柱状体セットとその使用方法
【課題】地中に打ち込む工法で柱状体を埋設する場合に、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できるようにする。
【解決手段】内向き周溝16を形成してある外嵌部材2と外向き周溝9を形成してある内嵌部材3とを両端部に振り分けて設けてある柱状体Aと、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、内向き周溝と外向き周溝とに亘って装着するキー部材8とを備えている柱状体セットであって、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、外嵌部材と内嵌部材との軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を柱状体に設けてあり、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材22を取り付け自在に構成してある。
【解決手段】内向き周溝16を形成してある外嵌部材2と外向き周溝9を形成してある内嵌部材3とを両端部に振り分けて設けてある柱状体Aと、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、内向き周溝と外向き周溝とに亘って装着するキー部材8とを備えている柱状体セットであって、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、外嵌部材と内嵌部材との軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を柱状体に設けてあり、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材22を取り付け自在に構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備えている柱状体セットとその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記柱状体セットは、例えば、構造物設置用の基礎杭や土留め用矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などの柱状体を上下に接続した状態で地中に埋設するために使用され、従来、外嵌部材の内向き周溝と内嵌部材の外向き周溝とを同じ溝幅で形成しておき、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で内向き周溝と外向き周溝とを互いに対向させて、その内向き周溝と外向き周溝とに亘って、溝幅と略同じ幅のキー部材を嵌合して、一対の柱状体どうしを接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3158081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この為、上下の柱状体どうしを接続する際に、その相対的な接続姿勢を修正することが難しく、例えば、油圧ハンマーなどで柱状体を地中に打ち込む工法、つまり、土質などに起因して、柱状体の姿勢がその打ち込みに伴って所定姿勢から外れ易い工法を使用して、柱状体を例えば略鉛直の所定姿勢で上下に接続して埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ柱状体(以下、先行柱状体という)の姿勢が所定姿勢から外れてしまうと、その先行柱状体に接続した後続する柱状体(以下、後続柱状体という)も先行柱状体の姿勢に倣うように打ち込まれ易く、その結果、上下に接続してある柱状体の全体が所定姿勢から大きく外れた姿勢で埋設されるおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、柱状体を地中に打ち込む工法で上下に接続してある柱状体を埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れてしまっても、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備えている柱状体セットであって、前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしの相対的な傾きを許容する融通部を、前記柱状体に設けてあると共に、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、前記外嵌部材と前記内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材を取り付け自在に構成してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしの相対的な傾きを許容する融通部を柱状体に設けてあるので、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れているときは、その先行柱状体に接続する後続柱状体の姿勢が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態から、外嵌部材と内嵌部材の軸芯どうしを相対的に傾けることができる。
また、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材を取り付け自在に構成してあるので、姿勢固定部材を取り付けて、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定することにより、後続柱状体の姿勢を所定姿勢に近い姿勢に保持して、後続柱状体を先行柱状体に接続することができる。
従って、柱状体を地中に打ち込む工法で上下に接続してある柱状体を埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れてしまっても、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記姿勢固定部材は、前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付け自在に構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
姿勢固定部材は、一対の柱状体の外周部に亘って取り付け自在に構成してあるので、姿勢固定部材を一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける簡便な作業で、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、請求項1記載の柱状体セットの使用方法であって、前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した後、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を取り付ける点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れているときは、その先行柱状体に接続する後続柱状体の姿勢が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した後、外嵌部材と内嵌部材とを相対的に傾けて、姿勢固定部材を取り付けることにより、後続柱状体の姿勢を所定姿勢に近い姿勢に保持して、後続柱状体を先行柱状体に接続することができる。
従って、柱状体を地中に打ち込む工法で上下に接続してある柱状体を埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れてしまっても、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記融通部を前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝との間に形成し、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝の溝側面との間に形成された隙間に、前記外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、前記姿勢固定部材を嵌入させて取り付ける点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した状態から、外嵌部材と内嵌部材とを相対的に傾けることができるように、融通部をキー部材と内向き周溝又は外向き周溝との間に形成し、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、キー部材と内向き周溝又は外向き周溝の溝側面との間に形成された隙間に、外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、姿勢固定部材を嵌入させて取り付けるので、一対の柱状体どうしを、柱状体長手方向に緩みができないように互いに係合させて接続することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、請求項2記載の柱状体セットの使用方法であって、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、姿勢固定部材を一対の柱状体の外周部に亘って取り付けるので、姿勢固定部材を一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける簡便な作業で、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、柱状体の一例としての、油圧ハンマーなどで地中に打ち込まれる外周面形状が円筒状の通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と、一対の鋼管杭A1,A2を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために装着するキー部材8とを備えている通常の柱状体セットを示す。
【0016】
前記鋼管杭Aの夫々は、鋼管1の両端部に鋳鋼製の外嵌部材2と内嵌部材3とを振り分けて同芯状に溶接してあり、外嵌部材2を上側に位置させて地中に打ち込むように構成してある。
【0017】
前記内嵌部材3は、図2にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の基部4に、その基部4よりも外径が小径の内嵌部5を延設してある略円筒状に形成してあり、基部4の内嵌部5側に臨む端面6を、外嵌部材2の先端部分を接当させる内嵌側接当面に形成して、その内嵌側接当面6に内嵌側係合凹部7を環状に形成してあり、内嵌部5の外周側には、後述する円弧状の分割キー部材8を装着する二条の外向き周溝9を円環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分には内嵌側係合凸部10を環状に形成してある。
【0018】
前記外嵌部材2は、図2にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の略円筒状に形成してあり、その内周側に内嵌部5を嵌合させる外嵌部11を形成し、内嵌側接当面6に接当させる先端部分に、内嵌側係合凹部7に係合する外嵌側係合凸部13を環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分を接当させる外嵌側接当面14に、内嵌側係合凸部10を係合させる外嵌側係合凹部15を形成してある。
【0019】
前記外嵌部11には、外向き周溝9よりも深さが深い二条の内向き周溝16を、内嵌部5を外嵌部11に嵌合させた状態で、その外向き周溝9に対向するように円環状に形成してあり、各内向き周溝16には、図3(イ)に示すように、複数の分割キー部材8を周方向に並べて内向き周溝16からはみ出さないように収容してある。
【0020】
前記分割キー部材8の夫々は、ボルト17を外嵌部材2の外側からレンチなどで回転操作することにより、図3(イ)に示すように、全体が内向き周溝16に入り込んでいる引退位置と、図3(ロ)に示すように、一部が内向き周溝16から突出して外向き周溝9に入り込ませる突出位置とに移動操作自在に設けてある。
【0021】
また、外嵌部材2には、図1,図3に示すように、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合した状態で、内嵌部5を外方に露出可能な周方向で4箇所の開口部18を、内向き周溝16の形成箇所を略矩形に切り取った形状で予め形成してある。
【0022】
前記開口部18には、この開口部18を開閉自在なカバー部材19をビス12で着脱自在に固定してあり、このカバー部材19に内向き周溝部分を形成して、カバー部材19を固定することにより内向き周溝16が一連の環状に連続するように構成してある。
【0023】
そして、一対の鋼管杭A(A1,A2)どうしを、図4(イ)に示すように、一方の鋼管杭A1の外嵌部材2に他方の鋼管杭A2の内嵌部材3を内嵌して互いに嵌合させた後、図4(ロ)に示すように、各分割キー部材8を突出位置に移動させて内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続できるように構成してある。
【0024】
次に、油圧ハンマーなどで地中に打ち込む工法で、上下に互いに接続してある鋼管杭Aを地中に埋設するにあたって、図5〜図7に示すように、先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が仮想線で示す所定姿勢(軸芯X1が鉛直方向に沿う姿勢)から外れている場合に、その先行鋼管杭A1に後続鋼管杭A2を接続する鋼管杭(柱状体)の接続工法を説明する。
【0025】
先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が所定姿勢から外れているときは、図5〜図7に示すように、本発明による柱状体セットに備えた姿勢修正用鋼管杭A3を後続鋼管杭A2として、先行鋼管杭A1に接続する。
【0026】
本発明による柱状体セットは、一対の鋼管杭A(A1,A2)を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させて、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って分割キー部材8を装着してある状態からの、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を、姿勢修正用鋼管杭A3に設けてあると共に、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材22を取り付け自在に構成してある点で、前述の通常の柱状体セットと異なっている。
【0027】
つまり、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8を介して、鋼管杭長手方向に互いに係合させる係合部20に、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合した状態からの、それらの軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を予め設けてある姿勢修正用鋼管杭A3を接続する。
【0028】
前記融通部21は、内嵌部材3に形成してある各外向き周溝9の溝幅H1を、外嵌部材2に形成してある内向き周溝16の溝幅H2よりも幅広に形成して、外嵌部材2と内嵌部材3とを同芯状に嵌合させた状態で、外向き周溝9の上側溝側面9aと内向き周溝16の上側溝側面16aとが略同じ高さ位置になるように設けると共に、内嵌部5の外径を通常構造の鋼管杭A1,A2よりも小径に形成して、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って装着した分割キー部材8と、外向き周溝9との間に形成できるように構成してある。
尚、姿勢修正用鋼管杭A3のその他の構造は、通常構造の鋼管杭A1,A2と同じ構造で設けてある。
【0029】
そして、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する際は、図5に示すように、先行鋼管杭A1の外嵌部材2に姿勢修正用鋼管杭A3の内嵌部材3を同芯状に内嵌して互いに嵌合した状態で、図6に示すように、各分割キー部材8を突出位置に移動させて内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着する。
【0030】
次に、図7に示すように、姿勢修正用鋼管杭A3が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けて、姿勢固定部材22を各分割キー部材8と外向き周溝9の溝側面との間に形成された隙間25に、図3(ロ)に示すように、先行鋼管杭A1の各開口部18を通して取り付ける。
【0031】
前記姿勢固定部材22は、分割キー部材8と外向き周溝9の溝側面との間に形成された隙間に嵌入させて取り付けるシムなどの金属板材であり、この金属板材22を装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8と姿勢固定部材22とを介して、柱状体長手方向に互いに係合させた後、カバー部材19で開口部18を塞いで、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する。
【0032】
尚、融通部21は、先行鋼管杭A1の軸芯X1に対する姿勢修正用鋼管杭A3の軸芯X2の許容傾き角度が所望の最大傾き角度になるように、外向き周溝9の溝幅H1や内嵌部5の外径を設定して設けてあり、先行鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3の軸芯X1,X2どうしの傾き角度に応じて厚みが異なる各種の姿勢固定部材22を用意しておいて、最適な姿勢固定部材22を選択して取り付けることができるようにしてある。
【0033】
本実施形態では、外嵌部材2の強度が低下し難い小さな開口部18を通して姿勢固定部材22を装着できるように、一つの開口部18を通して複数の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付ける形態を示したが、一つの開口部18を通して単一の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付けるように構成しても良い。
この場合、分割キー部材8の長さと略同じ長さの単一の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付けるように構成しても、分割キー部材8の長さに比べて短い単一の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付けるように構成しても良い。
【0034】
〔第2実施形態〕
図8,図9は、通常の柱状体セットと本発明による柱状体セットの別実施形態を示し、本実施形態では、通常構造の鋼管杭A1,A2や姿勢修正用鋼管杭A3として、外嵌部材2に開口部18を形成していない点で第1実施形態で示した鋼管杭Aと異なる鋼管杭を備え、姿勢固定部材22を鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3の外周部に亘って取り付け自在に構成してある。
【0035】
そして、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する際は、図5,図6に示した第1実施形態と同様に、先行鋼管杭A1の外嵌部材2に姿勢修正用鋼管杭A3の内嵌部材3を内嵌した状態で、各分割キー部材8を突出位置に移動させて内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着する。
【0036】
次に、図8に示すように、外嵌部材2と内嵌部材3とが柱状体長手方向に互いに係合されるまで、つまり、分割キー部材8のいずれかが外向き周溝9の上側溝側面に接当し、かつ、残りの分割キー部材8のいずれかが外向き周溝9の下側溝側面に接当するまで、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを強制的に相対的に傾けて、その強制的にに傾けた状態で、図9に示すように、板材からなる姿勢固定部材22を鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3の外周部に亘って取り付けることにより、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定して、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に鋼管杭長手方向に互いに係合させた状態で接続する。
【0037】
前記姿勢固定部材22は、外嵌部材2と内嵌部材3の基部4の夫々に鋼管杭長手方向で互いに対向するように形成した凹部23に入り込ませて、ビス24で外嵌部材2と内嵌部材3とに亘って固定してある。
【0038】
尚、上記実施形態では、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを最大許容傾斜角度θまで強制的に傾けて、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に鋼管杭長手方向に互いに係合させた状態で接続する形態を示したが、最大許容傾斜角度θ未満に傾けて、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定しても良い。
【0039】
この場合、姿勢固定部材22として、先行鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3との軸芯X1,X2どうしの傾き角度に応じて、上下のビス孔間隔Lが異なる各種の姿勢固定部材22を用意しておいて、最適なビス孔間隔Lの姿勢固定部材22を選択して取り付けることができるようにしてある。
尚、姿勢固定部材22を固定してから、分割キー部材8を外向き周溝9の側面に接当しても良い。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0040】
〔第3実施形態〕
図10,図11は、柱状体の一例としての、油圧ハンマーなどで地中に打ち込まれる外周面形状が円筒状の通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と、一対の鋼管杭A1,A2を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために装着するキー部材8とを備えている通常の柱状体セットを示す。
【0041】
前記鋼管杭Aの夫々は、鋼管1の両端部に鋳鋼製の外嵌部材2と内嵌部材3とを振り分けて同芯状に溶接してあり、内嵌部材3を上側に位置させて地中に打ち込むように構成してある。
【0042】
前記内嵌部材3は、図11にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の基部4に、その基部4よりも外径が小径の内嵌部5を延設してある略円筒状に形成してあり、基部4の内嵌部5側に臨む端面6を、外嵌部材2の先端部分を接当させる内嵌側接当面に形成して、その内嵌側接当面6に内嵌側係合凹部7を環状に形成してあり、内嵌部5の外周側には、二条の外向き周溝9を円環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分には内嵌側係合凸部10を環状に形成してある。
【0043】
前記外嵌部材2は、図11にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の略円筒状に形成してあり、その内周側に内嵌部5を嵌合させる外嵌部11を形成して、外向き周溝9と略同じ深さの二条の内向き周溝16を形成し、内嵌側接当面6に接当させる先端部分に、内嵌側係合凹部7に係合する外嵌側係合凸部13を環状に形成し、内嵌部5の先端部分を接当させる外嵌側接当面14に、内嵌側係合凸部10を係合させる外嵌側係合凹部15を形成してある。
【0044】
前記内向き周溝16は、内嵌部5を外嵌部11に嵌合させた状態で、外向き周溝9に対向するように円環状に形成してあり、一対の鋼管杭Aを接続するために、一方の鋼管杭Aの外嵌部材2と他方の鋼管杭Aの内嵌部材3とを互いに嵌合させた状態で、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘ってキー部材8を装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを鋼管杭長手方向に互いに係合できるようにしてある。
【0045】
前記キー部材8は、図13に示すように、杭周方向で複数個の略直方体形状の分割キー部材で構成してあり、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させた状態で、これらの分割キー部材8を内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込むために、図10,図14に示すように、各外向き周溝9の溝長手方向における一部を外向き周溝9の全幅に亘って外方に臨ませるための開口部26を、各内向き周溝16の形成箇所に沿って、内向き周溝16の全幅に亘って切り取った形状で、外嵌部材2の周方向で複数箇所(本実施形態では4箇所)に予め形成してある。
【0046】
そして、図12(イ)に示すように、一方の鋼管杭A1の内嵌部材3に他方の鋼管杭A2の外嵌部材2を外嵌して互いに嵌合させた後、図12(ロ)に示すように、隣り合う開口部26間における内向き周溝16と外向き周溝9との間毎に、複数個の分割キー部材8の夫々を、開口部26を通して外方に臨ませた外向き周溝部分9aに装着して、その外向き周溝部分9aに沿って内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込むことにより、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着して、外嵌部材2と内嵌部材3とを杭長手方向に互いに係合させる接続工法で、一対の鋼管杭A(A1,A2)どうしを接続できるように構成してある。
【0047】
尚、図10中の符号27は、互いに接続した鋼管杭A(A1,A2)どうしの相対回転を抑止するために、外嵌部材2と内嵌部材3とに亘って係合するようにビス止めしてある回転抑止キーである。
【0048】
前記杭周方向で隣り合う開口部26の間毎に装着する複数個の分割キー部材8は、図13に示すように、各分割キー部材8にワイヤー挿通用貫通孔28を形成して、それらの分割キー部材8に亘って、一連の索条体としてのワイヤー29を予め挿通してある。
【0049】
前記ワイヤー29には、そのワイヤー29を挿通してある分割キー部材8のうちの、押し込み方向前端側の分割キー部材8aとの接当でその分割キー部材8との相対移動を規制する第1規制部材30aと、押し込み方向後端側の分割キー部材8bとの接当でその分割キー部材8bとの相対移動を規制する第2規制部材30bとを設けてあり、第1規制部材30aと第2規制部材30bとの間隔を、各分割キー部材8の合計長さ以上の長さ、例えば二倍以上の長さに設定して、各分割キー部材8が内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込み可能な姿勢に姿勢変更自在に挿通してある。
【0050】
前記分割キー部材8の夫々を内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って装着する方法を説明する。
図14(イ)に示すように、隣り合う開口部26の間毎に、ワイヤー29の端部を、一方の開口部26から内向き周溝16と外向き周溝9との間に挿通して他方の開口部26から引き出した後、図14(ロ)に示すように、そのワイヤー29を挿通してある各分割キー部材8を、内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込んで、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って順に装着し、その後、図14(ハ)に示すように、ワイヤー29を切断して各分割キー部材8から抜き取る。
【0051】
次に、図15に示すように、各分割キー部材8の周溝内での移動を阻止するためのL字状のスライドキー部材31を開口部26から内向き周溝16と外向き周溝9との間に装着するとともに、隣り合うスライドキー部材31の間に押えキー部材32を装着して、スライドキー部材31どうしを連結固定する連結板33を各スライドキー部材31にビス止めする。
【0052】
本実施形態によれば、分割キー部材8の一つずつを、外方に臨んでいる外向き周溝部分8aに装着してから先行分割キー部材にボルト連結するような煩雑な作業を要することなく、分割キー部材8のいずれかが内向き周溝16と外向き周溝9との間で引っ掛かって押し込めなくなったときは、その引っ掛かりを解消するべく、開口部26から引き出してあるワイヤー29を上下左右に動かすことで、分割キー部材8と内向き周溝16又は外向き周溝9との間のあそび(隙間)部分での分割キー部材8の引っ掛かりを解消し易い。
【0053】
また、ワイヤー29として、そのワイヤー29を挿通してある分割キー部材8との接当で、その分割キー部材8との相対移動を規制する規制部材30a,30bを設けてあるワイヤー29を使用するので、ワイヤー29を少なくとも前後方向のいずれか一方に動かすことで、そのワイヤー29を挿通してある分割キー部材8の全部又は一部を積極的に動かすことができ、分割キー部材8の引っ掛かりを一層解消し易い。
【0054】
次に、油圧ハンマーなどで地中に打ち込む工法で、上下に互いに接続してある鋼管杭Aを地中に埋設するにあたって、図16〜図18に示すように、先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が仮想線で示す所定姿勢(軸芯X1が鉛直方向に沿う姿勢)から外れている場合に、その先行鋼管杭A1に後続鋼管杭A2を接続する鋼管杭(柱状体)の接続工法を説明する。
【0055】
先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が所定姿勢から外れているときは、図16〜図18に示すように、本発明による柱状体セットに備えた姿勢修正用鋼管杭A3を後続鋼管杭A2として、先行鋼管杭A1に接続する。
【0056】
本発明による柱状体セットは、一対の鋼管杭A(A1,A2)を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させて、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って分割キー部材8を装着してある状態からの、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を、姿勢修正用鋼管杭A3に設けてあると共に、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材22を取り付け自在に構成してある点で、前述の通常の柱状体セットと異なっている。
【0057】
つまり、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8を介して、鋼管杭長手方向に互いに係合させる係合部20に、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合した状態からの、それらの軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を予め設けてある姿勢修正用鋼管杭A3を接続する。
【0058】
前記融通部21は、外嵌部材2に形成してある内向き周溝16の溝幅H2を、内嵌部材3に形成してある各外向き周溝9の溝幅H1よりも幅広に形成して、外嵌部材2と内嵌部材3とを同芯状に嵌合させた状態で、外向き周溝9の上側溝側面9aと内向き周溝16の上側溝側面16aとが略同じ高さ位置になるように設けると共に、外嵌部材2の内径を通常構造の鋼管杭A1,A2よりも大径に形成して、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って装着した分割キー部材8と、内向き周溝16との間に形成できるように構成してある。
尚、姿勢修正用鋼管杭A3のその他の構造は、通常構造の鋼管杭A1,A2と同じ構造で設けてある。
【0059】
そして、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する際は、図16に示すように、先行鋼管杭A1の内嵌部材3に姿勢修正用鋼管杭A3の外嵌部材2を同芯状に外嵌して互いに嵌合した状態で、通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と同様に、複数個の分割キー部材8の夫々を、開口部26を通して外方に臨ませた外向き周溝部分9aに装着して、その外向き周溝部分9aに沿って内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込むことにより、図17に示すように、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着する。
【0060】
次に、図18に示すように、姿勢修正用鋼管杭A3が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けて、金属板材からなる姿勢固定部材22を各分割キー部材8と内向き周溝16の溝側面との間に形成された隙間25に、図19に示すように、姿勢修正用鋼管杭A3の各開口部26を通して取り付けて、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8と姿勢固定部材22とを介して、柱状体長手方向に互いに係合させた後、通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と同様に、スライドキー部材31と押えキー部材32とを装着して、連結板33を各スライドキー部材31にビス止めする。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0061】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による柱状体セットは、構造物設置用の基礎杭の他、土留め用鋼管矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などの柱状体を接続するために使用するものであっても良い。
2.本発明による柱状体セットは、融通部をキー部材と内向き周溝との間に形成し、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、キー部材と内向き周溝との間に形成された隙間に、外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、姿勢固定部材を嵌入させて取り付けることができるように構成してあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】柱状体セットの斜視図
【図2】要部の縦断面図
【図3】要部の横断面図
【図4】要部の縦断面図
【図5】本発明による柱状体セットとその使用方法の説明図
【図6】本発明による柱状体セットとその使用方法の説明図
【図7】本発明による柱状体セットとその使用方法の説明図
【図8】第2実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図9】第2実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図10】第3実施形態の柱状体セットの斜視図
【図11】第3実施形態の要部の縦断面図
【図12】第3実施形態の要部縦断面図
【図13】第3実施形態の要部の斜視図
【図14】第3実施形態の柱状体セットの要部横断面図
【図15】第3実施形態の要部の横断面図
【図16】第3実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図17】第3実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図18】第3実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図19】第3実施形態の柱状体セットの使用方法の説明図
【符号の説明】
【0063】
2 外嵌部材
3 内嵌部材
8 キー部材
9 外向き周溝
16 内向き周溝
18 開口部
21 融通部
22 姿勢固定部材
25 隙間
A 柱状体
A1 一方の柱状体
A2 他方の柱状体
X1 軸芯
X2 軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備えている柱状体セットとその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記柱状体セットは、例えば、構造物設置用の基礎杭や土留め用矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などの柱状体を上下に接続した状態で地中に埋設するために使用され、従来、外嵌部材の内向き周溝と内嵌部材の外向き周溝とを同じ溝幅で形成しておき、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で内向き周溝と外向き周溝とを互いに対向させて、その内向き周溝と外向き周溝とに亘って、溝幅と略同じ幅のキー部材を嵌合して、一対の柱状体どうしを接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3158081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この為、上下の柱状体どうしを接続する際に、その相対的な接続姿勢を修正することが難しく、例えば、油圧ハンマーなどで柱状体を地中に打ち込む工法、つまり、土質などに起因して、柱状体の姿勢がその打ち込みに伴って所定姿勢から外れ易い工法を使用して、柱状体を例えば略鉛直の所定姿勢で上下に接続して埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ柱状体(以下、先行柱状体という)の姿勢が所定姿勢から外れてしまうと、その先行柱状体に接続した後続する柱状体(以下、後続柱状体という)も先行柱状体の姿勢に倣うように打ち込まれ易く、その結果、上下に接続してある柱状体の全体が所定姿勢から大きく外れた姿勢で埋設されるおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、柱状体を地中に打ち込む工法で上下に接続してある柱状体を埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れてしまっても、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備えている柱状体セットであって、前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしの相対的な傾きを許容する融通部を、前記柱状体に設けてあると共に、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、前記外嵌部材と前記内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材を取り付け自在に構成してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしの相対的な傾きを許容する融通部を柱状体に設けてあるので、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れているときは、その先行柱状体に接続する後続柱状体の姿勢が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態から、外嵌部材と内嵌部材の軸芯どうしを相対的に傾けることができる。
また、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材を取り付け自在に構成してあるので、姿勢固定部材を取り付けて、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定することにより、後続柱状体の姿勢を所定姿勢に近い姿勢に保持して、後続柱状体を先行柱状体に接続することができる。
従って、柱状体を地中に打ち込む工法で上下に接続してある柱状体を埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れてしまっても、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記姿勢固定部材は、前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付け自在に構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
姿勢固定部材は、一対の柱状体の外周部に亘って取り付け自在に構成してあるので、姿勢固定部材を一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける簡便な作業で、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、請求項1記載の柱状体セットの使用方法であって、前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した後、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を取り付ける点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れているときは、その先行柱状体に接続する後続柱状体の姿勢が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した後、外嵌部材と内嵌部材とを相対的に傾けて、姿勢固定部材を取り付けることにより、後続柱状体の姿勢を所定姿勢に近い姿勢に保持して、後続柱状体を先行柱状体に接続することができる。
従って、柱状体を地中に打ち込む工法で上下に接続してある柱状体を埋設する場合に、先行して地中に打ち込んだ先行柱状体の姿勢が所定姿勢から外れてしまっても、互いに接続してある柱状体の全体が所定姿勢に近い姿勢になるように修正しながら接続して埋設できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記融通部を前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝との間に形成し、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝の溝側面との間に形成された隙間に、前記外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、前記姿勢固定部材を嵌入させて取り付ける点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させて、内向き周溝と外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した状態から、外嵌部材と内嵌部材とを相対的に傾けることができるように、融通部をキー部材と内向き周溝又は外向き周溝との間に形成し、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、キー部材と内向き周溝又は外向き周溝の溝側面との間に形成された隙間に、外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、姿勢固定部材を嵌入させて取り付けるので、一対の柱状体どうしを、柱状体長手方向に緩みができないように互いに係合させて接続することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、請求項2記載の柱状体セットの使用方法であって、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、姿勢固定部材を一対の柱状体の外周部に亘って取り付けるので、姿勢固定部材を一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける簡便な作業で、外嵌部材と内嵌部材との相対姿勢を固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、柱状体の一例としての、油圧ハンマーなどで地中に打ち込まれる外周面形状が円筒状の通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と、一対の鋼管杭A1,A2を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために装着するキー部材8とを備えている通常の柱状体セットを示す。
【0016】
前記鋼管杭Aの夫々は、鋼管1の両端部に鋳鋼製の外嵌部材2と内嵌部材3とを振り分けて同芯状に溶接してあり、外嵌部材2を上側に位置させて地中に打ち込むように構成してある。
【0017】
前記内嵌部材3は、図2にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の基部4に、その基部4よりも外径が小径の内嵌部5を延設してある略円筒状に形成してあり、基部4の内嵌部5側に臨む端面6を、外嵌部材2の先端部分を接当させる内嵌側接当面に形成して、その内嵌側接当面6に内嵌側係合凹部7を環状に形成してあり、内嵌部5の外周側には、後述する円弧状の分割キー部材8を装着する二条の外向き周溝9を円環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分には内嵌側係合凸部10を環状に形成してある。
【0018】
前記外嵌部材2は、図2にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の略円筒状に形成してあり、その内周側に内嵌部5を嵌合させる外嵌部11を形成し、内嵌側接当面6に接当させる先端部分に、内嵌側係合凹部7に係合する外嵌側係合凸部13を環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分を接当させる外嵌側接当面14に、内嵌側係合凸部10を係合させる外嵌側係合凹部15を形成してある。
【0019】
前記外嵌部11には、外向き周溝9よりも深さが深い二条の内向き周溝16を、内嵌部5を外嵌部11に嵌合させた状態で、その外向き周溝9に対向するように円環状に形成してあり、各内向き周溝16には、図3(イ)に示すように、複数の分割キー部材8を周方向に並べて内向き周溝16からはみ出さないように収容してある。
【0020】
前記分割キー部材8の夫々は、ボルト17を外嵌部材2の外側からレンチなどで回転操作することにより、図3(イ)に示すように、全体が内向き周溝16に入り込んでいる引退位置と、図3(ロ)に示すように、一部が内向き周溝16から突出して外向き周溝9に入り込ませる突出位置とに移動操作自在に設けてある。
【0021】
また、外嵌部材2には、図1,図3に示すように、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合した状態で、内嵌部5を外方に露出可能な周方向で4箇所の開口部18を、内向き周溝16の形成箇所を略矩形に切り取った形状で予め形成してある。
【0022】
前記開口部18には、この開口部18を開閉自在なカバー部材19をビス12で着脱自在に固定してあり、このカバー部材19に内向き周溝部分を形成して、カバー部材19を固定することにより内向き周溝16が一連の環状に連続するように構成してある。
【0023】
そして、一対の鋼管杭A(A1,A2)どうしを、図4(イ)に示すように、一方の鋼管杭A1の外嵌部材2に他方の鋼管杭A2の内嵌部材3を内嵌して互いに嵌合させた後、図4(ロ)に示すように、各分割キー部材8を突出位置に移動させて内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続できるように構成してある。
【0024】
次に、油圧ハンマーなどで地中に打ち込む工法で、上下に互いに接続してある鋼管杭Aを地中に埋設するにあたって、図5〜図7に示すように、先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が仮想線で示す所定姿勢(軸芯X1が鉛直方向に沿う姿勢)から外れている場合に、その先行鋼管杭A1に後続鋼管杭A2を接続する鋼管杭(柱状体)の接続工法を説明する。
【0025】
先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が所定姿勢から外れているときは、図5〜図7に示すように、本発明による柱状体セットに備えた姿勢修正用鋼管杭A3を後続鋼管杭A2として、先行鋼管杭A1に接続する。
【0026】
本発明による柱状体セットは、一対の鋼管杭A(A1,A2)を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させて、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って分割キー部材8を装着してある状態からの、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を、姿勢修正用鋼管杭A3に設けてあると共に、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材22を取り付け自在に構成してある点で、前述の通常の柱状体セットと異なっている。
【0027】
つまり、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8を介して、鋼管杭長手方向に互いに係合させる係合部20に、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合した状態からの、それらの軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を予め設けてある姿勢修正用鋼管杭A3を接続する。
【0028】
前記融通部21は、内嵌部材3に形成してある各外向き周溝9の溝幅H1を、外嵌部材2に形成してある内向き周溝16の溝幅H2よりも幅広に形成して、外嵌部材2と内嵌部材3とを同芯状に嵌合させた状態で、外向き周溝9の上側溝側面9aと内向き周溝16の上側溝側面16aとが略同じ高さ位置になるように設けると共に、内嵌部5の外径を通常構造の鋼管杭A1,A2よりも小径に形成して、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って装着した分割キー部材8と、外向き周溝9との間に形成できるように構成してある。
尚、姿勢修正用鋼管杭A3のその他の構造は、通常構造の鋼管杭A1,A2と同じ構造で設けてある。
【0029】
そして、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する際は、図5に示すように、先行鋼管杭A1の外嵌部材2に姿勢修正用鋼管杭A3の内嵌部材3を同芯状に内嵌して互いに嵌合した状態で、図6に示すように、各分割キー部材8を突出位置に移動させて内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着する。
【0030】
次に、図7に示すように、姿勢修正用鋼管杭A3が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けて、姿勢固定部材22を各分割キー部材8と外向き周溝9の溝側面との間に形成された隙間25に、図3(ロ)に示すように、先行鋼管杭A1の各開口部18を通して取り付ける。
【0031】
前記姿勢固定部材22は、分割キー部材8と外向き周溝9の溝側面との間に形成された隙間に嵌入させて取り付けるシムなどの金属板材であり、この金属板材22を装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8と姿勢固定部材22とを介して、柱状体長手方向に互いに係合させた後、カバー部材19で開口部18を塞いで、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する。
【0032】
尚、融通部21は、先行鋼管杭A1の軸芯X1に対する姿勢修正用鋼管杭A3の軸芯X2の許容傾き角度が所望の最大傾き角度になるように、外向き周溝9の溝幅H1や内嵌部5の外径を設定して設けてあり、先行鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3の軸芯X1,X2どうしの傾き角度に応じて厚みが異なる各種の姿勢固定部材22を用意しておいて、最適な姿勢固定部材22を選択して取り付けることができるようにしてある。
【0033】
本実施形態では、外嵌部材2の強度が低下し難い小さな開口部18を通して姿勢固定部材22を装着できるように、一つの開口部18を通して複数の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付ける形態を示したが、一つの開口部18を通して単一の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付けるように構成しても良い。
この場合、分割キー部材8の長さと略同じ長さの単一の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付けるように構成しても、分割キー部材8の長さに比べて短い単一の姿勢固定部材22を隙間25に嵌入させて取り付けるように構成しても良い。
【0034】
〔第2実施形態〕
図8,図9は、通常の柱状体セットと本発明による柱状体セットの別実施形態を示し、本実施形態では、通常構造の鋼管杭A1,A2や姿勢修正用鋼管杭A3として、外嵌部材2に開口部18を形成していない点で第1実施形態で示した鋼管杭Aと異なる鋼管杭を備え、姿勢固定部材22を鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3の外周部に亘って取り付け自在に構成してある。
【0035】
そして、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する際は、図5,図6に示した第1実施形態と同様に、先行鋼管杭A1の外嵌部材2に姿勢修正用鋼管杭A3の内嵌部材3を内嵌した状態で、各分割キー部材8を突出位置に移動させて内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着する。
【0036】
次に、図8に示すように、外嵌部材2と内嵌部材3とが柱状体長手方向に互いに係合されるまで、つまり、分割キー部材8のいずれかが外向き周溝9の上側溝側面に接当し、かつ、残りの分割キー部材8のいずれかが外向き周溝9の下側溝側面に接当するまで、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを強制的に相対的に傾けて、その強制的にに傾けた状態で、図9に示すように、板材からなる姿勢固定部材22を鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3の外周部に亘って取り付けることにより、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定して、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に鋼管杭長手方向に互いに係合させた状態で接続する。
【0037】
前記姿勢固定部材22は、外嵌部材2と内嵌部材3の基部4の夫々に鋼管杭長手方向で互いに対向するように形成した凹部23に入り込ませて、ビス24で外嵌部材2と内嵌部材3とに亘って固定してある。
【0038】
尚、上記実施形態では、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを最大許容傾斜角度θまで強制的に傾けて、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に鋼管杭長手方向に互いに係合させた状態で接続する形態を示したが、最大許容傾斜角度θ未満に傾けて、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定しても良い。
【0039】
この場合、姿勢固定部材22として、先行鋼管杭A1と姿勢修正用鋼管杭A3との軸芯X1,X2どうしの傾き角度に応じて、上下のビス孔間隔Lが異なる各種の姿勢固定部材22を用意しておいて、最適なビス孔間隔Lの姿勢固定部材22を選択して取り付けることができるようにしてある。
尚、姿勢固定部材22を固定してから、分割キー部材8を外向き周溝9の側面に接当しても良い。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0040】
〔第3実施形態〕
図10,図11は、柱状体の一例としての、油圧ハンマーなどで地中に打ち込まれる外周面形状が円筒状の通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と、一対の鋼管杭A1,A2を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために装着するキー部材8とを備えている通常の柱状体セットを示す。
【0041】
前記鋼管杭Aの夫々は、鋼管1の両端部に鋳鋼製の外嵌部材2と内嵌部材3とを振り分けて同芯状に溶接してあり、内嵌部材3を上側に位置させて地中に打ち込むように構成してある。
【0042】
前記内嵌部材3は、図11にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の基部4に、その基部4よりも外径が小径の内嵌部5を延設してある略円筒状に形成してあり、基部4の内嵌部5側に臨む端面6を、外嵌部材2の先端部分を接当させる内嵌側接当面に形成して、その内嵌側接当面6に内嵌側係合凹部7を環状に形成してあり、内嵌部5の外周側には、二条の外向き周溝9を円環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分には内嵌側係合凸部10を環状に形成してある。
【0043】
前記外嵌部材2は、図11にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の略円筒状に形成してあり、その内周側に内嵌部5を嵌合させる外嵌部11を形成して、外向き周溝9と略同じ深さの二条の内向き周溝16を形成し、内嵌側接当面6に接当させる先端部分に、内嵌側係合凹部7に係合する外嵌側係合凸部13を環状に形成し、内嵌部5の先端部分を接当させる外嵌側接当面14に、内嵌側係合凸部10を係合させる外嵌側係合凹部15を形成してある。
【0044】
前記内向き周溝16は、内嵌部5を外嵌部11に嵌合させた状態で、外向き周溝9に対向するように円環状に形成してあり、一対の鋼管杭Aを接続するために、一方の鋼管杭Aの外嵌部材2と他方の鋼管杭Aの内嵌部材3とを互いに嵌合させた状態で、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘ってキー部材8を装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを鋼管杭長手方向に互いに係合できるようにしてある。
【0045】
前記キー部材8は、図13に示すように、杭周方向で複数個の略直方体形状の分割キー部材で構成してあり、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させた状態で、これらの分割キー部材8を内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込むために、図10,図14に示すように、各外向き周溝9の溝長手方向における一部を外向き周溝9の全幅に亘って外方に臨ませるための開口部26を、各内向き周溝16の形成箇所に沿って、内向き周溝16の全幅に亘って切り取った形状で、外嵌部材2の周方向で複数箇所(本実施形態では4箇所)に予め形成してある。
【0046】
そして、図12(イ)に示すように、一方の鋼管杭A1の内嵌部材3に他方の鋼管杭A2の外嵌部材2を外嵌して互いに嵌合させた後、図12(ロ)に示すように、隣り合う開口部26間における内向き周溝16と外向き周溝9との間毎に、複数個の分割キー部材8の夫々を、開口部26を通して外方に臨ませた外向き周溝部分9aに装着して、その外向き周溝部分9aに沿って内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込むことにより、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着して、外嵌部材2と内嵌部材3とを杭長手方向に互いに係合させる接続工法で、一対の鋼管杭A(A1,A2)どうしを接続できるように構成してある。
【0047】
尚、図10中の符号27は、互いに接続した鋼管杭A(A1,A2)どうしの相対回転を抑止するために、外嵌部材2と内嵌部材3とに亘って係合するようにビス止めしてある回転抑止キーである。
【0048】
前記杭周方向で隣り合う開口部26の間毎に装着する複数個の分割キー部材8は、図13に示すように、各分割キー部材8にワイヤー挿通用貫通孔28を形成して、それらの分割キー部材8に亘って、一連の索条体としてのワイヤー29を予め挿通してある。
【0049】
前記ワイヤー29には、そのワイヤー29を挿通してある分割キー部材8のうちの、押し込み方向前端側の分割キー部材8aとの接当でその分割キー部材8との相対移動を規制する第1規制部材30aと、押し込み方向後端側の分割キー部材8bとの接当でその分割キー部材8bとの相対移動を規制する第2規制部材30bとを設けてあり、第1規制部材30aと第2規制部材30bとの間隔を、各分割キー部材8の合計長さ以上の長さ、例えば二倍以上の長さに設定して、各分割キー部材8が内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込み可能な姿勢に姿勢変更自在に挿通してある。
【0050】
前記分割キー部材8の夫々を内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って装着する方法を説明する。
図14(イ)に示すように、隣り合う開口部26の間毎に、ワイヤー29の端部を、一方の開口部26から内向き周溝16と外向き周溝9との間に挿通して他方の開口部26から引き出した後、図14(ロ)に示すように、そのワイヤー29を挿通してある各分割キー部材8を、内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込んで、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って順に装着し、その後、図14(ハ)に示すように、ワイヤー29を切断して各分割キー部材8から抜き取る。
【0051】
次に、図15に示すように、各分割キー部材8の周溝内での移動を阻止するためのL字状のスライドキー部材31を開口部26から内向き周溝16と外向き周溝9との間に装着するとともに、隣り合うスライドキー部材31の間に押えキー部材32を装着して、スライドキー部材31どうしを連結固定する連結板33を各スライドキー部材31にビス止めする。
【0052】
本実施形態によれば、分割キー部材8の一つずつを、外方に臨んでいる外向き周溝部分8aに装着してから先行分割キー部材にボルト連結するような煩雑な作業を要することなく、分割キー部材8のいずれかが内向き周溝16と外向き周溝9との間で引っ掛かって押し込めなくなったときは、その引っ掛かりを解消するべく、開口部26から引き出してあるワイヤー29を上下左右に動かすことで、分割キー部材8と内向き周溝16又は外向き周溝9との間のあそび(隙間)部分での分割キー部材8の引っ掛かりを解消し易い。
【0053】
また、ワイヤー29として、そのワイヤー29を挿通してある分割キー部材8との接当で、その分割キー部材8との相対移動を規制する規制部材30a,30bを設けてあるワイヤー29を使用するので、ワイヤー29を少なくとも前後方向のいずれか一方に動かすことで、そのワイヤー29を挿通してある分割キー部材8の全部又は一部を積極的に動かすことができ、分割キー部材8の引っ掛かりを一層解消し易い。
【0054】
次に、油圧ハンマーなどで地中に打ち込む工法で、上下に互いに接続してある鋼管杭Aを地中に埋設するにあたって、図16〜図18に示すように、先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が仮想線で示す所定姿勢(軸芯X1が鉛直方向に沿う姿勢)から外れている場合に、その先行鋼管杭A1に後続鋼管杭A2を接続する鋼管杭(柱状体)の接続工法を説明する。
【0055】
先行して打ち込まれている先行鋼管杭A1の姿勢が所定姿勢から外れているときは、図16〜図18に示すように、本発明による柱状体セットに備えた姿勢修正用鋼管杭A3を後続鋼管杭A2として、先行鋼管杭A1に接続する。
【0056】
本発明による柱状体セットは、一対の鋼管杭A(A1,A2)を鋼管杭長手方向に互いに係合させて接続するために、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させて、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って分割キー部材8を装着してある状態からの、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を、姿勢修正用鋼管杭A3に設けてあると共に、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けた状態での、外嵌部材2と内嵌部材3との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材22を取り付け自在に構成してある点で、前述の通常の柱状体セットと異なっている。
【0057】
つまり、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8を介して、鋼管杭長手方向に互いに係合させる係合部20に、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合した状態からの、それらの軸芯X1,X2どうしの相対的な傾きを許容する融通部21を予め設けてある姿勢修正用鋼管杭A3を接続する。
【0058】
前記融通部21は、外嵌部材2に形成してある内向き周溝16の溝幅H2を、内嵌部材3に形成してある各外向き周溝9の溝幅H1よりも幅広に形成して、外嵌部材2と内嵌部材3とを同芯状に嵌合させた状態で、外向き周溝9の上側溝側面9aと内向き周溝16の上側溝側面16aとが略同じ高さ位置になるように設けると共に、外嵌部材2の内径を通常構造の鋼管杭A1,A2よりも大径に形成して、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って装着した分割キー部材8と、内向き周溝16との間に形成できるように構成してある。
尚、姿勢修正用鋼管杭A3のその他の構造は、通常構造の鋼管杭A1,A2と同じ構造で設けてある。
【0059】
そして、姿勢修正用鋼管杭A3を先行鋼管杭A1に接続する際は、図16に示すように、先行鋼管杭A1の内嵌部材3に姿勢修正用鋼管杭A3の外嵌部材2を同芯状に外嵌して互いに嵌合した状態で、通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と同様に、複数個の分割キー部材8の夫々を、開口部26を通して外方に臨ませた外向き周溝部分9aに装着して、その外向き周溝部分9aに沿って内向き周溝16と外向き周溝9との間に押し込むことにより、図17に示すように、内向き周溝16と外向き周溝9とに亘って跨るように装着する。
【0060】
次に、図18に示すように、姿勢修正用鋼管杭A3が所定姿勢に近い姿勢になるように、外嵌部材2と内嵌部材3との軸芯X1,X2どうしを相対的に傾けて、金属板材からなる姿勢固定部材22を各分割キー部材8と内向き周溝16の溝側面との間に形成された隙間25に、図19に示すように、姿勢修正用鋼管杭A3の各開口部26を通して取り付けて、外嵌部材2と内嵌部材3とを、分割キー部材8と姿勢固定部材22とを介して、柱状体長手方向に互いに係合させた後、通常構造の鋼管杭A(A1,A2)と同様に、スライドキー部材31と押えキー部材32とを装着して、連結板33を各スライドキー部材31にビス止めする。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0061】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による柱状体セットは、構造物設置用の基礎杭の他、土留め用鋼管矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などの柱状体を接続するために使用するものであっても良い。
2.本発明による柱状体セットは、融通部をキー部材と内向き周溝との間に形成し、外嵌部材と内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、キー部材と内向き周溝との間に形成された隙間に、外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、姿勢固定部材を嵌入させて取り付けることができるように構成してあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】柱状体セットの斜視図
【図2】要部の縦断面図
【図3】要部の横断面図
【図4】要部の縦断面図
【図5】本発明による柱状体セットとその使用方法の説明図
【図6】本発明による柱状体セットとその使用方法の説明図
【図7】本発明による柱状体セットとその使用方法の説明図
【図8】第2実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図9】第2実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図10】第3実施形態の柱状体セットの斜視図
【図11】第3実施形態の要部の縦断面図
【図12】第3実施形態の要部縦断面図
【図13】第3実施形態の要部の斜視図
【図14】第3実施形態の柱状体セットの要部横断面図
【図15】第3実施形態の要部の横断面図
【図16】第3実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図17】第3実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図18】第3実施形態の柱状体セットとその使用方法の説明図
【図19】第3実施形態の柱状体セットの使用方法の説明図
【符号の説明】
【0063】
2 外嵌部材
3 内嵌部材
8 キー部材
9 外向き周溝
16 内向き周溝
18 開口部
21 融通部
22 姿勢固定部材
25 隙間
A 柱状体
A1 一方の柱状体
A2 他方の柱状体
X1 軸芯
X2 軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備えている柱状体セットであって、
前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしの相対的な傾きを許容する融通部を、前記柱状体に設けてあると共に、
前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、前記外嵌部材と前記内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材を取り付け自在に構成してある柱状体セット。
【請求項2】
前記姿勢固定部材は、前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付け自在に構成してある請求項1記載の柱状体セット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の柱状体セットの使用方法であって、
前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した後、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を取り付ける柱状体セットの使用方法。
【請求項4】
前記融通部を前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝との間に形成し、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝の溝側面との間に形成された隙間に、前記外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、前記姿勢固定部材を嵌入させて取り付ける請求項3記載の柱状体セットの使用方法。
【請求項5】
請求項2記載の柱状体セットの使用方法であって、
前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける柱状体セットの使用方法。
【請求項1】
外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備えている柱状体セットであって、
前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着してある状態からの、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしの相対的な傾きを許容する融通部を、前記柱状体に設けてあると共に、
前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けた状態での、前記外嵌部材と前記内嵌部材との相対姿勢を固定可能な姿勢固定部材を取り付け自在に構成してある柱状体セット。
【請求項2】
前記姿勢固定部材は、前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付け自在に構成してある請求項1記載の柱状体セット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の柱状体セットの使用方法であって、
前記一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘ってキー部材を装着した後、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を取り付ける柱状体セットの使用方法。
【請求項4】
前記融通部を前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝との間に形成し、前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記キー部材と前記内向き周溝又は前記外向き周溝の溝側面との間に形成された隙間に、前記外嵌部材に予め形成してある開口部を通して、前記姿勢固定部材を嵌入させて取り付ける請求項3記載の柱状体セットの使用方法。
【請求項5】
請求項2記載の柱状体セットの使用方法であって、
前記外嵌部材と前記内嵌部材との軸芯どうしを相対的に傾けて、前記姿勢固定部材を前記一対の柱状体の外周部に亘って取り付ける柱状体セットの使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−35930(P2009−35930A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200901(P2007−200901)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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