説明

核医学イメージング装置及び解析システム

【課題】光学結合剥れを非破壊的に検査することを課題とする。
【解決手段】PET装置100は、光学結合剥れ検査部27を備える。一例を挙げると、光学結合剥れ検査部27は、検出器モジュール14に接着した圧電素子等に電気信号を入力し、該検出器モジュール14内で音波を発生させる。また、光学結合剥れ検査部27は、検出器モジュール14内で伝播された音波を検出し、検出した音波を周波数解析する。そして、光学結合剥れ検査部27は、解析の結果、光学結合剥がれが生じた面に特有な周波数分布を発見したり、前回検査時の周波数分布と比較したりすることで、光学結合剥がれの有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、核医学イメージング装置及び解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核医学イメージング装置として、陽電子放出コンピュータ断層撮影装置(以下、PET(Positron Emission computed Tomography)装置)が知られている。PET装置は、例えば人体内組織の機能画像を生成する。具体的には、PET装置による撮影においては、まず陽電子放出核種で標識された放射性医薬品が被検体に投与される。すると、被検体内の生体組織に選択的に取り込まれた陽電子放出核種が陽電子を放出し、放出された陽電子は、電子と結合して消滅する。このとき、陽電子は、一対のガンマ線をほぼ反対方向に放出する。一方、PET装置は、被検体の周囲にリング状に配置された検出器を用いてガンマ線を検出し、検出結果から同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、PET装置は、生成した同時計数情報を用いて逆投影処理による再構成を行い、PET画像を生成する。
【0003】
ここで、PET装置の検出器は、シンチレータと、光電子増倍管と、ライトガイドとを有し、シンチレータとライトガイドとの間の光学結合や、ライトガイドと光電子増倍管との間の光学結合は、検出器の性能上、重要な要素となっている。このため、光学結合面において光の反射や散乱が起こらないように、通常は、屈折率の近い材質が用いられ、また、空気層等が入らないように接着される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、P.190−191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、上述した光学結合は、輸送時の振動や経時変化等により剥がれる可能性がある。一方で、検出器に光を当てると検出器の特性を乱す可能性があるため、光学結合剥れの有無を目視によって検査することも難しい。このようなことから、光学結合剥れを非破壊的に検査する手法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の核医学イメージング装置は、検出器と、音波発生部と、音波検出部と、解析部とを有する。検出器は、被検体から放出される放射線を検出する。音波発生部は、前記検出器に対して電気信号を入力し、該検出器内で音波を発生させる。音波検出部は、前記検出器内で伝播された前記音波を検出する。解析部は、前記音波検出部によって検出された音波を解析する。
【0007】
また、実施の形態の解析システムは、核医学イメージング装置と、受信部と、解析部とを備える。核医学イメージング装置は、検出器と、音波発生部と、音波検出部と、送信部とを備える。検出器は、被検体から放出される放射線を検出する。音波発生部は、前記検出器に対して電気信号を入力し、該検出器内で音波を発生させる。音波検出部は、前記検出器内で伝播された前記音波を検出する。送信部は、前記音波検出部によって検出された音波に関する信号を送信する。受信部は、前記送信部から送信された前記音波に関する信号をネットワークを介して受信する。解析部は、受信された前記音波に関する信号から音波を解析する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施例1に係る検出器モジュールを説明するための図である。
【図3】図3は、実施例1に係るデータ記憶部を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例1に係る計数情報記憶部が記憶する計数情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係る同時計数情報記憶部が記憶する同時計数情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施例1に係る光学結合剥れ検査部の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、実施例1に係る検査を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例1に係る検査の変形例を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例1に係る検査の変形例を説明するための図である。
【図10】図10は、実施例2に係る解析システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る核医学イメージング装置及び解析システムの一例を説明する。まず、実施例1に係るPET装置100を説明するとともにその変形例を説明し、次に、実施例2に係る解析システムを説明する。実施例2に係る解析システムは、後述するように、PET装置150と解析装置200とを備える。
【実施例1】
【0010】
実施例1に係るPET装置100は、音波を用いた光学結合剥がれ検査を実現する。具体的には、実施例1に係るPET装置100は、検出器モジュールに接着した圧電素子等に電気信号を入力し、該検出器モジュール内で音波を発生させる。また、実施例1に係るPET装置100は、検出器モジュール内で伝播された音波を検出し、検出した音波を周波数解析する。そして、実施例1に係るPET装置100は、解析の結果、光学結合剥がれが生じた面に特有な周波数分布を発見したり、前回検査時の周波数分布と比較したりすることで、光学結合剥がれの有無を検出する。
【0011】
かかる光学結合剥がれ検査は、後述する光学結合剥がれ検査部27において主に実現される。以下、まず、実施例1に係るPET装置100の構成を説明し、その後、光学結合剥がれ検査部27による検査を詳細に説明する。
【0012】
[実施例1に係るPET装置100の構成]
まず、図1〜5を用いて、実施例1に係るPET装置100の構成を説明する。図1は、実施例1に係るPET装置100の構成を示すブロック図である。図1に例示するように、実施例1に係るPET装置100は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
【0013】
架台装置10は、陽電子から放出された一対のガンマ線を検出し、検出結果に基づいて計数情報を収集する。図1に例示するように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、検出器モジュール14と、計数情報収集部15とを有する。なお、架台装置10は、図1に例示するように、撮影口となる空洞を有する。
【0014】
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23による制御のもと、天板11を移動させる。例えば、寝台駆動部13は、天板11を移動させることにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0015】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出されるガンマ線を検出する。図1に例示するように、検出器モジュール14は、架台装置10において、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように複数配置される。
【0016】
図2は、実施例1に係る検出器モジュール14を説明するための図である。図2の(A)に例示するように、検出器モジュール14は、フォトンカウンティング(photon counting)方式、アンガー型の検出器であり、シンチレータ141と、光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube)とも称する)142と、ライトガイド143とを有する。なお、図2の(B)は、図2の(A)に例示する矢印方向から検出器モジュール14を観察した様子を示す。
【0017】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射したガンマ線を可視光に変換し、変換した可視光(以下、シンチレーション光)を出力する。シンチレータ141は、例えばNaI(Sodium Iodide)、BGO(Bismuth Germanate)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)等のシンチレータ結晶によって形成され、図2の(A)に例示するように、2次元に配列される。また、光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を増倍して電気信号に変換する。図2の(A)に例示するように、光電子増倍管142は、複数配置される。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を光電子増倍管142に伝達する。ライトガイド143は、例えば光透過性に優れたプラスチック素材等によって形成される。
【0018】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び、電子の流れ出し口である陽極を有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0019】
このように、検出器モジュール14は、被検体Pから放出されたガンマ線をシンチレータ141によってシンチレーション光に変換し、変換したシンチレーション光を光電子増倍管142によって電気信号に変換することで、被検体Pから放出されたガンマ線を検出する。
【0020】
図1に戻り、計数情報収集部15は、検出器モジュール14による検出結果に基づいて計数情報を収集する。具体的には、計数情報収集部15は、検出器モジュール14に入射したガンマ線の検出位置と、検出器モジュール14に入射した時点におけるガンマ線のエネルギー値と、検出器モジュール14に入射したガンマ線の検出時間とを、検出器モジュール14毎に収集し、収集したこれらの計数情報を、コンソール装置20に送信する。
【0021】
まず、計数情報収集部15は、検出器モジュール14による検出結果から検出位置を収集するために、アンガー型位置計算処理を行う。具体的には、計数情報収集部15は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を同じタイミングで電気信号に変換した光電子増倍管142を特定する。そして、計数情報収集部15は、特定した各光電子増倍管142の位置及び電気信号の強度に対応するガンマ線のエネルギー値を用いて重心の位置を演算することで、ガンマ線が入射したシンチレータ141の位置を示すシンチレータ番号(P)を決定する。なお、光電子増倍管142が位置検出型光電子増倍管である場合には、光電子増倍管142が検出位置の収集を行ってもよい。
【0022】
また、計数情報収集部15は、各光電子増倍管142によって出力された電気信号の強度を積分演算することで、検出器モジュール14に入射したガンマ線のエネルギー値(E)を決定する。また、計数情報収集部15は、検出器モジュール14によってガンマ線が検出された検出時間(T)を収集する。例えば、計数情報収集部15は、10−12秒(ピコ秒)単位の精度にて検出時間(T)を収集する。なお、検出時間(T)は、絶対時刻であってもよいし、例えば撮影開始時点からの経過時間であってもよい。このように、計数情報収集部15は、計数情報として、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)を収集する。
【0023】
コンソール装置20は、操作者によるPET装置100の操作を受け付け、PET画像の撮影を制御するとともに、架台装置10によって収集された計数情報を用いてPET画像を再構成する。また、コンソール装置20は、光学結合剥れ検査を行う。具体的には、コンソール装置20は、図1に例示するように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、データ記憶部24と、同時計数情報生成部25と、画像再構成部26と、光学結合剥がれ検査部27と、システム制御部28とを有する。なお、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0024】
入力部21は、PET装置100の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボード等であり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部28に転送する。例えば、入力部21は、光学結合剥れ検査の実行指示の入力に用いられる。表示部22は、操作者によって参照されるモニタ等であり、システム制御部28による制御のもと、PET画像や、光学結合剥れ検査の解析結果を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御する。
【0025】
データ記憶部24は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。図3は、実施例1に係るデータ記憶部24を説明するための図である。図3に例示するように、データ記憶部24は、計数情報記憶部24aと、同時計数情報記憶部24bと、PET画像記憶部24cとを有する。なお、データ記憶部24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等で実現される。
【0026】
計数情報記憶部24aは、計数情報収集部15によって収集された検出器モジュール14毎の計数情報を記憶する。具体的には、計数情報記憶部24aは、計数情報収集部15から送信された検出器モジュール14毎の計数情報を記憶する。また、計数情報記憶部24aが記憶する計数情報は、同時計数情報生成部25による処理に利用される。なお、計数情報記憶部24aが記憶する計数情報は、同時計数情報生成部25による処理に利用された後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
【0027】
図4は、実施例1に係る計数情報記憶部24aが記憶する計数情報の一例を示す図である。図4に例示するように、計数情報記憶部24aは、検出器モジュール14を識別するモジュールIDに対応付けて、シンチレータ番号(P)と、エネルギー値(E)と、検出時間(T)とを記憶する。
【0028】
同時計数情報記憶部24bは、同時計数情報生成部25によって生成された同時計数情報を記憶する。具体的には、同時計数情報記憶部24bは、同時計数情報生成部25によって格納されることで、同時計数情報を記憶する。また、同時計数情報記憶部24bが記憶する同時計数情報は、画像再構成部26による処理に利用される。なお、同時計数情報記憶部24bが記憶する同時計数情報は、画像再構成部26による処理に利用された後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
【0029】
図5は、実施例1に係る同時計数情報記憶部24bが記憶する同時計数情報の一例を示す図である。図5に例示するように、同時計数情報記憶部24bは、コインシデンスNo.に対応付けて、計数情報の組合せを記憶する。
【0030】
PET画像記憶部24cは、画像再構成部26によって再構成されたPET画像を記憶する。具体的には、PET画像記憶部24cは、画像再構成部26によって格納されることで、PET画像を記憶する。また、PET画像記憶部24cが記憶するPET画像は、システム制御部28によって表示部22に表示される。
【0031】
図1に戻り、同時計数情報生成部25は、計数情報収集部15によって収集された計数情報を用いて同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数情報生成部25は、計数情報記憶部24aに格納された計数情報を読み出し、エネルギー値及び検出時間に基づいて、陽電子から放出された一対のガンマ線が同時に計数された計数情報の組合せを検索する。また、同時計数情報生成部25は、検索した計数情報の組合せを同時計数情報として生成し、生成した同時計数情報を同時計数情報記憶部24bに格納する。
【0032】
例えば、同時計数情報生成部25は、操作者によって入力された同時計数情報生成条件に基づいて同時計数情報を生成する。同時計数情報生成条件には、エネルギーウィンドウ幅と時間ウィンドウ幅とが指定される。例えば、同時計数情報生成部25は、エネルギーウィンドウ幅「350keV〜550keV」及び時間ウィンドウ幅「600ピコ秒」に基づいて同時計数情報を生成する。
【0033】
例えば、同時計数情報生成部25は、計数情報記憶部24aを参照し、図4に例示したエネルギー値(E)及び検出時間(T)を参照する。そして、同時計数情報生成部25は、検出時間(T)の差が時間ウィンドウ幅「600ピコ秒」以内であり、かつ、エネルギー値(E)が共にエネルギーウィンドウ幅「350keV〜550keV」にある計数情報の組合せを、検出器モジュール14間で検索する。そして、同時計数情報生成部25は、同時計数生成条件を満たす組合せとして「P11、E11、T11」と「P22、E22、T22」との組合せを検索すると、同時計数情報として生成し、図5に例示するように、同時計数情報記憶部24bに格納する。
【0034】
画像再構成部26は、PET画像を再構成する。具体的には、画像再構成部26は、同時計数情報記憶部24bに格納された同時計数情報を投影データ(サイノグラムデータ)として読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、PET画像を再構成する。また、画像再構成部26は、再構成したPET画像をPET画像記憶部24cに格納する。
【0035】
光学結合剥がれ検査部27は、PET装置100において、音波による光学結合剥がれ検査を実現する。例えば、光学結合剥がれ検査部27は、PET装置100の据付時等、光学結合剥れ検査の実行指示の入力が入力部21において受け付けられると、一連の光学結合剥れ検査処理を実行する。また、例えば、光学結合剥がれ検査部27は、24時間毎、1週間毎等の所定周期で、一連の光学結合剥れ検査処理を実行する。なお、光学結合剥がれ検査処理については、後に詳述する。
【0036】
システム制御部28は、架台装置10及びコンソール装置20を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御部28は、PET装置100における撮影を制御する。
【0037】
なお、上述した同時計数情報生成部25、画像再構成部26、光学結合剥がれ検査部27及びシステム制御部28等の各部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路によって実現される。
【0038】
[実施例1に係る光学結合剥れ検査]
続いて、図6〜9を用いて、実施例1に係る光学結合剥れ検査部27を説明する。図6は、実施例1に係る光学結合剥れ検査部の構成を示すブロック図であり、図7は、実施例1に係る検査を説明するための図である。また、図8及び9は、実施例1に係る検査の変形例を説明するための図である。
【0039】
図6に例示するように、実施例1に係る光学結合剥れ検査部27は、音波発生部27aと、音波検出部27bと、解析部27cと、通知情報出力部27dとを有する。また、図7に例示するように、実施例1に係る検出器モジュール14は、ライトガイド143に圧電素子14aが接着され、また、所定の光電子増倍管142に圧電素子14bが接着される。なお、図7においては、観察される5つの光電子増倍管142のうち、右から2番目の光電子増倍管142とライトガイド143との間に光学結合剥れが生じている。
【0040】
なお、実施例1においては、ライトガイド143及び所定の光電子増倍管142それぞれに圧電素子が接着される例を説明するが、後述するように、開示の技術はこれに限られるものではない。また、実施例1においては「圧電素子」が接着される例を説明するが、開示の技術はこれに限られるものではなく、音波の発生や検出に用いることが可能な素子であれば、任意に選択することができる。
【0041】
音波発生部27aは、検出器モジュール14に対して電気信号を入力し、該検出器モジュール14内で音波を発生させる。具体的には、音波発生部27aは、検出器モジュール14のライトガイド143に接着された圧電素子14aに電気信号を入力し、該検出器モジュール14内で音波を発生させる。
【0042】
ここで、実施例1に係る音波発生部27aは、電気信号としてパルス信号(図7の14c)を入力する。パルス信号は、広い周波数帯域の音波を発生させることに適しているからである。すなわち、シンチレータ141とライトガイド143との間の光学結合剥れ、及び、ライトガイド143と光電子増倍管142との間の光学結合剥れを検査するために発生させる音波は、シンチレータ141、光電子増倍管142、及びライトガイド143の全てと共振する周波数であることが望ましい。言い換えると、広い周波数帯域の音波を発生させることが望ましい。このため、実施例1に係る音波発生部27aは、あえてパルス信号を入力する。なお、開示の技術はパルス信号に限られるものではなく、パルス信号以外の電気信号であってもよい。
【0043】
また、実施例1に係る音波発生部27aは、図7に例示するように、ライトガイド143に接着された圧電素子14aに電気信号を入力する。すなわち、シンチレータ141とライトガイド143との間の光学結合剥れ、及び、ライトガイド143と光電子増倍管142との間の光学結合剥れを検査する目的であるので、音波の発生源も、中間に位置付けられるライトガイド143とすることが適している。なお、開示の技術はライトガイド143に接着された圧電素子14aに電気信号を入力する手法に限られるものではなく、例えば、シンチレータ141に接着された圧電素子に入力する手法や、光電子増倍管142に接着された圧電素子に入力する手法等でもよい。
【0044】
音波検出部27bは、検出器モジュール14内で伝播された音波を検出する。具体的には、音波検出部27bは、検出器モジュール14の所定の光電子増倍管142に接着された圧電素子14bから音波(図7の14d)を検出する。なお、開示の技術は所定の光電子増倍管142に接着された圧電素子14bから音波を検出する手法に限られるものではない。例えば、図8に例示するように、ライトガイド143に接着された圧電素子14eであって電気信号の入力に用いられた圧電素子14eと同じ圧電素子14eから音波を検出する手法でもよい。また、例えば、所定のシンチレータ141に接着された圧電素子から音波を検出する手法等でもよい。すなわち、検出器モジュール14内を音波が伝播される以上、音波の検出は、圧電素子がどの位置に接着されているかにかかわらず可能であるので、圧電素子の位置も数も任意に変更可能である。
【0045】
解析部27cは、音波検出部27bによって検出された音波を解析する。具体的には、解析部27cは、音波検出部27bによって検出された音波に対し、FFT(Fast Fourier Transform)等による周波数解析を行い、解析の結果、光学結合剥がれが生じた面に特有な周波数分布を発見することで、光学結合剥がれの有無を検出する。この場合、例えば、解析部27cは、別途実験等によって特定された「光学結合剥がれが生じた面に特有な周波数分布」を予め記憶部に保持する。そして、解析部27cは、解析結果と、記憶部に保持する「光学結合剥がれが生じた面に特有な周波数分布」とを比較することで、光学結合剥がれが生じた面に特有な周波数分布を発見し、光学結合剥れの有無を検出する。
【0046】
また、例えば、解析部27cは、前回検査時の周波数分布と比較することで、光学結合剥がれの有無を検出してもよい。この場合、例えば、解析部27cは、検査毎に、解析結果を記憶部に保持する。そして、解析部27cは、新たに検査が行われると、今回検査時の解析結果と、記憶部に保持する解析結果とを比較し、例えば、解析結果に所定閾値以上の変化が現れたことを検出し、光学結合剥れの有無を検出する。
【0047】
なお、開示の技術は上記手法に限られるものではない。例えば、開示の技術は、光学結合剥れの有無を検出する手法に限られず、光学結合剥れの位置を特定する手法であってもよい。この場合、例えば、解析部27cは、光学結合剥れが生じる「位置」と「音波の周波数特性」との対応関係を別途実験等によって求め、予め記憶部に保持する。そして、解析部27cは、解析結果を用いて記憶部に保持する対応関係を参照し、今回の解析結果が示す周波数特性に対応付けて記憶されている「位置」を特定することで、光学結合剥れの位置を特定する。
【0048】
あるいは、複数の圧電素子を、個々の光電子増倍管142や、個々のシンチレータ141に接着する手法によって、光学結合剥れの位置を特定する手法であってもよい。例えば、図9に例示するように、ライトガイド143に圧電素子14fを接着し、また、光電子増倍管142それぞれに圧電素子14gを接着する。この場合、音波発生部27aは、ライトガイド143に接着された圧電素子14fに電気信号を入力し、音波検出部27bは、光電子増倍管142に接着された圧電素子14gそれぞれから音波を検出する。
【0049】
ここで、例えば、ライトガイド143と所定の光電子増倍管142との間で光学結合剥れが発生したとする。この場合、光学結合剥れが発生した光電子増倍管142に接着された圧電素子14gから検出された音波は、他の光電子増倍管142に接着された圧電素子14gから検出された音波とは異なる特有な周波数分布を有すると考えられる。このため、解析部27cは、音波検出部27bによって検出された複数の音波それぞれを周波数解析し、特有な周波数分布を有するものを特定することにより、光学結合剥れの位置(光学結合剥れが発生した光電子増倍管142)を特定する。
【0050】
図6に戻り、通知情報出力部27dは、解析部27cによって光学結合剥れが生じたことが解析されると、光学結合剥れが生じたことを通知する通知情報を表示部22に出力する。なお、通知情報出力部27dは、光学結合剥れが生じた場合に限らず、光学結合剥れが生じていない場合にも、その旨を通知する通知情報を表示部22に出力してもよい。
【0051】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1に係るPET装置100は、光学結合剥れ検査部27を備える。光学結合剥れ検査部27は、音波発生部27aと、音波検出部27bと、解析部27cとを有する。音波発生部27aは、検出器モジュール14に対して電気信号を入力し、該検出器モジュール14内で音波を発生させる。音波検出部27bは、検出器モジュール14内で伝播された音波を検出する。解析部27cは、音波検出部27bによって検出された音波を解析する。このように、実施例1に係るPET装置100は、音波を用いた光学結合剥れ検査を実現することによって、光学結合剥れを非破壊的に検査することが可能である。
【0052】
すなわち、電気信号を入力して音波を発生させ、検出器モジュール14内で伝播された音波を検出し、音波の伝播特性の変化に基づいて光学結合剥れの有無や位置を特定する手法であるので、暗所で行うことが可能であり、PET装置100を分解する必要もなく、非破壊的である。また、上述したように、電気信号の入力から解析までを自動で行うので、手間もかからず、簡易である。
【0053】
ひいては、例えば検出器モジュール14の製造段階で簡易に品質検査を行うことが可能になる。また、例えばPET装置100の設置後、稼動中のPET装置100に対しても適用することが可能であるので、例えば保守点検時のヘルスチェック機能として組み込むことも可能であり、高頻度に品質検査を行うことが可能になる。言い換えると、気付きにくい光学系の故障を、非破壊的に、簡易に、高頻度に、検査することが可能になり、品質向上、メンテナンス向上に資する。
【0054】
また、上述したように、実施例1に係る光学結合剥れ検査部27は、通知情報出力部27dをさらに有する。通知情報出力部27dは、解析部27cによって光学結合剥れが生じたことが解析されると、光学結合剥れが生じたことを通知する通知情報を出力する。このようなことから、例えば保守点検者は、光学結合剥れ検査の結果を簡易に認識することが可能である。
【0055】
また、上述したように、実施例1に係る音波発生部27aは、電気信号としてパルス信号を入力する。パルス信号は、広い周波数帯域の音波を発生させることに適しているからであり、このようなことから、実施例1によれば、光学結合剥れ検査をより高精度に行うことが可能である。
【0056】
また、上述したように、実施例1において、例えばライトガイド143において音波を発生させる手法を用いれば、光学結合剥れ検査をより高精度に行うことが可能である。また、上述したように、実施例1において、例えばシンチレータ141毎や光電子増倍管142毎に音波を検出する手法を用いれば、光学結合剥れが生じた位置まで特定することが可能である。あるいは、上述したように、実施例1において、音波の周波数特性を解析して記憶部を参照し、光学結合剥れが生じた位置と周波数特性との対応関係に基づいて光学結合剥れが生じた位置を特定する手法を用いることも可能である。
【実施例2】
【0057】
続いて、図10を用いて、実施例2に係る解析システムを説明する。図10に例示するように、実施例2に係る解析システムは、PET装置150と、解析装置200とを有する。ここで、上記実施例1に係るPET装置100は、光学結合剥れ検査部27に、解析部27c及び通知情報出力部27dを有するものであったが、実施例2に係るPET装置150は、自装置で解析を行わずに、ネットワークを介して接続された解析装置200に対して解析に必要な情報を伝達する。そして、解析装置200が、解析処理や、通知情報の出力処理等を行う。例えばリモート保守に適用することが可能である。
【0058】
具体的には、図10に例示するように、PET装置150は、PET装置100の光学結合剥れ検査部27の替わりに、光学結合剥れ検査部29を備える。光学結合剥れ検査部29は、図10に例示するように、音波発生部29aと、音波検出部29bと、送信部29cとを有する。なお、PET装置150は、PET装置100と同様に、その他の各部を備える。
【0059】
音波発生部29aは、実施例1に係る音波発生部27aと同様、検出器モジュール14に対して電気信号を入力し、該検出器モジュール14内で音波を発生させる。音波検出部29bは、実施例1に係る音波検出部27bと同様、検出器モジュール14内で伝播された音波を検出する。送信部29cは、音波検出部29bによって検出された音波に関する信号を送信する。
【0060】
一方、解析装置200は、図10に例示するように、受信部210と、解析部220と、通知情報出力部230とを有する。受信部210は、送信部29cから送信された音波に関する信号をネットワークを介して受信する。解析部220は、実施例1に係る解析部27cと同様、受信部210によって受信された音波に関する信号から音波を解析する。通知情報出力部230は、実施例1に係る通知情報出力部27dと同様、解析部220によって光学結合剥れが生じたことが解析されると、光学結合剥れが生じたことを通知する通知情報を出力する。
【0061】
なお、解析システムの構成は図10の例に限られず、例えば、解析処理まではPET装置150側で行い、その解析結果のみが解析装置200側に伝達される構成であってもよい。
【実施例3】
【0062】
なお、開示の技術は、上記実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0063】
例えば、上記実施例1において、PET装置100の構成として図1を例示したが、開示の技術はこれに限られるものではない。例えば、計数情報収集部15がコンソール装置20側に備えられていてもよいし、反対に、同時計数情報生成部25が架台装置10側に備えられていてもよい。また、データ記憶部24に記憶された各種データも、架台装置10側に備えられていても、あるいはコンソール装置20側に備えられていてもよい。それぞれのデータがPET装置100に保持される期間も任意である。
【0064】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
100 PET装置
27 光学結合剥れ検査部
27a 音波発生部
27b 音波検出部
27c 解析部
27d 通知情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から放出される放射線を検出する検出器と、
前記検出器に対して電気信号を入力し、該検出器内で音波を発生させる音波発生部と、
前記検出器内で伝播された前記音波を検出する音波検出部と、
前記音波検出部によって検出された音波を解析する解析部と
を備えたことを特徴とする核医学イメージング装置。
【請求項2】
前記解析部によって光学結合剥れが生じたことが解析されると、光学結合剥れが生じたことを通知する通知情報を出力する通知情報出力部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項3】
前記音波発生部は、前記電気信号としてパルス信号を入力することを特徴とする請求項1または2に記載の核医学イメージング装置。
【請求項4】
前記検出器は、被検体から放出された放射線をシンチレーション光に変換するシンチレータと、該シンチレーション光を増倍して電気信号に変換する光電子増倍管と、該シンチレータから出力されたシンチレーション光を該光電子増倍管に出力するライトガイドとを有するものであって、
前記音波発生部は、前記ライトガイドにおいて音波を発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の核医学イメージング装置。
【請求項5】
前記検出器は、被検体から放出された放射線をシンチレーション光に変換するシンチレータと、該シンチレーション光を増倍して電気信号に変換する光電子増倍管と、該シンチレータから出力されたシンチレーション光を該光電子増倍管に出力するライトガイドとを有するものであって、
前記音波検出部は、前記シンチレータ毎および/または前記光電子増倍管毎に前記音波を検出し、
前記解析部は、前記音波検出部によって前記シンチレータ毎および/または前記光電子増倍管毎に検出された音波を解析することにより、光学結合剥れが生じた位置を特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の核医学イメージング装置。
【請求項6】
光学結合剥れが生じる位置と、前記解析部によって解析される音波の周波数特性との対応関係を記憶する記憶部をさらに備え、
前記解析部は、前記音波検出部によって検出された音波の周波数特性を解析して前記記憶部を参照し、該周波数特性との対応関係に基づいて光学結合剥れが生じた位置を特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の核医学イメージング装置。
【請求項7】
被検体から放出される放射線を検出する検出器と、
前記検出器に対して電気信号を入力し、該検出器内で音波を発生させる音波発生部と、
前記検出器内で伝播された前記音波を検出する音波検出部と、
前記音波検出部によって検出された音波に関する信号を送信する送信部とを備えた核医学イメージング装置と、
前記送信部から送信された前記音波に関する信号をネットワークを介して受信する受信部と、
受信された前記音波に関する信号から音波を解析する解析部と
を備えたことを特徴とする解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−37417(P2012−37417A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178603(P2010−178603)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】