説明

核医学イメージング装置および画像処理プログラム

【課題】核医学画像の部分容積効果を精度よく簡易に補正すること。
【解決手段】設定情報記憶部27aは、リカバリー係数、応答関数および分割数を記憶する。推定値算出部27cは、最大値抽出部27bが補正対象SPECT画像にて設定された腫瘍領域の画素値から抽出した最大値にリカバリー係数を乗算して推定値を算出する。第一画像群生成部27dは、推定値である上限値を分割数にて分割した複数の値それぞれが腫瘍領域を構成する各画素の画素値とする複数の画像を第一画像群として生成する。第二画像群生成部27eは、第一画像群の各画像に対して応答関数を用いた処理を行なって第二画像群を生成する。補正SPECT画像生成部27gは、補正画像選択部27fが腫瘍領域との間で算出した差分情報が最小となる第二画像群の画像として選択した腫瘍領域補正画像を腫瘍領域と置換して補正SPECT画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、核医学イメージング装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置)などの核医学診断装置は、被検体の生体組織における機能診断を行なうことができる医用画像診断装置として、今日の医療現場において広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
核医学診断装置は、被検体に投与され、被検体の生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品から放射されるガンマ線を検出器により検出し、検出したガンマ線の線量分布から核医学画像を生成する。具体的には、SPECT装置やPET装置は、検出器が検出したガンマ線の線量分布から投影データを生成し、生成した投影データを逆投影処理することで、被検体に投与した放射性医薬品の体内分布が描出された断層画像である核医学画像(SPECT画像やPET画像)を再構成する。すなわち、SPECT装置やPET装置は、放射性医薬品を取り込んだ腫瘍組織の分布が描出された核医学画像を再構成することで、画像診断を行なう医師に対して、被検体の生体組織における機能情報を提供する。
【0004】
核医学画像の位置分解能は、検出器の性能やデータの収集法などといった核医学診断装置のシステム構成により定まる値である。ここで、核医学画像の位置分解能は、一般的に、大きい値(例えば、1cmなど)となるため、核医学画像においては、部分容積効果(PVE:Partial Volume Effect)と呼ばれる現象が起こることが知られている。
【0005】
PVEは、位置分解能の乏しさにより、核医学画像の画素値が、放射性物質が集積しているホット領域で小さい値(過小評価)となり、放射性物質が集積していないコールド領域で大きい値(過大評価)となる現象である。すなわち、放射性医薬品の体内分布を正確に測定するためには、核医学画像において、PVEによる画素値の変化を補正(PVE補正)する必要がある。
【0006】
このため、核医学画像にてホット領域と判定される領域の体積と、位置分解能とから、ホット領域の画素値を真の値となるように補正を行なうためのリカバリー係数を予め算出しておき、リカバリー係数を画素値に乗算することで、PVE補正を行なう技術が知られている。しかし、リカバリー係数を用いた核医学画像のPVE補正は、放射性物質が体内で一点のみに集積している場合有効であるが、実際には、放射性物質が体内で一点のみに集積していることはありえないため、実用的な補正技術ではない。
【0007】
そこで、デコンボリューション法(Deconvolution法)により、核医学画像のPVE補正を行なう技術が知られている。上述したように、核医学画像の位置分解能は、核医学診断装置のシステム構成により既知であり、デコンボリューション法による核医学画像のPVE補正では、位置分解能で決まる分布関数により逆重畳積分処理が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−107995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記したデコンボリューション法は、以下に説明する要因により、核医学画像のPVEを精度よく簡易に補正することができないといった課題があった。すなわち、デコンボリューション法は、高周波強調フィルターのため、ノイズが強調されてしまい、デコンボリューション法による核医学画像のPVE補正では、核医学画像のS/N比が悪くなってしまう場合があった。
【0010】
また、デコンボリューション法は、無限に細かいサンプリングの場合にのみ成立する補正処理であるが、デコンボリューション法による核医学画像のPVE補正では、画素(ピクセル)単位の有限なサンプリングであるため、核医学画像のS/N比が悪くなってしまう場合があった。
【0011】
また、デコンボリューション法による核医学画像のPVE補正では、補正処理における制約条件を付加できないため、補正処理に要する計算量が膨大となってしまう場合があった。
【0012】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、核医学画像の部分容積効果を精度よく簡易に補正することが可能となる核医学イメージング装置および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を生成する核医学イメージング装置であって、前記核医学画像にて設定された関心領域を構成する画素の画素値から最大値を抽出する最大値抽出手段と、自装置の位置分解能に起因する画素値低下が生じても、前記最大値抽出手段によって抽出された前記最大値が得られることが推定される推定値を、当該位置分解能から定まる所定の係数を用いて算出する推定値算出手段と、前記推定値算手段によって算出された前記推定値を上限値とし、当該上限値を予め設定された分割数にて分割した複数の値を決定し、当該決定した複数の値それぞれが前記関心領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像を第一の画像群として生成する第一の画像群生成手段と、前記第一の画像群生成手段によって生成された前記第一の画像群の各画像に対して、前記位置分解能によって定まる応答関数を用いた画質劣化処理を行なうことで、第二の画像群を生成する第二の画像群生成手段と、前記第二の画像群生成手段によって生成された前記第二の画像群の各画像と前記関心領域との間で対応する画素の画素値を差分して差分情報を算出し、当該算出した差分情報が最小となる画像を前記関心領域が補正された補正画像として選択する補正画像選択手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4記載の本発明は、被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することで生成された核医学画像の画像処理を行なう画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムであって、前記核医学画像にて設定された関心領域を構成する画素の画素値から最大値を抽出する最大値抽出手順と、前記核医学画像を生成した核医学イメージング装置の位置分解能に起因する画素値低下が生じても、前記最大値抽出手順によって抽出された前記最大値が得られることが推定される推定値を、当該位置分解能から定まる所定の係数を用いて算出する推定値算出手順と、前記推定値算手順によって算出された前記推定値を上限値とし、当該上限値を予め設定された分割数にて分割した複数の値を決定し、当該決定した複数の値それぞれが前記関心領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像を第一の画像群として生成する第一の画像群生成手順と、前記第一の画像群生成手順によって生成された前記第一の画像群の各画像に対して、前記位置分解能によって定まる応答関数を用いた画質劣化処理を行なうことで、第二の画像群を生成する第二の画像群生成手順と、前記第二の画像群生成手順によって生成された前記第二の画像群の各画像と前記関心領域との間で対応する画素の画素値を差分して差分情報を算出し、当該算出した差分情報が最小となる画像を前記関心領域が補正された補正画像として選択する補正画像選択手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1または4の発明によれば、核医学画像の部分容積効果を精度よく簡易に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施例におけるSPECT装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、画像処理部の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、腫瘍領域の設定を説明するための図である。
【図4】図4は、設定情報記憶部を説明するための図である。
【図5】図5は、最大値抽出部、推定値算出部、第一画像群生成部および第二画像群生成部を説明するための図である。
【図6】図6は、補正画像選択部を説明するための図である。
【図7】図7は、補正SPECT画像生成部を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施例におけるSPECT装置の画像処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、本実施例における変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る核医学イメージング装置および画像処理装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明を、核医学イメージング装置であるシングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置)に適用した場合について説明する。
【実施例】
【0018】
まず、本実施例におけるSPECT装置の構成について説明する。図1は、本実施例におけるSPECT装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施例におけるSPECT装置は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
【0019】
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品から放射されるガンマ線を検出して投影データを収集する装置であり、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、ガンマカメラ14と、カメラ駆動部15とを有する。なお、架台装置10は、図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
【0020】
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23の制御のもと、寝台12を移動することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0021】
ガンマカメラ14は、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品の核種(RI:Radio Isotope)から放射されるガンマ線の強度分布を2次元的に検出し、検出した2次元ガンマ線強度分布データを、例えば、増幅処理、A/D変換処理することで投影データを生成する装置であり、生成した投影データを後述するデータ収集部25に送信する。例えば、ガンマカメラ14は、放射されたガンマ線を紫外領域にピークを持つ光に変換するシンチレータと、シンチレータからの発光を増倍して電気信号に変換する半導体素子アレイである光電子倍増管(PMT:Photomultiplier Tube)とを有する。なお、本実施例では、ガンマカメラ14が一台のみ設置される場合について説明するが、本発明は、ガンマカメラ14が複数台設置される場合であっても適用可能である。
【0022】
カメラ駆動部15は、後述するカメラ制御部24の制御のもと、ガンマカメラ14を移動させる装置である。例えば、カメラ駆動部15は、ガンマカメラ14を架台装置10の撮影口内に沿って回転駆動させ、これにより、ガンマカメラ14は、被検体Pの周囲を回転して、360度の方向における投影データを生成する。
【0023】
コンソール装置20は、操作者によるSPECT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された投影データから被検体Pに投与した放射性医薬品の体内分布が描出された断層画像である核医学画像(SPECT画像)を再構成する装置である。
【0024】
具体的には、コンソール装置20は、図1に示すように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、カメラ制御部24と、データ収集部25と、画像再構成部26と、画像処理部27と、データ記憶部28と、システム制御部29とを有し、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0025】
入力部21は、SPECT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボードなどを有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部29に転送する。
【0026】
なお、本実施例において、入力部21が操作者から受け付ける各種指示および各種設定の情報については、のちに詳述する。
【0027】
表示部22は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部29による制御のもと、SPECT画像などを操作者に表示したり、入力部21を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0028】
データ収集部25は、ガンマカメラ14から送信された投影データを収集し、収集した投影データそれぞれに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正などの補正処理を行なって補正処理済み投影データを生成し、生成した補正処理済み投影データをデータ記憶部28に格納する。
【0029】
画像再構成部26は、データ記憶部28から補正処理済み投影データを読み出し、読み出した補正処理済み投影データ(例えば、360度方向分の補正処理済み投影データ)を逆投影処理することで、SPECT画像を再構成する。そして、画像再構成部26は、再構成したSPECT画像をデータ記憶部28に格納する。
【0030】
画像処理部27は、データ記憶部28からSPECT画像を読み出し、読み出したSPECT画像に対して画像処理を行ない、画像処理済みSPECT画像をデータ記憶部28に格納する。なお、本実施例の画像処理部27が実行する画像処理の内容については、のちに詳述する。
【0031】
システム制御部29は、架台装置10およびコンソール装置20の動作を制御することによって、SPECT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部29は、寝台制御部23およびカメラ制御部24を制御することで、架台装置10における投影データの収集処理を実行させる。また、システム制御部29は、データ収集部25の補正処理と、画像再構成部26および画像処理部27の画像生成処理を制御することで、コンソール装置20における画像処理全体を制御する。また、システム制御部29は、データ記憶部28が記憶する画像(SPECT画像および画像処理済みSPECT画像)を、表示部22に表示するように制御する。
【0032】
ここで、核医学画像であるSPECT画像の位置分解能は、ガンマカメラ14の性能や投影データの収集法、SPECT画像の再構成法など、SPECT装置のシステム構成により定まる値である。そして、核医学画像においては、位置分解能の乏しさにより、部分容積効果(PVE:Partial Volume Effect)と呼ばれる現象が起こることが知られている。PVEは、核医学画像の画素値が、放射性物質が集積しているホット領域で小さい値(過小評価)となり、放射性物質が集積していないコールド領域で大きい値(過大評価)となる現象であり、放射性物質の体内分布を正確に判断するためには、PVEを補正する必要がある。
【0033】
そこで、本実施例におけるSPECT装置は、以下、詳細に説明する画像処理部27の画像処理により、核医学画像(SPECT)の部分容積効果を精度よく簡易に補正することが可能となることに主たる特徴がある。
【0034】
この主たる特徴について、図2〜7を用いて説明する。なお、図2は、画像処理部の構成を説明するための図であり、図3は、腫瘍領域の設定を説明するための図であり、図4は、設定情報記憶部を説明するための図であり、図5は、最大値抽出部、推定値算出部、第一画像群生成部および第二画像群生成部を説明するための図であり、図6は、補正画像選択部を説明するための図であり、図7は、補正SPECT画像生成部を説明するための図である。
【0035】
図2に示すように、本実施例における画像処理部27は、設定情報記憶部27aと、最大値抽出部27bと、推定値算出部27cと、第一画像群生成部27dと、第二画像群生成部27eと、補正画像選択部27fと、補正SPECT画像生成部27gとを有する。
【0036】
まず、画像処理部27による処理を開始するために、操作者は、入力部21を介して、PVEの補正対象となるSPECT画像の表示要求を入力する。そして、システム制御部29は、入力部21から転送された表示要求に該当するSPECT画像(補正対象SPECT画像)をデータ記憶部28から読み出し、表示部22のモニタにて表示させる。
【0037】
そして、操作者は、図3に示すように、表示部22のモニタに表示された補正対象SPECT画像を参照し、PVE補正を行なう関心領域である腫瘍領域の設定を行なう。すなわち、操作者は、補正対象SPECT画像にてRIが集積されていることから腫瘍であると推定した腫瘍領域における放射性医薬品の正確な分布を得るために、推定した腫瘍領域を、PVE補正を限定して行なう関心領域として設定する。
【0038】
なお、本実施例では、補正対象SPECT画像にて腫瘍領域が設定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、補正対象SPECT画像と同一断面にてX線CT装置が被検体Pを撮影したX線CT画像を参照することで操作者が腫瘍であると推定した腫瘍領域が、補正対象SPECT画像における腫瘍領域として設定される場合であってもよい。また、腫瘍領域を推定する画像は、補正対象SPECT画像と同一断面にてMRI装置が被検体Pを撮影したMRI画像である場合であってもよい。
【0039】
また、本発明は、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT―CT装置において、被検体Pの同一断面を撮影したSPECT画像およびX線CT画像を再構成し、補正対象SPECT画像と同時に再構成されたX線CT画像を参照することで操作者が腫瘍であると推定した腫瘍領域が、補正対象SPECT画像における腫瘍領域として設定される場合であってもよい。
【0040】
図2に戻って、設定情報記憶部27aは、推定値算出部27c、第一画像群生成部27dおよび第二画像群生成部27eの処理に用いられる設定情報を記憶する。具体的には、設定情報記憶部27aは、図4の(A)に示すように、「リカバリー係数:R」と、「分割数:n」と、「応答関数:h(t)」とを設定情報として記憶する。なお、設定情報は、予め操作者により入力部21を介して入力され、システム制御部29により、設定情報記憶部27aに格納される。
【0041】
ここで、「リカバリー係数:R」は、SPECT装置の位置分解能から定まる数値であり、具体的には、図4の(B)に示すように、位置分解能の乏しさにより、RI集積部位の画素値が過小評価され、RI非集積部位の画素値が過大評価されることで広がった分布状態となった画素値分布が、体内で一点に集積したRIに由来する画素値分布であると仮定した場合の理想値となるように補正するための値である。例えば、リカバリー係数は、画素値に乗算することで理想値となる値として設定される。
【0042】
また、「応答関数:h(t)」は、SPECT装置の位置分解能から定まる関数であり、具体的には、ガンマ線の周波数(t)方向における真の強度分布が、実際に実測された場合の強度分布を推定するために用いられ、例えば、図4の(C)に示すような関数となる。すなわち、ガンマ線の周波数方向における真の強度分布は、実測された場合、位置分解能により「ぼけた強度分布」となるが、「応答関数:h(t)」は、位置分解能による強度分布の「ぼけ」を定義するための関数であり、一般的に、コンボリューション法(Convolution法)において用いられる関数である。なお、図4の(A)に示す「分割数:n」については、のちに詳述する。
【0043】
図2に戻って、最大値抽出部27bは、図5の(A)に示すように、補正対象SPECT画像にて設定された腫瘍領域を構成する画素の画素値から最大値(Pmax)を抽出する。
【0044】
図2に戻って、推定値算出部27cは、図5の(B)に示すように、最大値抽出部27bによって抽出された最大値(Pmax)に、設定情報記憶部27aが記憶するリカバリー係数(R)を乗算することで推定値(Imax=Pmax×R)を算出する。すなわち、推定値算出部27cは、腫瘍領域を構成する一つの画素に、当該腫瘍領域に対応する被検体Pの組織内に集積しているRIが集中して存在すると仮定した場合、SPECT装置の位置分解能に起因する画素値低下が生じても、「Pmax」が得られることが推定される推定値として、「Imax=Pmax×R」を算出する。
【0045】
図2に戻って、第一画像群生成部27dは、推定値算出部27cによって算出された推定値「Imax」を上限値とし、当該上限値を設定情報記憶部27aが記憶する「分割数:n」にて分割した「n個の値」を決定する。例えば、第一画像群生成部27dは、「分割数:100」である場合、図5の(C)に示すように、上限値を「Imax」とし、下限値を「0」としたうえで、「0〜Imax」の範囲内の値を100段階に分割することで、「100個の値」を決定する。なお、下限値は、「0」である場合に限定されるものではなく、例えば、上限値の「0.5%」に対応する値として設定される場合であってもよい。
【0046】
そして、第一画像群生成部27dは、決定した「n個の値」それぞれが腫瘍領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像を第一画像群として生成する。例えば、図5の(C)に示すように、第一画像群生成部27dは、腫瘍領域を構成する画素数が「k」である場合、決定した「100個の値」それぞれを各画素の画素値とする「100個」の画像からなる第一画像群を生成する。
【0047】
図2に戻って、第二画像群生成部27eは、第一画像群生成部27dによって生成された第一画像群の各画像に対して、設定情報記憶部27aが記憶する「応答関数:h(t)」を用いた処理を行なうことで、第二画像群を生成する。すなわち、第二画像群生成部27eは、図5の(D)に示すように、位置分解能により定まる「応答関数:h(t)」により、第一画像群の各画像の画質を位置分解能に応じて劣化させる(ぼかす)ことで、「100個」の画像からなる第二画像群を生成する。なお、応答関数を処理した場合、第二画像群の各画像の位置分解能は、低下することなく、第一画像群の各画像の位置分解能と同じとなる。
【0048】
図2に戻って、補正画像選択部27fは、第二画像群生成部27eによって生成された第二画像群の各画像と腫瘍領域との間で対応する画素の画素値を差分して差分情報を算出する。例えば、補正画像選択部27fは、図6に示すように、第二画像群の各画像と腫瘍領域との間で対応する画素の画素値の差分値から、第二画像群の各画像における平均二乗誤差の平方根 (RMSE:Root Mean-Square Error)を算出する。
【0049】
そして、補正画像選択部27fは、図6に示すように、算出したRMSEが最小となる画像を、腫瘍領域がPVE補正された腫瘍領域補正画像として選択する。
【0050】
図2に戻って、補正SPECT画像生成部27gは、補正画像選択部27fによって選択された腫瘍領域補正画像を腫瘍領域と置換することで、補正対象SPECT画像が補正された補正SPECTを生成する。すなわち、補正SPECT画像生成部27gは、図7に示すように、補正画像選択部27fによって選択された腫瘍領域補正画像(図6参照)を、操作者によって補正対象SPECT画像にて設定された腫瘍領域(図3参照)と置換することで、補正SPECT画像を生成する。
【0051】
そして、システム制御部29は、補正SPECT画像生成部27gによって生成された補正SPECT画像を表示部22のモニタにて表示させる。なお、補正画像選択部27fおよび補正SPECT画像生成部27gそれぞれは、腫瘍領域補正画像および補正SPECT画像それぞれをデータ記憶部28に格納しており、システム制御部29は、補正画像選択部27fによって選択された腫瘍領域補正画像をモニタにて表示させることも可能である。
【0052】
次に、図8を用いて、本実施例におけるSPECT装置の画像処理について説明する。図8は、本実施例におけるSPECT装置の画像処理を説明するためのフローチャートである。
【0053】
図8に示すように、本実施例におけるSPECT装置は、操作者から入力部21を介して、補正対象SPECT画像の表示要求を受け付けると(ステップS101肯定)、システム制御部29は、データ記憶部28から補正対象SPECT画像を読み出して、表示部22のモニタにて表示するように制御する(ステップS102)。
【0054】
そして、システム制御部29は、表示部22のモニタにて表示された補正対象SPECT画像を参照する操作者から腫瘍領域が設定されたか否かを判定する(ステップS103)。
【0055】
腫瘍領域が設定されない場合(ステップS103否定)、システム制御部29は、ステップS103における判定処理を継続する。
【0056】
一方、腫瘍領域が設定された場合(ステップS103肯定)、システム制御部29の制御により、最大値抽出部27bは、補正対象SPECT画像にて設定された腫瘍領域を構成する画素の画素値から最大値(Pmax)を抽出する(ステップS104)。
【0057】
そして、推定値算出部27cは、最大値抽出部27bによって抽出された最大値(Pmax)に、設定情報記憶部27aが記憶するリカバリー係数(R)を乗算することで推定値(Imax=Pmax×R)を算出する(ステップS105)。
【0058】
そののち、第一画像群生成部27dは、推定値算出部27cによって算出された推定値「Imax」を上限値とし、当該上限値を設定情報記憶部27aが記憶する「分割数:n」にて分割した複数の値(n個の値)を決定する(ステップS106)。
【0059】
続いて、第一画像群生成部27dは、決定した複数の値(n個の値)それぞれが腫瘍領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像からなる第一画像群を生成する(ステップS107)。
【0060】
そして、第二画像群生成部27eは、第一画像群生成部27dによって生成された第一画像群の各画像に対して、設定情報記憶部27aが記憶する「応答関数:h(t)」を用いた処理を行なうことで、第一画像群の各画像を位置分解能に応じて「ぼかした」第二画像群を生成する(ステップS108)。
【0061】
そののち、補正画像選択部27fは、第二画像群生成部27eによって生成された第二画像群の各画像と腫瘍領域との間でRMSEを算出する(ステップS109)。
【0062】
続いて、補正画像選択部27fは、第二画像群の各画像において、算出したRMSEが最小となる画像を腫瘍領域補正画像として選択する(ステップS110)。
【0063】
そして、補正SPECT画像生成部27gは、補正画像選択部27fによって選択された腫瘍領域補正画像を腫瘍領域と置換して補正SPECT画像を生成する(ステップS111)。
【0064】
そののち、システム制御部29は、補正SPECT画像生成部27gによって生成された補正SPECT画像を表示部22のモニタにて表示するように制御し(ステップS112)、処理を終了する。
【0065】
上述してきたように、本実施例では、最大値抽出部27bは、補正対象SPECT画像にて設定された腫瘍領域を構成する画素の画素値から最大値を抽出し、推定値算出部27cは、最大値抽出部27bによって抽出された最大値に、設定情報記憶部27aが記憶するリカバリー係数を乗算することでSPECT装置の位置分解能に起因する画素値低下が生じても、最大値が得られることが推定される推定値を算出する。
【0066】
そして、第一画像群生成部27dは、推定値算出部27cによって算出された推定値を上限値とし、当該上限値を設定情報記憶部27aが記憶する分割数にて分割した複数の値を決定し、決定した複数の値それぞれが腫瘍領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像を第一画像群として生成する。第二画像群生成部27eは、第一画像群生成部27dによって生成された第一画像群の各画像に対して、設定情報記憶部27aが記憶する応答関数を用いた画質劣化処理を行なうことで、第二画像群を生成する。
【0067】
そして、補正画像選択部27fは、第二画像群生成部27eによって生成された第二画像群の各画像と腫瘍領域との間で対応する画素の画素値を差分して差分情報を算出し算出した差分情報が最小となる画像を、腫瘍領域がPVE補正された腫瘍領域補正画像として選択する。そして、補正SPECT画像生成部27gは、補正画像選択部27fによって選択された腫瘍領域補正画像を腫瘍領域と置換することで、補正対象SPECT画像が補正された補正SPECT画像を生成する。
【0068】
したがって、処理対象を腫瘍領域に限定し、当該腫瘍領域から有限個の第一画像群を生成し、有限個の第一画像群に対してコンボリューション法により有限個の第二画像群を生成して腫瘍領域のPVEが補正された画像を選択することで、従来のデコンボリューション法のようにS/N比を低減させることなく、有限の処理数にて補正処理を行なうことができるので、上記した主たる特徴の通り、核医学画像(SPECT画像)の部分容積効果を精度よく簡易に補正することが可能となる。
【0069】
なお、上記の実施例では、PVEの補正対象となる腫瘍領域が1つ設定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、PVEの補正対象となる腫瘍領域が複数設定される場合であってもよい。腫瘍領域が複数設定される変形例について、図9を用いて説明する。なお、図9は、本実施例における変形例を説明するための図である。
【0070】
図9に示すように、変形例においては、補正対象SPECT画像において、3つの腫瘍領域(腫瘍領域1、腫瘍領域2および腫瘍領域3)が操作者により設定される。そして、最大値抽出部27bは、腫瘍領域1、腫瘍領域2および腫瘍領域3それぞれにて最大値を算出し、推定値算出部27cは、腫瘍領域1、腫瘍領域2および腫瘍領域3それぞれにて推定値を算出する。そして、第一画像群生成部27dは、腫瘍領域1、腫瘍領域2および腫瘍領域3それぞれの第一画像群を生成し、第二画像群生成部27eは、腫瘍領域1、腫瘍領域2および腫瘍領域3それぞれの第二画像群を生成する。
【0071】
そして、補正画像選択部27fは、各腫瘍領域の第二画像群の各画像と対応する腫瘍領域とを用いてRMSEを算出することで、腫瘍領域1、腫瘍領域2および腫瘍領域3それぞれの腫瘍領域補正画像を選択し、補正SPECT画像生成部27gは、補正画像選択部27fによって選択された各腫瘍領域補正画像を対応する腫瘍領域と置換して補正SPECT画像を生成する。これにより、腫瘍領域がSPECT画像にて複数推定される場合であっても、SPECT画像の部分容積効果を精度よく簡易に補正することが可能となる。
【0072】
また、本実施例では、SPECT画像における位置分解能が画像内で一定である場合について説明したが、本発明は、SPECT画像における位置分解能が画像内で異なる場合であっても適用可能である。
【0073】
すなわち、SPECT画像における位置分解能が画像内で異なる場合、操作者は、SPECT画像内の位置ごとに、対応する位置分解能から定まるリカバリー係数および応答関数を設定情報記憶部27aに格納しておき、画像処理部27は、設定された腫瘍領域に対応するリカバリー係数および応答関数を用いることで、推定値の算出処理および第二画像群の生成処理を行なう。これにより、SPECT画像における位置分解能が画像内で異なる場合であっても、画像処理部27は、腫瘍領域補正画像を選択して、補正SPECT画像を生成することができる。
【0074】
また、本実施例では、SPECT装置によって生成されたSPECT画像がPVE補正対象となる場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ガンマカメラによって生成された画像や、SPECT―CT装置によって生成されたSPECT画像や、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置)によって生成されたPET画像や、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET―CT装置によって生成されたPET画像など、核医学画像すべてを、上述したPVE補正処理の対象とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係る核医学イメージング装置および画像処理プログラムは、被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を生成する場合に有用であり、特に、核医学画像の部分容積効果を精度よく簡易に補正することに適する。
【符号の説明】
【0076】
10 架台装置
11 天板
12 寝台
13 寝台駆動部
14 ガンマカメラ
15 カメラ駆動部
20 コンソール装置
21 入力部
22 表示部
23 寝台制御部
24 カメラ制御部
25 データ収集部
26 画像再構成部
27 画像処理部
27a 設定情報記憶部
27b 最大値抽出部
27c 推定値算出部
27d 第一画像群生成部
27e 第二画像群生成部
27f 補正画像選択部
27g 補正SPECT画像生成部
28 データ記憶部
29 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を生成する核医学イメージング装置であって、
前記核医学画像にて設定された関心領域を構成する画素の画素値から最大値を抽出する最大値抽出手段と、
自装置の位置分解能に起因する画素値低下が生じても、前記最大値抽出手段によって抽出された前記最大値が得られることが推定される推定値を、当該位置分解能から定まる所定の係数を用いて算出する推定値算出手段と、
前記推定値算手段によって算出された前記推定値を上限値とし、当該上限値を予め設定された分割数にて分割した複数の値を決定し、当該決定した複数の値それぞれが前記関心領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像を第一の画像群として生成する第一の画像群生成手段と、
前記第一の画像群生成手段によって生成された前記第一の画像群の各画像に対して、前記位置分解能によって定まる応答関数を用いた画質劣化処理を行なうことで、第二の画像群を生成する第二の画像群生成手段と、
前記第二の画像群生成手段によって生成された前記第二の画像群の各画像と前記関心領域との間で対応する画素の画素値を差分して差分情報を算出し、当該算出した差分情報が最小となる画像を前記関心領域が補正された補正画像として選択する補正画像選択手段と、
を備えたことを特徴とする核医学イメージング装置。
【請求項2】
前記補正画像選択手段によって選択された前記補正画像を前記関心領域と置換することで、前記核医学画像が補正された核医学補正画像を生成する核医学補正画像生成手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項3】
前記最大値抽出手段は、前記核医学画像において前記関心領域が複数設定される場合、当該設定された複数の関心領域それぞれの最大値を抽出し、
前記推定値算出手段は、前記所定の係数を用いて、前記最大値抽出手段によって抽出された前記複数の関心領域それぞれの最大値に対応する推定値を算出し、
前記第一の画像群生成手段は、前記推定値算出手段によって算出された前記複数の関心領域それぞれの推定値および前記分割数を用いて、前記複数の関心領域それぞれの第一の画像群を生成し、
前記第二の画像群生成手段は、前記応答関数を用いて、前記第一の画像群生成手段によって生成された前記複数の関心領域それぞれの第一の画像群に対応する第二の画像群を生成し、
前記補正画像選択手段は、前記第二の画像群生成手段によって生成された前記複数の関心領域それぞれの第二の画像群と、各第二の画像群に対応する関心領域とを用いて、前記複数の関心領域それぞれの補正画像を選択し、
前記核医学補正画像生成手段は、前記補正画像選択手段によって選択された前記複数の関心領域それぞれの補正画像を対応する関心領域と置換することで、前記核医学補正画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の核医学イメージング装置。
【請求項4】
被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することで生成された核医学画像の画像処理を行なう画像処理方法をコンピュータに実行させる画像処理プログラムであって、
前記核医学画像にて設定された関心領域を構成する画素の画素値から最大値を抽出する最大値抽出手順と、
前記核医学画像を生成した核医学イメージング装置の位置分解能に起因する画素値低下が生じても、前記最大値抽出手順によって抽出された前記最大値が得られることが推定される推定値を、当該位置分解能から定まる所定の係数を用いて算出する推定値算出手順と、
前記推定値算手順によって算出された前記推定値を上限値とし、当該上限値を予め設定された分割数にて分割した複数の値を決定し、当該決定した複数の値それぞれが前記関心領域を構成する各画素の画素値とされる複数の画像を第一の画像群として生成する第一の画像群生成手順と、
前記第一の画像群生成手順によって生成された前記第一の画像群の各画像に対して、前記位置分解能によって定まる応答関数を用いた画質劣化処理を行なうことで、第二の画像群を生成する第二の画像群生成手順と、
前記第二の画像群生成手順によって生成された前記第二の画像群の各画像と前記関心領域との間で対応する画素の画素値を差分して差分情報を算出し、当該算出した差分情報が最小となる画像を前記関心領域が補正された補正画像として選択する補正画像選択手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−7691(P2011−7691A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152726(P2009−152726)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】