説明

核酸担持ウイルス様粒子を用いた遺伝子発現の下方制御

本発明は、真核細胞へのRNA干渉(RNAi)誘導分子の導入のためのウイルス様粒子の組成物、及びRNAi誘導分子による複数の真核細胞の細胞型特異的な形質導入の方法に関する。本発明はさらに、少なくとも1つの内因性遺伝子の発現比率の増加、並びに/又は少なくとも1つの内因性遺伝子及び/若しくは外来核酸、特にウイルス核酸の望ましくない発現に関連した疾患若しくは疾患状態の診断、予防及び/若しくは治療の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真核細胞へのRNA干渉(RNAi)誘導分子の導入のためのウイルス様粒子の組成物、及びRNAi誘導分子による複数の真核細胞の細胞型特異的な形質導入の方法に関する。本発明はさらに、少なくとも1つの内因性遺伝子の発現比率の増加に、並びに/或いは少なくとも1つの内因性遺伝子及び/又は外来核酸、特にウイルス核酸の望ましくない発現に関連した疾患若しくは疾患状態の診断、予防及び/又は治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在知られている遺伝子治療方法は、所望の遺伝子産物、主に治療上有効なタンパク質をコードするDNA構築物による細胞のトランスフェクションに基づいている。これによって使用される方法は、通常in vitroでの方法に適している。細胞の自然環境からの事前に単離せずに特異的な細胞型のターゲット・トランスフェクション、即ち選択的トランスフェクションを行うことは、例えば電気穿孔又はリポソームトランスフェクションのような最先端の方法の多くでは実現され得ない。
【0003】
in vivoでの組織特異的なDNAトランスファーに関する方法はこれまでのところ、ウイルストランスファー系に依存している。それにも関わらず、細胞配列(cellular sequences)での組換えの潜在的な危険性に起因して、これらは、ほぼ予測することができない安全上のリスクを負う。治療用遺伝子の輸送にとって現在好ましい系であるアデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスの繰り返しのin vivoでの適用は、大部分の患者におけるそれらの高い免疫原性のため不可能である。さらに、アデノウイルスの複雑な構造及びアデノウイルスゲノムの構造に起因して、標的部位で治療用DNAを十分な程度に且つ適切な形態で供給することは、相当な尽力によってのみ可能である。
【0004】
特に、望ましくない組換え、及び永続的にゲノムを改変させることに伴う危険性を考慮すると、遺伝子治療方法は、例えば急性感染のような一過的に生じる疾患状態の治療に関して検討することができなかった。例えばリポソーム及びDNA縮合分子のような非ウイルス系は、実際にこれらの欠点を回避したが、今度はレトロウイルス系と同様に、かなり低いトランスファー効率及び標的細胞特異性を示した。
【0005】
したがって、これらの問題を回避するために、臨床上適用可能な遺伝子治療用組成物及び方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、標的細胞の細胞ゲノムの完全性を維持すると同時に、in vivo及びin vitroの両方における真核細胞への遺伝子治療上有効な分子の高い効率での細胞型特異的な導入を可能にする組成物を提供することであった。本発明のさらなる目的は、病原性感染症の治療に関する、又は改変された遺伝子発現に関連する疾患症状の治療及び/若しくは診断に関する非常に効率的な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、これらの目的は、少なくとも1つのウイルスキャプシドタンパク質の幾つかの分子で構成されるウイルス様粒子(「ウイルス様粒子」;VLP)を含む組成物であって、少なくとも1つのRNA干渉(RNAi)誘導分子が上記VLP中に含まれることを特徴とする組成物により解決された。標的細胞へのトランスファー後に、RNAi誘導分子は、所定の遺伝子の発現の有効な下方制御を引き起こす。
【0008】
RNA干渉(RNAi)は、1つ又は複数の遺伝子の発現を下方制御するための進化的に保存されたメカニズム(「遺伝子サイレンシング」)である。複数の真核生物は、ウイルスに対するRNAi及びトランスポゾンエレメントの発現を用いて自身を防御することが可能である。RNAiを用いた遺伝子発現の下方制御の原理は、一方では、例えば21ヌクレオチド〜28ヌクレオチドを含む短RNA分子、いわゆる低分子干渉RNA分子(「低分子干渉RNA」、siRNA)と転写産物との相互作用に基づく、標的遺伝子の転写により産生されるRNA(特にmRNA)の配列特異的な分解に基づく。RNA分解酵素III ダイサーにより触媒されて、mRNA分子の標的分解はまず、前駆分子からの二重鎖siRNA分子の形成、及びこれらの分子の続くプロセシングに始まり、続いて二重鎖siRNAの一方の鎖とmRNA分子とのハイブリダイゼーションが行われ、二重鎖siRNA−mRNAハイブリッド分子を形成する。次に、siRNAとハイブリダイズした領域内部のmRNAの切断が起きる。それぞれこの切断又は加水分解はまず、ヌクレオチド鎖の内部切断的に行われる(例えば、RISC複合体のエンドヌクレアーゼアルゴノート2により触媒される)。最終的に、このようにして生成される切断産物は、RISC複合体のエキソヌクレアーゼにより加水分解される。mRNA転写産物の標的分解の原因として、標的遺伝子の発現が少なくとも部分的に抑制される。
【0009】
他方で、遺伝子の発現はまた、翻訳レベルで下方制御することができる。これを担うエフェクター分子はマイクロRNA(miRNA)と称され、これは、前駆RNAのヘアピン構造(「ヘアピン」)から始まって、エンドヌクレアーゼのドローシャ、パシャ(Pasha)及びダイサーを含む幾つかのプロセシング工程を経て形成される。標的mRNAとのmiRNAの部分的相補性のため、miRNAは、その翻訳を阻害する。
【0010】
細胞培養に関する研究により、それぞれ外因的に供給されるsiRNA又はmiRNAはまた、ヒト細胞を含む真核細胞(例えば、哺乳類細胞)においてRNA干渉を誘導することができることが示されている。低いトランスファー効率のため、真核細胞へRNAi誘導分子を導入する従来の方法は、病原性ウイルスによる感染症の治療に関する、若しくは改変された遺伝子発現に関連する疾患の治療に関する治療上のアプローチとしてのこのメカニズムの使用を可能にしないか、又は非常に限られた程度でしか可能にしない。
【0011】
RNAi誘導分子は、標的RNAのプロセシング、即ち標的RNAの分解を引き起こすために、少なくとも1つのポリヌクレオチド鎖が、標的RNA(好ましくは標的mRNA)に対して十分に相補的である配列を有するRNA分子を意味するものとする。RNAi誘導性であるためには、RNAi誘導分子と標的RNAの領域との間の相補性が、ハイブリダイゼーション及び続くプロセシングを達成するために十分であることが要される。例えば、相補性は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%であり、ここで5’末端及び/又は3’末端にて、並びにRNAiエフェクター分子のオーバーハングにて、標的RNAに対して相補的ではないヌクレオチドもまた存在し得る。
【0012】
RNAiを誘導するために、幾つかの経路をたどることができる。それによって、エフェクター分子、即ちsiRNA分子及び/又はmiRNA分子の直接的なトランスファーは、1つの可能性を表す。siRNA分子は好ましくは、19ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、好ましくは20ヌクレオチド〜28ヌクレオチドの長さを有する、特に好ましくは単鎖それぞれが21ヌクレオチド〜23ヌクレオチドの長さを有する二重鎖RNA分子を意味するものとする。siRNA分子はまた、19ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、好ましくは20ヌクレオチド〜28ヌクレオチドの長さを有する、特に好ましくは21ヌクレオチド〜23ヌクレオチドの長さを有する単鎖RNA分子を意味し、ここで単鎖RNA分子は、標的RNA、特に標的mRNAの配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に99%を上回って相補的であり、また標的RNAへのsiRNAの結合は、配列特異的な分解を達成する。好ましくは、siRNA分子は、1ヌクレオチド〜3ヌクレオチドの3’側のオーバーハングを有する。
【0013】
miRNAは、19ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、好ましくは20ヌクレオチド〜28ヌクレオチドの長さを有する、特に好ましくは21ヌクレオチド〜23ヌクレオチドの長さを有する単鎖RNAi誘導分子を意味するものとし、これは、標的mRNAとのハイブリダイゼーション後に、それらの分解を達成することができるとともに、翻訳の阻害を達成することができる。
【0014】
或いは、標的細胞のsiRNA/miRNA生合成装置に関する基質として機能する実際の有効なエフェクター分子の前駆分子、即ちsiRNA及び/又はmiRNAの前駆分子を供給することも可能である。これらとしては、例えば、それぞれエンドヌクレアーゼ(例えば、ダイサー、ドローシャ及び/又はパシャ)によりsiRNA分子又はmiRNA分子へプロセシングされるRNA前駆分子(例えば、二重鎖RNA(dsRNA))又は短ヘアピンRNA分子(shRNA)が挙げられる。これに関して、例えば、27ヌクレオチドを上回る、好ましくは30ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド又はそれ以上の長さを有するdsRNA分子又は短ヘアピンRNA分子(shRNA)、最も好ましくは30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドの長さを有するdsRNA分子が使用され得る。
【0015】
この他に、DNAベースのRNAiアプローチを用いてRNAi誘導分子を標的細胞へ導入することも可能である。これに関して、dsRNA、shRNA、siRNA及び/又はmiRNAをコードするDNA構築物が創出され、ここでコードエレメントは、標的細胞中でdsRNA、shRNA、siRNA及び/又はmiRNAの発現を可能にする調節エレメントの制御下にある。かかる制御エレメントの例は、ポリメラーゼIIプロモーター又はポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6又はH1)である。
【0016】
驚くべきことに、本発明による組成物を使用して、最も多様な種類のRNAi誘導分子を、細胞型特異的な態様で非常に高い効率で標的細胞へ導入することができることが今回見出された。それによって、本発明による組成物を用いて導入されるRNAi誘導分子は、病原性生物の核酸の発現により、又は内因性遺伝子の発現の増加若しくは望ましくない発現により引き起こされる疾患若しくは疾患状態の治療、診断及び/又は予防におけるRNA干渉のメカニズムの使用を今回可能にする程度にまで標的遺伝子の発現の下方制御を達成する。そのため、本発明による組成物を使用して、規定の二次構造を有するRNA分子を細胞へ導入することができ、ここで導入されるRNA分子は、それらのコンホメーションのため標的細胞のRNAi生合成装置に関する基質として機能し、その結果標的遺伝子の発現の効率的な下方制御が可能となるということは、完全に驚くべき発見であった。したがって、本発明による組成物を用いて、dsRNA及びshRNAのようなsi/miRNA前駆分子は、それらが細胞中でsi/miRNA生成酵素複合体により基質として認識されて、標的遺伝子の発現の配列特異的な下方制御のエフェクター分子へ効率的にプロセシングされるように標的細胞へ導入させることができる。さらに、DNAウイルスに由来するVLPでさえも、それぞれ標的細胞へのsiRNA若しくはmiRNA、又はそれらの前駆分子(例えば、dsRNA若しくはshRNA)のトランスファーに使用することができることは驚くべきことであった。
【0017】
さらに、RNAi誘導分子はまた、蛍光基及び/若しくは3’−dTdTオーバーハングのような5’並びに/又は3’修飾を含み、真核細胞における所定の遺伝子の発現の下方制御に影響を及ぼす修飾RNA分子を包含するものとする。
【0018】
本発明によれば、RNAi誘導分子はさらに、ヌクレオチド配列中に1つ又は幾つかのリボヌクレオチドを有する類似体を含み、真核細胞における所定の遺伝子の発現の下方制御に影響を及ぼすRNA分子を意味するものとする。これらのリボヌクレオチド類似体は、例えばRNA分子の構造安定性又はリボヌクレアーゼに対する安定性を増大させることができる。リボヌクレオチド類似体は当業者に既知であり、元のRNA分子と比較して、塩基修飾、糖修飾(例えば、リボースの2’−OH基の修飾)及び/又はリン酸骨格修飾により修飾される。
【0019】
したがって、VLP内に、単一型のRNAi誘導分子、即ちsiRNA、dsRNA、shRNA若しくはmiRNA又はそれらの前駆分子、又はコードDNAがパッケージングされ得る。それにもかかわらず、異なるタイプのRNAi誘導分子もまた、VLP中に含まれ得る。本発明による組成物のRNAi誘導分子は、1つ又は幾つかの標的遺伝子に対して、且つ/又は単一標的遺伝子の同じ配列若しくは異なる配列に対して作用し得る。
【0020】
本明細書において、「遺伝子に対して作用する」という用語は、RNAi誘導分子が標的遺伝子のRNA分子、好ましくはmRNA分子の配列特異的な分解に関する配列情報を含むものとして使用されるものとする。
【0021】
本発明によれば、RNAi誘導分子は、1つ又は幾つかの遺伝子に対して作用することができ、その遺伝子の発現は下方制御されることになる。好ましくは、本発明による組成物のRNAi誘導分子は、発現が活性化している遺伝子に対して作用し、その発現は病的状態と相関する。
【0022】
特に好ましくは、本発明による組成物は、病原体、例えば病原性ウイルスの少なくとも1つの遺伝子に対して作用するRNAi誘導分子を含有する。さらに、本発明による組成物は、少なくとも1つの内因性遺伝子に対して作用するRNAi誘導分子を含有することができ、ここで内因性遺伝子の発現及び/又は内因性遺伝子の発現の増加は、病的状態と相関する。かかる細胞内因性遺伝子に関する例は、例えば腫瘍関連遺伝子、自己免疫関連遺伝子、代謝疾患関連遺伝子、特に神経変性疾患及び一般的な神経疾患に関連する遺伝子である。さらなる例は、感染性疾患に関連する内因性遺伝子(宿主因子)並びに栄養失調症及び早老疾患に関連する遺伝子(対立遺伝子特異的、例えばエメリン、ラミンA/C、FACE−1等)である。
【0023】
本発明による組成物のVLPは、1つのタイプのキャプシドタンパク質で、又は幾つかの異なるキャプシドタンパク質で構成され得る。好ましくは、本発明による組成物は、1つのタイプのキャプシドタンパク質で構成されるVLPを含有する。特に好ましくは、そのキャプシドタンパク質が、in vivo及びin vitroの両方において適切な条件下でVLPへと併せて構築するための固有の特性を有するVLPが使用され、即ち、さらなる補助因子は、単量体タンパク質からのVLPの形成に要されない。
【0024】
VLP:RNAi誘導分子の質量の比は通常、1:100〜100:1、好ましくは1:50〜50:1、特に好ましくは1:20〜20:1、最も好ましくは1:1〜20:1の範囲で見出される。
【0025】
好ましくは、例えば標準の(authentic)ウイルス核酸のような標準のウイルスの他の構成成分を含まないVLPが使用される。ヒトJCウイルス(JCV)のキャプシドタンパク質VP1で構成されるVLPの使用が特に好ましい。JCVはポリオーマウイルスの属に属し、そのウイルスゲノムは、二重鎖DNAの形態でキャプシド内部に存在する。
【0026】
特定の実施形態では、VLPは、組換え的に生産されたキャプシドタンパク質で構成される。本発明による「キャプシドタンパク質」という用語は、例えば野生型VP1のような各々のウイルスの野生型株のキャプシドタンパク質に加えて、キャプシドタンパク質の修飾形態、即ち例えば置換、挿入及び/又は欠失のような突然変異により野生型キャプシドタンパク質と異なるタンパク質も含む。組換えVP1を生産するためには、好ましくは配列番号1に示されるような配列、遺伝子コードの縮重との関連からこの配列に相当する配列又はストリンジェントな条件下で上記配列とハイブリダイズする配列を有する核酸が使用され、それによって核酸配列又はこの配列を含有する組換えベクターは、適切な宿主細胞へ導入されて、宿主細胞は、核酸配列の発現が行われる条件下で培養されて、タンパク質は、細胞又は細胞上清から単離される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は好ましくは、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual,Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに従って規定され、68℃にて0.1×SSC、0.5% SDS中で30分の洗浄工程を含む。
【0027】
配列番号1による核酸によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号2に示される。本発明では、好ましくは、配列番号2又は上記配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含有するVP1ポリペプチドが使用され、ここで同一性は配列番号2の全領域にわたって確定される。
【0028】
さらに好ましい実施形態では、アミノ酸配列がN末端領域で、例えば25のN末端アミノ酸領域で修飾されたVP1タンパク質が使用される。その際、好ましくは、異種核局在化シグナルが、VP1のアミノ酸配列へ導入される。好ましい核局在化シグナルは、アミノ酸配列CPGAAPXP(式中、X及びXは任意のアミノ酸を意味し、好ましくはいずれの場合でもKを意味する)を含有し、例えば、SV40又はBKVの核局在化シグナルに基づく。特に好ましい核局在化シグナルのアミノ酸配列を図4Aに示す。
【0029】
好適な修飾VP1タンパク質(VP1−Mut2)をコードする核酸配列は、配列番号3に示される。相当するアミノ酸配列は、配列番号4に示される。したがって、本発明の目的の1つは、好ましくは上述したような異種核局在化シグナルを含有する修飾JCV−VP1タンパク質、それをコードする核酸及び少なくとも1つの適宜修飾されたVP1タンパク質を含有するVLPであり、ここで上記VLPは、活性剤、特に核酸だけでなく、他の分子も任意で含有することができる。
【0030】
使用される宿主/ベクター系に応じて、組換えキャプシドタンパク質の単離は、直接的に宿主細胞から、及び/又は細胞培養上清から行われる。組換え方法の利点は、主としてVLPが簡素な態様で高純度且つ大量に得られ得るという事実に存する。実際に、VP1の組換え合成では、昆虫細胞とともに、例えば昆虫細胞株Sf158とともにバキュロウイルスを使用することにより、発現系としてのその価値が証明されている。
【0031】
腎臓由来及びニューロン由来の細胞に関する細胞特異的なDNA輸送並びに形質導入系としてのVP1−VLPの適合性は、すでに独国特許第101 31 145.1号明細書に示されていた。この文献はさらに、VP1−VLPの細胞向性を系統的に修飾するためのVP1−VLPの修飾に関する方法について記載しており、その結果、規定の標的細胞及び組織は選択的に形質導入され得る。
【0032】
驚くべきことに、同様にRNAi誘導分子、特にdsRNA、shRNA、miRNA、siRNA又はそれらの前駆分子は、これらの分子の構造を変化させることなくJCウイルスのVLP内部でパッケージングされ得ることが今回見出された。標的細胞中でRNAiを誘導するRNAi誘導分子は、分解及び構造的変化の両方に対してVLPの内部で十分に防御されることが見出された。標的細胞という用語は、真核細胞、好ましくは多細胞生物の細胞、特に哺乳類細胞(ヒト由来の細胞を含む)を意味するものとする。
【0033】
そのキャプシドタンパク質が本発明による組成物の構成成分であるウイルスの天然宿主スペクトルに相当する細胞へRNAi誘導分子を導入するために、好ましくはそのキャプシドタンパク質が野生型キャプシドタンパク質に相当するVLPが使用される。例えば、JCVの宿主スペクトルは、例えばオリゴデンドロサイト、アストロサイト及びグリア細胞のような神経組織の細胞並びに神経関連組織の細胞を含む。RNAi誘導分子がこれらの細胞に導入される場合、本発明による組成物は、好ましくはJCウイルスの野生型VP1キャプシドタンパク質で構成されるVLPを含有する。
【0034】
そのキャプシドタンパク質が本発明による組成物の構成成分であるウイルスの天然宿主スペクトルに相当しない細胞にRNAi誘導分子を供給するためには、好ましくはそのキャプシドタンパク質が野生型キャプシドタンパク質と比較した場合に修飾されるVLPが使用される。本発明による組成物における修飾VLPの使用は好ましくは、それぞれ特定の型の細胞に、又は特定の組織に限定される疾患の治療を可能にする。特に好ましくは、本発明による組成物は、JCウイルスのVLPで構成され、ここでVP1−VLPの少なくとも1つのキャプシドタンパク質は、野生型VP1と比較した場合に修飾される。
【0035】
一方で、修飾は、野生型キャプシドタンパク質のアミノ酸配列における修飾を含む。特に、挿入、欠失、置換及び/又は他のアミノ酸配列との融合がこの群に属するが、但し、自己集合に関する、即ちVLPを形成することに関するキャプシドタンパク質の固有の特性は失われない。したがって、本発明による組成物のVLPは、融合タンパク質の形態でキャプシド構造中に1つ又は幾つかのさらなる異種タンパク質又はタンパク質の一部を包含し得る。このことは、異種タンパク質又はタンパク質の異種部分がキャプシド構造中で固着されることを意味し、ここで好ましくはこのタンパク質の少なくとも一部は、外側から接近可能である。かかる融合タンパク質で構成されるVLPは、融合部分のため、対象とされる標的細胞の特異的な表面受容体と相互作用することができる。このようにして、対象とされる標的細胞との相互作用の特異性を保証することができ、使用に応じて多数の細胞型へ調節することができる。同様に、キャプシドタンパク質の標的修飾により、VLPの向性を種々の細胞又は組織へ限定することが可能である。
【0036】
規定のタイプの細胞に向かってVLPの向性を誘導するためのさらなる可能性は、本発明による組成物のVLPの化学修飾にある。VLPの化学修飾は、それぞれ特定の細胞又は組織に関するRNAi誘導分子用のトランスファー系としての本発明による組成物の融通性の高い使用を可能にする。VLPの標的細胞特異性の標的修飾に関して、VLP及び細胞型特異的なリガンドの結合体は有利であることが証明されている。好ましい実施形態では、少なくとも1つのリガンドは、VLPに結合されている。そのため、リガンドは基本的に任意の物質であり得る。
【0037】
例えばリガンドは、標的細胞特異的なサブユニット、例えば細胞表面受容体に関する結合パートナーであり得る。結合パートナーに適した例は、天然リガンド又はそれらの合成類似体であり、ここでタンパク質(例えば、トランスフェリン)、抗体又は糖(例えば、マンノース)のような高分子量リガンドだけでなく、低分子量合成リガンド(例えば、トリペプチドモチーフR−G−D(Arg−Gly−Asp))もまた使用することができる。或いは、又はさらには、標識サブユニット、例えば適切な検出方法を用いて検出され得るサブユニット(例えば、蛍光標識サブユニット又はビオチンのような)もまたリガンドとして使用することができる。さらに、リガンドはまた、エフェクターサブユニット、例えば細胞障害性サブユニットであり得る。当然のことながら、幾つかのリガンドの組合せ、特に上述のリガンドの組合せもまた使用することができる。
【0038】
リガンドとVLPのキャプシドタンパク質との間の相互作用は、好ましくは化学アンカーサブユニットにより媒介される。そのため、特に細胞特異的なリガンドのためのアンカー分子としてのカチオンポリマーによるキャプシドタンパク質の担持は適切であると証明されている。
【0039】
カチオンポリマーに関する具体例は、例えばポリリシンのような本質的に塩基性のアミノ酸ベースのポリマー、特にポリ−L−リシン等である。適切なカチオンポリマーに関するさらなる具体例は、ポリアルキレンアミン、ポリアルキレンイミン、好ましくはポリ−C〜C−アルキレンイミン、特にポリエチレンイミン(PEI)、pAMAM(ポリアミドアミン)デンドリマー及び分画デンドリマー、並びにカチオン修飾されたポリエチレングリコールである。ポリエチレンイミンは、それが無毒性であり、且つ高密度の正電荷を有するため、本発明の意味合いで特に好ましいカチオンポリマーである。さらに、PEIは、細胞への取込み後にpH依存性の構造的変化を達成することが可能であり、エンドソーム細胞区画及びリソソーム細胞区画の不安定化、したがって細胞質へのRNAi誘導分子の放出の支持につながる。このプロセスは、酸性化後にリソソーム中でプロトン化され、続いて小胞膜の浸透圧破裂につながるイミノ基の顕著な緩衝能により支持される。
【0040】
結合体におけるVLP対カチオンポリマーの重量比は、広範囲内で様々であり得る。したがって、5:1〜1:10の重量比が適切であると証明されており、ここで、最適な結合を可能にするためには2:1及び1:5の重量比が特に好ましい。
【0041】
VP1−VLP及びカチオンポリマーの結合体を生産する方法は、独国特許第101 31 145.1号明細書から既知である。
【0042】
さらなる好ましい実施形態では、異種結合パートナー又はリガンド、それぞれ例えばポリペプチド又は標識サブユニットは、直接的に且つ制御可能な化学量論でVLPへ連結させることができる。ヘテロ二官能性タンパク質間リンカーの例は図5に示される。本発明では、リンカー(本発明では、PEO−マレイミドリンカー)をVP1に結合するために、好ましくはK60及び/又はK164の外側にあるリシン残基のアミノ基が使用される。リガンドは、システイン残基、例えばシステイン残基のカルボキシ末端を通じて、リンカーの第2の活性部位へ結合することができ、細胞のリガンド特異的なタイプへVLP担持を特異的に送達することができる安定なVP1−リガンド結合体を付与することができる。
【0043】
したがって、本発明の別の目的は、少なくとも1つの異種結合パートナー、例えばポリペプチドがアミノ酸残基K60及び/又はK164を通じて結合されているJCV−VP1キャプシドタンパク質である。
【0044】
さらに、本発明の目的は、
(i)少なくとも1つのウイルスキャプシドタンパク質の幾つかの分子で構成されるウイルス様粒子(VLP)及び少なくとも1つの細胞型特異的なリガンドの結合体(ここで、VLP及びリガンドは、例えばカチオンポリマーのようなアンカー基により、又はヘテロ二官能性リンカーを通じて互いに結合される)、及び
(ii)VLP及びリガンドの結合体へ組み込まれるRNAi誘導分子を含む組成物である。
【0045】
好ましくは、ヒトポリオーマウイルスJCのキャプシドタンパク質VP1に由来するVLPが使用される。好ましくは、RNAi誘導分子として、上述したものが使用される。
【0046】
請求項1に記載の組成物を生産するためには、RNAi誘導分子、及び任意でさらなる活性物質並びにキャリア、助剤及び/又は添加剤が、それぞれ、構築前に及び/又は構築中に所望の量又は濃度でキャプシドタンパク質に添加される。そうする際に、粒子内にRNAi誘導分子を含有するVLPを生成することができる。好ましくは、VLPのRNAi誘導分子の担持は、VLPへのキャプシドタンパク質の会合中に行われる。RNAi誘導分子のパッケージングは、in vitro及びin vivoの両方で起きることができ、ここでVLP中でのRNAi誘導分子の組込みは好ましくは、in vitro条件下で行われる。キャプシドコーティングの内部へのRNAi誘導分子の組込みは、例えばキャプシドコーティングの解離(脱構築(de-assembly))及びRNAi誘導分子の存在下での続く再構築により、又はRNAi誘導分子の存在下でのVLPの浸透圧ショックにより行われ得る。さらに、標的細胞の表面上で受容体と結合することが可能である標的細胞特異的なサブユニットは、上述したようにRNAi誘導分子を担持するVLPへ結合させることができる。VLPの担持に関する条件はそれぞれ、RNAi誘導分子の分解又は構造的変化がそれぞれ回避されるように選択されるべきである。
【0047】
パッケージング中、キャプシド−タンパク質−モノマー対RNAi誘導分子の比は、VLP当たりのキャプシドタンパク質の数及びパッケージングされるべき分子の大きさに応じて、広範囲にわたって様々であり得る。キャプシドタンパク質対RNAi誘導分子の質量比は通常、1:100〜100:1、好ましくは1:50〜50:1、特に好ましくは1:20〜20:1、最も好ましくは約1:1〜20:1の範囲で見出される。
【0048】
キャプシドタンパク質は、大量に且つ高純度でRNAi誘導分子から組換え的に且つ個々に生産され、また核酸のパッケージングが、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はアデノウイルスベクターと対比して、パッケージング細胞株では行われないという背景に反して、組換え現象に起因するウイルス核酸の混入及び感染性ウイルスの生成の潜在的な危険性が回避され得る。さらに、RNAi誘導分子のパッケージング及び細胞特異的なリガンドでのVLPの担持は、規定のin vitroでの条件下で行われるため、VLP−RNAiトランスファー系、本発明では特にVP1−VLPトランスファー系は、ウイルス系及び非ウイルス系の利点を組み合わせている生物学的に安全なプラットフォーム技術を表すが、それらの欠点を示すことはない。したがって、本発明による組成物のVLPは特に、それらが元のウイルスの核酸を含まないという事実を特徴とする。かかるVLP、特に組換えVP1分子のVLPは、国際公開第97/19174号パンフレットに記載されている。
【0049】
本発明による組成物は、in vivo及びin vitroの両方で任意のタイプの細胞へRNAi誘導分子を特異的に導入するために使用することができる。それによって、多細胞生物内での機能的RNAi誘導分子のターゲット・トランスファーは、RNAiを用いた所定の遺伝子の発現の局所的に限定された下方制御を導く。したがって、本発明による組成物を使用する場合、例えば内因性遺伝子の発現の増加は、標的細胞のゲノムの修飾の既存の危険性を伴わずに一過的に下方制御され得る。それにもかかわらず、RNAiを用いて、RNA、特にmRNAの標的(即ち、配列特異的な)分解に関する遺伝情報を標的細胞へ永続的に組み込むことも可能である。さらに、本発明による組成物は、細胞型特異的な態様で、例えばDNAセグメントの転位又はウイルス感染の結果としての望ましくない遺伝子の発現を下方制御するために使用することができる。特に、本発明による組成物は、病的状態と相関する少なくとも1つの遺伝子の発現を下方制御するために使用することができる。
【0050】
本発明による組成物は、慢性疾患又はそれらの症状それぞれを治療するために使用することができる。この場合、RNAi誘導分子は、例えば、標的細胞においてsiRNA又はそれらの前駆分子の永続的な供給を達成するDNA構築物の形態で使用することができる。さらに、本発明による組成物を使用して、例えば獣医学及び人間医学の両方において急性感染症の治療のための細胞型特異的な遺伝子治療を一過的に確立することが今や可能となる。本発明による組成物の投与されるべき量は、とりわけ疾患の種類、症状の重篤性及び罹患されている細胞の範囲に依存する。
【0051】
本発明による組成物は、VLPの適用に関する既知の方法に従って局所的に又は全身的に投与され得る。
【0052】
したがって、本発明の別の目的は、標的細胞へRNAi誘導分子を導入する方法であって、
(i)上記RNAi誘導分子の存在下でのウイルスキャプシドタンパク質のVLPへの構築工程、及び
(ii)上記標的細胞への上記RNAi誘導分子の取込みが起こり得る条件下で、上記RNAi誘導分子を担持した上記VLPを上記標的細胞と接触させる工程を含む方法である。
【0053】
標的細胞特異性を修飾するために、さらに標的細胞の表面上の受容体と結合することができる1つ又は複数の標的細胞特異的なサブユニットを、工程(i)で得られるVLPへ結合させることができる。本発明による方法はとりわけ、標的細胞における所定の少なくとも1つの遺伝子の下方制御に使用され得る。
【0054】
任意の真核細胞を標的細胞として使用することができる。好ましくは、真核細胞は、哺乳類細胞であり、特にヒト由来である。請求項1に記載の組成物を使用して、その自然環境中に存在する細胞、及びその自然な環境から単離された細胞の両方へ、RNAi誘導分子を導入することが可能である。
【0055】
RNAi誘導分子を導入する目的の標的細胞が、本発明による方法で使用されるVLPが由来するウイルスの天然宿主スペクトルに相当しない場合、VLPの細胞型特異性は、上述したようなキャプシドタンパク質とリガンドとの複合体形成を通じて、RNAi誘導分子及び任意でさらなる活性剤による担持前、担持中又は担持後に修飾され得る(「再ターゲッティング」)。そのため、有利には、標的細胞の細胞表面上に露出される受容体と特異的に結合することができるリガンドが選択される。或いは、そのアミノ酸組成物中に、標的細胞の外側表面上の特異的な受容体に結合するその能力に起因して、異種タンパク質(これは、RNAi誘導分子のターゲット・トランスファーを媒介する)及び任意でさらなる活性剤を含むキャプシドタンパク質で構成されるVLPが、このために使用され得る。
【0056】
本発明のさらなる目的は、外来核酸、例えば病原性生物、特に病原性ウイルスの核酸の発現により、又は内因性遺伝子の発現の増加若しくは望ましくない発現により引き起こされる疾患若しくは疾患状態の診断、予防及び/又は治療のための上述したようなRNAi誘導分子を含む上述したようなVLPを含む薬学的組成物である。
【0057】
本発明はさらに、上述したようなVLPを含む任意の種類の細胞又は組織へそれぞれRNAi誘導分子を導入するための試験キットに関する。
【0058】
本発明のさらに別の目的は、任意でポリペプチド免疫原又はペプチド免疫原、アプタマー又はsiDNA分子と組み合わせて、他の種類の核酸、例えば免疫刺激性核酸を含有する上述したようなVLP組成物である。さらに適切な薬物は、極性細胞分裂阻害剤又は毒素である。
【0059】
上述のRNAi誘導分子の他に、特に感染性レトロウイルス疾患(例えば、HIV−1)との関連から、さらなる治療的VLP担持及び予防的VLP担持として他の核酸も同様に言及されなくてはならない。予防的用途に関しては、免疫刺激性配列(ISS)が、それぞれのレトロウイルスからの免疫原(例えば、HIV−1からのenv構成成分)と最適に組み合わせて、本発明では挙げられるであろう。さらに、治療に関しては、幾つかの非RNAi誘導核酸配列を通じて、ウイルス阻害が達成されるであろう。これらの分子は、阻害性DNAアプタマー及び阻害性RNAアプタマーから、並びに酵素リボヌクレアーゼHの早発活性化によりレトロウイルスのゲノムを、宿主ゲノムへのその組み込み前に破壊することができるいわゆるsiDNAから選択することができる。(Matskevich et al., Aids Res & Human Retroviruses 22 (2006),1220-1230、Matzen et al. Nature Biotechnology 6 (2007))。かかる核酸をVLPへ含ませることに関しては、RNAi分子に関連した記述を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】グリオーマSW103細胞へのsiRNA分子及びDNAの効率的且つ機能的導入。A)細胞をsiLamA1又はsiGL2 siRNA担持VLPで処理して、VLP処理の44時間後に、間接的免疫蛍光(IIF)を用いて検査した。左側はsiLamA1−VLPで処理した細胞の群を示す。ここで、細胞は、標的タンパク質のほぼ完全な下方制御を示す(上部)。非関連対照siGL2−VLPで処理した対照細胞は正常なラミンA/C含有量を示した。ここで、ラミンA/Cは、細胞の核中に存在する。DNAは、ヘキスト33342で染色した。B)直接的免疫蛍光顕微鏡法による観察結果は、ウェスタンブロット分析で確認された。未処理の細胞又はsiLamA1−VLP若しくはsiGL2−VLPで処理した細胞の細胞抽出物を処理の44時間後に収集して、抗ラミンA/C抗体で染色した。ラミンA/C含有量は、両方の対照レーンでは同一であった。ここで、siRNA−VLP処理した集団におけるラミンA/Cの比率は顕著に低減した。均一なタンパク質量を確認するために、並行してビメンチンに関してブロットを分析した。C)siRNA分子に加えて、eGFPをコードする直鎖化発現構築物をVLPへパッケージングして、グリオーマ細胞へ形質導入した。この処理の24時間後に、ほぼ全ての細胞が陽性GFP発現を示した。
【図2A】修飾されたVLPを用いたsiRNAの首尾よい導入の定性的及び定量的考証。A)この図は、3つの個別に実施された実験の定量的ウェスタンブロット分析のデータを示す。ここで、siRNAは、PEI−Tf−VLPを使用してHeLa SS6細胞及びMCF7細胞へ導入された。PEI−Tf及びsiRNAでの細胞の処理では、siRNA単独、空PEI−Tf−VLP及び非関連siRNA担持PEI−Tf−VLPをそれぞれ陰性対照とした。PEI−Tf及びsiLamAでの処理のみが標的タンパク質の含有量の弱い(15%〜20%)低減を示し、50nMの量でのsiRNAのVLPパッケージングはより効率がよかった。5μM siRNAでVLPに担持させた後のPEI−Tfとの複合体形成は、ラミンA/Cのほぼ完全な下方制御を導いた。ラミンA/Cに対して作用する他のsiRNA分子(それらのうちの1つは、センス鎖の5’末端にフルオレセインを伴って又は伴わずに結合された)は、HeLa細胞での下方制御に関して同等の有効性を示した。ヒトエメリンに対して作用するsiRNA分子の第2の組は、MCF7細胞で検討された。定量的ウェスタンブロット分析により示されるように、3つ全ての場合で、siRNAは、細胞へ首尾よく導入された。下部は、ECL-現像後の代表的なブロットを示す。全ての場合において、ビメンチンは添加量の比較対照として使用された。
【図2B】修飾されたVLPを用いたsiRNAの首尾よい導入の定性的及び定量的考証。B)siLamA−F−PEI−Tf−VLPで処理したHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像は、siRNA分子の取込み(緑)及びラミンA/Cの用量依存的下方制御(赤)を示す。より高い担持濃度(下部)と比較して、siRNAが50nMの濃度でVLPへ組み込まれる場合、標的遺伝子の下方制御に対する影響が弱くなる(中央部)。対照細胞では、対照細胞が非関連siRNA分子を含有するVLPで処理された場合、ラミンA/C含有量の低減を観察することはできない(上部)。
【図3】ヒトT細胞における一過的RNA干渉。ヒトSupT1細胞をデスフェリオキサミンで刺激した24時間後に、siRNA担持PEI−Tf−VLPで処理した。A)VLPによる処理の24時間後の単一supT1細胞の共焦点蛍光顕微鏡法により、細胞質における蛍光siRNA分子(siLamA−F)の均質な分散が示される。Z軸に沿った切片は、siRNAの存在が主として細胞質に限定され、蛍光シグナルが細胞の周辺で又は細胞の核中でほぼ観察され得ないことを示す。B)細胞への導入後、抗エメリン−siRNA−siEme1は、このsiRNAが細胞のRNA干渉機構に利用可能であることを明らかに示した。抗エメリン抗体を使用した間接的免疫蛍光顕微鏡法は、siEme−PEI−Tf−VLP処理した集団においてエメリンの強力な下方制御を示すのに対して、siGL2−PEI−Tf−VLPで処理した対照集団におけるエメリン含有量は変化しないままであった。C)免疫蛍光顕微鏡法の結果は、ウェスタンブロット分析を使用して確認した。siEme1−PEI−Tf−VLP処理した集団のみが、エメリンの下方制御を示したのに対して、siGL2−PEI−Tf−VLP又は空PEI−Tf−VLPで処理した対照細胞、並びにsiEme1及びPEI−Tfでのみ処理した細胞は、エメリン含有量の低減を示さなかった。等量のタンパク質の添加は、ポンソーレッドによる膜の染色により確認された(色素は背景に示されている)。
【図4】VP1タンパク質の配列修飾。A)ポリオーマJCウイルス野生型VP1及びキメラVP1タンパク質(VP−Mut2)(これは、アミノ酸挿入に起因して2部核局在化シグナルを含有する)のアミノ末端配列の比較。ウイルスSV40及びBKVに由来する配列(これは、修飾のための基礎を成した)は比較用に示される。B)電子顕微鏡画像化では、キメラVP1タンパク質Mut2が、野生型VP1タンパク質と同じ脱構築特性及び再構築特性を示した。C)キメラVP1タンパク質Mut2は、野生型タンパク質よりもSVGグリア細胞においてより高い形質導入効率を示した。ルシフェラーゼ発現構築物の形質導入に続いて、相対ルシフェラーゼ活性が確定された。
【図5】VP1のリシン残基へのリガンドの連結により、再ターゲッティングが可能となる。アミノ基をスルフィドリル基へ連結することが可能であるヘテロ二官能性リンカー分子に関する一例を上方に示す。このリンカー分子(又はそれに類するリンカー分子)を使用して、第1のタンパク質(例えば、VP1)上のリシン残基及び第2のタンパク質(例えば、リガンド)上のシステイン残基を相互接続することができる。図の中央部分において、計算されるJCV−VP1タンパク質の構造、及び概略的に、接近可能なリシン残基へ連結される場合のリンカー分子が示される。最下部では、JCV−VP1タンパク質が上面図で示される(即ち、キャプシドの外側から)。リガンドの連結に適しているリシン残基K60及びK164の両方が示されている。これらのリシン残基は、上記で示されるようにヘテロ二官能性リンカー分子を結合するのに使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0061】
ここで、本発明は、下記実施例並びに添付の図面及び配列表によりさらに説明される。
【実施例】
【0062】
実施例1
材料及び方法
siRNA分子の構築及び合成
化学的に合成されたRNAオリゴヌクレオチドは、Dharmacon(コロラド州、ラフィーエット)から入手した。siRNA分子は全て、3’−dTdTオーバーハングを含有した。蛍光標識は、その官能性に影響を及ぼさないように、siRNA分子のセンス鎖の5’末端に連結させた。PCR用のヌクレオチド(dNTP)は、Boehringer(ドイツ、マンハイム)から入手し、in vitroでの転写を用いてshRNAを生産するためのPCRプライマー及びDNAフラグメントは、NAPS(ドイツ、ゲッティンゲン)により供給された。化学的に合成された、27ヌクレオチドの長さを有する二重鎖RNA(27merdsRNA)は、IBA(ドイツ、ゲッティンゲン)により供給された。
【0063】
【表1】

【0064】
抗体及び間接的免疫蛍光顕微鏡法
形質導入された細胞を、処理の44時間後にVLPとともに−20℃冷メタノールで処理した。一次抗体として、マウス抗ラミン A/C抗体(クローン636.23)、マウス抗エメリン抗体(Novagen)及びマウス抗α−チューブリン抗体(D1H、Sigma、ドイツ)を使用した。二次抗体として、ローダミン又はフルオレセイン結合ヤギ抗マウスIgGを使用した。固定化後、PBSで洗浄した細胞を、37℃にて湿気チャンバ中で一次抗体とともに1時間インキュベートした。次に、細胞をPBSで3回洗浄して、蛍光二次抗体を37℃で1時間添加した。PBSで3回洗浄することにより、未結合抗体を除去した後、2μM ヘキスト33342色素(Hoechst、ドイツ)でDNAを可視化させた。これに関して、細胞を、スライドガラス上でモヴィオール(Hoechst、ドイツ)により固定化させた。
【0065】
定量的ウェスタンブロット分析
SDSゲル電気泳動は、標準的なプロトコルに従って実施した。タンパク質は、標準的なSDSゲル電気泳動を用いて分離させて、半乾燥転写方法を使用してニトロセルロース膜上へ転写した。膜をTBST(20mM トリスHCl、150mM NaCl、0.2%ツイーン20、pH7.4)でブロックした。ここで、TBSTは、脱脂粉乳粉末を5%含有していた。ラミンA/C、エメリン又はビメンチンに対する抗体もまた、TBST中で希釈した。ここで、TBSTは、脱脂粉乳粉末を2.5%含有していた。そのようにして希釈した抗体を、室温で1時間膜とともにインキュベートした。ウェスタンブロットにおいて同一量のタンパク質の分析を可能にするために、ビメンチンタンパク質含有量を確定した。膜をTBSTで2度、0.5%トリトンX−100を加えたTBSTで1度洗浄した。アフィニティ精製したホースラディッシュ結合ブタ抗マウス免疫グロブリンは、Dako(デンマーク、コペンハーゲン)から入手した。それらを、脱脂粉乳を2.5%含有するブロッキング緩衝液中に1:10000で希釈して、室温で2時間、膜とともにインキュベートした。ECLキット(Amersham Biosciences)を使用してバンドを検出して、ルミイメージャー(Boehringer/Roche、ドイツ)で定量化した。
【0066】
細胞
【0067】
【表2】

【0068】
接着細胞(即ち、HeLa SS6、MCF−7、293T、COS−7、軟骨細胞及びグリオーマSW103)をDMEM中で培養した。DMEMには、10%ウシ胎児血清(FCS)及び抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン、pen/strep)を補充した。浮遊状態の細胞(即ち、HeLa S3及びSupT1)をRPMI−1640高グルコース培地中で培養した。RPMI−1640高グルコース培地には、10%FCS及びpen/strepが補充した。
【0069】
VLPの生産及び担持
ポリオーマJCウイルスのVP1タンパク質を、バキュロウイルス系を使用して昆虫細胞(SF)で発現させた。分泌されたタンパク質を、勾配遠心分離又はイオン交換FPLCを使用して培地上清から単離した。
【0070】
精製VP1は、5量体及びより高次のキャプシドで存在し、したがって核酸を担持する前に、これらをまず、脱構築緩衝液(10mMトリス、pH7.5、10mM EGTA、150mM NaCl、5mM DTT)を使用して脱構築しなければならなかった。再構築によるVLPの担持は、微小透析設定で3.5kDaの排除サイズを用いて4℃にて一晩、再構築緩衝液(10mMトリス、pH7.5、1mM CaCl、150mM NaCl)に対するVP1/核酸混合物の透析により行った。DNA対VLPの標準的な比は1:10であった(例えば、VLP 5μgに500ngを添加した)。続く再ターゲッティングのために、再会合したVLPを1:5(PEI:VLP、例えばPEI 1μgをVLP 5μgに添加した)の比でPEI−Tfと混合した。
【0071】
トランスフェクション/形質導入
siRNA担持VLPによる処理の24時間前に、細胞をそれぞれ、24ウェルプレートに50000細胞/ml〜100000細胞/mlで播いた。浮遊状態で培養された細胞(即ち、SupT1細胞株及びHeLa S3細胞株)の場合、トランスフェリン代謝を刺激するために、また細胞表面上のトランスフェリン受容体の密度を増大させるために、培養培地に、0.5ng/mlのデスフェリオキサミンを補充した。VLPによる直前に、作用物質の細胞毒性副作用を回避するために、刺激培地を正常な培養培地と取り替えた。
【0072】
結果
ヒトグリオーマ細胞へのDNA及びsiRNAの導入
siRNA担持VLPを、ヒトグリオーマSW103細胞の培養培地へ添加した。処理の1時間後、ヒトラミンA/C(siLamA−F)に対して作用する蛍光標識されたsiRNAを、グリオーマ細胞の細胞質で観察することができた(図1を参照)。裸のsiRNA及び空VLPによる対照細胞の処理により、VLPにパッケージングされたsiRNAのみの特異的な取込みが確認された。VLP形質導入の24時間後に、RNA干渉効果を考慮して、間接的免疫蛍光顕微鏡法及びウェスタンブロット分析を用いて細胞を検査した。標的タンパク質ラミンA/Cの量は、siLamA−F−VLPで処理した細胞中で有効に下方制御されたのに対して、このことは対照細胞では観察することができなかった(図1)。
【0073】
VLPとPEI−Tfとの複合体形成によるVLPの再ターゲッティングを含むグリオーマSW103細胞へのsiRNA分子の導入はまた、VLPへの核酸のパッケージングに関する品質管理として続く実験でも使用した。
【0074】
PEI−Tfと複合体形成されているsiRNA担持VLPにより媒介される接着細胞におけるRNA干渉
siRNA担持VLPを、種々のヒト細胞株の培養培地へ添加した。HeLa SS6細胞に関して幾つかの実験を実施した。VLPによる処理の24時間前に、細胞を静置培養した。検査は、この処理の24時間後又は48時間後に行った。
【0075】
HeLa細胞
1.siRNA分子のPEI−Tf−VLP媒介性導入による用量依存的及び機能的RNA干渉
HeLa細胞を約75000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートで培養し、24時間後にVLP 1μg又は5μgで処理した。機能的且つ有効なRNA干渉に要されるsiRNA分子の量を確定するために、再構築緩衝液中でVLPに50nM又は3μMのsiRNAを添加した。空VLP、非関連siRNA分子を担持したVLP及び単にPEI−Tfと複合体形成したsiRNA分子は、対照として用いた。トランスフェリン受容体を用いた細胞への取込みを可能にするために、PEI−Tfを1:5(PEI−Tf 1μg:siRNA−VLP 5μg)の比で再構築された担持VLPへ添加した。24ウェルプレートの各ウェルの約100000細胞において効率的なRNA干渉を行うためには、これらを3μM siRNAで担持されたVLP 5μgで処理する必要がある(図2)。50nM siRNA担持VLPによるsiRNAの形質導入は、単に標的タンパク質ラミンA(/C)の若干の減少を招いたに過ぎなかった。siRNAの取込みは、蛍光標識されたsiRNA siLamA−Fの形質導入を用いて確認され、下方制御の影響は、定量的ウェスタンブロット分析及び間接的免疫蛍光顕微鏡法を用いてタンパク質レベルに関して検査された。空PEI−Tf−VLPによるか又は非関連siRNAを含有するVLPによる細胞の形質導入は、ラミンA(/C)タンパク質含有量の減少に至らなかった。VLPを伴わないPEI−Tfと複合体形成されたsiRNAは、ラミンA(/C)発現の弱い阻害を引き起こし(ここでは、それにも関わらず、下方制御は15%〜20%に限られた)のに対して、siLamA−PEI−Tf−VLPは、適切な濃度で使用される場合に標的タンパク質のほぼ完全な下方制御(「ノックダウン」)を引き起こした(HeLaAの図)。ラミンA/Cに対して作用する3つの異なるsiRNA分子(そのうちの1つは、蛍光標識された)は、細胞への及び細胞質へのVLPの取込みを可視化するためにHeLa細胞に関して検査された。siRNA分子は全て、それらがPEI−Tf−VLPの形態で細胞へ投与された場合に、標的タンパク質発現の有効な下方制御を導いた。
【0076】
2.非古典的な27mer dsRNA分子は、下方制御に首尾よく使用された
さらに、非古典的なsiRNA、即ちsiL27AC(これは、3’オーバーハングを有さない27ヌクレオチドの長さを有する5’リン酸化dsRNAで構成される)をHeLa細胞へ形質導入して、これがラミンA/Cタンパク質の発現の効率的な下方制御を引き起こした。したがって、本発明による組成物はまた、VLPを細胞のRNA干渉機構に利用可能とするために、VLPの27merdsRNA担持により標的細胞の細胞質へエンドヌクレアーゼダイサー用の基質を導入することも可能にする。
【0077】
3.PEI−Tf−VLPは、乳癌細胞への活性siRNA分子の導入に使用された
ヒトエメリン遺伝子に対して作用する3つの異なるsiRNA分子の第2の組を、上述したようにヒト乳癌MCF−7細胞へ形質導入した。定量的ウェスタンブロット分析により、これらの実験で使用された3つのsiRNA種は全て、標的遺伝子の下方制御を首尾よく引き起こすことが示された(図2A)。これらの結果は、種々のタイプの細胞において代替標的遺伝子に対して作用するsiRNA分子の効率的なトランスファーの観点からVLPが広範に適用可能であることを強調するものである。
【0078】
さらなる細胞株及び情報は表3から得ることができ、表3は、種々の細胞株においてVLPを使用した核酸トランスファー実験に関する概要を示す。
【0079】
PEI−Tfと複合体形成されたsiRNA担持VLPにより媒介される非接着細胞におけるRNA干渉
ヒトSupT1 T細胞を浮遊状態で培養し、VLPによる処理の24時間前に静置培養した。細胞エネルギー代謝を誘導するために、また細胞の表面上のトランスフェリン受容体の密度を増大させるために、15nMのデスフェリオキサミンを培養培地に添加した。VLPによる処理の直前に、培地を標準的な培養培地で取り替えて、VLPは上記で挙げられるような量で添加した。SupT1細胞は、内因性ヒトエメリンに対して作用するsiRNA分子を含有するVLP、非関連siRNA(GL2)を含有するVLP又はsiRNAを含有しないVLPで形質導入した(図3)。同じVLPをPEI−トランスフェリンを伴わせるかまたは伴わせずに対照として使用した。さらなる対照として、細胞をPEI−Tfと複合体形成されたsiRNA分子で処理したが、このRNAは、VLPへ組み込まれなかった。細胞の細胞質へのsiRNA分子の取込みを示すために、蛍光標識されたsiRNAを使用した。共焦点顕微鏡法を使用して、SupT1細胞の細胞質における蛍光siRNAの均質な分散が示された。かかる細胞のX軸に沿った切片を図3Aに示す。VLP導入されたsiRNAを用いた標的遺伝子発現の有効な下方制御は、間接的免疫蛍光顕微鏡法(図3B)及びウェスタンブロット分析(図3C)を使用して確認された。結果として、処理した細胞のほぼ100%でエメリン遺伝子発現の非常に効率的な下方制御が示された一方で、非関連siRNAによる処理では、エメリンの含有量に影響を与えなかった。ウェスタンブロットデータにより、細胞をsiEme担持PEI−Tfと複合体形成されたVLPで処理した場合にのみ、エメリンの十分な下方制御が達成され得る一方で、PEI−Tf複合体形成単独ではタンパク質の測定可能な下方制御に至らないことが示された。
【0080】
同様に、VLP媒介性siRNAの取込みは、HeLa S3細胞が使用された場合に成功した。これらの細胞は、浮遊状態での成長に適応している(データは示さず)。
【0081】
【表3】


【0082】
実施例2
野生型配列と比較して、アミノ末端領域に修飾を有する修飾タンパク質VP1−Mut2を生産した。この修飾のため、ウイルスSV40又はBKVの配列に基づく異種核局在化シグナルのアミノ酸配列が導入された。異種核局在化シグナルの配列を図4Aに示す。
【0083】
キメラタンパク質VP1−Mut2を、無傷のVLPを形成する能力に関して試験した。これは、電子顕微鏡画像化により確認された。さらに、種々のタイプの細胞が、DNA担持VP1−Mut2 VLPで形質導入され、そうする際にキメラ形態は、少なくとも同等の(COS−7腎臓細胞)形質導入効率又は最大5倍増加された(SVGグリア細胞)形質導入効率を示した。結果を図4B及び図4Cに示す。
【0084】
実施例3
ヘテロ二官能性リンカーを使用して、リガンドをVP1タンパク質へ直接結合させることができる。かかる連結方法に関する好ましい実施形態を図5に表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのウイルスキャプシドタンパク質の幾つかの分子で構成されるウイルス様粒子(VLP)を含む組成物であって、少なくとも1つのRNA干渉(RNAi)誘導分子が、該VLPの内部に含まれることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記RNAi誘導分子が、RNA及び/又はRNA類似体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記RNAが、siRNA、miRNA、dsRNA、shRNA又はそれらの前駆体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記RNAi誘導分子が、siRNA、miRNA、dsRNA、shRNA若しくはそれらの前駆体をコードするDNA及び/又はDNA類似体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該DNAが、標的細胞中での発現を可能にする調節エレメントをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
VLP対RNAi誘導分子の質量比が、100:1〜1:100の範囲に存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
VLP対RNAi誘導分子の質量の比が、1:1〜20:1の範囲に存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記VLPが、ヒトポリオーマJCウイルスのキャプシドタンパク質VP1で構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記VLPが、標準のウイルスの他の構成成分を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該VLPの少なくとも1つのキャプシドタンパク質が修飾される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
該VLPの少なくとも1つのキャプシドタンパク質が、化学的に修飾される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
該VLPの少なくとも1つのキャプシドタンパク質が、少なくとも1つの標的細胞特異的なサブユニットと結合される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記標的細胞特異的なサブユニットが、該標的細胞の細胞表面上に提示される受容体に結合することが可能であるリガンドであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記リガンドがトランスフェリンであり、前記受容体がトランスフェリン受容体であることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記標的細胞特異的なサブユニットが、化学リンカー基を用いて該VLPの少なくとも1つのキャプシドタンパク質に結合されることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記リンカー基が、カチオンポリマーであることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記カチオンポリマーが、ポリエチレンイミンであることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記キャプシドタンパク質が、融合タンパク質である、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記融合部分が、前記VLPの形成を妨害しないことを特徴とする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記融合部分が、標的細胞の細胞表面上に提示される受容体に結合することが可能であることを特徴とする、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
修飾されたキャプシドタンパク質から成る該VLPが、非修飾VLPの宿主スペクトルと同一でない宿主スペクトルを有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
該VLPの前記キャプシドタンパク質が、組換え的に生産されることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
RNAi誘導分子を標的細胞へ導入するための請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
該標的細胞が、真核細胞であることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
該真核細胞が、哺乳類細胞であることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
該哺乳類細胞が、ヒト由来であることを特徴とする、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
該標的細胞中の少なくとも1つの遺伝子の発現が、病的状態と相関する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
少なくとも1つの遺伝子が、病原性ウイルスから生じるか又は病原性ウイルスに由来する標的細胞中で発現される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
少なくとも1つの内因性遺伝子の発現が、該標的細胞で増加される、請求項23〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
該内因性遺伝子の該発現の増加が、病的状態と相関する、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
薬剤としての使用ための請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
病原性生物から生じるか又は病原性生物に由来する核酸の発現により、或いは内因性遺伝子の発現の増加又は望ましくない発現により引き起こされる疾患若しくは疾患状態の診断、予防及び/又は治療のための薬剤を製造するための請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項33】
該RNAi誘導分子の存在下での該ウイルスキャプシドタンパク質のVLPへの構築を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項34】
標的細胞の細胞表面上の受容体に結合することが可能である該VLPへの標的細胞特異的な基の連結をさらに含む、請求項33に記載の組成物を製造する方法。
【請求項35】
RNAi誘導分子を標的細胞へ導入する方法であって、
(i)該RNAi誘導分子の存在下でのウイルスキャプシドタンパク質のVLPへの構築の工程、及び
(ii)該RNAi誘導分子を担持する該VLPを、該標的細胞への該RNAi誘導分子の取込みを可能にする条件下で該標的細胞と接触させる工程を含む方法。
【請求項36】
標的細胞の細胞表面上の受容体に結合することが可能である該VLPへの標的細胞特異的な基の連結をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
標的細胞中で少なくとも1つの遺伝子を下方制御する方法であって、
(i)請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を供給する工程、及び
(ii)工程(i)からの該組成物を、該標的細胞への該RNAi誘導分子の取込みを可能にする条件下で該標的細胞と接触させる工程
を含む方法。
【請求項38】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を含む、RNAi誘導分子を標的細胞へ導入するための試験キット。
【請求項39】
任意で一般的な緩衝液、助剤、添加剤及び/又は希釈剤とともに、請求項1〜38のいずれか1項において規定されるようなVLP及びRNAi誘導分子を含む薬学的組成物。
【請求項40】
病原性生物から生じるか又は病原性生物に由来する核酸の発現により、或いは内因性遺伝子の発現の増加又は望ましくない発現により引き起こされる疾患若しくは疾患状態の治療及び/又は診断のための請求項39に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項41】
異種核局在化シグナル、異種核局在化シグナルをコードする核酸を含有する修飾JCV−VP1キャプシドタンパク質、又はそれ相応に修飾された少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含有するVLP組成物。
【請求項42】
少なくとも1つの免疫刺激性核酸が、任意でポリペプチド若しくはペプチド免疫原、アプタマー又はsiDNA分子と組み合わせてVLPの内部に含まれることを特徴とするVLP組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの異種結合パートナー、例えばポリペプチドへ、アミノ酸残基K60及び/又はK164を介して結合されるJCV−VP1キャプシドタンパク質。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−538625(P2010−538625A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524409(P2010−524409)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007580
【国際公開番号】WO2009/036933
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510071482)
【Fターム(参考)】