ここでR3は、該末端スルホン酸化された架橋剤の主鎖であり、R4は、該末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたイオン伝導性基材である、
材料。
【請求項41】
請求項40に記載の材料であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、材料。
【請求項42】
請求項41に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、材料。
【請求項43】
請求項41に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、材料。
【請求項44】
請求項40に記載の材料であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項45】
請求項40に記載の材料であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項1】
イオン伝導性材料の物理的特性および機械的特性を改良するための方法であって、該方法は、以下の工程:
イオン伝導性基材を提供する工程;
架橋剤を提供する工程;および
該架橋剤を、ヒドロキシルとスルホン酸との縮合を介して、またはアミンとスルホン酸との縮合を介して該イオン伝導性基材に組み込む工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込む工程は、非水性環境において生じる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機ポリマー網目もしくは無機ポリマー網目、または任意のこれらの組み合わせを含む鎖を有する、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、アミン基、ヒドロキシル基、またはスルホン酸基のうちの1つ以上に加えて、前記架橋剤は、前記イオン伝導性基材との共有結合的な架橋結合を形成するための少なくとも1つの官能基を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、有機物質ベースの材料、無機物質ベースの材料、またはこれらの組成物である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、有機物質ベースであり、かつ芳香族構造または脂肪族構造を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記芳香族構造は、ポリ−アリールエーテルケトンおよびポリ−アリールスルホンを含む、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記脂肪族構造は、ペルフルオロ化コポリマー型またはスチレンコポリマー型を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、1種以上の無機添加剤を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記無機添加剤は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記クレイは、アルミノケイ酸ベースの交換材料を含み、該アルミノシリケートベースの交換材料は、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、マイカ、ベントナイト、ノントロナイト、バイデル石、ヴォルコンスキー石、サポナイト、マガディアイト、ケニヤアイト、ゼオライト、アルミナ、ルチルからなる群より選択される、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、所定の分子量、ならびに/またはスルホン酸、リン酸、カルボン酸、イミダゾール、アミン、およびアミドを含む官能基を含有するポリマー構造を有する、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、末端ヒドロキシル化されており、前記イオン伝導性基材は、スルホン化されており、前記組み込みは、該末端ヒドロキシル化された架橋剤と該スルホン化されたイオン伝導性基材との間の直接共有結合的な架橋を含み、その結果、該架橋剤と該イオン伝導性基材との反応は、以下の形態:
【化1】
であり、
ここでR1は、該末端ヒドロキシル化された架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されたイオン伝導性基材である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、末端アミン化されており、前記イオン伝導性基材は、スルホン化されており、前記組み込みは、該末端アミン化された架橋剤と該スルホン化されたイオン伝導性基材との間の直接共有結合的な架橋を含み、その結果、該架橋剤と該イオン伝導性基材との反応は、以下の形態:
【化2】
であり、
ここでR1は、該アミンが末端にある架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されているイオン伝導性基材である、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記架橋剤は、末端スルホン酸化されており、前記イオン伝導性基材は、末端アミン化または末端ヒドロキシル化されており、前記組み込みは、該末端スルホン酸化された架橋剤と該末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたベースとなるイオン伝導性材料との間の直接共有結合的な架橋を含み、その結果、該架橋剤と該ベースとなるイオン伝導性材料との反応は、それぞれ、以下の形態:
【化3】
または
【化4】
であり、
ここでR3は、該スルホン酸が末端にある架橋剤の主鎖であり、R4は、該アミンまたはヒドロキシルが末端にあるイオン伝導性基材である、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、反応溶媒を必要とし、該反応溶媒は、高沸点の非極性溶媒を含み、該高沸点の非極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリジン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群より選択される、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、トルエンによる水の除去を介する共沸蒸留下で進行させて、反応速度を促進する、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、イオン伝導性基材のスルホン酸部位に関して、0.1%〜8% 架橋剤モル当量を必要とする、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記組み込みは、イオン伝導性基材のアミン基部位またはヒドロキシル基部位に関して、0.1%〜8% 架橋剤モル当量を必要とする、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、方法。
【請求項25】
イオン伝導性材料に官能性を付加するための方法であって、該方法は、以下の工程:
イオン伝導性基材を提供する工程;
修飾された架橋剤を提供する工程;および
該修飾された架橋剤を、ヒドロキシルとスルホン酸との縮合を介して、またはアミンとスルホン酸との縮合を介して、該イオン伝導性基材に組み込む工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
以下:
アノード;
カソード;
該アノードへの燃料供給手段;
該カソードへの酸化剤供給手段;
ポリマー電解質膜であって、該ポリマー電解質膜は、該カソードと該アノードとの間に配置され、そしてヒドロキシルとスルホン酸との縮合を介して、またはアミンとスルホン酸との縮合を介して、イオン伝導性基材に架橋された架橋剤で形成されている、ポリマー電解質膜;および
該ポリマー電解質膜を含む膜電極アセンブリ(MEA)、
を含む、を含む燃料電池。
【請求項27】
電気化学的燃料電池における使用に適したポリマー膜を製造する方法であって、該方法は、以下の工程:
以下の(a)〜(c):
(a)架橋されたポリマー鎖、
(b)該ポリマー鎖を溶解するための溶媒、および
(c)任意の量の無機添加剤、
を含む、粘性性質のポリマー材料を合成する工程、
該合成されたポリマー材料を拡げて、均一な厚みの層を基板上に形成する工程;
該溶媒を、該合成されたポリマー材料から制御雰囲気下でエバポレートさせて、該ポリマー電解質膜を得る工程;ならびに
プロトン化および精製により、燃料電池における使用のためのポリマー電解質膜を調製する工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
目的に合わせて作ることができる微細構造を有する材料であって、以下:
スルホン化されたイオン伝導性基材;および
末端ヒドロキシル化されておりかつ該スルホン化されたイオン伝導性基材に直接共有結合的な架橋を介して架橋された、架橋剤、
を含み、該直接共有結合的な架橋は、以下:
【化5】
を特徴とし、ここでR1は、該末端ヒドロキシル化された架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されたイオン伝導性基材である、
材料。
【請求項29】
請求項28に記載の材料であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、材料。
【請求項30】
請求項29に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、材料。
【請求項31】
請求項29に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、材料。
【請求項32】
請求項28に記載の材料であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項33】
請求項28に記載の材料であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項34】
目的に合わせて作ることができる微細構造を有する材料であって、以下:
スルホン化されたイオン伝導性基材;および
末端アミン化されておりかつ該スルホン化されたイオン伝導性基材に直接共有結合的な架橋を介して架橋された、架橋剤、
を含み、該直接共有結合的な架橋は、以下:
【化6】
を特徴とし、ここでR1は、該アミンが末端にある架橋剤の主鎖であり、R2は、該スルホン化されたイオン伝導性基材である、
材料。
【請求項35】
請求項34に記載の材料であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、材料。
【請求項36】
請求項35に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、材料。
【請求項37】
請求項35に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、材料。
【請求項38】
請求項34に記載の材料であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項39】
請求項34に記載の材料であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項40】
目的に合わせて作ることができる微細構造を有する材料であって、以下:
末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたイオン伝導性基材;および
末端スルホン酸化されており、かつ該末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたイオン伝導性基材に直接共有結合的な架橋を介して架橋された、架橋剤、
を含み、該直接共有結合的な架橋は、以下:
【化7】
または
【化8】
を特徴とし、ここでR3は、該末端スルホン酸化された架橋剤の主鎖であり、R4は、該末端アミン化または末端ヒドロキシル化されたイオン伝導性基材である、
材料。
【請求項41】
請求項40に記載の材料であって、前記イオン伝導性基材は、無機陽イオン交換材料を含む、材料。
【請求項42】
請求項41に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、クレイ、ゼオライト、含水酸化物、および無機塩類からなる群より選択される、材料。
【請求項43】
請求項41に記載の材料であって、前記無機陽イオン交換材料は、シリカベースの材料およびプロトン伝導性ポリマーベースの材料をさらに含む、材料。
【請求項44】
請求項40に記載の材料であって、前記主鎖は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【請求項45】
請求項40に記載の材料であって、前記スルホン化されたイオン伝導性基材は、芳香族ポリマー鎖、脂肪族ポリマー鎖、有機分子および無機分子からなる群より選択される1種以上の鎖を含む、材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−504303(P2007−504303A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524890(P2006−524890)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027938
【国際公開番号】WO2005/022669
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506068014)ホク サイエンティフィック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027938
【国際公開番号】WO2005/022669
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506068014)ホク サイエンティフィック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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