核酸送達システム用のナノ粒子組成物
本発明は、オリゴヌクレオチド送達用のナノ粒子組成物、および前記ナノ粒子組成物を使用して標的遺伝子の発現をモジュレートする方法に関する。特に、本発明は、カチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質の混合物中に封入されているオリゴヌクレオチドに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/085,289号(参照によりその内容を本明細書に組み入れる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、オリゴヌクレオチド送達用のナノ粒子組成物、およびナノ粒子組成物を使用して遺伝子発現をモジュレートする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
各種疾患を治療する取り組みとして、過去数年にわたり、核酸を使用する治療法が提案されている。アンチセンス療法などの治療法は、疾患の治療における有効な手段である。というのは、治療用遺伝子が疾患関連の遺伝子発現を選択的にモジュレートし、また、別の治療的アプローチが行われる場合に、生じる副作用を最小限にすることができるからである。
【0004】
しかし、核酸を使用する治療法は、遺伝子の安定性が悪く、送達が効果的でないために制限されている。それらの問題を解消し、in vitroおよびin vivoにおいて標的領域(例えば、癌細胞または癌組織)に治療用遺伝子を効果的に導入することを目的として、いくつかの遺伝子送達システムが提案されてきた。送達を改善し、治療用遺伝子の細胞内取り込みを高めるこうした試みは、リポソームの利用が対象である。
【0005】
現在利用可能であるリポソームではプラスミド送達において若干の進歩が見受けられたが、体内へオリゴヌクレオチドを効果的に送達することはない。オリゴヌクレオチドの送達において、望ましい送達システムは、オリゴヌクレオチドの負電荷を中和するのに十分な正電荷を含んでいなければならない。最近、Stuart, D.D.ら, Biochim. Biophys. Acta, 2000, 1463:219-229、およびSemple, S.C.ら, Biochim. Biophys. Acta, 2001, 1510:152-166によりそれぞれ記載のある、コーティングを施したカチオン性リポソーム(CCL)および安定核酸・脂質粒子(SNALP)の製剤が小型サイズで、核酸封入率が高く、血清安定性が良好で、かつ循環時間が長いナノ粒子を提供することが報告されている。しかし、これらは、ネイキッドオリゴヌクレオチドを使用した場合と比べると、特に肝臓以外の器官では、in vivo活性に有意な改善は見られなかった。このため、細胞(例えば癌細胞)でのオリゴヌクレオチドの細胞内取り込みが強化され、バイオアベイラビリティを高めることができる核酸送達システムの提供が望まれている。また、核酸送達システムが保存時に安定していて、臨床での使用の際に安全であることも望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biochim. Biophys. Acta, 2000, 1463:219-229
【非特許文献2】Biochim. Biophys. Acta, 2001, 1510:152-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の試みや進歩があるにしても、引き続き、核酸送達システムの改善の提供が必要とされている。本発明はこの必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、核酸送達用のナノ粒子組成物を提供する。核酸(例えばオリゴヌクレオチド)は、カチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質の混合物を含有するナノ粒子錯体内に封入される。
【0009】
本発明のこの態様によれば、核酸(すなわちオリゴヌクレオチド)送達用のナノ粒子組成物は、
(i) 式(I):
【化1】
【0010】
(式中、
R1はコレステロールまたはその類似体であり;
Y1およびY3は、独立して、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
Y2は、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
(a)は、0または1であり;
R2およびR3は、独立して、水素または低級アルキルであり;
(b)は、約2〜約10の正の整数(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9および10、好ましくは2)であり;
R4は、水素、低級アルキル、または
【化2】
【0011】
であり;
R5は、
【化3】
【0012】
であり;
R’5は、NH2、
【化4】
【0013】
であり;
R6、R’6およびR7は、独立して、水素または低級アルキルである)
で表されるカチオン性脂質と;
(ii) 融合性脂質と;
(iii) PEG脂質
とを含む。
【0014】
また本発明は、in vivoおよびin vitroにおいて細胞または組織に核酸(好ましくはオリゴヌクレオチド)を送達するための方法を提供する。本明細書に記載の方法により導入されるオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子の発現をモジュレートすることができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様は、標的遺伝子(すなわち、哺乳動物(好ましくはヒト)の発癌遺伝子および炎症に関係する遺伝子)の発現を阻害する方法を提供する。本方法は、癌細胞などの細胞または組織を、本明細書に記載のナノ粒子組成物から調製したナノ粒子と接触させることを含む。ナノ粒子内に封入されたオリゴヌクレオチドは治療されている細胞または組織内で放出され、mRNAまたはタンパク質のダウンレギュレーションをもたらす。このナノ粒子を使用する治療では標的遺伝子発現のモジュレーションが可能であり、例えば、癌細胞増殖の阻害といった、悪性疾患の治療でそれに伴う効果が得られる。こうした治療は単独治療として実施することもできるし、1種または複数の有用かつ/または承認されている治療との併用療法の一部として行うこともできる。
【0016】
さらなる態様は、式(I)で表されるカチオン性脂質を製造する方法、ならびにそれを含有するナノ粒子を含む。
【0017】
本発明の有利な点の1つは、本明細書に記載のカチオン性脂質を含有するナノ粒子組成物がin vivoならびにin vitroにおける核酸の投与手段を提供するということである。この送達技術によって、体内における治療用オリゴヌクレオチドの安定性、トランスフェクション効果およびバイオアベイラビリティが高められ、結果として、当業者は所望するオリゴヌクレオチドの治療効力を得ることができる。
【0018】
本明細書に記載のナノ粒子は、ヒト癌細胞内でのLNA含有オリゴヌクレオチドのin vitroにおける細胞内取り込みを改善し、哺乳動物の腫瘍へのLNA-ON類の送達を向上させた。
【0019】
本明細書に記載のカチオン性脂質は、核酸の負電荷を中和し、細胞での核酸含有ナノ粒子の細胞内取り込みを促進する。本明細書に記載のカチオン性脂質は、さらに、コレステロール部分毎に複数のユニットからなるカチオン性部分を供給し、(i)核酸の負電荷の中和、(ii)核酸とのより結合性の高いイオン錯体の形成において高い効果を発揮する。この技術は、LNAを含む治療用オリゴヌクレオチド、ならびにsiRNA、microRNAおよびMOEアンチセンスをベースとするものを使用する、治療用オリゴヌクレオチドの送達および哺乳動物(すなわちヒト)の治療に有利である。
【0020】
本明細書に記載のカチオン性脂質の他の利点は、核酸と多重イオン錯体を形成することにより、ナノ粒子のサイズを調節する手段を提供するということである。
【0021】
本明細書に記載のカチオン性脂質は、体液中でナノ粒子錯体とその中の核酸を安定させる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、ナノ粒子錯体は、分子をヌクレアーゼから保護することにより封入された核酸の安定性を少なくともある程度高め、その結果、分解から保護されると考えられる。本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質をベースとしたナノ粒子は、封入された核酸を安定させる。
【0022】
本明細書に記載のカチオン性脂質は、典型的には充填が約10%またはそれ未満の当該分野で公知の中性または負荷電ナノ粒子に比べ、高い効率(例えば70%超、好ましくは80%超)で核酸(オリゴヌクレオチド)を充填することができる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、この高充填は、一つには、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質の高pKa(13〜14)グアニジニウム基が核酸のリン酸基と実質的にコンパクトな双性イオン水素結合を形成することで、より多くの核酸がナノ粒子の内部分画に効果的にパッケージ化されるという事実により達成される。
【0023】
本明細書に記載のナノ粒子は、ナノ粒子の凝集または析出が生じにくいという点で、中性または負荷電ナノ粒子よりも優れた、さらなる利点を有する。いかなる理論にも拘束されるものではないが、この望ましい特性は、一つには、核酸と水素結合または静電的相互作用を形成するカチオン性脂質がナノ粒子内に封入されており、しかも、非カチオン性/融合性脂質およびPEG脂質がそのカチオン性脂質および核酸を囲んでいるという事実に起因する。
【0024】
本明細書に記載のナノ粒子は、トランスフェクション効率が高いという別の利点を提供する。本明細書に記載のナノ粒子は、トランスフェクト剤を利用しなくても、in vitroおよびin vivoにおいて細胞のトランスフェクションが可能となる。本ナノ粒子は、トランスフェクト剤が必要な当該分野で公知のナノ粒子と同様な毒性は持たないので安全である。また、本ナノ粒子の高トランスフェクション効率は、治療用核酸の核への送達手段も提供する。
【0025】
本明細書に記載のナノ粒子は、さらに、ナノ粒子の調製において、優れた安定性および適応性を提供する。本ナノ粒子は、2〜12といった広範囲のpH領域で調製することができる。また、本明細書に記載のナノ粒子は、望ましい生理学的pH(例えば、7.2〜7.6)で臨床的に使用することができる。
【0026】
また、本明細書に記載のナノ粒子送達システムでは、十分な量の治療用オリゴヌクレオチドがEPR効果によって癌細胞などの目的とする標的領域で選択的に利用することができる。したがって、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、癌細胞または組織における特定のmRNAダウンレギュレーションを改善する。
【0027】
別の利点は、本明細書に記載のカチオン性脂質は、均一なサイズのナノ粒子の調製と、保存中のナノ粒子の安定性を可能にするということである。本明細書に記載のカチオン性脂質を含有するナノ粒子錯体は、バッファー条件下で安定している。この特徴は、信頼性があり融通のきく投薬計画を臨床医に提供するので、先行技術に勝る重要な利点である。安定性のある本ナノ粒子は、LNA-ONの全身性送達に好適である。
【0028】
別の利点は、本明細書に記載のナノ粒子が1種または複数の異なる標的オリゴヌクレオチドを送達することが可能で、それにより、疾患の治療で相乗効果が得られるということである。
【0029】
遺伝子レベルでのヒト疾患の治療はますます注目されてきている。ロック核酸およびsiRNAをはじめとするオリゴヌクレオチド類は、望ましくない遺伝子発現を阻害する可能性を有する。本発明は、標的領域、細胞または組織での核酸(例えばLNA-ON)の細胞内取り込みおよび蓄積を高めることができる。その上、本明細書に記載のカチオン性脂質をベースとしたナノ粒子は、ウイルスによる送達システムと比べると、in vivoでのオリゴヌクレオチドの送達が安全であり、それらの薬物動態学的プロファイル、細胞透過および特異的腫瘍標的が改善される。
【0030】
本発明の別の利点は、本明細書に記載のナノ粒子によって、トランスフェクション剤を用いることなく、複数のヒト腫瘍細胞での標的mRNAの有効なダウンモジュレーションが可能となり、また、癌に罹患している哺乳動物における核酸の細胞送達を改善することができるということである。静脈内投与の場合、肝臓および腫瘍でのサイレンシングmRNAのネイキッドオリゴヌクレオチドよりも、ナノ粒子中に封入されているオリゴヌクレオチドは、それぞれ、30倍以上および3倍以上の効果がある。
【0031】
他の利点およびさらなる利点は、下記の記載から明白であろう。
【0032】
本発明の目的において、「残基」という用語は、別の化合物との置換反応に供された後に残存する、ある化合物、例えばコレステロールなどの部分を意味するものと理解されたい。
【0033】
本発明の目的において、「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状のアルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素を意味する。また「アルキル」という用語は、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルおよびC1-6アルキルカルボニルアルキル基を含む。好ましくは、アルキル基は1〜12個の炭素を有する。より好ましくは約1〜7個の炭素、さらにより好ましくは約1〜4個の炭素の低級アルキルである。アルキル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(類)としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0034】
本発明の目的において、「置換(されている)」という用語は、官能基または化合物に含まれる1個または複数の原子に、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6アルキルカルボニルアルキル、アリール、およびアミノ基よりなる群から選択される部分の一つを付加するか、またはこれと置き換えることを意味する。
【0035】
本発明の目的において、「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状の基を含む、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する基を意味する。好ましくは、アルケニル基は約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは約2〜7個の炭素、さらにより好ましくは約2〜4個の炭素の低級アルケニルである。アルケニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(類)としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0036】
本発明の目的において、「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状の基を含む、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する基を意味する。好ましくは、アルキニル基は約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは約2〜7個の炭素、さらにより好ましくは約2〜4個の炭素の低級アルキニルである。アルキニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(類)としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。「アルキニル」の例として、プロパルギル、プロピン、および3-ヘキシンが挙げられる。
【0037】
本発明の目的において、「アリール」という用語は、少なくとも1個の芳香環を含有する芳香族炭化水素の環系を意味する。芳香環は、場合により、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環に縮合するか、結合することができる。アリール基の例としては、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0038】
本発明の目的において、「シクロアルキル」という用語は、C3-8の環状炭化水素を意味する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0039】
本発明の目的において、「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有するC3-8の環状炭化水素を意味する。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
【0040】
本発明の目的において、「シクロアルキルアルキル」という用語は、C3-8シクロアルキル基で置換されているアルキル基を意味する。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
【0041】
本発明の目的において、「アルコキシ」という用語は、酸素架橋を通して親分子の部分に結合されている、指示した数の炭素原子のアルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシが挙げられる。
【0042】
本発明の目的において、「アルキルアリール」基は、アルキル基で置換されているアリール基を意味する。
【0043】
本発明の目的において、「アラルキル(aralkyl)」基は、アリール基で置換されているアルキル基を意味する。
【0044】
本発明の目的において、「アルコキシアルキル」基という用語は、アルコキシ基で置換されているアルキル基を意味する。
【0045】
本発明の目的において、「アルキル-チオ-アルキル」という用語は、アルキル-S-アルキルチオエーテル、例えば、メチルチオメチルまたはメチルチオエチルを意味する。
【0046】
本発明の目的において、「アミノ」という用語は、1個または複数の水素基を有機基で置き換えることによってアンモニアから由来する、当該分野で公知の窒素含有基を意味する。例えば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」という用語は、それぞれ、アシルおよびアルキル置換基を有する特定のN-置換有機基を意味する。
【0047】
本発明の目的において、「アルキルカルボニル」という用語は、アルキル基で置換されているカルボニル基を意味する。
【0048】
本発明の目的において、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。
【0049】
本発明の目的において、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する非芳香族環系を意味する。ヘテロシクロアルキル環は、場合によっては、他のヘテロシクロアルキル環および/または非芳香族の炭化水素環と縮合するか、あるいは結合することができる。好ましいヘテロシクロアルキル基は3〜7員を有する。ヘテロシクロアルキル基の例としては、例えば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジンおよびピラゾールが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルおよびピロリジニルが挙げられる。
【0050】
本発明の目的において、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香族環系を意味する。ヘテロアリール環は、1個もしくは複数のヘテロアリール環、芳香族もしくは非芳香族炭化水素環またはヘテロシクロアルキル環と縮合するか、あるいは結合することができる。ヘテロアリール基の例としては、例えば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリンおよびピリミジンが挙げられる。ヘテロアリール基の好ましい例としては、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0051】
本発明の目的において、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素および硫黄を意味する。
【0052】
いくつかの実施形態において、置換アルキルとしては、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルが挙げられ;置換アルケニルとしては、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルが挙げられ;置換アルキニルとしては、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルが挙げられ;置換シクロアルキルとしては4-クロロシクロヘキシル等の部分が挙げられ;アリールとしてはナフチル等の部分が挙げられ;置換アリールとしては3-ブロモフェニル等の部分が挙げられ;アラルキルとしてはトリル等の部分が挙げられ;ヘテロアルキルとしてはエチルチオフェン等の部分が挙げられ;置換ヘテロアルキルとしては3-メトキシ-チオフェン等の部分が挙げられ;アルコキシとしてはメトキシ等の部分が挙げられ;フェノキシとしては3-ニトロフェノキシ等の部分が挙げられる。ハロは、フルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むものと理解されたい。
【0053】
本発明の目的において、「正の整数」は、1と等しいか、またはそれより大きい整数を含み、当業者に理解されるように、当業者による適性の範囲内であると理解されたい。
【0054】
本発明の目的において、「連結した(linked)」という用語は、化学反応の結果としての、1個の基の別の基への共有(好ましくは)または非共有結合を含むものと理解されたい。
【0055】
本発明の目的において、「有効な量」および「十分な量」という用語は、当業者に理解されるような所望の効果または治療効果を達成する量を意味する。
【0056】
本明細書に記載のナノ粒子組成物を用いて形成される「ナノ粒子」および/または「ナノ粒子錯体」という用語は、脂質ベースのナノ錯体を意味する。ナノ粒子は、カチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質の混合物中に封入されている核酸(例えばオリゴヌクレオチド)を含有する。あるいは、ナノ粒子は核酸を含まないで形成させることができる。
【0057】
本発明の目的において、「治療用オリゴヌクレオチド」という用語は、医薬用または診断用の薬剤として使用されるオリゴヌクレオチドを意味する。
【0058】
本発明の目的において、「遺伝子発現のモジュレーション」は、投与経路にかかわらず、本明細書に記載のナノ粒子を用いた治療を行わない時に認められる遺伝子発現と比較した場合の、好ましくは癌および炎症に関連した、あらゆるタイプの遺伝子のダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションを広く含んでいるものと理解されたい。
【0059】
本発明の目的において、「標的遺伝子の発現抑制」とは、本明細書に記載のナノ粒子を用いた治療を行わない時に認められるものと比較した場合に、mRNA発現または翻訳されたタンパク質の量が低減または軽減されることを意味するものと理解されたい。こうした阻害の適切なアッセイは、例えば、当業者に公知の技術を使用するタンパク質またはmRNAレベルの試験が挙げられ、例としては、ドットブロット、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼイション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、ならびに当業者に公知の表現型アッセイである。治療状況は、例えば、細胞、好ましくは癌細胞または組織中のmRNAレベルの減少によって確認することができる。
【0060】
大まかに言えば、成功的阻害または治療は、所望の応答が得られた場合に生じていると判断されるべきである。例えば、成功的阻害または治療は、癌増殖阻害と関連する遺伝子の10%以上(すなわち20%、30%、40%)のダウンレギュレーションが得られるということにより定義することができる。あるいは、成功的治療は、本明細書に記載のナノ粒子を用いた治療を行わない時に認められるものと比較した場合に、癌細胞または組織中の発癌遺伝子mRNAレベルまたはコード化されたタンパク質レベル(当該分野の当業者によって考えられる別の臨床マーカーを含む)の少なくとも20%、好ましくは30%、さらに好ましくは40%以上(すなわち、50%または80%)の減少が得られるということにより定義することができる。
【0061】
さらに、説明の便宜上での単数形の用語の使用は、決して、そのように限定することを意図するものではない。したがって、例えば、オリゴヌクレオチド、コレステロール類似体、融合性脂質、PEG脂質などを含む組成物に関する記述は、1種または複数のそのオリゴヌクレオチド、コレステロール類似体、融合性脂質、PEG脂質などの分子を意味する。また、オリゴヌクレオチドは同一か異なる種類の遺伝子であってもよいと考えられる。また、本発明は、本明細書に開示している特定の組成、プロセス段階、および物質に限定されるものではなく、そのような組成、プロセス段階、および物質がある程度変動し得ることも理解されたい。
【0062】
本発明の範囲は請求の範囲およびそれに相当する内容によって限定されるものであるから、本明細書で使用している用語は特定の実施形態を記載するためにのみ使用するものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1〜5に記載する、2-[ビス(3-グアニジニウム-プロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物5)を調製する反応スキームを示す。
【図2】実施例7に記載する、ナノ粒子の安定性を示す。
【図3】実施例8に記載する、核酸を封入しているナノ粒子の細胞内取り込みと細胞内分布を示す。
【図4】実施例9に記載する、ヒト表皮癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図5】実施例10に記載する、ヒト胃癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図6】実施例11に記載する、ヒト肺癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図7】実施例12に記載する、ヒト前立腺癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図8】実施例13に記載する、ヒト乳癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図9】実施例14に記載する、ヒトKB癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図10】実施例15に記載する、ヒト前立腺癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図11】実施例16に記載する、ヒト前立腺癌異種移植マウスの腫瘍におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo効果を示す。
【図12】実施例16に記載する、ヒト前立腺癌異種移植マウスの肝臓におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo効果を示す。
【図13】実施例17に記載する、ヒト結腸癌異種移植マウスの腫瘍におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo 効果を示す。
【図14】実施例18に記載する、肝臓に転移のあるヒト癌異種移植マウスにおけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo効果を示す。
【図15】肝転移のある代表的な動物の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
A. 概要
本発明の一態様において、核酸送達用のナノ粒子組成物を提供する。ナノ粒子組成物は、(i) カチオン性脂質;(ii) 融合性脂質;および(iii) PEG脂質を含有する。考えられる核酸としては、オリゴヌクレオチドまたはプラスミドが挙げられるが、好ましくはオリゴヌクレオチドである。本明細書に記載のナノ粒子組成物を使用することにより調製されるナノ粒子は、脂質担体中に封入されている核酸を含む。
【0065】
B. カチオン性脂質
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、式(I):
【化5】
【0066】
(式中、
R1は、コレステロールまたはその類似体であり;
Y1およびY3は、独立して、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
Y2は、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
(a)は、0または1であり;
R2およびR3は、独立して、水素またはC1-7アルキルなどの低級アルキル、好ましくは水素またはC1-4アルキルであり;
(b)は、約2〜約10の正の整数(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、一部の実施形態では、好ましくは、2、3、4、さらに好ましくは2である)であり;
R4は、水素、C1-7アルキルなどの低級アルキル(すなわちC1-4アルキル)、または、
【化6】
【0067】
であり;
R5は、
【化7】
【0068】
であり;
R’5は、NH2、
【化8】
【0069】
であり;
R6、R’6およびR7は、独立して、水素またはC1-7アルキルなどの低級アルキル、好ましくは水素またはC1-4アルキルである)
で表されるカチオン性脂質を含有する。
【0070】
本発明の目的において、C(R2)(R3)は、(b)が2以上である場合、同一であるか異なる。
【0071】
本発明の好ましい一態様においては、本明細書に記載のカチオン性脂質は、正荷電基を含有する1つより多い(すなわち2つの)部分を含む。
【0072】
別の好ましい態様においては、カチオン性脂質は、以下の構造:
【化9】
【0073】
(式中、R6およびR’6は両方とも好ましくは水素である)
を含有する各R5およびR’5を含む。カチオン性脂質は、好ましくは、次式:
【化10】
【0074】
のような2つのユニットのグアニジニルプロピル基を有する。
【0075】
さらに別の好ましい態様においては、式(I)のY1、Y2およびY3は、すべて酸素である。
【0076】
カチオン性脂質のさらなる別の好ましい態様では、(a)は1であり、(b)は2である。
【0077】
カチオン性脂質のさらなる別の好ましい態様では、R2およびR3は両方とも水素である。
【0078】
本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質は、選択したpH、例えばpH<13(例えば、pH 6〜12、pH 6〜8)で正味の正電荷を有する。
【0079】
特定の一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、次の構造:
【化11】
【0080】
(式中、R1はコレステロールまたはその類似体である)
を有するカチオン性脂質を含む。
【0081】
好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、次の構造:
【化12】
【0082】
を有するカチオン性脂質を含む。
【0083】
さらに好ましくは、ナノ粒子組成物は、次の構造:
【化13】
【0084】
を有するカチオン性脂質を含む。
【0085】
本発明のさらなる態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、追加のカチオン性脂質を含んでいてもよい。考えられる追加の適切な脂質としては、例えば:
N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);
1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニウム)プロパンまたはN-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);
1,2-ジミルストイルオキシ-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DMTAP);
1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミドまたはN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);
ジメチルジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB);
3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-コレステロール);
3β-((N',N'-ジグアニジノエチル-アミノエタン)カルバモイル)コレステロール(BGTC);
2-(2-(3-(ビス(3-アミノプロピル)アミノ)プロピルアミノ)アセトアミド)-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(RPR209120);
1,2-ジアルケノイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(すなわち、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリンおよび1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン);
テトラメチルテトラパルミトイルスペルミン(TMTPS);
テトラメチルテトラオレイルスペルミン(TMTOS);
テトラメチルテトララウリルスペルミン(TMTLS);
テトラメチルテトラミリスチルスペルミン(TMTMS);
テトラメチルジオレイルスペルミン(TMDOS);
2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-(2-(ジオクタデシルアミノ)-2-オキソエチル)ペンタンアミド(DOGS);
2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-(2-(ジ(Z)-オクタデカ-9-ジエニルアミノ)-2-オキソエチル)ペンタンアミド(DOGS-9-en);
2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-(2-(ジ(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルアミノ)-2-オキソエチル)ペンタンアミド(DLinGS);
N4-スペルミンコレステリルカーバメート(GL-67);
(9Z,9'Z)-2-(2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)ペンタンアミド)プロパン-1,3-ジイル-ジオクタデカ-9-エノエート(DOSPER);
2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA);
1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODMA);
ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DODAB);
ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA);
N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0086】
また、カチオン性脂質の詳細は、US2007/0293449、ならびに米国特許第4,897,355号;5,279,833号;6,733,777号;6,376,248号;5,736,392号;5,686,958号;5,334,761号;5,459,127号;2005/0064595号;5,208,036号;5,264,618号;5,279,833号;5,283,185号;5,753,613号;および5,785,992号に記載されている。
【0087】
さらに、カチオン性脂質を含む市販の調製品は、次のものを使用することができる:例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよびDOPEを含有するカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL (Grand Island, New York, USA)製);LIPOFECTAMINE(登録商標)(DOSPAおよびDOPEを含有するカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL (Grand Island, New York, USA)製;およびTRANSFECTAM(登録商標)(DOGSを含有するカチオン性リポソーム、Promega Corp. (Madison, Wisconsin, USA)製)。
【0088】
C. 融合性/非カチオン性脂質
本発明の別の態様においては、ナノ粒子組成物は融合性脂質を含有する。融合性脂質としては、非カチオン性脂質(例えば、中性で非荷電の双性イオンおよびアニオン性脂質)が挙げられる。本発明の目的においては、「融合性脂質」と「非カチオン性脂質」という用語は言い換えられる。
【0089】
中性脂質は、選択されたpH(好ましくは生理学的pH)で非荷電または中性の双性イオン形態で存在する脂質を含む。こうした脂質の例としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ケファリン、コレステロール、セレブロシドおよびジアシルグリセロールが挙げられる。
【0090】
アニオン性脂質は、生理学的pHで負の電荷を持った脂質を含む。このような脂質としては、これらに限定されるものではないが、ホスファチジルグリセロール、カルディオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルフホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイルホスファチジルグリセロール(POPG)、および他のアニオン性修飾基で修飾されている中性脂質が挙げられる。
【0091】
多くの融合性脂質は、一般に、疎水性部分と極性頭部基を有する両親媒性脂質を含み、かつ水溶液中で小胞を形成することができる。
【0092】
考えられる融合性脂質としては、天然型および合成型リン脂質、ならびに関連脂質が挙げられる。
【0093】
非カチオン性脂質のリスト(限定されるものではない)は、以下のリン脂質および非リン脂質ベースの物質から選択される:例えば、レシチン;リゾレシチン;ジアシルホスファチジルコリン;リゾホスファチジルコリン;ホスファチジルエタノールアミン;リゾホスファチジルエタノールアミン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ケファリン;セラミド;カルディオリピン;ホスファチジン酸;ホスファチジルグリセロール;セレブロシド;ジセチルホスフェート;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール (DLG);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール (DMG);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール (DPG);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール (DSG);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DLPA);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DMPA);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DPPA);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DSPA);
1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DAPC);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DLPC);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DMPC);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン (DPePC);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはジステアロイルホスファチジルコリン (DSPC);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン (DLPE);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジミリストイルホスホエタノールアミン (DMPE);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン (DPPE);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン (DSPE);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール (DLPG);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)または1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-sn-1-グリセロール(DMP-sn-1-G);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロールまたはジパルミトイルホスファチジルグリセロール (DPPG);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DSPG)または1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-sn-1-グリセロール(DSP-sn-1-G);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS);
1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PLinoPC);
1-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロ-3-ホスホコリンまたはパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG);
1-パルミトイル-2-リソ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(P-lyso-PC);
1-ステアロイル-2-リソ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(S-lyso-PC);
ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(DPhPE);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC);
1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)、
ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG);
パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE);
ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal);
16-O-モノメチル PE;
16-O-ジメチル PE;
18-1-トランス PE;1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE);
1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(transDOPE);
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。融合性脂質の詳細は、米国特許出願公開第2007/0293449号および2006/0051405号に記載されている。
【0094】
非カチオン性脂質は、ステロールまたはステロイドアルコール、例えばコレステロールを含む。
【0095】
さらなる非カチオン性脂質は、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、硫酸トリエタノールアミンラウリル、アルキルアリール硫酸ポリエチルオキシレート化脂肪酸アミド、およびジオクタデシルジメチル臭化アンモニウムである。
【0096】
考えられるアニオン性脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、血小板活性化因子(PAF)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル-DL-グリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトール、カルディオリピン、リゾホスファチド、水素化リン脂質、スフィンゴ脂質(sphingoplipids)、ガングリオシド、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、それらの製薬上許容可能な塩および混合物が挙げられる。
【0097】
本明細書に記載のナノ粒子組成物の調製に有用な適切な非カチオン性脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジリノレオイルホスファチジルコリン)、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびパルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、セラミドまたはスフィンゴミエリンが挙げられる。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、飽和および不飽和の炭素鎖を有する脂肪酸であり、例えば、リノイル、イソステアリル、オレイル、エライジル、ペトロセリニル、リノレニル、エラエオステアリル、アラキジル、ミリストイル、パルミトイルおよびラウロイルである。さらに好ましくは、アシル基はラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルである。あるいはおよび好ましくは、脂肪酸は飽和および不飽和のC8-C30(好ましくはC10-C24)炭素鎖を有する。
【0098】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルコリンとしては、次のものが挙げられる:
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC, C10:0, C10:0);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC, C12:0, C12:0);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC, C18:1, C18:1);
1,2-ジエルコイル(dierucoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC, C22:1, C22:1);
1,2-ジエイコサペンタエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(EPA-PC, C20:5, C20:5);
1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DHA-PC, C22:6, C22:6);
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MPPC, C14:0, C16:0);
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MSPC, C14:0, C18:0);
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PMPC, C16:0, C14:0);
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC, C16:0, C18:0);
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SMPC, C18:0, C14:0);
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SPPC, C18:0, C16:0);
1,2-ミリストイル-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MOPC, C14:0, C18:0);
1,2-パルミトイル-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPC, C16:0, C18:1);
1,2-ステアロイル-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPC, C18:0, C18:1)、およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0099】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なリゾホスファチジルコリンとしては、次のものが挙げられる:
1-ミリストイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(M-LysoPC, C14:0);
1-マルミトイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(P-LysoPC, C16:0);
1-ステアロイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(S-LysoPC, C18:0)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0100】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルグリセロールは、次のものの中から選択される:
水素化ダイズホスファチジルグリセロール(HSPG);
非水素化卵ホスファチジルグリセロール(EPG);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DPPG, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DSPG, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DOPG, C18:1, C18:1);
1,2-ジエルコイル(dierucoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DEPG, C22:1, C22:1);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG, C16:0, C18:1)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0101】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジン酸は、次のものが挙げられる:
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DMPA, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DPPA, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DSPA, C18:0, C18:0)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0102】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルエタノールアミンとしては、次のものが挙げられる:
水素化ダイズホスファチジルエタノールアミン(HSPE);
非水素化卵ホスファチジルエタノールアミン(EPE);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE, C18:1, C18:1);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE, C22:1, C22:1);
1,2-ジエルコイル(dierucoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE, C16:0, C18:1)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0103】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルセリンとしては、次のものが挙げられる:
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DMPS, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS, C18:1, C18:1);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-3-ホスホ-L-セリン(POPS, C16:0, C18:1)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0104】
好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物の調製に有用な適切な中性脂質としては、例えば、
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、
ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、
パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、
卵ホスファチジルコリン(EPC)、
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、
ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、
パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、
ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、
ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、
コレステロール、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0105】
特定の好ましい実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物としては、DSPC、EPC、DOPE等、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0106】
本発明のさらなる態様においては、ナノ粒子組成物は、ステロールなどの非カチオン性脂質を含有する。ナノ粒子組成物は、好ましくは、コレステロールまたはその類似体、さらに好ましくはコレステロールを含有する。
【0107】
D. PEG脂質
本発明の別の態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物はPEG脂質を含有する。PEG脂質は、本明細書に記載のナノ粒子の循環を延長し、また身体からナノ粒子が早期に排出されるのを防ぐ。PEG脂質は、体内の免疫反応を低減することができる。またPEG脂質は、ナノ粒子の安定性を高める。
【0108】
ナノ粒子組成物に有用なPEG脂質は、融合性/非カチオン性脂質のPEG化形態を含む。PEG脂質としては、例えば、ジアシルグリセロールにコンジュゲートしたPEG(PEG-DAG)、ジアシルグリカミドにコンジュゲートしたPEG、ジアルキルオキシプロピルにコンジュゲートしたPEG(PEG-DAA)、リン脂質にコンジュゲートしたPEG、例えば、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEG(PEG-PE)、セラミドにコンジュゲートしたPEG(PEG-Cer)、コレステロール誘導体にコンジュゲートしたPEG(PEG-Chol)、またはそれらの混合物が挙げられる。米国特許第5,885,613号および第5,820,873号、ならびに米国特許出願公開第2006/051405号を参照されたい(これらの各内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0109】
PEGは、一般に、次の構造:
-O-(CH2CH2O)n-
によって表され、この場合、(n)は約5〜約2300、好ましくは約5〜約460の正の整数であり、その結果、PEG脂質のポリマー部分の数平均分子量は約200〜約100,000ダルトン、好ましくは約200〜約20,000ダルトンとなる。
【0110】
あるいは、ポリエチレングリコール(PEG)残基部分は、次の構造:
-Y71-(CH2CH2O)n-CH2CH2Y71-、
-Y71-(CH2CH2O)n-CH2C(=Y72)-Y71-、
-Y71-C(=Y72)-(CH2)a2-Y73-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y73-(CH2)a2-C(=Y72)-Y71-、および、
-Y71-(CR71R72)a2-Y73-(CH2)b2-O-(CH2CH2O)n-(CH2)b2-Y73-(CR71R72)a2-Y71-によって表すことができ、
この場合、
Y71およびY73は、独立して、O、S、SO、SO2、NR73または結合であり;
Y72は、O、SまたはNR74であり;
R71-74は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、および置換アリールカルボニルオキシ、好ましくは水素、メチル、エチルまたはプロピルの中から選択され;
(a2)および(b2)は、独立して、0または正の整数であり、好ましくは0または約1〜約6の整数(すなわち1、2、3、4、5、6)、さらに好ましくは、1または2であり;
(n)は、約5〜約2300、好ましくは約5〜約460の整数である。
【0111】
PEGの末端側終端は、H、NH2、OH、CO2H、C1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル)、C1-6アルコキシ、アシルまたはアリールで終えることができる。好ましい実施形態においては、PEGの末端ヒドロキシル基は、メトキシまたはメチル基で置換される。好ましい一実施形態では、PEG脂質中で用いられるPEGはメトキシPEGである。
【0112】
PEGは、脂質に直接コンジュゲートされていてもよいし、リンカー部分を介してコンジュゲートされていてもよい。脂質構造へコンジュゲートするためのポリマーは、必要以上の実験を行うことなく、米国特許第5,122,614号および第5,808,096号に記載の活性化技術および当該技術分野で公知の他の技術を用いて、適切に活性化されたポリマーに変換される。
【0113】
PEG脂質の調製に有用な活性化PEGの例としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール-コハク酸、mPEG-NHS、メトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルコハク酸、メトキシポリエチレングリコール-酢酸(mPEG-CH2COOH)、メトキシポリエチレングリコールアミン(mPEG-NH2)、およびメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(mPEG-TRES)が挙げられる。
【0114】
特定の態様においては、末端カルボン酸基を有するポリマーは、本明細書に記載のPEG脂質で用いることができる。高純度で末端カルボン酸を有するポリマーの調製方法は、米国特許出願公開第11/328,662号(この内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0115】
代替の態様においては、末端アミン基を有するポリマーは、本明細書に記載のPEG脂質の製造に用いることができる。高純度で末端アミンを含有するポリマーの調製方法は、米国特許出願公開第11/508,507号および第11/537,172号(このそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0116】
PEGおよび脂質は、連結(すなわち、非エステル含有リンカー部分またはエステル含有リンカー部分)を介して結合することができる。適切な非エステル含有リンカー部分としては、これらに限定されるものではないが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カーバメートリンカー部分、カーボネート(OC(=O)O)リンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、スクシニルリンカー部分、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切なエステルリンカー部分としては、例えば、スクシノイル、リン酸エステル(-O-P(=O)(OH)-O-)、スルホネートエステル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0117】
一実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ポリエチレングリコール-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)またはポリエチレン-ジアシルグリカミドを含む。適切なポリエチレングリコール-ジアシルグリセロールまたはポリエチレン-ジアシルグリカミドコンジュゲートとしては、独立して、約C4〜約C30(好ましくは、約C8〜約C24)の飽和または不飽和炭素原子を含有するアルキル鎖長を有するジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基が挙げられる。ジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミドは、さらに1個または複数の置換アルキル基を含んでいてもよい。
【0118】
本明細書で使用されている「ジアシルグリセロール」(DAG)という用語は、2つの脂肪アシル鎖、R11およびR12を有する化合物を意味する。DAGは、一般式:
【化14】
【0119】
を有する。
【0120】
R11およびR12は、同一であるか、異なる約4〜約30(好ましくは約8〜約24)の炭素を有しており、かつ、エステル結合によりグリセロールに結合されている。アシル基は飽和であってもよいし、様々な不飽和度の不飽和であってもよい。
【0121】
好ましい実施形態においては、PEG-ジアシルグリセロールコンジュゲートは、PEG-ジラウリルグリセロール(C12)、PEG-ジミリスチルグリセロール(C14、DMG)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16、DPG)またはPEG-ジステアリルグリセロール(C18、DSG)である。他のジアシルグリセロールもまたPEG-ジアシルグリコールコンジュゲートと考えられることは、当業者には容易に十分に理解されよう。本発明での使用に好適なPEG-ジアシルグリセロールコンジュゲート、ならびにそれらの製造方法および使用方法は、米国特許出願公開第2003/0077829号およびPCT特許公開公報第CA02/00669号に記載されている(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0122】
PEG-ジアシルグリセロールコンジュゲートの例としては、PEG-ジラウリルグリセロール(C12)、PEG-ジミリスチルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、PEG-ジステリルグリセロール(C18)の中から選択することができる。PEG-ジアシルグリカミドコンジュゲートの例としては、PEG-ジラウリルグリカミド(C12)、PEG-ジミリスチルグリカミド(C14)、PEG-ジパルミトイル-グリカミド(C16)、およびPEG-ジステリルグリカミド(C18)が挙げられる。
【0123】
別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ポリエチレングリコール-ジアルキルオキシプロピルコンジュゲート (PEG-DAA)を含む。
【0124】
「ジアルキルオキシプロピル」という用語は、2つのアルキル鎖、R11およびR12を有する化合物を意味する。R11およびR12アルキル基は、同一または異なる約4〜約30(好ましくは約8〜約24)個の炭素を含む。アルキル基は飽和であってもよいし、様々な不飽和度を有していてもよい。ジアルキルオキシプロピルは、一般式:
【化15】
【0125】
(式中、R11およびR12アルキル基は、約4〜約30(好ましくは約8〜約24)の炭素を有する、同一または異なるアルキル基である。アルキル基は飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。好適なアルキル基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、パルミチル(C16)、ステアリル(C18)、オレオイル(C18)およびイコシル(C20)が挙げられる。
【0126】
一実施形態においては、R11およびR12は両方とも同一である。すなわち、R11およびR12は両方ともミリスチル(C14)であるか、両方ともステアリル(C18)であるか、両方ともオレオイル(C18)などである。別の実施形態においては、R11およびR12は異なっている。すなわち、R11がミリスチル(C14)であり、R12がステアリル(C18)である。好ましい実施形態においては、PEG-ジアルキルプロピルコンジュゲートは、同一のR11およびR12を含む。
【0127】
さらに別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)を含む。PEG脂質コンジュゲートに有用なホスファチジルエタノールアミンは、約4〜約30(好ましくは約8〜約24)個の炭素の範囲の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含有し得る。好適なホスファチジルエタノールアミンとしては、これらに限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられる。
【0128】
さらに別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)を含む。セラミドはアシル基を1個だけ有する。セラミドは、炭素約4〜約30個(好ましくは約8〜約24個)の範囲の炭素鎖長を持つ飽和または不飽和脂肪酸を有し得る。
【0129】
代替の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、コレステロール誘導体にコンジュゲートされているPEGを含む。「コレステロール誘導体」という用語は、修飾されている(すなわち、それらの置換および/または欠失)コレステロール構造を含有する、あらゆるコレステロール類似体を意味する。本明細書のコレステロール誘導体という用語は、ステロイドホルモンおよび胆汁酸も含んでいる。
【0130】
好ましい一態様においては、PEGは、数平均分子量が約200〜約20,000ダルトン、さらに好ましくは約500〜約10,000ダルトン、よりさらに好ましくは約1,000〜約5,000ダルトン(すなわち、約1,500〜約3,000ダルトン)の範囲のポリエチレングリコールである。特定の一実施形態においては、PEGは、約2,000ダルトンの数平均分子量を有する。別の特定の実施形態においては、PEGは、約750ダルトンの数平均分子量を有する。
【0131】
PEG脂質の具体例としては、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール)-1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(2kDa mPEG-DMPEまたは5kDa mPEG-DMPE);N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(2kDa mPEG-DPPEまたは5kDa mPEG-DPPE);N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(750Da mPEG-DSPE、2kDa mPEG-DSPE、5kDa mPEG-DSPE);およびそれらの製薬上許容可能な塩(すなわちナトリウム塩)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0132】
特定の好ましい実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、PEG-DAGまたはPEGセラミドを有するPEG脂質を含んでいるが、この場合、PEGは約200〜約20,000、好ましくは約500〜約10,000、さらに好ましくは約1,000〜約5,000の分子量を有する。
【0133】
PEG-DAGおよびPEGセラミドのいくつかの具体的実施形態を表1に示す。
【表1】
【0134】
好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、PEG-DSPE、PEG-ジパルミトイルグリカミド(C16)、PEG-セラミド(C16)等、およびそれらの混合物から選択されるPEG脂質を含む。mPEG-DSPE、mPEG-ジパルミトイルグリカミド(C16)、およびmPEG-セラミド(C16)の構造は、次式:
【化16】
【0135】
(式中、(n)は、約5〜約2300、好ましくは約5〜約460の整数である)
の通りである。
【0136】
特定の一実施形態においては、(n)は約45である。
【0137】
さらなる実施形態において、またPEGなどのPAO系ポリマーの代わりとして、1種または複数の有効な非抗原性物質、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシド、および/またはそれらのコポリマーを使用することができる。PEGの代わりに使用することが可能な好適なポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、および誘導体化セルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。同一出願人による米国特許第6,153,655号(その内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)も参照されたい。PAO類(例えばPEG)に関しては、本明細書に記載したような活性化の同様のタイプを用いることができることは当業者には理解されよう。さらに、先に掲げたリストは単なる例示であり、しかも、本明細書に記載の特性を有する高分子材料の全てが候補と考えられることも当業者は理解するであろう。本発明の目的において、「実質的に、または効果的に非抗原性」とは、非毒性であって、哺乳動物で感知され得る免疫原性反応を誘発しないことが当該技術分野で理解される全ての物質を意味する。
【0138】
E. 核酸/オリゴヌクレオチド
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、細胞または組織に各種核酸を送達する目的で使用することができる。核酸はプラスミドおよびオリゴヌクレオチドを包含する。好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、オリゴヌクレオチドの送達に用いられる。
【0139】
本発明をより十分に理解することを目的として、以下の用語を定義する。当業者であれば、「核酸」または「ヌクレオチド」という用語は、特に指定がない限りは、1本鎖または2本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)、ならびに、それらの化学修飾体に対して用いられることは周知である。一般的に、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短いポリヌクレオチドであり、例えば、ヌクレオチド数が約2〜約200、好ましくは約8〜約50、さらに好ましくは約8〜約30、よりさらに好ましくは約8〜約20、あるいは約15〜約28の範囲の長さのものをいう。一般的に、本発明によるオリゴヌクレオチドは、特に指定していない限りは、合成核酸であり、かつ、一本鎖である。本明細書では、「ポリヌクレオチド」および「ポリ核酸」という用語もまた同様に用いる。
【0140】
オリゴヌクレオチド(類似体)は1種類のオリゴヌクレオチドに限定されるのでなく、様々なそのような部分と一緒に機能するように設計されるものであり、リンカーは1種または複数の3'-または5'-末端、通常は、ヌクレオチドのPO4またはSO4基と結合できるものと理解されたい。考えられる核酸分子としては、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾体、糖修飾体、核酸塩基修飾および/またはリン酸骨格修飾体が挙げられる。オリゴヌクレオチドは、天然に存在するホスホロジエステル骨格もしくはホスホロチオエート骨格、または他の全ての修飾骨格類似体群で、例えば、LNA(ロック核酸)、PNA(ペプチド骨格を有する核酸)、CpGオリゴマーなど、例えば、Tides 2002, Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences, May 6-8, 2002, Las Vegas, NV and Oligonucleotide & Peptide Technologies, 18th & 19th November 2003, Hamburg, Germany(この内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に開示されているものを含み得る。
【0141】
本発明として考えられるオリゴヌクレオチドの修飾としては、例えば、オリゴヌクレオチドにさらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用および機能性を持たせるような官能基部分の付加または置換などが挙げられる。かかる修飾としては、2'-位の糖修飾、5-位のピリミジン修飾、8-位のプリン修飾、環外アミンの修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモもしくは5-ヨードウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、塩基対結合(例えば、イソシチジンおよびイソグアニジンなどのイソ塩基類、および同様の組合せなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の範囲内と考えられるオリゴヌクレオチドとしては、3'および/または5'キャップ構造も含まれる。
【0142】
本発明の目的においては、「キャップ構造」とは、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に組み込まれている化学修飾を意味するものと理解されたい。キャップは5'末端(5'-キャップ)または3'末端(3'-キャップ)に存在し得るか、両末端に存在可能である。5'-キャップの例(これらに限定されるものではない)としては、逆方向塩基脱落残基(部分)、4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド;1,5-アンヒドロへキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;α−ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート結合;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'-セコ(seco)ヌクレオチド;非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド;非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3'-3'-逆方向ヌクレオチド部分;3'-3'-逆方向塩基脱落部分;3'-2'-逆方向ヌクレオチド部分;3'-2'-逆方向塩基脱落部分;1,4-ブタンジオールリン酸;3'-ホスホルアミデート;リン酸ヘキシル;リン酸アミノヘキシル;3'-リン酸;3'-ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;または架橋または非架橋リン酸メチル部分が挙げられる。詳細はWO 97/26270(参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。3'-キャップとしては、例えば、4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4'-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;5'-アミノアルキルホスフェート;1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート;3-アミノプロピルホスフェート;6-アミノヘキシルホスフェート;1,2-アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L-ヌクレオチド;α-ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート;トレオペントフラノシルヌクレオチド;非環状3',4'-セコ(seco)ヌクレオチド;3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5'-5'-逆方向ヌクレオチド部分;5'-5'-逆方向塩基脱落部分;5'-ホスホロアミデート;5'-ホスホロチオエート;1,4-ブタンジオールホス
フェート;5'-アミノ;架橋および/または非架橋5'-ホスホロアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋メチルホスホネート、および5'-メルカプト部分を挙げることができる。また、Beaucage and Iyer, 1993, Tetrahedron 49, 1925(この内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)も参照されたい。
【0143】
ヌクレオシド類似体のリスト(これらに限定されるものではない)は、以下の構造:
【化17】
【0144】
を有する。ヌクレオチド類似体のさらなる例については、Freier & Altmann; Nucl. Acid Res., 1997, 25, 4429-4443およびUhlmann; Curr. Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213(これらの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0145】
本明細書で用いている「アンチセンス」という用語は、遺伝子産物または制御配列をコードしている特定のDNAまたはRNA配列に対して相補的なヌクレオチド配列を意味する。「アンチセンス鎖」という用語は、「センス」鎖に相補的である核酸鎖に関して使用する。細胞代謝の正常な作用において、DNA分子のセンス鎖は、ポリペプチドおよび/または他の遺伝子産物をコードしている鎖である。センス鎖は、メッセンジャーRAN(「mRNA」)転写体(アンチセンス鎖)の合成用鋳型であり、続いて、コードされている任意の遺伝子産物の合成を指図する。アンチセンス核酸分子は、当該分野で公知の任意の方法によって、例えば、相補鎖の合成を行わせるウイルスプロモーターに対して目的の遺伝子を逆方向に結合することによる合成法などにより産生することができる。一旦細胞内に導入されると、この転写鎖は、細胞によって産生された天然の配列と組み合わさり、二本鎖を形成する。次いで、これらの二本鎖はmRANのさらなる転写または翻訳を阻止する。「負」または(−)という記号がアンチセンス鎖を意味することは当該分野においては公知であり、また、「正」または(+)という記号がセンス鎖を意味することも当該分野において公知である。
【0146】
本発明の目的においては、「相補的」とは、核酸配列が別の核酸配列と水素結合を形成することを意味すると理解されたい。相補性パーセントとは、水素結合、すなわち、ワトソン−クリック塩基対を別の核酸配列と形成することができる、核酸分子中の連続残基の割合を示し、すなわち、10個中5、6、7、8、9、10個は50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補である。「完全に相補的な」とは、核酸配列の連続する全ての残基が、別の核酸配列の同数の連続する残基と水素結合を形成することを意味する。
【0147】
本明細書に記載のナノ粒子に有用な核酸(例えば、1種または複数の同一のまたは異なるオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体)としては、約5〜約1000の核酸、好ましくは相対的に短いポリヌクレオチド、例えば、好ましくは約8〜約50のヌクレオチド長のサイズ範囲のもの(例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)を挙げることができる。
【0148】
本明細書に記載のナノ粒子内に封入されている有用な核酸の一態様では、天然のホスホロジエステル骨格もしくはホスホロチオエート骨格または別の修飾骨格類似体を含むオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチドとして、次のものが挙げられる:
LNA(ロック核酸);
PNA(ペプチド骨格を有する核酸);
短鎖干渉RNA(siRNA);
マイクロRNA(miRNA);
ペプチド骨格を有する核酸(PNA);
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO);
トリシクロ−DNA;
デコイODN(2本鎖オリゴヌクレオチド);
触媒RNA配列(RNAi);
リボザイム;
アプタマー;
シュピーゲルマー(spiegelmer)(L-配座オリゴヌクレオチド);
CpGオリゴマーなど、例えば、下記で開示されているもの:
Tides 2002, Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences, May 6-8, 2002, Las Vegas, NV and Oligonucleotide & Peptide Technologies, 18th & 19th November 2003, Hamburg, Germany (その内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする)。
【0149】
ナノ粒子内に封入されている核酸の別の態様においては、オリゴヌクレオチドは、場合により、下記の表2に列記されているものをはじめとする、公知の任意の好適なヌクレオチド類似体および誘導体を含むことができる。
【表2】
【0150】
好ましい一態様においては、ナノ粒子中に封入されている標的オリゴヌクレオチドとしては、発癌遺伝子、プロ血管形成経路遺伝子、プロ細胞増殖経路遺伝子、ウイルス性伝染因子遺伝子およびプロ炎症性経路遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子内に封入されているオリゴヌクレオチドは、腫瘍細胞の標的化に、あるいは、腫瘍細胞に関連する遺伝子またはタンパク質および/または抗がん剤に対する腫瘍細胞の耐性のダウンレギュレーションに関与する。例えば、本発明には、癌に関連する当該分野で公知の任意の細胞性タンパク質(例えばBCL-2)をダウンレギュレートするためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することができる。2004年4月9日出願の米国特許出願第10/822,205号(その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。好ましい治療用オリゴヌクレオチドのリスト(これらに限定されるものではない)としては、アンチセンスHIF1-αオリゴヌクレオチド、アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチド、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド、アンチセンスβ-カテニンオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスBcl-2オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0152】
さらに好ましくは、本明細書に記載の本発明によるオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格およびLNAを含む。
【0153】
好ましい一実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンスサバイビンLNA、アンチセンスErbB3 LNA、またはアンチセンスHIF1-α LNAであってもよい。
【0154】
別の好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、例えば、ジェナセンス(別名オブリメルセンナトリウム、Genta Inc.製(Berkeley Heights, NJ))と同一または実質的に同様のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。ジェナセンスは18量体のホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド、TCTCCCAGCGTGCGCCAT(配列番号4)であり、ヒトbcl-2 mRNAの開始配列の最初の6個のコドンと相補的である(ヒトbcl-2 mRNAは当該分野で公知であり、例えば、米国特許第6,414,134号(これは参照により本明細書に組み入れるものとする)の配列番号19として記載されている)。米国食品医薬品局(FDA)は2000年8月にジェナセンスをオーファンドラッグに指定している。
【0155】
考えられる好ましい実施形態としては、次のものが挙げられる:
(i)アンチセンスサバイビンLNA、Oligo-1(配列番号1)
5'-mCTmCAatccatggmCAGc-3'
ここで、大文字はLNAを表し、mCはメチル化シトシンを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;
(ii)アンチセンスErbB3 LNA、Oligo-2(配列番号2)
5'-TAGcctgtcacttmCTmC-3'
ここで、大文字はLNAを表し、mCはメチル化シトシンを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;
(iii)ジェナセンス、Oligo-4(配列番号4)
5'-tctcccagcgtgcgcccat-3'
ここで、小文字はDNAを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;
(v)アンチセンスHIF-1α LNA、Oligo-5(配列番号5)
5'-TGGcaagcatccTGTa-3'
ここで、大文字はLNAを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;および、
(vi)アンチセンスBcl2 siRNA:
センス 5'-gcaugcggccucuguuugadTdT-3' (配列番号6)
アンチセンス 3'-dTdTcguacgccggagacaaacu-5' (配列番号7)
ここで、dTはDNAを表す。
【0156】
LNAは、下に示すような2'-O、4'-C メチレンビシクロヌクレオチド:
【化18】
【0157】
を含む。
【0158】
スクランブルアンチセンスErbB3 LNA、Oligo-3(配列番号3)は、次の配列を有する:
5'-TAGcttgtcccattmCTmC-3'
ここで、大文字はLNAを表し、mCはメチル化シトシンを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである。
【0159】
サバイビンLNAに関する詳細な記述は、名称が「LNA Oligonucleotides and the Treatment of Cancer」の米国特許出願公開第2006/0154888号、および名称が「Oligomeric Compounds for the Modulation Survivin Expression」の米国特許出願公開第2005/0014712号に開示されている(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)ので参照されたい。さらに、名称が「Oligomeric Compounds for the Modulation HIF-1 Alpha Expression」の米国特許出願公開第2004/0096848号、名称が「Potent LNA Oligonucleotides for Inhibition of HIF-1A Expression」の同2006/0252721号(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)も参照されたい。また、それらの内容はその全体を参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0160】
好適な標的遺伝子の例は、PCT公開公報第WO 03/74654号、PCT/US03/05028、および米国特許出願第2007/0042983号(それらの内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0161】
F. 標的基
場合により/好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、さらに、特定細胞または組織タイプに対する標的リガンドを含む。標的基は、リンカー分子、例えば、アミド、アミド、カルボニル、エステル、ペプチド、ジスルフィド、シラン、ヌクレオシド、脱塩基ヌクレオシド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、リン酸エステル、ホスホロアミデート、チオホスフェート、リン酸アルキル、マレイミジルリンカーまたは感光性リンカーを用いて、ナノ粒子組成物の任意の成分(好ましくは、融合性脂質およびPEG脂質)に結合することができる。不必要な実験を実施することなく、ナノ粒子組成物の任意の成分へ標的基をコンジュゲートさせるためには、当該技術分野で公知の任意の技術を使用することができる。
【0162】
例えば、標的剤をPEG脂質のポリマー部分に結合させ、in vivoで標的領域へナノ粒子を導くことができる。本明細書に記載のナノ粒子の標的送達は、治療用核酸を封入しているナノ粒子の細胞内取り込みを促進し、治療効果をより良好なものにする。特定の態様では、一部の細胞透過ペプチドは、腫瘍部位への標的化送達のために、様々な標的ペプチドと置換することができる。
【0163】
本発明の好ましい一態様においては、標的部分、例えば、1本鎖抗体(SCA)または1本鎖抗原結合抗体、モノクローナル抗体、RGDペプチドおよびセレクチンなどの細胞接着ペプチド、TAT、ペネトラチンおよび(Arg)9などの細胞透過ペプチド(CPP類)、受容体リガンド、標的炭水化物分子またはレクチンなどは、ナノ粒子を標的化領域へ特異的に方向付けすることができる。J Pharm Sci. 2006 Sep; 95(9):1856-72 Cell adhesion molecules for targeted drug delivery (その内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0164】
好ましい標的部分は、1本鎖抗体(SCA)または抗体の1本鎖可変断片(sFv)である。SCAは、標的腫瘍細胞の特異的分子に結合またはそれを認識できる抗体のドメインを含有する。抗原結合部位を維持すること以外に、PEG-脂質にコンジュゲートされているSCAは抗原性を低下させ、血流中のSCAの半減期を長くすることができる。
【0165】
「1本鎖抗体」(SCA)、「1本鎖抗原結合分子または抗体」または「1本鎖Fv」(sFv)という用語は、同じ意味で用いられる。1本鎖抗体は抗原に対する結合親和性を有する。1本鎖抗体(SCA)または1本鎖Fvsは、幾通りかの方法で構築可能であり、これまで構築されてきている。1本鎖抗原結合タンパク質に関する理論および産生の説明は、同一出願人による米国特許出願第10/915,069号および米国特許第6,824,782号(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)で確認される。
【0166】
一般的に、SCAまたはFvドメインは、文献で26-10、MOPC 315、741F8、520C9、McPC 603、D1.3、マウスphOx、ヒトphOx、RFL3.8 sTCR、1A6、Se155-4、18-2-3、4-4-20、7A4-1、B6.2、CC49、3C2、2c、MA-15C5/K12GO、Oxなどのような略語により知られているモノクローナル抗体の中から選択することができる (Huston, J. S.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988); Huston, J. S. ら, SIM News 38(4) (Supp):11 (1988); McCartney, J.ら, ICSU Short Reports 10:114 (1990); McCartney, J. E.ら, unpublished results (1990); Nedelman, M. A. ら, J. Nuclear Med. 32 (Supp. ):1005 (1991); Huston, J. S.ら, In: Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B, J. J. Langone編, Methods in Enzymology 203:46-88 (1991); Huston, J. S.ら, In: Advances in the Applications of Monoclonal Antibodies in Clinical Oncology, Epenetos, A. A. (編), London, Chapman & Hall (1993); Bird, R. E.ら, Science 242:423-426 (1988);Bedzyk, W. D.ら, J. Biol. Chem. 265:18615-18620 (1990); Colcher, D.ら, J. Nat. Cancer Inst. 82:1191-1197 (1990); Gibbs, R. A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4001-4004 (1991); Milenic, D. E.ら, Cancer Research 51:6363-6371 (1991); Pantoliano, M. W.ら, Biochemistry 30:10117-10125 (1991); Chaudhary, V. K.ら, Nature 339:394-397 (1989);Chaudhary, V. K.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1066-1070 (1990); Batra, J. K.ら, Biochem. Biophys. Res. Comm. 171:1-6 (1990); Batra, J. K.ら, J. Biol. Chem. 265:15198-15202 (1990); Chaudhary, V. K.ら, Proc. Natl. Acad Sci. USA 87:9491-9494 (1990); Batra, J. K.ら, Mol. Cell. Biol. 11:2200-2205 (1991);Brinkmann, U.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8616-8620 (1991); Seetharam, S. ら, J. Biol. Chem. 266:17376-17381 (1991); Brinkmann, U.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3075-3079 (1992); Glockshuber, R.ら, Biochemistry 29:1362-1367 (1990); Skerra, A.ら, Bio/Technol. 9:273-278 (1991); Pack, P.ら, Biochemistry 31:1579-1534 (1992); Clackson, T.ら, Nature 352:624-628 (1991);Marks, J. D.ら, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991); Iverson, B. L.ら, Science 249:659-662 (1990); Roberts, V. A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6654-6658 (1990); Condra, J. H.ら, J. Biol. Chem. 265:2292-2295 (1990); Laroche, Y.ら, J. Biol. Chem. 266:16343-16349 (1991); Holvoet, P.ら, J. Biol. Chem. 266:19717-19724 (1991); Anand, N. N.ら, J. Biol. Chem. 266:21874-21879 (1991); Fuchs, P.ら, Biol Technol. 9:1369-1372 (1991); Breitling, F.ら, Gene 104:104-153 (1991); Seehaus, T.ら, Gene 114:235-237 (1992);Takkinen, K.ら, Protein Engng. 4:837-841 (1991); Dreher, M. L.ら, J. Immunol. Methods 139:197-205 (1991); Mottez, E.ら, Eur. J. Immunol. 21:467-471 (1991); Traunecker, A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8646-8650 (1991); Traunecker, A.ら, EMBO J. 10:3655-3659 (1991); Hoo, W. F. S.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4759-4763 (1993)を参照されたい)。前述の各刊行物は、参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0167】
標的基の例(これらに限定されるものではない)としては、血管内皮細胞増殖因子、FGF2、ソマトスタチンおよびソマトスタチン類似体、トランスフェリン、メラノトロピン、ApoEおよびApoEペプチド、フォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand's Factor)およびフォン・ヴィルブランド因子ペプチド、アデノウイルス線維タンパク質およびアデノウイルス線維タンパク質ペプチド、PD1およびPD1ペプチド、EGFおよびEGFペプチド、RGDペプチド、葉酸塩などが挙げられる。当業者により認められている他の任意の標的剤も、本明細書に記載のナノ粒子に用いることができる。
【0168】
好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子に有用である標的剤としては、1本鎖抗体(SCA)、RGDペプチド、セレクチン、TAT、ペネトラチン、(Arg)9、葉酸などが挙げられ、これらの薬剤の好ましい構造物の一部は次のとおりである:
C-TAT:(配列番号8) CYGRKKRRQRRR;
C-(Arg)9:(配列番号9) CRRRRRRRRR;
RGDは、直鎖状または環状の:
【化19】
【0169】
であり;
葉酸は、
【化20】
【0170】
の残基であり;
Arg9は、CRRRRRRRRRなどのコンジューゲートのためのシステインを含み、TATは、CYGRKKRRQRRRC(配列番号10)などのペプチド末端に追加システインを加えることができる。
【0171】
本発明の目的においては、明細書および図面中で使用している略語は以下の構造を表す:
(i) C-diTAT (配列番号11) = CYGRKKRRQRRRYGRKKRRQRRR-NH2;
(ii) Linear RGD (配列番号12) = RGDC;
(iii) Cyclic RGD (配列番号13) = c-RGDFC;
(iv) RGD-TAT (配列番号14) = CYGRKKRRQRRRGGGRGDS-NH2 ;および、
(v) Arg9 (配列番号15)。
【0172】
あるいは、標的基は、糖類および炭水化物群、例えば、ガラクトース、ガラクトサミンおよびN‐アセチルガラクトサミン;ホルモン群、例えば、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、グルココルチゾン、アドレナリン、インシュリン、グルカゴン、コルチゾール、ビタミンD、甲状腺ホルモン、レチノイン酸および成長ホルモン;増殖因子、例えば、VEGF、EGF、NGFおよびPDGF;神経伝達物質、例えば、GABA、グルタメート、アセチルコリン;NOGO;イノスチトールトリホスフェート;エピネフリン;ノルエピネフリン;一酸化窒素、ペプチド、ビタミン群、例えば、葉酸およびピリドキシン、in vivoまたはin vitroでの受容体と相互作用することができる薬剤、抗体および他の分子が挙げられる。
【0173】
G. 式(I)で表されるカチオン性脂質の調製
一般に、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質の調製方法は、アミン含有コレステロール(官能化コレステロール)を1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させ、グアニジニウム部分を得ることを含む。コレステロールに結合されているアミンは第一級および/または第二級アミンであってもよく、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン中のアミンは、非置換であっても置換されていてもよい。
【0174】
本明細書に記載のコレステリルカチオン性脂質の調製の一例を図1に示す。N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミンの末端第一級アミンはBoc基で選択的に保護し、その後、ビス-N-Boc-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン(化合物2)の第二級アミンをエポキシドと反応させて、求核剤、OHを含有する化合物2を調製した。活性化コレステロールカーボネート(例えば、コレステリルクロロホルメート、コレステリルNHSカーボネート、またはコレステリルPNPカーボネート)は、求核性OHと反応させ、化合物3を得ることができる。酸性条件でBoc部分を脱保護することにより、アミン含有コレステロール(化合物4)を調製した。化合物4のアミンを1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させ、グアニジニウム部分を含有するコレステリルカチオン性脂質(化合物5)を得た。
【0175】
別の実施形態においては、アミン含有化合物のコレステロールへの結合は、塩基の存在下で、標準の有機合成技術を用いて、当業者に公知のカップリング剤、例えば、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、ジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハライド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロホスフェートを使用して行なうことができる。
【0176】
あるいは、コレステロールまたはアミン含有化合物が脱離基(例えば、NHS、PNPまたはクロロホルメート)で活性化される場合、その反応はカップリング剤を用いずに塩基条件下で行なうことができる。
【0177】
一般に、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質は、好ましくは、DMAPまたはDIEAなどの塩基の存在下で、活性化コレステロールをアミン含有求核試薬(例えば、化合物2)と反応させることにより調製される。好ましくは、この反応は不活性溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、DMFまたはそれらの混合物中で実施する。またこの反応は、約-4℃〜約70℃(例えば、-4℃〜約50℃)の温度で、DMAP、DIEA、ピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で行うのが好ましい。好ましい一実施形態においては、この反応は、約0℃〜約25℃の温度、または0℃〜室温の温度で行う。
【0178】
アミン含有化合物(例えば化合物3)からの保護基の除去は、強酸(例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、HCl、硫酸など)を用いて行なうことができるか、あるいは触媒水素化、ラジカル反応などにより行うことができる。一実施形態においては、Boc基の脱保護は、ジオキサン中のHCl溶液を用いて行う。この脱保護反応は、約-4℃〜約50℃の温度で行なうことができる。好ましくは、この反応は、約0℃〜約25℃または室温の温度で行なわれる。別の実施形態においては、Boc基の脱保護は室温で行う。
【0179】
アミンのグアニジン基への変換は、不活性溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、DMFまたはそれらの混合物中で、コレステロールに結合されているアミン(例えば、化合物4のアミン)を1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させることにより行う。他の試薬、例えば、N-BOC-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンまたはN,N'-ジ-(tert-ブトキシカルボニル)チオ尿素およびカップリング剤も、アミンのグアニジン部分への変換に使用することができる。この反応では、当業者に公知のカップリング剤、例えば、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、ジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハライド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスフィン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロホスフェートを使用することができる。この反応は、約-4℃〜約50℃の温度で、DMAP、DIEA、ピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で行なうのが好ましい。好ましい一実施形態においては、この反応は、約0℃〜約25℃または室温の温度で行なう。
【0180】
H. ナノ粒子組成物/製剤
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、式(I)で表されるカチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質を含有する。
【0181】
好ましい一態様においては、ナノ粒子組成物はコレステロールを含む。
【0182】
本発明のさらなる態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、さらなる公知のカチオン性脂質を含有していてもよい。また、異なる融合性脂質(非カチオン性脂質)の混合物および/または異なるPEG脂質の混合物を含有するナノ粒子組成物も考えられる。
【0183】
別の態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質(医薬担体)の約10%〜約99.9%の範囲のモル比で、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質を含有する。
【0184】
カチオン性脂質成分は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約2%〜約60%、約5%〜約50%、約10%〜約45%、約15%〜約25%、または約30%〜約40%の範囲であってもよい。
【0185】
特定の一実施形態においては、カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約15〜約25%(すなわち15、16、17、18、19、20、21、22、23,24または25%)の量で存在する。
【0186】
本明細書に記載のナノ粒子組成物の別の態様においては、本組成物は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約20%〜約85%、約25%〜約85%、約60%〜約80%(例えば65、75、78または80%)のモル比で、融合性/非カチオン性脂質(コレステロールおよび/または非コレステロール系の融合性脂質を含む)を含有する。特定の一実施形態においては、全融合性/非カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約80%である。
【0187】
また別の態様においては、非コレステロール系融合性/非カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約25〜約78%(25、35、47、60または78%)、あるいは約60〜約78%のモル比で存在する。特定の一実施形態においては、非コレステロール系融合性/非カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約60%である。
【0188】
また別の態様においては、ナノ粒子組成物は、非コレステロールの融合性脂質に加えて、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約0%〜約60%、約10%〜約60%、または約20%〜約50%(例えば、20、30、40または50%)のモル比で、コレステロールを含む。特定の一実施形態においては、コレステロールは、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約20%である。
【0189】
さらに本発明の別の態様においては、ナノ粒子組成物中に含有されているPEG脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約0.5%〜約20%、約1.5%〜約18%のモル比の範囲である。ナノ粒子組成物の一実施形態においては、PEG脂質は、全脂質の約2%〜約10%(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10%)のモル比で含まれる。例えば、全PEG脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約2%である。
【0190】
I. ナノ粒子の調製
本明細書に記載のナノ粒子は、不要な実験を行うことなく、任意の公知の方法により調製することができる。例えば、ナノ粒子は、第1の容器に水溶液中の核酸(例えばオリゴヌクレオチド)(または比較研究に関しては核酸を含まない水溶液)を供給し、第2の容器に本明細書に記載のナノ粒子組成物を含有する有機脂質溶液を供給し、前記有機脂質溶液が前記水溶液と混ざるように水溶液を有機脂質溶液と混合し、核酸が封入されているナノ粒子を得ることにより調製することができる。この方法の詳細は、米国特許出願公開第2004/0142025号(その内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0191】
あるいは、本明細書に記載のナノ粒子は、例えば、界面活性剤透析法(detergent dialysis method)または改良逆相法(modified reverse-phase method)(これは有機溶媒を利用し、成分を混合する間に単一相を得るもの)をはじめとする、当技術分野で公知の方法を用いることにより調製することができる。界面活性剤透析法においては、核酸(すなわち、LNA、siRNAなど)をカチオン性脂質の界面活性剤溶液と接触させ、コーティングを施した核酸錯体を形成させる。
【0192】
本発明の一実施形態においては、カチオン性脂質および核酸(例えばオリゴヌクレオチド)を、約1:1〜約20:1、約1:1〜約12:1の電荷比、さらに好ましくは約2:1〜約6:1の比を得るように組み合わせる。あるいは、ナノ粒子組成物の窒素とリン酸塩の比(N/P)は、約2:1〜約5:1(すなわち、2.5:1)の範囲である。
【0193】
別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子は、複式ポンプシステムを使用することにより調製することができる。一般に、この方法は、第1の容器に核酸を含有する水溶液を、また、第2の容器にナノ粒子組成物を含有する脂質溶液を供給することを含む。これらの2種類の溶液は複式ポンプシステムを使用して混合し、ナノ粒子を得る。次に、得られた混合溶液を水性バッファーで希釈し、形成されたナノ粒子を透析により精製および/または単離することができる。ナノ粒子は、さらに、0.22μmのフィルターによる濾過で殺菌処理することができる。
【0194】
核酸を含有するナノ粒子は、直径が約5〜約300nmの範囲である。好ましくは、ナノ粒子は、動的光散乱技術(DLS)を用いて測定した場合に、約150nm未満の平均直径(例えば、約50〜150nm)、さらに好ましくは約100nm未満の直径を有する。大部分のナノ粒子は、約30〜100nm(例えば、59.5、66、68、76、80、93、96nm)、好ましくは約60〜約95nmの平均直径を有する。TEMなどの当該分野で公知の他の技術を使用する測定では、DLS技術と比較した場合、半分まで減少した平均直径値が得られることがあることは、当業者には十分に理解されるであろう。本発明のナノ粒子は、多分散性により示されるように、大きさが実質的に均一である。
【0195】
場合により、ナノ粒子は当技術分野で公知の任意の方法により大きさを合わせることができる。サイズは、当業者が所望する通りに調節することができる。サイズ決定は、ナノ粒子サイズの所望のサイズ範囲と比較的狭い分布が得られるように行なうことができる。ナノ粒子を所望の大きさにサイズ決定するには、幾通りかの技術を利用することが可能である。例えば、米国特許第4,737,323号(これらの内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0196】
本発明は、核酸(例えば、LNAまたはsiRNA)が脂質多重ラメラ構造(すなわち脂質二分子膜)で封入されており、分解から保護されるような、血清安定性のあるナノ粒子の調製方法を提供する。本明細書に記載のナノ粒子は、水溶液中で安定している。ナノ粒子に含まれている核酸は、体液中に存在するヌクレアーゼから保護される。
【0197】
さらに、本発明により調製されるナノ粒子は、好ましくは、生理学的pHで中性または正に帯電している。
【0198】
本明細書に記載のナノ粒子組成物を使用して調製されるナノ粒子またはナノ粒子錯体は、次のものを含む:(i)式(I)で表されるカチオン性脂質;(ii)中性脂質/融合性脂質;(iii)PEG脂質、および、(iv)オリゴヌクレオチドなどの核酸。
【0199】
一実施形態においては、本ナノ粒子組成物は、
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール;または、
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール
の混合物を含む。
【0200】
さらなるナノ粒子組成物は、当該分野で公知のカチオン性脂質を含有する組成物を変化させることにより調製することができる。当該分野で公知のカチオン性脂質を含有するナノ粒子組成物は、当該分野で公知のカチオン性脂質を式(I)で表されるカチオン性脂質と置き換え、かつ/または式(I)で表されるカチオン性脂質を加えることにより変化させることができる。米国特許出願公開第2008/0020058号(それらの内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)の表IVに記載されている当該分野で公知の組成物を参照されたい。
【0201】
ナノ粒子を調製するためのナノ粒子組成物のリスト(これらに限定されるものではない)を表3に示す。
【表3】
【0202】
一実施形態においては、ナノ粒子中のカチオン性脂質(化合物5):DOPE:コレステロール:PEG-DSPE:C16mPEG-セラミドのモル比は、それぞれ、ナノ粒子組成物(試料番号8)中に存在する全脂質に対して、約18%:60%:20%:1%:1%のモル比である。
【0203】
別の実施形態においては、ナノ粒子は、カチオン性脂質(化合物5)、DOPE、コレステロールおよびC16mPEG-セラミドを、それぞれ、ナノ粒子組成物(試料番号7)中に存在する全脂質に対して、約17%:60%:20%:3%のモル比で含有する。
【0204】
これらのナノ粒子組成物は、好ましくは、次の構造:
【化21】
【0205】
を有するカチオン性脂質を含有する。
【0206】
本明細書に使用しているモル比は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質に対する量を意味する。
【0207】
J. 治療方法
本明細書に記載のナノ粒子は、細胞または組織における標的遺伝子発現のレベルに関与または応答する、あらゆる特徴、疾患または症状を単独か、他の治療と組み合わせて、予防、抑制、低減または治療するための治療で用いることができる。本方法は、その必要のある哺乳動物に本明細書に記載のナノ粒子を投与することを含む。
【0208】
本発明の一態様は、in vivoおよび/またはin vitroで哺乳動物細胞にオリゴヌクレオチドなどの治療用核酸を導入または送達する方法を提供する。本発明による方法は、細胞を本明細書に記載のナノ粒子と接触させることを含む。本送達は、in vivoで適切な医薬組成物の一部として、あるいは直接的に細胞へex vivo環境で行うことができる。
【0209】
別の態様においては、本発明は哺乳動物にオリゴヌクレオチドを導入するのに有用である。本明細書に記載のナノ粒子は、哺乳動物(好ましくはヒト)に投与することができる。
【0210】
さらに別の態様では、本発明は、好ましくは、哺乳動物の細胞または組織における遺伝子発現を阻害またはダウンレギュレート(またはモジュレート)する方法を提供する。遺伝子発現のダウンレギュレーションまたは阻害は、in vivo、ex vivoおよび/またはin vitroで達成することができる。本方法は、ヒトの細胞または組織を本明細書に記載の核酸を封入しているナノ粒子と接触させること、またはその必要性のある哺乳動物にナノ粒子を投与することを含む。接触が生じる際、mRNAまたはタンパク質レベルでの遺伝子発現の阻害またはダウンレギュレーションの成功は、in vivo、ex vivoまたはin vitroにおいて、本明細書に記載のナノ粒子が存在しない条件で認められるものと比較して、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%以上(例えば、少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%)実現される場合に起こるとみなされる。
【0211】
本発明の目的においては、「阻害」または「ダウンレギュレート」は、1種または複数のタンパク質サブユニットをコードしている標的遺伝子の発現、すなわちRNAもしくは等価RNAのレベル、またはErbB3、HIF-1a、サバイビンおよびBCL2などの1種または複数のタンパク質サブユニットの活性が、本明細書に記載のナノ粒子の非存在下で観察される場合よりも低減されることを意味すると理解されたい。
【0212】
好ましい一実施形態においては、標的遺伝子は、例えば、発癌遺伝子、プロ血管形成経路遺伝子、プロ細胞増殖経路遺伝子、ウイルス性伝染因子遺伝子およびプロ炎症性経路遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0213】
好ましくは、標的遺伝子の遺伝子発現は、癌細胞または組織、例えば、脳腫瘍、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、口腔癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌または子宮頚癌の細胞で阻害される。癌細胞または組織は、下記の1種または複数であり得る:固形腫瘍、リンパ腫、肺小細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、膵癌、膠芽腫、卵巣癌、胃癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、卵巣癌、脳腫瘍、KB癌、肺癌、結腸癌、表皮癌など。
【0214】
特定の一実施形態においては、本明細書に記載の方法によるナノ粒子は、例えば、アンチセンスbcl-2オリゴヌクレオチド、アンチセンスHIF-1αオリゴヌクレオチド、アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを含む。
【0215】
本発明で考えられる治療法は、前述のナノ粒子中に封入された核酸を使用する。一実施形態では、8つ以上の連続するアンチセンスヌクレオチドを含有する治療用ヌクレオチドを治療で用いることができる。
【0216】
特定の一治療法においては、オリゴヌクレオチド(配列番号1、配列番号2、配列番号4および配列番号5)を含むナノ粒子を使用することができる。
【0217】
あるいは、哺乳動物を治療する方法も提供する。本方法は、それが必要な患者に、本明細書に記載のナノ粒子を含有する医薬組成物の有効量を投与することを含む。本方法の効果は、治療する症状に対する核酸の効果によって決まる。本発明は、哺乳動物の各種の病状の治療方法を提供する。本方法は、こうした治療が必要な哺乳動物に、封入された治療用核酸を含有するナノ粒子の有効量を投与することを含む。本明細書に記載のナノ粒子は、とりわけ、例えば、癌、炎症性疾患および自己免疫疾患など(ただし、これらに限定されるものではない)の疾患の治療に有用である。
【0218】
一実施形態においては、さらに、悪性腫瘍または癌に罹患している患者の治療方法であって、その必要性のある患者に本明細書に記載のナノ粒子を含有する医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法も提供する。治療する癌は、下記の1種または複数であり得る:固形腫瘍、リンパ腫、肺小細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、膵癌、膠芽腫、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、脳腫瘍、KB癌、肺癌、結腸癌、表皮癌など。
【0219】
ナノ粒子は、標的遺伝子の遺伝子発現をダウンレギュレートすることにより、哺乳動物における腫瘍疾患の治療、全身腫瘍組織量の低減、新生物転移の防止、および腫瘍再発/新生物増殖の防止に有用である。例えば、ナノ粒子は転移性疾患(すなわち、肝臓への転移を伴う癌)の治療に有用である。
【0220】
さらに別の態様では、本発明は、in vivoまたはin vitroにおける癌細胞の成長または増殖を阻害する方法を提供する。本方法は、本明細書に記載のナノ粒子と癌細胞とを接触させることを含む。一実施形態においては、本発明は、細胞がErbB3遺伝子を発現する、in vivoまたはin vitroにおける癌の成長を阻害する方法を提供する。癌細胞は、本明細書に記載のなナノ粒子から放出されるアンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドと接触する。ヒトErbB3遺伝子から発現されるmRNAに相補的なアンチセンス鎖は癌細胞の増殖を阻害し、リンパ腫細胞または白血病細胞などの癌細胞におけるErbB3遺伝子の発現を低減する。あるいは、本発明は、癌細胞のアポトーシスをモジュレートする方法を提供する。本方法は、細胞を本明細書に記載のナノ粒子と接触させることを含む。
【0221】
さらに別の態様においては、本方法は、in vivoまたはin vitroにおいて、化学療法剤に対する癌細胞または組織の感受性を増強する方法も提供する。特定の一態様においては、本方法は、本明細書に記載のナノ粒子中に封入されているオリゴヌクレオチド(例えば、LNAを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド)を癌細胞に導入し、癌細胞または組織中の遺伝子(例えば、サバイビン、HIF-1またはErbB3)の発現の低減することを含み、この場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドはmRNAと結合し、遺伝子発現を低減する。
【0222】
さらに別の態様においてはは、in vivoまたはin vitroにおける腫瘍細胞の死滅方法を提供する。本方法は、腫瘍細胞へ本明細書に記載のナノ粒子を導入し、ErbB3遺伝子などの遺伝子発現を低減させることと、腫瘍細胞の一部を死滅させるのに十分な量の少なくとも1種の化学療法剤を腫瘍細胞と接触させることを含む。したがって、この死滅される腫瘍細胞の部分は、本明細書に記載のナノ粒子の非存在下で同量の化学療法剤により死滅される部分と比べて大きくなり得る。
【0223】
本発明のさらなる態様においては、化学療法剤は、本明細書に記載のナノ粒子を用いる方法で、併用して、同時にまたは連続して使用することができる。本明細書に記載のナノ粒子は、化学療法剤よりも前に、または化学療法剤と同時に、または化学療法剤の投与後に投与することができる。
【0224】
あるいは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、哺乳動物に、好ましくは負電荷または中性電荷を有する製薬上活性のある化合物を送達するために使用することができる。製薬上活性化合物を封入されたナノ粒子は、それの必要のある哺乳動物に投与することができる。製薬上活性のある化合物は、分子量の小さい分子を含む。一般的に、製薬上活性のある化合物は、約1,500ダルトン未満(すなわち1,000ダルトン未満)の分子量を有する。
【0225】
さらなる実施形態においては、本明細書に記載の化合物は、核酸、製薬上活性のある薬剤、またはそれらの組み合わせを送達するために使用することができる。
【0226】
またさらなる実施形態においては、治療に関係するナノ粒子は、1種または複数の治療用核酸(同一のまたは異なるもの、例えば、LNAを含有する同一のまたは異なるオリゴヌクレオチド)と製薬上活性のある活性剤との混合物を相乗効果のある施用を目的として含有していてもよい。
【0227】
K. ナノ粒子の医薬組成物/製剤
本明細書に記載のナノ粒子を含む医薬組成物/製剤は、活性化合物を製薬上使用可能な製剤にすることを容易にする添加剤および補助剤を含む1種または複数の生理学上許容可能な担体と共に製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路により、すなわち、局所療法または全身療法が治療されるかどうかにより決定される。
【0228】
好適な剤形は、一つには、使用または投与経路、例えば経口経路、経皮経路または注射経路により決まる。適切な製剤の調製において当技術分野で公知の検討要因としては、毒性、および本組成物または製剤がその効果を及ぼすのを妨げると思われるあらゆる障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0229】
本明細書に記載のナノ粒子の医薬組成物の投与は、経口投与、経肺投与、局所投与(例えば、表皮投与、経皮投与、眼内投与、ならびに膣内投与および直腸内投与を含む粘膜投与)、または非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、腹腔内投与または筋肉注射または静注であってもよい。
【0230】
好ましい一実施形態においては、治療用オリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子は、静脈内投与(i.v.)または腹腔内投与(i.p.)投与されるか、ボーラス注入される。本発明の多くの態様においては、非経口経路が好ましい。
【0231】
例えば、静脈内注射、筋肉内注射および皮下注射など(これらに限定されるものではない)の注射に関しては、本発明のナノ粒子は、水溶液中で、好ましくは生理食塩水緩衝液などの生理学上適合するバッファー中で、あるいは極性溶媒、例えばピロリドンまたはジメチルスルホキシド(これらに限定されるものではない)中で製剤化することができる。
【0232】
また、ナノ粒子はボーラス注入または持続注入用に製剤化することもできる。注射用の製剤は、単位剤形中で(例えば、アンプルまたは多回投与容器中で)提供することができる。有用な組成物は、これらに限定ものではないが、懸濁液、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションが挙げられ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの添加物を含有していてもよい。非経口投与用医薬組成物は、水溶性形態の水溶液を含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘性を調節する物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有していてもよい。場合によっては、懸濁液は、好適な安定剤および/または溶液中のナノ粒子の濃度を高める薬剤を含有していてもよい。あるいは、ナノ粒子は、好適なビヒクル(例えば、発熱性物質を含まない滅菌済みの水)との使用前の構成を目的とした粉末形態であってもよい。
【0233】
経口投与に関しては、本明細書に記載のナノ粒子は、当技術分野で公知の製薬上許容可能な担体とナノ粒子を組み合わせることにより製剤化することができる。かかる担体は、本発明のナノ粒子を、錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ジェル、シロップ、ペースト、スラリー、溶液、懸濁液、濃縮溶液、および患者の飲料水で希釈するための懸濁液、患者の食事での希釈するためのプレミックスなどとして、患者による経口摂取用に製剤することができるものである。経口用の医薬品は、固体添加物を用いて、得られた混合物を随意的に粉砕し、他の適切な助剤を必要に応じて加えた後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣剤の核を得ることにより調製することができる。有用な添加物は、特に、増量剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールをはじめとする糖類、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプンおよびジャガイモデンプン、および他の材料、例えばゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、カルボキシ−メチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸などの崩壊剤を添加することができる。また、アルギン酸ナトリウムなどの塩も使用することができる。
【0234】
吸入による投与に関しては、本発明のナノ粒子は、加圧容器またはネブライザーおよび適切な噴射剤を用いてエアロゾルスプレーの形態で送達するのが便利である。
【0235】
またナノ粒子は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの慣用の坐剤基剤を用いて、坐剤または停留浣腸剤などの直腸用組成物として製剤化することもできる。
【0236】
これまでに記載した製剤の他に、ナノ粒子はデポ製剤としても製剤化してもよい。かかる長期作用型製剤は、埋め込みによって(例えば、皮下埋め込みまたは筋肉内埋め込み)または筋肉内注射によって投与することができる。本発明のナノ粒子は、この投与経路に関して、適切なポリマーまたは疎水性材料を用いて(例えば、医薬品として許容可能な油との乳液で)、イオン交換樹脂を用いて、または、難溶性誘導体(例えば難溶性塩など、ただし、これに限定されるものではない)として製剤化することができる。
【0237】
さらに、ナノ粒子は徐放系、例えば、ナノ粒子を含有する固体疎水性ポリマーの半浸透性マトリックスなどを用いて送達することができる。様々な徐放系材料が承認されており、当業者には公知である。
【0238】
加えて、酸化防止剤および懸濁化剤も本明細書に記載のナノ粒子の医薬組成物中で使用することができる。
【0239】
L. 投与量
治療上有効な量の決定は、特に本明細書の開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0240】
本発明の方法に用いられる任意の治療用核酸に関しては、その治療上有効な量は、まずin vitroアッセイから推定することができる。次いで、有効用量を含む循環濃度範囲が得られるように、用量を動物モデルに使用するために製剤化することができる。次に、かかる情報を利用して、患者に有用な用量をより正確に決定することができる。
【0241】
投与される医薬組成物の量は、その中に含まれる核酸の有効性により決まる。一般に、治療で用いられる核酸含有ナノ粒子の量は、哺乳動物で所望の治療結果を有効に得られる量である。もちろん、各種ナノ粒子の用量は、その中に封入されている核酸(または製薬上活性のある製剤)(アンチセンスLNA分子などのオリゴヌクレオチド)に応じて多少変化する。さらに、言うまでもなく、用量は剤形および投与経路に応じて変わる場合がある。しかし一般的には、本明細書に記載のナノ粒子中に封入されている核酸は、約0.1mg/kg/投与〜約1g/kg/投与、好ましくは約1〜約500mg/kg/投与、さらに好ましくは1〜約100mg/kg/投与(すなわち、約2〜約60mg/kg/投与)の範囲の量で投与することができる。治療で投与されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4〜約25mg/kg/投与の量で変動し得る。例えば、治療プロトコルは、約0.1mg/kg/週〜約1g/kg/週、好ましくは約1〜約500mg/kg/週、さらに好ましくは1〜約100mg/kg/週(すなわち、約2〜約60mg/kg/週)の範囲のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む。
【0242】
一実施形態においては、プロトコルは、毎週約4〜約18mg/kg/投与、または毎週約4〜約9.5mg/kg/投与の量でアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む。
【0243】
特定の一実施形態においては、治療プロトコルは、6週サイクルで3週間、毎週約4〜約18mg/kg/投与の量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む(すなわち、約8mg/kg/投与)。別の特定の実施形態は、毎週約4〜約9.5mg/kg/投与を含む(すなわち、約8または4.1mg/kg/投与)。
【0244】
上述の範囲は例示であり、当業者は、臨床経験に基づいた最適な投薬と治療指示を決定するであろう。さらに、それぞれの医師は正確な製剤、投与経路および量を患者の症状を考慮して選択することができる。その上、本明細書に記載の化合物の毒性および治療効力は、当技術分野で公知の方法を使用し、細胞培養または実験動物において標準の医薬品上の手法によって測定することができる。
【0245】
あるいは、核酸の有効性による治療では、約0.1mg〜約140mg/kg/日(0.1〜100mg/kg/日)の量で使用することができる。投与単位剤形は、一般に、約1mg〜約500mgの範囲の活性剤オリゴヌクレオチドである。
【0246】
一実施形態においては、本発明の治療は、本明細書に記載のナノ粒子内に封入されているオリゴヌクレオチドを、約0.1〜約50mg/kg/投与、例えば、約0.5〜約45mg/kg/投与の量で(例えば、単回投与または複数回投与の用法のいずれかで)哺乳動物に投与することを含む。
【0247】
あるいは、本明細書に記載のナノ粒子内に封入されているオリゴヌクレオチドの送達は、約0.1〜約1000nM、好ましくは約10〜約1500nM(すなわち、約30〜約1000nM)の濃度のオリゴヌクレオチドを腫瘍細胞または組織とin vivo、ex vivoまたはin vitroで接触させることを含む。
【0248】
本組成物は、毎日1回投与することもできるし、複数週治療プロトコルの一部として与えることが可能な複数回用量に分割してもよい。正確な用量は、当業者には明らかなように、症状のステージおよび重症度、腫瘍などの疾患の核酸に対する感受性、および治療対象の患者の個別の特徴によって決まる。
【0249】
ナノ粒子が投与される本発明の全ての態様においては、記載した投与量は、投与されるナノ粒子の量ではなく、オリゴヌクレオチド分子の量に基づく。
【0250】
治療は、目的の臨床結果が得られるまで、1日または複数の日数にわたって行われる与えられるものと考える。治療用核酸(または製薬上活性のある薬剤)を封入しているナノ粒子の正確な量、頻度および投与期間は、当然、患者の性別、年齢および医学的症状、並びに主治医によって判定される疾患の重症度に応じて変わる。
【0251】
さらなる態様は、相乗効果または相加効果のために、本明細書に記載の本発明のナノ粒子を他の抗癌療法と組み合わせることを含む。
【実施例】
【0252】
下記の実施例は、本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、決して本発明の有効な範囲を限定しないものとする。
【0253】
実施例において、合成反応はすべて乾燥窒素またはアルゴンの雰囲気下で実施する。N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、BOC-ON、エチレンオキシド、LiOCl4、コレステロールおよび1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン・HClはAldrichから購入した。他の全ての試薬および溶媒は、それ以上精製を行うことなく使用した。LNA含有オリゴヌクレオチド、例えば、Oligo-1標的サバイビン遺伝子、Oligo-2標的ErbB3遺伝子およびOligo-3(スクランブルOligo-2)は社内で調製したが、それらの配列は表4に示す。オリゴヌクレオチド内のヌクレオシド間の結合はホスホロチオエートを含んでおり、mCはメチル化シトシンを表し、大文字はLNAを示す。
【表4】
【0254】
実施例の全体にわたり、以下の略語を使用する:例えば、LNA(ロック核酸オリゴヌクレオチド)、BACC(2-[N,N'-ジ(2-グアニジニウムプロピル)]アミノエチルコレステリル-カーボネート)、2-(Boc-オキシイミノ)-2-フェニルアセテートニトリル(BOC-ON)、Chol(コレステロール)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、DMAP(4-N,N-ジメチルアミノ-ピリジン)、DOPE(L-a-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、Avanti Polar Lipids, USAまたはNOF, Japan)、DLS(動的光散乱)、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)(NOF, Japan)、DSPE-PEG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ポリエチレングリコール)2000アンモニウム塩またはナトリウム塩、Avanti Polar Lipids, USAおよびNOF, Japan)、KD(knowndown)、EPC(卵ホスファチジルコリン、Avanti Polar Lipids, USA)およびC16mPEG-セラミド(N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)2000、Avanti Polar Lipids, USA)。また、FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、FBS(ウシ胎児血清)、GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)、DMEM(ダルベッコ変性イーグル培地)、MEM(変性イーグル培地)、TEAA(テトラエチルアンモニウムアセテート)、TFA(トリフルオロ酢酸)、RT-qPCR(逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応)などの他の略語も使用した。
【0255】
特に別記しない限り、1H NMRスペクトルは300 MHzにて、また13C NMRスペクトルは75.46 MHzにて、Varian Mercury 300 NMR分光計および重水素化クロロホルムを溶媒として用いて得た。化学シフト(δ)はテトラメチルシラン(TMS)から下方領域のppmで記録する。
【0256】
実施例1. ビス[3-(Bocアミノ)プロピル]アミン(化合物1)の調製
N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン(1.45g、11.05mmol)を無水THF 50mLに含む溶液を20分間氷浴中で激しく撹拌した。BOC-ON(5.998g、24.36mmol)を溶解した無水THF 20mLを2時間かけてその溶液にゆっくりと加えた。添加の終了後、氷浴を取り除き、反応混合物をさらに45分間室温で撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフイー(酢酸エチル/メタノール= 4:1〜3:2, v/v)により化合物1を得た:収率57%:1H NMR 5.18, 3.23-3.17, 2.67-2.63, 1.68-1.60, 1.44;13C NMR 155.9, 78.99, 47.51, 39.04, 29.87, 28.51。
【0257】
実施例2. 2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノアルコール(化合物2)の調製
100mLの丸底フラスコに、ビス[3-(Boc-アミノ)プロピル]アミン(化合物1、2g、6mmol)、LiClO4(0.64g、6mmol)およびCH3CN(24mL)を加えた。溶解終了後、フラスコを氷浴に移し、エチレンオキシド2mLを加えた。次いで、フラスコを密閉し、反応混合物を24時間室温で撹拌した。LiClO4を濾過した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、水100mLで希釈した。エチルエーテル(30mL×3)を用いる抽出により粗生成物を得た。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。化合物2を真空で濃縮した後、カラムクロマトグラフイー(酢酸エチル/メタノール=4/1、v/v)により精製した:収率72%:1H NMR 5.05, 3.60-3.56, 3.20-2.14, 2.56-2.46, 1.68-1.60, 1.44;13C NMR 155.99, 79.13, 58.98, 56.00, 51.63, 38.93, 28.48, 27.38。
【0258】
実施例3. 2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物3)の調製
250mLの丸底フラスコに、2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノアルコール(化合物2、3.2g、8.5mmol)、DMAP(3.13g、25.6mmol)および無水塩化メチレン100mLを加えた。溶解終了後、反応混合物を氷浴で0℃まで冷却した。コレステリルクロロホルメート(11.48g、25.6mmol)を加え、反応混合物を氷浴で4時間撹拌し、次いで室温で約20時間撹拌した。その後、溶媒を真空で除去した。残渣を無水エーテル100mL中に溶解させ、濾過した。濾液を真空濃縮し、化合物3をカラムクロマトグラフイー(酢酸エチル)による精製後に、収率72%の白色固体として回収した。
【0259】
実施例4. 2-[ビス(3-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート・2HCl(化合物4)の調製
2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物3、5.0g、6.34mmol)を、100mL丸底フラスコに入れた無水ジオキサン30mL中に溶解させた。その溶液に、ジオキサン中の2M HCl溶液30mLを加え、反応混合物を約1時間室温で撹拌した。反応終了後、反応混合物を真空濃縮し、帯黄色の粉末残渣を得た。残渣をエーテルで3回洗浄し、真空下で乾燥させ、化合物4を収率98%で得た。
【0260】
実施例5. 2-[ビス(3-グアニジニウムプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物5)の調製
2-[ビス(3-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート・2HCl(化合物4、1.0g、1.43mmol)、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(HCl)(0.446g、3.04mmol)およびDIEA(1.00g、7.7mmol)を、250mL丸底フラスコに入れ、無水塩化メチレン100mLをその混合物に加えた。反応混合物を24時間室温で撹拌した。反応終了後、無水エーテル300mLを加え、溶液からの白色固体を沈殿させた。エーテルおよびヘキサンで固体を交互に3回洗浄することにより、化合物5を白色固体として得た。その収率は68%であった。
【0261】
実施例6. ナノ粒子の調製
本実施例では、各種核酸(例えば、LNA含有オリゴヌクレオチド)を封入しているナノ粒子組成物を調製した。例えば、化合物5、DOPE、Chol、DSPE-PEGおよびC16mPEG-セラミドは、90%エタノール10mL中、18:60:20:1:1のモル比で混合した(全脂質30μモル)。LNAオリゴヌクレオチド(0.4μモル)は、20mMのトリス緩衝液(pH 7.4〜7.6)10mL中に溶解させた。37℃まで加熱した後、2種の溶液を二重シリンジポンプを通して一緒に混合し、次に、混合溶液を20mMトリス緩衝液20 mL(300mM NaCl、pH 7.4〜7.6)で希釈した。混合物を30分間37℃でインキュベートし、10mMのPBSバッファー(138mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.4)中で透析した。透析により混合物からエタノールを除去した後、安定した粒子が得られた。ナノ粒子溶液を遠心分離により濃縮した。ナノ粒子溶液を15mL遠心分離濾過機((Amicon Ultra-15, Millipore, USA))へ移した。遠心分離機の速度は3,000 rpmで、温度は遠心分離中4℃であった。濃縮懸濁液を所定時間後に回収し、0.22μmのシリンジフィルター(Millex-GV, Millipore, USA)により濾過を行い殺菌した。均質な懸濁液が得られた。
【0262】
ナノ粒子の直径および多分散性は、Plus 90 Particle Size Analyzer Dynamic Light Scattering Instrument (Brookhaven, New York)を用い、媒体としての水(Sigma)中25℃で測定した。
【0263】
LNAオリゴヌクレオチドの封入効果は、UV-VIS (Agilent 8453)により測定した。バックグラウンドUV-visスペクトルは、PBSバッファー生理食塩水(250μL)、メタノール(625μL)およびクロロホルム(250μL)から構成されている混合溶液を走査することにより得た。封入核酸濃度を測定するため、メタノール(625μL)およびクロロホルム(250μL)をPBSバッファー生理食塩水ナノ粒子懸濁液(250μL)に加えた。混合後、透明な溶液が得られ、この溶液を260nmで吸光度を測定する前に2分間超音波処理した。封入核酸濃度および充填効率は、方程式(1)および(2)により計算した:
Cen (μg / ml) = A260 × OD260 unit (μg / mL) × 希釈係数(μL/μL)----------(1)
ここで、希釈係数は、サンプルストック容量(μL)で割ったアッセイ容量(μL)から得られる。
【0264】
封入効率(%) = [Cen / Cinitial]×100 ------------------------------(2)
ここで、Cenは、精製後にナノ粒子懸濁液に封入された核酸(すなわちLNAオリゴヌクレオチド)濃度であり、Cinitialは、ナノ粒子懸濁液形成前の最初の核酸(LNAオリゴヌクレオチド)濃度である。
【0265】
各種ナノ粒子組成物の粒径、多分散性および核酸(LNAオリゴヌクレオチド)充填効率を表5および6にまとめる。これらのナノ粒子組成物は、100nm未満のナノ粒子サイズで、低多分散性であり、高い核酸充填効率(79〜87%)を達成したことが示されている。
【表5】
【表6】
【0266】
実施例7. ナノ粒子安定性
ナノ粒子安定性は、4℃、PBSバッファー中で経時的に、構造の完全な状態を保持するそれらの能力として定義した。ナノ粒子のコロイド安定性は、平均径の変化を経時的にモニタリングすることによって評価した。表6の試料番号NP1により調製したナノ粒子は、10mM PBSバッファー(138mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.4)中に分散させ、4℃で保管した。所定の時点で、ナノ粒子懸濁液約20〜50μLを取り出し、2mLまで純水で希釈した。ナノ粒子のサイズは、25℃で動的光散乱技術(DLS)を使用することにより測定した。結果からは、120日間にわたり観察した場合、試料番号8のナノ粒子の粒径にほとんど変化はみられなかったことがわかった。結果を図2に示す。脂質担体の成分としての本明細書に記載のカチオン性脂質を含有するナノ粒子(化合物5)は、実質的に長期間の間、4℃で非常に安定していたことが明らかであった。図2に示したように、試料番号NP101、NP102、NP103およびNP104のナノ粒子(表7)もまた同様の安定性を示した。
【表7】
【0267】
実施例8. in vitroにおけるナノ粒子の細胞内取り込み
本明細書に記載のナノ粒子中に封入されている核酸(LNAオリゴヌクレオチドOilgo-2)の細胞内取り込みの効果をヒト前立腺癌細胞(15PC3細胞系)で評価した。試料番号NP3のナノ粒子は、実施例6に記載の方法を用いて調製した。LNAオリゴヌクレオチド(Oligo-2)は、蛍光顕微鏡試験のためにFAMで標識した。
【0268】
ナノ粒子は15PC3細胞系で評価した。細胞は完全培地(10%FBSを補充したDMEM)中で維持した。各ウェルに2.5×105細胞を含有する12ウェルプレートを37℃で一晩インキュベートした。細胞を一度Opti-MEMで洗浄し、Opti-MEM 400mLを各ウェルに加えた。次いで、細胞を、核酸を封入している試料番号NP3(200nM)のナノ粒子溶液(FAM-修飾Oligo 2)、または、対照としてナノ粒子無しの遊離核酸の溶液(ネイキッドFAM-修飾Oligo 2)で処理した。細胞を37℃で24時間インキュベートした。細胞をPBSで5回洗浄し、次いで、30分間1ウェル当たりHoechst溶液(2mg/mL)300mLで染色し、その後PBSで5回洗浄した。-20℃で20分間予備冷却した(-20℃)70% EtOHで細胞を固定した。細胞を螢光顕微鏡下に検査した。その画像を図3に示す。
【0269】
同一条件下の遊離核酸で処理した細胞は、図3Aに示すように核酸の細胞内取り込みは示さなかった。ナノ粒子とインキュベートした細胞では、核酸の有意な核内蓄積があった(図3B)。さらに、ナノ粒子で処理した細胞は、核酸の大きく広がった細胞質内局在化を示した。いくつかのさらなる核酸の細胞質断続蓄積(cytoplasmic punctuate accumulation)パターンもまた認められたが、これは図3Bに示すようにエンドサイトーシス小胞で典型的であった。図3に示すように、試料番号NP105のナノ粒子で処理した細胞(表8)も同様に核酸の細胞内取り込みを示した。
【表8】
【0270】
これらの結果は、核酸が封入されているナノ粒子が、トランスフェクション剤を使用しなくとも細胞膜を透過し、核および細胞質に蓄積したことを示した。本明細書に記載のナノ粒子は、細胞、好ましくは腫瘍細胞の内部に核酸を送達する手段を提供する。
【0271】
実施例9. ヒト表皮癌細胞中のmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
試料番号NP5の効果をヒト表皮癌細胞(A431細胞系)で評価した。A431細胞は上皮増殖因子受容体(EGFR)を過剰発現する。アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)で細胞を処理した。また細胞は、対照として、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)で処理するか、空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)で処理した。ナノ粒子は、実施例6に記載の方法を使用して調製した(表9)。
【表9】
【0272】
細胞は完全培地中で維持した(10%FBSを補充したF-12KまたはDMEM)。各ウェルに2.5×105細胞を含有する12ウェルプレートを37℃で一晩インキュベートした。細胞を一度Opti-MEM(登録商標)で洗浄し、Opti-MEM(登録商標) 400mLを各ウェルに加えた。次いで、細胞を試料番号NP5、NP6またはNP7のナノ粒子で処理した。細胞を4時間インキュベートした後、1ウェル当たり600μLの培地を添加し、24時間インキュベーションした。処理の24時間後に、標的遺伝子(例えばヒトErbB3)及びハウスキーピング遺伝子(例えばGAPDH)の細胞内mRNAレベルをRT-qPCRにより測定した。ErbB3 mRNA遺伝子の発現レベルは、GAPDHのレベルに標準化した。
【0273】
mRNAダウンレギュレーション試験に関しては、全RNAは、RNAqueousキット(登録商標)(Ambion)を使用し製造者の説明書に従って調製した。RNA濃度は、Nanodropを使用し、OD260nmにより測定した。試薬は全てApplied Biosystemsから購入した:高容量相補的DNA逆転写キット(登録商標)(Cat. No. 4368813)、20×PCRマスターミックス(Cat. No. 4304437)、およびヒトGAPDH用のTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイキット(Cat. No. 0612177)。
【0274】
アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP5)は、ヒト表皮癌細胞において100nMもの低いIC50で用量依存性mRNAノックダウンを示した(図4A)。このmRNAノックダウンはErbB3タンパク質レベルと相関していた(図4B)。ErbB3発現のダウンレギュレーションは、ウエスタンブロット法により、細胞からErbB3タンパク質レベルを測定することによって確認した。抗ErbB3抗体はSanta Cruz (SC285)から購入し使用した。スクランブルオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)は、ErbB3発現を阻害しなかった。
【0275】
結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、標的遺伝子発現を選択的及び用量依存的に阻害することを示した。本明細書に記載のナノ粒子は、トランスフェクション剤の不在下で標的遺伝子発現を阻害するための手段を提供する。
【0276】
実施例10. ヒト胃癌細胞のmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト胃癌細胞(N87細胞系)で評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)、または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対する各ナノ粒子のin vitroでの効果は、実施例9に記載の方法により測定した。
【0277】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト胃癌細胞で標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。その阻害は配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図5に示す。
【0278】
実施例11. ヒト肺癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト肺癌細胞(A549細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0279】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト肺癌細胞において標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。結果は、それらの癌細胞において約200nMのIC50を示した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図6に示す。
【0280】
実施例12. ヒト前立腺癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト前立腺癌細胞(15PC3細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0281】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト前立腺癌細胞において、約100nMのIC50で標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図7に示す。
【0282】
実施例13. ヒト乳癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト乳癌細胞(MCF7細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0283】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト乳癌細胞において、標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。結果は、癌細胞においておよそ150nMのIC50を示した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図8に示す。
【0284】
実施例14. ヒトKB癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒトKB癌細胞(KB細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0285】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒトKB癌細胞において、標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図9に示す。
【0286】
実施例15. ヒト前立腺癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果を別のタイプのヒト前立腺癌細胞(DU145細胞系)においても評価した。細胞は、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)でそれぞれ処理した。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0287】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト前立腺癌細胞において、標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図10に示す。
【0288】
本明細書に記載のナノ粒子は、様々な癌細胞(例えばヒト肺、前立腺、胸およびKB癌細胞)へ核酸を送達した。図6〜10に示したように、癌細胞系におけるmRNA KD効果は、15PC3>MCF7〜>A431〜>N87〜>A549>DU145〜KBの順で、ナノ粒子中に封入されているアンチセンスオリゴヌクレオチドの約50〜約400nMの範囲である。mRNA KDは、試験するそれぞれの癌細胞において、タンパク質KDと相関していた。
【0289】
実施例16. ヒト前立腺癌異種移植マウスモデルの腫瘍および肝臓におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vivo効果
本明細書に記載のナノ粒子のin vivo効果をヒト前立腺癌異種移植マウスで評価した。15PC3ヒト前立腺腫瘍は、ヌードマウスで右腋側腹部に5×106細胞/マウスを皮下注射することにより確立した。腫瘍が100mm3の平均体積に達した時、マウスをランダムに1群当たり5匹に分けした。各群のマウスに、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド(試料NP5)または対応するネイキッドオリゴヌクレオチド(Oligo 2)を封入されているナノ粒子で処理した。ナノ粒子は、12日間、q3d×4で、15mg/kg/投与、5mg/kg/投与、1mg/kg/投与または0.5mg/kg/投与で静脈内投与(i.v.)した。投与量は、ナノ粒子中のオリゴヌクレオチド量に基づく。ネイキッドオリゴヌクレオチドは、12日間、q3d×4で、30mg/kg/投与の腹腔内投与(i.p.)か、25mg/kg/投与または45mg/kg/投与で静脈内投与した。マウスは最終投与の24時間後に殺処理した。血漿試料をマウスから回収し、-20℃で保管した。腫瘍試料および肝臓試料もマウスから回収した。試料はmRNA KDについて分析した。
【0290】
ナノ粒子で処理したマウスの腫瘍試料では、その処理はErbB3 mRNA発現を用量依存的に阻害した。ErbB3発現は15mg/kgの投与で約51%以上阻害された(G2)。ネイキッドオリゴヌクレオチドで処理された動物の腫瘍試料では、45mg/kgのoligo-2の投与で、ErbB3 mRNA発現の阻害はわずかに約37%であった(G8)。結果を図11に示す。
【0291】
肝臓試料においては、ナノ粒子は、ネイキッドオリゴヌクレオチドと比較した場合、低用量で標的遺伝子発現のダウンレギュレーションに非常に効果があった。ナノ粒子は、15mg/kg/投与で約93%のKD活性を示した(G2)。またナノ粒子は、1mg/kg/投与で約87%のKD活性を示した(G4)が、これは25mg/kg/投与のOligo-2と同程度に有効であった(G7)。結果を図12に示す。
【0292】
結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子が、ネイキッドLNAオリゴヌクレオチドと比較した場合、腫瘍および肝臓の両方で標的遺伝子の発現を有意に且つ有効的に阻害したことを示した。
【0293】
実施例17. ヒト結腸癌異種移植マウスモデルにおけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vivo効果
本明細書に記載のナノ粒子のin vivo効果をヒト結腸癌異種移植マウスでも評価した。本明細書に記載のナノ粒子(試料NP5)を、12日間、q3dx4で、ヒトDLD-1腫瘍を移植したマウスに腫瘍内注射を行い投与した。ネイキッドオリゴヌクレオチド(Oligo 2)、スクランブルオリゴヌクレオチド(Oligo 3)、スクランブルオリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子(試料NP6)もマウスに投与した。各試験群のマウスからの腫瘍試料を回収し、mRNAダウンレギュレーションについてqRT-PCRを使用して分析した。
【0294】
アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子で処理したマウスにおいては、その処置は、ネイキッドアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはスクランブルオリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子と比較した場合、ErbB3 mRNA発現を有意に阻害した。結果を図13に示す。結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子が、ネイキッドLNAオリゴヌクレオチドと比較した場合、腫瘍での標的遺伝子の発現を有意に且つ効果的に阻害したことを示した。
【0295】
実施例18. 肝臓に転移のあるヒト癌異種移植マウスモデルにおけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vivo効果
本明細書に記載のナノ粒子のin vivo効果を肝臓に転移のあるヒト癌異種移植マウスにおいて評価した。A549癌細胞を脾臓内に注射し、その後、転移性肝疾患を確立するため脾臓摘出を行った。脾臓摘出の2日後、0.5mg/kg/投与、q3d×10で、各群のマウスに、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、またはスクランブルオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP6)を静脈内投与した。ネイキッドアンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド(Oligo 2)は、35mg/kg/投与、q3d×4で静脈内投与した。動物の生存を確認した。
【0296】
アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子による処置は、約73日間の対照動物と比較して、生存が伸びた(約85日)。結果を図14に示す。総括的観察では、動物の死亡が肝転移によることを示した。肝転移のある代表的な動物の画像を図15に示す。
【0297】
結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子が、ネイキッドLNAオリゴヌクレオチドと比べると、転移癌(すなわち肝臓の転移癌)を改善したことを示した。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/085,289号(参照によりその内容を本明細書に組み入れる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、オリゴヌクレオチド送達用のナノ粒子組成物、およびナノ粒子組成物を使用して遺伝子発現をモジュレートする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
各種疾患を治療する取り組みとして、過去数年にわたり、核酸を使用する治療法が提案されている。アンチセンス療法などの治療法は、疾患の治療における有効な手段である。というのは、治療用遺伝子が疾患関連の遺伝子発現を選択的にモジュレートし、また、別の治療的アプローチが行われる場合に、生じる副作用を最小限にすることができるからである。
【0004】
しかし、核酸を使用する治療法は、遺伝子の安定性が悪く、送達が効果的でないために制限されている。それらの問題を解消し、in vitroおよびin vivoにおいて標的領域(例えば、癌細胞または癌組織)に治療用遺伝子を効果的に導入することを目的として、いくつかの遺伝子送達システムが提案されてきた。送達を改善し、治療用遺伝子の細胞内取り込みを高めるこうした試みは、リポソームの利用が対象である。
【0005】
現在利用可能であるリポソームではプラスミド送達において若干の進歩が見受けられたが、体内へオリゴヌクレオチドを効果的に送達することはない。オリゴヌクレオチドの送達において、望ましい送達システムは、オリゴヌクレオチドの負電荷を中和するのに十分な正電荷を含んでいなければならない。最近、Stuart, D.D.ら, Biochim. Biophys. Acta, 2000, 1463:219-229、およびSemple, S.C.ら, Biochim. Biophys. Acta, 2001, 1510:152-166によりそれぞれ記載のある、コーティングを施したカチオン性リポソーム(CCL)および安定核酸・脂質粒子(SNALP)の製剤が小型サイズで、核酸封入率が高く、血清安定性が良好で、かつ循環時間が長いナノ粒子を提供することが報告されている。しかし、これらは、ネイキッドオリゴヌクレオチドを使用した場合と比べると、特に肝臓以外の器官では、in vivo活性に有意な改善は見られなかった。このため、細胞(例えば癌細胞)でのオリゴヌクレオチドの細胞内取り込みが強化され、バイオアベイラビリティを高めることができる核酸送達システムの提供が望まれている。また、核酸送達システムが保存時に安定していて、臨床での使用の際に安全であることも望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Biochim. Biophys. Acta, 2000, 1463:219-229
【非特許文献2】Biochim. Biophys. Acta, 2001, 1510:152-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の試みや進歩があるにしても、引き続き、核酸送達システムの改善の提供が必要とされている。本発明はこの必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、核酸送達用のナノ粒子組成物を提供する。核酸(例えばオリゴヌクレオチド)は、カチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質の混合物を含有するナノ粒子錯体内に封入される。
【0009】
本発明のこの態様によれば、核酸(すなわちオリゴヌクレオチド)送達用のナノ粒子組成物は、
(i) 式(I):
【化1】
【0010】
(式中、
R1はコレステロールまたはその類似体であり;
Y1およびY3は、独立して、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
Y2は、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
(a)は、0または1であり;
R2およびR3は、独立して、水素または低級アルキルであり;
(b)は、約2〜約10の正の整数(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9および10、好ましくは2)であり;
R4は、水素、低級アルキル、または
【化2】
【0011】
であり;
R5は、
【化3】
【0012】
であり;
R’5は、NH2、
【化4】
【0013】
であり;
R6、R’6およびR7は、独立して、水素または低級アルキルである)
で表されるカチオン性脂質と;
(ii) 融合性脂質と;
(iii) PEG脂質
とを含む。
【0014】
また本発明は、in vivoおよびin vitroにおいて細胞または組織に核酸(好ましくはオリゴヌクレオチド)を送達するための方法を提供する。本明細書に記載の方法により導入されるオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子の発現をモジュレートすることができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様は、標的遺伝子(すなわち、哺乳動物(好ましくはヒト)の発癌遺伝子および炎症に関係する遺伝子)の発現を阻害する方法を提供する。本方法は、癌細胞などの細胞または組織を、本明細書に記載のナノ粒子組成物から調製したナノ粒子と接触させることを含む。ナノ粒子内に封入されたオリゴヌクレオチドは治療されている細胞または組織内で放出され、mRNAまたはタンパク質のダウンレギュレーションをもたらす。このナノ粒子を使用する治療では標的遺伝子発現のモジュレーションが可能であり、例えば、癌細胞増殖の阻害といった、悪性疾患の治療でそれに伴う効果が得られる。こうした治療は単独治療として実施することもできるし、1種または複数の有用かつ/または承認されている治療との併用療法の一部として行うこともできる。
【0016】
さらなる態様は、式(I)で表されるカチオン性脂質を製造する方法、ならびにそれを含有するナノ粒子を含む。
【0017】
本発明の有利な点の1つは、本明細書に記載のカチオン性脂質を含有するナノ粒子組成物がin vivoならびにin vitroにおける核酸の投与手段を提供するということである。この送達技術によって、体内における治療用オリゴヌクレオチドの安定性、トランスフェクション効果およびバイオアベイラビリティが高められ、結果として、当業者は所望するオリゴヌクレオチドの治療効力を得ることができる。
【0018】
本明細書に記載のナノ粒子は、ヒト癌細胞内でのLNA含有オリゴヌクレオチドのin vitroにおける細胞内取り込みを改善し、哺乳動物の腫瘍へのLNA-ON類の送達を向上させた。
【0019】
本明細書に記載のカチオン性脂質は、核酸の負電荷を中和し、細胞での核酸含有ナノ粒子の細胞内取り込みを促進する。本明細書に記載のカチオン性脂質は、さらに、コレステロール部分毎に複数のユニットからなるカチオン性部分を供給し、(i)核酸の負電荷の中和、(ii)核酸とのより結合性の高いイオン錯体の形成において高い効果を発揮する。この技術は、LNAを含む治療用オリゴヌクレオチド、ならびにsiRNA、microRNAおよびMOEアンチセンスをベースとするものを使用する、治療用オリゴヌクレオチドの送達および哺乳動物(すなわちヒト)の治療に有利である。
【0020】
本明細書に記載のカチオン性脂質の他の利点は、核酸と多重イオン錯体を形成することにより、ナノ粒子のサイズを調節する手段を提供するということである。
【0021】
本明細書に記載のカチオン性脂質は、体液中でナノ粒子錯体とその中の核酸を安定させる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、ナノ粒子錯体は、分子をヌクレアーゼから保護することにより封入された核酸の安定性を少なくともある程度高め、その結果、分解から保護されると考えられる。本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質をベースとしたナノ粒子は、封入された核酸を安定させる。
【0022】
本明細書に記載のカチオン性脂質は、典型的には充填が約10%またはそれ未満の当該分野で公知の中性または負荷電ナノ粒子に比べ、高い効率(例えば70%超、好ましくは80%超)で核酸(オリゴヌクレオチド)を充填することができる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、この高充填は、一つには、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質の高pKa(13〜14)グアニジニウム基が核酸のリン酸基と実質的にコンパクトな双性イオン水素結合を形成することで、より多くの核酸がナノ粒子の内部分画に効果的にパッケージ化されるという事実により達成される。
【0023】
本明細書に記載のナノ粒子は、ナノ粒子の凝集または析出が生じにくいという点で、中性または負荷電ナノ粒子よりも優れた、さらなる利点を有する。いかなる理論にも拘束されるものではないが、この望ましい特性は、一つには、核酸と水素結合または静電的相互作用を形成するカチオン性脂質がナノ粒子内に封入されており、しかも、非カチオン性/融合性脂質およびPEG脂質がそのカチオン性脂質および核酸を囲んでいるという事実に起因する。
【0024】
本明細書に記載のナノ粒子は、トランスフェクション効率が高いという別の利点を提供する。本明細書に記載のナノ粒子は、トランスフェクト剤を利用しなくても、in vitroおよびin vivoにおいて細胞のトランスフェクションが可能となる。本ナノ粒子は、トランスフェクト剤が必要な当該分野で公知のナノ粒子と同様な毒性は持たないので安全である。また、本ナノ粒子の高トランスフェクション効率は、治療用核酸の核への送達手段も提供する。
【0025】
本明細書に記載のナノ粒子は、さらに、ナノ粒子の調製において、優れた安定性および適応性を提供する。本ナノ粒子は、2〜12といった広範囲のpH領域で調製することができる。また、本明細書に記載のナノ粒子は、望ましい生理学的pH(例えば、7.2〜7.6)で臨床的に使用することができる。
【0026】
また、本明細書に記載のナノ粒子送達システムでは、十分な量の治療用オリゴヌクレオチドがEPR効果によって癌細胞などの目的とする標的領域で選択的に利用することができる。したがって、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、癌細胞または組織における特定のmRNAダウンレギュレーションを改善する。
【0027】
別の利点は、本明細書に記載のカチオン性脂質は、均一なサイズのナノ粒子の調製と、保存中のナノ粒子の安定性を可能にするということである。本明細書に記載のカチオン性脂質を含有するナノ粒子錯体は、バッファー条件下で安定している。この特徴は、信頼性があり融通のきく投薬計画を臨床医に提供するので、先行技術に勝る重要な利点である。安定性のある本ナノ粒子は、LNA-ONの全身性送達に好適である。
【0028】
別の利点は、本明細書に記載のナノ粒子が1種または複数の異なる標的オリゴヌクレオチドを送達することが可能で、それにより、疾患の治療で相乗効果が得られるということである。
【0029】
遺伝子レベルでのヒト疾患の治療はますます注目されてきている。ロック核酸およびsiRNAをはじめとするオリゴヌクレオチド類は、望ましくない遺伝子発現を阻害する可能性を有する。本発明は、標的領域、細胞または組織での核酸(例えばLNA-ON)の細胞内取り込みおよび蓄積を高めることができる。その上、本明細書に記載のカチオン性脂質をベースとしたナノ粒子は、ウイルスによる送達システムと比べると、in vivoでのオリゴヌクレオチドの送達が安全であり、それらの薬物動態学的プロファイル、細胞透過および特異的腫瘍標的が改善される。
【0030】
本発明の別の利点は、本明細書に記載のナノ粒子によって、トランスフェクション剤を用いることなく、複数のヒト腫瘍細胞での標的mRNAの有効なダウンモジュレーションが可能となり、また、癌に罹患している哺乳動物における核酸の細胞送達を改善することができるということである。静脈内投与の場合、肝臓および腫瘍でのサイレンシングmRNAのネイキッドオリゴヌクレオチドよりも、ナノ粒子中に封入されているオリゴヌクレオチドは、それぞれ、30倍以上および3倍以上の効果がある。
【0031】
他の利点およびさらなる利点は、下記の記載から明白であろう。
【0032】
本発明の目的において、「残基」という用語は、別の化合物との置換反応に供された後に残存する、ある化合物、例えばコレステロールなどの部分を意味するものと理解されたい。
【0033】
本発明の目的において、「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状のアルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素を意味する。また「アルキル」という用語は、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルおよびC1-6アルキルカルボニルアルキル基を含む。好ましくは、アルキル基は1〜12個の炭素を有する。より好ましくは約1〜7個の炭素、さらにより好ましくは約1〜4個の炭素の低級アルキルである。アルキル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(類)としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0034】
本発明の目的において、「置換(されている)」という用語は、官能基または化合物に含まれる1個または複数の原子に、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6アルキルカルボニルアルキル、アリール、およびアミノ基よりなる群から選択される部分の一つを付加するか、またはこれと置き換えることを意味する。
【0035】
本発明の目的において、「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状の基を含む、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する基を意味する。好ましくは、アルケニル基は約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは約2〜7個の炭素、さらにより好ましくは約2〜4個の炭素の低級アルケニルである。アルケニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(類)としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0036】
本発明の目的において、「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状の基を含む、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する基を意味する。好ましくは、アルキニル基は約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは約2〜7個の炭素、さらにより好ましくは約2〜4個の炭素の低級アルキニルである。アルキニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(類)としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。「アルキニル」の例として、プロパルギル、プロピン、および3-ヘキシンが挙げられる。
【0037】
本発明の目的において、「アリール」という用語は、少なくとも1個の芳香環を含有する芳香族炭化水素の環系を意味する。芳香環は、場合により、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環に縮合するか、結合することができる。アリール基の例としては、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0038】
本発明の目的において、「シクロアルキル」という用語は、C3-8の環状炭化水素を意味する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0039】
本発明の目的において、「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有するC3-8の環状炭化水素を意味する。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
【0040】
本発明の目的において、「シクロアルキルアルキル」という用語は、C3-8シクロアルキル基で置換されているアルキル基を意味する。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
【0041】
本発明の目的において、「アルコキシ」という用語は、酸素架橋を通して親分子の部分に結合されている、指示した数の炭素原子のアルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシが挙げられる。
【0042】
本発明の目的において、「アルキルアリール」基は、アルキル基で置換されているアリール基を意味する。
【0043】
本発明の目的において、「アラルキル(aralkyl)」基は、アリール基で置換されているアルキル基を意味する。
【0044】
本発明の目的において、「アルコキシアルキル」基という用語は、アルコキシ基で置換されているアルキル基を意味する。
【0045】
本発明の目的において、「アルキル-チオ-アルキル」という用語は、アルキル-S-アルキルチオエーテル、例えば、メチルチオメチルまたはメチルチオエチルを意味する。
【0046】
本発明の目的において、「アミノ」という用語は、1個または複数の水素基を有機基で置き換えることによってアンモニアから由来する、当該分野で公知の窒素含有基を意味する。例えば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」という用語は、それぞれ、アシルおよびアルキル置換基を有する特定のN-置換有機基を意味する。
【0047】
本発明の目的において、「アルキルカルボニル」という用語は、アルキル基で置換されているカルボニル基を意味する。
【0048】
本発明の目的において、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。
【0049】
本発明の目的において、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する非芳香族環系を意味する。ヘテロシクロアルキル環は、場合によっては、他のヘテロシクロアルキル環および/または非芳香族の炭化水素環と縮合するか、あるいは結合することができる。好ましいヘテロシクロアルキル基は3〜7員を有する。ヘテロシクロアルキル基の例としては、例えば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジンおよびピラゾールが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルおよびピロリジニルが挙げられる。
【0050】
本発明の目的において、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香族環系を意味する。ヘテロアリール環は、1個もしくは複数のヘテロアリール環、芳香族もしくは非芳香族炭化水素環またはヘテロシクロアルキル環と縮合するか、あるいは結合することができる。ヘテロアリール基の例としては、例えば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリンおよびピリミジンが挙げられる。ヘテロアリール基の好ましい例としては、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0051】
本発明の目的において、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素および硫黄を意味する。
【0052】
いくつかの実施形態において、置換アルキルとしては、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルが挙げられ;置換アルケニルとしては、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルが挙げられ;置換アルキニルとしては、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルが挙げられ;置換シクロアルキルとしては4-クロロシクロヘキシル等の部分が挙げられ;アリールとしてはナフチル等の部分が挙げられ;置換アリールとしては3-ブロモフェニル等の部分が挙げられ;アラルキルとしてはトリル等の部分が挙げられ;ヘテロアルキルとしてはエチルチオフェン等の部分が挙げられ;置換ヘテロアルキルとしては3-メトキシ-チオフェン等の部分が挙げられ;アルコキシとしてはメトキシ等の部分が挙げられ;フェノキシとしては3-ニトロフェノキシ等の部分が挙げられる。ハロは、フルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むものと理解されたい。
【0053】
本発明の目的において、「正の整数」は、1と等しいか、またはそれより大きい整数を含み、当業者に理解されるように、当業者による適性の範囲内であると理解されたい。
【0054】
本発明の目的において、「連結した(linked)」という用語は、化学反応の結果としての、1個の基の別の基への共有(好ましくは)または非共有結合を含むものと理解されたい。
【0055】
本発明の目的において、「有効な量」および「十分な量」という用語は、当業者に理解されるような所望の効果または治療効果を達成する量を意味する。
【0056】
本明細書に記載のナノ粒子組成物を用いて形成される「ナノ粒子」および/または「ナノ粒子錯体」という用語は、脂質ベースのナノ錯体を意味する。ナノ粒子は、カチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質の混合物中に封入されている核酸(例えばオリゴヌクレオチド)を含有する。あるいは、ナノ粒子は核酸を含まないで形成させることができる。
【0057】
本発明の目的において、「治療用オリゴヌクレオチド」という用語は、医薬用または診断用の薬剤として使用されるオリゴヌクレオチドを意味する。
【0058】
本発明の目的において、「遺伝子発現のモジュレーション」は、投与経路にかかわらず、本明細書に記載のナノ粒子を用いた治療を行わない時に認められる遺伝子発現と比較した場合の、好ましくは癌および炎症に関連した、あらゆるタイプの遺伝子のダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションを広く含んでいるものと理解されたい。
【0059】
本発明の目的において、「標的遺伝子の発現抑制」とは、本明細書に記載のナノ粒子を用いた治療を行わない時に認められるものと比較した場合に、mRNA発現または翻訳されたタンパク質の量が低減または軽減されることを意味するものと理解されたい。こうした阻害の適切なアッセイは、例えば、当業者に公知の技術を使用するタンパク質またはmRNAレベルの試験が挙げられ、例としては、ドットブロット、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼイション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、ならびに当業者に公知の表現型アッセイである。治療状況は、例えば、細胞、好ましくは癌細胞または組織中のmRNAレベルの減少によって確認することができる。
【0060】
大まかに言えば、成功的阻害または治療は、所望の応答が得られた場合に生じていると判断されるべきである。例えば、成功的阻害または治療は、癌増殖阻害と関連する遺伝子の10%以上(すなわち20%、30%、40%)のダウンレギュレーションが得られるということにより定義することができる。あるいは、成功的治療は、本明細書に記載のナノ粒子を用いた治療を行わない時に認められるものと比較した場合に、癌細胞または組織中の発癌遺伝子mRNAレベルまたはコード化されたタンパク質レベル(当該分野の当業者によって考えられる別の臨床マーカーを含む)の少なくとも20%、好ましくは30%、さらに好ましくは40%以上(すなわち、50%または80%)の減少が得られるということにより定義することができる。
【0061】
さらに、説明の便宜上での単数形の用語の使用は、決して、そのように限定することを意図するものではない。したがって、例えば、オリゴヌクレオチド、コレステロール類似体、融合性脂質、PEG脂質などを含む組成物に関する記述は、1種または複数のそのオリゴヌクレオチド、コレステロール類似体、融合性脂質、PEG脂質などの分子を意味する。また、オリゴヌクレオチドは同一か異なる種類の遺伝子であってもよいと考えられる。また、本発明は、本明細書に開示している特定の組成、プロセス段階、および物質に限定されるものではなく、そのような組成、プロセス段階、および物質がある程度変動し得ることも理解されたい。
【0062】
本発明の範囲は請求の範囲およびそれに相当する内容によって限定されるものであるから、本明細書で使用している用語は特定の実施形態を記載するためにのみ使用するものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1〜5に記載する、2-[ビス(3-グアニジニウム-プロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物5)を調製する反応スキームを示す。
【図2】実施例7に記載する、ナノ粒子の安定性を示す。
【図3】実施例8に記載する、核酸を封入しているナノ粒子の細胞内取り込みと細胞内分布を示す。
【図4】実施例9に記載する、ヒト表皮癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図5】実施例10に記載する、ヒト胃癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図6】実施例11に記載する、ヒト肺癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図7】実施例12に記載する、ヒト前立腺癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図8】実施例13に記載する、ヒト乳癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図9】実施例14に記載する、ヒトKB癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図10】実施例15に記載する、ヒト前立腺癌細胞におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vitro効果を示す。
【図11】実施例16に記載する、ヒト前立腺癌異種移植マウスの腫瘍におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo効果を示す。
【図12】実施例16に記載する、ヒト前立腺癌異種移植マウスの肝臓におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo効果を示す。
【図13】実施例17に記載する、ヒト結腸癌異種移植マウスの腫瘍におけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo 効果を示す。
【図14】実施例18に記載する、肝臓に転移のあるヒト癌異種移植マウスにおけるErbB3発現に対するナノ粒子のin vivo効果を示す。
【図15】肝転移のある代表的な動物の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
A. 概要
本発明の一態様において、核酸送達用のナノ粒子組成物を提供する。ナノ粒子組成物は、(i) カチオン性脂質;(ii) 融合性脂質;および(iii) PEG脂質を含有する。考えられる核酸としては、オリゴヌクレオチドまたはプラスミドが挙げられるが、好ましくはオリゴヌクレオチドである。本明細書に記載のナノ粒子組成物を使用することにより調製されるナノ粒子は、脂質担体中に封入されている核酸を含む。
【0065】
B. カチオン性脂質
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、式(I):
【化5】
【0066】
(式中、
R1は、コレステロールまたはその類似体であり;
Y1およびY3は、独立して、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
Y2は、O、SまたはNR7、好ましくはOまたはS、さらに好ましくはOであり;
(a)は、0または1であり;
R2およびR3は、独立して、水素またはC1-7アルキルなどの低級アルキル、好ましくは水素またはC1-4アルキルであり;
(b)は、約2〜約10の正の整数(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、一部の実施形態では、好ましくは、2、3、4、さらに好ましくは2である)であり;
R4は、水素、C1-7アルキルなどの低級アルキル(すなわちC1-4アルキル)、または、
【化6】
【0067】
であり;
R5は、
【化7】
【0068】
であり;
R’5は、NH2、
【化8】
【0069】
であり;
R6、R’6およびR7は、独立して、水素またはC1-7アルキルなどの低級アルキル、好ましくは水素またはC1-4アルキルである)
で表されるカチオン性脂質を含有する。
【0070】
本発明の目的において、C(R2)(R3)は、(b)が2以上である場合、同一であるか異なる。
【0071】
本発明の好ましい一態様においては、本明細書に記載のカチオン性脂質は、正荷電基を含有する1つより多い(すなわち2つの)部分を含む。
【0072】
別の好ましい態様においては、カチオン性脂質は、以下の構造:
【化9】
【0073】
(式中、R6およびR’6は両方とも好ましくは水素である)
を含有する各R5およびR’5を含む。カチオン性脂質は、好ましくは、次式:
【化10】
【0074】
のような2つのユニットのグアニジニルプロピル基を有する。
【0075】
さらに別の好ましい態様においては、式(I)のY1、Y2およびY3は、すべて酸素である。
【0076】
カチオン性脂質のさらなる別の好ましい態様では、(a)は1であり、(b)は2である。
【0077】
カチオン性脂質のさらなる別の好ましい態様では、R2およびR3は両方とも水素である。
【0078】
本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質は、選択したpH、例えばpH<13(例えば、pH 6〜12、pH 6〜8)で正味の正電荷を有する。
【0079】
特定の一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、次の構造:
【化11】
【0080】
(式中、R1はコレステロールまたはその類似体である)
を有するカチオン性脂質を含む。
【0081】
好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、次の構造:
【化12】
【0082】
を有するカチオン性脂質を含む。
【0083】
さらに好ましくは、ナノ粒子組成物は、次の構造:
【化13】
【0084】
を有するカチオン性脂質を含む。
【0085】
本発明のさらなる態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、追加のカチオン性脂質を含んでいてもよい。考えられる追加の適切な脂質としては、例えば:
N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);
1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニウム)プロパンまたはN-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);
1,2-ジミルストイルオキシ-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DMTAP);
1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミドまたはN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);
ジメチルジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB);
3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-コレステロール);
3β-((N',N'-ジグアニジノエチル-アミノエタン)カルバモイル)コレステロール(BGTC);
2-(2-(3-(ビス(3-アミノプロピル)アミノ)プロピルアミノ)アセトアミド)-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(RPR209120);
1,2-ジアルケノイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(すなわち、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリンおよび1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン);
テトラメチルテトラパルミトイルスペルミン(TMTPS);
テトラメチルテトラオレイルスペルミン(TMTOS);
テトラメチルテトララウリルスペルミン(TMTLS);
テトラメチルテトラミリスチルスペルミン(TMTMS);
テトラメチルジオレイルスペルミン(TMDOS);
2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-(2-(ジオクタデシルアミノ)-2-オキソエチル)ペンタンアミド(DOGS);
2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-(2-(ジ(Z)-オクタデカ-9-ジエニルアミノ)-2-オキソエチル)ペンタンアミド(DOGS-9-en);
2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-(2-(ジ(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニルアミノ)-2-オキソエチル)ペンタンアミド(DLinGS);
N4-スペルミンコレステリルカーバメート(GL-67);
(9Z,9'Z)-2-(2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)ペンタンアミド)プロパン-1,3-ジイル-ジオクタデカ-9-エノエート(DOSPER);
2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA);
1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODMA);
ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DODAB);
ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA);
N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0086】
また、カチオン性脂質の詳細は、US2007/0293449、ならびに米国特許第4,897,355号;5,279,833号;6,733,777号;6,376,248号;5,736,392号;5,686,958号;5,334,761号;5,459,127号;2005/0064595号;5,208,036号;5,264,618号;5,279,833号;5,283,185号;5,753,613号;および5,785,992号に記載されている。
【0087】
さらに、カチオン性脂質を含む市販の調製品は、次のものを使用することができる:例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよびDOPEを含有するカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL (Grand Island, New York, USA)製);LIPOFECTAMINE(登録商標)(DOSPAおよびDOPEを含有するカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL (Grand Island, New York, USA)製;およびTRANSFECTAM(登録商標)(DOGSを含有するカチオン性リポソーム、Promega Corp. (Madison, Wisconsin, USA)製)。
【0088】
C. 融合性/非カチオン性脂質
本発明の別の態様においては、ナノ粒子組成物は融合性脂質を含有する。融合性脂質としては、非カチオン性脂質(例えば、中性で非荷電の双性イオンおよびアニオン性脂質)が挙げられる。本発明の目的においては、「融合性脂質」と「非カチオン性脂質」という用語は言い換えられる。
【0089】
中性脂質は、選択されたpH(好ましくは生理学的pH)で非荷電または中性の双性イオン形態で存在する脂質を含む。こうした脂質の例としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ケファリン、コレステロール、セレブロシドおよびジアシルグリセロールが挙げられる。
【0090】
アニオン性脂質は、生理学的pHで負の電荷を持った脂質を含む。このような脂質としては、これらに限定されるものではないが、ホスファチジルグリセロール、カルディオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルフホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイルホスファチジルグリセロール(POPG)、および他のアニオン性修飾基で修飾されている中性脂質が挙げられる。
【0091】
多くの融合性脂質は、一般に、疎水性部分と極性頭部基を有する両親媒性脂質を含み、かつ水溶液中で小胞を形成することができる。
【0092】
考えられる融合性脂質としては、天然型および合成型リン脂質、ならびに関連脂質が挙げられる。
【0093】
非カチオン性脂質のリスト(限定されるものではない)は、以下のリン脂質および非リン脂質ベースの物質から選択される:例えば、レシチン;リゾレシチン;ジアシルホスファチジルコリン;リゾホスファチジルコリン;ホスファチジルエタノールアミン;リゾホスファチジルエタノールアミン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ケファリン;セラミド;カルディオリピン;ホスファチジン酸;ホスファチジルグリセロール;セレブロシド;ジセチルホスフェート;
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール (DLG);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール (DMG);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール (DPG);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール (DSG);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DLPA);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DMPA);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DPPA);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸 (DSPA);
1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DAPC);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DLPC);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DMPC);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン (DPePC);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはジステアロイルホスファチジルコリン (DSPC);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン (DLPE);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジミリストイルホスホエタノールアミン (DMPE);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン (DPPE);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン (DSPE);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール (DLPG);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG)または1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-sn-1-グリセロール(DMP-sn-1-G);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロールまたはジパルミトイルホスファチジルグリセロール (DPPG);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DSPG)または1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-sn-1-グリセロール(DSP-sn-1-G);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS);
1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PLinoPC);
1-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロ-3-ホスホコリンまたはパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG);
1-パルミトイル-2-リソ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(P-lyso-PC);
1-ステアロイル-2-リソ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(S-lyso-PC);
ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(DPhPE);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC);
1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)、
ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG);
パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE);
ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal);
16-O-モノメチル PE;
16-O-ジメチル PE;
18-1-トランス PE;1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE);
1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(transDOPE);
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。融合性脂質の詳細は、米国特許出願公開第2007/0293449号および2006/0051405号に記載されている。
【0094】
非カチオン性脂質は、ステロールまたはステロイドアルコール、例えばコレステロールを含む。
【0095】
さらなる非カチオン性脂質は、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、硫酸トリエタノールアミンラウリル、アルキルアリール硫酸ポリエチルオキシレート化脂肪酸アミド、およびジオクタデシルジメチル臭化アンモニウムである。
【0096】
考えられるアニオン性脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、血小板活性化因子(PAF)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル-DL-グリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトール、カルディオリピン、リゾホスファチド、水素化リン脂質、スフィンゴ脂質(sphingoplipids)、ガングリオシド、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、それらの製薬上許容可能な塩および混合物が挙げられる。
【0097】
本明細書に記載のナノ粒子組成物の調製に有用な適切な非カチオン性脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジリノレオイルホスファチジルコリン)、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびパルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、セラミドまたはスフィンゴミエリンが挙げられる。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、飽和および不飽和の炭素鎖を有する脂肪酸であり、例えば、リノイル、イソステアリル、オレイル、エライジル、ペトロセリニル、リノレニル、エラエオステアリル、アラキジル、ミリストイル、パルミトイルおよびラウロイルである。さらに好ましくは、アシル基はラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルである。あるいはおよび好ましくは、脂肪酸は飽和および不飽和のC8-C30(好ましくはC10-C24)炭素鎖を有する。
【0098】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルコリンとしては、次のものが挙げられる:
1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC, C10:0, C10:0);
1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC, C12:0, C12:0);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC, C18:1, C18:1);
1,2-ジエルコイル(dierucoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC, C22:1, C22:1);
1,2-ジエイコサペンタエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(EPA-PC, C20:5, C20:5);
1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DHA-PC, C22:6, C22:6);
1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MPPC, C14:0, C16:0);
1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MSPC, C14:0, C18:0);
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PMPC, C16:0, C14:0);
1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC, C16:0, C18:0);
1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SMPC, C18:0, C14:0);
1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SPPC, C18:0, C16:0);
1,2-ミリストイル-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MOPC, C14:0, C18:0);
1,2-パルミトイル-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPC, C16:0, C18:1);
1,2-ステアロイル-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPC, C18:0, C18:1)、およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0099】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なリゾホスファチジルコリンとしては、次のものが挙げられる:
1-ミリストイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(M-LysoPC, C14:0);
1-マルミトイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(P-LysoPC, C16:0);
1-ステアロイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(S-LysoPC, C18:0)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0100】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルグリセロールは、次のものの中から選択される:
水素化ダイズホスファチジルグリセロール(HSPG);
非水素化卵ホスファチジルグリセロール(EPG);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DMPG, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DPPG, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DSPG, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DOPG, C18:1, C18:1);
1,2-ジエルコイル(dierucoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DEPG, C22:1, C22:1);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG, C16:0, C18:1)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0101】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジン酸は、次のものが挙げられる:
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DMPA, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DPPA, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DSPA, C18:0, C18:0)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0102】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルエタノールアミンとしては、次のものが挙げられる:
水素化ダイズホスファチジルエタノールアミン(HSPE);
非水素化卵ホスファチジルエタノールアミン(EPE);
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE, C18:1, C18:1);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE, C22:1, C22:1);
1,2-ジエルコイル(dierucoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE, C16:0, C18:1)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0103】
本明細書に記載のナノ粒子組成物に有用な様々なホスファチジルセリンとしては、次のものが挙げられる:
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DMPS, C14:0, C14:0);
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS, C16:0, C16:0);
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS, C18:0, C18:0);
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS, C18:1, C18:1);
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-3-ホスホ-L-セリン(POPS, C16:0, C18:1)、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0104】
好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物の調製に有用な適切な中性脂質としては、例えば、
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、
ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、
パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、
卵ホスファチジルコリン(EPC)、
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、
ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、
パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、
ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、
ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、
コレステロール、
およびそれらの製薬上許容可能な塩、ならびにそれらの混合物。
【0105】
特定の好ましい実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物としては、DSPC、EPC、DOPE等、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0106】
本発明のさらなる態様においては、ナノ粒子組成物は、ステロールなどの非カチオン性脂質を含有する。ナノ粒子組成物は、好ましくは、コレステロールまたはその類似体、さらに好ましくはコレステロールを含有する。
【0107】
D. PEG脂質
本発明の別の態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物はPEG脂質を含有する。PEG脂質は、本明細書に記載のナノ粒子の循環を延長し、また身体からナノ粒子が早期に排出されるのを防ぐ。PEG脂質は、体内の免疫反応を低減することができる。またPEG脂質は、ナノ粒子の安定性を高める。
【0108】
ナノ粒子組成物に有用なPEG脂質は、融合性/非カチオン性脂質のPEG化形態を含む。PEG脂質としては、例えば、ジアシルグリセロールにコンジュゲートしたPEG(PEG-DAG)、ジアシルグリカミドにコンジュゲートしたPEG、ジアルキルオキシプロピルにコンジュゲートしたPEG(PEG-DAA)、リン脂質にコンジュゲートしたPEG、例えば、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEG(PEG-PE)、セラミドにコンジュゲートしたPEG(PEG-Cer)、コレステロール誘導体にコンジュゲートしたPEG(PEG-Chol)、またはそれらの混合物が挙げられる。米国特許第5,885,613号および第5,820,873号、ならびに米国特許出願公開第2006/051405号を参照されたい(これらの各内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0109】
PEGは、一般に、次の構造:
-O-(CH2CH2O)n-
によって表され、この場合、(n)は約5〜約2300、好ましくは約5〜約460の正の整数であり、その結果、PEG脂質のポリマー部分の数平均分子量は約200〜約100,000ダルトン、好ましくは約200〜約20,000ダルトンとなる。
【0110】
あるいは、ポリエチレングリコール(PEG)残基部分は、次の構造:
-Y71-(CH2CH2O)n-CH2CH2Y71-、
-Y71-(CH2CH2O)n-CH2C(=Y72)-Y71-、
-Y71-C(=Y72)-(CH2)a2-Y73-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y73-(CH2)a2-C(=Y72)-Y71-、および、
-Y71-(CR71R72)a2-Y73-(CH2)b2-O-(CH2CH2O)n-(CH2)b2-Y73-(CR71R72)a2-Y71-によって表すことができ、
この場合、
Y71およびY73は、独立して、O、S、SO、SO2、NR73または結合であり;
Y72は、O、SまたはNR74であり;
R71-74は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、および置換アリールカルボニルオキシ、好ましくは水素、メチル、エチルまたはプロピルの中から選択され;
(a2)および(b2)は、独立して、0または正の整数であり、好ましくは0または約1〜約6の整数(すなわち1、2、3、4、5、6)、さらに好ましくは、1または2であり;
(n)は、約5〜約2300、好ましくは約5〜約460の整数である。
【0111】
PEGの末端側終端は、H、NH2、OH、CO2H、C1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル)、C1-6アルコキシ、アシルまたはアリールで終えることができる。好ましい実施形態においては、PEGの末端ヒドロキシル基は、メトキシまたはメチル基で置換される。好ましい一実施形態では、PEG脂質中で用いられるPEGはメトキシPEGである。
【0112】
PEGは、脂質に直接コンジュゲートされていてもよいし、リンカー部分を介してコンジュゲートされていてもよい。脂質構造へコンジュゲートするためのポリマーは、必要以上の実験を行うことなく、米国特許第5,122,614号および第5,808,096号に記載の活性化技術および当該技術分野で公知の他の技術を用いて、適切に活性化されたポリマーに変換される。
【0113】
PEG脂質の調製に有用な活性化PEGの例としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール-コハク酸、mPEG-NHS、メトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルコハク酸、メトキシポリエチレングリコール-酢酸(mPEG-CH2COOH)、メトキシポリエチレングリコールアミン(mPEG-NH2)、およびメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(mPEG-TRES)が挙げられる。
【0114】
特定の態様においては、末端カルボン酸基を有するポリマーは、本明細書に記載のPEG脂質で用いることができる。高純度で末端カルボン酸を有するポリマーの調製方法は、米国特許出願公開第11/328,662号(この内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0115】
代替の態様においては、末端アミン基を有するポリマーは、本明細書に記載のPEG脂質の製造に用いることができる。高純度で末端アミンを含有するポリマーの調製方法は、米国特許出願公開第11/508,507号および第11/537,172号(このそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0116】
PEGおよび脂質は、連結(すなわち、非エステル含有リンカー部分またはエステル含有リンカー部分)を介して結合することができる。適切な非エステル含有リンカー部分としては、これらに限定されるものではないが、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カーバメートリンカー部分、カーボネート(OC(=O)O)リンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、スクシニルリンカー部分、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切なエステルリンカー部分としては、例えば、スクシノイル、リン酸エステル(-O-P(=O)(OH)-O-)、スルホネートエステル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0117】
一実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ポリエチレングリコール-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)またはポリエチレン-ジアシルグリカミドを含む。適切なポリエチレングリコール-ジアシルグリセロールまたはポリエチレン-ジアシルグリカミドコンジュゲートとしては、独立して、約C4〜約C30(好ましくは、約C8〜約C24)の飽和または不飽和炭素原子を含有するアルキル鎖長を有するジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基が挙げられる。ジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミドは、さらに1個または複数の置換アルキル基を含んでいてもよい。
【0118】
本明細書で使用されている「ジアシルグリセロール」(DAG)という用語は、2つの脂肪アシル鎖、R11およびR12を有する化合物を意味する。DAGは、一般式:
【化14】
【0119】
を有する。
【0120】
R11およびR12は、同一であるか、異なる約4〜約30(好ましくは約8〜約24)の炭素を有しており、かつ、エステル結合によりグリセロールに結合されている。アシル基は飽和であってもよいし、様々な不飽和度の不飽和であってもよい。
【0121】
好ましい実施形態においては、PEG-ジアシルグリセロールコンジュゲートは、PEG-ジラウリルグリセロール(C12)、PEG-ジミリスチルグリセロール(C14、DMG)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16、DPG)またはPEG-ジステアリルグリセロール(C18、DSG)である。他のジアシルグリセロールもまたPEG-ジアシルグリコールコンジュゲートと考えられることは、当業者には容易に十分に理解されよう。本発明での使用に好適なPEG-ジアシルグリセロールコンジュゲート、ならびにそれらの製造方法および使用方法は、米国特許出願公開第2003/0077829号およびPCT特許公開公報第CA02/00669号に記載されている(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0122】
PEG-ジアシルグリセロールコンジュゲートの例としては、PEG-ジラウリルグリセロール(C12)、PEG-ジミリスチルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、PEG-ジステリルグリセロール(C18)の中から選択することができる。PEG-ジアシルグリカミドコンジュゲートの例としては、PEG-ジラウリルグリカミド(C12)、PEG-ジミリスチルグリカミド(C14)、PEG-ジパルミトイル-グリカミド(C16)、およびPEG-ジステリルグリカミド(C18)が挙げられる。
【0123】
別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ポリエチレングリコール-ジアルキルオキシプロピルコンジュゲート (PEG-DAA)を含む。
【0124】
「ジアルキルオキシプロピル」という用語は、2つのアルキル鎖、R11およびR12を有する化合物を意味する。R11およびR12アルキル基は、同一または異なる約4〜約30(好ましくは約8〜約24)個の炭素を含む。アルキル基は飽和であってもよいし、様々な不飽和度を有していてもよい。ジアルキルオキシプロピルは、一般式:
【化15】
【0125】
(式中、R11およびR12アルキル基は、約4〜約30(好ましくは約8〜約24)の炭素を有する、同一または異なるアルキル基である。アルキル基は飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。好適なアルキル基としては、これらに限定されるものではないが、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、パルミチル(C16)、ステアリル(C18)、オレオイル(C18)およびイコシル(C20)が挙げられる。
【0126】
一実施形態においては、R11およびR12は両方とも同一である。すなわち、R11およびR12は両方ともミリスチル(C14)であるか、両方ともステアリル(C18)であるか、両方ともオレオイル(C18)などである。別の実施形態においては、R11およびR12は異なっている。すなわち、R11がミリスチル(C14)であり、R12がステアリル(C18)である。好ましい実施形態においては、PEG-ジアルキルプロピルコンジュゲートは、同一のR11およびR12を含む。
【0127】
さらに別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)を含む。PEG脂質コンジュゲートに有用なホスファチジルエタノールアミンは、約4〜約30(好ましくは約8〜約24)個の炭素の範囲の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含有し得る。好適なホスファチジルエタノールアミンとしては、これらに限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられる。
【0128】
さらに別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)を含む。セラミドはアシル基を1個だけ有する。セラミドは、炭素約4〜約30個(好ましくは約8〜約24個)の範囲の炭素鎖長を持つ飽和または不飽和脂肪酸を有し得る。
【0129】
代替の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、コレステロール誘導体にコンジュゲートされているPEGを含む。「コレステロール誘導体」という用語は、修飾されている(すなわち、それらの置換および/または欠失)コレステロール構造を含有する、あらゆるコレステロール類似体を意味する。本明細書のコレステロール誘導体という用語は、ステロイドホルモンおよび胆汁酸も含んでいる。
【0130】
好ましい一態様においては、PEGは、数平均分子量が約200〜約20,000ダルトン、さらに好ましくは約500〜約10,000ダルトン、よりさらに好ましくは約1,000〜約5,000ダルトン(すなわち、約1,500〜約3,000ダルトン)の範囲のポリエチレングリコールである。特定の一実施形態においては、PEGは、約2,000ダルトンの数平均分子量を有する。別の特定の実施形態においては、PEGは、約750ダルトンの数平均分子量を有する。
【0131】
PEG脂質の具体例としては、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール)-1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(2kDa mPEG-DMPEまたは5kDa mPEG-DMPE);N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(2kDa mPEG-DPPEまたは5kDa mPEG-DPPE);N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(750Da mPEG-DSPE、2kDa mPEG-DSPE、5kDa mPEG-DSPE);およびそれらの製薬上許容可能な塩(すなわちナトリウム塩)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0132】
特定の好ましい実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、PEG-DAGまたはPEGセラミドを有するPEG脂質を含んでいるが、この場合、PEGは約200〜約20,000、好ましくは約500〜約10,000、さらに好ましくは約1,000〜約5,000の分子量を有する。
【0133】
PEG-DAGおよびPEGセラミドのいくつかの具体的実施形態を表1に示す。
【表1】
【0134】
好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、PEG-DSPE、PEG-ジパルミトイルグリカミド(C16)、PEG-セラミド(C16)等、およびそれらの混合物から選択されるPEG脂質を含む。mPEG-DSPE、mPEG-ジパルミトイルグリカミド(C16)、およびmPEG-セラミド(C16)の構造は、次式:
【化16】
【0135】
(式中、(n)は、約5〜約2300、好ましくは約5〜約460の整数である)
の通りである。
【0136】
特定の一実施形態においては、(n)は約45である。
【0137】
さらなる実施形態において、またPEGなどのPAO系ポリマーの代わりとして、1種または複数の有効な非抗原性物質、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシド、および/またはそれらのコポリマーを使用することができる。PEGの代わりに使用することが可能な好適なポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、および誘導体化セルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。同一出願人による米国特許第6,153,655号(その内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)も参照されたい。PAO類(例えばPEG)に関しては、本明細書に記載したような活性化の同様のタイプを用いることができることは当業者には理解されよう。さらに、先に掲げたリストは単なる例示であり、しかも、本明細書に記載の特性を有する高分子材料の全てが候補と考えられることも当業者は理解するであろう。本発明の目的において、「実質的に、または効果的に非抗原性」とは、非毒性であって、哺乳動物で感知され得る免疫原性反応を誘発しないことが当該技術分野で理解される全ての物質を意味する。
【0138】
E. 核酸/オリゴヌクレオチド
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、細胞または組織に各種核酸を送達する目的で使用することができる。核酸はプラスミドおよびオリゴヌクレオチドを包含する。好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、オリゴヌクレオチドの送達に用いられる。
【0139】
本発明をより十分に理解することを目的として、以下の用語を定義する。当業者であれば、「核酸」または「ヌクレオチド」という用語は、特に指定がない限りは、1本鎖または2本鎖のデオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)、ならびに、それらの化学修飾体に対して用いられることは周知である。一般的に、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短いポリヌクレオチドであり、例えば、ヌクレオチド数が約2〜約200、好ましくは約8〜約50、さらに好ましくは約8〜約30、よりさらに好ましくは約8〜約20、あるいは約15〜約28の範囲の長さのものをいう。一般的に、本発明によるオリゴヌクレオチドは、特に指定していない限りは、合成核酸であり、かつ、一本鎖である。本明細書では、「ポリヌクレオチド」および「ポリ核酸」という用語もまた同様に用いる。
【0140】
オリゴヌクレオチド(類似体)は1種類のオリゴヌクレオチドに限定されるのでなく、様々なそのような部分と一緒に機能するように設計されるものであり、リンカーは1種または複数の3'-または5'-末端、通常は、ヌクレオチドのPO4またはSO4基と結合できるものと理解されたい。考えられる核酸分子としては、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾体、糖修飾体、核酸塩基修飾および/またはリン酸骨格修飾体が挙げられる。オリゴヌクレオチドは、天然に存在するホスホロジエステル骨格もしくはホスホロチオエート骨格、または他の全ての修飾骨格類似体群で、例えば、LNA(ロック核酸)、PNA(ペプチド骨格を有する核酸)、CpGオリゴマーなど、例えば、Tides 2002, Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences, May 6-8, 2002, Las Vegas, NV and Oligonucleotide & Peptide Technologies, 18th & 19th November 2003, Hamburg, Germany(この内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に開示されているものを含み得る。
【0141】
本発明として考えられるオリゴヌクレオチドの修飾としては、例えば、オリゴヌクレオチドにさらなる電荷、極性、水素結合、静電相互作用および機能性を持たせるような官能基部分の付加または置換などが挙げられる。かかる修飾としては、2'-位の糖修飾、5-位のピリミジン修飾、8-位のプリン修飾、環外アミンの修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモもしくは5-ヨードウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、塩基対結合(例えば、イソシチジンおよびイソグアニジンなどのイソ塩基類、および同様の組合せなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の範囲内と考えられるオリゴヌクレオチドとしては、3'および/または5'キャップ構造も含まれる。
【0142】
本発明の目的においては、「キャップ構造」とは、オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に組み込まれている化学修飾を意味するものと理解されたい。キャップは5'末端(5'-キャップ)または3'末端(3'-キャップ)に存在し得るか、両末端に存在可能である。5'-キャップの例(これらに限定されるものではない)としては、逆方向塩基脱落残基(部分)、4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド;1,5-アンヒドロへキシトールヌクレオチド;L−ヌクレオチド;α−ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート結合;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環式3',4'-セコ(seco)ヌクレオチド;非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド;非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3'-3'-逆方向ヌクレオチド部分;3'-3'-逆方向塩基脱落部分;3'-2'-逆方向ヌクレオチド部分;3'-2'-逆方向塩基脱落部分;1,4-ブタンジオールリン酸;3'-ホスホルアミデート;リン酸ヘキシル;リン酸アミノヘキシル;3'-リン酸;3'-ホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;または架橋または非架橋リン酸メチル部分が挙げられる。詳細はWO 97/26270(参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。3'-キャップとしては、例えば、4',5'-メチレンヌクレオチド;1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4'-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;5'-アミノアルキルホスフェート;1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート;3-アミノプロピルホスフェート;6-アミノヘキシルホスフェート;1,2-アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;L-ヌクレオチド;α-ヌクレオチド;修飾塩基ヌクレオチド;ホスホロジチオエート;トレオペントフラノシルヌクレオチド;非環状3',4'-セコ(seco)ヌクレオチド;3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5'-5'-逆方向ヌクレオチド部分;5'-5'-逆方向塩基脱落部分;5'-ホスホロアミデート;5'-ホスホロチオエート;1,4-ブタンジオールホス
フェート;5'-アミノ;架橋および/または非架橋5'-ホスホロアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋メチルホスホネート、および5'-メルカプト部分を挙げることができる。また、Beaucage and Iyer, 1993, Tetrahedron 49, 1925(この内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)も参照されたい。
【0143】
ヌクレオシド類似体のリスト(これらに限定されるものではない)は、以下の構造:
【化17】
【0144】
を有する。ヌクレオチド類似体のさらなる例については、Freier & Altmann; Nucl. Acid Res., 1997, 25, 4429-4443およびUhlmann; Curr. Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213(これらの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0145】
本明細書で用いている「アンチセンス」という用語は、遺伝子産物または制御配列をコードしている特定のDNAまたはRNA配列に対して相補的なヌクレオチド配列を意味する。「アンチセンス鎖」という用語は、「センス」鎖に相補的である核酸鎖に関して使用する。細胞代謝の正常な作用において、DNA分子のセンス鎖は、ポリペプチドおよび/または他の遺伝子産物をコードしている鎖である。センス鎖は、メッセンジャーRAN(「mRNA」)転写体(アンチセンス鎖)の合成用鋳型であり、続いて、コードされている任意の遺伝子産物の合成を指図する。アンチセンス核酸分子は、当該分野で公知の任意の方法によって、例えば、相補鎖の合成を行わせるウイルスプロモーターに対して目的の遺伝子を逆方向に結合することによる合成法などにより産生することができる。一旦細胞内に導入されると、この転写鎖は、細胞によって産生された天然の配列と組み合わさり、二本鎖を形成する。次いで、これらの二本鎖はmRANのさらなる転写または翻訳を阻止する。「負」または(−)という記号がアンチセンス鎖を意味することは当該分野においては公知であり、また、「正」または(+)という記号がセンス鎖を意味することも当該分野において公知である。
【0146】
本発明の目的においては、「相補的」とは、核酸配列が別の核酸配列と水素結合を形成することを意味すると理解されたい。相補性パーセントとは、水素結合、すなわち、ワトソン−クリック塩基対を別の核酸配列と形成することができる、核酸分子中の連続残基の割合を示し、すなわち、10個中5、6、7、8、9、10個は50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補である。「完全に相補的な」とは、核酸配列の連続する全ての残基が、別の核酸配列の同数の連続する残基と水素結合を形成することを意味する。
【0147】
本明細書に記載のナノ粒子に有用な核酸(例えば、1種または複数の同一のまたは異なるオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体)としては、約5〜約1000の核酸、好ましくは相対的に短いポリヌクレオチド、例えば、好ましくは約8〜約50のヌクレオチド長のサイズ範囲のもの(例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30)を挙げることができる。
【0148】
本明細書に記載のナノ粒子内に封入されている有用な核酸の一態様では、天然のホスホロジエステル骨格もしくはホスホロチオエート骨格または別の修飾骨格類似体を含むオリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシヌクレオチドとして、次のものが挙げられる:
LNA(ロック核酸);
PNA(ペプチド骨格を有する核酸);
短鎖干渉RNA(siRNA);
マイクロRNA(miRNA);
ペプチド骨格を有する核酸(PNA);
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO);
トリシクロ−DNA;
デコイODN(2本鎖オリゴヌクレオチド);
触媒RNA配列(RNAi);
リボザイム;
アプタマー;
シュピーゲルマー(spiegelmer)(L-配座オリゴヌクレオチド);
CpGオリゴマーなど、例えば、下記で開示されているもの:
Tides 2002, Oligonucleotide and Peptide Technology Conferences, May 6-8, 2002, Las Vegas, NV and Oligonucleotide & Peptide Technologies, 18th & 19th November 2003, Hamburg, Germany (その内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする)。
【0149】
ナノ粒子内に封入されている核酸の別の態様においては、オリゴヌクレオチドは、場合により、下記の表2に列記されているものをはじめとする、公知の任意の好適なヌクレオチド類似体および誘導体を含むことができる。
【表2】
【0150】
好ましい一態様においては、ナノ粒子中に封入されている標的オリゴヌクレオチドとしては、発癌遺伝子、プロ血管形成経路遺伝子、プロ細胞増殖経路遺伝子、ウイルス性伝染因子遺伝子およびプロ炎症性経路遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子内に封入されているオリゴヌクレオチドは、腫瘍細胞の標的化に、あるいは、腫瘍細胞に関連する遺伝子またはタンパク質および/または抗がん剤に対する腫瘍細胞の耐性のダウンレギュレーションに関与する。例えば、本発明には、癌に関連する当該分野で公知の任意の細胞性タンパク質(例えばBCL-2)をダウンレギュレートするためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することができる。2004年4月9日出願の米国特許出願第10/822,205号(その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。好ましい治療用オリゴヌクレオチドのリスト(これらに限定されるものではない)としては、アンチセンスHIF1-αオリゴヌクレオチド、アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチド、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド、アンチセンスβ-カテニンオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスBcl-2オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0152】
さらに好ましくは、本明細書に記載の本発明によるオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格およびLNAを含む。
【0153】
好ましい一実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンスサバイビンLNA、アンチセンスErbB3 LNA、またはアンチセンスHIF1-α LNAであってもよい。
【0154】
別の好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、例えば、ジェナセンス(別名オブリメルセンナトリウム、Genta Inc.製(Berkeley Heights, NJ))と同一または実質的に同様のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。ジェナセンスは18量体のホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド、TCTCCCAGCGTGCGCCAT(配列番号4)であり、ヒトbcl-2 mRNAの開始配列の最初の6個のコドンと相補的である(ヒトbcl-2 mRNAは当該分野で公知であり、例えば、米国特許第6,414,134号(これは参照により本明細書に組み入れるものとする)の配列番号19として記載されている)。米国食品医薬品局(FDA)は2000年8月にジェナセンスをオーファンドラッグに指定している。
【0155】
考えられる好ましい実施形態としては、次のものが挙げられる:
(i)アンチセンスサバイビンLNA、Oligo-1(配列番号1)
5'-mCTmCAatccatggmCAGc-3'
ここで、大文字はLNAを表し、mCはメチル化シトシンを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;
(ii)アンチセンスErbB3 LNA、Oligo-2(配列番号2)
5'-TAGcctgtcacttmCTmC-3'
ここで、大文字はLNAを表し、mCはメチル化シトシンを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;
(iii)ジェナセンス、Oligo-4(配列番号4)
5'-tctcccagcgtgcgcccat-3'
ここで、小文字はDNAを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;
(v)アンチセンスHIF-1α LNA、Oligo-5(配列番号5)
5'-TGGcaagcatccTGTa-3'
ここで、大文字はLNAを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである;および、
(vi)アンチセンスBcl2 siRNA:
センス 5'-gcaugcggccucuguuugadTdT-3' (配列番号6)
アンチセンス 3'-dTdTcguacgccggagacaaacu-5' (配列番号7)
ここで、dTはDNAを表す。
【0156】
LNAは、下に示すような2'-O、4'-C メチレンビシクロヌクレオチド:
【化18】
【0157】
を含む。
【0158】
スクランブルアンチセンスErbB3 LNA、Oligo-3(配列番号3)は、次の配列を有する:
5'-TAGcttgtcccattmCTmC-3'
ここで、大文字はLNAを表し、mCはメチル化シトシンを表し、ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである。
【0159】
サバイビンLNAに関する詳細な記述は、名称が「LNA Oligonucleotides and the Treatment of Cancer」の米国特許出願公開第2006/0154888号、および名称が「Oligomeric Compounds for the Modulation Survivin Expression」の米国特許出願公開第2005/0014712号に開示されている(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)ので参照されたい。さらに、名称が「Oligomeric Compounds for the Modulation HIF-1 Alpha Expression」の米国特許出願公開第2004/0096848号、名称が「Potent LNA Oligonucleotides for Inhibition of HIF-1A Expression」の同2006/0252721号(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)も参照されたい。また、それらの内容はその全体を参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0160】
好適な標的遺伝子の例は、PCT公開公報第WO 03/74654号、PCT/US03/05028、および米国特許出願第2007/0042983号(それらの内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0161】
F. 標的基
場合により/好ましくは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、さらに、特定細胞または組織タイプに対する標的リガンドを含む。標的基は、リンカー分子、例えば、アミド、アミド、カルボニル、エステル、ペプチド、ジスルフィド、シラン、ヌクレオシド、脱塩基ヌクレオシド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、リン酸エステル、ホスホロアミデート、チオホスフェート、リン酸アルキル、マレイミジルリンカーまたは感光性リンカーを用いて、ナノ粒子組成物の任意の成分(好ましくは、融合性脂質およびPEG脂質)に結合することができる。不必要な実験を実施することなく、ナノ粒子組成物の任意の成分へ標的基をコンジュゲートさせるためには、当該技術分野で公知の任意の技術を使用することができる。
【0162】
例えば、標的剤をPEG脂質のポリマー部分に結合させ、in vivoで標的領域へナノ粒子を導くことができる。本明細書に記載のナノ粒子の標的送達は、治療用核酸を封入しているナノ粒子の細胞内取り込みを促進し、治療効果をより良好なものにする。特定の態様では、一部の細胞透過ペプチドは、腫瘍部位への標的化送達のために、様々な標的ペプチドと置換することができる。
【0163】
本発明の好ましい一態様においては、標的部分、例えば、1本鎖抗体(SCA)または1本鎖抗原結合抗体、モノクローナル抗体、RGDペプチドおよびセレクチンなどの細胞接着ペプチド、TAT、ペネトラチンおよび(Arg)9などの細胞透過ペプチド(CPP類)、受容体リガンド、標的炭水化物分子またはレクチンなどは、ナノ粒子を標的化領域へ特異的に方向付けすることができる。J Pharm Sci. 2006 Sep; 95(9):1856-72 Cell adhesion molecules for targeted drug delivery (その内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0164】
好ましい標的部分は、1本鎖抗体(SCA)または抗体の1本鎖可変断片(sFv)である。SCAは、標的腫瘍細胞の特異的分子に結合またはそれを認識できる抗体のドメインを含有する。抗原結合部位を維持すること以外に、PEG-脂質にコンジュゲートされているSCAは抗原性を低下させ、血流中のSCAの半減期を長くすることができる。
【0165】
「1本鎖抗体」(SCA)、「1本鎖抗原結合分子または抗体」または「1本鎖Fv」(sFv)という用語は、同じ意味で用いられる。1本鎖抗体は抗原に対する結合親和性を有する。1本鎖抗体(SCA)または1本鎖Fvsは、幾通りかの方法で構築可能であり、これまで構築されてきている。1本鎖抗原結合タンパク質に関する理論および産生の説明は、同一出願人による米国特許出願第10/915,069号および米国特許第6,824,782号(これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)で確認される。
【0166】
一般的に、SCAまたはFvドメインは、文献で26-10、MOPC 315、741F8、520C9、McPC 603、D1.3、マウスphOx、ヒトphOx、RFL3.8 sTCR、1A6、Se155-4、18-2-3、4-4-20、7A4-1、B6.2、CC49、3C2、2c、MA-15C5/K12GO、Oxなどのような略語により知られているモノクローナル抗体の中から選択することができる (Huston, J. S.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988); Huston, J. S. ら, SIM News 38(4) (Supp):11 (1988); McCartney, J.ら, ICSU Short Reports 10:114 (1990); McCartney, J. E.ら, unpublished results (1990); Nedelman, M. A. ら, J. Nuclear Med. 32 (Supp. ):1005 (1991); Huston, J. S.ら, In: Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications, Part B, J. J. Langone編, Methods in Enzymology 203:46-88 (1991); Huston, J. S.ら, In: Advances in the Applications of Monoclonal Antibodies in Clinical Oncology, Epenetos, A. A. (編), London, Chapman & Hall (1993); Bird, R. E.ら, Science 242:423-426 (1988);Bedzyk, W. D.ら, J. Biol. Chem. 265:18615-18620 (1990); Colcher, D.ら, J. Nat. Cancer Inst. 82:1191-1197 (1990); Gibbs, R. A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4001-4004 (1991); Milenic, D. E.ら, Cancer Research 51:6363-6371 (1991); Pantoliano, M. W.ら, Biochemistry 30:10117-10125 (1991); Chaudhary, V. K.ら, Nature 339:394-397 (1989);Chaudhary, V. K.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1066-1070 (1990); Batra, J. K.ら, Biochem. Biophys. Res. Comm. 171:1-6 (1990); Batra, J. K.ら, J. Biol. Chem. 265:15198-15202 (1990); Chaudhary, V. K.ら, Proc. Natl. Acad Sci. USA 87:9491-9494 (1990); Batra, J. K.ら, Mol. Cell. Biol. 11:2200-2205 (1991);Brinkmann, U.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8616-8620 (1991); Seetharam, S. ら, J. Biol. Chem. 266:17376-17381 (1991); Brinkmann, U.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3075-3079 (1992); Glockshuber, R.ら, Biochemistry 29:1362-1367 (1990); Skerra, A.ら, Bio/Technol. 9:273-278 (1991); Pack, P.ら, Biochemistry 31:1579-1534 (1992); Clackson, T.ら, Nature 352:624-628 (1991);Marks, J. D.ら, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991); Iverson, B. L.ら, Science 249:659-662 (1990); Roberts, V. A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6654-6658 (1990); Condra, J. H.ら, J. Biol. Chem. 265:2292-2295 (1990); Laroche, Y.ら, J. Biol. Chem. 266:16343-16349 (1991); Holvoet, P.ら, J. Biol. Chem. 266:19717-19724 (1991); Anand, N. N.ら, J. Biol. Chem. 266:21874-21879 (1991); Fuchs, P.ら, Biol Technol. 9:1369-1372 (1991); Breitling, F.ら, Gene 104:104-153 (1991); Seehaus, T.ら, Gene 114:235-237 (1992);Takkinen, K.ら, Protein Engng. 4:837-841 (1991); Dreher, M. L.ら, J. Immunol. Methods 139:197-205 (1991); Mottez, E.ら, Eur. J. Immunol. 21:467-471 (1991); Traunecker, A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8646-8650 (1991); Traunecker, A.ら, EMBO J. 10:3655-3659 (1991); Hoo, W. F. S.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4759-4763 (1993)を参照されたい)。前述の各刊行物は、参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0167】
標的基の例(これらに限定されるものではない)としては、血管内皮細胞増殖因子、FGF2、ソマトスタチンおよびソマトスタチン類似体、トランスフェリン、メラノトロピン、ApoEおよびApoEペプチド、フォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand's Factor)およびフォン・ヴィルブランド因子ペプチド、アデノウイルス線維タンパク質およびアデノウイルス線維タンパク質ペプチド、PD1およびPD1ペプチド、EGFおよびEGFペプチド、RGDペプチド、葉酸塩などが挙げられる。当業者により認められている他の任意の標的剤も、本明細書に記載のナノ粒子に用いることができる。
【0168】
好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子に有用である標的剤としては、1本鎖抗体(SCA)、RGDペプチド、セレクチン、TAT、ペネトラチン、(Arg)9、葉酸などが挙げられ、これらの薬剤の好ましい構造物の一部は次のとおりである:
C-TAT:(配列番号8) CYGRKKRRQRRR;
C-(Arg)9:(配列番号9) CRRRRRRRRR;
RGDは、直鎖状または環状の:
【化19】
【0169】
であり;
葉酸は、
【化20】
【0170】
の残基であり;
Arg9は、CRRRRRRRRRなどのコンジューゲートのためのシステインを含み、TATは、CYGRKKRRQRRRC(配列番号10)などのペプチド末端に追加システインを加えることができる。
【0171】
本発明の目的においては、明細書および図面中で使用している略語は以下の構造を表す:
(i) C-diTAT (配列番号11) = CYGRKKRRQRRRYGRKKRRQRRR-NH2;
(ii) Linear RGD (配列番号12) = RGDC;
(iii) Cyclic RGD (配列番号13) = c-RGDFC;
(iv) RGD-TAT (配列番号14) = CYGRKKRRQRRRGGGRGDS-NH2 ;および、
(v) Arg9 (配列番号15)。
【0172】
あるいは、標的基は、糖類および炭水化物群、例えば、ガラクトース、ガラクトサミンおよびN‐アセチルガラクトサミン;ホルモン群、例えば、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、グルココルチゾン、アドレナリン、インシュリン、グルカゴン、コルチゾール、ビタミンD、甲状腺ホルモン、レチノイン酸および成長ホルモン;増殖因子、例えば、VEGF、EGF、NGFおよびPDGF;神経伝達物質、例えば、GABA、グルタメート、アセチルコリン;NOGO;イノスチトールトリホスフェート;エピネフリン;ノルエピネフリン;一酸化窒素、ペプチド、ビタミン群、例えば、葉酸およびピリドキシン、in vivoまたはin vitroでの受容体と相互作用することができる薬剤、抗体および他の分子が挙げられる。
【0173】
G. 式(I)で表されるカチオン性脂質の調製
一般に、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質の調製方法は、アミン含有コレステロール(官能化コレステロール)を1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させ、グアニジニウム部分を得ることを含む。コレステロールに結合されているアミンは第一級および/または第二級アミンであってもよく、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン中のアミンは、非置換であっても置換されていてもよい。
【0174】
本明細書に記載のコレステリルカチオン性脂質の調製の一例を図1に示す。N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミンの末端第一級アミンはBoc基で選択的に保護し、その後、ビス-N-Boc-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン(化合物2)の第二級アミンをエポキシドと反応させて、求核剤、OHを含有する化合物2を調製した。活性化コレステロールカーボネート(例えば、コレステリルクロロホルメート、コレステリルNHSカーボネート、またはコレステリルPNPカーボネート)は、求核性OHと反応させ、化合物3を得ることができる。酸性条件でBoc部分を脱保護することにより、アミン含有コレステロール(化合物4)を調製した。化合物4のアミンを1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させ、グアニジニウム部分を含有するコレステリルカチオン性脂質(化合物5)を得た。
【0175】
別の実施形態においては、アミン含有化合物のコレステロールへの結合は、塩基の存在下で、標準の有機合成技術を用いて、当業者に公知のカップリング剤、例えば、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、ジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハライド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロホスフェートを使用して行なうことができる。
【0176】
あるいは、コレステロールまたはアミン含有化合物が脱離基(例えば、NHS、PNPまたはクロロホルメート)で活性化される場合、その反応はカップリング剤を用いずに塩基条件下で行なうことができる。
【0177】
一般に、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質は、好ましくは、DMAPまたはDIEAなどの塩基の存在下で、活性化コレステロールをアミン含有求核試薬(例えば、化合物2)と反応させることにより調製される。好ましくは、この反応は不活性溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、DMFまたはそれらの混合物中で実施する。またこの反応は、約-4℃〜約70℃(例えば、-4℃〜約50℃)の温度で、DMAP、DIEA、ピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で行うのが好ましい。好ましい一実施形態においては、この反応は、約0℃〜約25℃の温度、または0℃〜室温の温度で行う。
【0178】
アミン含有化合物(例えば化合物3)からの保護基の除去は、強酸(例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、HCl、硫酸など)を用いて行なうことができるか、あるいは触媒水素化、ラジカル反応などにより行うことができる。一実施形態においては、Boc基の脱保護は、ジオキサン中のHCl溶液を用いて行う。この脱保護反応は、約-4℃〜約50℃の温度で行なうことができる。好ましくは、この反応は、約0℃〜約25℃または室温の温度で行なわれる。別の実施形態においては、Boc基の脱保護は室温で行う。
【0179】
アミンのグアニジン基への変換は、不活性溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、DMFまたはそれらの混合物中で、コレステロールに結合されているアミン(例えば、化合物4のアミン)を1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンと反応させることにより行う。他の試薬、例えば、N-BOC-1H-ピラゾール-1-カルボキサミジンまたはN,N'-ジ-(tert-ブトキシカルボニル)チオ尿素およびカップリング剤も、アミンのグアニジン部分への変換に使用することができる。この反応では、当業者に公知のカップリング剤、例えば、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、ジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハライド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスフィン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロホスフェートを使用することができる。この反応は、約-4℃〜約50℃の温度で、DMAP、DIEA、ピリジン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で行なうのが好ましい。好ましい一実施形態においては、この反応は、約0℃〜約25℃または室温の温度で行なう。
【0180】
H. ナノ粒子組成物/製剤
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、式(I)で表されるカチオン性脂質、融合性脂質およびPEG脂質を含有する。
【0181】
好ましい一態様においては、ナノ粒子組成物はコレステロールを含む。
【0182】
本発明のさらなる態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、さらなる公知のカチオン性脂質を含有していてもよい。また、異なる融合性脂質(非カチオン性脂質)の混合物および/または異なるPEG脂質の混合物を含有するナノ粒子組成物も考えられる。
【0183】
別の態様においては、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質(医薬担体)の約10%〜約99.9%の範囲のモル比で、本明細書に記載の式(I)で表されるカチオン性脂質を含有する。
【0184】
カチオン性脂質成分は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約2%〜約60%、約5%〜約50%、約10%〜約45%、約15%〜約25%、または約30%〜約40%の範囲であってもよい。
【0185】
特定の一実施形態においては、カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約15〜約25%(すなわち15、16、17、18、19、20、21、22、23,24または25%)の量で存在する。
【0186】
本明細書に記載のナノ粒子組成物の別の態様においては、本組成物は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約20%〜約85%、約25%〜約85%、約60%〜約80%(例えば65、75、78または80%)のモル比で、融合性/非カチオン性脂質(コレステロールおよび/または非コレステロール系の融合性脂質を含む)を含有する。特定の一実施形態においては、全融合性/非カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約80%である。
【0187】
また別の態様においては、非コレステロール系融合性/非カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約25〜約78%(25、35、47、60または78%)、あるいは約60〜約78%のモル比で存在する。特定の一実施形態においては、非コレステロール系融合性/非カチオン性脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約60%である。
【0188】
また別の態様においては、ナノ粒子組成物は、非コレステロールの融合性脂質に加えて、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約0%〜約60%、約10%〜約60%、または約20%〜約50%(例えば、20、30、40または50%)のモル比で、コレステロールを含む。特定の一実施形態においては、コレステロールは、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約20%である。
【0189】
さらに本発明の別の態様においては、ナノ粒子組成物中に含有されているPEG脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約0.5%〜約20%、約1.5%〜約18%のモル比の範囲である。ナノ粒子組成物の一実施形態においては、PEG脂質は、全脂質の約2%〜約10%(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10%)のモル比で含まれる。例えば、全PEG脂質は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約2%である。
【0190】
I. ナノ粒子の調製
本明細書に記載のナノ粒子は、不要な実験を行うことなく、任意の公知の方法により調製することができる。例えば、ナノ粒子は、第1の容器に水溶液中の核酸(例えばオリゴヌクレオチド)(または比較研究に関しては核酸を含まない水溶液)を供給し、第2の容器に本明細書に記載のナノ粒子組成物を含有する有機脂質溶液を供給し、前記有機脂質溶液が前記水溶液と混ざるように水溶液を有機脂質溶液と混合し、核酸が封入されているナノ粒子を得ることにより調製することができる。この方法の詳細は、米国特許出願公開第2004/0142025号(その内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする)に記載されている。
【0191】
あるいは、本明細書に記載のナノ粒子は、例えば、界面活性剤透析法(detergent dialysis method)または改良逆相法(modified reverse-phase method)(これは有機溶媒を利用し、成分を混合する間に単一相を得るもの)をはじめとする、当技術分野で公知の方法を用いることにより調製することができる。界面活性剤透析法においては、核酸(すなわち、LNA、siRNAなど)をカチオン性脂質の界面活性剤溶液と接触させ、コーティングを施した核酸錯体を形成させる。
【0192】
本発明の一実施形態においては、カチオン性脂質および核酸(例えばオリゴヌクレオチド)を、約1:1〜約20:1、約1:1〜約12:1の電荷比、さらに好ましくは約2:1〜約6:1の比を得るように組み合わせる。あるいは、ナノ粒子組成物の窒素とリン酸塩の比(N/P)は、約2:1〜約5:1(すなわち、2.5:1)の範囲である。
【0193】
別の実施形態においては、本明細書に記載のナノ粒子は、複式ポンプシステムを使用することにより調製することができる。一般に、この方法は、第1の容器に核酸を含有する水溶液を、また、第2の容器にナノ粒子組成物を含有する脂質溶液を供給することを含む。これらの2種類の溶液は複式ポンプシステムを使用して混合し、ナノ粒子を得る。次に、得られた混合溶液を水性バッファーで希釈し、形成されたナノ粒子を透析により精製および/または単離することができる。ナノ粒子は、さらに、0.22μmのフィルターによる濾過で殺菌処理することができる。
【0194】
核酸を含有するナノ粒子は、直径が約5〜約300nmの範囲である。好ましくは、ナノ粒子は、動的光散乱技術(DLS)を用いて測定した場合に、約150nm未満の平均直径(例えば、約50〜150nm)、さらに好ましくは約100nm未満の直径を有する。大部分のナノ粒子は、約30〜100nm(例えば、59.5、66、68、76、80、93、96nm)、好ましくは約60〜約95nmの平均直径を有する。TEMなどの当該分野で公知の他の技術を使用する測定では、DLS技術と比較した場合、半分まで減少した平均直径値が得られることがあることは、当業者には十分に理解されるであろう。本発明のナノ粒子は、多分散性により示されるように、大きさが実質的に均一である。
【0195】
場合により、ナノ粒子は当技術分野で公知の任意の方法により大きさを合わせることができる。サイズは、当業者が所望する通りに調節することができる。サイズ決定は、ナノ粒子サイズの所望のサイズ範囲と比較的狭い分布が得られるように行なうことができる。ナノ粒子を所望の大きさにサイズ決定するには、幾通りかの技術を利用することが可能である。例えば、米国特許第4,737,323号(これらの内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)を参照されたい。
【0196】
本発明は、核酸(例えば、LNAまたはsiRNA)が脂質多重ラメラ構造(すなわち脂質二分子膜)で封入されており、分解から保護されるような、血清安定性のあるナノ粒子の調製方法を提供する。本明細書に記載のナノ粒子は、水溶液中で安定している。ナノ粒子に含まれている核酸は、体液中に存在するヌクレアーゼから保護される。
【0197】
さらに、本発明により調製されるナノ粒子は、好ましくは、生理学的pHで中性または正に帯電している。
【0198】
本明細書に記載のナノ粒子組成物を使用して調製されるナノ粒子またはナノ粒子錯体は、次のものを含む:(i)式(I)で表されるカチオン性脂質;(ii)中性脂質/融合性脂質;(iii)PEG脂質、および、(iv)オリゴヌクレオチドなどの核酸。
【0199】
一実施形態においては、本ナノ粒子組成物は、
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール;または、
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール
の混合物を含む。
【0200】
さらなるナノ粒子組成物は、当該分野で公知のカチオン性脂質を含有する組成物を変化させることにより調製することができる。当該分野で公知のカチオン性脂質を含有するナノ粒子組成物は、当該分野で公知のカチオン性脂質を式(I)で表されるカチオン性脂質と置き換え、かつ/または式(I)で表されるカチオン性脂質を加えることにより変化させることができる。米国特許出願公開第2008/0020058号(それらの内容は参照により本明細書に組み入れるものとする)の表IVに記載されている当該分野で公知の組成物を参照されたい。
【0201】
ナノ粒子を調製するためのナノ粒子組成物のリスト(これらに限定されるものではない)を表3に示す。
【表3】
【0202】
一実施形態においては、ナノ粒子中のカチオン性脂質(化合物5):DOPE:コレステロール:PEG-DSPE:C16mPEG-セラミドのモル比は、それぞれ、ナノ粒子組成物(試料番号8)中に存在する全脂質に対して、約18%:60%:20%:1%:1%のモル比である。
【0203】
別の実施形態においては、ナノ粒子は、カチオン性脂質(化合物5)、DOPE、コレステロールおよびC16mPEG-セラミドを、それぞれ、ナノ粒子組成物(試料番号7)中に存在する全脂質に対して、約17%:60%:20%:3%のモル比で含有する。
【0204】
これらのナノ粒子組成物は、好ましくは、次の構造:
【化21】
【0205】
を有するカチオン性脂質を含有する。
【0206】
本明細書に使用しているモル比は、ナノ粒子組成物中に存在する全脂質に対する量を意味する。
【0207】
J. 治療方法
本明細書に記載のナノ粒子は、細胞または組織における標的遺伝子発現のレベルに関与または応答する、あらゆる特徴、疾患または症状を単独か、他の治療と組み合わせて、予防、抑制、低減または治療するための治療で用いることができる。本方法は、その必要のある哺乳動物に本明細書に記載のナノ粒子を投与することを含む。
【0208】
本発明の一態様は、in vivoおよび/またはin vitroで哺乳動物細胞にオリゴヌクレオチドなどの治療用核酸を導入または送達する方法を提供する。本発明による方法は、細胞を本明細書に記載のナノ粒子と接触させることを含む。本送達は、in vivoで適切な医薬組成物の一部として、あるいは直接的に細胞へex vivo環境で行うことができる。
【0209】
別の態様においては、本発明は哺乳動物にオリゴヌクレオチドを導入するのに有用である。本明細書に記載のナノ粒子は、哺乳動物(好ましくはヒト)に投与することができる。
【0210】
さらに別の態様では、本発明は、好ましくは、哺乳動物の細胞または組織における遺伝子発現を阻害またはダウンレギュレート(またはモジュレート)する方法を提供する。遺伝子発現のダウンレギュレーションまたは阻害は、in vivo、ex vivoおよび/またはin vitroで達成することができる。本方法は、ヒトの細胞または組織を本明細書に記載の核酸を封入しているナノ粒子と接触させること、またはその必要性のある哺乳動物にナノ粒子を投与することを含む。接触が生じる際、mRNAまたはタンパク質レベルでの遺伝子発現の阻害またはダウンレギュレーションの成功は、in vivo、ex vivoまたはin vitroにおいて、本明細書に記載のナノ粒子が存在しない条件で認められるものと比較して、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%以上(例えば、少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%)実現される場合に起こるとみなされる。
【0211】
本発明の目的においては、「阻害」または「ダウンレギュレート」は、1種または複数のタンパク質サブユニットをコードしている標的遺伝子の発現、すなわちRNAもしくは等価RNAのレベル、またはErbB3、HIF-1a、サバイビンおよびBCL2などの1種または複数のタンパク質サブユニットの活性が、本明細書に記載のナノ粒子の非存在下で観察される場合よりも低減されることを意味すると理解されたい。
【0212】
好ましい一実施形態においては、標的遺伝子は、例えば、発癌遺伝子、プロ血管形成経路遺伝子、プロ細胞増殖経路遺伝子、ウイルス性伝染因子遺伝子およびプロ炎症性経路遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0213】
好ましくは、標的遺伝子の遺伝子発現は、癌細胞または組織、例えば、脳腫瘍、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、口腔癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌または子宮頚癌の細胞で阻害される。癌細胞または組織は、下記の1種または複数であり得る:固形腫瘍、リンパ腫、肺小細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、膵癌、膠芽腫、卵巣癌、胃癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、卵巣癌、脳腫瘍、KB癌、肺癌、結腸癌、表皮癌など。
【0214】
特定の一実施形態においては、本明細書に記載の方法によるナノ粒子は、例えば、アンチセンスbcl-2オリゴヌクレオチド、アンチセンスHIF-1αオリゴヌクレオチド、アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを含む。
【0215】
本発明で考えられる治療法は、前述のナノ粒子中に封入された核酸を使用する。一実施形態では、8つ以上の連続するアンチセンスヌクレオチドを含有する治療用ヌクレオチドを治療で用いることができる。
【0216】
特定の一治療法においては、オリゴヌクレオチド(配列番号1、配列番号2、配列番号4および配列番号5)を含むナノ粒子を使用することができる。
【0217】
あるいは、哺乳動物を治療する方法も提供する。本方法は、それが必要な患者に、本明細書に記載のナノ粒子を含有する医薬組成物の有効量を投与することを含む。本方法の効果は、治療する症状に対する核酸の効果によって決まる。本発明は、哺乳動物の各種の病状の治療方法を提供する。本方法は、こうした治療が必要な哺乳動物に、封入された治療用核酸を含有するナノ粒子の有効量を投与することを含む。本明細書に記載のナノ粒子は、とりわけ、例えば、癌、炎症性疾患および自己免疫疾患など(ただし、これらに限定されるものではない)の疾患の治療に有用である。
【0218】
一実施形態においては、さらに、悪性腫瘍または癌に罹患している患者の治療方法であって、その必要性のある患者に本明細書に記載のナノ粒子を含有する医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法も提供する。治療する癌は、下記の1種または複数であり得る:固形腫瘍、リンパ腫、肺小細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、膵癌、膠芽腫、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、脳腫瘍、KB癌、肺癌、結腸癌、表皮癌など。
【0219】
ナノ粒子は、標的遺伝子の遺伝子発現をダウンレギュレートすることにより、哺乳動物における腫瘍疾患の治療、全身腫瘍組織量の低減、新生物転移の防止、および腫瘍再発/新生物増殖の防止に有用である。例えば、ナノ粒子は転移性疾患(すなわち、肝臓への転移を伴う癌)の治療に有用である。
【0220】
さらに別の態様では、本発明は、in vivoまたはin vitroにおける癌細胞の成長または増殖を阻害する方法を提供する。本方法は、本明細書に記載のナノ粒子と癌細胞とを接触させることを含む。一実施形態においては、本発明は、細胞がErbB3遺伝子を発現する、in vivoまたはin vitroにおける癌の成長を阻害する方法を提供する。癌細胞は、本明細書に記載のなナノ粒子から放出されるアンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドと接触する。ヒトErbB3遺伝子から発現されるmRNAに相補的なアンチセンス鎖は癌細胞の増殖を阻害し、リンパ腫細胞または白血病細胞などの癌細胞におけるErbB3遺伝子の発現を低減する。あるいは、本発明は、癌細胞のアポトーシスをモジュレートする方法を提供する。本方法は、細胞を本明細書に記載のナノ粒子と接触させることを含む。
【0221】
さらに別の態様においては、本方法は、in vivoまたはin vitroにおいて、化学療法剤に対する癌細胞または組織の感受性を増強する方法も提供する。特定の一態様においては、本方法は、本明細書に記載のナノ粒子中に封入されているオリゴヌクレオチド(例えば、LNAを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド)を癌細胞に導入し、癌細胞または組織中の遺伝子(例えば、サバイビン、HIF-1またはErbB3)の発現の低減することを含み、この場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドはmRNAと結合し、遺伝子発現を低減する。
【0222】
さらに別の態様においてはは、in vivoまたはin vitroにおける腫瘍細胞の死滅方法を提供する。本方法は、腫瘍細胞へ本明細書に記載のナノ粒子を導入し、ErbB3遺伝子などの遺伝子発現を低減させることと、腫瘍細胞の一部を死滅させるのに十分な量の少なくとも1種の化学療法剤を腫瘍細胞と接触させることを含む。したがって、この死滅される腫瘍細胞の部分は、本明細書に記載のナノ粒子の非存在下で同量の化学療法剤により死滅される部分と比べて大きくなり得る。
【0223】
本発明のさらなる態様においては、化学療法剤は、本明細書に記載のナノ粒子を用いる方法で、併用して、同時にまたは連続して使用することができる。本明細書に記載のナノ粒子は、化学療法剤よりも前に、または化学療法剤と同時に、または化学療法剤の投与後に投与することができる。
【0224】
あるいは、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、哺乳動物に、好ましくは負電荷または中性電荷を有する製薬上活性のある化合物を送達するために使用することができる。製薬上活性化合物を封入されたナノ粒子は、それの必要のある哺乳動物に投与することができる。製薬上活性のある化合物は、分子量の小さい分子を含む。一般的に、製薬上活性のある化合物は、約1,500ダルトン未満(すなわち1,000ダルトン未満)の分子量を有する。
【0225】
さらなる実施形態においては、本明細書に記載の化合物は、核酸、製薬上活性のある薬剤、またはそれらの組み合わせを送達するために使用することができる。
【0226】
またさらなる実施形態においては、治療に関係するナノ粒子は、1種または複数の治療用核酸(同一のまたは異なるもの、例えば、LNAを含有する同一のまたは異なるオリゴヌクレオチド)と製薬上活性のある活性剤との混合物を相乗効果のある施用を目的として含有していてもよい。
【0227】
K. ナノ粒子の医薬組成物/製剤
本明細書に記載のナノ粒子を含む医薬組成物/製剤は、活性化合物を製薬上使用可能な製剤にすることを容易にする添加剤および補助剤を含む1種または複数の生理学上許容可能な担体と共に製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路により、すなわち、局所療法または全身療法が治療されるかどうかにより決定される。
【0228】
好適な剤形は、一つには、使用または投与経路、例えば経口経路、経皮経路または注射経路により決まる。適切な製剤の調製において当技術分野で公知の検討要因としては、毒性、および本組成物または製剤がその効果を及ぼすのを妨げると思われるあらゆる障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0229】
本明細書に記載のナノ粒子の医薬組成物の投与は、経口投与、経肺投与、局所投与(例えば、表皮投与、経皮投与、眼内投与、ならびに膣内投与および直腸内投与を含む粘膜投与)、または非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、腹腔内投与または筋肉注射または静注であってもよい。
【0230】
好ましい一実施形態においては、治療用オリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子は、静脈内投与(i.v.)または腹腔内投与(i.p.)投与されるか、ボーラス注入される。本発明の多くの態様においては、非経口経路が好ましい。
【0231】
例えば、静脈内注射、筋肉内注射および皮下注射など(これらに限定されるものではない)の注射に関しては、本発明のナノ粒子は、水溶液中で、好ましくは生理食塩水緩衝液などの生理学上適合するバッファー中で、あるいは極性溶媒、例えばピロリドンまたはジメチルスルホキシド(これらに限定されるものではない)中で製剤化することができる。
【0232】
また、ナノ粒子はボーラス注入または持続注入用に製剤化することもできる。注射用の製剤は、単位剤形中で(例えば、アンプルまたは多回投与容器中で)提供することができる。有用な組成物は、これらに限定ものではないが、懸濁液、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションが挙げられ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの添加物を含有していてもよい。非経口投与用医薬組成物は、水溶性形態の水溶液を含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘性を調節する物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有していてもよい。場合によっては、懸濁液は、好適な安定剤および/または溶液中のナノ粒子の濃度を高める薬剤を含有していてもよい。あるいは、ナノ粒子は、好適なビヒクル(例えば、発熱性物質を含まない滅菌済みの水)との使用前の構成を目的とした粉末形態であってもよい。
【0233】
経口投与に関しては、本明細書に記載のナノ粒子は、当技術分野で公知の製薬上許容可能な担体とナノ粒子を組み合わせることにより製剤化することができる。かかる担体は、本発明のナノ粒子を、錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ジェル、シロップ、ペースト、スラリー、溶液、懸濁液、濃縮溶液、および患者の飲料水で希釈するための懸濁液、患者の食事での希釈するためのプレミックスなどとして、患者による経口摂取用に製剤することができるものである。経口用の医薬品は、固体添加物を用いて、得られた混合物を随意的に粉砕し、他の適切な助剤を必要に応じて加えた後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣剤の核を得ることにより調製することができる。有用な添加物は、特に、増量剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールをはじめとする糖類、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプンおよびジャガイモデンプン、および他の材料、例えばゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、カルボキシ−メチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸などの崩壊剤を添加することができる。また、アルギン酸ナトリウムなどの塩も使用することができる。
【0234】
吸入による投与に関しては、本発明のナノ粒子は、加圧容器またはネブライザーおよび適切な噴射剤を用いてエアロゾルスプレーの形態で送達するのが便利である。
【0235】
またナノ粒子は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの慣用の坐剤基剤を用いて、坐剤または停留浣腸剤などの直腸用組成物として製剤化することもできる。
【0236】
これまでに記載した製剤の他に、ナノ粒子はデポ製剤としても製剤化してもよい。かかる長期作用型製剤は、埋め込みによって(例えば、皮下埋め込みまたは筋肉内埋め込み)または筋肉内注射によって投与することができる。本発明のナノ粒子は、この投与経路に関して、適切なポリマーまたは疎水性材料を用いて(例えば、医薬品として許容可能な油との乳液で)、イオン交換樹脂を用いて、または、難溶性誘導体(例えば難溶性塩など、ただし、これに限定されるものではない)として製剤化することができる。
【0237】
さらに、ナノ粒子は徐放系、例えば、ナノ粒子を含有する固体疎水性ポリマーの半浸透性マトリックスなどを用いて送達することができる。様々な徐放系材料が承認されており、当業者には公知である。
【0238】
加えて、酸化防止剤および懸濁化剤も本明細書に記載のナノ粒子の医薬組成物中で使用することができる。
【0239】
L. 投与量
治療上有効な量の決定は、特に本明細書の開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0240】
本発明の方法に用いられる任意の治療用核酸に関しては、その治療上有効な量は、まずin vitroアッセイから推定することができる。次いで、有効用量を含む循環濃度範囲が得られるように、用量を動物モデルに使用するために製剤化することができる。次に、かかる情報を利用して、患者に有用な用量をより正確に決定することができる。
【0241】
投与される医薬組成物の量は、その中に含まれる核酸の有効性により決まる。一般に、治療で用いられる核酸含有ナノ粒子の量は、哺乳動物で所望の治療結果を有効に得られる量である。もちろん、各種ナノ粒子の用量は、その中に封入されている核酸(または製薬上活性のある製剤)(アンチセンスLNA分子などのオリゴヌクレオチド)に応じて多少変化する。さらに、言うまでもなく、用量は剤形および投与経路に応じて変わる場合がある。しかし一般的には、本明細書に記載のナノ粒子中に封入されている核酸は、約0.1mg/kg/投与〜約1g/kg/投与、好ましくは約1〜約500mg/kg/投与、さらに好ましくは1〜約100mg/kg/投与(すなわち、約2〜約60mg/kg/投与)の範囲の量で投与することができる。治療で投与されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4〜約25mg/kg/投与の量で変動し得る。例えば、治療プロトコルは、約0.1mg/kg/週〜約1g/kg/週、好ましくは約1〜約500mg/kg/週、さらに好ましくは1〜約100mg/kg/週(すなわち、約2〜約60mg/kg/週)の範囲のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む。
【0242】
一実施形態においては、プロトコルは、毎週約4〜約18mg/kg/投与、または毎週約4〜約9.5mg/kg/投与の量でアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む。
【0243】
特定の一実施形態においては、治療プロトコルは、6週サイクルで3週間、毎週約4〜約18mg/kg/投与の量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む(すなわち、約8mg/kg/投与)。別の特定の実施形態は、毎週約4〜約9.5mg/kg/投与を含む(すなわち、約8または4.1mg/kg/投与)。
【0244】
上述の範囲は例示であり、当業者は、臨床経験に基づいた最適な投薬と治療指示を決定するであろう。さらに、それぞれの医師は正確な製剤、投与経路および量を患者の症状を考慮して選択することができる。その上、本明細書に記載の化合物の毒性および治療効力は、当技術分野で公知の方法を使用し、細胞培養または実験動物において標準の医薬品上の手法によって測定することができる。
【0245】
あるいは、核酸の有効性による治療では、約0.1mg〜約140mg/kg/日(0.1〜100mg/kg/日)の量で使用することができる。投与単位剤形は、一般に、約1mg〜約500mgの範囲の活性剤オリゴヌクレオチドである。
【0246】
一実施形態においては、本発明の治療は、本明細書に記載のナノ粒子内に封入されているオリゴヌクレオチドを、約0.1〜約50mg/kg/投与、例えば、約0.5〜約45mg/kg/投与の量で(例えば、単回投与または複数回投与の用法のいずれかで)哺乳動物に投与することを含む。
【0247】
あるいは、本明細書に記載のナノ粒子内に封入されているオリゴヌクレオチドの送達は、約0.1〜約1000nM、好ましくは約10〜約1500nM(すなわち、約30〜約1000nM)の濃度のオリゴヌクレオチドを腫瘍細胞または組織とin vivo、ex vivoまたはin vitroで接触させることを含む。
【0248】
本組成物は、毎日1回投与することもできるし、複数週治療プロトコルの一部として与えることが可能な複数回用量に分割してもよい。正確な用量は、当業者には明らかなように、症状のステージおよび重症度、腫瘍などの疾患の核酸に対する感受性、および治療対象の患者の個別の特徴によって決まる。
【0249】
ナノ粒子が投与される本発明の全ての態様においては、記載した投与量は、投与されるナノ粒子の量ではなく、オリゴヌクレオチド分子の量に基づく。
【0250】
治療は、目的の臨床結果が得られるまで、1日または複数の日数にわたって行われる与えられるものと考える。治療用核酸(または製薬上活性のある薬剤)を封入しているナノ粒子の正確な量、頻度および投与期間は、当然、患者の性別、年齢および医学的症状、並びに主治医によって判定される疾患の重症度に応じて変わる。
【0251】
さらなる態様は、相乗効果または相加効果のために、本明細書に記載の本発明のナノ粒子を他の抗癌療法と組み合わせることを含む。
【実施例】
【0252】
下記の実施例は、本発明のさらなる理解を提供する役割を果たすが、決して本発明の有効な範囲を限定しないものとする。
【0253】
実施例において、合成反応はすべて乾燥窒素またはアルゴンの雰囲気下で実施する。N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、BOC-ON、エチレンオキシド、LiOCl4、コレステロールおよび1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン・HClはAldrichから購入した。他の全ての試薬および溶媒は、それ以上精製を行うことなく使用した。LNA含有オリゴヌクレオチド、例えば、Oligo-1標的サバイビン遺伝子、Oligo-2標的ErbB3遺伝子およびOligo-3(スクランブルOligo-2)は社内で調製したが、それらの配列は表4に示す。オリゴヌクレオチド内のヌクレオシド間の結合はホスホロチオエートを含んでおり、mCはメチル化シトシンを表し、大文字はLNAを示す。
【表4】
【0254】
実施例の全体にわたり、以下の略語を使用する:例えば、LNA(ロック核酸オリゴヌクレオチド)、BACC(2-[N,N'-ジ(2-グアニジニウムプロピル)]アミノエチルコレステリル-カーボネート)、2-(Boc-オキシイミノ)-2-フェニルアセテートニトリル(BOC-ON)、Chol(コレステロール)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、DMAP(4-N,N-ジメチルアミノ-ピリジン)、DOPE(L-a-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、Avanti Polar Lipids, USAまたはNOF, Japan)、DLS(動的光散乱)、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)(NOF, Japan)、DSPE-PEG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ポリエチレングリコール)2000アンモニウム塩またはナトリウム塩、Avanti Polar Lipids, USAおよびNOF, Japan)、KD(knowndown)、EPC(卵ホスファチジルコリン、Avanti Polar Lipids, USA)およびC16mPEG-セラミド(N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)2000、Avanti Polar Lipids, USA)。また、FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、FBS(ウシ胎児血清)、GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)、DMEM(ダルベッコ変性イーグル培地)、MEM(変性イーグル培地)、TEAA(テトラエチルアンモニウムアセテート)、TFA(トリフルオロ酢酸)、RT-qPCR(逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応)などの他の略語も使用した。
【0255】
特に別記しない限り、1H NMRスペクトルは300 MHzにて、また13C NMRスペクトルは75.46 MHzにて、Varian Mercury 300 NMR分光計および重水素化クロロホルムを溶媒として用いて得た。化学シフト(δ)はテトラメチルシラン(TMS)から下方領域のppmで記録する。
【0256】
実施例1. ビス[3-(Bocアミノ)プロピル]アミン(化合物1)の調製
N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン(1.45g、11.05mmol)を無水THF 50mLに含む溶液を20分間氷浴中で激しく撹拌した。BOC-ON(5.998g、24.36mmol)を溶解した無水THF 20mLを2時間かけてその溶液にゆっくりと加えた。添加の終了後、氷浴を取り除き、反応混合物をさらに45分間室温で撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフイー(酢酸エチル/メタノール= 4:1〜3:2, v/v)により化合物1を得た:収率57%:1H NMR 5.18, 3.23-3.17, 2.67-2.63, 1.68-1.60, 1.44;13C NMR 155.9, 78.99, 47.51, 39.04, 29.87, 28.51。
【0257】
実施例2. 2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノアルコール(化合物2)の調製
100mLの丸底フラスコに、ビス[3-(Boc-アミノ)プロピル]アミン(化合物1、2g、6mmol)、LiClO4(0.64g、6mmol)およびCH3CN(24mL)を加えた。溶解終了後、フラスコを氷浴に移し、エチレンオキシド2mLを加えた。次いで、フラスコを密閉し、反応混合物を24時間室温で撹拌した。LiClO4を濾過した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、水100mLで希釈した。エチルエーテル(30mL×3)を用いる抽出により粗生成物を得た。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。化合物2を真空で濃縮した後、カラムクロマトグラフイー(酢酸エチル/メタノール=4/1、v/v)により精製した:収率72%:1H NMR 5.05, 3.60-3.56, 3.20-2.14, 2.56-2.46, 1.68-1.60, 1.44;13C NMR 155.99, 79.13, 58.98, 56.00, 51.63, 38.93, 28.48, 27.38。
【0258】
実施例3. 2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物3)の調製
250mLの丸底フラスコに、2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノアルコール(化合物2、3.2g、8.5mmol)、DMAP(3.13g、25.6mmol)および無水塩化メチレン100mLを加えた。溶解終了後、反応混合物を氷浴で0℃まで冷却した。コレステリルクロロホルメート(11.48g、25.6mmol)を加え、反応混合物を氷浴で4時間撹拌し、次いで室温で約20時間撹拌した。その後、溶媒を真空で除去した。残渣を無水エーテル100mL中に溶解させ、濾過した。濾液を真空濃縮し、化合物3をカラムクロマトグラフイー(酢酸エチル)による精製後に、収率72%の白色固体として回収した。
【0259】
実施例4. 2-[ビス(3-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート・2HCl(化合物4)の調製
2-[ビス(3-N-Boc-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物3、5.0g、6.34mmol)を、100mL丸底フラスコに入れた無水ジオキサン30mL中に溶解させた。その溶液に、ジオキサン中の2M HCl溶液30mLを加え、反応混合物を約1時間室温で撹拌した。反応終了後、反応混合物を真空濃縮し、帯黄色の粉末残渣を得た。残渣をエーテルで3回洗浄し、真空下で乾燥させ、化合物4を収率98%で得た。
【0260】
実施例5. 2-[ビス(3-グアニジニウムプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート(化合物5)の調製
2-[ビス(3-アミノプロピル)]アミノエチルコレステリルカーボネート・2HCl(化合物4、1.0g、1.43mmol)、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(HCl)(0.446g、3.04mmol)およびDIEA(1.00g、7.7mmol)を、250mL丸底フラスコに入れ、無水塩化メチレン100mLをその混合物に加えた。反応混合物を24時間室温で撹拌した。反応終了後、無水エーテル300mLを加え、溶液からの白色固体を沈殿させた。エーテルおよびヘキサンで固体を交互に3回洗浄することにより、化合物5を白色固体として得た。その収率は68%であった。
【0261】
実施例6. ナノ粒子の調製
本実施例では、各種核酸(例えば、LNA含有オリゴヌクレオチド)を封入しているナノ粒子組成物を調製した。例えば、化合物5、DOPE、Chol、DSPE-PEGおよびC16mPEG-セラミドは、90%エタノール10mL中、18:60:20:1:1のモル比で混合した(全脂質30μモル)。LNAオリゴヌクレオチド(0.4μモル)は、20mMのトリス緩衝液(pH 7.4〜7.6)10mL中に溶解させた。37℃まで加熱した後、2種の溶液を二重シリンジポンプを通して一緒に混合し、次に、混合溶液を20mMトリス緩衝液20 mL(300mM NaCl、pH 7.4〜7.6)で希釈した。混合物を30分間37℃でインキュベートし、10mMのPBSバッファー(138mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.4)中で透析した。透析により混合物からエタノールを除去した後、安定した粒子が得られた。ナノ粒子溶液を遠心分離により濃縮した。ナノ粒子溶液を15mL遠心分離濾過機((Amicon Ultra-15, Millipore, USA))へ移した。遠心分離機の速度は3,000 rpmで、温度は遠心分離中4℃であった。濃縮懸濁液を所定時間後に回収し、0.22μmのシリンジフィルター(Millex-GV, Millipore, USA)により濾過を行い殺菌した。均質な懸濁液が得られた。
【0262】
ナノ粒子の直径および多分散性は、Plus 90 Particle Size Analyzer Dynamic Light Scattering Instrument (Brookhaven, New York)を用い、媒体としての水(Sigma)中25℃で測定した。
【0263】
LNAオリゴヌクレオチドの封入効果は、UV-VIS (Agilent 8453)により測定した。バックグラウンドUV-visスペクトルは、PBSバッファー生理食塩水(250μL)、メタノール(625μL)およびクロロホルム(250μL)から構成されている混合溶液を走査することにより得た。封入核酸濃度を測定するため、メタノール(625μL)およびクロロホルム(250μL)をPBSバッファー生理食塩水ナノ粒子懸濁液(250μL)に加えた。混合後、透明な溶液が得られ、この溶液を260nmで吸光度を測定する前に2分間超音波処理した。封入核酸濃度および充填効率は、方程式(1)および(2)により計算した:
Cen (μg / ml) = A260 × OD260 unit (μg / mL) × 希釈係数(μL/μL)----------(1)
ここで、希釈係数は、サンプルストック容量(μL)で割ったアッセイ容量(μL)から得られる。
【0264】
封入効率(%) = [Cen / Cinitial]×100 ------------------------------(2)
ここで、Cenは、精製後にナノ粒子懸濁液に封入された核酸(すなわちLNAオリゴヌクレオチド)濃度であり、Cinitialは、ナノ粒子懸濁液形成前の最初の核酸(LNAオリゴヌクレオチド)濃度である。
【0265】
各種ナノ粒子組成物の粒径、多分散性および核酸(LNAオリゴヌクレオチド)充填効率を表5および6にまとめる。これらのナノ粒子組成物は、100nm未満のナノ粒子サイズで、低多分散性であり、高い核酸充填効率(79〜87%)を達成したことが示されている。
【表5】
【表6】
【0266】
実施例7. ナノ粒子安定性
ナノ粒子安定性は、4℃、PBSバッファー中で経時的に、構造の完全な状態を保持するそれらの能力として定義した。ナノ粒子のコロイド安定性は、平均径の変化を経時的にモニタリングすることによって評価した。表6の試料番号NP1により調製したナノ粒子は、10mM PBSバッファー(138mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.4)中に分散させ、4℃で保管した。所定の時点で、ナノ粒子懸濁液約20〜50μLを取り出し、2mLまで純水で希釈した。ナノ粒子のサイズは、25℃で動的光散乱技術(DLS)を使用することにより測定した。結果からは、120日間にわたり観察した場合、試料番号8のナノ粒子の粒径にほとんど変化はみられなかったことがわかった。結果を図2に示す。脂質担体の成分としての本明細書に記載のカチオン性脂質を含有するナノ粒子(化合物5)は、実質的に長期間の間、4℃で非常に安定していたことが明らかであった。図2に示したように、試料番号NP101、NP102、NP103およびNP104のナノ粒子(表7)もまた同様の安定性を示した。
【表7】
【0267】
実施例8. in vitroにおけるナノ粒子の細胞内取り込み
本明細書に記載のナノ粒子中に封入されている核酸(LNAオリゴヌクレオチドOilgo-2)の細胞内取り込みの効果をヒト前立腺癌細胞(15PC3細胞系)で評価した。試料番号NP3のナノ粒子は、実施例6に記載の方法を用いて調製した。LNAオリゴヌクレオチド(Oligo-2)は、蛍光顕微鏡試験のためにFAMで標識した。
【0268】
ナノ粒子は15PC3細胞系で評価した。細胞は完全培地(10%FBSを補充したDMEM)中で維持した。各ウェルに2.5×105細胞を含有する12ウェルプレートを37℃で一晩インキュベートした。細胞を一度Opti-MEMで洗浄し、Opti-MEM 400mLを各ウェルに加えた。次いで、細胞を、核酸を封入している試料番号NP3(200nM)のナノ粒子溶液(FAM-修飾Oligo 2)、または、対照としてナノ粒子無しの遊離核酸の溶液(ネイキッドFAM-修飾Oligo 2)で処理した。細胞を37℃で24時間インキュベートした。細胞をPBSで5回洗浄し、次いで、30分間1ウェル当たりHoechst溶液(2mg/mL)300mLで染色し、その後PBSで5回洗浄した。-20℃で20分間予備冷却した(-20℃)70% EtOHで細胞を固定した。細胞を螢光顕微鏡下に検査した。その画像を図3に示す。
【0269】
同一条件下の遊離核酸で処理した細胞は、図3Aに示すように核酸の細胞内取り込みは示さなかった。ナノ粒子とインキュベートした細胞では、核酸の有意な核内蓄積があった(図3B)。さらに、ナノ粒子で処理した細胞は、核酸の大きく広がった細胞質内局在化を示した。いくつかのさらなる核酸の細胞質断続蓄積(cytoplasmic punctuate accumulation)パターンもまた認められたが、これは図3Bに示すようにエンドサイトーシス小胞で典型的であった。図3に示すように、試料番号NP105のナノ粒子で処理した細胞(表8)も同様に核酸の細胞内取り込みを示した。
【表8】
【0270】
これらの結果は、核酸が封入されているナノ粒子が、トランスフェクション剤を使用しなくとも細胞膜を透過し、核および細胞質に蓄積したことを示した。本明細書に記載のナノ粒子は、細胞、好ましくは腫瘍細胞の内部に核酸を送達する手段を提供する。
【0271】
実施例9. ヒト表皮癌細胞中のmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
試料番号NP5の効果をヒト表皮癌細胞(A431細胞系)で評価した。A431細胞は上皮増殖因子受容体(EGFR)を過剰発現する。アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)で細胞を処理した。また細胞は、対照として、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)で処理するか、空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)で処理した。ナノ粒子は、実施例6に記載の方法を使用して調製した(表9)。
【表9】
【0272】
細胞は完全培地中で維持した(10%FBSを補充したF-12KまたはDMEM)。各ウェルに2.5×105細胞を含有する12ウェルプレートを37℃で一晩インキュベートした。細胞を一度Opti-MEM(登録商標)で洗浄し、Opti-MEM(登録商標) 400mLを各ウェルに加えた。次いで、細胞を試料番号NP5、NP6またはNP7のナノ粒子で処理した。細胞を4時間インキュベートした後、1ウェル当たり600μLの培地を添加し、24時間インキュベーションした。処理の24時間後に、標的遺伝子(例えばヒトErbB3)及びハウスキーピング遺伝子(例えばGAPDH)の細胞内mRNAレベルをRT-qPCRにより測定した。ErbB3 mRNA遺伝子の発現レベルは、GAPDHのレベルに標準化した。
【0273】
mRNAダウンレギュレーション試験に関しては、全RNAは、RNAqueousキット(登録商標)(Ambion)を使用し製造者の説明書に従って調製した。RNA濃度は、Nanodropを使用し、OD260nmにより測定した。試薬は全てApplied Biosystemsから購入した:高容量相補的DNA逆転写キット(登録商標)(Cat. No. 4368813)、20×PCRマスターミックス(Cat. No. 4304437)、およびヒトGAPDH用のTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイキット(Cat. No. 0612177)。
【0274】
アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP5)は、ヒト表皮癌細胞において100nMもの低いIC50で用量依存性mRNAノックダウンを示した(図4A)。このmRNAノックダウンはErbB3タンパク質レベルと相関していた(図4B)。ErbB3発現のダウンレギュレーションは、ウエスタンブロット法により、細胞からErbB3タンパク質レベルを測定することによって確認した。抗ErbB3抗体はSanta Cruz (SC285)から購入し使用した。スクランブルオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)は、ErbB3発現を阻害しなかった。
【0275】
結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、標的遺伝子発現を選択的及び用量依存的に阻害することを示した。本明細書に記載のナノ粒子は、トランスフェクション剤の不在下で標的遺伝子発現を阻害するための手段を提供する。
【0276】
実施例10. ヒト胃癌細胞のmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト胃癌細胞(N87細胞系)で評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)、または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対する各ナノ粒子のin vitroでの効果は、実施例9に記載の方法により測定した。
【0277】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト胃癌細胞で標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。その阻害は配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図5に示す。
【0278】
実施例11. ヒト肺癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト肺癌細胞(A549細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0279】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト肺癌細胞において標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。結果は、それらの癌細胞において約200nMのIC50を示した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図6に示す。
【0280】
実施例12. ヒト前立腺癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト前立腺癌細胞(15PC3細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0281】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト前立腺癌細胞において、約100nMのIC50で標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図7に示す。
【0282】
実施例13. ヒト乳癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒト乳癌細胞(MCF7細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0283】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト乳癌細胞において、標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。結果は、癌細胞においておよそ150nMのIC50を示した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図8に示す。
【0284】
実施例14. ヒトKB癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果をヒトKB癌細胞(KB細胞系)においても評価した。細胞は、下記の1種で処理した:アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0285】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒトKB癌細胞において、標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図9に示す。
【0286】
実施例15. ヒト前立腺癌細胞におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vitro効果
本明細書に記載のナノ粒子の効果を別のタイプのヒト前立腺癌細胞(DU145細胞系)においても評価した。細胞は、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、スクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料番号NP6)または空のプラセボナノ粒子(試料番号NP7)でそれぞれ処理した。ErbB3発現のダウンレギュレーションに対するナノ粒子のそれぞれのin vitro効果は、実施例9に記載した方法により測定した。
【0287】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子は、ヒト前立腺癌細胞において、標的遺伝子またはタンパク質発現を用量依存的に阻害した。阻害は、配列特異的であった。スクランブルオリゴヌクレオチドは、標的ErbB3遺伝子またはタンパク質発現を阻害しなかった。結果を図10に示す。
【0288】
本明細書に記載のナノ粒子は、様々な癌細胞(例えばヒト肺、前立腺、胸およびKB癌細胞)へ核酸を送達した。図6〜10に示したように、癌細胞系におけるmRNA KD効果は、15PC3>MCF7〜>A431〜>N87〜>A549>DU145〜KBの順で、ナノ粒子中に封入されているアンチセンスオリゴヌクレオチドの約50〜約400nMの範囲である。mRNA KDは、試験するそれぞれの癌細胞において、タンパク質KDと相関していた。
【0289】
実施例16. ヒト前立腺癌異種移植マウスモデルの腫瘍および肝臓におけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vivo効果
本明細書に記載のナノ粒子のin vivo効果をヒト前立腺癌異種移植マウスで評価した。15PC3ヒト前立腺腫瘍は、ヌードマウスで右腋側腹部に5×106細胞/マウスを皮下注射することにより確立した。腫瘍が100mm3の平均体積に達した時、マウスをランダムに1群当たり5匹に分けした。各群のマウスに、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド(試料NP5)または対応するネイキッドオリゴヌクレオチド(Oligo 2)を封入されているナノ粒子で処理した。ナノ粒子は、12日間、q3d×4で、15mg/kg/投与、5mg/kg/投与、1mg/kg/投与または0.5mg/kg/投与で静脈内投与(i.v.)した。投与量は、ナノ粒子中のオリゴヌクレオチド量に基づく。ネイキッドオリゴヌクレオチドは、12日間、q3d×4で、30mg/kg/投与の腹腔内投与(i.p.)か、25mg/kg/投与または45mg/kg/投与で静脈内投与した。マウスは最終投与の24時間後に殺処理した。血漿試料をマウスから回収し、-20℃で保管した。腫瘍試料および肝臓試料もマウスから回収した。試料はmRNA KDについて分析した。
【0290】
ナノ粒子で処理したマウスの腫瘍試料では、その処理はErbB3 mRNA発現を用量依存的に阻害した。ErbB3発現は15mg/kgの投与で約51%以上阻害された(G2)。ネイキッドオリゴヌクレオチドで処理された動物の腫瘍試料では、45mg/kgのoligo-2の投与で、ErbB3 mRNA発現の阻害はわずかに約37%であった(G8)。結果を図11に示す。
【0291】
肝臓試料においては、ナノ粒子は、ネイキッドオリゴヌクレオチドと比較した場合、低用量で標的遺伝子発現のダウンレギュレーションに非常に効果があった。ナノ粒子は、15mg/kg/投与で約93%のKD活性を示した(G2)。またナノ粒子は、1mg/kg/投与で約87%のKD活性を示した(G4)が、これは25mg/kg/投与のOligo-2と同程度に有効であった(G7)。結果を図12に示す。
【0292】
結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子が、ネイキッドLNAオリゴヌクレオチドと比較した場合、腫瘍および肝臓の両方で標的遺伝子の発現を有意に且つ有効的に阻害したことを示した。
【0293】
実施例17. ヒト結腸癌異種移植マウスモデルにおけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vivo効果
本明細書に記載のナノ粒子のin vivo効果をヒト結腸癌異種移植マウスでも評価した。本明細書に記載のナノ粒子(試料NP5)を、12日間、q3dx4で、ヒトDLD-1腫瘍を移植したマウスに腫瘍内注射を行い投与した。ネイキッドオリゴヌクレオチド(Oligo 2)、スクランブルオリゴヌクレオチド(Oligo 3)、スクランブルオリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子(試料NP6)もマウスに投与した。各試験群のマウスからの腫瘍試料を回収し、mRNAダウンレギュレーションについてqRT-PCRを使用して分析した。
【0294】
アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子で処理したマウスにおいては、その処置は、ネイキッドアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはスクランブルオリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子と比較した場合、ErbB3 mRNA発現を有意に阻害した。結果を図13に示す。結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子が、ネイキッドLNAオリゴヌクレオチドと比較した場合、腫瘍での標的遺伝子の発現を有意に且つ効果的に阻害したことを示した。
【0295】
実施例18. 肝臓に転移のあるヒト癌異種移植マウスモデルにおけるmRNAダウンレギュレーションに対するナノ粒子のin vivo効果
本明細書に記載のナノ粒子のin vivo効果を肝臓に転移のあるヒト癌異種移植マウスにおいて評価した。A549癌細胞を脾臓内に注射し、その後、転移性肝疾患を確立するため脾臓摘出を行った。脾臓摘出の2日後、0.5mg/kg/投与、q3d×10で、各群のマウスに、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP5)、またはスクランブルオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子(試料NP6)を静脈内投与した。ネイキッドアンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド(Oligo 2)は、35mg/kg/投与、q3d×4で静脈内投与した。動物の生存を確認した。
【0296】
アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチドを含有するナノ粒子による処置は、約73日間の対照動物と比較して、生存が伸びた(約85日)。結果を図14に示す。総括的観察では、動物の死亡が肝転移によることを示した。肝転移のある代表的な動物の画像を図15に示す。
【0297】
結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを封入しているナノ粒子が、ネイキッドLNAオリゴヌクレオチドと比べると、転移癌(すなわち肝臓の転移癌)を改善したことを示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 式(I):
【化1】
(式中、
R1はコレステロールまたはその類似体であり;
Y1およびY3は、独立して、O、SまたはNR7であり;
Y2は、O、SまたはNR7であり;
(a)は、0または1であり;
R2およびR3は、独立して、水素または低級アルキルであり;
(b)は、約2〜約10の正の整数であり;
R4は、水素、低級アルキル、または
【化2】
であり;
R5は、
【化3】
であり;
R’5は、NH2、
【化4】
であり;
R6、R’6およびR7は、独立して、水素または低級アルキルである)
で表されるカチオン性脂質と;
(ii) 融合性脂質と;
(iii) PEG脂質
とを含む、ナノ粒子組成物。
【請求項2】
R4が
【化5】
であり、
R5が
【化6】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項3】
R6およびR’6が水素である、請求項2に記載のナノ粒子組成物。
【請求項4】
Y1、Y2およびY3がすべて酸素である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項5】
(a)が1であり、(b)が2である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項6】
R2およびR3が両方とも水素である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項7】
カチオン性脂質が
【化7】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項8】
融合性脂質がDOPE、DOGP、POPC、DSPC、EPCおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項9】
PEG脂質がPEG-DSPE、PEG-ジパルミトイルグリカミド、C16mPEG-セラミドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項10】
さらにコレステロールを含む、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項11】
カチオン性脂質がナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約10%〜約99.9%の範囲のモル比を有する、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項12】
カチオン性脂質がナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約15%〜約25%の範囲のモル比を有する、請求項11に記載のナノ粒子組成物。
【請求項13】
カチオン性脂質、非コレステロール系融合性脂質、PEG脂質およびコレステロールのモル比がナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約15〜25%:20〜78%:0〜50%:2〜10%である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項14】
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール;ならびに、
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール
の混合物の群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のナノ粒子組成物で封入されている核酸を含むナノ粒子。
【請求項16】
核酸が一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドである、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
核酸がデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、ロック核酸(LNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アプタマー、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、トリシクロ−DNA、2本鎖オリゴヌクレオチド(デコイODN)、触媒RNA(RNAi)、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、CpGオリゴマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項18】
オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項19】
オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート結合を有する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドがLNAを含む、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドが約8〜50のヌクレオチドを有する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項22】
オリゴヌクレオチドが発癌遺伝子、プロ血管形成経路遺伝子、プロ細胞増殖経路遺伝子、ウイルス性伝染因子遺伝子およびプロ炎症性経路遺伝子の発現を阻害する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドがアンチセンスHIF-1aオリゴヌクレオチド、アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチド、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド、β-カテニンオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスBcl-2オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項24】
カチオン性脂質と核酸の電荷比が約1:1〜約20:1の範囲である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項25】
ナノ粒子が約50nm〜約150nmの範囲のサイズを有する、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項26】
カチオン性脂質、DOPE、コレステロールおよびC16mPEGセラミドがナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約17%:60%:20%:3%のモル比で含まれ、この場合、カチオン性脂質が
【化8】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項27】
ナノ粒子がカチオン性脂質、DOPE、コレステロール、PEG-DSPEおよびC16mPEGセラミドをナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約18%:60%:20%:1%:1%のモル比で含み、この場合、カチオン性脂質が
【化9】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項28】
細胞を請求項15に記載のナノ粒子と接触させることを含む、オリゴヌクレオチドを細胞に導入する方法。
【請求項29】
ヒト細胞または組織を請求項15に記載のナノ粒子と接触させることを含む、ヒト細胞または組織における遺伝子発現を阻害する方法。
【請求項30】
細胞または組織が癌細胞または組織である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有効量の請求項15に記載のナノ粒子を必要性のある哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物における遺伝子発現をダウンレギュレートする方法。
【請求項32】
癌細胞を請求項15に記載のナノ粒子と接触させることを含む、癌細胞の成長または増殖を阻害する方法。
【請求項33】
化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
有効量の請求項15に記載のナノ粒子を必要性のある哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物における癌の治療方法。
【請求項35】
癌が肝臓への転移性である、請求項34に記載の方法。
【請求項1】
(i) 式(I):
【化1】
(式中、
R1はコレステロールまたはその類似体であり;
Y1およびY3は、独立して、O、SまたはNR7であり;
Y2は、O、SまたはNR7であり;
(a)は、0または1であり;
R2およびR3は、独立して、水素または低級アルキルであり;
(b)は、約2〜約10の正の整数であり;
R4は、水素、低級アルキル、または
【化2】
であり;
R5は、
【化3】
であり;
R’5は、NH2、
【化4】
であり;
R6、R’6およびR7は、独立して、水素または低級アルキルである)
で表されるカチオン性脂質と;
(ii) 融合性脂質と;
(iii) PEG脂質
とを含む、ナノ粒子組成物。
【請求項2】
R4が
【化5】
であり、
R5が
【化6】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項3】
R6およびR’6が水素である、請求項2に記載のナノ粒子組成物。
【請求項4】
Y1、Y2およびY3がすべて酸素である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項5】
(a)が1であり、(b)が2である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項6】
R2およびR3が両方とも水素である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項7】
カチオン性脂質が
【化7】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項8】
融合性脂質がDOPE、DOGP、POPC、DSPC、EPCおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項9】
PEG脂質がPEG-DSPE、PEG-ジパルミトイルグリカミド、C16mPEG-セラミドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項10】
さらにコレステロールを含む、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項11】
カチオン性脂質がナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約10%〜約99.9%の範囲のモル比を有する、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項12】
カチオン性脂質がナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約15%〜約25%の範囲のモル比を有する、請求項11に記載のナノ粒子組成物。
【請求項13】
カチオン性脂質、非コレステロール系融合性脂質、PEG脂質およびコレステロールのモル比がナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約15〜25%:20〜78%:0〜50%:2〜10%である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項14】
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、およびコレステロール;
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール;ならびに、
式(I)で表されるカチオン性脂質、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミンにコンジュゲートされているPEG(PEG-PE)、セラミドにコンジュゲートされているPEG(PEG-Cer)、およびコレステロール
の混合物の群から選択される、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のナノ粒子組成物で封入されている核酸を含むナノ粒子。
【請求項16】
核酸が一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドである、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
核酸がデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、ロック核酸(LNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アプタマー、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、トリシクロ−DNA、2本鎖オリゴヌクレオチド(デコイODN)、触媒RNA(RNAi)、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、CpGオリゴマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項18】
オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項19】
オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート結合を有する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドがLNAを含む、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドが約8〜50のヌクレオチドを有する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項22】
オリゴヌクレオチドが発癌遺伝子、プロ血管形成経路遺伝子、プロ細胞増殖経路遺伝子、ウイルス性伝染因子遺伝子およびプロ炎症性経路遺伝子の発現を阻害する、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドがアンチセンスHIF-1aオリゴヌクレオチド、アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチド、アンチセンスErbB3オリゴヌクレオチド、β-カテニンオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスBcl-2オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項24】
カチオン性脂質と核酸の電荷比が約1:1〜約20:1の範囲である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項25】
ナノ粒子が約50nm〜約150nmの範囲のサイズを有する、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項26】
カチオン性脂質、DOPE、コレステロールおよびC16mPEGセラミドがナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約17%:60%:20%:3%のモル比で含まれ、この場合、カチオン性脂質が
【化8】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項27】
ナノ粒子がカチオン性脂質、DOPE、コレステロール、PEG-DSPEおよびC16mPEGセラミドをナノ粒子組成物中に存在する全脂質の約18%:60%:20%:1%:1%のモル比で含み、この場合、カチオン性脂質が
【化9】
である、請求項1に記載のナノ粒子組成物。
【請求項28】
細胞を請求項15に記載のナノ粒子と接触させることを含む、オリゴヌクレオチドを細胞に導入する方法。
【請求項29】
ヒト細胞または組織を請求項15に記載のナノ粒子と接触させることを含む、ヒト細胞または組織における遺伝子発現を阻害する方法。
【請求項30】
細胞または組織が癌細胞または組織である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有効量の請求項15に記載のナノ粒子を必要性のある哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物における遺伝子発現をダウンレギュレートする方法。
【請求項32】
癌細胞を請求項15に記載のナノ粒子と接触させることを含む、癌細胞の成長または増殖を阻害する方法。
【請求項33】
化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
有効量の請求項15に記載のナノ粒子を必要性のある哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物における癌の治療方法。
【請求項35】
癌が肝臓への転移性である、請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−529912(P2011−529912A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521353(P2011−521353)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/052396
【国際公開番号】WO2010/014895
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/052396
【国際公開番号】WO2010/014895
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】
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