説明

架装用補強部材の取付方法および架装用補強部材取付構造

【課題】従来の補強部材と同等以上の強度を保ちつつも、シャシフレームに直接溶接を施すことなく補強部材を取付ける。
【解決手段】この架装用補強部材取付構造は、コ字状をなすシャシフレーム3の側面に装着されるとともに、シャシフレーム孔3aの対向位置に形成された取付け孔を有する矩形形状の複数の補助板31と、L字状の一対の補強部材本体25,35とを備え、複数の補助板31が、シャシフレーム3の長手方向に沿って車幅方向外側側面にシャシフレーム孔3aを用いてボルト締結により装着され、一対の補強部材25,35が、シャシフレーム3をその上下から挟持するように配されており、補助板31と一対の補強部材25,35とが、車幅方向外側面にて補助板31と一対の補強部材25,35とに限って相互に溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の車両のシャシフレームに車両搭載型クレーン等の作業機械を後付けする際に必要な補強をするための、架装用補強部材の取付方法および架装用補強部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の車両のシャシフレームは、横断面がコ字状をなすとともに自身の車幅方向外側面に装備品の取付け等のためのシャシフレーム孔が貫通形成されている。この種の車両に架装する車両搭載型クレーンでは、このシャシフレーム上にクレーンを搭載する(例えば特許文献1参照)。
その際、図6に類例を示すように、シャシフレーム3の強度を上げるために、横断面がL字状をなし車両前後方向に長尺な補強部材125,135をコ字状のシャシフレーム3の上下に配している。そして、上下の補強部材125,135をシャシフレーム3にそれぞれすみ肉溶接W1するとともに、シャシフレーム3の側面部に当接する面に大きな孔125d、135dを設け、各孔125d、135dに対して円形のスロット溶接W2を複数個所に行なっている。
【0003】
ところで、クレーンでの荷の吊下作業時には、吊下作業によって発生する吊荷モーメントによって、シャシフレームにたわみが発生する。このとき、最も断面2次モーメントが大きいシャシフレームの上下面に溶接を施すと、ひずみによって溶接部から折損が発生しやすくなる。よって、シャシフレームの強度を保つために、シャシフレームの上下面及びその付近の一帯には溶接が行なわれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開実用平4−74183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、装備品の取付けを容易にするために、シャシフレームの車幅方向外側面に形成されたシャシフレーム孔が従来よりも多くなっている。そのため、このようなシャシフレームに対しては、架装用補強部材の溶接脚長を充分に確保できない場合もある。換言すれば、従来の架装用補強部材の取付構造では溶接強度が保てないおそれがある。また、外国の一部のトラック車両メーカーでは、作業機械を後付けする際に必要な補強をするためであっても、シャシフレームへの溶接を全面的に禁止しているところもある。
そこで、他の取付構造として、シャシフレームと補強部材とを溶接で固着せず、多数のボルト等でシャシフレームに補強部材を取り付けることも考えられる。
【0006】
しかし、補強部材の取付用の多数のボルト孔は、シャシフレーム孔が従来よりも多くなっているシャシフレームに対して、その既存のシャシフレーム孔を避けた位置に孔あけ加工を施さなければならない。そのため、車両前後方向に長尺な補強部材は、その多数のボルト孔の位置合わせが困難である。また、図6に類例を示したような、従来の上下2枚の補強部材125,135は、別個に固着されるため、必ずしも一体の剛体を構成しない。そのため、その溶接に替えてボルト締結にした場合、クレーンの吊荷の吊下作業時には、一部のボルトに無理なせん断力がかかってしまう。これによる不意の破断を防止するためには、相応のボルト径が必要となってくるという問題がある。
【0007】
さらに、補強部材の取付における留意事項として、補強部材とシャシフレームの上面、または下面との間には隙間が生じてはならない。このような隙間が生じると、計算した値よりも断面係数の低下が生じて、必要な強度が保てずに補強部材が折損するおそれがあるからである。そのため、このような隙間を生じさせないために必要なボルトの本数や位置も、既存のシャシフレーム孔の制限に合わせて孔あけ加工しなければならないという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、従来の補強部材と同等以上の強度を保ちつつも、シャシフレームに直接溶接を施すことなく補強部材を取付け可能な、架装用補強部材の取付方法および架装用補強部材取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、車両のシャシフレームに作業機械を架装する際に必要な補強をするために用いられ、横断面がコ字状をなすとともに自身の車幅方向外側面にシャシフレーム孔が貫通形成されているシャシフレームに装着される架装用補強部材の取付方法であって、前記シャシフレームの外側面に装着されるとともに、前記シャシフレーム孔の対向位置に形成されたボルト締結用の取付け孔を有する複数の補助板と、前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配されて横断面がL字状をなす一対の補強部材本体とからなる補強部材を用い、前記複数の補助板を前記シャシフレームの長手方向に沿って車幅方向外側面に前記取付け孔とシャシフレーム孔を用いてボルト締結により装着する補助板装着工程と、該補助板装着工程の後に、前記一対の補強部材本体を前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配する補強部材配置工程と、該補強部材配置工程の後に、車幅方向外側面にて前記補助板と前記一対の補強部材本体とに限って相互を溶接する溶接工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のうち第二の発明は、車両のシャシフレームに作業機械を架装する際に必要な補強をするために用いられ、横断面がコ字状をなすとともに自身の車幅方向外側面にシャシフレーム孔が貫通形成されているシャシフレームに装着される架装用補強部材取付構造であって、前記シャシフレームの外側面に装着されるとともに、前記シャシフレーム孔の対向位置に形成されたボルト締結用の取付け孔を有する複数の補助板と、前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配されて横断面がL字状をなす一対の補強部材本体とからなる補強部材を備え、前記複数の補助板は、前記シャシフレームの長手方向に沿って車幅方向外側面に前記取付け孔とシャシフレーム孔を用いてボルト締結により装着され、前記一対の補強部材本体は、前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配されており、前記補助板と前記一対の補強部材本体とが、車幅方向外側面にて前記補助板と前記一対の補強部材本体とに限って相互に溶接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャシフレーム上下の一対の補強部材本体と補助板とに限って溶接で固着させるため、シャシフレームへの溶接を行なうことなしに固着後は一体化した剛体を形成しうる。そして、本発明によれば、それによって作業機械の作業(例えばクレーンであればその吊荷の吊下作業)時に発生するシャシフレームのたわみは、補助板を固定するボルトで受けずに、シャシフレーム上下の補強部材本体とシャシフレームとの上下の接触面で支えることができる。これにより、従来の補強部材と同等以上の強度を保ちつつも、シャシフレームに直接溶接を施すことなく補強部材を取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の架装用補強部材を採用する作業機械の一実施形態に係る車両搭載型クレーン付き車両の正面図である。
【図2】図1の要部(補強部材取付構造部)の拡大図である。
【図3】図1でのA−A断面図である。
【図4】本発明に係る架装用補強部材を構成する、補強部材本体と補助板を説明する分解図であり、同図(a)はその正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図5】図2の要部を更に拡大して示す図である。
【図6】従来の架装用補強部材の取付構造を説明する図であって、同図(a)はその正面図、(b)は(a)でのB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この車両搭載型クレーン付き車両1は、自車両の後方のシャシフレーム3上に荷台5を有している。この荷台5の前端部には、荷台5に積載した貨物等の運転室1a側の部材への接触を防止するための鳥居5aが取り付けられている。そして、この鳥居5aと運転室1aとの間に作業機械として車両搭載型クレーン(以下、単に「クレーン」ともいう)20が架装されている。
【0014】
このクレーン20は、車両のシャシフレーム3上に横架して取り付けられたベース4を有する。このベース4には、その左右に張り出し自在に一対のアウトリガ2が取り付けられている。また、このベース4上には、旋回用油圧モータ5の駆動により旋回自在にコラム6が立設されている。そして、このコラム6の上端部には、ブーム伸縮用油圧シリンダ8の作動による伸縮およびブーム起伏用油圧シリンダ9の作動により起伏自在に枢支されたブーム7が設けられている。
【0015】
また、コラム6にはウインチ11がウインチ用油圧モータ10により駆動可能に設けられており、このウインチ11からブーム7の先端部7sにワイヤロープ12を導いて、ブーム7の先端部7sのシーブを介してフック13にワイヤロープ12を掛回しており、ウインチ11により巻き上げ巻き下げがなされる。なお、この車両搭載型クレーン付き車両1は、同図に示すように、クレーン20のブーム7が荷台5側に向けた姿勢で格納され且つフック13が格納装置でブーム7側に格納される仕様である。
【0016】
ここで、上述のように、このクレーン20のベース4は、シャシフレーム3上に横架して取り付けられるが、図1に示すように、このベース4の取付け部となるシャシフレーム3に対し、シャシフレーム3の強度を上げるために、本発明に係る架装用補強部材30が採用され、ベース4は、この架装用補強部材30を介してシャシフレーム3上に横架されている。なお、この車両搭載型クレーン付き車両1のシャシフレーム3は、その横断面がコ字状をなすとともに自身の車幅方向外側面に装備品の取付け等のためのシャシフレーム孔3a(図3参照)が多数貫通形成されているものである。
【0017】
以下、この架装用補強部材30およびその取付方法並びに取付構造について図2〜4を参照しつつ詳しく説明する。なお、図2は、この補強部材の取付部分の拡大図、図3は図2でのA−A断面図、また、図4は、本発明に係る補強部材と補助板を説明する分解図であり、同図(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図2に要部の拡大図を示すように、この架装用補強部材30は、複数の補助板31(この例では6枚)と、横断面がL字状(図3参照)をなす一対の補強部材本体25,35とから構成されており、これらがコ字状をなすシャシフレーム3に車幅方向外側面側から装着される。
【0018】
詳しくは、架装用補強部材30を構成する補助板31は、図4に示すように、四隅に面取りが施された矩形形状の板部材である。その矩形形状の大きさ(車両上下方向の寸法)は、横断面がコ字状(図4(b)参照)をなすシャシフレーム3の車幅方向外側面部分の大きさ(車両上下方向の寸法)よりも一回り程小さい。ここで、この補助板31の車両前後方向の寸法は、図2に示すように、上下に配置される補強部材本体25,35のような車両前後方向に長尺とした一枚板構造とはせずに、複数枚(この例では6枚)をシャシフレーム3の長手方向に沿って車幅方向外側面に一定間隔の隙間を空けて取りつけられるような短尺の分割構造としている。補助板31が、このような分割構造であると、隣り合う補助板31同士間の隙間によって、クレーン20の吊荷の吊下作業時に発生するシャシフレーム3のたわみを吸収するのに好適である。そして、この補助板31は、シャシフレーム3の車幅方向外側面に、ボルト・ナット32によって装着される。
【0019】
さらに、この補助板31は、シャシフレーム孔3aの対向位置に形成された取付け孔31dを有する。ここで、シャシフレーム3への補助板31の取付けにおいては、車両メーカーから、予め、シャシフレーム3およびそのシャシフレーム孔3aの穿孔位置を記したデータを入手しておくことにより、シャシフレーム孔3aに合わせた取付け孔31dを予め開けておくことができる。なお、この取付け孔31dの形成位置は、シャシフレーム3のできるだけ上下端に開けられた既存のシャシフレーム孔3aを使用するのがよい。このような構成とすれば、ボルト・ナット32の中心とシャシフレーム3の上下面との取付距離をできるだけ小さく抑えることができる。そのため、クレーン作業によるたわみ発生時に、補強部材30をシャシフレーム3からはがそうとする力を効率よく抑制可能だからである。
【0020】
なお、少量の台数しか生産されない車両に対応するための補助板31を製作する場合や、シャシフレーム3側面の表面に、配線クランプや、油圧配管取付けボルト等の干渉物が突出しており、これら干渉物が補助板31と干渉する場合がある。このような場合には、補助板31の取付けを行なうときには、取付け孔31dや干渉物との干渉を避ける回避孔をその場で穴あけ加工を施すようにする。
【0021】
また、補助板31の矩形形状の各辺の大きさは、上記のシャシフレーム3の既存のシャシフレーム孔3aに合わせて孔あけ加工を施す場合も考慮し、取付けボルト数が3乃至5ヶ程度を目安にして取り付け可能な大きさを選定する。これにより、取付け易さ及びボルト穴の加工精度(ボルト孔と孔間のピッチ距離など)が向上するというメリットも生じる。
【0022】
次に、架装用補強部材30を構成する補強部材本体25,35は、図2〜4に示すように、コ字状をなすシャシフレーム3をその上下から挟持するように配されるL字状の一対の補強部材である。補強部材本体25,35は、車両前後方向に長尺な一枚板構造であり、そのL字状の向きは、コ字状をなすシャシフレーム3を車幅方向外側面側から隙間無く覆うように曲げ加工されている。なお、各補強部材本体25,35の車幅方向外側面に当接する面の前後端の角部は、大きな傾斜面25s、35sによる面取りがされている。
【0023】
そして、この補強部材本体25,35の取付けにおいても、予めシャシフレーム孔3aの孔位置を記したデータに基づいて、シャシフレーム孔3aに合わせてその対向位置に、溶接取付用孔25d、35dを予め開けておく。この溶接取付用孔25d、35dの大きさ(内径)は、ボルト・ナット32の締結作業に差し支えないように取付け孔31dよりも大きく、円形のスロット溶接W2を行なうのに適した大きさである。
【0024】
但し、この溶接取付用孔25d、35dについても、上記と同様に、少量生産車や、シャシフレーム側面の表面の干渉物の有無によっては、取付時にその場でガス等によって穴あけ加工を施す必要がある。その場合でも、この溶接取付用孔25d、35dは補助板31との溶接取付用の円形のスロット溶接W2用の取付孔であるので、補助板31の孔加工時と異なり、補強部材本体25の溶接取付用孔25d、35dの孔開け加工精度としては、ボルト取付ピッチの精密さは不要である。なお、ガス孔加工のほか、パンチャーと呼ばれる工具を使用して、取付時にその場で溶接取付用孔25d、35dを加工してもよい。
【0025】
次に、上述した架装用補強部材30の取付方法、並びにこれにより形成される架装用補強部材取付構造について図2〜図5を適宜参照しつつ説明する。
まず、この架装用補強部材30の取付に際しては、使用する複数の補助板31の枚数、およびシャシフレーム3の側面に対する各補助板31の配置位置を決める。補助板31の枚数および配置位置は、上部の補強部材本体25、下部の補強部材本体35の固着位置、およびシャシフレーム3の長手方向での範囲に合わせて、補助板31を車幅方向外側面に当てる位置、および枚数を決める。
【0026】
このとき、矩形形状の補助板31の上辺の面及び下辺の面が、上部の補強部材本体25、または下部の補強部材本体35のR形状をなす折曲げの肩部内側(L字状の内側角部)Kに干渉しないように注意する(図3参照)。肩部内側Kに干渉すると、上下の補強部材本体25、35とシャシフレーム3の上下面との間に隙間が生じ、所望の強度が得られないおそれがあるためである。
【0027】
次いで、シャシフレーム3の既存孔であるシャシフレーム孔3aに、補助板31の取付け孔31dを位置合わせする。なお、相互の孔位置が一致しない場合は、補助板側に取付け孔31dを開け直す。また、シャシフレーム3側面の表面には、配線クランプや油圧配管取付ボルト等が突出していることがある。これらが補助板31と干渉する場合は、この補助板装着準備工程時に、干渉を避けるための回避孔を補助板31に設ける。
そして、位置合わせした補助板31とシャシフレーム3をボルト・ナット32を用いて締結する。つまり、補助板31の車幅方向外側面側からボルト32aを挿入し、シャシフレーム3の内側からナット32bで固定する(補助板装着工程)(図3、図4(b)参照)。
【0028】
次いで、この補助板装着工程の後に、上部の補強部材本体25、下部の補強部材本体35の位置合わせを行い、補助板31との溶接箇所を決定する(補強部材配置工程)。補助板31の取付用のボルト32aとの干渉や、シャシフレーム3の突出物等の干渉があれば、当該干渉物を避ける様に溶接取付用孔25d、35dを適宜に開け直す。
次いで、この補強部材配置工程の後に、シャシフレーム3に対しては溶接することなく、上下の補強部材本体25側面の溶接取付用孔25d、35dについては円形のスロット溶接W2で補助板31に固着させ、上下の補強部材本体25,35の端部と補助板31とをすみ肉溶接W1で固着させる(溶接工程)(図2、図5参照)。これにより、この架装用補強部材取付構造によれば、補助板31と上下一対の補強部材本体25,35が溶接で固着させるため、固着後の架装用補強部材30は一体化した剛体を形成する。
【0029】
次に、上記固着後の架装用補強部材30を装着した車両1にクレーン20を架装する手順を図2および図3を参照して説明する。
まず、図2ないし図3に示すように、クレーン20を固定する位置に合わせて上部の補強部材本体25上にべース4を戴置させ、上部の補強板本体25とべース4とを溶接によって固着させる。次いで、クレーン固定用のボルト22の位置に合わせてボルトブラケット24を一対の補強部材本体25,35にそれぞれ溶接で固着させる。ボルトブラケット24は、車両前後左右の計4ヶ所設ける。次いで、べース4上にクレーン20を載せ、最後に、計4ヶ所のボルトブラケット24とクレーン20とを4ヶ所のボルト22とナット23とによって固定させる。
【0030】
次に、上述の架装用補強部材30の取付方法、および取付構造の作用・効果について説明する。
この架装用補強部材30の取付方法および取付構造は、上述したように、シャシフレーム3の上下部の補強部材本体25,35と補助板31とに限って溶接で固着させるので、シャシフレーム3への溶接を行なうことなしに固着後は、架装用補強部材30を一体化した剛体として形成させることができる。そして、このような構成であれば、それによってクレーン20の吊荷の吊下作業時に発生するシャシフレーム3のたわみは、補助板31を固定するボルト32aで受けずに、シャシフレーム3の上下の補強部材本体25,35とシャシフレーム3の上下の接触面で支えることができる。これにより、従来の補強部材と同等以上の強度を保ちつつも、シャシフレーム3へ直接溶接を施すことなく補強部材を取付けることができる。換言すれば、補強部材を直接シャシフレームにボルト固定する従来の場合と比べ、ボルト32aに無理なせん断力がかからず、それ故、ボルト32aの取付数が少なくて済み、また、ボルト径を太くする必要がない。
【0031】
また、この架装用補強部材30の取付方法および取付構造によれば、補助板31を小型の矩形形状にして分割構造としているので、補助板31そのものに追加の穴あけ加工を施す必要が生じた場合であっても、扱いやすい大きさとすることができる。そのため、ボルト32a用の取付け孔31dの加工精度や、取付け孔31d間のピッチ距離などを向上させる上で好適である。
【0032】
また、この架装用補強部材30の取付方法および取付構造によれば、補助板31を複数枚使用して隣接する補助板31同士の間に隙間を設けているので、クレーン作業時に発生するシャシフレーム3のたわみを吸収する上で好適である。
また、この架装用補強部材30の取付方法および取付構造によれば、補助板31の取付けボルト32aは、上部側はシャシフレーム3の上方、および下部側はシャシフレーム3の下方の可及的近傍に設けているので、補助板31をシャシフレーム3からはがす方向への力を抑制する効果を生じさせる上で好適である。
【0033】
なお、本発明に係る架装用補強部材取付構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、作業機械として車両搭載型クレーンを例に説明したが、これに限定されず、種々の作業機械に適用可能であり、また、車両についても、当該車両のシャシフレームに作業機械を後付けする際に必要な補強をする用途であれば、種々の車両に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両搭載型クレーン付き車両(車両)
2 アウトリガ
3 シャシフレーム
4 ベース
5 荷台
6 コラム
7 ブーム
8 ブーム伸縮用油圧シリンダ
9 ブーム起伏用油圧シリンダ
10 ウインチ用油圧モータ
11 ウインチ
12 ワイヤロープ
13 フック
20 車両搭載型クレーン(作業機械)
22 (クレーン固定用)ボルト
23 (クレーン固定用)ナット
24 ボルトブラケット
25 (上部)補強部材本体
30 架装用補強部材
31 補助板
32 (補助板固定用)ボルト・ナット
35 (下部)補強部材本体
W1 すみ肉溶接
W2 スロット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシャシフレームに作業機械を架装する際に必要な補強をするために用いられ、横断面がコ字状をなすとともに自身の車幅方向外側面にシャシフレーム孔が貫通形成されているシャシフレームに装着される架装用補強部材の取付方法であって、
前記シャシフレームの外側面に装着されるとともに、前記シャシフレーム孔の対向位置に形成されたボルト締結用の取付け孔を有する複数の補助板と、前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配されて横断面がL字状をなす一対の補強部材本体とからなる補強部材を用い、
前記複数の補助板を前記シャシフレームの長手方向に沿って車幅方向外側面に前記取付け孔とシャシフレーム孔を用いてボルト締結により装着する補助板装着工程と、該補助板装着工程の後に、前記一対の補強部材本体を前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配する補強部材配置工程と、該補強部材配置工程の後に、車幅方向外側面にて前記補助板と前記一対の補強部材本体とに限って相互を溶接する溶接工程とを含むことを特徴とする架装用補強部材の取付方法。
【請求項2】
車両のシャシフレームに作業機械を架装する際に必要な補強をするために用いられ、横断面がコ字状をなすとともに自身の車幅方向外側面にシャシフレーム孔が貫通形成されているシャシフレームに装着される架装用補強部材取付構造であって、
前記シャシフレームの外側面に装着されるとともに、前記シャシフレーム孔の対向位置に形成されたボルト締結用の取付け孔を有する複数の補助板と、前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配されて横断面がL字状をなす一対の補強部材本体とからなる補強部材を備え、
前記複数の補助板は、前記シャシフレームの長手方向に沿って車幅方向外側面に前記取付け孔とシャシフレーム孔を用いてボルト締結により装着され、前記一対の補強部材本体は、前記シャシフレームを車両上下方向から挟持するように配されており、前記補助板と前記一対の補強部材本体とが、車幅方向外側面にて前記補助板と前記一対の補強部材本体とに限って相互に溶接されていることを特徴とする架装用補強部材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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