説明

栄養原料を含むカプセル、及び、カプセルから栄養液体を送出する方法

本発明は、飲料製造装置において使用するカプセル(9)であって、カプセル(9)の注入面(8)においてカプセル(9)内に液体が供給されたときに栄養液体を製造するための原料を含み、さらに、プロバイオティック微生物(21)などの熱感受性生物活性原料を含み、熱感受性生物活性原料が、カプセル内の他の栄養原料から物理的に分離されたカプセル(9)を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルから、具体的にはプロバイオティック微生物(probiotic microorganism)などの熱感受性生物活性原料(heat sensitive bioactive ingredient)を含む栄養原料(nutritonal ingredient)から、ベビーミルクなどの栄養液体の送出、及びカプセルから前記栄養液体を送出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児用調製粉乳(調製乳)(infant formula)は、必要な栄養を乳児に供給するために、人乳の代用品として開発されてきた。一般に、乳児用調製粉乳は牛乳又は大豆乳に基づき、粉末、濃縮液などさまざまな形態で提供されることがある。
【0003】
乳児用調製粉乳は、このように調製され、消費される場合、上述の状況において、安全で栄養的に優れた母乳の代用品となる。しかしながら、授乳が必要となるたびにこの過程を繰り返す必要がある。調製粉乳が常に都合がよいというわけではなく、その結果、多くの親及び他のケアパーソンが適切に調製粉乳を準備せず、したがって乳児を感染の危険にさらすことは容易に理解される。例えば、使用前に水を沸騰させないことがあり、この場合には、水の中の病原体が乳児に供給される。先進国の水源は通常、適度に安全だが、どこでもそうであるわけではない。
【0004】
或いは、数回分の乳児用調製粉乳を準備しておき、必要になるまで保存しておくこともある。運悪く、病原体がその調製粉乳を汚染している場合には、病原体は自己複製する時間を有し、乳児が感染する危険を相当に増大させる。
【0005】
別の進展として、すぐに授乳できる(ready−to−feed)1回分ずつ小分けにされた乳児用調製粉乳が導入され、これは、乳児用調製粉乳を調製する不便さを解決する。しかしながら、すぐに授乳できるこれらの製品は、まとめて保存された乳児用調製粉乳よりも高価であり、細菌による汚染の危険を回避するため、開放したらすぐに消費する必要があることは同じである。
【0006】
ディスペンサ内でカプセルから栄養組成物を調製するために使用する、フィルタによって水を処理する原理を教示している装置が、2006年7月25日に出願された「Dispenser for preparing a nutritional composition」という名称の同時係属の欧州特許出願第06117801.8号明細書に開示されている。
【0007】
摂取した場合に人間に対して有益な特性を示すことが分かったため、最近、ある種の細菌株がかなり注目されている。具体的には、乳酸杆菌(Lactobacillus)属及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の特定の菌株は、腸粘膜にコロニーを作ることができ、腸上皮に付着する病原細菌の能力を低下させ、免疫調節効果を有し、健康の維持に役立つことが分かった。このような細菌は時にプロバイオティック(probiotic)と呼ばれる。
【0008】
新たなプロバイオティック菌株を同定する広範囲の研究が実施された。例えば、EP 0 199 535、EP 0 768 375、国際公開第97/00078号パンフレット、EP 0 577 903及び国際公開第00/53200号パンフレットは、乳酸杆菌属及びビフィドバクテリウム属の特定の菌株並びにそれらの有益効果を開示している。
【0009】
特に乳児に関する限り、出生の直前、乳児の胃腸管は無菌であると考えられている。出産過程の間に、乳児は、母親の消化管及び皮膚の細菌に遭遇し、コロニーの形成が開始される。乳児の栄養補給によって、腸の微生物叢の組成は大きく異なる。母乳で育てられた乳児の糞便の微生物叢は、ビフィドバクテリウム属のかなりの集団及び乳酸桿菌属のいくつかの種を含み、調製粉乳で育てられた乳児は、全て普通に存在するビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)及び連鎖球菌属(Streptococcus)を含むより複雑な微生物叢を有する。約2才で離乳した後、成人のパターンに似た腸微生物叢パターンが確立される。
【0010】
この理由から、腸におけるコロニー形成を促進し、悪性の細菌、すなわちクロストリジウム属などの病原体ではなく、「良性の」細菌、すなわちビフィドバクテリウム属及び乳酸杆菌属の種によるコロニー集落形成を促進するために、乳児用調製粉乳にプロバイオティックを添加することが提案されている。
【0011】
例えば、国際特許公開第2004/112507号パンフレットは、タンパク質源、脂質源、炭水化物源及びプロバイオティックを含む乳児用調製粉乳又は後続の調製粉乳に関する。
【0012】
現在のところ、プロバイオティック、或いはある種の熱感受性ポリペプチド又は糖タンパク質などのある種の熱感受性生物活性原料を含む使い捨てカプセルから調製され、飲料製造装置で処理された栄養液体を、都合よく安全に送出する都合のよい解決策は提案されていない。
【0013】
このような生物活性原料を含む栄養液体をカプセル内で再形成することに関する1つの問題は、十分なレベルの食品安全性を保証するため、例えば望ましくない微生物を殺すために、カプセル内に熱い液体を導入することによって、付随的に、熱感受性生物活性原料も分解又は不活性化されてしまう(例えばプロバイオティックが死滅する)ことである。したがって、栄養液体はもはや、意図された健康上又は免疫上の利点を完全には提供しない。
【0014】
さらに、望ましくない細菌又は酵母が栄養液体に送出されないこと、及び、所望の生物活性原料、例えばプロバイオティックが、前記液体に送出されたときに、最適な生物活性状態に維持されることを保証する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、カプセル内保持された劣化していない熱感受性生物活性原料、又は栄養液体の再形成及びカプセルからの送出の間にその生物効率(bio−efficiency)がその他の影響を受けていない熱感受性生物活性原料を含む栄養液体を、使い捨てのカプセルから、安全に送出し、望ましくない微生物を不活化する加熱ステップ、又は前記望ましくない微生物を除去する濾過ステップを再形成に含めることによって、栄養液体の健康上の利益を向上させる解決策を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、独立請求項の諸特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の中心概念をさらに発展させる。
【0017】
本発明の第1の態様は、飲料製造装置において使用するカプセルに関する。このカプセルは、注入面においてカプセル内に液体が供給されたときに栄養液体を製造するための原料を含む。このカプセルはさらに、カプセル内において他の栄養原料の少なくとも一部分から物理的に分離された熱感受性生物活性原料を含む。
【0018】
用語「熱感受性生物活性原料」は、栄養、健康又は免疫上の利益を提供する食品原料であって、栄養飲料の再形成時に、望ましくない微生物を不活化するのに十分な温度、例えば70℃超、より好ましくは80℃超の高温液体と接触したときに、その生物活性がかなり低下し、悪化し、又は失われると考えられる食品原料を指す。
【0019】
本発明の好ましい一形態では、熱感受性生物活性原料がプロバイオティック微生物(「プロバイオティック」)である。
【0020】
プロバイオティックは、宿主の健康又は福祉に対する有益効果を有する微生物細胞製剤又は微生物細胞成分と定義される(Salminen S.、Ouwehand A.、Benno Y.他、「Probiotics:how should they be defined」、Trend Food Sci.Technol.1999:10、107−10)。
【0021】
プロバイオティックを、プレバイオティック(prebiotic)と混合することができる。プレバイオティックは、結腸内の1つの細菌又は限られた数の細菌の成長及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有益な影響を及ぼし、したがって宿主の健康を向上させる非消化性の食品原料である。プレバイオティックをプロバイオティックとは別に収容することもできる。
【0022】
他の熱感受性生物活性原料は、生物学的に活性のタンパク質、ペプチド及び脂肪である。より好ましくは、熱感受性生物活性原料が、ラクトフェリン、免疫グロブリン、乳脂肪球膜分画(milk fat globule membrane fraction)(MFGM)、TGF−ベータなどの増殖因子、DHA(ドコサヘキサエン酸)、DGLA(ジホモ−y−リノレン酸)、及びこれらの組合せである。
【0023】
プロバイオティック微生物及び他の熱感受性生物活性原料は、残りの原料の少なくとも一部分から物理的に分離されていることが好ましい。このことは、原料が、望ましくない微生物を潜在的に含むときに重要であり、これらの微生物は、製造された栄養液体中のプロバイオティックのコロニー形成単位(CFU)数を過度に低下させることなく、製造された栄養液体から(例えば濾過によって)拘束し、又は(温度、抗菌薬などによって)殺さなければならない。
【0024】
熱感受性生物活性原料と他の原料との間の物理的分離は、液体に対して透過性又は不透過性の壁によって、或いは熱感受性生物活性原料、特にプロバイオティック微生物のカプセル封入によって達成することができる。
【0025】
上述の第1の態様と組み合わせることができ、又は上述の第1の態様とは独立に取り扱うことができる本発明の他の態様では、本発明が、注入面においてカプセル内に液体が供給されたときに栄養液体を製造するための原料を含むカプセルに関する。このカプセルはさらに、プロバイオティック微生物及び抗菌フィルタを含む。より具体的には、この抗菌フィルタが、プロバイオティック微生物の上流側のカプセル内に置かれる。抗菌フィルタは、プロバイオティックを含む全ての原料の上流側に置くこともできる。
【0026】
他の態様では、分離壁を抗菌フィルタとすることができる。この場合には、熱感受性生物活性原料、例えばプロバイオティック微生物が、抗菌フィルタの下流側のフィルタとカプセルの排出口の間のカプセル内に配置される。混合液体の状態でフィルタを通過することができる他の原料、例えばタンパク質、炭水化物、ビタミン、無機質などは、抗菌フィルタの上流側に置くことができる。その結果、水及び/又は上流側部分の原料に含まれる望ましくない微生物だけが抗菌フィルタによって止められ、プロバイオティック微生物は、抗菌フィルタによって止められることなく首尾よく送出することができる。
【0027】
可能な一形態では、液体の流れに関して抗菌フィルタの下流側に置かれ、プロバイオティック微生物を含む区画部がさらに、カプセル封入された脂肪を含む。この脂肪は、植物性脂肪、又は植物性脂肪と乳脂肪の混合物、或いは植物性脂肪と乳脂肪の混合物に、LC−PUFAなどの他の源に由来する他の脂肪をさらに加えたものとすることができる。この脂肪は、下流側区画部を通過する水によって溶解され、これによって、脂肪滴(十分に乳化した液体では一般に0.05〜10ミクロンのサイズを有する)が抗菌フィルタのところでブロックされ、その結果、カプセル内の液体の流れをブロックする問題を回避する。
【0028】
他の態様では、プロバイオティック微生物及び他の全ての栄養原料が、カプセルの同じ区画部、すなわち主混合チャンバに配置される。抗菌フィルタは、カプセルの注入面とプロバイオティック微生物を含む原料を含む区画部との間に置かれる。抗菌フィルタが存在する結果、カプセルに含まれるこのフィルタによって、この区画部に導入された水が、望ましくない微生物から除去され、この水を、カプセル内に含まれるプロバイオティック微生物を分解したり、又は殺したりしない温度、例えば45℃未満の温度に加熱することができる。フィルタを傷つけることなく液体注入手段を注入面から挿入することができるように、抗菌フィルタは、注入面からある距離のところに配置されることが好ましい。
【0029】
抗菌フィルタの孔径は、1μm未満、好ましくは0.5μm未満、よりいっそう好ましくは0.3μm未満とすることができる。
【0030】
プロバイオティック微生物は、抗菌フィルタとカプセルの排出口との間に配置されることが好ましい。
【0031】
分離壁は、カプセルの内側の少なくとも2つの区画部を分離することができる。
【0032】
分離壁は、カプセル内において、カプセルの注入面から排出面へ移動する液体の流路を横切って横に広がることができる。
【0033】
或いは、分離壁は、カプセル内において、注入面から排出面へのカプセル内の流路の方向に沿って縦に広がることもできる。
【0034】
原料は、粉末又は濃縮液物の形態の乳児用調製粉乳を含むことができる。
【0035】
プロバイオティック微生物は、(噴霧乾燥又は凍結乾燥された)乾燥粉末として存在することができる。
【0036】
プロバイオティック微生物は、ゲルとして、又は例えばペレット、錠剤などの圧縮された剤形で、或いはカプセルとして提供することができる。
【0037】
プロバイオティック微生物は細菌及び/又は酵母を含むことができる。
【0038】
全てのプロバイオティック微生物を本発明に従って使用することができる。好ましくは、プロバイオティックは、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、乳酸杆菌(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、連鎖球菌(Streptococcus)属、子嚢菌門(Ascomycota)、不完全菌門(Deuteromycota)、デバリオミセス(Debaryomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ヤロイア(Yarrowia)属、ジゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、カンジダ(Candida)属及びロドトルラ(Rhodotorula)属からなるグループ、具体的には、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium animalis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus salivarius、Lactococcus lactis、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus salivarius、Enterococcus faecium、Saccharomyces cerevisia、Saccharomyces boulardii及びLactobacillus reuteri、又はこれら混合物からなるグループ、好ましくは、Lactobacillus johnsonii(NCC533;CNCM I−1225)、Bifidobacterium longum(NCC490;CNCM I−2170)、Bifidobacterium longum(NCC2705;CNCM I−2618)、Bifidobacterium lactis(2818;CNCM I−3446)、Lactobacillus paracasei(NCC2461;CNCM I−2116)、Lactobacillus rhamnosus GG(ATCC53103)、Lactobacillus rhamnosus(NCC4007;CGMCC 1.3724)、Enterococcus faecium SF 68(NCIMB10415)及びこれらの混合物からなるグループから選択することができる。
【0039】
本発明の可能な一形態では、少なくとも2種類の異なるプロバイオティックが存在する。特に好ましい1つの組合せは、例えばLactobacillus rhamnosus種又はLactobacillus paracasei種などの乳酸桿菌属と、例えばBifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve又はBifidobacterium animalis種などのビフィドバクテリウム属との組合せである。このような菌株の組合せの例は、Bifidobacterium longum ATCC BAA−999と、Lactobacillus rhamnosus ATCC 53103、Lactobacillus paracasei CNCM I−2116又はLactobacillus rhamnosus CGMCC 1.3724との組合せである。特に好ましい他の組合せはビフィドバクテリウム属の2種類の菌株である。このような組合せの一例は、Bifidobacterium longum ATCC BAA−999とBifidobacterium lactis CNCM I−3446の組合せである。
【0040】
プロバイオティック酵母の一例は例えば、Saccharomyces cerevisiae、特にSaccharomyces boulardiiである。
【0041】
カプセルは、1×10〜1×1012CFUのプロバイオティック微生物を含むことができる。
【0042】
プロバイオティック微生物又は他の熱感受性生物活性原料は、カプセルの注入面に機械的に結合された区画部に含めることができる。
【0043】
プロバイオティック微生物又は他の熱感受性生物活性原料は、カプセルの排出面に機械的に結合された区画部に含めることができる。
【0044】
プロバイオティック微生物又は他の熱感受性生物活性原料は、カプセルの上面図において、原料の半径方向内側又は外側に分離することができる。
【0045】
より具体的には、熱感受性生物活性原料から分離された状態に維持される、カプセル内に含まれる主栄養原料は、
少なくとも1つのタンパク質源、及び
少なくとも1つの炭水化物源
を含む。
【0046】
さらに、主原料は、脂質源及び微量養素を含む。
【0047】
具体的には、乳児用調製粉乳に関しては、タンパク質源が、100:0〜40:60の範囲で選択された乳清及びカゼインを含むことが好ましい。乳清タンパク質は、調製甘乳清(modified sweet whey)とすることができる。甘乳清は、容易に入手可能なチーズ製造の副産物であり、牛乳ベースの乳児用調製粉乳の製造において頻繁に使用されている。
【0048】
タンパク質は、完全(intact)タンパク質又は加水分解タンパク質、或いは完全タンパク質と加水分解タンパク質の混合物とすることができる。もちろん、給食対象の人間の分類(乳児、幼児、高齢者、患者など)に応じて、大豆タンパク質など、動物又は植物起源の他のタンパク質を使用することもできる。
【0049】
好ましい炭水化物源は、乳糖、ショ糖、マルトデキストリン、デンプン及びこれらの混合物である。
【0050】
乳児の年齢に応じて、調製粉乳の炭水化物含量又は脂質含量を変更することもでき、好ましくは、炭水化物含量と脂質含量の両方を変更する。一般的に言って、炭水化物含量は、乳児の年齢が上がるにつれて、例えば9.0g/100kcal〜12.0g/100kcalに、好ましくは10.1g/100kcal〜11.6g/100kcalに増大させることができ、脂質含量は、乳児の年齢が上がるにつれて、例えば脂質6.0g/100kcal〜4.5g/100kcalに、好ましくは5.6g/100kcal〜5.1g/100kcalに低下させることができる。
【0051】
好ましい脂質源には、乳脂肪、パーム油、パームオレイン、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ヤシ油、低エルカ酸ナタネ(カノーラ)油、高オレイン酸ヒマワリ油及び高オレイン酸サフラワー油、並びにこれらの組合せが含まれる。必須脂肪酸であるリノレン酸及びα−リノレン酸を、魚油、微生物油などの予め形成されたアラキドン酸及びドコサヘキサエン酸の含量が高い少量の油として、加えてもよい。脂質源のn−6脂肪酸とn−3脂肪酸の比は、約5:1〜15:1、例えば約8:1〜10:1であることが好ましい。
【0052】
カプセル内に抗菌フィルタが存在するときには、乳化液体中の大きな脂肪滴を形成することができる脂質原料を、分離された熱感受性生物活性原料と組み合わせることができる。実際、再形成された液体に懸濁した大きな脂肪滴が、フィルタ膜上に保持され、蓄積することがあり、潜在的に目詰まりの問題を生じさせる。さらに、脂肪及び/又はプロバイオティックをカプセル封入して、貯蔵中の否定的な相互作用を防ぎ、栄養飲料中での溶解及び乳濁液の形成を促進することができる。
【0053】
微量養素の例は、毎日の食事及び栄養的に有意な量において必須であると理解されている全てのビタミン、無機質又は他の栄養素である。乳児用調製粉乳中に任意選択で存在する無機質、ビタミン及び他の栄養素の例には、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、イノシトール、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、コリン、カルシウム、亜リン酸、ヨウ素、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、塩化物、カリウム、ナトリウム、セレン、クロム、モリブデン、タウリン及びL−カルニチンなどが含まれる。無機質は通常、塩の形で添加される。特定の無機質及び他のビタミンの存在の有無及び量は、意図された集団に応じて異なる。
【0054】
本発明の他の態様は、カプセルに含まれる原料から栄養液体を製造するための飲料製造装置であって、
液体を加熱する手段と、
加熱した液体をカプセル内へ供給する手段と
を備え、異なる温度を有する少なくとも2つの別個の液体流を、装置内に収容された単一のカプセル内へ並列に供給するように設計された
飲料製造装置に関する。
【0055】
それにより、一方の液体流は少なくとも70℃の温度を有することができ、もう一方の液体流は30℃未満の温度を有することができる。
【0056】
2つの液体流の温度及び体積は、それらを混合することによって、30℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃の温度を有する液体が得られるように設定することができる。
【0057】
本発明の他の態様は、
これまでに記載したカプセルと、
カプセルを収容する手段と、
カプセルに液体を供給する手段、及び続いてガス(空気、窒素、...)を供給して、残った液体を放出し、カプセルを空にする任意選択の手段と
を有する飲料製造装置と
を備える飲料製造システムに関する。
【0058】
この飲料製造装置はさらに、
カプセルの注入面に開口をあける手段
を備えることができる。
【0059】
飲料製造装置は、製造されたカプセル内の飲料を、この飲料が飲料製造装置の部分と接触することなくカプセルから取り出すことができるように設計することができる。
【0060】
本発明の他の態様は、飲料製造装置内において、カプセルに含まれる熱感受性生物活性原料、例えばプロバイオティックを含む原料から、栄養液体を製造し、送出する方法であって、
この装置が、装置内において液体を加熱するステップと、加熱した液体をカプセル内に注入するステップとを含み、この注入ステップが、異なる温度を有する少なくとも2つの別個の液体流を、装置内に収容された単一のカプセル内へ、逐次的に又は並列に注入するステップを含む
方法に関する。
【0061】
具体的には、この方法は、より低温の液体流を、熱感受性生物活性原料、例えばプロバイオティックを含む区画部内へ注入し、より高温の液体流を他の原料を含む区画部内へ注入するステップを含む。したがって、熱感受性生物活性原料の生存能力(viability)又は生物効率を、分配された液体中で維持することができ、その一方で、原料の熱処理、より良好な溶解又は混合、及び液体の最終的な所望の(例えば温かい)温度の設定を保証する十分に熱い液体が依然として他の原料と相互作用する。
【0062】
液体流を並列に注入する前記ステップでは、カプセルの2つの別個の区画部内へ液体流が注入される。
【0063】
液体流を逐次的に注入する前記ステップでは、同じ又は別個の区画部内へ液体流が注入される。
【0064】
この方法はさらに、カプセル内への加熱液体の注入を停止した後に、加圧されたガス、好ましくは圧縮空気を注入して、カプセルを完全に空にする後続のステップを含む。この操作は、カプセルが残液を含まないことを保証する。その結果、カプセルを装置から取り外すときに液だれが減り、又は液だれが起こらないため、操作がより清潔で、より衛生的になる。このカプセルはさらに、環境によりやさしく、より容易に焼却し又はリサイクルすることができる。
【0065】
本発明の他の特徴、利点及び目的は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むと明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】飲料調製装置のカプセルホルダ内に置かれた本発明に基づくカプセルの一例を示す図である。
【図2A】カプセルの排出口内に抗菌フィルタを有するカプセルを概略的に示す図である。
【図2B】カプセルの排出口内に抗菌フィルタを有するカプセルを概略的に示す図である。
【図3A】カプセルの主区画部内に抗菌フィルタを有するカプセルを概略的に示す図であり、このフィルタは、プロバイオティックを含む別の区画部を画定する。
【図3B】カプセルの主区画部内に抗菌フィルタを有するカプセルを概略的に示す図であり、このフィルタは、プロバイオティックを含む別の区画部を画定する。
【図4A】プロバイオティックがカプセル又はマイクロカプセル内に封入された実施形態を示す図である。
【図4B】プロバイオティックがカプセル又はマイクロカプセル内に封入された実施形態を示す図である。
【図4C】プロバイオティックがカプセル又はマイクロカプセル内に封入された実施形態を示す図である。
【図5】カプセルの1つの区画部内にプロバイオティックを含む分割区画部カプセルを示す図である。
【図6A】プロバイオティックがカプセルの注入面に取り付けられたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図6B】プロバイオティックがカプセルの注入面に取り付けられたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図6C】プロバイオティックがカプセルの注入面に取り付けられたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図7A】プロバイオティックが層支持体内に配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図7B】プロバイオティックが層支持体内に配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図7C】プロバイオティックが層支持体内に配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図8A】プロバイオティックが中心区画部内に配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図8B】プロバイオティックが中心区画部内に配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図8C】プロバイオティックが中心区画部内に配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図9A】別の栄養原料を取り囲む外側区画部内にプロバイオティックが配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図9B】別の栄養原料を取り囲む外側区画部内にプロバイオティックが配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図9C】別の栄養原料を取り囲む外側区画部内にプロバイオティックが配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図10A】弁機構によって他の原料から分離された区画部内にプロバイオティックが配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図10B】弁機構によって他の原料から分離された区画部内にプロバイオティックが配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図10C】弁機構によって他の原料から分離された区画部内にプロバイオティックが配置されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図11A】プロバイオティックが排出スパウト(outlet spout)内に配置され、抗菌フィルタによって他の原料から分離されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図11B】プロバイオティックが排出スパウト内に配置され、抗菌フィルタによって他の原料から分離されたカプセルの一実施形態を示す図である。
【図12】プロバイオティックを含む同じチャンバ内で原料が一緒に混合されており、そのチャンバの上流側のカプセル内に抗菌フィルタが存在するカプセルの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
一般に、本発明は、多量養素原料と、プロバイオティック及び任意選択のプレバイオティックなどの熱感受性原料の両方を1つのカプセル内に有することを提案する。それにより、他の原料及び/又は水の中の望ましくない微生物を(例えば高温によって)殺し、或いは望ましくない微生物を(例えば機械的な濾過によって)カプセル内に拘束することを可能にする構成で、プロバイオティックをカプセル内に配置することができる。同時に、この殺菌又は濾過作用によって、(生きた又は生存可能な微生物である)プロバイオティックのCFU数又はカプセル内の他の熱感受性生物活性原料の生物活性が、過度に低下してはならない。
【0068】
最初に、プロバイオティックと組み合わせて使用することができるカプセル内の抗菌フィルタについて説明する。
【0069】
用語「抗菌フィルタ」は、機械的濾過又は他の汚染物質除去作用によって、フィルタの下流側の例えば細菌などの生きた微生物の数を大幅に減少させるフィルタを指す。この同じ用語は、微生物を拘束し、又は他の方法で微生物を不活性にする微細孔膜又は吸着性基質などの別の可能な濾過媒体をも包含する。
【0070】
本発明は一般に、飲料原料又は食品原料を含むカプセルに関し、具体的には、栄養原料を含む乳児用調製粉乳を含むカプセルに対して構成される。栄養原料には、乳清及びカゼインなどのタンパク質、乳脂肪及び植物性脂肪などの脂質、乳糖、ショ糖及び/又はマルトデキストリンなどの炭水化物源、並びに微量養素が含まれる。
【0071】
本発明に基づくこのようなカプセルは、好ましくは窒素などの保護ガスでフラッシングされた後に製造場所で密封され、関連する飲料又は液体食品製造装置内に置かれた後に開放されることが好ましい。カプセルは手動では開放されず、関連飲料製造装置の衛生的な部分及び/又はカプセルの内部機構によって開放されることが好ましい。この開放技法は、カプセルの内部が汚染される危険を低減させる。
【0072】
カプセルは、手動又は自動で飲料製造装置の1つのチャンバに供給される。カプセルは、そのチャンバ内の決められた位置に保持される。カプセルの内部への液体の供給及びカプセルからの栄養液体の放出は通常、カプセルがそのチャンバ内に固定されている間に実施される。
【0073】
栄養液体の製造は、例えば溶解、醸造、抽出、混合、懸濁など広範囲にわたる液体と原料との相互作用に基づくことができる。乳児用調製粉乳が粉末、顆粒、フレーク又は濃縮液原料としてカプセル内に存在する場合には、溶解及び懸濁が好ましい。
【0074】
カプセルは、カプセルの注入面において、装置の穿孔手段などの関連開放手段によって開放されることが好ましい。一方、カプセルの排出面に、カプセルの一体型開放手段又は飲料製造装置の部分である関連開放手段によって、開口をあけることができる。この開放手段は、カプセルの一面に穿孔する手段又は弁(例えばシリコーン製の隔壁)とすることができる。
【0075】
具体的な1つの開放機構は、カプセルの内部に発生させた圧力によって、開放しようとするカプセルの面を、一体型穿孔手段又は外部穿孔手段に押し付けるものである。この圧力は例えば、カプセルの注入面を通してカプセル内へ、例えば水などの液体を注入することによって発生させることができる。
【0076】
図1の実施形態によって説明する一体型開放機構を使用することが好ましい。この内部機構は特に、製造された液体が飲料製造装置の部分と接触することなく、製造された液体をカプセルから得ることができるいわゆる「ダイレクトフロー」カプセルに対して使用される。これは明らかに、注入した液体とカプセルに含まれる原料との間の相互作用によってカプセル内で飲料が還元された後に飲料が汚染される危険を低減させる。
【0077】
次に、一体型開放手段を有する閉じたカプセルの一例を、添付図面の図1を参照して簡単に説明する。
【0078】
図1は、形状安定な例えばプラスチックでできたカップ形のベース体10と、前記カップ形ベース体10の外周を形成する外周溶接縁13に溶接されたふた膜11とを備えるカプセル9を示す。ふた膜11は、例えばサンドイッチ箔又は金属箔から製作することができる。参照符号12は、フィルタ1の上流側のチャンバ内に配置された原料の全体を指す。この実施形態に基づくカプセル開放システムは、カップ形ベース体10の底に配置され、穿刺部材15を備えるディスク14からなる。穿刺部材15は、カップ形ベース体10とふた膜11とによって形成されたチャンバの中に封入される。このディスクはこのようにカップの底に配置され、したがって、抽出中に内圧が広げられうるより広い領域を形成する。抗菌フィルタ1とディスク14によって第2のチャンバ6が画定される。この第2のチャンバは、プロバイオティック微生物などの熱感受性生物活性原料を含むことができる。第2のチャンバは、第1のチャンバ12よりも小さな容積を有することができる。抽出時、飲料製造装置、すなわち飲料製造装置のカプセルホルダ61にカプセルを導入し、カプセル9内の上昇及び圧力の影響下で、膜11を穿孔する針(図示せず)を通して水を導入する。ディスク14は、保持部分すなわち穿刺可能な排出壁16に向かって下向きに押す力を受け、その結果、穿刺部材15が、カップ形ベース体10の保持部分16に穴をあけ、したがって、カプセル9の内部で製造された飲料を、穿孔された壁16の1つ又は複数の穴を通して放出することができる。熱感受性生物活性原料用の第2のチャンバは、ディスク14と下壁16との間に形成された空間内に形成することもできることに留意されたい。
【0079】
カプセルの他の実施形態では、ディスク14を、穿刺可能な排出壁16の下方のチャンバの外側に配置することができ、この場合、ディスク14の穿刺部材は上向きに配置され、壁に向かって上向きに押す力によって壁16を押す働きをする。この場合、穿刺可能壁を、カップ形ベースの外周縁に沿って内部的に密封された穿刺可能膜とすることができる。カップ形ベースはしたがって、カプセルから放出される液体を導くための開いた下出口を有することができる。このような実施形態は特に、EP1472156号の図6から13に関して詳細に記述されている。
【0080】
図1の参照符号1は、本発明に基づく抗菌又は抗菌フィルタを示す。
【0081】
図1から分かるとおり、このフィルタは、原料12の少なくとも一部分とカプセル9の排出口16との間に配置されている。
【0082】
好ましくは、この抗菌フィルタは、1μm未満、より好ましくは0.5μm未満、例えば0.2μmの公称孔径を有することができる。
【0083】
フィルタ1は、時に「微細孔フィルタ」とも呼ばれる膜フィルタであることが好ましい。例えば、このフィルタは、薄いポリマー層から製作することができ、500μm未満、好ましくは10〜300μmの厚さを有することができる。
【0084】
フィルタ1を横切る液体の流れを過度に妨げないように、抗菌フィルタ1は、高い空隙率(例えば全フィルタ表面積の最大70〜90%)を有することが好ましい。
【0085】
好ましくは、抗菌フィルタ1を、粉乳及び/又は細菌によって汚染されやすい他の乳児用調製粉乳成分を含むカプセルとともに使用することができる。
【0086】
次に、図2A〜2B及び3A〜3Bを参照して、本発明の他の実施形態を説明する。符号3の付いた矢印は、カプセル9の注入側(上端側)の例えば水などの液体の流入を表す。参照符号17は、カプセルの注入面に穴をあけ、液体を供給する手段を表し、この液体は、例えば加圧された熱い液体、好ましくは温水とすることができる。
【0087】
図2A〜2B及び3A〜3Bは、カプセルのより概略的な形態において、すなわち上述のカプセルの開放モードを明確に示すことなく、本発明の原理を示す。
【0088】
図2A〜2Bの実施形態では、抗菌フィルタ1が、カプセル9の排出スパウト4内に配置される。この場合、カプセル内に、飲料原料で少なくとも部分的に満たされた1つの主区画部5だけを形成することができる。フィルタ1の下に、スパウトは、熱感受性生物活性原料、具体的にはプロバイオティック6を含む管状リザーバを備える。このリザーバは、下膜16によって密封することができ、下膜16は、使用前に穿孔又は破壊され、或いはカプセル内の加圧された液体の効果によって穿孔される。
【0089】
注入液体3の圧力は、フィルタ1を通した液体3と区画部5内の原料との相互作用によって製造された飲料を押すのに十分である。
【0090】
図2B及び3Bに示すように、次いで、製造された液体を、カプセル9の排出面の下に置かれた哺乳ボトル2の中へ直接に流入させる(例えば滴下する)ことができる。
【0091】
図3A〜3Bの実施形態では、カプセル9の排出スパウト4と原料用の主区画部5との間に第2の区画部6が形成されるように、抗菌フィルタ1が配置される。必要な場合には、この第2の区画部6も、少なくとも部分的に、原料、特に細菌汚染を受けない原料又は区画部5内の原料に比べて細菌汚染を受けにくい原料で満たすことができる。
【0092】
図3A〜3Bの実施形態の抗菌フィルタ1は、カプセル9の内部を完全に横断し、図2の実施形態の抗菌フィルタ1は、カプセル9の内部の(上から見た)断面の一部分だけを覆って広がる。
【0093】
図3A〜3Bの実施形態では、抗菌フィルタが、カプセル9の底20から間隔を置いて位置する。この場合には、フィルタ膜を支持し、カプセル内の液体の圧力でフィルタ膜が裂けるのを防ぐバッキング壁を使用することが好ましい。バッキング壁は例えば、フィルタ膜の下に置かれたプラスチック又は金属の格子とすることができる。
【0094】
抗菌フィルタ1をカプセル9の底20に置き、底20を完全に又は部分的に覆うこともできることに留意されたい。抗菌フィルタ1は、底20の表面全体にわたって、又は例えば底20の縁部分など底20の一部分だけに対してシールすることができる。
【0095】
抗菌フィルタ1は、カプセル9の壁18の内側に固定する(例えば19の位置でシールする)ことが好ましい。シール19は例えば、超音波溶接、接着、プレスばめなどによって実行することができる。このシールは、フィルタ1とカプセル9の壁の内側との間の潜在的な隙間の間を飲料が流れることができないことを保証する。
【0096】
図3A〜3Bから明らかなように、第2の区画部6、すなわちフィルタ1の下流側に収蔵された原料は、抗菌フィルタによって濾過されず、濾過されることなく容器(ボトル)2に到達する。
【0097】
カプセルの主区画部5の上方のふた膜の近くに抗菌フィルタ1を配置することもできることに留意されたい。この場合、区画部5は、熱感受性生物活性原料を含む全ての原料を含む。
【0098】
本発明によれば、プロバイオティック微生物は、カプセル内での貯蔵中の低a(水分活性)条件において、生存可能な状態に保たれることが好ましい。一般に、プロバイオティック微生物は、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって、粉末を形成するように処理される(EP0818529)。
【0099】
図4A〜4Cは、本発明のカプセル9内にプロバイオティック微生物21を配置する方法に関する他の実施形態を示す。この実施形態では、プロバイオティック21が、カプセル24の中に封入される。すなわち、密封されたカプセル封入壁24によって取り囲まれる。カプセルは、熱い液体の存在下で分解する材料から形成することができる。
【0100】
このプロバイオティックのカプセル封入は本質的に、巨視的カプセル封入であり、熱溶解液体の湿性熱からプロバイオティックを十分に保護するため、そのサイズは数ミリメートル程度である。
【0101】
図4A〜4Cは、2つの液体流17、22が逐次的に、又は好ましくは並列に、内部又はカプセル9に独立に供給される本発明の他の態様を示す。これらの液体流は、例えばそれぞれ20℃及び80℃の異なる温度を有する。異なる温度を有する液体を並列に又は逐次的にカプセル9の内部へ独立に供給するときには、最初に、高温の流れを内部に供給し、それによってこの高温液体と栄養原料12とを相互作用させる。時間がたつにつれて、カプセル9の内部のこの高温液体はさらに、プロバイオティック微生物21を包み込んだカプセル封入壁24の分解(例えば可溶化又は分散)或いは穿孔を生じさせる。
【0102】
図4A〜4Cに示すように、カプセル封入壁24が消失し、又は少なくとも透過性となったときに、低温注入22を開始して、この低温環境内のプロバイオティック微生物21を容器2内へ流入させる。容器2内では、微生物が分散したこの低温液体が、既に存在する高温栄養液体と混合される。
【0103】
この高温及び低温供給液体の温度及び体積はそれぞれ、プロバイオティックを含むその結果得られる混合された栄養液体が、例えば子供が容易に摂取できるように、例えば30℃〜50℃程度の温度を有するように設定する。
【0104】
図4A〜4Cでは、異なる温度を有する異なる2つの液体流の供給が、別個の独立した供給17、22として示されているが、第1の段階において、第1の温度を有する第1の液体流がカプセル9の内部に供給され、第2の段階において、異なる温度を有する第2の液体流がカプセル9の内部に供給されるように、単一の液体供給を制御することができることを理解されたい。これは例えば、供給液体を加熱する手段並びに例えば(例えば加圧された)液体をカプセル9に送出するポンプを制御する制御回路によって実行することができる。
【0105】
図5の実施形態では、カプセルの内側に、栄養原料12をプロバイオティック微生物21から分離する垂直分離壁23が配置される。
【0106】
この場合、プロバイオティック21用の区画部内への液体の低温注入22と、別の栄養原料12を有する区画部内への高温注入17とを同時に実施することができる。区画部壁23は、液体に対して完全に不透過性とすることができ、したがって、プロバイオティックを含む区画部を、プロバイオティックが高温液体と接触することを防ぐのに十分な程度に隔離する。
【0107】
図6A〜6Cは、カプセル9の上面に取り付けられた区画部内にプロバイオティック21が含まれる実施形態を示す。プロバイオティックは例えば軟質膜25の中に入れることができる。
【0108】
この場合もやはり、第1の液体注入手段17が、栄養原料12を有する主区画部内に高温液体を注入するように設計され、同時に、第2の液体注入手段18が、プロバイオティックがその中に配置された膜25によって閉じられた中心区画部内に、より低温の液体を注入することが好ましい。
【0109】
注入手段17によって注入される高温液体は、例えば粉乳などのインスタント調製粉乳原料でありうる原料12中に偶発的に存在する望ましくない微生物を破壊する。この場合、高温注入17によって粉乳が溶解される。
【0110】
注入手段18によって導入される低温注入液体は、カプセルの中央の膜を破壊し、カプセル内にプロバイオティックを放出する。
【0111】
プロバイオティックは、低温液体、例えば20℃の水とともに容器2に運ばれる。この場合もやはり、容器2内には、所望の(摂取可能な)温度を有する混合液体が存在する。
【0112】
具体的には、液体と混合された原料をカプセルから逐次的に放出するため、高温液体の注入を実施してから、低温液体を注入することができる。この場合、プロバイオティックは、高温液体と決して接触せず、そのため、カプセルから送出されるときにプロバイオティックの十分な完全性が保証される。
【0113】
図7A〜7Cは、層支持体26の中にプロバイオティック21が配置された本発明に基づくカプセルの一実施形態を示す。
【0114】
この場合もやはり、(中心から外れた)高温注入17が原料12中の病原体を殺し、例えば粉乳などのインスタント調製粉乳でありうるこれらの原料12を溶解する。
【0115】
カプセル9の中心領域での低温注入18によって、層構造物26が開く。すなわち、層構造物26は強制的に開かれ、プロバイオティック21を放出する。
【0116】
この場合もやはり、プロバイオティックは、低温液体とともに容器2内へ運ばれる。
【0117】
図8A〜8Cは、カプセル9の中心区画部27内にプロバイオティック21が配置された例を示す。中心区画部27は、カプセル9の主区画部によって取り囲まれており、主区画部は栄養原料を含む。
【0118】
この場合もやはり、中心領域において、したがってプロバイオティック21用の区画部内へ、低温注入が実施される。プロバイオティックは、中心領域に注入された低温液体とともに容器2に運ばれる。
【0119】
図9A〜9Cは、カプセル9の中心区画部内に栄養原料12が配置され、中心から外れた区画部、例えば栄養原料12用の主区画部を取り囲む区画部内にプロバイオティック12が配置された実施形態を示す。この例では、中心から外れた低温液体18の注入よりも中心に近い位置で、高温注入17を実施することができる。
【0120】
カプセル9に中心排出口4が設けられる場合には、プロバイオティック区画部と主原料区画部の間の分離壁28を、溶解又は分散によって穿孔され、又は多孔質となり、或いは消失する(貫通穴を示す参照符号29を参照されたい)ように構成し、それにより、プロバイオティックが最初に低温液体とともにカプセルの排出口4に運ばれ、次いで容器2に運ばれることを保証することができる。プロバイオティックによる分離壁の通過を制御する、例えば遅らせるため、分離壁28はさらに、制御された空隙率を有することができる。
【0121】
図10A〜10Cは、垂直分離壁23によって、第1の区画部内のプロバイオティック21が第2の区画部内の栄養原料12から分離された例を示す。この実施形態では、符号30で全体が示された弁機構が予見され、プロバイオティック21用の小さなチャンバ内への低温注入を実施したときに、圧力によって弁30が活動化して(開いて)、プロバイオティック21を放出することができ、プロバイオティック21は、低温液体とともに容器2へ運ばれる。例えば、この弁は、スリット弁又はダイヤフラム弁などの一方向シリコーン弁とすることができる。
【0122】
最後に、図11A〜11Bの実施形態は、液体注入が1回だけ実施される構成を示す。この単一の液体注入は、子供又は高齢者にも容易に摂取することができる温度で実施されることが好ましい。この温度は30℃〜50℃である。
【0123】
この例では、カプセル9の排出スパウト4内にプロバイオティックが配置され、このプロバイオティックは、抗菌フィルタ1によって、望ましくない微生物を含む原料12から分離される。
【0124】
最後に、図12は、カプセルが原料を含むチャンバ5を1つだけ有するカプセル9の他の実施形態を提案する。したがって、このチャンバは、主栄養原料、すなわちタンパク質、炭水化物、脂質、微量養素などを保持し、さらに、プロバイオティックなどの熱感受性生物活性原料を保持する。このカプセルはさらに、チャンバの上流側の好ましくはふた膜とチャンバの間に置かれた抗菌フィルタを備える。これまでに説明した実施形態と同様に、カプセルの底面にあるカプセルの開放及び/又は濾過構造は省略されている。この場合、熱感受性原料が分解され、殺され又は他の方法で不活化されやすい温度よりも低い温度の液体、好ましくは水を供給する針により、注入ふた11を通した単一の液体注入が実施される。この液体は、1つの流れとして、約35(+/−5)℃の温度でカプセル内に供給されることが好ましい。フィルタを切り裂く危険性なしで針を挿入することを保証するため、ふた11とフィルタ1の間にある隙間が維持される。この場合、カプセルに注入された液体がチャンバ5内の原料と混合される前に、フィルタ1によって、この液体が望ましくない微生物から除去される。
【0125】
当然ながら、本発明は、添付の特許請求の範囲を逸脱しない多くの可能な変型及び改良を包含する。例えば、カプセルの穿孔可能なふたの代わりに、注入穴が予めあけられたふたを使用することもできる。したがって、針として形成されていない管によって、カプセル内に液体を供給することができる。例えば、底開放構造の代わりに、液体を濾過する単純な開口を使用することもできる。カプセルは、必要ならば不活性ガスでフラッシングすることができる気密性のパッケージに入れて、包装又は梱包することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料製造装置において使用されるカプセルであって、
当該カプセル(9)の注入面(8)にて当該カプセル(9)内に液体が供給されたときに栄養液体を製造するための原料を内含し、
さらに、熱感受性生物活性成分を内含し、
前記熱感受性生物活性成分が前記原料の少なくとも一部分から物理的に分離されている、カプセル。
【請求項2】
前記物理的分離が、液体に対して透過性又は不透過性の少なくとも1つの分離壁によって、又は前記熱感受性生物活性成分のカプセル封入によって達成された、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記熱感受性生物活性成分がプロバイオティック微生物である、請求項2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記分離が抗菌フィルタによって達成された、請求項3に記載のカプセル。
【請求項5】
前記抗菌フィルタの孔径が1μm未満、好ましくは0.5μm未満、よりいっそう好ましくは0.3μm未満である、請求項4に記載のカプセル。
【請求項6】
前記プロバイオティック微生物が、当該カプセル内の前記抗菌フィルタの下流側の区画部内に配置された、請求項4又は5に記載のカプセル。
【請求項7】
前記プロバイオティック微生物を含む前記区画部がさらに、カプセル封入された脂肪を内含する、請求項6に記載のカプセル。
【請求項8】
前記熱感受性生物活性成分が、ラクトフェリン、免疫グロブリン、乳脂肪球膜分画(FGM)、TGF−ベータなどの増殖因子、DHA、DGLA及びこれらの組合せを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項9】
前記分離壁が、当該カプセルの内側の少なくとも2つの区画部を分離する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項10】
前記分離壁が、当該カプセルの注入面又は排出面に取り付けられた、前記熱感受性生物活性成分を含む区画部を形成する、請求項9に記載のカプセル。
【請求項11】
前記分離壁が、当該カプセルの前記注入面から前記排出面へ移動する前記液体の流路を横切って横に広がり、又は、当該カプセル内において、前記注入面から前記排出面への当該カプセル内の前記流路の方向に沿って縦に広がる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項12】
前記分離壁が、当該カプセルの横断図において、前記原料の半径方向内側又は外側に配置された1つ又は複数の区画部を形成する、請求項9に記載のカプセル。
【請求項13】
前記原料が乳児用調製粉乳を形成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項14】
飲料製造装置において使用されるカプセルであって、
当該カプセルの注入面にて当該カプセル内に液体が供給されたときに栄養液体を製造するための原料を内含し、
抗菌フィルタを備え、
さらに、前記抗菌フィルタを通過する液体の流れに関して下流側に置かれた区画部内にプロバイオティック微生物を内含する、カプセル。
【請求項15】
カプセルに含まれる原料から栄養液体を製造するための飲料製造装置であって、
液体を加熱する手段と、
加熱した前記液体を前記カプセル内に供給する手段と
を備え、
異なる温度を有する少なくとも2つの別個の液体流を、当該飲料製造装置内に収容された単一のカプセル内へ並列に供給するように設計された、飲料製造装置。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のカプセル(9)と、飲料製造装置とを備える飲料製造システムであって、
前記飲料製造装置が、
液体を加熱する手段と、
加熱した前記液体を前記カプセル内へ供給する手段と
を備え、
前記飲料製造装置が、異なる温度を有する少なくとも2つの別個の液体流を、該飲料製造装置内に収容された単一のカプセル内へ、逐次的に又は並列に供給するように設計された、飲料製造システム。
【請求項17】
飲料製造装置内において、カプセルに含まれる熱感受性生物活性成分を含む原料から、栄養液体を送出する方法であって、
前記飲料製造装置内において液体を加熱するステップと、
加熱した前記液体を前記カプセル内に注入するステップと
を含み、
前記注入するステップが、異なる温度を有する少なくとも2つの別個の液体流を、前記装置内に収容された単一のカプセル内へ、逐次的に又は並列に供給することを含む、方法。
【請求項18】
より低温の液体流が、前記熱感受性生物活性成分を含む区画部内へ、又はこの区画部を通して注入される、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−509677(P2011−509677A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543452(P2010−543452)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050151
【国際公開番号】WO2009/092628
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】