説明

柔軟な側鎖を有する抗マラリア化合物

本発明は、熱帯熱マラリア原虫の野生型及び突然変異ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のインヒビターである新規化合物に関し、これらはマラリアの治療に有用である。また、そのような化合物を作製及び使用する方法にも関する。本発明の抗マラリア化合物は、マラリア寄生虫が感染した宿主に対して低い毒性を有し、医薬組成物により投与されるときに効力がある。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/978,375号(2007年10月8日出願)の利益を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、マラリアの治療のための抗マラリア化合物又は抗葉酸剤、並びに化合物を作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マラリアは、世界保健機関(WHO)の推定によると毎年2千7百万人を超える死者の原因である蚊媒介性疾患である。マラリアは、アノフェレス属の蚊によりヒト及び動物宿主に伝染される、寄生虫により引き起こされる潜在的に致死的な血液疾患である。熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)及び卵形マラリア原虫(P.ovale)を含む4種類のヒト寄生虫が存在し、そのうち熱帯熱マラリア原虫がヒトにおける死亡率の大部分を占める。熱帯熱マラリア原虫は、赤血球のヘモグロビンを消化するばかりでなく、それが住み着く細胞の接着特性を変え、細胞を血管壁に貼り付けるので、危険である。これは、感染血球が血管に貼り付いて血流を妨げるときに危険になる。
【0004】
ヒト又は動物におけるマラリアの寄生虫の生活環は、感染した蚊が血液食餌の際にマラリアスポロゾイトを新たな宿主に注入する時から始まる。スポロゾイトは肝臓に移動し、そこで肝細胞(肝臓の細胞)に侵入し、複製周期を経験し、そのことによって、およそ2週間後に生じる、血流への数千のメロゾイトの放出をもたらす。次に放出されたメロゾイトは赤血球に侵入し、赤血球内発育周期を経験する。赤血球を感染した後の最初の48時間の間に、寄生虫は、幾つかの発育段階を経る。最初の段階は、環状段階であり、寄生虫はヘモグロビンを代謝し始める。次の段階は、トロホゾイト段階であり、その間に寄生虫は大部分のヘモグロビンを代謝し、大きくなり、寄生虫を更に産生するための準備をする。最後に、寄生虫は無性生殖的に分裂して、多核シゾントを形成する。周期の最後には、赤血球は突発的に破れて、放出されたメロゾイトが新たな赤血球に侵入する(Micro Worlds(商標)electronic science magazine;Lawrence Berkeley National Laboratory,University of California(非特許文献1)を参照されたい)。寄生虫が赤血球の中で成熟すると、住み着いた球の接着特性を変更し、このことは、これらの感染血球が脳の毛細管に貼り付き、血流を妨げ、脳性マラリアと呼ばれる状態になるので特に危険である。加えて、骨髄からの新たな赤血球の産生の低減(赤血球形成異常)と連動した感染及び非感染赤血球の連続的破裂(後者は、免疫仲介機構の結果である)は、必然的に貧血をもたらす。
【0005】
薬剤耐性マラリアは、マラリア制圧における最も重要な問題の1つとなっている。インビボにおける臨床耐性が、アルテミシニン及びその誘導体を除いた全ての抗マラリア薬において報告されている。薬剤耐性感染の治療におけるWHOの推奨には、アルテミシニンを他の種類の抗マラリア剤と組み合わせて使用することが含まれる。しかし、これらの薬剤は高価なので貧しい国々が利用できる可能性を制限している。世界の一部の地域では、アルテミシニン薬は第一線治療を構成し、推定される非複雑性マラリアの自己治療用の単剤療法として見境なく使用されており、薬剤耐性を発生する危険性を増している。薬剤耐性の問題は、自己治療用の見境のない不完全な薬剤使用に起因して、特に熱帯熱マラリア原虫に対する選択圧が増していることが主に寄与している可能性がある。熱帯熱マラリア原虫のクロロキンに対する耐性は、最初に1961年にタイで報告されており、現在マラリアが風土病である大部分の国に広まっている。抗葉酸剤のピリメタミン及びシクログアニルに対する耐性は、抗マラリア剤として展開されてから間もなく発生した。スルファ化合物の追加は、多くの場合に耐性寄生虫に対して効果があると証明されている薬剤組み合わせを作り出したが、これらの組み合わせによっても耐性が発生した。幾つかの機構がマラリア寄生虫の薬剤感受性の変化の原因であり、例えば、非遺伝子的変化に起因する生理的適応、薬剤圧下で混合個体群に以前から存在している薬剤耐性寄生虫の選択、自然突然変異、核外遺伝子の突然変異又はプラスミド様因子の存在である。
【0006】
薬剤それ自体による突然変異体の選択は、重要な機構と思われる。治療量以下のレベルの抗マラリア薬が存在する環境下では、これらの自然の変異を介するか又は突然変異を介して耐性を有する寄生虫は、明らかに、重要な生物学的利点を有する。このことは、耐性株が最初は少数であっても、非耐性株からの種内競争の連続薬剤仲介排除は、耐性株が数多くの有意性を達成することを可能にし、事実、クロロキン及びスルファドキシン−ピリメタミン(SP)のような従来の抗マラリア薬に対する耐性が広まっていることを意味する。多剤耐性熱帯熱マラリア原虫のマラリアは、東南アジア、南米及びアフリカにおいて非常に流行している。疾患の最大の重荷を負わされている大陸であるアフリカも、その結果として死亡率の増加を被っている(Roll Back Malaria,Facts on ACTs,WHO,January 2006(非特許文献2))。大多数の研究は、薬剤選択圧が耐性マラリアの出現について責任があると指摘している。遺伝子的に決定された耐性では、耐性寄生虫個体群から配偶子母体が伝達され、薬剤耐性株の蔓延を促進する。プラスモディウム属の寄生虫は、極めて複雑なゲノムを有し、異なる宿主の微環境の間で切り替わることができる容易さ及び必要とされる代謝変化が、寄生虫代謝に対する抗マラリア薬の正確な作用様式を研究する難しさを例示している(The Biology of Malaria Parasites:Report of a WHO Scientific Group.WHO Technical Report Series,1987(非特許文献3))。薬剤耐性に関連する抗マラリア剤の例は、抗生物質のドキシサイクリン、プログアニル、ピリメタミン及びスルホンアミドのような特定の抗葉酸剤、クロロキン、メフロキン及びキニーネのようなキノリン、並びにアトバクオンのようなナフトキノンである。
【0007】
1,2−ジヒドロトリアジン、2,4−ジアミノピリミジン及び2,4−ジアミノキナゾリンのような特定の化合物は、還元葉酸のプールを維持する主要な酵素であるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のインヒビターとして広範囲に研究されてきた。マラリア寄生虫において、DHFRは、二機能性酵素のジヒドロ葉酸レダクターゼ−チミジル酸シンターゼ(DHFR−TS)の一部として存在し、ジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に還元するように作用し、続いてこれは5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸に変換される。この補助因子をチミジル酸シンターゼ(TS)が利用して、DNA合成及び細胞増殖に必須であるDNAの構成成分であるデオキシチミジル酸を産生する。DHFRの阻害は、DNA合成の阻害及び寄生虫の死亡をもたらす。従って、抗葉酸剤としても知られているこれらのインヒビターは、宿主の細胞に実質的に影響を与えることなく標的寄生虫のDHFRを選択的に阻害することができるのであれば、感染因子に対する潜在的に有用な薬剤である。
【0008】
抗葉酸剤又は抗葉酸拮抗薬として一般に知られており、有効な抗マラリア剤であることが示されているDHFRのインヒビターには、シクログアニル(Cyc)、1,2−ジヒドロトリアジン及びピリメタミン(Pyr)、並びにジヒドロトリアジンの1及び2位、ジアミノピリミジンの5及び6位に異なる置換基を有するそれらの誘導体が含まれる。これらの種類の幾つかの化合物も、細菌DHFRの良好なインヒビターであり、抗菌活性を有する。シクログアニル、ピリメタミン、並びに他の記載されている1,2−ジヒドロトリアジン、2,4−ジアミノピリミジン及び2,4−ジアミノキナゾリン誘導体は、野生型マラリア寄生虫に対して有効であるが、DHFR及びジヒドロプテロイン酸シンターゼ(DHPS)に突然変異を有することが示されている抗葉酸剤耐性寄生虫に対する経口投与の後、インビボにおいて有効ではない。耐性の程度は、一般に、DHFRの突然変異の数によって増加し、マラリア寄生虫の非耐性及び耐性株の両方に対して有効である新規薬剤の必要性が促される。ヒト宿主もDHFRを有するので、これらの薬剤は対応する宿主酵素よりも寄生虫のDHFRに選択性を有しなければならないか又は対応する宿主酵素をはるかに低い程度で阻害しなければならず、そうでなければ宿主に対して毒性を有する場合がある。薬剤の他の特性も宿主毒性をもたらしてはならない。これらの薬剤が有意な抗菌活性を有しないことも好ましく、それは、マラリアが風土病の地域ではこれらを頻繁に投与してマラリアの再感染を治療する必要があり、抗マラリア治療の際に、共存する細菌に耐性菌を発生させる追加的な危険性があるからである。
【0009】
WR99210のような特定の1,2−ジヒドロトリアジン誘導体及びそのプロドラッグPS−15は、インビトロにおいてマラリアの一部の薬剤耐性株の有効なインヒビターであることが知られているが、これらも動物モデルにおいて毒性を示し(Knight et al,Ann.Trop.Med.Parasitol.(1982)76:1−7(非特許文献4)を参照されたい)、これらの製造は、毒性の高い副産物TCDDの産生を伴い、ppbレベルで厳密に管理されなければならない。PS−15に関連する幾つかの化合物が合成されており、一部は臨床試験中である(Jensen et al,J.Med.Chem.(2001)44:3925−31(非特許文献5);米国特許第5,322,858号(1994)(特許文献1);及びShearer et al,J.Med.Chem.(2005)48:2805−2813(非特許文献6))。WR99210はDHFRに結合することが推測されたが、実際の結合の詳細は、酵素インヒビター複合体の結晶構造が報告され、WR99210と熱帯熱マラリア原虫のDHFRとの分子相互作用が明らかになるまで不明であった(Yuvaniyama et al,Nat.Struct.Biol.(2003)10:357−65(非特許文献7))。非耐性及び抗葉酸剤耐性株に対するこれらの強力なインビトロ抗熱帯熱マラリア原虫活性にもかかわらず、そのよう化合物が、経口での生物学的利用能が不十分なのでマラリアに対して有効な治療として開発されうるのか不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,322,858号(1994)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Micro Worlds(商標)electronic science magazine;Lawrence Berkeley National Laboratory,University of California
【非特許文献2】Roll Back Malaria,Facts on ACTs,WHO,January 2006
【非特許文献3】The Biology of Malaria Parasites:Report of a WHO Scientific Group.WHO Technical Report Series,1987
【非特許文献4】Knight et al,Ann.Trop.Med.Parasitol.(1982)76:1−7
【非特許文献5】Jensen et al,J.Med.Chem.(2001)44:3925−31
【非特許文献6】Shearer et al,J.Med.Chem.(2005)48:2805−2813
【非特許文献7】Yuvaniyama et al,Nat.Struct.Biol.(2003)10:357−65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マラリアに関連する死亡率が増加しているので、疾患制圧のより良好でより効果的な方法の必要性が存在する。特に、薬剤耐性マラリアに対するより有効な治療及び予防の必要性、即ち、熱帯熱マラリア原虫の多数の突然変異ジヒドロ葉酸レダクターゼの有効なインヒビターの形態における必要性が存在する。本発明はこの必要性及び他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、マラリアの治療及び予防のための抗マラリア化合物又は抗葉酸剤、並びに化合物を作製及び使用する方法に関する。抗葉酸剤は、非耐性及び薬剤耐性マラリアを含むマラリアの治療において、熱帯熱マラリア原虫のジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の新規インヒビターとして作用する。
【0014】
本発明は、下記に示されている式I:
【0015】
【化1】

【0016】
〔式中、Rは、C1−4アルキルであり、
Wは、O又はCHであり;
Xは、(CH2−4であり、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換されており、
Yは、CH、O、S又はN(Z)であり、ここでZは、H又は場合により置換されているアシル、アルキル若しくはアリール又はそれらの誘導体であり、そして
Arは、場合により置換されているアリール若しくはヘテロアリール又はそれらの誘導体である〕で示される化合物、或いは
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0017】
一つの実施態様において、Arは、置換フェニル若しくはナフチルのような場合により置換されている芳香族環であるか又は場合によりキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ピリジル、インドリル、トリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリニル及びベンゾトリアゾリルの群から選択される場合により置換されている芳香族複素環である。Arが芳香族環である場合、アシル、ベンゾオキサゾリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルキルC(1−3)、カルボキシアルキルC(1−3)オキシ、アルキルC(1−3)オキシカルボニルアルキルC(1−3)、アルキルC(1−3)オキシカルボニルアルキルC(1−3)オキシ、テトラゾリル、テトラゾリルアルキルC(1−3)及びテトラゾリルアルキルC(1−3)オキシから選択される少なくとも1つの基で場合により置換されている。Arは、追加の置換基で場合により置換されている。別の実施態様において、Arは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、置換アリール、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル及びニトロから選択される少なくとも1つの基により1つ以上の利用可能な位置で置換されている。
【0018】
一つの実施態様において、RはC1−4アルキルである。別の実施態様において、Rはエチルである。
【0019】
一つの実施態様において、W−X−YはO(CH2−4Oである。別の実施態様において、W−X−YはO(CH2−4Sである。なお別の実施態様において、W−X−YはO(CH2−4NZである。更なる実施態様において、W−X−YはO(CH2−4又は(CH3−4Oである。
【0020】
本発明は、更に、マラリアの治療が必要な被験者を治療する方法であって、化合物I又はその誘導体の有効量を被験者に投与することを含む方法を考慮する。一つの実施態様において、被験者には、マラリアの薬剤耐性又は非耐性株の治療の必要性がある。別の実施態様において、マラリアの薬剤耐性株(例えば、抗葉酸剤耐性株)は、少なくとも1つの薬剤(例えば、抗DHFR薬)に耐性がある株である。そのような抗葉酸薬には、シクログアニル、クロルシクログアニル及びピリメタミンが含まれるが、これらに限定されない。一つの好ましい実施態様において、マラリアの抗葉酸剤耐性株は、そのDHFRタンパク質配列に、16(Ala→Val)、51(Asn→Ile)、59(Cys→Arg)、108(Ser→Asn)、108(Ser→Thr)及び164(Ile→Leu)を含む少なくとも1つの突然変異を有する。別の好ましい実施態様において、マラリアの抗葉酸剤耐性株は、そのDHFRタンパク質配列に、16(Ala→Val)、51(Asn→Ile)、59(Cys→Arg)、108(Ser→Asn)、108(Ser→Thr)及び164(Ile→Leu)を含む少なくとも2つの突然変異を有するマラリア株である。別の好ましい実施態様において、マラリアの抗葉酸剤耐性株は、そのDHFRタンパク質配列に、16(Ala→Val)及び108(Ser→Thr)を含む少なくとも2つの突然変異を有するマラリア株である。断続的及び/又は予防的治療を含む非複雑性マラリアの治療は、好ましくは経口経路を介したものである。複雑性又は重篤マラリアの治療は、好ましくは非経口経路を介したものである。しかし、他の形態の投与も考慮される。
【0021】
本発明は、好ましい実施態様を例示するのに役立つ添付図面とともに読むと、最も良好に理解される。しかし、本発明は、図に開示されている特定の実施態様に限定されないことが理解される。図に示されている化学構造は、本明細書の実施例1において更に考察されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】P113の化学構造を例示する。
【図2】P149の化学構造を例示する。
【図3】P153の化学構造を例示する。
【図4】P154の化学構造を例示する。
【図5】P157の化学構造を例示する。
【図6】P135(R=H)及びP217(R=Et)の化学構造を例示する。
【図7】P195(R=Et)及びP218(R=H)の化学構造を例示する。
【図8】P169(R=H)及びP219(R=Et)の化学構造を例示する。
【図9】P218(遊離酸)の静脈内投与及びP195(エステルプロドラッグ)の経口投与後の、雄Swiss OutbredマウスにおけるP218の血漿濃度を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
i)一般的概要
本発明は、マラリアに対して、特に熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)における突然変異から生じる抗葉酸剤耐性マラリアに対して有効な新規インヒビターを提供する。既知の抗葉酸剤耐性熱帯熱マラリア原虫株は、108(セリンがアスパラギンになる)、51(アルパラギンがイソロイシンになる)、59(システインがアルギニンになる)及び/又は164(イソロイシンがロイシンになる)の位置で突然変異を有する。熱帯熱マラリア原虫の別の抗葉酸剤耐性株は、16(アラニンがバリンになる)及び108(セリンがトレオニンになる)の位置で突然変異を有する。これらはジヒドロ葉酸レダクターゼばかりでなく、マラリア寄生虫又は宿主反応における他の標的に対しても作用して、効果的な寄生虫の死滅をもたらす可能性がある。本発明の抗マラリア化合物は、哺乳類宿主に対して比較的低い毒性を有し、医薬組成物により投与されるときに効力がある。本発明の一つの大きな利点は、新規化合物がほとんど又は全く抗菌活性を示さないことであり、従って、細菌の耐性株をもたらす可能性が極めて少ないことである。
【0024】
ii)定義
用語「抗葉酸剤」、「抗葉酸拮抗剤」及び「DHFRインヒビター」は、本明細書において交換可能に使用され、本発明の目的において、マラリアの治療又は予防に使用することができる化合物を意味する。これらの化合物は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)の突然変異及び野生型ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の効果的なインヒビターである。
【0025】
用語「熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)」及び「熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)」は、本明細書において交換可能に使用され、ヒト及び動物宿主に伝達されて、宿主が1つ以上のマラリアの症状を示す寄生虫を意味する。より詳細には、熱帯熱マラリア原虫はマラリアを引き起こす原生動物である。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「アシル」は、R″C(=O)−の形態の基を意味し、ここでR″は、例えばH、C1−6アルキル、アリール、C1−6アルコキシ、OH,NH、NHR′又はN(R′)であり、R′は、C1−6アルキル又はアリールである。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」には、直鎖、分岐鎖及び環状の一価ヒドロカルビルラジカル、並びにこれらの組み合わせが含まれ、非置換である場合は、C及びHのみを含有する。例には、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2−プロペニル、3−ブチニルなどが挙げられる。そのような基のそれぞれにおいて炭素原子の総数が本明細書に時々記載されており、例えば、基が10個までの炭素原子を含有できる場合、1−10C又はC1〜C10若しくはC1−10と表すことができる。ヘテロ原子(典型的にはN、O及びS)が、例えばヘテロアリール基のように炭素原子と代わることが可能な場合、基を記載する数は、例えば依然としてC1〜C6のように書かれるが、基における炭素原子の数と、記載される環又は鎖において炭素原子の代わりに含まれるようなヘテロ原子との合計を表す。
【0028】
典型的には、本発明のアルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、1−10C(アルキル)又は2−10C(アルケニル若しくはアルキニル)を含有する。好ましくは、1−8C(アルキル)又は2−8C(アルケニル若しくはアルキニル)を含有する。時には、1−4C(アルキル)又は2−4C(アルケニル若しくはアルキニル)を含有する。単一の基は2種類以上の多重結合又は2つ以上の多重結合を含むことができ、そのような基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する場合には、用語「アルケニル」の定義の範囲内に含まれ、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する場合には、用語「アルキニル」の定義の範囲内に含まれる。
【0029】
アルキル、アルケニル及びアルキニル基は、多くの場合に、置換が化学的に意味をなす程度に置換されている。典型的な置換基には、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR、=NR、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR及びNOが含まれるが、これらに限定されず、ここで、Rは、それぞれ独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C10アリール又はC5〜C10ヘテロアリールであり、Rは、それぞれ場合により、ハロ、=O,=N−CN,=N−OR′、=NR′、OR′、NR′、SR′、SOR′SONR′、NR′SOR′、NR′CONR′、NR′COOR′、NR′COR′、CN、COOR′、CONR′、OOCR′、COR′及びNOで場合により置換されており、R′は、それぞれ独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール又はC5〜C10ヘテロアリールである。アルキル、アルケニル及びアルキニル基を、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール又はC5〜C10ヘテロアリールで置換することもでき、これらは、特定の基に適切である置換基でそれぞれ置換されていることができる。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」にはシクロアルキル及びシクロアルキルアルキル基が含まれるが、用語「シクロアルキル」は、環炭素原子を介して連結している炭素環式の非芳香族基を記載するために本明細書において使用することができ、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを介して分子に連結している炭素環式の非芳香族基を記載するために使用することができる。同様に、「ヘテロシクリル」は、環員として少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、C又はNであることができる環原子を介して分子に連結している非芳香族環状基を記載するために使用することができ、「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを介して別の分子に連結しているような基を記載するために使用することができる。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキル基に適した大きさ及び置換基は、アルキル基について上記に記載されたものと同じである。本明細書で使用されるとき、これらの用語には、環が芳香族ではない限り1つ又は2つの二重結合を含有する環も含まれる。
【0031】
「芳香族」部分又は「アリール」部分は、周知の芳香族性の特性を有する単環式又は縮合二環式部分を意味し、例にはフェニル及びナフチルが挙げられる。同様に、「芳香族複素環」及び「ヘテロアリール」は、環員としてO、S及びNから選択される1個以上のヘテロ原子を含有するような単環式又は縮合二環式の環系を意味する。ヘテロ原子を含めることは、5員環、また6員環の芳香族性を許容する。典型的な芳香族複素環系には、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル及びイミダゾリルのような単環式のC5−C6芳香族基、並びにインドリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルなどのような、単環式基の1つを、フェニル環と又はC8−C10二環式基を形成する芳香族複素環の単環式基のいずれかと縮合することによって形成された縮合二環式部分が含まれる。環系の全体にわたる電子分布の観点から芳香族性の特性を有する任意の単環式又は縮合環二環式系が、この定義に含まれる。また、分子の残りの部分に直接結合している環が少なくとも芳香族性の特性を有する、二環式基が含まれる。典型的には、環系は5〜12個の環員原子を含有する。好ましくは、単環式ヘテロアリールは、5〜6環員を含有し、二環式ヘテロアリールは、8〜10環員を含有する。
【0032】
アリール及びヘテロアリール部分は、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C5〜C12アリール、C1〜C8アシル及びこれらのヘテロ形態を含む多様な置換基で置換されていることができ、これらはそれぞれそれ自体更に置換されていることができ、アリール及びヘテロアリール部分の他の置換基には、ハロ、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR及びNOが含まれ、ここで、Rは、それぞれ独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル又はC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、Rは、それぞれ、アルキル基について上記に記載されたように場合により置換されている。アリール又はヘテロアリール基の置換基は、当然のことながら、そのような置換基それぞれの種類又は置換基のそれぞれの構成成分に適したように本明細書に記載された基で更に置換されていることができる。従って、例えば、アリールアルキル置換基は、アリール部分において、アリール基に典型的な本明細書に記載された置換基で置換されていることができ、アルキル部分において、アルキル基に典型的な本明細書に記載された置換基で更に置換されていることができる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「場合により置換されている」は、記載される特定の基が非水素置換基を何も有しなくてもよいか又は基が1つ以上の非水素置換基を有してもよいことを示す。特に特定されない限り、そのような存在することができる置換基の総数は、記載される基の非置換形態に存在するH原子の数と等しい。任意の置換基が、カルボニル酸素(=O)のように二重結合を介して結合している場合、基は2つの利用可能な原子価を取り、それにより含まれうる置換基の総数は利用可能な原子価の数に従って減少する。
【0034】
用語「株」は、特定の生物の特定の遺伝子変種を意味する。化学療法において、微生物は、特定の薬剤又は療法に対する感受性に従って薬剤耐性又は非耐性株と記載することができる。多くの場合に、薬剤耐性株は、1つ以上の遺伝子突然変異を有する。非耐性株は、通常は特定の薬剤又は療法に完全に反応する株である。そのような株は、遺伝子突然変異を有する場合も有しない場合もある。耐性株は、同じ薬剤又は療法に対して非耐性株よりも反応が少ない株である。
【0035】
用語「非耐性」及び「野生型」は、本明細書において交換可能に使用され、通常は特定の薬剤又は療法に完全に反応する寄生虫の株を意味する。
【0036】
iii)抗マラリア化合物
一つの態様において、本発明は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)により引き起こされる野生型及び抗葉酸剤耐性を含む薬剤耐性の両方のマラリアに対して有効である、一連の新規抗マラリア化合物を提供する。これらの化合物は、ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビターの部類に属する。新規化合物は、下記に示されている式Iに基づいている:
【0037】
【化2】

【0038】
式(I)の化合物のRは、H又はC〜Cアルキルであり、幾つかの実施態様では、C1−4アルキルである。特定の実施態様において、Rは、エチル又はエチルであり、時にはエチルが好ましい。
【0039】
Wは、時にはOであり、時にはCHである。幾つかの好ましい実施態様において、WはOである。
【0040】
Yは、多くの場合にCH、O、S又はNZである。
【0041】
Xは、2〜4つの炭素アルキレン鎖(CH2−4であり、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0042】
Arは、時々、好ましくはキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル又はキノキサリニルのような複素環式芳香族基である。幾つかの好ましい実施態様において、Arはキノリニルであり、特定の実施態様では、4−キノリニルである。
【0043】
Arが芳香族複素環基ではなく芳香族環である場合、少なくとも1つの基で置換されていなければならず、幾つかの実施態様において、アシル、ベンゾオキサゾリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルキルC(1−3)、カルボキシアルキルC(1−3)オキシ、アルキルC(1−3)オキシカルボニルアルキルC(1−3)、アルキルC(1−3)オキシカルボニルアルキルC(1−3)オキシ、テトラゾリル、テトラゾリルアルキルC(1−3)及びテトラゾリルアルキルC(1−3)オキシからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されており、Arは、追加の置換基で場合により置換されているか、或いは薬学的に許容されるその塩である。幾つかの実施態様において、Arは、COR′、(CH1−3COOR′、O(CH1−3COOR′、テトラゾリル、(CH1−3−テトラゾリル及びO(CH1−3−テトラゾリルからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されており、ここでR′は、H又はC1−4アルキルである。別の実施態様において、Arは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、置換アリール、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ニトロなどから選択される任意の置換基により1つ以上の利用可能な位置で更に置換されていることができる。Arに好ましい任意の置換基には、ハロ、CF、メトキシ及びメチルが含まれ、Arは、典型的には、0〜2つ、好ましくは0又は1つのそのような任意の置換基を含有する。
【0044】
Arが芳香族複素環である場合、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、置換アリール、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ニトロなどにより1つ以上の利用可能な位置で置換されていることができる。芳香族複素環である場合、Arに好ましい置換基には、ハロ、CF、メトキシ及びメチルが含まれ、幾つかの実施態様において、Arにより表される芳香族複素環は、非置換である。
【0045】
本発明の抗マラリア化合物には、それらの互変異性体及び薬学的に許容される塩が含まれる。本発明には、少なくとも1つの式(I)の化合物を少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と混合して含有する医薬組成物も含まれる。好ましい実施態様において、賦形剤は水ではない。キラル中心が式(I)の化合物に存在する場合、本発明には、化合物それぞれの個別の鏡像異性体又はジアステレオマー、並びに、ラセミ混合物を含む、鏡像異性体又はジアステレオマーの混合物が含まれる。
【0046】
本発明には、インビボにおいて式(I)の化合物に容易に変換されるプロドラッグも含まれる。これらのプロドラッグの例には、アミン窒素がアシル基により、典型的には置換されていてもよいC1〜C6アシル基により置換されている置換誘導体及びカルボキシル基がエステル化されてC1〜C6アルコキシカルボニル基になっている化合物が挙げられる。C1〜C4アシル基であるNアシルにより又はグリシン、アラニン、セリン、グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン酸、アスパラギン酸など、若しくはこれらのアミノ酸のジペプチド若しくはトリペプチドのようなアミノ酸から誘導されるアシル基により置換されているプロドラッグは、内在性アミダーゼ及びエステラーゼにより容易に脱アシル化されるので、多くの場合に好ましい。
【0047】
更に包含されるものは、上記の化合物を作製する合成方法である。特定の実施態様において5−アルコキシ−6−置換−2,4−ジアミノピリミジンを作製する合成方法は、塩基の存在下でのハロゲン化アルキル又はアルキルメシレートによる5−ヒドロキシ−6−置換−2,4−ジアミノピリミジンのOアルキル化を伴う。
【0048】
別の態様において、本発明は、マラリアの非耐性及び薬剤耐性株を含むマラリアの治療のために化合物を使用する方法を提供する。好ましい実施態様において、開示されている化合物は、野生型と耐性型の両方の熱帯熱マラリア原虫ジヒドロ葉酸レダクターゼ(pfDHFR)に対して効果的なインヒビターである。更に考慮されることは、野生型を有するか、又はDHFRタンパク質配列に少なくとも1つの突然変異を有する本明細書に記載されている突然変異株、若しくは本明細書に記載されている少なくとも1つの点突然変異を含有する他の株、より好ましくは本明細書に記載されている少なくとも2つの突然変異を含有する突然変異株のような、突然変異したジヒドロ葉酸レダクターゼを有する熱帯熱マラリア原虫(pfDHFR)から誘導される耐性マラリアの治療における、開示されている化合物又は医薬組成物若しくはその塩の使用である。
【0049】
iv)抗マラリア化合物の合成
Arが芳香族複素環基である化合物の柔軟な側鎖部分は、好ましくは、下記のスキーム1に例示されているように、Ar又はArOHとアルキル化剤とのアルキル化反応により構築される。
【0050】
【化3】

【0051】
式(I)の化合物の合成に有用なアルキル化化合物を生成する適切なアルキル化剤は、良く知られている。例えば、1,3−ジブロモプロパン又は1−ブロモ−3−クロロプロパンを上記に例示された反応に使用して、式:Ar−(CH−Br又はAr−O−(CH−Brを有する化合物を作製することができる。これらの中間体は、2,4−ジアミノピリミジンの5−ヒドロキシ基をアルキル化して式(I)の化合物を提供するために容易に使用される。適切な離脱基(LG)には、塩素、臭素、ヨウ素、メシレート、ベンゼンスルホネート、トシレート及びトリフレートのような化学薬品が含まれるが、これらに限定されない。この種類の反応の変形が当業者には容易に理解される。適切な求核剤には、フェノール、他のアリール及びヘテロアリールアルコール、アリール及びヘテロアリールチオール、チオフェノール、アリール及びヘテロアリールアミン、インドール、トリアゾール、イミダゾールのような環原子が容易にアルキル化される芳香族複素環化合物、並びにこれらの置換誘導体及び共役塩基が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
選択的モノアルキル化を達成するのがより困難である場合、ビス求電子試薬の代わりに、2−ブロモエタノール、3ブロモプローパノール又は3−クロロプロパノールのようなωハロゲン化アルコールから出発することも可能である。その場合、中間体アルコールのOH基を、分子の他の部分の構造と適合性があるときは、より反応性のある離脱基に変えるべきである。例えば、臭素化を、PBr、HBr水溶性、PhPBr、CBr/PhP、NBS/PhPにより実施することができ、一方、メシル化をMsCl/EtNにより実施することができる。あるいは、ハロゲン化アルコールと求核剤(ArYH)とのミツノブ反応(DEAD/PhP又はDIAD/PhP)は、Arに結合している反応性側鎖を有する必要な中間体の直接的な合成を可能にする。
【0053】
Arを含有する反応性側鎖が合成されると、塩基の存在下でのAr−(CH1−4−LG種と5−ヒドロキシ−6−置換−2,4−ジアミノピリミジンとの更なるアルキル化反応によって、本発明の化合物が生じる。5−ヒドロキシ−6−置換−2,4−ジアミノピリミジンは、商業供給者から容易に入手可能である。塩基は、LiH、LiOH、KOH、NaH及びKCOから選択することができ、最も好ましい塩基はLiOHである。塩基をヒドロキシピリミジンに対して1〜10当量で加えることができる。反応は、好ましくは不活性溶媒で実施され、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい溶媒である。反応は、約25〜80℃、好ましくは25〜30℃で実施することができる。反応のより詳細な記載は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる次の特許及び公報(即ち、米国特許第4,179,562号及び同第4,374,136号、GB2086386)を参照されたい。この一般的な構造の化合物を作製する他の方法は、当該技術において周知であり、これらの化合物を調製するために当業者によって容易に適応される。
【0054】
最終生成物を単離し、蒸発、抽出、結晶化及び/又はカラムクロマトグラフィーのような従来の技術により精製することができる。式(I)の化合物の塩酸塩及び他の薬学的に許容される塩は、化合物を、所望の塩に対応する適切な酸と混合することによって容易に調製され、当該技術において良く知られている。酸は、多くの場合、水、メタノール及び/又はエタノールを含む溶媒中の式(I)の化合物の溶液又は懸濁液に添加され、続く蒸発によってあらゆる望ましくない溶媒が除去される。ジアミノピリミジンは、多くの場合、二塩酸塩のような二塩に変換される。
【0055】
v)抗マラリア化合物の医薬組成物及び製剤
抗マラリア化合物又は抗葉酸剤を本発明の方法に使用される医薬として配合することができる。抗マラリア化合物と、薬剤耐性及び非耐性マラリアにおける熱帯熱マラリア原虫の野生型及び突然変異(例えば、単一突然変異、複数突然変異)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)との結合に関連する生物学的反応を刺激することができる組成物又は化合物を、本発明において医薬として使用することができる。配合及び投与の技術についての一般的な詳細の例は、科学文献に十分に記載されている(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co.,Easton Pa.を参照されたい)。抗葉酸剤医薬製剤は、医薬の製造における当該技術に既知の任意の方法に従って調製することができる。本発明の方法に使用される抗葉酸剤は、経口投与及び非経口投与を含む任意の従来の許容される方法による投与用に配合することができる。経口投与は、非複雑性マラリアの治療に好ましく、一方、非経口投与は、複雑性(重篤)マラリアの治療に好ましい。例示的な例を下記に記載する。
【0056】
【表1】

【0057】
上記の表1は、従来のピリミジンと比較した従来のジヒドロトリアジンの抗マラリア活性及び経口での生物学的利用能を示す。WR99210は、プラスモディウムシャバウディASに感染しているマウスに皮下投与した後、熱帯熱マラリア原虫の寄生虫の非耐性及びピリメタミン耐性株に対してインビトロ及びインビボにおいて活性であるが、その効能は化合物が経口経路で投与されたときには著しく低減される(即ち、高いED90値)。この低減は、シクログアニル及びピリメタミンと比較して、WR99210の経口での生物学的利用能が不十分であることに起因することが見出されている。
【0058】
【表2】

【0059】
比較として、上記の表2は、本発明の新たな2,4−ジアミノピリミジン誘導体化合物の抗菌活性を示す。これらの選択された化合物は、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対して不活性であり、寒天平板において細菌の増殖を完全に阻害するのに非常に高いマイクロモル濃度を必要とし、一方、トリメトプリムのような他の2,4−ジアミノピリミジン誘導体は、臨床的に有効な抗生物質である。
【0060】
経口投与用の医薬製剤及び調合剤は、当該技術において周知の薬学的に許容される担体を経口投与に適切な投与量で使用して調製することができる。そのような担体は、医薬製剤を、錠剤、丸剤、粉末剤、カプセル剤、液剤、ロゼンジ剤、ゲル剤、スラリー剤、懸濁剤などのような患者による摂取に適した投与形態に配合することを可能にする。経口使用のための医薬調合剤は、抗葉酸剤化合物を固体賦形剤と組み合わせ、得られた混合物を場合により粉砕し、所望であれば適切な追加の化合物を加えた後、顆粒の混合物を加工して、錠剤又は丸剤を得ることによって調製することができる。適切な固体賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖類、トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ又は他の植物からのデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はナトリウムカルボキシメチルセルロースのようなセルロース、並びにアラビア及びトラガカントを含むゴム類、また、ゼラチン及びコラーゲンのようなタンパク質が含まれるが、これらに限定されない炭水化物又はタンパク質の充填剤である。望ましい場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤又は可溶化剤を加えることができる。
【0061】
経口用に使用できる本発明の医薬調合剤は、例えば、ゼラチンから作られる押し込み式カプセル剤、並びにゼラチンと、グリセロール又はソルビトールのような被覆から作られる軟質密閉カプセル剤である。押し込み式カプセル剤は、ラクトース又はデンプンのような充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、及び場合により安定剤と混合した抗葉酸剤を含有することができる。軟質カプセル剤では、抗葉酸剤化合物は、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールのような適切な液体に、安定剤を用いて又は用いないで溶解又は懸濁されていてもよい。
【0062】
本発明の水性懸濁剤は、抗葉酸剤を水性懸濁剤の製造に適切な賦形剤と混合して含有する。そのような賦形剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムのような懸濁剤、並びに天然に生じるホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合物(例えば、ポリエチレンソルビトールモノオレエート)又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)のような分散又は湿潤剤が含まれる。水性懸濁剤は、エチル又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートのような1種以上の防腐剤、1種以上の着色剤、1種以上の風味剤及びスクロース、アスパルテーム又はサッカリンのような1種以上の甘味剤を含有することもできる。製剤をオスモル濃度について調整することができる。
【0063】
油状懸濁剤は、抗葉酸剤を、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツ油のような植物油又は流体パラフィンのような鉱油に懸濁することによって配合することができる。油状懸濁剤は、蜜ロウ、固形パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含有することができる。甘味剤を添加して、口当たりの良い経口調合剤を提供することができる。これらの製剤を、アスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保存することができる。
【0064】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した本発明の分散性粉末剤及び顆粒剤は、分散剤、懸濁剤及び/又は湿潤剤、及び1種以上の防腐剤と混合した抗葉酸剤により配合することができる。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、上記に開示されているもので例示される。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、風味剤及び着色剤が存在することもできる。
【0065】
本明細書の医薬製剤は、水中油型乳剤の形態であることもできる。油相は、オリーブ油若しくはラッカセイ油のような植物油、流体パラフィンのような鉱油、又はこれらの混合物であることができる。適切な乳化剤には、アラビアゴム及びトラガカントゴムのような天然に生じるゴム、ダイズレシチンのような天然に生じるホスファチド、ソルビタンモノオレエートのような脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導されるエステル又は部分エステル、並びにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物が含まれる。乳剤は、甘味剤及び風味剤を含有することもできる。シロップ剤及びエリキシル剤には、グリセロール、ソルビトール又はスクロースのような甘味剤を配合することができる。そのような製剤は、粘滑剤、防腐剤、風味剤又は着色剤を含有することもできる。
【0066】
薬剤が静脈又は他の注射による非経口経路を介して送達される場合、本発明の抗葉酸剤の医薬製剤は、滅菌注射用水性液剤のような滅菌注射用調合剤の形態であることができる。滅菌注射用調合剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用液剤であることもできる。加えて、滅菌固定油を溶媒又は懸濁媒質として慣用的に用いることができる。このために、合成モノ−又はジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸を同様に注射用の調合剤に調製に使用することができる。
【0067】
vi)実施例
下記の実施例は、本発明を例示するために提供され、その範囲を制限するために提供されるものではない。本発明の他の変形は、当業者には容易に理解され、添付の請求項に包含される。本明細書で引用された全ての出版物、特許及び特許出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0068】
実施例1:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(P113)(図1を参照されたい)
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン二塩酸塩の調製の代表な手順を下記に提示する。
a)3−(キノリン−4−イルオキシ)プロパン−1−オール:
無水DMF(8mL)中のキノリン−4−オール(1.35g、9.30mmol)、無水炭酸カリウム(3.73g、26mmol)及びヨウ化カリウム(4.23g)の懸濁液を、25℃で30分間撹拌した。3−クロロプロパノール(2.93g、31mmol)を加え、反応を、出発物質が消費されるまで撹拌した。反応をジクロロメタンで希釈し、水で抽出した。生成物を、ジクロロメタン層を蒸発させた後、僅かに黄色の固体として得て(0.5298g、28%)、それを更に精製することなく次の工程に使用した。H NMR(400MHz,CDCl):2.09(2H,m),3.93(2H,t,J=5.6Hz),4.10(2H,t,J=5.6Hz),4.51(1H,s),6.25(1H,d,J=5.5Hz),7.32(1H,t,J=7.4Hz),7.56(1H,t,J=8.2Hz),7.90(1H,d,J=8.4Hz),7.93(1H,d,J=8.4Hz),8.36(1H,d,J=5.3Hz)。
【0069】
b)3−(キノリン−4−イルオキシ)プロピルメシレート:
工程a)で得られた3−(キノリン−4−イルオキシ)プロパン−1−オール(0.5298g、2.6mmol)の溶液を、ジクロロメタン(5mL)中のトリエチルアミン(0.60mL)及びメタンスルホニルクロリド(0.55g、4.8mmol)で処理した。出発物質が消費された後、反応をジクロロメタンで希釈し、水及びNaHCO水溶液で洗浄し、蒸発させた。残渣を、酢酸エチルで溶離するSiOのカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を明黄色の固体として得た(0.3868g、53%)。H NMR(400MHz,CDCl):2.43(2H,m),3.00(3H,s),4.38(2H,t,J=5.8Hz),4.55(2H,t,J=5.8Hz),6.80(1H,d,J=5.5Hz),7.55(1H,t,J=8.0Hz),7.75(1H,ddd,J=1.2.7.0,8.2Hz),8.20(1H,d,J=8.4Hz),8.13(1H,d,J=8.4Hz),8.77(1H,d,J=5.3Hz)。
【0070】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.3963g、2.6mmol)を、DMF(2mL)中の水酸化リチウム一水和物(497.2mg、11.8mmol)の撹拌溶液に加え、反応混合物を1時間撹拌した。DMF(1mL)中の3−(キノリン−4−イルオキシ)プロピルメシレート(0.3868g、1.37mmol)の溶液をゆっくりと加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。反応をジクロロメタンで希釈し、水で抽出した。ジクロロメタン層を蒸発させ、続いて残渣をメタノール水溶液から結晶化させた。生成物を僅かに黄色の固体として得た(0.4677g、53%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.87(3H,t,J=7.0Hz),2.24(2H,q,J=7.0Hz),2.30(2H,m),3.85(2H,t,J=5.5Hz),4.43(2H,t,J=5.5Hz),5.53(2H,s),6.11(2H,s),7.06(1H,d,J=5.2Hz),7.54(1H,t,J=8.0Hz),7.72(1H,ddd,J=1.4,6.9,8.3Hz),7.93(1H,d,J=8.3Hz),8.15(1H,d,J=8.5Hz),8.72(1H,d,J=5.2Hz)。
【0071】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン二塩酸塩:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.1740g、0.51mmol)をメタノール(1mL)に懸濁し、2当量の濃HClを加えた。標記化合物を、蒸発及びアセトニトリルによる残渣の粉砕の後、オフホワイトの結晶質固体として得た(0.2004g、95%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.04(3H,t,J=7.6Hz),2.42(2H,m),2.45(2H,t,J=7.0Hz),3.97(2H,t,J=5.9Hz),4.72(2H,t,J=5.9Hz),7.56(2H,bs),7.61(1H,d,J=6.7Hz),7.87(1H,t,J=7.8Hz),7.97(1H,s),8.11(1H,ddd,J=1.0,7.3,8.2Hz),8.35−8.40(3H,m),9.18(1H,d,J=6.6Hz),12.86(1H,s)。
【0072】
遊離塩基及び塩酸塩を含む、インビトロ及びインビボ抗菌活性を示す他の化合物を下記に示し、これらは、本明細書の実施例1においてP113について示した手順と同様の手順により調製した。そのような化合物は、当該技術において既知である適切な4−キノリノール出発物質から始め、当業者に容易に理解されるこれらの方法を適応して、式(I)の化合物に変換する。例示的な化合物を下記に示す。
【0073】
実施例2:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−クロロ−キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(P149)(図2を参照されたい)
a)6−クロロキノリン−4−オール:
2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(メルドラム酸、21.62g、0.15mmol)及びオルトギ酸トリメチル(150mL)の混合物を、窒素下で1時間穏やかに加熱還流した。得られた赤色溶液を冷却し(80℃)、4−クロロアニリン(19.14g、0.15mol)を少量ずつ加えて、黄色固体の形成をもたらした。反応混合物を加熱還流し、更に1時間激しく撹拌し、次に25℃に冷却した(Ryan et al.(2006)Org.Lett.8:2779−2782.;Madrid et al.(2005) Bioorg.Med.Chem.Lett.15:1015−1018を参照されたい)。得られた固体を濾過し、冷アセトンで洗浄して、エン−アミン化合物を黄色の固体として得て(29.58g、70%、融点214〜214.5℃(分解))、それをH NMRにより特徴決定した。240℃のジフェニルエーテルの溶液(20mL)に、エン−アミン化合物(5g、17.75mmol)を少量ずつ加えて、激しいガスの発生をもたらし、反応を窒素下で30分間還流させた。反応混合物を80℃に冷まし、沈殿物を濾過により単離し、アセトン及びヘキサンにより、濾液が無色になるまで洗浄した。褐色の固体を、エーテルによる温浸、続く減圧下での蒸留により精製して、6−クロロキノリン−4−オールを明黄色の固体として収率55%で得た(1.7533g、融点281〜282.5℃)(Riegel et al,(1946)J.Am.Chem.Soc.68:1264−1266,融点274−275℃を参照されたい)。H NMR(400MHz,CDCl):6.07(1H,d,J=7.4Hz),7.59(1H,d,J=8.8Hz),7.68(1H,dd,J=8.8,2.5Hz),7.95(1H,d,J=7.4Hz),8.01(1H,d,J=2.4Hz),11.92(1H,bs)。
【0074】
b)3−(6−クロロキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド:
無水テトラヒドロフラン(40mL)中の6−クロロキノリン−4−オール(2.16g、12mmol)、トリフェニルホスフィン(3.78g、14.4mmol、1.2当量)及び3−ブロモ−1−プロパノール(1.30mL、14.4mmol、1.2当量)の懸濁溶液に、アゾジカルボン酸ジエチル(2.51g、14.4mmol、1.2当量)を窒素下、25℃で20分間かけて加え、反応混合物を更に1時間撹拌した。臭化水素酸(1.36mL、12mmol、48%水溶液、1.0当量)を加えて、白色の固体を対応する臭化水素塩としてもたらした。白色塩を濾過し、ジエチルエーテルで3回温浸した。白色塩を炭酸カリウム水溶液で中和し、続いてジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン層を蒸発させると、粗生成物を得て、それをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離剤としてCHCl中2%メタノール)に付して、ブロモ化合物を白色の固体として得た(2.52g、70%、融点102〜103.5℃(分解))。H NMR(500MHz,CDCl):2.50(2H,m),3.70(2H,t,J=6.3Hz),4.36(2H,t,J=5.8Hz),6.79(1H,d,J=5.3Hz),7.64(1H,dd,J=9.0,2.4Hz),7.99(1H,d,J=9.0Hz),8.14(1H,d,J=2.4Hz),8.75(1H,d,J=5.2Hz)。
【0075】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−クロロキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(1.39g、9mmol)を、DMF(5mL)中の水酸化リチウム一水和物(1.32g、31.50mmol)の撹拌溶液に加え、反応混合物を25℃で1時間撹拌した。DMF(3mL)中の3−(6−クロロキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド(2,71g、9mmol)の溶液を加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。DMFを減圧下で部分的に除去し、残渣を得た。残渣をジクロロメタンで温浸し、濾過して、白色の固体を得た。メタノール水溶液及び温水による再結晶化によって、所望のジアミノピリミジンを白色の固体として得た(1.85g、55%、融点230〜231℃(分解))。H NMR(500MHz,DMSO−d):0.91(3H,t,J=7.6Hz),2.26(2H,q,J=7.6Hz),2.31(2H,m),3.86(2H,t,J=6Hz),4.45(2H,t,J=5.9Hz),5.59(2H,s),6.17,(2H,s),7.15(1H,d,J=5.3Hz),7.76(1H,dd,J=9.0,2.4Hz),7.98(1H,d,J=9.0Hz),8.14(1H,d,J=2.4Hz),8.77(1H,d,J=5.2Hz)。
【0076】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−クロロキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン二塩酸塩:
メタノール(1mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−クロロキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.5608g、1.5mmol)の懸濁液に、2当量の濃HClを加えた。標記化合物を、ジエチルエーテルによる反応混合物の粉砕の後、オフホワイトの結晶質固体として得た(0.6366g、95%)。H NMR(500MHz,DMSO−d):1.09(3H,t,J=7.7Hz),2.43(2H,m),2.48(2H,m),3.99(2H,t,J=6.2Hz),4.70(2H,t,J=5.9Hz),7.55(2H,bs),7.64(1H,d,J=6.6Hz),7.95(1H,s),8.15(1H,dd,J=9.1,2.4Hz),8.37(2H,m),8.41(1H,d,J=9.1Hz),9.22(1H,d,J=6.5Hz),12.80(1H,s)。
【0077】
実施例3:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−フルオロ−キノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(P153)(図3を参照されたい)
a)3−(6−フルオロキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド臭化水素酸塩:
無水テトラヒドロフラン(30mL)中の6−フルオロキノリン−4−オール(3.67g、22.5mmol)(文献の手順に従って(Price et al,Organic Syntheses,Coll.Vol.3,p.272;Vol.28,p.38を参照されたい)4−フルオロアニリン及びエトキシメチレンマロン酸ジエチルから出発して総収率32%で合成した)、トリフェニルホスフィン(6.56g、25mmol)及び3−ブロモ−1−プロパノール(2.3mL、25mmol)の懸濁溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(4.9mL、25mmol)を窒素下、25℃で30分間かけて加え、反応混合物を1時間撹拌した。臭化水素酸(48%水溶液を2.8mL、25mmol)を加えて、標記化合物の沈殿をもたらした。生成物を吸引濾過により収集し、THF、アセトン及びエーテルで洗浄して、明黄色の結晶質固体を得た(4.17g、51%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):2.45(2H,m),3.82(2H,t,J=6.5Hz),4.61(2H,t,J=5.7Hz),7.64(1H,d,J=6.6Hz),8.40(1H,dt,J=8.5,2.7Hz),7.90(m,1H),8.27(1H,dd,J=9.4,4.8Hz),9.24(1H,d,J=6.6Hz)。
【0078】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−フルオロキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(3.00g、19.5mmol)を、DMF(5mL)中の水酸化リチウム一水和物(1.74g、41.50mmol)の撹拌溶液に加え、反応混合物を25℃で1時間撹拌した。DMF(5mL)中の3−(6−フルオロキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド〔NaHCO飽和水溶液の過剰量による3−(6−フルオロキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド塩酸塩(4.17g、11.4mmol、工程b)の処理、続くジクロロメタンにより抽出及び蒸発によって定量的に調製した〕の溶液を加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。水を加えて生成物の沈殿をもたらし、それを濾過により収集した。MeOH−HOから再結晶化させて、遊離塩を明黄色の結晶質固体として得た(3.23g、79%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.88(3H,t,J=7.6Hz),2.25(2H,q,J=7.6Hz),2.29(2H,m),3.84(2H,t,J=5.8Hz),4.43(2H,t,J=5.7Hz),5.54(2H,s),6.11(2H,s),7.10(1H,d,J=5.2Hz),7.63(1H,dt,J=8.7,2.6Hz),7.78(1H,dd,J=9.6,2.7Hz),8.01(1H,dd,J=9.2,5.4Hz),8.71(1H,d,J=5.2Hz)。
【0079】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−フルオロキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン二塩酸塩:
メタノール(40mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−フルオロキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(10.02g、28mmol)の懸濁液に、5.3mLの濃HClを加えた。標記化合物がほぼ直後に沈殿し、吸引濾過、続くアセトンによる洗浄及び風乾の後、白色の結晶質固体として得た(11.81g、98%、融点212〜214℃)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.05(3H,t,J=7.4Hz),2.40(2H,m),2.48(2H,m),3.98(2H,t,J=5.8Hz),4.68(2H,t,J=5.5Hz),7.50(bs,2H),7.60(1H,d,J=6.5Hz),7.90(1H,s),8.04(1H,dt,J=9.0,2.6Hz),8.10(1H,dd,J=8.9,2.3Hz),8.33(1H,s),8.43(1H,dd,J=9.3,4.8Hz),9.17(1H,d,J=6.4Hz),12.70(1H,s)。
【0080】
実施例4:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(P154)(図4を参照されたい)
a)3−(2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド:
アセトン(50mL)中の2−メチルキノリン−4−オール(1.59g、10mmol)(当該技術の既知の手順に従って(Leonard et al.(1946)J. Am.Chem.Soc.68:1279−1281を参照されたい)アニリン及びアセト酢酸エステルから合成した)、1,3−ジブロモプロパン(8.08g、40mmol)及び炭酸カリウム(1.659g、12mmol)の混合物を、出発物質が消滅するまで還流した。反応混合物を濾過し、溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離剤として1%MeOH:99%CHCl)により精製した。生成物を明黄色の固体として得た(1.793g、65%)。H NMR(400MHz,CDCl):2.48(2H,m),2,69(3H,s),3.69(2H,t,J=6.3Hz),4.33(2H,t,J=5.8Hz),6.6(1H,s),7.43(1H,t,J=7.5Hz),7.66(1H,t,J=7.8Hz),7.95(1H,d,J=8.5Hz),8.12(1H,d,J=8.3Hz)。
【0081】
b)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
DMF(10mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.539g、3.5mmol)及び水酸化リチウム一水和物(0.294g、7.0mmol)の混合物を25℃で1時間撹拌し、その後、3−(2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド(0.980g、3.5mmol)を反応混合物に加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。DMFの3分の2を真空下で蒸発させ、反応混合物を水に注ぎ、固体を濾過により分離し、オーブンにより80℃で乾燥した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離剤として4%MeOH:96%CHCl)により精製して、標記化合物を明黄色の固体として得た(0.5814g、47%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.90(3H,t,J=7.6Hz),2.30(4H,m),2.60(3H,s),3.86(2H,t,J=5.9Hz),4.41(2H,t,J=5.9Hz),5.59(2H,s),6.16(2H,s),6.97(1H,s),7.46(1H,t,J=7.7Hz),7.67(1H,t,J=7.7Hz),7.84(1H,d,J=8.4Hz),8.09(1H,d,J=8.2Hz)。
【0082】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩:
メタノール(10mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.353g、1mmol)の撹拌懸濁液に、1当量の塩酸を25℃で加えた。溶媒の蒸発及びジエチルエーテルによる粉砕の後、生成物を明黄色の固体として得た(0.3587g、92%)。融点194〜196℃(分解)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.99(3H,t,J=7.5Hz),2.36(2H,m),2.44(2H,q,J=7.5Hz),2.65(3H,s),3.97(2H,t,J=6.0Hz),4.45(2H,t,J=5.6Hz),7.09(1H,s),7.40(2H,bs),7.54(2H,t,J=7.5Hz),7.75(1H,t,J=7.8Hz),7.93(2H,m),8.14(2H,m),12.55(1H,bs)。
【0083】
実施例5:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(P157)(図5を参照されたい)
a)7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−オール:
3−フルオロアニリン(4.44g、40mmol)及びアセト酢酸エステル(5.20g、40mmol)の撹拌溶液に、触媒量(2滴)の希塩酸を25℃で10分以内に加え、水が分離し始め、少量の熱が発生した。反応混合物を25℃で一晩放置し、反応混合物をジクロロメタン(150mL)で希釈し、0.5N HCl(2×50mL)、0.5N NaOH(2×50mL)及び水で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ジクロロメタンを蒸発させ、油状残渣を還流ジフェニルエーテル(40mL)に5分間かけて加え、還流を1時間続け、その後、反応混合物を25℃に冷却し、固体を濾過により分離し、ジエチルエーテルで洗浄して、幾つかの着色不純物を除去した。生成物を、精製することなく次の工程で使用する、5−及び7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−オールの異性体混合物の黄色の固体として得た(2.3388g、3−フルオロアニリンに基づいて33%)。
【0084】
b)3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド:
アセトン(60mL)中の5−及び7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−オール(2.12g、12mmol)、1,3−ジブロモプロパン(9.70g、48mmol)及び無水炭酸カリウム(1.99g、14.4mmol)の混合物を、出発物質が消滅するまで還流した。反応混合物を濾過し、溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離剤として1%MeOH:99%CHCl)により精製した。3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミドを僅かに黄色の固体として分離し(1.25g、35%)、化合物の残部を異性体混合物として得た(0.89g、25%)。H NMR(400MHz,CDCl):2.47(2H,m),2.68(3H,s),3.67(2H,t,J=6.3Hz),4.33(2H,t,J=5.8Hz),6.62(1H,s),7.20(1H,dt,J=8.6,2.4Hz),7.57(1H,dd,J=10.5,2.4Hz),8.10(1H,dd,J=9.1,6.2Hz)。
【0085】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
DMF(10mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.5395g、3.5mmol)及び水酸化リチウム一水和物(0.294g、7.0mmol)の混合物を25℃で1時間撹拌し、その後、3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド(1.043g、3.5mmol)を反応混合物に加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。DMFの3分の2を真空下で蒸発させ、反応混合物を水に注ぎ、固体を濾過により分離し、オーブンにより80℃で乾燥した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離剤として4%MeOH:96%CHCl)により精製した。生成物を白色の結晶質固体として得た(0.6629g、51%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.89(3H,t,J=7.5Hz),2.28(4H,m),2.60(3H,s),3.85(2H,t,J=5.9Hz),4.42(2H,t,J=5.9Hz),5.57(2H,s),6.15(2H,s),6.99(1H,s),7.39(1H,dt,J=8.8,2.5Hz),7.57(1H,dd,J=10.8,2.5Hz),8.15(1H,dd,J=9.1,6.4Hz)。
【0086】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩:
メタノール(10mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(7−フルオロ−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.3714g、1mmol)の撹拌懸濁液に、1当量の塩酸を25℃で加えた。溶媒の蒸発及びジエチルエーテルによる粉砕の後、生成物を白色の結晶質固体として得た(0.3834g、94%)。融点>200℃。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.99(3H,t,J=7.6Hz),2.35(2H,m),2.44(2H,q,J=7.6Hz),2.64(3H,s),3.97(2H,t,J=5.8Hz),4.45(2H,t,J=5.5Hz),7.07(1H,s),7.45(3H,m),7.64(1H,d,J=10.5Hz),7.90(1H,bs),8.19(1H,dd,J=8.9,6.3Hz),8.33(1H,bs),12.30(1H,bs)。
【0087】
実施例6:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(1−インドリル)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(1−インドリル)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩の調製の代表な手順を下記に提示する。
a)1−(3ブロモプロピル)インドール:
無水DMF(5mL)中のインドール(1.17g、10mmol)の溶液を、0℃で、無水DMF(3mL)中の水素化ナトリウム(0.48g、11mmol、55%)の懸濁液に加えた。反応混合物を25℃で30分間撹拌した。1,3−ジブロモプロパン(2.04mL、20mmol)を0℃で加え、反応を、出発物質が消費されるまで0℃で撹拌した。反応を希HClで中和し、酢酸エチルで抽出し、蒸発させた。粗生成物を、溶離剤としてヘキサン中10%酢酸エチルを用いるSiOのカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を明黄色の油状物として得た(0.9048g、38%)。H NMR(400MHz,CDCl),2.38(2H,m),3.34(2H,t,J=6.1Hz),4.37(2H,t,J=6.3Hz),6.57(1H,d,J=3.0Hz),7.19(2H,m),7.28(1H,m),7.43(1H,d,J=8.1Hz),7.69(1H,d,J=7.8Hz)。
【0088】
b)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(1−インドリル)プロポキシ)ピリミジン:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.4625g、3mmol)を、DMF(2mL)中の水酸化リチウム一水和物(0.3147g、7.5mmol)の撹拌溶液に加え、反応混合物を1時間撹拌した。DMF(1mL)中の1−(3−ブロモプロピル)インドール(0.7144g、3mmol)の溶液を加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。反応をジクロロメタンで希釈し、水で抽出した。ジクロロメタン層を蒸発させ、残渣をメタノール水溶液から再結晶化させた。生成物を僅かに黄色の固体として得た(0.4484g、48%)。H NMR(DMSO−d):1.02(3H,t,J=7.5Hz),2.20(2H,m),2.32(2H,q,J=7.5Hz),3.60(2H,t,J=6.3Hz),4.34(2H,t,J=7.2Hz),5.56(2H,s),6.07(2H,s),6.43(1H,d,J=3.1Hz),7.01(1H,m),7.13(1H,m),7.40(1H,d,J=3.1Hz),7.50(1H,d,J=8.3Hz),7.54(1H,d,J=7.8Hz)。
【0089】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(1−インドリル)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(1−インドリル)プロポキシ)ピリミジン(0.1557g、0.5mmol)をメタノール(1mL)に懸濁し、1当量の濃HClを加えた。標記化合物を、蒸発及びアセトニトリルによる残渣の粉砕の後、オフホワイトの結晶質固体として得た(0.1670g、98%)。H NMR(DMSO−d):1.09(3H,t,J=7.5Hz),2.26(2H,m),2.44(2H,q,J=7.5Hz),3.71(2H,t,J=6.4Hz),4.33(2H,t,J=7.1Hz),6.45(1H,d,J=2.8Hz),7.02(1H,m),7.14(1H,m),7.40(2H,m),7.50(1H,d,J=8.1Hz),7.55(1H,d,J=7.8Hz),7.82(1H,s),8.32(1H,s),12.33(1H,s)。
【0090】
実施例7:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−カルボキシプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(P135)及びそのエチルエステル(P217)(図6を参照されたい)
a)4−(2−ヒドロキシフェノキシ)ブタン酸エチル:
無水DMF(30mL)中のピロカテコール,(5.51g、50mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(1.2g、50mmol)を0℃でゆっくりと加えた。25℃で4時間撹拌した後、反応混合物を65〜70℃で1時間加熱し、続いて4−ブロモ酪酸エチル(10.7mL、75mmol)を加えた。次に反応混合物をこの温度で6時間撹拌した。水で停止させ、ジクロロメタンで抽出し、蒸発させると、粗成生物を得て、それを、87%ヘキサン:10%CHCl:3%EtOAcで溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサンで結晶化させて、白色の固体を収率55%で得た(6.17g、融点37.2〜38.4℃)。H NMR(400MHz,CDCl):1.26(3H,t,J=7.1Hz),2.17(2H,m),2.52(2H,t,J=7.0Hz),4.09(2H,t,J=6.0Hz),4.16(2H,q,J=7.1Hz),6.81−6.89(3H,m),6.92−6.94(1H,m)。
【0091】
b)4−(2−(3−ブロモプロポキシ)フェノキシ)ブタン酸エチル:
DMF(25mL)中の4−(2−ヒドロキシフェノキシ)ブタン酸エチル(5.61g、25mmol)の撹拌溶液に、0℃で、水素化ナトリウム(0.6g、25mmol)をゆっくりと加え、次に溶液を0℃で4時間撹拌した。撹拌溶液に65〜70℃で1,3−ブロモプロパン(3.80mL、37.5mmol)を加えた。得られた溶液を65〜70℃で3時間撹拌し続けた。通常の処理及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる精製によって、ブロモ化合物を白色の固体として収率60%で得た(5.18g、融点31〜32.6℃、CHCl/ヘキサン)。H NMR(400MHz,CDCl):1.25(3H,t,J=7.1Hz),2.13(2H,m),2.34(2H,m),2.54(2H,t,J=7.3Hz),3.64(2H,t,J=6.4Hz),4.04(2H,t,J=6.2Hz),4.10−4.15(4H,m),6.99−6.93(4H,m)。
【0092】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−カルボキシプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.4625g、3mmol)を、DMF(4mL)中の水酸化リチウム一水和物(0.4406g、10.5mmol)の撹拌溶液に加え、反応混合物を25℃で1時間撹拌した。DMF(1mL)中の4−(2−(3−ブロモプロポキシ)フェノキシ)ブタン酸エチル(1.0357g、3mmol)の溶液を加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。DMFを減圧下で部分的に除去して、残渣を得た。残渣を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。水層を希HClで中和して、白色の固体を得た。アセトンで再結晶化させて、所望のジアミノピリミジンを白色の固体として得た(0.6911g、59%、融点204〜206℃)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.10(3H,t,J=7.5Hz),1.91(2H,m),2.14(2H,m),2.31−2.39(4H,m),3.78(2H,t,J=6.1Hz),3.96(2H,t,J=6.4Hz),4.13(2H,t,J=6.1Hz),5.60(2H,s),6.09(2H,s),6.86−6.90(2H,m),6.95−7.01(2H,m)。
【0093】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−カルボキシプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン塩酸塩:
水(1mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−カルボキシプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.3904g、1mmol)の懸濁液に、1当量の濃HClを加えた。標記化合物を、ジエチルエーテルによる反応混合物の粉砕の後、白色の結晶質固体として得た(0.4055g、95%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.09(3H,t,J=7.5Hz),1.90(2H,m),2.18(2H,m),2.38(2H,t,J=7.3Hz),2.48(2H,q,J=7.5Hz),3.89(2H,t,J=6.1Hz),3.95(2H,t,J=6.4Hz),4.12(2H,t,J=6.0Hz),6.86−6.90(2H,m),6.95−7.02(2H,m),7.81(1H,bs),8.14(1H,bs),8.18(1H,bs),12.34(1H,bs)。
【0094】
e)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン:
EtOH(4mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−カルボキシプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.3904g、1mmol)及び触媒量の濃HSOの溶液に、オルトギ酸トリエチル(2mL)を加え、25℃で8時間撹拌した。反応混合物をKCOで中和し、蒸発乾固した。粗生成物を水で希釈し、CHClで抽出した。蒸発乾固して、所望のエステルを白色の半固体として得た(0.2720g、65%)。H NMR(500MHz,DMSO−d):0.99(3H,t,J=7.5Hz),1.15(3H,t,J=7.1Hz),1.93(2H,m),2.13(2H,m),2,33(2H,q,J=7.5Hz),2.45(2H,t,J=7.3Hz),3.78(2H,t,J=6.0Hz),3.95(2H,t,J=6.3Hz),4.03(2H,q,J=7.1Hz),4.13(2H,t,J=6.0Hz),5.54(2H,s),6.07(2H,s),6.87−6.90(2H,m),6.95−7.01(2H,m)。
【0095】
f)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン塩酸塩:
EtOH(1mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.4185g、1mmol)の懸濁液に、1当量の濃HClを加えた。標記化合物を、ジエチルエーテルによる反応混合物の粉砕の後、白色の結晶質固体として得た(0.4322g、95%)。H NMR(500MHz,DMSO−d):1.09(3H,t,J=7.6Hz),1.15(3H,t,J=7.1Hz),1.93(2H,m),2.18(2H,m),2.44(2H,t,J=7.4Hz),2.49(2H,q,J=7.7Hz),3.89(2H,t,J=6.1Hz),3.95(2H,t,J=6.3Hz),4.04(2H,q,J=7.1Hz),4.12(2H,t,J=5.7Hz),6.87−6.90(2H,m),6.95−7.01(2H,m),7.43(2H,bs),7.83(1H,s),8.33(1H,s),12.39(1H,s)。
【0096】
実施例8:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−カルボキシエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(P218)及びそのエチルエステル(P195)(図7を参照されたい)
a)3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチル:
無水メタノール(300mL)中のジヒドロクマリン(10mL、78.9mmol)及び触媒量の濃HSOの撹拌溶液に を加え、次に反応混合物を55℃で8時間加熱した。メタノールを蒸発乾固して、粗生成物を得て、それをKCOによる中和に付した。残渣を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。カラムクロマトグラフィー(溶離剤として20%CHCl:3%EtOAc:77%ヘキサン)による粗成生物の精製によって、所望のエステルを無色の油状物として得た(12.80g、90%)。H NMR(400MHz,CDCl):2.71(3H,t,J=6.4Hz),2.89(2H,t,J=6.4Hz),3.67(3H,s),6.83−6.87(2H,m),7.06−7.12(2H,m)。
【0097】
b)3−(2−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)プロパン酸メチル:
無水テトラヒドロフラン(30mL)中の3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチル(1.80g、10mmol)、トリフェニルホスフィン(3.15g、12mmol)及び3−ブロモ−1−プロパノール(1.1mL、12mmol)の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(2.4mL、12mmol)を窒素下、25℃で20分間かけて加え、反応混合物を更に2時間撹拌した。テトラヒドロフラン層を蒸発させると、組成生物を得て、それを、ヘキサン:CHCl:EtOAc(8:1.7:0.3)で溶離するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによる精製に付した。ブロモ化合物を黄色の油状物として得た(2.26g、75%)。H NMR(400MHz,CDCl):2.33(2H,m),2.58(2H,t,J=7.8Hz),2.92(2H,t,J=7.8Hz),3.61(2H,t,J=6.4Hz),3.65(3H,s),4.10(2H,t,J=5.7Hz),6.84(1H,d,J=8.4Hz),6.88(1H,d,J=7.3Hz),7.13−7.19(2H,m)。
【0098】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−カルボキシエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン:
2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.4625g、3mmol)を、DMF(4mL)中の水酸化リチウム一水和物(0.4406g、10.5mmol)の撹拌溶液に加え、反応混合物を25℃で1時間撹拌した。DMF(1mL)中の3−(2−(3−ブロモプロポキシ)フェノキシ)プロパン酸メチル(0.9035g、3mmol)の溶液を加え、反応混合物を25℃で一晩撹拌した。DMFを減圧下で部分的に除去して、残渣を得た。残渣を水で希釈し、続いてジクロロメタンで抽出した。水層を希HClで中和して、白色の固体を得た。アセトンで再結晶化させて、所望のジアミノピリミジンを白色の固体として得た(0.6271g、58%、融点155.5〜157.5℃)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.04(3H,t,J=7.6Hz),2.19(2H,m),2.39(2H,q,J=7.5Hz),2.46(2H,t,J=7.5Hz),2.78(2H,t,J=7.7Hz),3.83(2H,t,J=6.1Hz),4.15(2H,t,J=5.9Hz),6.29(2H,bs),6.85(1H,t,J=7.4Hz),6.96(2H,bs),6.98(1H,d,J=8.1Hz),7.14−7.19(2H,m)。
【0099】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−カルボキシエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン塩酸塩:
水(1mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−カルボキシエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.3604g、1mmol)の懸濁液に、1当量の濃HClを加えた。標記化合物を、ジエチルエーテルによる反応混合物の粉砕の後、白色の結晶質固体として得た(0.3770g、95%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.12(3H,t,J=7.5Hz),2.22(2H,t,J=5.8Hz),2.44−2.52(4H,m),2.78(2H,t,J=7.5Hz),3.89(2H,t,J=5.9Hz),4.14(2H,t,J=5.5Hz),6.85(1H,t,J=7.3Hz),6.98(1H,d,J=8.1Hz),7.14−7.19(2H,m)7.41(2H,s),7.85(1H,s),8.31(1H,s),12.11(1H,bs),12.54(1H,s)。
【0100】
e)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−エトキシカルボニルエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン:
EtOH(4mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−カルボキシエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.3604g、1mmol)及び触媒量の濃HSOの溶液に、オルトギ酸トリエチル(2mL)を加え、混合物を25℃で8時間撹拌した。反応混合物をKCOで中和し、蒸発乾固した。粗生成物を水で希釈し、CHClで抽出した。蒸発乾固して、所望のエステルを白色の固体として得た(0.3496g、90%、融点124.5〜1255.5℃)。H NMR(500MHz,DMSO−d):1.24(3H,t,J=7.3Hz),1.26(3H,t,J=7.7Hz),2.26(2H,m),2.59(2H,q,J=7.7Hz),2.62(2H,t,J=7.7Hz),2.95(2H,t,J=7.7Hz),3.98(2H,t,J=6.0Hz),4.13(2H,q,J=7.1Hz),4.27(2H,t,J=5.7Hz),5.17(2H,bs),5.28(2H,bs),6.90(1H,d,J=8.2Hz),6.93(1H,t,J=7.5Hz),7.17(1H,dd,J=7.4,1.4Hz),7.22(1H,dt,J=7.8,1.5Hz)。
【0101】
f)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−エトキシカルボニルエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン塩酸塩:
EtOH(1mL)中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(2−(2−エトキシカルボニルエチル)フェノキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.3885g、1mmol)の懸濁液に、1当量の濃HClを加えた。標記化合物を、ジエチルエーテルによる反応混合物の粉砕の後、白色の結晶質固体として得た(0.4037g、95%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.10(3H,t,J=7.8Hz),1.13(3H,t,J=7.1Hz),2.22(2H,m),2.47−2.55(m,4H),2.81(2H,t,J=7.6Hz),3.89(2H,t,J=6.2Hz),4.02(2H,q,J=7.1Hz),4.15(2H,t,J=5.8Hz),6.85(1H,t,J=7.4Hz),6.99(1H,d,J=8.1Hz),7.14(1H,d,J=8.2Hz),7.18(1H,t,J=7.5Hz),7.38(2H,s),7.85(1H,bs),8.14(1H,s),12.32(1H,s)。
【0102】
実施例9:2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−(3−カルボキシプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(P169)及びそのエチルエステル(P219)(図8を参照されたい)
a)6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−オール:
4−(4−アミノフェノキシ)ブタン酸エチル(3.12g、14mmol)及びアセト酢酸エステル(1.82g、14mmol)の撹拌混合物に、触媒量の塩酸を加え、実施例5aに記載されているように還流ジフェニルエーテルで環化した。生成物を明黄色の固体として得た(1.70g、42%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.32(3H,t,J=7.1Hz),2.15(2H,m),2.50(3H,s),2.62(2H,t,J=7.3Hz),4.21(4H,m),6.09(1H,s),7.42(1H,dd,J=9.0,2.7Hz),7.58(1H,d,J=2.7Hz),7.65(1H,d,J=9.0Hz),11.8(1H,s)。
【0103】
b)3−(6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド:
アセトン中の6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−オール(1.157g、4mmol)、1,3−ジブロモプロパン(3.230g、16mmol)及び無水炭酸カリウム(0.663g、4.8mmol)の反応は、実施例5bに記載されたものと同様に実施した。目的化合物を白色の固体として得た(0.903g、55%)。H NMR(400MHz,CDCl):1.25(3H,t,J=7.2Hz),2.18(2H,m),2.56(4H,m),2.65(3H,s),3.67(2H,t,J=6.3Hz),4.14(4H,m),4.31(2H,t,J=5.8Hz),6.61(s,1H),7.29(1H,dd,J=9.1,2.6Hz),7.36(1H,d,J=2.6Hz),7.85(1H,d,J=9.1Hz)。
【0104】
c)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
DMF中の2,4−ジアミノ−6−エチル−5−ヒドロキシピリミジン(0.308g、2.0mmol)、水酸化カリウム(0.123g、2.2mmol)及び3−(6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロピルブロミド(0.812g、2.0mmol)の混合物を25℃で一晩撹拌した。DMFを蒸発乾固し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離剤として4%MeOH:96%CHCl)により精製した。生成物を明黄色の固体として得た(0.3578g、37%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.90(3H,t,J=7.5Hz),1.16(3H,t,J=7.1Hz),2.08(2H,m),2.28(4H,m),2.48(2H,t,J=7.0Hz),2.56(3H,s),3.86(2H,t,J=5.8Hz),4.06(4H,m),4.41(2H,t,J=5.8Hz),5.53(2H,s),6.11(2H,s)6.93(1H,s),7.31(1H,dd,J=9.1,2.6Hz),7.37(1H,d,J=2.6Hz),7.76(1H,d,J=9.1Hz)。
【0105】
d)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−(3−カルボキシプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン:
工程(c)で得られたエチルエステル(0.314g、0.65mmol)及びKOH水溶液(10当量)の懸濁液を25℃で一晩撹拌した。溶液を希HClの添加により中和した。形成された沈殿物を濾過により分離し、オーブンにより80℃で乾燥して、明黄色の固体を得た(0.2487g、84%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.91(3H,t,J=7.5Hz),1.98(2H,m),2.29(4H,m),2.41(2H,t,J=7.2Hz),2.56(3H,s),3.86(2H,t,J=5.5Hz),4.05(2H,t,J=5.9Hz),4.40(2H,t,J=5.3Hz),5.67(2H,s),6.24(2H,s)6.94(1H,s),7.33(2H,m),7.75(1H,d,J=9.1Hz)。
【0106】
e)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩:
エタノール(0.5mL)中の工程(c)で得られた2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−(3−エトキシカルボニルプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン(0.179g、0.37mmol)の撹拌懸濁液に、1当量の塩酸を25℃で加えた。溶媒の蒸発及びアセトンによる粉砕の後、生成物を白色の結晶質固体として得た(0.117g、61%)。H NMR(400MHz,DMSO−d):0.90(3H,t,J=7.5Hz),1.15(3H,t,J=7.0Hz),2.00(2H,m),2.35(4H,m),2.40(2H,m),2.70(3H,s),3.85(2H,t,J=6.0Hz),4.02(2H,q,J=7.0Hz),4.10(2H,t,J=6.0Hz),4.52(2H,m),7.25(s,1H),7.42(3H,m),7.90(1H,bs),8.00(1H,d,J=10Hz),8.30(1H,bs)。
【0107】
f)2,4−ジアミノ−6−エチル−5−(3−(6−(3−カルボキシプロポキシ)−2−メチルキノリン−4−イルオキシ)プロポキシ)ピリミジン一塩酸塩:
化合物は、(e)と同様に合成した。溶媒の蒸発及びアセトンによる粉砕の後、生成物を白色の結晶質固体として定量収率で得た。H NMR(400MHz,DMSO−d):1.00(3H,t,J=7.5Hz),1.99(2H,m),2.37(2H,m),2.41(4H,m),2.63(3H,s),3.97(2H,t,J=6.0Hz),4.02(2H,q,J=7.0Hz),4.08(2H,t,J=6.0Hz),4.45(2H,t,J=5.3Hz),7.07(s,1H),7.40(3H,m),7.86(1H,d,J=9.0Hz),7.90(1H,bs),8.00(1H,d,J=10Hz),8.25(1H,bs)。
【0108】
実施例10:化合物の設計原理
化合物は、次の化合物特性の考慮に基づいた反復方法により設計した:実験的に誘導した結晶構造を使用してモデル化した標的酵素(即ち、プラスモディウム属のDHFR)との相互作用、インビトロ及びインビボにおける抗マラリア活性、代謝安定性、経口での生物学的利用能、並びに薬物動態特性。野生型及び四重突然変異酵素と複合体形成した特定の化合物の構造は、既知の手順を介したX線回析によって決定した(Yuvaniyama et al, (2003) Nat. Struct. Biol. 10:357−365を参照されたい)。この方法は、設計に使用されたDHFR活性部位についての空間及び電子情報を提供し、野生型及び四重突然変異熱帯熱マラリア原虫DHFRに対して高い親和性及び特異性を有する化合物の最適化をもたらす。反復サイクルを使用して、新たに設計したインヒビターを、合成し、DHFR酵素と共結晶化し、X線回析を使用して研究して、それぞれの化合物がどのようにDHFR活性部位に結合するかについての正確な実験的決定を提供することができる。これらのデータに基づいて、インヒビターの構造変更を行って、標的酵素への結合を更に向上させることができる。このことは、下記の実施例11に記載されている、酵素、即ち野生型及び耐性突然変異酵素の活性部位への化合物の効果的な結合に必要な基本的要件についての理解をもたらす。野生型及び突然変異酵素への化合物の親和性は、K値として測定した(実施例12を参照されたい)。熱帯熱マラリア原虫に対する阻害活性は、インビトロ方法により測定した(実施例13を参照されたい)。加えて、化合物の細胞毒性を測定し、最小限であることが分かった(実施例14を参照されたい)。プラスモディウムシャバウディAS及びASP(即ち、それぞれピリメタミン感受性株及びピリメタミン耐性株)に対する化合物のインビボ活性も、経口投与後に測定した(実施例15を参照されたい)。ラット及びマウスにおける化合物の生物学的利用能は、実施例16において測定した。次に、得られた結果を、化合物の特性:野生型及び突然変異DHFR酵素への高い結合親和性(低K値)、インビトロでの熱帯熱マラリア原虫、特に抗葉酸剤耐性寄生虫(低IC50値)とインビボでのプラスモディウムシャバウディ(低ED90値)の両方に対する効果的な抗マラリア活性、並びに化合物の経口での良好な生物学的利用能を最適化するために、一緒に考慮した。
【0109】
実施例11:有効な化合物の基本的要件
化合物は、一般式のHet−X−R(I)を有するように設計され、ここで−X−Rは、ピリミジン、1,3,5−トリアジン、キナゾリン及びそれらの飽和又は部分的飽和類似体から選択される複素環の柔軟な側鎖である。柔軟性は、側鎖と、突然変異酵素の108位の突然変異残基(セリンがアスパラギンになる)とのあらゆる立体障害を回避できるようにするために必要であった。更に、他の突然変異は、側鎖の更なる最適化を必要とする、活性部位の更なる変化を引き起こした。標的に良好な親和性を有する化合物は(実施例3及び8を参照されたい)、インビトロ及びインビボの両方において活性であることを示し、十分な生物学的利用能を示した。
【0110】
実施例12:酵素阻害活性
本発明は、野生型(WT)、二重突然変異体(C59R+S108N)三重突然変異体(N51I+C59R+S108N、C59R+S108N+I164L)及び四重突然変異体(N51I+C59R+S108N+I164L)を含む、熱帯熱マラリア原虫のジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)酵素を阻害する2,4−ジアミノピリミジン誘導体化合物及びその薬学的に許容される塩を提供する。WT、二重、三重及び四重突然変異体は、対応する遺伝子を含有する大腸菌発現系(大腸菌BL21(DE3)pLysS)の助けを借りて調製した。酵素の活性は、25℃で分光光度的に決定した。反応(1mL)は、1×DHFR緩衝剤(50mMのTES、pH7.0、75mMのβ−メルカプトエタノール、1mg/kgのウシ血清アルブミン)、各100μMの基質ジヒドロ葉酸及び補助因子NADPH、並びに反応を改質するために適切な量の親和性精製酵素(50mMのKClを含有するリン酸緩衝剤中0.001〜0.005単位)を含有した。
【0111】
化合物による多様な酵素(例えば、上記のWT、二重、三重及び四重突然変異体)の阻害は、96ウエルプレートにおいて200μLの上記の混合物により抗葉酸剤の存在下で調査した。動態は340nmで追跡した。野生型及び突然変異酵素のインヒビターのK値は、以下の方程式:
IC50=K(1+(〔S〕/Km))を使用して決定し、ここで、IC50は、標準的なアッセイ条件下で酵素活性の50%を阻害するインヒビターの濃度であり、そしてKmは、基質ジヒドロ葉酸のミハエリス定数である。
【0112】
熱帯熱マラリア原虫のジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(PfDHFR)の野生型及び突然変異酵素に対する化合物の阻害定数(K)を下記の表3A及び表3Bにまとめる。低いK値は結合の回避を示し、疎水性、ファンデルワールス、極性及び電荷−電荷相互作用を含む化合物と酵素活性部位との最適な相互作用を示すX線共結晶構造と一致している。例えば、カルボン酸側鎖の導入は、活性部位においてR122との追加的な結合をもたらし、従って、カルボン酸側鎖のない比較のものよりも低いK値を示す。
【0113】
【表3A】

【0114】
【表3B】

【0115】
実施例13:熱帯熱マラリア原虫に対するインビトロ活性
本発明は、非耐性及び薬剤耐性マラリアを含むマラリアの治療のための2,4−ジアミノピリミジン誘導体化合物を提供する。化合物は、単独で又は葉酸生合成経路のDHPS酵素に作用するスルホンアミドと及び/又は非抗葉酸機構を介して作用しうる他の作用物質と組み合わせて使用することができる。熱帯熱マラリア原虫株を、25mMのHEPES、pH7.4、0.2%NaHCO、40μg/mLのゲンタマイシン及び10%ヒト血清を補充した標準RPIM1640培地において、3%CO下、37℃でヒト赤血球中に連続的に維持した(Trager et al., (1976) Science 193: 673−675)。インビトロ抗マラリア活性は、代謝前駆体であるヒポキサンチンの蓄積を介して寄生虫の増殖を測定する〔H〕−ヒポキサンチン組み込み法(Desjardins et al, (1979) Antimicrob. Agents Chemother. 16:710−718)を使用して決定した。化合物を最初にDMSOに溶解し、同じ標準培地で希釈した。異なる濃度の薬剤のアリコート(25μL)を96ウエルプレートに分配し、1〜2%の寄生虫血を含有する寄生赤血球の1.5%懸濁液の200μLを加えた。DMSOの最終濃度(0.1%)は、寄生虫増殖に影響を与えなかった。混合物を3%COインキュベーターにより37℃でインキュベートした。インキュベーションの24時間後、25μL(0.25μCi)の〔H〕−ヒポキサンチンを各ウエルに加えた。寄生虫培養を同じ条件下で18〜20時間更にインキュベートした。寄生虫のDNAをガラス濾紙に採取した。フィルターを風乾し、20μLの液体シンチレーション流体を加えた。次にフィルターの放射能を、マイクロプレートシンチレーションカウンターを使用して測定した。寄生虫増殖を50%阻害するインヒビターの濃度(IC50)は、薬剤濃度に対して〔H〕−ヒポキサンチン組み込み率をプロットすることにより得たシグモイド曲線によって決定した。野生型DHFRに対する、特に単一、二重、三重及び四重突然変異DHFR酵素を有する寄生虫に対する活性な抗マラリア活性を有するこの一連の化合物の例が、上記の表3に示されている。
【0116】
下記の表4A及び表4Bは、次の突然変異株:K1CB1(C59R+S108N)、W2(N51I+C59R+S108N)、Csl−2(C59R+S108N+I164L)及びV1/S(N51I+C59R+S108N+I164L)により得た結果を示す。
【0117】
【表4A】

【0118】
【表4B】

【0119】
上記の表4A及び表4Bは、多様な2,4−ジアミノピリミジン誘導体化合物を示す。特にこれらの化合物はピリメタミン耐性寄生虫株に対して非常に活性である。これらの例のIC50は、突然変異株に対するピリメタミンよりも著しく少なかった。
【0120】
実施例14:哺乳類細胞における細胞毒性(IC50)の決定
化合物の細胞毒性試験は、Skehan et al, (1990) J. Natl. Cancer Inst. 82: 1107−1112に記載されたプロトコールに従って、アフリカミドリザルの腎線維芽(ベロ)細胞で実施した。これらの化合物は、表5にまとめたように、哺乳類細胞株に対して異なる細胞毒性効果でマラリア寄生虫に対して選択性を有する。酸及びエステルを有する化合物は、ベロ細胞に対して他の官能基よりも良好な選択性を有する。
【0121】
【表5】

【0122】
実施例15:齧歯類マラリアモデルにおけるインビボ活性
化合物のインビボ抗マラリア活性は、それぞれの実験において比較薬剤としてピリメタミンを含む標準的4日間Peters試験により、プラスモディウムシャバウディ及びプラスモディウムベルゲイモデルを使用して評価した。簡潔には、20gのCD1雄マウス(Charles Rivers, UK)を、特定の無病原体条件に保持し、適宜に食餌させた。経口投与のために、化合物を標準的懸濁処方(SSV)〔0.5%ナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.5%ベンジルアルコール、0.4%ツイーン80、0.9%NaCl(全てSigma)〕に溶解し、腹腔内又は皮下投与のために、化合物を、脱イオン水中の0.5%w/vのヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.4%v/vのツイーン80、0.5%v/vのベンジルアルコールに溶解した。マウスを、4×10個の感染赤血球により静脈内感染させ、試験化合物の溶液0.2mlにより注射の2時間後(0日目)、1、2及び3日後に経口処置(経口投与)した。寄生虫血症は、4日目に採取したギムザ染色血液塗抹標本の顕微鏡検査により決定した。それぞれのマウスの血液塗抹標本の顕微鏡カウントは、GraphPad Prism 4(GraphPad Software, Inc., CA, USA)を使用して処理し、未処理群に対する各群の寄生虫血症の相加平均から阻害率として表した。化合物を、記載された期間にわたってプラスモディウムシャバウディAS(非耐性)に対して30mg/kg/日の初期スクリーニングにより試験し、阻害率を未処理対照に対して計算した。次に、80%以上の阻害を示した化合物を、用量反応曲線を得るため及びED50及びED90値を計算するために、記載された期間にわたって一連の用量を用いる同じモデルにおいて試験した。次に比較のレベル又はそれ以下のED90を示す化合物を(表6)、プラスモディウムシャバウディASP(ピリメタミン耐性株)及び致死的なプラスモディウムベルゲイANKA(非耐性株)に対して試験するために選択した。プラスモディウムシャバウディASPに対するインビボ試験の結果を表7にまとめる。ED90値から、多数の化合物がこのモデルにおいて最高の活性を有することが明白であり、プラスモディウムシャバウディASP及びプラスモディウムベルゲイANKAにおいても試験する。
【0123】
表6A及び表6Bに示されているように、これらの化合物のうちの多数が、プラスモディウムシャバウディASに対して、0.88mg/kgのED90値を示す現存の薬剤ピリメタミンよりも2〜90倍低いED90値(ED90=0.01〜0.36mg/kg)を示す。表7は、プラスモディウムシャバウディASP及び致死的なプラスモディウムベルゲイANKAを含む3つの異なる齧歯類マラリアモデルにおいて、これらの化合物のうちの幾つかの効能を示す。ピリメタミン耐性プラスモディウムシャバウディASPに対して15倍効能が低いピリメタミン(ED90=13.5mg/kg)と比較して、化合物P113は、この株に対して(ED90=0.01mg/kg)及び致死的なプラスモディウムベルゲイANKAに対して(ED90=0.03mg/kg)効能を保持する。
【0124】
【表6A】

【0125】
【表6B】

【0126】
【表7】

【0127】
実施例16:生物学的利用能
経口での生物学的利用能及び薬物動態を評価するために、試験化合物を、体重270〜300gの絶食雄Sprague Dawleyラットに投与した(下記の表8を参照されたい)。ラットは、投与前及び投与後の試料採取期間の全体にわたって水を自由に入手し、食餌の入手は、投与の4時間後に元通りにした。試験化合物を、5分間の定速注入(ラット1匹あたり1.0mL)で静脈内投与し、胃管栄養法(ラット1匹あたり1.0mL)で経口投与した。静注製剤は、必要であれば可溶化のために共溶媒を含有する典型的な緩衝水性液剤であった。経口製剤は、それぞれツイーン80及びベンジルアルコールが添加されている、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースの懸濁剤であった。動脈血及び全尿の試料を、投与の24時間後に収集した。動脈血は、血液/血漿試料中の試験化合物のエキソビボ分解の可能性を最小限にするためにヘパリン、プロテアーゼインヒビターカクテル、フッ化カリウム及びEDTAを含有するホウケイ酸バイアルに(4℃で)直接収集した。いったん収集すると、血液試料を遠心分離し、上澄み血漿を取り出し、−20℃で保存し、試験化合物の血漿濃度をLCMSにより決定した。
【0128】
【表8】

【0129】
表8のデータは、多様な化合物の異なる薬物動態プロフィール及び生物学的利用能特性を示す。個別の化合物の経口での生物学的利用能、クリアランス、t1/2及びVに関する一連の値である。
【0130】
別の研究では、カルボン酸側鎖を含有するP218のエステルプロドラッグであるP195の経口での生物学的利用能をマウスで調査した。雄Swiss非近交系マウスには、P218(酸無含有)を名目投与5mg/kgで急速尾静脈注射により静脈内投与し、P195(エステルプロドラッグ)を名目投与20mg/kgで胃管栄養法により経口投与した。投与製剤は、上記に記載したラット研究に使用したものと同等のものであった。血液試料採取は、マウス1匹あたり1つの試料を、投与後16時間の時点で2匹のマウスに心臓穿刺により実施した。血液試料を分離し、血漿を上記に記載したようにLCMSで分析した。P218の静脈内投与後及びプロドラッグP195の経口投与後のP218の時間プロフィールに対する血漿濃度を、図9に示す。P218の血漿濃度は、静脈内投与の7.5時間後で定量化の下限(LLQ=0.0014μM)を超えた状態を維持した。エステルプロドラッグの経口投与後では、酸P218の血漿濃度は、投与の16時間後でLLQを超えた状態を維持し、P218の生物学的利用能は、およそ50%であった(P195の経口投与後のP218の投与量規準化AUC値と、P218の静脈内投与後のP218のAUCとの比較により決定した)。P195の経口投与後のP218の最大血漿濃度(Cmax)は、最初の血液試料の時点(15分)で観察され、プロドラッグP195の血漿濃度は、全ての時点で定量化の下限(0.0014μM)よりも低かった。これらの結果は、経口投与後にエステルプロドラッグを急速に吸収及び開裂して、酸P218を放出することを示唆している。
【0131】
本発明の多様な変更及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明白である。本発明は、特定の好ましい実施態様と関連して記載されてきたが、請求される本発明は、そのような特定の実施例に過度に限定されるべきではないことを理解するべきである。事実、本発明を実施するために記載された様式の多様な変更は、当業者により理解され、請求項の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化4】

〔式中、
Rは、水素又はC1−4アルキルであり;
Wは、O又はCHであり;
Xは、(CH2−4であり、ヒドロキシル基で場合により置換されており;
Yは、CH、O、S又はN(Z)であり、ここでZは、H又は場合により置換されているアシル、アルキル又はアリールであり;
Arは、フェニル若しくはナフチルを含む置換芳香族環であるか又はキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ピリジル、インドリル、トリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリニル及びベンゾトリアゾリルの群から選択される場合により置換されている芳香族複素環であり、
Arが芳香族環である場合、アシル、ベンゾオキサゾリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルキルC(1−3)、カルボキシアルキルC(1−3)オキシ、アルキルC(1−3)オキシカルボニルアルキルC(1−3)、アルキルC(1−3)オキシカルボニルアルキルC(1−3)オキシ、テトラゾリル、テトラゾリルアルキルC(1−3)及びテトラゾリルアルキルC(1−3)オキシからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されており、Arは、追加の置換基で場合により置換されている〕で示される化合物、或いはその薬学的に許容される塩又は置換誘導体。
【請求項2】
RがC1−4アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Rがエチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Arが、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、置換アリール、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル及びニトロからなる群より選択される少なくとも1つの基により1つ以上の利用可能な位置で置換されている、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
W−X−YがO(CH2−4Oである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
W−X−Yが、O(CH2−4S又はO(CH2−4NZである、請求項4記載の化合物。
【請求項9】
Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Rがエチルであり、W−X−YがO(CHOであり、そしてArがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
W−X−YがO(CH2−4である、請求項4記載の化合物。
【請求項15】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
Arが、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、置換アリール、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル及びニトロからなる群より選択される少なくとも1つの基により1つ以上の利用可能な位置で置換されている、請求項2記載の化合物。
【請求項18】
W−X−YがO(CH2−4Oである、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
W−X−YがO(CH2−4Sである、請求項17記載の化合物。
【請求項22】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
W−X−YがO(CH2−4NZである、請求項17記載の化合物。
【請求項25】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
W−X−YがO(CH2−4である、請求項17記載の化合物。
【請求項28】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項28記載の化合物。
【請求項30】
Arが、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、置換アリール、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル及びニトロからなる群より選択される少なくとも1つの基により1つ以上の利用可能な位置で置換されている、請求項3記載の化合物。
【請求項31】
W−X−YがO(CH2−4Oである、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項32記載の化合物。
【請求項34】
W−X−YがO(CH2−4Sである、請求項30記載の化合物。
【請求項35】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項34記載の化合物。
【請求項36】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
W−X−YがO(CH2−4NZである、請求項30記載の化合物。
【請求項38】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項37記載の化合物。
【請求項39】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項38記載の化合物。
【請求項40】
W−X−YがO(CH2−4である、請求項30記載の化合物。
【請求項41】
前記Arがキノリニル又は置換4−キノリニルである、請求項40記載の化合物。
【請求項42】
W−X−YがO(CH3−5Oである、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
マラリアの治療が必要な被験者を治療する方法であって、請求項1記載の化合物の有効量を前記被験者に投与することを含む方法。
【請求項44】
被験者が、マラリアの薬剤耐性又は非耐性株の治療の必要性な被験者である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
マラリアの薬剤耐性株が、少なくとも1つの抗葉酸薬に耐性がある株である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
マラリアの薬剤耐性株が、シクログアニル、クロルシクログアニル、ピリメタミン又は他のDHFRインヒビターからなる群より選択される少なくとも1つの抗葉酸薬に耐性がある、請求項45記載の方法。
【請求項47】
マラリアの薬剤耐性株が、そのDHFRタンパク質配列に1つ以上の突然変異を有する抗葉酸剤耐性株である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
マラリアの抗葉酸剤耐性株が、16(Ala→Val)、51(Asn→Ile)、59(Cys→Arg)、108(Ser→Asn)、108(Ser→Thr)及び164(Ile→Leu)からなる群より選択される少なくとも2つの突然変異を有する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
マラリアの抗葉酸剤耐性株が、16(Ala→Val)、51(Asn→Ile)、59(Cys→Arg)、108(Ser→Asn)、108(Ser→Thr)及び164(Ile→Leu)からなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する、請求項47記載の方法。
【請求項50】
マラリアの抗葉酸剤耐性株が、16(Ala→Val)及び108(Ser→Thr)からなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する、請求項47記載の方法。
【請求項51】
治療が経口治療を含む、請求項43記載の方法。
【請求項52】
前記化合物が、P113又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項53】
前記化合物が、P149又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項54】
前記化合物が、P153又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項55】
前記化合物が、P154又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項56】
前記化合物が、P157又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項57】
前記化合物が、P135又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項58】
前記化合物が、P217又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項59】
前記化合物が、P195又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項60】
前記化合物が、P218又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項61】
前記化合物が、P169又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項62】
前記化合物が、P219又はその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−540666(P2010−540666A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528223(P2010−528223)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079210
【国際公開番号】WO2009/048957
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510094137)
【Fターム(参考)】