説明

核酸の自動抽出システムおよびその方法

【課題】サンプルを含む核酸から核酸を自動抽出するシステムと方法を提供する。
【解決手段】プロセス平板培地(18)と、試薬平板培地(19)と、出力平板培地(21)のセットからなり、前記サンプルが該プロセス平板培地(18)の空隙に含まれ、該試薬は該試薬を提供のために反復使用される再使用可能なピペットチップ(31)の複数の試薬ピペット(30)からなる試薬ピペット装置(29)を用いて、該試薬平板培地(19)の空隙中に提供され、サンプル−試薬混合物を得るために該試薬の使い捨てピペットチップ(34)の複数のサンプルピペット(33)からなるサンプルピペット装置(32)を用いて、プロセス平板培地(18)の該サンプルに移され、培養、単離、抽出された核酸を得るために放出され、使い捨てピペットチップ(34)により、該使い捨てピペットチップ(34)と該出力平板培地(19)の空隙に一つずつ割り当てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル処理を含む核酸に関するものであり、またさらに詳しくは、核酸の自動抽出システムおよびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核酸(DNA=デオキシリボ核酸、RNA=リボ核酸)は、典型的には大量の核酸入力を必要とする医学研究および薬学研究における種々の分析および検定、臨床診断および遺伝子フィンガープリント法に対する出発材料として、しばしば使用されている。最近、充分な量の核酸は、たとえば核酸の抽出(精製)を通常必要とする公知のポリメラーゼ連鎖反応に基づいて、種々の生体外自動化核酸増幅技術によって核酸の増幅前に容易に得られる。
【0003】
基本的には、無傷の細胞またはウイルスからの核酸抽出は、細胞膜などのそれらの膜から周りの媒体中に核酸を放出することおよび放出された核酸を、残余から単離しまた溶出することを包含している。一方、サンプルを含む核酸と特定の試薬混合物中に核酸を容易に放出してもよく、それに続いてサンプル試薬混合物を熱的に培養し、膜の溶解を生じさせ、放出された核酸の単離と溶出がいくらかより困難になる。今日の臨床業務においてしばしば使用される単離技術は放出された核酸に、逆に(特異的にまたは非特異的に)結合される磁性粒子などの固体吸着マトリックスに依存している。磁場を印加すると、核酸を結合した粒子を、たとえば、サンプルを保持している空隙の内壁に引き寄せ、またはその内壁上に保持することを可能にし、周囲の媒体を追い出すことを可能にし、またそこに核酸を再懸濁させるために別の流体と置換することも可能にする。
【0004】
多量の核酸入力を必要とする解析および検定の数が増加するという事実を考慮すると、核酸の増幅の前に核酸の自動抽出を行うことへの強い要望が観察される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、現在市場で入手可能な核酸の自動抽出システムは、典型的にはピペットチップおよびマルチ・ウエル(multi-well)平板培地などの使い捨て品の望ましくない大量消費に悩んでおり、不都合なことに、そのことがサンプル処理の全コストを大きくし、またしばしば操作を補充するために専門家に負担を強いることになる。一方、ピペットチップおよび多ウエル平板培地を数回再使用することは、得られた核酸の純度を劣化させる物質の持ち越しおよびサンプルの2次汚染が起りやすくなり、そのことがシステムの信頼性を台無しにする。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みて達成されたものである。このように本発明の目的は、物質の持ち越しおよびサンプルの2次汚染のリスクをそれぞれ大きくすることなく、一回の核酸抽出毎に消費される使い捨て品を削減することを可能にする増幅前の核酸の抽出新システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によると、本発明は細胞溶液を含む核酸などのサンプルを含む複数の核酸の膜からの核酸の自動抽出新システムを提案する。
【0008】
したがって、3枚の平板培地の少なくとも1セットからなり、複数の空隙を有する各平板培地は、該核酸を抽出するためのサンプルを処理するためのプロセス平板培地と、該プロセス平板培地の空隙中に含まれているサンプルに試薬を混合させるための試薬平板培地と、該抽出された核酸を出力するための出力平板培地とを含むセットからなるサンプルを含む核酸から核酸を自動抽出するシステムが提供される。該平板培地の各々は、たとえば空隙(ウエル)の平面配列を持つ使い捨て多ウエル平板培地として具現化され、またたとえば従来の射出成型技術によって成形されてもよい。
【0009】
核酸の抽出のために処理されるサンプルを含む核酸は、プロセス平板培地の空隙中に含まれている。該プロセス平板培地の少なくともいくつかまたは全部の空隙を占める該プロセス平板培地の空隙は、サンプルを用いて、手動で、または自動で充填されてもよい。
【0010】
該システムは、さらに複数の試薬ピペットを含む試薬ピペット装置を含み、その各々のピペットには、試薬を試薬皿の空隙に移すために用いられる再使用可能な(多重使用)ピペットチップが設けられている。該試薬平板培地の空隙に試薬を移す時には、再使用可能なピペットチップと空隙の壁との接触および該ピペットチップの分注試薬中への浸漬が避けられる。該再使用可能なピペットチップは、試薬ピペット装置の試薬ピペットに固く固定され、またそれはスチールなどの金属材料により作られていることが好ましい。試薬ピペット装置の再使用可能なピペットチップを用いて、試薬は試薬平板培地の空隙中に供給される。たとえば、システムに収納された試薬容器から試薬平板培地に向けて試薬を移送するために該再使用可能なピペットチップを反復して使用してもよい。
【0011】
本発明においては「試薬」という語彙は、洗浄溶液などのサンプルと反応しない流体(補助剤)をも包含することを意図している。
【0012】
試薬平板培地の空隙の数はプロセス平板培地の空隙の数よりも少ないか、または等しくてもよい。
【0013】
該システムは、さらに複数のサンプルピペットを含むサンプルピペット装置を含み、そのピペットの各々には試薬平板培地、プロセス平板培地および出力平板培地の空隙へ、またはそれぞれの空隙から流体を移送するために用いられる使い捨てピペットチップが設けられている。該使い捨てピペットチップは容易に置きかえられるように、サンプルピペットに取り外し可能に固定されており、またプラスチック材料で作られていることが好ましい。数度使用されまた典型的には、連続するピペット操作の間に洗浄される試薬ピペット装置の再使用可能なピペットチップとは対照的に、該使い捨てピペットチップは1つのサンプルのピペット操作のみに使用されるか、または同じサンプルから生じる流体のピペット操作のみに使用されることになっている。
【0014】
サンプルピペット装置の使い捨てピペットチップを用いて、試薬平板培地の空隙中に含まれる試薬をサンプルに移し、それによりサンプル−試薬混合物を得て、そこでは該試薬平板培地の各空隙がサンプルに対して一つずつ(相互に)割り当てられる。たとえば、一滴ずつの混合用の使い捨てピペットチップを使用する1つ以上の混合工程を行ってもよい。
【0015】
得られたサンプル−試薬混合物は、加熱装置などの培養装置により、プロセス平板培地の空隙中で培養され、周囲の媒体中に核酸を放出するために膜を含む核酸を溶解させ、それにより流体を含む放出された核酸を得る。
【0016】
該溶解(または溶解前またはその間であってもよい)後、磁性応答粒子が、通常は粒子を含む懸濁液の形で添加される。該磁性応答粒子は核酸と結合できる。種々のタイプの粒子が先行技術で公知である。一般的には核酸に親和性を持った表面を有する粒子、たとえば2酸化ケイ素のような粒子を用いて非特異的結合を行わせることができる。状況により、特異的結合粒子も用いてもよい。たとえば、そのような粒子はマッチする核酸に特異的に結合するその表面上に核酸捕獲プローブを持っている。
【0017】
該システムは、プロセス平板培地の空隙中に含まれている流体を含んだ放出された核酸中に含まれる磁性応答粒子を単離するための単離装置をさらに含んでおり、それにより流体から該放出された粒子に結合した核酸を磁気的に単離する。流体をプロセス平板培地の空隙中に移送するときにこのことが反復して行われ、続いて磁場が印加され、またサンプルピペット装置によって浮遊物が除去される。
【0018】
サンプルピペット装置の使い捨てピペットチップを用いて、流体を含む抽出された核酸は出力平板培地の空隙中に移送され、そこでは抽出された核酸を含むプロセス平板培地の各空隙は、出力平板培地の空隙に一つずつ(相互に)割り当てられる。
【0019】
したがって使い捨てピペットチップは、試薬平板培地からプロセス平板培地に試薬を移送するために、また流体を含む抽出された核酸を出力平板培地へと移送するために使用され、そこでは各サンプルは、試薬平板培地中の空隙と出力平板培地の空隙の双方に一つずつ割り当てられる。さらに各サンプル、すなわちサンプルを含むプロセス平板培地の空隙は上記したピペット操作を行うために使用される少なくとも1つの再使用可能なピペットチップに一つずつ割り当てられる。このことは、個々の使い捨てピペットチップは他のサンプルまたはそこから生じる流体のピペット操作に使用されるのではなく、同じサンプルに関する流体のピペットのみに使用される。
【0020】
さらに詳しく述べると、ピペット操作用に使用される少なくとも1つの使い捨てピペットチップと共に個々のサンプル、すなわちサンプルを含むプロセス平板培地の空隙と、試薬平板培地の空隙と、出力平板培地の空隙とが核酸抽出用の個々のサンプルプロセス経路を互いに構成し、その結果単離されたサンプルプロセス経路が個々のサンプルを処理するために使用される。個々のサンプルプロセス経路を用いて、サンプル間の2次汚染を有利に避けられる。さらに、試薬を分注しかつ分注された試薬中への浸漬を排除するとき、試薬平板培地の空隙の壁への接触を排除しながら試薬ピペット装置の再使用可能なピペットチップのみが(たとえば、試薬容器から)試薬平板培地の空隙に試薬を移送するために使用されるから試薬容器中への物質の持ち越しが有利に避けられる。
【0021】
たとえば、所定のプロセス操作プランにしたがって操作を行うための指示が設けられた機械読み取りプログラムを実行するプログラム制御可能な論理制御器として具現化される制御器をサンプルを含む核酸から核酸を抽出するために行われる工程の制御のために使用してもよい。この点において、該制御器は試薬ピペット装置およびサンプルピペット装置双方と培養装置と単離装置を含むプロセス操作プランにより指示されるように制御を必要とするシステム部品に電気的に接続されている。さらに詳細に述べると、該制御器は該システムの異なる部品からの情報を受け取り、かつプロセス操作プランにしたがって部品を制御するための対応する制御信号を発生させ送信する。
【0022】
したがって、機械読み取りプログラムを実行する制御器は試薬平板培地の空隙中に試薬を供給するための試薬ピペット装置の再使用可能なピペットチップを反復して使用することと;サンプル−試薬混合物を得るためにサンプルピペット装置の使い捨てピペットチップを用いて試薬をサンプルに移送することと;流体を含む放出された核酸を得るために核酸を放出する培養装置を用いてプロセス平板培地の空隙中で、サンプル−試薬混合物を培養することと;流体を含む抽出された核酸を得るために単離装置を用いてプロセス平板培地の空隙中に流体を含む放出された核酸中に含まれる放出された核酸を単離することと;流体を含む抽出された核酸をサンプルピペット装置の使い捨てピペットチップを用いて出力平板培地の空隙に移送することと;を制御するために設定される。
【0023】
したがって、本発明のシステムは同じプロセス平板培地中にサンプルを供給しかつ処理し、その結果、単一核酸抽出操作について少ない数の使い捨て平板培地を消費するという従来の抽出システムの問題点を回避する。再使用可能なピペットチップを用いて試薬が供給されるから使い捨てピペットチップの消費は有利に削減される。さらに、試薬平板培地への試薬の移送のために再使用可能なピペットチップを使用し、また試薬平板培地、プロセス平板培地および出力平板培地間に試薬を移送するために使い捨てピペットチップを用いると物質の持ち越しを有利に避けることができる。さらに、サンプル間の2次汚染を有利に避けられるサンプル含有の各核酸に対して別のサンプルプロセス経路を使用すると高純度の抽出された核酸を達成できる。
【0024】
本発明のシステムの好ましい実施の態様によると、サンプルを含む空隙の数は試薬を含む空隙の数に等しくなるように選択され、そこでは各サンプルは試薬を含む試薬平板培地の空隙と、少なくとも1つの使い捨てピペットチップと、出力平板培地の空隙との各々に対して一つずつ割り当てられる。さらに具体的に述べると、少なくとも1つの使い捨てピペットチップと共に個々のサンプルと、試薬を含む試薬平板培地の空隙と、出力平板培地の空隙とが核酸抽出用の個々のサンプルプロセス経路を共通に構成している。試薬平板培地および出力平板培地の双方の空隙に対する個々のサンプルの一つずつの割り当てがあるのでプロセス平板培地中でのサンプルを含む核酸の平行処理が可能となる。
【0025】
本発明のシステムの他の好ましい実施の態様によると、試薬ピペット装置の移動の第1範囲およびサンプルピペット装置の移動の第2範囲が、システムのコスト削減だけでなく衝突の危険性を削減する観点で、ピペット装置の単純な制御を有利に可能にする試薬平板培地を含む領域で、排他的に重なり合っている。さらに、試薬平板培地を含む領域の外でのピペット装置の空間的単離は物質の持ち越しとサンプルの2次汚染を避けるにあたり有利に貢献している。
【0026】
本発明のシステムの他の好ましい実施の態様によると、該システムは、試薬ピペット装置の再使用可能なピペットチップの洗浄用に使用される洗浄装置を含んでいる。該制御器は、連続するピペット操作間での試薬ピペット装置の再使用可能なピペットチップの洗浄を制御するために作られていることが好ましい。そのような実施の態様は、試薬平板培地の空隙に異なる試薬を移送するときに、持ち越しまたは2次汚染を有利に回避する。
【0027】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、流体を含む放出された核酸中での核酸の単離は、核酸に対して可逆的に(特異的にまたは非特異的に)結合できる磁気応答粒子(すなわち、それ自身が磁性的である必要がない磁場により引き付け可能なまたは反発できる磁性引き付けまたは反発粒子)の使用を含む。この場合、たとえばサンプル−試薬混合物に対して磁気応答性粒子を添加しかつ該粒子を核酸に付着させることと;プロセス平板培地の空隙の内側壁に核酸を結合した粒子を引き付けるために、磁場発生装置により磁場を印加しまた非結合成分をプロセス平板培地から除去することと;該磁性粒子から核酸を引き剥がす(溶出すること)ことと;磁性粒子を単離することと;流体を含む抽出された核酸を出力平板培地の空隙に移送することとを制御するように該制御器を作ってもよい。
【0028】
本発明の上記の実施の態様において、加熱装置および磁場発生装置を操作位置および非操作位置に移動させるための共通のキャリヤーに固定することが好ましく、その操作位置においては試薬平板培地中に含まれるサンプルを処理することが操作可能であり、また非操作位置においてはシステム全体の寸法を減少させるために空間を有利に節約することになる。さらにそれは、該プロセス平板培地が処理中には静止状態を維持するという好ましい実施の態様を可能にする。より具体的には、該加熱装置および磁場発生装置を、たとえば各装置がプロセス平板培地の空隙に対面するか、またはそこから向きを変えることが可能なシステムの高度にコンパクトな構造を可能にする共通の回転軸の周りに、該装置を回転させることを含む操作位置および非操作位置に移動させてもよい。
【0029】
本発明のシステムの他の好ましい実施の態様によると、該平板培地の支持用の少なくとも1つの保持器、好ましくはラックを含み、該保持器は該平板培地を搭載したりまたは下ろしたりするために適用される少なくとも操作不能の保持器の位置と、プロセス平板培地の空隙中に含まれるサンプルを処理するために適用される操作可能な位置との間に保持器を移動可能にする作業平板培地などの該システムの構造部材によって移動可能に(たとえば、スライド自在に)支持される。典型的には非操作位置に置かれた時には該保持器は平板培地を搭載したり/下ろしたりするために、システムハウジングの外に少なくとも部分的には存在し、また操作可能位置に置かれるときにはプロセス平板培地中に含まれるサンプルを含んだ核酸を処理するためにシステムハウジングの内側に存在する。そのような実施の態様により、該平板培地は、有利にも該システム中に容易に搭載され、またはそこから容易に除去される。このようにして、サンプルを含む核酸を用いてプロセス平板培地の空隙を充填することは、たとえばプロセス平板培地の空隙中にサンプルを充填し、続いて該プロセス平板培地を該保持器中に置くことで、または該プロセス平板培地を保持器中に置き、続いてプロセス平板培地の空隙中にサンプルを充填することで容易に実行される。
【0030】
移動可能に支持された保持器を提供するにあたり、同じ保持器によりプロセス平板培地および出力平板培地を収容することが特に好ましい。加熱装置および磁場発生装置を用いて、そこに含まれる核酸の抽出のために、該保持器がそれらの底側からプロセス平板培地の空隙にアクセスできることが特に好ましい。
【0031】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、該システムは該核酸の抽出で生じる廃棄流体を受け取るために複数の空隙を持った少なくとも1つの流体廃棄平板培地を含み、その結果流体廃棄平板培地は、サンプルを含む核酸の処理のためのさらなる空間を用意するために該システムの連続した作動で生じる廃棄流体を捨てるために有利に使用される。
【0032】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、該システムは該核酸の抽出で生じる使用された使い捨てピペットチップを受け取るための複数の空隙を持った少なくとも1つのチップ廃棄平板培地を含み、その結果、該チップ廃棄平板培地が該システムの連続した作動の中で生じる使用されたピペットチップを捨てるために有利に使用され、このようにしてサンプル含有の核酸の処理用のさらなる空間を提供する。
【0033】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、少なくとも1つの流体廃棄平板培地および少なくとも1つのチップ廃棄平板培地が廃棄材料を該システムから便利に除去可能にする同一保持器によって支持される。
【0034】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、該システムは核酸を抽出する際にサンプルピペット装置により使用される使い捨てピペットチップで充填された複数の空隙を持つ少なくとも1つのチップ平板培地をさらに含み、該装置は該システム中での使い捨てピペットチップの収納を可能にし、それにより該システムの連続した複数回の作動を可能にする。その場合、同一の保持器により複数のチップ平板培地を支持することが特に好ましく、その結果該システムはチップ平板培地で充填されることが都合がよい。
【0035】
該システムは、周囲の(外的)影響から遮蔽するためにシステムハウジング中に収容してもよい。
【0036】
第2の態様によると、本発明はサンプルを含む複数の核酸の細胞膜などの膜から核酸を自動抽出する新方法を提案する。
【0037】
したがって、サンプルを含む核酸から核酸を自動抽出する方法であって次の工程:すなわち、
(a)プロセス平板培地の空隙中にサンプルを含む該核酸を提供する工程と;
(b)試薬平板培地の空隙中に該サンプルと混合するための試薬を提供するための再使用可能なピペットチップを反復して使用する工程と;
(c)使い捨てピペットチップを用いて該サンプルに該試薬を移し、そこではサンプル−試薬混合物を得るために該試薬平板培地の空隙と使い捨てピペットチップの双方に1つずつ該サンプルの各々が割り当てられることを特徴とする工程と;
(d)該プロセス平板培地の空隙中の該サンプル−試薬混合物を培養し、それにより核酸を放出し、流体を含む放出された核酸を得る工程と;
(e)流体を含む抽出された核酸を得るために、該プロセス平板培地の空隙中の流体を含む該放出された核酸中に含まれる放出された核酸を単離する工程と;
(f)使い捨てピペットチップを用いて流体を含む抽出された該核酸を該出力平板培地の空隙に移し、そこでは流体を含む単離された該核酸の各々が該出力平板培地の空隙と使い捨てピペットチップの双方に一つずつ割り当てられることを特徴とする工程からなることを特徴とする方法を提供する。
【0038】
本発明の方法の好ましい実施の態様によると、サンプルの各々1つに対して、1つの使い捨てピペットチップのみが試薬平板培地の空隙から、そこに1つずつ割り当てられたサンプルを含む核酸を含むプロセス平板培地の空隙まで試薬を移送するため、および得られた流体を含む該抽出された該核酸を、そこから1つずつ割り当てられた該出力平板培地の空隙まで移すために使用される。一方、別のサンプルプロセス経路による高純度核酸抽出を可能にするが、そのような実施の態様は使い捨てピペットチップの極少量の消費を許諾しているのが有利である。
【0039】
または、本発明の方法の他の好ましい実施の態様によると、サンプルの各々に対して1つの使い捨てピペットチップが、そこに1つずつ割り当てられたサンプルを含む核酸まで試薬を移すために使用され、また他の(1つの)使い捨てピペットチップが得られた流体を含む抽出された核酸を、そこから1つずつ割り当てられた出力平板培地の空隙まで移すために使用される。使い捨てピペットチップの少しの消費を許諾するが、特に高純度の核酸抽出は、フレッシュな使い捨てピペットチップを用いて出力平板培地まで抽出された核酸を移送することにより得られる。
【0040】
本発明の方法の他の好ましい実施の態様によると、該再使用可能なピペットチップが連続したピペット操作の中間で洗浄され、それにより物質の持ち越しまたは2次汚染を防ぐ。
【0041】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、使い捨てピペットチップの数は再使用可能なピペットチップの数の整数倍である。
【0042】
本発明の方法の他の好ましい実施の態様によると、たとえばサンプルを含む核酸の処理のためのさらなる空間を提供するために、核酸抽出において生成した廃棄流体を流体廃棄平板培地の空隙に移すため使い捨てピペットチップが使用される。
【0043】
本発明の方法の他の好ましい実施の態様によると、たとえばサンプルを含む核酸の処理のためのさらなる空間を提供するために、該核酸の抽出において生成する使用された使い捨てピペットチップはチップ廃棄平板培地の空隙中に収納される。
【0044】
本発明の他の好ましい実施の態様によると、核酸を放出しまた単離する間に該プロセス平板培地が静止した状態に保たれ、残留する細胞成分からの核酸の単離および核酸の移送(溶出)がサンプルの流出および/または汚染を避けることが有利である。
【0045】
本発明の他のまたさらなる目的、特性および有利な点は次の記述からより充分に明らかとなるであろう。ここに組み入れられまた明細書の1部を構成する添付の図面は、本発明の好ましい実施の態様を説明し、また上述した一般的記述および以下に示す詳細な記述と共に本発明の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のシステムの例示的実施の態様の概略立面図である。
【図2】試薬ピペット装置のピペット操作を図示する図1のシステムの拡大部分図である。
【図3】試薬ピペット装置の他のピペット操作を図示する図1のシステムの他の拡大部分図である。
【図4】サンプルピペット装置のピペット操作を図示する図1のシステムの他の拡大部分図である。
【図5】サンプルピペット装置の他のピペット操作を図示する図1のシステムの他の拡大部分図である。
【図6】サンプルピペット装置の他のピペット操作を図示する図1のシステムの他の拡大部分図である。
【図7】サンプルピペット装置のさらに他のピペット操作を図示する図1のシステムの他の拡大部分図である。
【図8】サンプルピペット装置のさらなる他のピペット操作を図示する図1のシステムの他の拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明を添付の図面を参照して以下詳細に記述するが、図面中では類似の記号表示は類似または同様な要素を示している。ここで図1〜図8を参照して、本発明によるシステムと方法の本発明の例示的実施の態様を説明する。
【0048】
したがって、増幅などのさらなる処理の前に核酸の抽出をするために、細胞溶液を含む核酸などのサンプルを含む複数の核酸の平行処理用システム1を記述する。該システム1は、水平なベース平板培地4上に停止している下部構造3により支持されている水平な作業−平板培地2を含んでおり、水平なベース平板培地4上では、該システム1は実験室ベンチまたは他の適当な表面上に置かれてもよい。
【0049】
該作業−平板培地2には、互いに関して並んで配置されている複数の長方形のリセス5が設けられており、その各々は細長いラック6〜11を収容するために適用されている。図1に示すように、該システム1は6個のラック6〜11を含み、具体的には廃棄ラック6、処理ラック7、チップラック8、第1試薬ラック9、第2試薬ラック10およびボトルラック11を含んでいる。各ラックには、平板培地および容器などの種々の物体を収容するために用いられる複数の保持部分15が設けられている。
【0050】
図1において、廃棄ラック6は互いに関して直線に配置された3個の96−ピペットチップ廃棄平板培地16を用いて搭載されることを示しており、その各々は使用された使い捨てピペットチップを受けるための96空隙の平面アレーと核酸抽出時に生じる廃棄流体を受けるための96ウエルの平面アレーを持つ96−ウエル流体廃棄平板培地17とを持っている。処理ラック7は、互いに関して直線に配置された4個の96−ウエル平板培地を用いて搭載されることを示しており、それらは2つのプロセス平板培地18であり、その各々は核酸の抽出用出発材料として使用されるサンプルを含んだ核酸を受けるための96プロセス平板培地ウエル41と2つの出力平板培地とを持っており、その各々は流体を含む抽出された核酸を受けるための96出力平板培地ウエル42を持っている。
【0051】
チップラック8は、互いに関して直線に配置された4個の96−ピペットチップ平板培地20を用いて搭載されることを示しており、それらはチップ廃棄平板培地16に対して同様の構造を持っており、96使い捨てピペットチップで事前に充填されることになっている。第1および第2の試薬ラック9,10は、サンプルを含む核酸と混合するための試薬を受け取るための96試薬平板培地ウエル40と溶解緩衝液、洗浄溶液および溶出溶液などのサンプルと混合するための種々の試薬を含む複数の試薬容器37とを持っている96−ウエル試薬平板培地21を用いて搭載されることを示している。ボトルラック11は、磁気応答性粒子と酵素と対照試薬の懸濁液を含む複数のボトル23を用いて搭載されることを示している。磁気応答性粒子を含むボトル23は、そこに含まれている粒子を再懸濁させるために加振器22によって振動される。
【0052】
各リセス5には、ラック6〜11がリセス5中に挿入されかつそこからそれぞれ除去されることが可能にさせるシステム1の前面にあるスロット状の開口12が、接近するようになっている。この目的のために、ラック6〜11の各々には互いに対して平行関係で直線的に延びる2つの側面リブ13が設けられており、それはリセス5中に該ラック6〜11を挿入するときに作業−平板培地2により形成された溝14と噛み合い、ラック6〜11を摺動可能に支持する。ラック6〜11の各々はリセス5から完全に引き抜かれ、それぞれ平板培地または容器に入れられまたは取り出される。さもなければ、ラック6〜11の各々をそのリセス5中に完全に挿入することが可能であり、その位置ではラック6〜11の各々の前面28はリセス5の隣接面27と接触する。
【0053】
以上詳細に述べたように、処理ラック7は核酸の抽出用出発材料として使用されるサンプルを含んだ核酸を充填させるための2つのプロセス平板培地18を収容している。本目的のために処理ラック7には、そこに収容されているサンプルを含む核酸の処理をするためにプロセス平板培地18が下から接近可能にするプロセス平板培地18を収容するための2つの底なし保持部分15が設けられている。さらに詳しく述べると、処理ラック7がリセス5中に完全に挿入される場合にプロセス平板培地18の各々に含まれているサンプルを含む核酸は、加熱装置24および磁場発生装置(該図面中では詳細には示されていない)によって核酸の抽出用に処理され、またその両装置は処理ラック7の下に配置され、またプロセス平板培地18の各々に向けて移動可能であり、または移動機構(ここではさらに詳細には示されていない)により、そこから除去することも可能である。加熱装置24が該プロセス平板培地18の各々に向けて移動されるとき、加熱ピン25が空隙中に浸漬できるように、個々のプロセス平板培地18のウエル41の中間に形成される空隙にしたがって配置される突出加熱ピン25の平面アレーが加熱装置24には設けられている。加熱装置24に電流を印加すると、プロセス平板培地18のウエル41中に収容されたサンプルを含む核酸に対して熱エネルギーを印加するために、加熱ピン25がオーム熱を発生する。同様に、磁場発生装置には突出した磁性ピンの平面アレーが設けられており、それらは磁場発生装置が個々のプロセス平板培地18に向けて移動するときには、磁性ピンが該プロセス平板培地18のウエルの間に空隙にしたがって配置されていて、磁性ピンが空隙中に浸漬される。該磁性ピンは永久磁石材料により作られており、ウエル41間の空隙中に浸漬するときには、そこに含まれている核酸を結合した磁性応答性粒子がサンプルを含む核酸を充填したウエルの内壁に対して引かれ、またその上で保持される。または該磁性ピンは、電流を印加したときには磁化可能な電磁石として形成されてもよい。加熱装置および磁場発生装置の双方は互いに反対の関係でキャリヤー26に固定される。該加熱装置および磁場発生装置が状況に応じて個々のプロセス平板培地18に対面するか、またはそこから向きを変えるようにキャリヤー26は回転軸28の周りに回転可能に駆動される。キャリヤー26の方向転換操作を、それらの並進運動に組み合わせて個々のプロセス平板培地18に対して加熱装置および磁場発生装置がそれぞれ操作位置および非操作位置に動かされ、そこでは操作位置にあるときには、加熱ピンまたは磁性ピンはそこに収容されたサンプルを含む核酸を処理するために個々のプロセス平板培地18のウエル41の空隙中に浸漬することができる。たとえば操作位置において、加熱装置24をスタートさせると、磁場発生装置はキャリヤー26を垂直に下げる操作位置に移動し、それを180度方向転換させプロセス平板培地18に向けてそれを垂直に上げる。
【0054】
図2および図3に図示しているように、該システム1は互いに対して直列に配置され、また試薬平板培地21の各々に試薬を移送するために使用される4つの試薬ピペット30が設けられた試薬ピペッター29(多重ピペット装置)をさらに含んでいる。各試薬ピペット30には、スチールで作られておりまた試薬ピペット30に固く固定される再使用可能なピペットチップ31が設けられている。
【0055】
試薬ピペット30によって洗浄流体(たとえば、試薬ピペッター29の液体システム流体)で満たされている4つの洗浄空隙36からなる洗浄装置35を連続ピペット操作の中間に再使用可能なピペットチップ31を洗浄するために使用できる。洗浄空隙36は再使用可能なピペットチップ31の間隔距離にしたがって、互いに対して直列に配置されている。
【0056】
試薬ピペッター位置決めシステム(ここでは、さらに詳細には記述しないが)に基づいてチップラック8、処理ラック7および廃棄ラック6を含まないがボトルラック11、第1および第2試薬ラック9,10および洗浄装置35を含む領域をカバーする移動範囲内で試薬ピペッター29を移動してもよい。該試薬ピペッター位置決めシステムは従来の3ビーム並進システムなどの平面での2方向移動およびそれに対して垂直の第3方向移動における移動部品を持っている。
【0057】
図4〜図8中に図示しているように、該システム1はアレーで配置された96サンプルピペット33が設けられ、流体を各試薬平板培地21に向けてまたはそこから移送するために使用されるサンプルピペッター32(多重ピペット装置)とプロセス平板培地18と出力平板培地19とをさらに含んでいる。試薬ピペッター位置決めシステム(ここではさらに詳細には記述しないが)に基づいて、ボトルラック11を含まないが第1および第2試薬ラック9,10、チップラック8、処理ラック7および廃棄ラック6を含む領域をカバーする移動範囲内でサンプルピペッター32を移動してもよい。該試薬ピペッター位置決めシステムは、従来の3ビーム並進システムなどの平面での2方向移動およびそれに対して垂直の第3方向移動における移動部品を持っている。
【0058】
このようにして試薬ピペッターおよびサンプルピペッターは、第1および第2試薬ラック9,10を排他的に包含する領域において重なり合う移動範囲を持っている。
【0059】
各サンプルピペット33にはサンプルピペット33と擦られるようにして噛み合わされ、そこに脱着可能に固定されるプラスチック材料製の使い捨てピペットチップ34が設けられている。基本的には、ピペットチップとピペット間のカップリングは当業者にはよく知られており、またたとえば欧州特許第1171240号中に開示されている。
【0060】
該システム1は、まださらに所定のプロセス操作プランにしたがって、核酸の自動抽出を制御するための制御器(図面中には示されていない)を含んでおり、それはたとえばプロセス操作プランにしたがって操作を実行する指示が設けてあるコンピュータ読み出しプログラムを実行するプログラム可能な論理制御器として具現化してもよい。
【0061】
平板培地および流体容器の特定番号は図面中に示されているが、これらの部品の番号は核酸の抽出に対する特定の必要性にしたがって変化してもよい。ラック上に搭載されると示された96−ウエル平板培地および96−ピペットチップ平板培地の代わりに、核酸の抽出ニーズにしたがって、状況に応じて48−ウエル平板培地および48−ピペットチップ平板培地などの異なったサイズの平板培地を使用してもよい。
【0062】
図2〜図8を参照してシステム1を用いた核酸抽出方法の例示的実施態様を説明する。
【0063】
プロセス平板培地18の1つまたは双方中に直接充填され、核酸抽出(図面中には詳細に示されていない)用の出発材料として使用されるサンプルを含む複数の核酸(たとえば、細胞溶液)を提供することから、本方法はスタートする。サンプルを含む核酸を用いて、各プロセス平板培地18を手動でまたは自動的に事前に充満させてもよく、またその後処理ラック7上に搭載することもできるし、または状況に応じて処理ラック7をすでに操作位置に置いてしまったときにサンプルで充満させてもよい。次のことに対しては、ただ1つのプロセス平板培地18の96プロセス平板培地ウエル41がサンプルを含む核酸で手動で事前に充填されると仮定する。
【0064】
図2および図3中に図示されているように、流体容器37中に含まれる溶解緩衝液は試薬ピペッター29を用いて試薬平板培地21の1つ(または、状況に応じて両方)に移送される。より詳しく述べると、4つの別の試薬区画を含む試薬容器37上に再使用可能なピペットチップ31を置いてスチール製の再使用可能なピペットチップ31は垂直下方向に移動し、試薬容器37の各区画の金属フォイルを貫通し、試薬を吸引するためにそこに含まれている試薬中に浸漬し、またそれを試薬平板培地21の試薬平板培地ウエル40まで移送し、試薬平板培地21中の96試薬の数が得られるまでそれが必要なだけ反復される。さらに具体的には、単一ピペット操作を行うときには試薬平板培地21の4つのウエル40に対して平行に試薬を移送し、その結果試薬ピペッター29の(同じ)再使用可能なピペットチップ31を用いて96試薬を提供する1〜24のピペット操作を行わなければならない。しかし該装置は、96サンプル未満の場合に操作可能であり、またそのために、より少ないピペット操作も試薬をサンプルに添加するために充分となることが理解されなければならない。
【0065】
図4および図5中に図示したように、サンプルピペッター32の使い捨てピペットチップ34を用いて試薬平板培地21中に移送された試薬(溶解緩衝液)は、試薬平板培地ウエル40からプロセス平板培地18のサンプル充填プロセス平板培地ウエル41に同時に平行して移送される。プロセス操作プラン中で特定したように、サンプルを含む核酸に1つずつ割り当てられた試薬平板培地40中に含まれる試薬は、そのサンプルに1つずつ割り当てられた使い捨てピペットチップ34を用いてそのサンプルまで移送される(この1つずつの割り当ても、試薬平板培地の1つの空隙はプロセス平板培地の空隙に対して1つずつ割り当てられることを意味している)。したがって、96使い捨てピペットチップ34はサンプルを含む96核酸に平行して96試薬を移送するために使用される。
【0066】
その後使い捨てピペットチップ34の場合は、試薬の移送と移送された試薬とサンプルの混合の双方に使用されるが、同じ使い捨てピペットチップ34を用いて1回以上の吸い/吹き操作を行って試薬(溶解緩衝液)をサンプルと混合させる。
【0067】
図6中に図示したように、そこに含まれる核酸を放出させるために、その後得られたサンプル−試薬混合物を処理する。まず細胞を培養すると、加熱装置24はサンプル−試薬混合物を含むプロセス平板培地18に向けて移動し、その結果加熱ピン25はプロセス平板培地ウエル41の間の空隙中に浸漬できる。加熱装置24に電流を印加すると、オーム熱が発生され、また伝導的に細胞を培養するためにサンプルの方へ移送され、それらを破裂させて周囲の媒体中に核酸を放出させる。プロセス平板培地18は細胞の培養の間は静止されていることが好ましい。
【0068】
溶解緩衝液が試薬平板培地から除去されたのち、そこに含まれる粒子を再懸濁させるために加振器22により新しく振動されたボトル23からの磁気応答性粒子の懸濁液が試薬ピペッター29の再使用可能なピペットチップ31によって試薬平板培地40へと移送される。懸濁液を含む磁気応答性粒子は、その後使い捨てピペットチップを経由して、試薬平板培地ウエル40からプロセス平板培地ウエル41へと移送される。これらの懸濁液を取り上げるために、最終的には沈降したかもしれない粒子を使い捨てピペットチップを用いた吸い/吹き操作によって再懸濁させる。サンプル−試薬混合物中に含まれる磁気応答性粒子(たとえば、ガラス表面と磁気応答性コアを持つ磁気応答性粒子)は、放出された核酸に結合し、それにより核酸の結合した磁気応答性粒子を得る。
【0069】
磁気応答性粒子と核酸の結合に続いて、分子の結合した磁性粒子の操作を含む磁気単離工程が行われ、そこでは磁場発生装置(図示されていない)が、プロセス平板培地18に向けて移動され、その結果磁性ピンはプロセス平板培地18のプロセス平板培地ウエル41の中間の空隙中に浸漬することができて、それにより磁場を印加し、それにより分子の結合した磁性粒子がウエルの内壁へと引き取られ、またその上に保持される。分子の結合した磁性粒子がウエルの内壁上に保持されると、サンプルの上澄み流体(廃液)を指向することができ、また図7に図示するように使い捨てピペットチップ34を用いて廃棄ラック6の廃棄平板培地17中に分配される。
【0070】
上澄み流体の除去に続いて、少なくとも分子の結合した磁性粒子の操作を含む他の洗浄工程が行われる。試薬ピペッター29の再使用可能なピペットチップ31によって、洗浄緩衝液は流体容器37から試薬平板培地ウエル40へと移送される。その後、該洗浄緩衝液は使い捨てピペットチップ34を用いて試薬平板培地ウエル40からプロセス平板培地ウエル41へと移送される。毎回、新鮮な洗浄緩衝液は、プロセス平板培地ウエル41中に移送され、磁場が除去されかつ分子の結合した磁性粒子は、洗浄緩衝液中で再懸濁される。プロセス平板培地中で洗浄溶液を用いた吸い/吹き操作によって再懸濁を行うことができる。その後磁性粒子を単離するために磁場を印加した後、上澄み流体が除去される。
【0071】
試薬ピペッター29の再使用可能なピペットチップ31によって試薬平板培地40へと移送された溶出緩衝液は、使い捨てピペットチップ34を用いて試薬平板培地ウエル40からプロセス平板培地ウエル41へと移送される。その後核酸は、溶出緩衝液により磁気応答性粒子から剥離される。磁場を印加することにより磁気応答性粒子は、再び単離され、また抽出された核酸を含む上澄み流体は使い捨てチップによって吸引され、また出力平板培地中へと分配される。新鮮な使い捨てピペットチップ34を使用することが好ましく、それにより流体を含む純粋な抽出された核酸が得られる。流体を含む単離された核酸(すなわち、上澄み流体)の各々1つが出力平板培地の空隙および使い捨てピペットチップ34の双方へと1つずつ割り当てられる。流体を含む単離された核酸は、さらなる処理または核酸増幅などの核酸の分析に用いてもよい。
【0072】
プロセス平板培地18は、培養工程および磁気単離工程の間および中間に静止されることが好ましい。
【0073】
サンプルピペッター32の使い捨てピペットチップ34を用いた上記のピペット操作において、サンプルを含む核酸(すなわち、プロセス平板培地ウエル41)と種々の試薬のピペット操作に使用される出力平板培地ウエル42および使い捨てピペットチップ34の双方との間に1つずつ割り当てることは、維持される。
【0074】
洗浄装置35を用いて、流体容器37およびボトル23からそれぞれ試薬平板培地21の出力平板培地ウエル42へと試薬を移送する前に、同じまたは異なった試薬のピペットの中間で試薬ピペッター29の再使用可能なピペットチップ31を洗浄してもよい。洗浄空隙36に向けて再使用可能なピペットチップ31を垂直に低下させるときに再使用可能なピペットチップ31の洗浄を行ってもよく、再使用可能なピペットチップ31が、それらの表面を洗浄するために液体システム流体中に浸漬するまで容器中に液体システム流体を吹き付ける。
【0075】
したがって、
(a)再使用可能なピペットチップ31を用いて専用の試薬平板培地21中に試薬を供給し;
(b)使い捨てピペットチップ34を用いてプロセス平板培地18中に設けられたサンプルを含む核酸に試薬を移送し;
(c)試薬平板培地のウエルと使い捨てピペットチップ34の双方とサンプル(すなわち、プロセス平板培地ウエル41)の間に1つずつの割り当てを維持しながら同じ使い捨てピペットチップ34を用いて核酸放出とプロセス平板培地18中での磁気単離操作とを実行し;また
(d)出力平板培地ウエル42と使い捨てピペットチップ34の双方とプロセス平板培地ウエル41の間に1つずつの割り当てを維持しながら、同じまたは新鮮な使い捨てピペットチップ34を用いて出力平板培地19の出力平板培地ウエル42に抽出された核酸を移送すると;
各サンプル用のサンプルプロセス経路を単離することにより物質の持ち越しおよびサンプルの2次汚染の拡大されたリスクも無く、1回の核酸抽出操作当たりの使い捨て品の比較的少ない消費を達成できる。さらに培養および磁気単離工程の間および中間において、プロセス平板培地18を静止することは、核酸の抽出を行うときにサンプルの汚染および/または吹きこぼれのリスクを削減するので有利である。
【0076】
明らかに本発明の多くの改質および変更は上記の記述に照らして可能である。したがって付帯した請求項の範囲以内で具体的に考案した以外で本発明を実行してもよいことは、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0077】
1 システム
2 作業−平板培地
3 下部構造
4 ベース平板培地
5 リセス
6 廃棄ラック
7 処理ラック
8 チップラック
9 第1試薬ラック
10 第2試薬ラック
11 ボトルラック
12 開口
13 リブ
14 溝
15 保持部分
16 チップ廃棄平板培地
17 流体廃棄平板培地
18 プロセス平板培地
19 出力平板培地
20 チップ平板培地
21 試薬平板培地
22 加振器
23 ボトル
24 加熱装置
25 加熱ピン
26 キャリヤー
27 隣接表面
28 前面
29 試薬ピペッター
30 試薬ピペット
31 再使用可能なピペットチップ
32 サンプルピペッター
33 サンプルピペット
34 使い捨てピペットチップ
35 洗浄装置
36 洗浄空隙
37 流体容器
38 容器キャップ
39 ボトルキャップ
40 試薬平板培地ウエル
41 プロセス平板培地ウエル
42 出力平板培地ウエル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3枚の平板培地(18,19,21)の少なくとも1セットからなり、複数の空隙を有する各平板培地は該核酸を処理するためのプロセス平板培地(18)と、該プロセス平板培地(18)の空隙中に含まれているサンプルに試薬を混合させるための試薬平板培地(19)と、該抽出された核酸を出力するための出力平板培地(21)とを含むセットからなり、サンプルを含む核酸から核酸を自動抽出するシステム(1)であって、該システム中では:
該試薬は、該試薬を提供するために反復して使用される再使用可能なピペットチップ(31)が設けられている複数の試薬ピペット(30)からなる試薬ピペット装置(29)を用いて、該試薬平板培地(19)の空隙中に提供され;
該試薬は、サンプル−試薬混合物を得るために該試薬の使い捨てピペットチップ(34)が設けられた複数のサンプルピペット(33)からなるサンプルピペット装置(32)を用いて、プロセス平板培地(18)中に収容された該サンプルに移され、
該プロセス平板培地(18)中に収容された該サンプル−試薬混合物は、核酸を放出するために培養装置(24,25)によって培養され;
該プロセス平板培地(18)中に収容された該放出された核酸は、単離装置により単離されまた流体を含む抽出された核酸を得るために放出され;
該流体を含む抽出された核酸は、使い捨てピペットチップ(34)により該出力平板培地(19)の空隙に移され;
そこでは、該サンプルの各々が該試薬平板培地(19)の空隙と、少なくとも1つの該使い捨てピペットチップ(34)と該出力平板培地(19)の空隙に、一つずつ割り当てられることを特徴とするシステム(1)。
【請求項2】
前記サンプルを含む空隙の数は該試薬を含む空隙の数に等しく、そこでは各サンプルは、該試薬平板培地(21)の空隙と、少なくとも1つの該使い捨てピペットチップ(34)と、該出力平板培地(19)の空隙とに一つずつ割り当てられることを特徴とする請求項1記載のシステム(1)。
【請求項3】
試薬ピペット装置(29)の移動の第1範囲およびサンプルピペット装置(32)の移動の第2範囲が、試薬平板培地(21)を含む領域で重なり合っていることを特徴とする請求項1または2記載のシステム(1)。
【請求項4】
再使用可能なピペットチップ(31)の洗浄用に適用される洗浄装置(35)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記平板培地(18,19,21)の支持用の少なくとも1つの保持器(6〜11)を含み、該保持器は該平板培地を搭載したりまたは下ろしたりするために用いられる少なくとも操作不能の保持器の位置と、核酸の抽出用に用いられる操作可能な保持器の位置との間に移動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記核酸の抽出で生じる廃棄流体を受け取るために、複数の空隙を持った少なくとも1つの流体廃棄平板培地(17)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記核酸の抽出で生じる使用されたピペットチップを受け取るための複数の空隙を持った少なくとも1つのチップ廃棄平板培地(16)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記核酸の抽出で生じる使用された使い捨てピペットチップ(34)で満たされることになっている複数の空隙を持った少なくとも1つのチップ平板培地(20)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシステム(1)。
【請求項9】
サンプルを含む核酸から核酸を自動抽出する方法であって、次の工程:すなわち、プロセス平板培地(18)の空隙中に該サンプルを提供する工程と;
試薬平板培地(19)の空隙中に該サンプルと反応するための試薬を提供するための再使用可能なピペットチップ(31)を、反復して使用する工程と;
使い捨てピペットチップ(34)を用いて該サンプルに該試薬を移し、そこではサンプル−試薬混合物を得るために該試薬平板培地の空隙と使い捨てピペットチップ(34)の双方に1つずつ、該サンプルの各々が割り当てられることを特徴とする工程と;
核酸を放出するために、該プロセス平板培地(18)中に収容された該サンプル−試薬混合物を培養する工程と;
流体を含む抽出された核酸を得るために、該プロセス平板培地(18)中に収容された該放出された核酸を単離する工程と;
前記抽出された流体を含む核酸を使い捨てピペットチップ(34)を用いて、前記試薬平板培地(21)の空隙に移す工程を含み、
前記抽出された流体を含む核酸の各々が前記出力平板培地(19)の空隙と、該使い捨てピペットチップ(34)の空隙の双方に一つずつ割り当てられてなることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記サンプルの各々1つに対して、1つの使い捨てピペットチップ(34)が試薬を該サンプルまで移すために使用されまたそこから得られた流体を含む該抽出された該核酸を該出力平板培地(19)の空隙まで移すために使用されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルの各々1つに対して、1つの使い捨てピペットチップ(34)が試薬を該サンプルまで移すために使用されまた他の使い捨てピペットチップ(34)が、そこから得られた流体を含む該抽出された該核酸を該出力平板培地(19)の空隙まで移すために使用されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記再使用可能なピペットチップ(31)が連続のピペット操作の中間で洗浄されることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
核酸抽出において生成した廃棄流体を流体廃棄平板培地(17)の空隙に移すために、該使い捨てピペットチップ(34)が使用されることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記核酸の抽出において生成する該使用された使い捨てピペットチップ(34)は、チップ廃棄平板培地(16)の空隙中に収納されることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記核酸を放出しまた単離する間に、該プロセス平板培地(18)が静止した状態を保つことを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−127941(P2010−127941A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−270047(P2009−270047)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】