説明

柑橘類果実の切削装置

【課題】柚子,スダチ,カボス,文旦,レモン,ライム等の主として果汁や果皮を利用する柑橘類果実の切削装置に関し、特には柑橘類果実の種類やサイズに応じて最適の切削状態を簡便、かつ、正確に調節可能とすることによって、切削効率と切削品質を向上させる。
【解決手段】搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃74a,74bを平面視において搾汁済みの柑橘類果実に対面する方向が狭窄したハ字状に設置し、一対の回転刃74a,74bで搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削した後、回転刃74a,74bの遠心力で切削した果皮を外方に排出し、果皮を切削した後の残滓は回転刃の間から落下させて排出し、ハ字状に設置した回転刃74a,74bの間隔及び設置角度を調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柚子,スダチ,カボス,文旦,レモン,ライム等の主として果汁や果皮を利用する柑橘類果実の切削装置に関し、特には柑橘類果実の種類やサイズに応じて最適の切削状態を簡便、かつ、正確に調節可能とすることによって、切削効率と切削品質を向上させるものである。
【背景技術】
【0002】
柚子やレモンに代表される香酸柑橘類の果実は酸味が強くて生食には向かないが、果汁や果皮は独特の芳香や香味を有するため、酸味料や食材として重宝されている。特に柚子はその自然の酸味と芳香から人気が高く、柚子の果汁は、ぽん酢等の調味料の材料や飲料の材料として、更に果皮も料理の薬味、ジャムやマーマレードの原料として多用途に利用されている。一方、生食に適した柑橘類果実においても、生食に止まらず果汁や果皮を利用した商品展開が試みられている。
【0003】
従来から搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削する手段としては、搾汁済みの柑橘類果実をベルトコンベアによって一対の円盤状切取具の間に案内し、円盤状切取具の円周面に付設した切取刃によって果皮を切り取る手段が提供されている(特許文献1)。
【0004】
また、果皮を切削する前の柑橘類果実の搾汁手段も種々の手段が提供されている。その一つとして、柑橘類果実を一対の搾汁ベルト間を通過させて圧搾することにより搾汁する手段が知られている。例えば、上下へた部の両側を果肉が露呈する状態に切り落とした柑橘類果実の円周面の果皮部を、漸次間隔が狭窄するように対向配置させた一対の搾汁ベルトによって、その円周面の果皮部から内方へ押圧力を加えることによって搾汁する手段が提供されている(特許文献2)。また、搾汁効率を上げるために、果実を圧縮する部材として静摩擦係数が0.55以上の部材を使用する手段も提供されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−69993号公報
【特許文献2】特開2008−5810号公報
【特許文献3】特開2008−72994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削する手段では、果皮を所望の厚さで上手く切削することができなかった。そのため、切削した果皮に残渣が多く混入し、品質が安定せず、又果皮の切削厚さの調整もできなかった。よって、良質な果皮を切削するためには、未だ手作業に頼るところが多いのが実情であり、実用性のある切削装置は提供されていなかった。また、従来の切削装置は搾汁装置とは別個の装置であり、切削工程と搾汁工程とを連動して作業をすることができなかった。
【0007】
一方、搾汁ベルトを使用して柑橘類果実を搾汁する手段は、柑橘類果実の外皮を剥皮することなく丸のまま圧搾する構成であり、取り扱いが容易である。しかしながら、丸のままの柑橘類果実を搾汁するため、果皮の苦みや雑味が混入したり、搾汁圧力が強すぎて搾汁した果汁に残滓が混入することがある。一方、搾汁圧力を弱めると搾汁効率が下がり搾汁量が低下してしまう。また、特許文献2に示す手段においては、漸次間隔が狭窄するように対向配置された一対の搾汁ベルトの間隔の調節が困難である。特許文献3に示す手段においても、果実を圧縮する部材の摩擦係数の選択だけでは、搾汁効率を上げることができない。
【0008】
即ち、搾汁ベルトを使用する従来の搾汁装置では、圧搾圧力の調整が複雑で困難なため、適切な調整のためには習熟と技術が必要であり、しかも短時間での調整が困難である。また、搾汁装置を使用する作業者が自ら搾汁圧力の調整をすることは困難であり、実際には調整を施すことなく、或いは調整を施すことができないまま使用せざるを得ないため、調整不良に起因した圧搾不良も発生し易く、搾汁の品質安定化に問題があった。よって、搾汁ベルトを使用して、香気に富んだ良質な柑橘類果汁を効率よく搾汁する装置は未だに提案されていないのが現状である。
【0009】
そこで、本発明は上記した従来の切削手段が有している課題を解決して、柑橘類果実の種類やサイズに応じて最適の切削状態を簡便、かつ、正確に調節可能とすることによって、切削効率と切削品質を向上させることができるとともに、果皮の切削工程と連動して果汁を搾汁することもできる柑橘類果実の切削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はその目的を達成するために、搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を、水平方向に所定間隔を保持して対向して配置した柑橘類果実の切削装置、搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を平面視において搾汁済みの柑橘類果実に対面する方向が狭窄したハ字状に設置した柑橘類果実の切削装置を基本として提供する。
【0011】
そして、搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を平面視において搾汁済みの柑橘類果実に対面する方向が狭窄したハ字状に設置し、一対の回転刃で搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削した後、回転刃の遠心力で切削した果皮を外方に排出し、果皮を切削した後の残滓は回転刃の間から落下させて排出し、ハ字状に設置した回転刃の間隔及び設置角度を調節可能とした。
【0012】
更に、切削フレームに、一対の駆動モータを水平方向に所定間隔を隔てて装着し、該駆動モータの駆動軸を水平方向に配置し、該駆動軸に一対の円盤状の回転刃を、水平方向に所定間隔を保持して対向して配置し、該一対の回転刃を柑橘類果実に対面する方向の間隔が狭いハ字状に配置し、一対の駆動モータを、矩形状の一対の設置板上に固定し、該一対の設置板を切削フレームの底部開口面に設置し、該設置板を回動可能に構成することにより、ハ字状に設置した回転刃の設置角度を調節可能とするとともに、ハ字状に狭窄した刃先間隔を相互に近接離反自在とし、一対の回転刃に臨んで、柑橘類果実の果汁を搾汁する搾汁装置を配置した。
【0013】
一方、搾汁装置として、一定距離離間して配置した駆動ローラと従動ローラ間にエンドレスに回転駆動可能に掛け渡した一対の搾汁ベルトを所定間隔で対面させて配置するとともに、一対の搾汁ベルトのそれぞれの内側に、回転駆動する搾汁ベルトに接触して回転可能な複数の搾汁ローラを搾汁ベルトの回転方向に整列させて配置し、搾汁ベルト間を通過する柑橘類果実を搾汁ローラによって圧搾して搾汁するようにした。また、切削装置を搾汁装置に回動可能に連結し、切削装置の不使用時には搾汁ベルトからの排出口を開放可能とし、搾汁ベルトからの排出口近傍に切削装置に供給される搾汁済みの柑橘類果実の上方への飛び出しを防止する飛出防止板を配置した。
【0014】
搾汁装置は、上杆と下杆に複数の固定軸を介して連結した取付フレームを形成し、該取付フレームの固定軸に搾汁ローラを回転可能に装着し、相互に対面する一対の取付フレームを近接離反可能に配置し、一対の取付フレームに摺動可能に支持棒を挿通し、該支持棒の両端をフレームに固定することにより、一対の取付フレームを支持棒に沿って近接離反可能とした。また、相互に対面する一対の取付フレームの上杆の間及び下杆の間を、現位置で回動可能な調整軸を介して複数箇所で相互に連結し、一方の取付フレームの調整軸の一端部を相互に連繋し、1つの調整軸を回動させることにより、他の調整軸も同一方向に回動可能とした。
【0015】
また、一方の取付フレームの調整軸の一端部にスプロケットを装備し、該スプロケットをチェーンで連繋し、1つのスプロケットを回動させることにより、全ての調整軸を同一方向に回動させて、一方の取付フレームと他方の取付フレームを近接或いは離反させることによって、一対の搾汁ベルトの間隔を調節可能とした。
【0016】
更に、相互に対面する一対の取付フレームの下杆の間に、突出片を設置し、該突出片を搾汁ローラに圧搾されて搾汁ベルト間を搬送される柑橘類果実に接触させることによって、圧搾された柑橘類果実に付着した果汁を滴下させるようにし、突出片として、円盤体を設置した。そして、弾性体を介して円盤体の貫通軸を取付フレームの下杆に装着することにより、搾汁する柑橘類果実のサイズに応じて円盤体を上下方向に揺動可能とした。また、搾汁ベルトを回転駆動する駆動ローラの間隔を調節可能とし、搾汁ベルトを回転駆動する従動ローラの間隔を調節可能とし、搾汁ベルトへの投入口側に、搾汁する柑橘類果実へ切れ目を入れる切込装置を装備した。
【発明の効果】
【0017】
以上記載した本発明によれば、切削装置は、搾汁ベルトから排出される搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を平面視において搾汁ベルト方向が狭窄したハ字状に設置しているため、搾汁済みの柑橘類果実の果皮部分への回転刃の侵入が容易であり、切削された果皮を回転刃の遠心力で外方に排出することができるとともに、果皮を切削した後の残滓を回転刃の間から落下させて排出することができる。そして、ハ字状に設置した回転刃の間隔及び設置角度を調節可能としているため、柑橘類果実の種類やサイズに応じた果皮の切削を行うことができるとともに、切削する果皮の厚さを任意に調節することができる。また、搾汁ベルトからの排出口に臨んで、搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削する切削装置を配置することができ、搾汁工程と連動して果皮を切削することができる。
【0018】
更に、切削装置に連結した搾汁装置によって柑橘類果実は、所定間隔で対面させて配置した一対の搾汁ベルト間を移送される間に、搾汁ベルトの内側に配置された搾汁ローラによって圧搾されて搾汁される。このとき、搾汁ローラを回転自在に装着して相互に対面した一対の取付フレームを近接離反可能に配置してあるため、柑橘類果実の種類やサイズに応じて取付フレームの間隔を任意に設定することができるとともに、微調整を可能としたため、搾汁する柑橘類果実の種類やサイズ、更には搾汁目的に応じた最適の搾汁状態を実現することができる。しかも、一方の取付フレームの調整軸の一端部にスプロケットを装備し、該スプロケットをチェーンで連繋し、1つのスプロケットを回動させることにより、全ての調整軸を同一方向に回動させて、一方の取付フレームと他方の取付フレームを近接或いは離反させることによって、一対の搾汁ベルトの間隔を調節可能としたので、搾汁状態の設定・調節を簡便、かつ、正確に実施することができる。
【0019】
また、取付フレームの下杆の間に設置した突出片としての円盤体に、搾汁ローラに圧搾されて搾汁ベルト間を搬送される柑橘類果実を接触させることによって押圧し、圧搾された柑橘類果実に付着した果汁を滴下させることができるので、柑橘類果実の果汁を無駄なく搾汁することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる柑橘類果実の切削装置の全体斜視図。
【図2】本発明にかかる柑橘類果実の切削装置の組付状態を示す分解斜視図。
【図3】搾汁ベルトの要部斜視図。
【図4】取付フレームの要部斜視図。
【図5】搾汁ローラの部分断面図。
【図6】搾汁ローラの全体斜視図。
【図7】調整軸の要部平面図。
【図8】調整軸の要部部分断面側面図。
【図9】排出口側を示す要部斜視図。
【図10】調整板の要部断面図。
【図11】調整板の部分拡大断面図。
【図12】排出口側を示す要部平面図。
【図13】排出口側を示す要部平面図。
【図14】排出口側を示す要部平面図。
【図15】投入口側を示す要部斜視図。
【図16】投入口側を示す要部側面図。
【図17】投入口側を示す要部斜視図。
【図18】投入口側を示す要部平面図。
【図19】投入口側を示す要部平面図。
【図20】円盤体の取付状態を示す要部斜視図。
【図21】円盤体の取付部の部分拡大図。
【図22】円盤体の作用説明図。
【図23】円盤体の作用説明図。
【図24】切削装置の全体斜視図。
【図25】切削装置の組付状態を示す説明図。
【図26】切削装置を搾汁装置に取り付けた状態を示す要部斜視図。
【図27】切削装置の要部底面図。
【図28】切削装置の要部底面図。
【図29】切削装置の要部部分断面背面図。
【図30】切削装置の要部部分断面背面図。
【図31】切削装置の作用説明図。
【図32】切削装置の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて本発明にかかる柑橘類果実の切削装置の実施形態を説明する。図1は本発明にかかる柑橘類果実の切削装置の全体斜視図、図2はその組付状態を示す分解斜視図である。図において、1は搾汁装置、2は果皮の切削装置であり、切削装置2は搾汁装置1の先端部に上下方向に回動自在に連結されている。切削装置2は搾汁済みの柑橘類果実を対象とするものであり、切削装置2に搾汁装置1を連結することが可能であり、切削工程と搾汁工程を連続して実施することもできる。
【0022】
そのため、先ず搾汁済みの柑橘類果実を得るための搾汁装置1について説明する。図において、3は搾汁装置1のフレームであり、上下方向が開放されるとともに、長手方向の側面には点検保守用の開閉扉4が設置されている。4aは点検窓である。フレーム3の基端側には投入口5が形成され、先端側には排出口6が形成されるとともに、下方の開口部には果汁受7がフレーム3下部の開口部全面を被覆するように設置されている。図1においては、排出口6に対面して切削装置2が連結されている。なお、フレーム3は模式的に示したもので図示の形態に特定されるものではない。
【0023】
搾汁装置1は、図3に示すように、一定距離離間して配置した駆動ローラ8a,8bと従動ローラ9a,9b間にエンドレスに回転駆動可能に掛け渡した閉ループ状の一対の搾汁ベルト10a,10bを所定間隔で対面させて配置するとともに、一対の搾汁ベルト10a,10bのそれぞれの内側に、回転駆動する搾汁ベルト10a,10bに接触して回転可能な複数の搾汁ローラ11を搾汁ベルト10a,10bの回転方向に整列させて配置している。よって、搾汁ベルト10a,10b間を通過する柑橘類果実を搾汁ローラ11によって圧搾して搾汁することができる。
【0024】
搾汁ローラ11は、図4に示すように、上杆12a,12bと下杆13a,13bに複数の固定軸14を介して連結した一対の取付フレーム15a,15bの固定軸14に回転可能に装着している。図5は搾汁ローラ11の部分断面図、図6は搾汁ローラ11の全体斜視図である。図に示すように、ステンレス製の固定軸14の外周部に樹脂製のスリーブ16を介して、所定高さと直径を有する樹脂製の搾汁ローラ11が固定軸14の周囲に回転自在に装着されている。17a,17bは、固定軸14に対する搾汁ローラ11の抜止である。
【0025】
そして、図3に示すように、一定距離離間して配置した駆動ローラ8a,8bと従動ローラ9a,9b間にそれぞれエンドレスに回転駆動可能に掛け渡した閉ループ状の一対の搾汁ベルト10a,10bのそれぞれの内側に一対の取付フレーム15a,15bを設置することにより、複数の搾汁ローラ11は回転駆動する搾汁ベルト10a,10bに接触して回転可能に装備される。
【0026】
一対の取付フレーム15a,15bは、図3,図4に示すように一定の距離離間して、搾汁ローラ11が相互に対面するように配置され、上杆12a,12bの上面に相互に対面して固定されたブラケット18a,18b間、及びブラケット19a,19b間に、ブラケット18a,19aに穿設した支持棒挿通孔28a及びブラケット18b,19bに穿設した支持棒挿通孔28bに支持棒20を摺動可能に挿通し、該支持棒20の両端部をフレーム3に固定している。よって、一対の取付フレーム15a,15bは、支持棒20を介してフレーム3に吊支されており、支持棒20に沿って近接離反可能に構成されている。また、一対の取付フレーム15a,15bはブラケット19a,19bから投入口5方向の端部が、搾汁する柑橘類果実の投入及び移送が容易なように投入口5方向に向けて拡開した状態で対面し、それ以外の部分は平行な状態に対面している。
【0027】
なお、図示例では3本の支持棒20を使用したが、取付フレーム15a,15bを摺動可能に安定して吊支できる構造であれば、その個数及び構造に限定はない。また、図示例では支持棒20を上杆12a,12bに配置したが、これに加えて下杆13a,13bにブラケットを垂下し、該ブラケット間に支持棒20を摺動自在に挿通し、両端部をフレーム3に固定することを併用してもよい。
【0028】
また、図3,図4に示すように上杆12a,12b間の上面に相互に対面して固定されたブラケット18a,18b及びブラケット21a,21b間に、ブラケット18a,21aに穿設した調整軸挿通孔29a及びブラケット18b,21bに穿設した調整軸挿通孔29bに調整軸22を挿通して複数箇所で上杆12a,12bを連結している。同様に下杆13a,13b間の下面に相互に対面して配置されたブラケット23間に調整軸22を挿通して複数箇所で下杆13a,13bを連結している。なお、下杆13b側のブラケット23の図示は省略したが、その構成はブラケット18bと同様である。
【0029】
図7は調整軸22の取付状態を示す要部平面図、図8はその要部部分断面側面図であり、図に示すように取付フレーム15b側に位置する調整軸22の先端部に雄螺子22bを刻設し、それぞれ上杆12bの上面に設置したブラケット18b,21b及び下杆13bの下面に設置したブラケット23の調整軸挿通孔29b(図3参照)に刻設した雌螺子に螺合している。一方、取付フレーム15a側に位置する調整軸22の基端部側は、それぞれ上杆12aの上面に設置したブラケット18a,21a及び下杆13aの下面に設置したブラケット23の調整軸挿通孔29a(図3参照)に挿通して支持されている。更に、調整軸22の基端部には六角柱状等の所定形状のボルト頭部22aが突設されるとともに、該ボルト頭部22aと上杆12aの上面に設置されたブラケット18a,21a及び下杆13aの下面に設置されたブラケット23との間の調整軸の軸部にスプロケット24をそれぞれ固着している。
【0030】
そして、各調整軸22に装備され、同一垂直面面上に位置する各スプロケット24をチェーン25で相互に一筆の閉ループ状に連繋する。26はスプロケット24の近傍に配置されてチェーン25の回転をガイドするアイドラーである。アイドラー26の取付箇所は任意の箇所でよい。よって、1つの調整軸22の頭部22aにラチェットハンドルやスパナ等のハンドル27を装着し、このハンドル27を回動操作してスプロケット24を回転させることにより、一筆の閉ループ状に連繋されたチェーン25を介して全ての調整軸22が同一方向に回動することとなる。このように調整軸22を回動させることにより、相互に対面させて配置した一対の取付フレーム15a,15b間において、取付フレーム15bが取付フレーム15aに対して、矢印Zに示すように近接又は離反する方向に移動することができ、その結果一対の搾汁ベルト10a,10b間の間隔を調節することができる。
【0031】
本実施形態では、上杆12a,12b間と、下杆13a,13b間をそれぞれ3本、合計6本の調整軸22で連結している。調整軸22として先端部周面に1.5mmピッチの雄螺子22bを刻設した六角ボルトを使用したので、1つのスプロケット24を1回転させることによって、6本の調整軸22が同時に同一方向に回転することとなり、1回転で取付フレーム15a,15b間を1.5mmだけ近接或いは離反させることができる。これによって、搾汁する柑橘類果実の種類やサイズに応じて、搾汁ベルト10a,10b間の間隔を最適の搾汁状態に直ちに調節することが可能となる。しかも微調節も容易であって、熟練や技術的知識を必要としない。
【0032】
なお、本実施形態では、取付フレーム15aに対して、取付フレーム15bを近接又は離反可能に移動するように構成したが、調整軸22をターンバックル構造にして、取付フレーム15aと取付フレーム15bの双方が移動する構成とすることも可能であり、要すれば、取付フレーム15a,取付フレーム15bの相互の間隔を調節することができればよい。
【0033】
次に駆動ローラ8a,8bの設置構造について説明する。図9は排出口6側を示す要部斜視図、図10は要部断面図、図11は部分拡大断面図、図12,図13,図14は要部平面図である。図において31は所定面積を有する矩形状の設置板であり、フレーム3の排出口6側の端部上面に複数のボルト(図示略)で固定されている。この設置板31の上面に所定間隔で設置された一対の調整板32a,32b上に複数のボルト(図示略)によって一対の駆動モータ33a,33bを固定し、その駆動軸34a,34bを鉛直方向に垂下させて、駆動ローラ8a,8bに挿通して中心軸として固着している。よって、駆動モータ33a,33bによって駆動ローラ8a,8bは回転駆動し、駆動ローラ8a,8bと従動ローラ9a,9bとの間に閉ループ状に掛け渡した搾汁ベルト10a,10bがエンドレスに回転するとともに、搾汁ベルト10a,10bに接触して搾汁ローラ11が回転する。
【0034】
駆動軸34a,34bの下端部にはキャップ35a,35bが被冠されるとともに、このキャップ35a,35bに連結軸36が摺動自在に挿通されていることにより、駆動ローラ8a,8bは相互に連結されている。調整板32a,32bには、それぞれ排出口6側の両端部の所定位置に平面視が略く字状の長孔43a,43bが穿設され、該長孔43a,43bを介して、それぞれの反対方向の両端部に位置する一対のボルト37にて設置板31に固定されている。
【0035】
調整板32a,32bの排出口6側の先端部には一対の軸受38a,38bが立設され、この軸受38a,38bに駆動ローラ調整軸39が軸支されている。軸受38a,38bには雌螺子が刻設された挿通孔が穿設されており、一方駆動ローラ調整軸39の周部には相互に反対方向の雄螺子が刻設されており、この駆動ローラ調整軸39の周部の雄螺子が軸受38a,38bの挿通孔の雌螺子にそれぞれ螺合している。また、駆動ローラ調整軸39の中間部は、設置板31に立設されたブラケット40に支持されるとともに、ブラケット40間に位置する駆動ローラ調整軸39の外周面に六角ナット等の操作環41が突設されている。
【0036】
上記の構成を採用したことにより、駆動ローラ8a,8bの間隔を調節することが可能である。図12は駆動ローラ8a,8bの間隔が広い場合を、又図14は狭い場合の調整板32a,32bの位置関係及び姿勢を示している。先ず図12に示す状態から、調整板32a,32bを設置板31に固定しているボルト37を緩め、操作環41をスパナ等のハンドルを使用して回動操作して駆動ローラ調整軸39を回動させることにより、駆動ローラ調整軸39によって連結された調整板32a,32bが回動支点42a,42bを中心として相対的に近接或いは離反する方向に回動する。このとき、ボルト37は緩められて、設置板31に緩く螺合しているため、調整板32a,32bは平面視が略く字状の長孔43a,43bの範囲内で移動可能であり、ボルト37に対する長孔43a,43bの位置が変化することとなる。
【0037】
一方、図10,図11に示すように、調整板32a,32bの投入口5側の端部の中央には、設置板31の下面からボルト44が設置板31に穿設した回動支点孔31aに遊嵌するとともに、調整板32a,32bに螺合している。即ち、回動支点孔31aの内径はボルト44の直径よりも大きいため、ボルト44が螺合している調整板32a,32bはボルト44を回動支点42a,42bとして、設置板31上を摺動することができる。よって、調整板32a,32bは回動支点42a,42bを中心として回動して、駆動ローラ8a,8bが近接又は離反する。
【0038】
図14に示す状態は近接させた状態であり、所定の間隔に調整した状態で調整板32a,32bを再びボルト37で設置板31に固定することにより調整が終了する。即ち、図14に示す状態は、駆動ローラ8a,8bが水平軸に対して、それぞれ角度αだけ近接した状態を示している。よって、駆動ローラ調整軸39の軸受38a,38bに軸支された部分に刻設されたそれぞれ反対方向の雄螺子によって、駆動ローラ8a,8bの間隔を均一にミリ単位で調整することが可能である。このようにして駆動ローラ8a,8bの間隔を調節することによって、搾汁後の柑橘類果実の果皮の厚さが変わるため、使用目的に応じて搾汁後の果皮の厚さを厚く、薄く調節することができる。
【0039】
次に、従動ローラ9a,9bの設置構造について説明する。図15,図17は投入口5側を示す要部斜視図、図16は要部側面図、図18,図19は要部平面図である。図において46は設置板であり、フレーム3の投入口5側の端部上面に複数のボルト(図示略)で固定されている。この設置板46の上面に所定間隔で一対の軸受47a,47bが設置され、従動ローラ9a,9bの中心に挿通して固定された一対の従動軸48a,48bが軸受47a,47bの偏芯した位置に回転可能に軸支されている。
【0040】
従動軸48a,48bの下端部にはキャップ49a,49bが被冠されるとともに、このキャップ49a,49bと駆動軸34a,34bのキャップ35a,35bが連結杆50a,50bによって連結されている。従動軸48a,48bを軸支する軸受47a,47bは所定箇所に穿設された長孔51(図18,図19参照)を介して複数(図示例ではそれぞれ4本)のボルト52で設置板46に固定されている。
【0041】
上記の構成を採用したことにより、従動ローラ9a,9bの間隔を調節することが可能である。図18は従動ローラ9a,9bの間隔が広い場合を、又図19は狭い場合を示している。先ず図18に示す状態から、ボルト52を外し、軸受47a,47bを回転させると軸受47a,47bと従動軸48a,48bは偏芯した関係にあるため、従動軸48a,48bは近接又は離反することとなり、その結果、従動ローラ9a,9bも近接又は離反する。従動ローラ9a,9bの間隔を調節することによって、搾汁する柑橘類果実の大小のサイズに対応することができる。
【0042】
図19に示す状態は近接させた状態であり、所定の間隔に調整した状態で軸受47a,47bを設置板46にボルト52で固定することにより調整が終了する。また、軸受47a,47bを180度回転させて組替えることも可能である。そのため、前記したこの取付フレーム15a,15bの間隔調整と駆動ローラ8a,8b及び従動ローラ9a,9bの間隔調節が相俟って搾汁する柑橘類果実の種類やサイズに応じて、更には使用目的に応じた搾汁状態を実現するために、搾汁ベルト10a,10b間の間隔その他の搾汁環境,搾汁条件を最適の搾汁状態に調節することが可能となる。
【0043】
また、取付フレーム15a,15bの投入口5方向の端部は投入口5方向に向けて拡開した状態で対面しており、平面視が略二等辺三角形状の空間部を形成している。この空間部の上方開口部を被覆するように平面視が略二等辺三角形状の飛出防止板53が設置されており、又その下方空間部には平面視が略二等辺三角形状の路面板54が設置されている。この路面板54の頂点近傍には搾汁する柑橘類果実に切込を形成するための切込刃55が突設され、この路面板54と切込刃55とで搾汁する柑橘類果実へ切れ目を入れる切込装置を形成している。
【0044】
次に、搾汁ベルト10a,10b間を通過する圧搾された柑橘類果実に付着した果汁をこそげ落として滴下させるための突出片としての円盤体56の構造について説明する。図20は円盤体56の取付状態を示す要部斜視図、図21はその取付部の部分拡大図、図22,図23はその作用説明図である。平行な状態で対面している取付フレーム15a,15b間における下杆13a,13bの外側面に固定したブラケット57a,57bに支持部材59a,59bを設置し、該支持部材59a,59bにコイルバネ等の弾性体58a,58bの下端部を装着してある。そして、弾性体58a,58bの上端部には支持部材59a,59bと一定の距離を離間した状態で支持部材64a,64bを装着し、支持部材64a,64bの弾性体58a,58bと反対方向の端部には、それぞれ凸部65a,65bが突設されており、この凸部65a,65bに貫通軸60の両端部が回転不能な状態に固定されている。
【0045】
そして、この貫通軸60の外周部に突出片として円盤体56が装着されており、円盤体56は搾汁ローラ11に圧搾されて搾汁ベルト10a,10b間を搬送される柑橘類果実の下部が接触する位置に配置されている。なお、円盤体56の貫通軸60への装着は、円盤体56が回転不能な状態であっても、従動可能な状態であってもよい。更に、搾汁する柑橘類果実の種類やサイズに応じて弾性体58a,58bの揺動領域を所定の範囲に規制するためのストッパを配置するようにしてもよい。
【0046】
よって、円盤体56を搾汁ローラ11に圧搾されて搾汁ベルト10a,10b間を搬送される柑橘類果実に接触させることによって、圧搾された柑橘類果実に付着した果汁をこそげ落として滴下させることができる。弾性体58a,58bを介して円盤体56を下杆13a,13bに装着することにより、搾汁する柑橘類果実のサイズに応じて円盤体56を上下方向に揺動可能である。なお、円盤体56を配置する位置は任意の位置でよく、又その個数も1個に限ることなく、複数であってもよい。また、図示例では、突出片として円盤体56を使用したが、柑橘類果実に接触して果汁を滴下させることができれば、どのような形態であってもよい。
【0047】
上記構成の搾汁装置1を使用して柑橘類果実を搾汁する方法は次の通りである。先ず、搾汁する柑橘類果実の種類やサイズに応じて取付フレーム15a,15b間の間隔、駆動ローラ8a,8b間の間隔、及び従動ローラ9a,9b間の間隔を調節した後、駆動モータ33a,33bを駆動させて、駆動ローラ8a,8bを回転させることにより、搾汁ベルト10a,10bを投入口5から排出口6に向けて回転駆動させる。この状態において、図16に示すように柑橘類果実、例えば柚子Yを投入口5から連続的に投入する。
【0048】
投入口5は路面板54に向けて下降した傾斜面となっているため、柚子Yは投入口5から路面板54に進入し、投入口5方向に拡開した搾汁ベルト10a,10b間に捕捉されて路面板54上を移送されて、切込刃55に接触して切込が切削形成される。その後、柚子Yは平行な状態に対面している搾汁ベルト10a,10b間を排出口6方向に移送されながら、搾汁ローラ11によって圧搾されて果汁が搾汁される。一方、搾汁済みの柑橘類果実は搾汁ベルト10a,10bによる捕捉から解放されて排出口6から排出される。そして、排出口6の下部に設置したシュート61を介して外部に排出される。なお、排出口6の上方開口部を被覆するように搾汁済みの柑橘類果実の飛び出しを防止するための飛出防止板62が設置されている。
【0049】
搾汁された果汁は搾汁ベルト10a,10b間から果汁受7に滴下し、果汁受7の底面に形成した果汁排出孔7aから所定の容器に貯留される。なお、搾汁状態に応じて、取付フレーム15a,15b間の間隔調節と、駆動ローラ8a,8b間の間隔調節、及び従動ローラ9a,9b間の間隔調節を単独又は複合して微調整することにより、搾汁する柑橘類果実に応じた最適の搾汁状態を実現することができる。
【0050】
搾汁ベルト10a,10b間を移送される途中において、柚子Yは下杆13a,13bの間に設置した突出片として設置された円盤体56に接触することによっても付着した果汁を滴下させることができる。この円盤体56は直径の大きい柑橘類果実を搾汁する場合に特に効果を発揮する。
【0051】
例えば、図22に示すように柚子Yより直径の大きい柑橘類果実、例えば文旦Bを搾汁する場合は、文旦Bを二つ割りにし、果肉を下向きにして搾汁ベルト10a,10b間に供給する。すると二つ割りにした文旦Bは、搾汁ローラ11に圧搾されて、図23に示すように果肉が下方にせり出してくるため、この果肉に円盤体56が接触することによって果汁の滴下を促進することができる。このとき、円盤体56の貫通軸60は弾性体58a,58bを介して下杆13a,13bに装着されているため、搾汁する柑橘類果実のサイズに応じて上下方向に揺動するため、柑橘類果実の果汁を滴下させるとともに、柑橘類果実の大小にかかわらず、円盤体56上を通過させることができる。
【0052】
上記した搾汁装置1を使用して得た搾汁済みの柑橘類果実から、切削装置2を使用して残存している果皮を切削する。即ち、搾汁の終了した搾汁済みの柑橘類果実には未だ有効利用が可能な果皮が残存しており、この果皮も高い商品価値を有している。そこで、本発明では搾汁作業に連続した果皮の切削作業も行えるように、搾汁ベルト10a,10bからの排出口に臨んで、搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削する切削装置2を搾汁装置1の先端部に連結するようにしている。
【0053】
図24は切削装置2の全体斜視図、図25はその組付状態を示す説明図、図26は切削装置2を搾汁装置1に取り付けた状態を示す要部斜視図である。図において71は上下両面及び周面が開口した所定形状の切削フレームであり、この切削フレーム71に一対の駆動モータ72a,72bを水平方向に所定間隔を隔てて装着し、その駆動軸73a,73bを水平方向に配置している。そして、駆動軸73a,73bに一対の円盤状の回転刃74a,74bを、水平方向に所定間隔を保持して対向して配置している。75は回転刃74a,74bの安全カバーであり、切削フレーム71内における駆動モータ72a,72b間に露出している回転刃74a,74bを被覆するとともに、果皮切削後の柑橘類果実の残渣の飛び出しを防止している。
【0054】
切削フレーム71の両端部上面に位置する上部連結梁71aの後端部には一対のアーム76a,76bが後端部方向に斜設されており、このアーム76a,76bを図26に示すように搾汁装置1における設置板31の排出口6側の両端部に突設された軸受77a,77bに軸着することにより、切削装置2を搾汁装置1の排出口6に臨んで上下方向に回動可能に連結することができる。
【0055】
よって、切削装置2の不使用時には搾汁ベルト10a,10bからの排出口6を開放するように、図26に仮想線で示したように搾汁装置1の上面に180度回動させて保持することができる。一方、図26に実線で示したように、切削装置2を搾汁装置1における排出口6に臨んだ状態に搾汁装置1の先端部に連結した場合には、一対の回転刃74a,74b間の間隙が排出口6に正対している状態に配置されている。即ち、切削装置2は搾汁ベルト10a,10bから排出される搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃74a,74bを、水平方向に所定間隔を保持して対向して配置している。より具体的には一対の回転刃74a,74bの周先端部が一対の駆動ローラ8a,8bの間に侵入した状態となるように切削装置2を搾汁装置1に連結するようにする。
【0056】
図27,図28は切削装置2の要部底面図、図29,図30は切削装置の要部部分断面背面図である。図28に示すように回転刃74a,74bの間隙は平面視(底面視)において、矢印X方向に示す切削装置2の後端部側(排出口6側)の間隙が狭く、先端部側の間隙が広いハ字状に、即ち搾汁ベルト10a,10b方向が狭窄したハ字状に設置している。回転刃74a,74bをハ字状に配置することにより、搾汁済みの柑橘類果実の果皮への切込みをよくするとともに、果皮を切削した後の果皮と残滓を容易に分別することができる。
【0057】
駆動モータ72a,72bは、所定面積を有する矩形状の一対の設置板78a,78b上に複数のボルト(図示略)で固定されており、駆動モータ72a,72bを固定した一対の設置板78a,78bは、図27〜図30に示すように、切削フレーム71の底部開口面に設置されている。即ち、設置板78a,78bの先端部は、切削フレーム71の底面先端に設置された先端桁71bに穿設された長孔79a,79bにボルト80a,80bを底面側から挿通して、先端桁71bに固着している。
【0058】
一方、設置板78a,78bの後端部は図29に示すように、切削フレーム71の底面後端に、回転刃74a,74bが通過するための切欠71cを有して設置された一対の回動支点用の後端桁71dに、設置板78a,78b側から、先端部のみに雄螺子を刻設した回動支点用ボルト81a,81bを設置板78a,78b及び後端桁71dに挿通して、回動支点用ボルト81a,81bの先端部を後端桁71dの底面から突出させてナット82で締結して固定している。なお、後端桁71dは切削フレーム71の後端部の両側に立設された後支柱71eから内側に向けて水平方向に突設されている。
【0059】
設置板78a,78bと後端桁71dは回動支点用ボルト81a,81bの雄螺子を刻設していない軸部分にて連結されており、回動支点用ボルト81a,81bを回動支点として設置板78a,78bは水平方向に回動可能である。なお、回動支点用ボルト81a,81bの全周に雄螺子を刻設し、後端桁71dに回動支点用ボルト81a,81bの軸径より径大の挿通孔を穿設して、回動支点用ボルト81a,81bを遊嵌するようにしてもよい。要すれば、設置板78a,78bが回動支点用ボルト81a,81bを回動支点として水平方向に回動できる構成であればよい。よって、設置板78a,78bに固定された駆動モータ72a,72bは、設置板78a,78bとともに回動支点用ボルト81a,81bを中心として水平方向に回動することが可能であり、駆動モータ72a,72bの回動に連動して、駆動軸73a,73b及び駆動軸73a,73bに設置された回転刃74a,74bも回動支点用ボルト81a,81bを中心として回動することとなる。
【0060】
設置板78a,78bの先端部下面には一対の軸受83a,83bが鉛直方向に垂設されており、相互に反対方向の雄螺子を軸受83a,83bに軸支された部分に刻設した回転刃調整軸84が軸受83a,83b内の挿通孔に刻設された雌螺子に螺合している。また、回転刃調整軸84の中間部の周面には六角ナット等の操作環85が突設されている。86a,86bは、切削フレーム71の後端部の両側に立設された後支柱71eと、先端部の両側に立設された前支柱71fをそれぞれ連結する下部連結梁71gの下面に鉛直方向に垂設されたストッパである。このストッパ86a,86bは回転刃調整軸84の両端部に位置しており、回転刃調整軸84の両端部が切削フレーム71から飛び出すことを規制している。なお、ストッパ86a,86bを操作環85の両側に垂設するようにしてもよい。要すれば、回転刃調整軸84が位置を変更することなく現位置で回動することができればよい。
【0061】
上記の構成を採用したことにより、ハ字状に設置した回転刃74a,74bの設置角度を調節することが可能であり、ハ字状に狭窄した刃先間隔を相互に近接離反自在に調節することが可能である。回転刃74a,74bの間隔を調節することによって、果皮部分への回転刃の侵入を容易として、柑橘類果実の種類やサイズに応じた果皮の切削を行うことができるとともに、切削する果皮の厚さを使用目的に応じて任意に調節することができる。
【0062】
図27は回転刃74a,74bが平面視(底面視)において平行な状態を示しており、この状態から操作環85をスパナ等のハンドルを使用して回動操作することにより、回転刃調整軸84によって連結された駆動モータ72a,72bの設置板78a,78bが、
回動支点用ボルト81a,81bを中心として相対的に近接或いは離反する方向に回動する。そのため、駆動モータ72a,72bの設置板78a,78bの先端をそれぞれ矢印N方向に回動支点用ボルト81a,81bを回動支点として外方に開くことにより、排出口6側の回転刃74a,74bの間隙が狭まり、回転刃74a,74bは図28,図30に示すようなハ字状に維持される。よって、果皮を切削する柑橘類果実のサイズや種類に応じてハ字状に設置した回転刃74a,74bの間隙及び設置角度を任意に調節可能であり、最適の状態に設定することができる。
【0063】
上記構成の切削装置2を使用して搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削する方法は次の通りである。先ず、回転刃74a,74bの間隔を平面視において搾汁ベルト10a,10b方向が所定間隔に狭窄したハ字状となるように調節して設置した切削装置2を搾汁装置1の排出口6に臨んで搾汁装置1に連結し、駆動モータ72a,72bを駆動させて回転刃74a,74bをともに平面視において排出口6方向に向けて回転させる。このとき、回転刃74a,74bの周先端部の刃先は排出口6の上方開口部を被覆するように設置した飛出防止板62に切削形成された溝部62a,62b(図9参照)を通過して、駆動ローラ8a,8b内において回転している。
【0064】
そして、排出口6から排出された搾汁済みの柑橘類果実は、搾汁ベルト10a,10bに捕捉された状態から、回転刃74a,74bの間に供給されて果皮が切削され、切削された果皮は回転刃74a,74bの遠心力で切削装置2の外方に排出され、果皮を切削した後の残滓は回転刃74a,74bの間から下方に落下させて排出する。
【0065】
図31,図32は切削装置2の作用説明図であり、図31に示すように柑橘類果実、例えば柚子Yは、搾汁装置1で圧搾されて搾汁済みの柚子Y1となり、回転刃74a,74bに供給されて、搾汁済みの柚子Y1の両側に位置する果皮87が切削されて回転刃74a,74bの遠心力で矢印Wに示すように外方に排出されるとともに、果皮87を切削した後の残滓88は回転刃74a,74bの間から矢印Sに示すように下方に落下させて排出する。よって、果皮87に残滓88が混じることがなく品質のよい果皮87を切削することができる。
【0066】
本発明にかかる切削装置2は、このように回転刃74a,74bの間隔及び設置角度を調節すること、回転刃74a,74bを平面視において搾汁ベルト10a,10b方向が狭窄したハ字状に設置することに特徴を有するものである。また、切削装置2は搾汁装置1とは無関係に単独で使用することも可能であり、その際は搾汁済みの柑橘類果実をベルトコンベアその他の搬送装置により、回転刃74a,74bに供給する手段を講ずればよい。更に、回転刃74a,74bの間隔を調節することにより、果汁を搾汁しない、或いは搾汁前の柑橘類果実の果皮を切削することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上記載した本発明によれば、柚子,スダチ,カボス,文旦,レモン,ライム等の主として果汁や果皮を利用する柑橘類果実の切削装置において、搾汁ベルトからの排出口に臨んで、搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削する切削装置を配置することができ、搾汁工程と連動して果皮を切削することができる。そして、切削装置は、搾汁ベルトから排出される搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を平面視において搾汁ベルト方向が狭窄したハ字状に設置しているため、搾汁済みの柑橘類果実の果皮部分への回転刃の侵入が容易であるとともに切削された果皮を回転刃の遠心力で外方に排出することができるとともに、果皮を切削した後の残滓を回転刃の間から落下させて排出することができる。また、ハ字状に設置した回転刃の間隔及び設置角度を調節可能としているため、柑橘類果実の種類やサイズに応じて、切削する果皮の厚さを任意に調節することができる。
【0068】
切削装置に連結する搾汁装置は、取付フレームを近接離反可能に配置してあるため、柑橘類果実の種類やサイズに応じて取付フレームの間隔を任意に設定することができるとともに、微調整を可能としたため、柑橘類果実の種類やサイズに応じて最適の搾汁状態を簡便、かつ、正確に調節可能とすることによって、搾汁効率と搾汁品質を向上させることができる。
【0069】
また、取付フレームの下杆の間に設置した突出片としての円盤体に、搾汁ローラに圧搾されて搾汁ベルト間を搬送される柑橘類果実を接触させることによって、圧搾された柑橘類果実に付着した果汁を滴下させることができるので、柑橘類果実の果汁を無駄なく搾汁することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…搾汁装置
2…切削装置
3…フレーム
4…開閉扉
5…投入口
6…排出口
7…果汁受
8a,8b…駆動ローラ
9a,9b…従動ローラ
10a,10b…搾汁ベルト
11…搾汁ローラ
12a,12b…上杆
13a,13b…下杆
14…固定軸
15a,15b…取付フレーム
16…スリーブ
17a,17b…抜止
18a,18b,19a,19b,21a,21b,23,40,57a,57b…ブラケット
20…支持棒
22…調整軸
24…スプロケット
25…チェーン
26…アイドラー
27…ハンドル
28a,28b…支持棒挿通孔
29a,29b…調整軸挿通孔
31,78a,78b…設置板
32a,32b…調整板
33a,33b,72a,72b…駆動モータ
34a,34b,73a,73b…駆動軸
35a,35b,49a,49b…キャップ
36…連結軸
37,52,80a,80b…ボルト
38a,38b,47a,47b,63a,63b,77a,77b,83a,83b…軸受
39…駆動ローラ調整軸
41,85…操作環
42a,42b…回動支点
43a,43b,79a,79b…長孔
46…設置板
48a,48b…従動軸
53,62…飛出防止板
54…路面板
55…切込刃
56…円盤体
58a,58b…弾性体
59a,59b,64a,64b…支持部材
60…貫通軸
61…シュート
65a,65b…凸部
71…切削フレーム
74a,74b…回転刃
75…安全カバー
76a,76b…アーム
81a,81b…回動支点用ボルト
84…回転刃調整軸
86a,86b…ストッパ
87…果皮
88…残滓
Y…柚子
Y1…搾汁済みの柚子
B…文旦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を、水平方向に所定間隔を保持して対向して配置したことを特徴とする柑橘類果実の切削装置。
【請求項2】
搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を平面視において搾汁済みの柑橘類果実に対面する方向が狭窄したハ字状に設置したことを特徴とする柑橘類果実の切削装置。
【請求項3】
搾汁済みの柑橘類果実に対面して一対の回転刃を平面視において搾汁済みの柑橘類果実に対面する方向が狭窄したハ字状に設置し、一対の回転刃で搾汁済みの柑橘類果実の果皮を切削した後、回転刃の遠心力で切削した果皮を外方に排出し、果皮を切削した後の残滓は回転刃の間から落下させて排出することを特徴とする柑橘類果実の切削装置。
【請求項4】
ハ字状に設置した回転刃の間隔及び設置角度を調節可能とした請求項2又は3記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項5】
切削フレームに、一対の駆動モータを水平方向に所定間隔を隔てて装着し、該駆動モータの駆動軸を水平方向に配置し、該駆動軸に一対の円盤状の回転刃を、水平方向に所定間隔を保持して対向して配置し、該一対の回転刃を柑橘類果実に対面する方向の間隔が狭いハ字状に配置したことを特徴とする柑橘類果実の切削装置。
【請求項6】
一対の駆動モータを、矩形状の一対の設置板上に固定し、該一対の設置板を切削フレームの底部開口面に設置し、該設置板を回動可能に構成することにより、ハ字状に設置した回転刃の設置角度を調節可能とするとともに、ハ字状に狭窄した刃先間隔を相互に近接離反自在とした請求5記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項7】
一対の回転刃に臨んで、柑橘類果実の果汁を搾汁する搾汁装置を配置した請求項1,2,3,4,5又は6記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項8】
搾汁装置として、一定距離離間して配置した駆動ローラと従動ローラ間にエンドレスに回転駆動可能に掛け渡した一対の搾汁ベルトを所定間隔で対面させて配置するとともに、一対の搾汁ベルトのそれぞれの内側に、回転駆動する搾汁ベルトに接触して回転可能な複数の搾汁ローラを搾汁ベルトの回転方向に整列させて配置し、搾汁ベルト間を通過する柑橘類果実を搾汁ローラによって圧搾して搾汁する柑橘類果実の搾汁装置を配置した請求項7記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項9】
切削装置を搾汁装置に回動可能に連結し、切削装置の不使用時には搾汁ベルトからの排出口を開放可能とした請求項7記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項10】
搾汁ベルトからの排出口近傍に切削装置に供給される搾汁済みの柑橘類果実の上方への飛び出しを防止する飛出防止板を配置した請求項8又は9記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項11】
搾汁装置は、上杆と下杆に複数の固定軸を介して連結した取付フレームを形成し、該取付フレームの固定軸に搾汁ローラを回転可能に装着し、相互に対面する一対の取付フレームを近接離反可能に配置した請求項8,9又は10記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項12】
一対の取付フレームに摺動可能に支持棒を挿通し、該支持棒の両端をフレームに固定することにより、一対の取付フレームを支持棒に沿って近接離反可能とした請求項11記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項13】
相互に対面する一対の取付フレームの上杆の間及び下杆の間を、現位置で回動可能な調整軸を介して複数箇所で相互に連結した請求項11又は12記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項14】
一方の取付フレームの調整軸の一端部を相互に連繋し、1つの調整軸を回動させることにより、他の調整軸も同一方向に回動可能とした請求項13記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項15】
一方の取付フレームの調整軸の一端部にスプロケットを装備し、該スプロケットをチェーンで連繋し、1つのスプロケットを回動させることにより、全ての調整軸を同一方向に回動させて、一方の取付フレームと他方の取付フレームを近接或いは離反させることによって、一対の搾汁ベルトの間隔を調節可能とした請求項14記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項16】
相互に対面する一対の取付フレームの下杆の間に、突出片を設置し、該突出片を搾汁ローラに圧搾されて搾汁ベルト間を搬送される柑橘類果実に接触させることによって、圧搾された柑橘類果実に付着した果汁を滴下させる請求項11,12,13,14又は15記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項17】
突出片として、円盤体を設置した請求項16記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項18】
弾性体を介して円盤体の貫通軸を取付フレームの下杆に装着することにより、搾汁する柑橘類果実のサイズに応じて円盤体を上下方向に揺動可能とした請求項17記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項19】
搾汁ベルトを回転駆動する駆動ローラの間隔を調節可能とした請求項8,9,10,11,12,13,14,15,16,17又は18記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項20】
搾汁ベルトを回転駆動する従動ローラの間隔を調節可能とした請求項8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18又は19記載の柑橘類果実の切削装置。
【請求項21】
搾汁ベルトへの投入口側に、搾汁する柑橘類果実へ切れ目を入れる切込装置を装備した請求項8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19又は20記載の柑橘類果実の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−205900(P2011−205900A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73736(P2010−73736)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(310005319)
【Fターム(参考)】