説明

核酸配列検出

本出願は、核酸プローブ24が付着した電極22を備える支持体104を用いる標的核酸配列を検出するためのシステムおよび方法を開示している。核酸標的26および非共有結合光電気化学的標識30がこのプローブ24と接触される。この非共有結合光電気化学的標識30は、好ましくは、二本鎖核酸に結合する。この混合物を照射することは、電極22で光電流を生成する。核酸プローブ要素のアレイを備える支持体104もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本出願は一般に分子の検出に関し、そしてより詳細には標的核酸配列の検出に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(発明の要旨)
本明細書に開示されるのは、標的核酸配列を検出するための方法、ならびにそのための装置およびキットである。この方法は、一本鎖核酸の対し二本鎖核酸を優先的に標識する非共有結合光電気化学的化合物を用いる。この光電気化学的インターカレーターは、必ずしも、標的核酸配列に共有結合により付着されるか、またはその他で結合される必要はない。
【0003】
1つの局面では、標的核酸配列を検出するための装置が提供される。このシステムの1つの実施形態は:電極およびそれに付着した核酸プローブを備えた支持体であって、該核酸プローブが該標的核酸配列に相補的な配列を含む支持体;該核酸プローブと接触するための非共有結合光電気化学的標識;核酸プローブを照射するための光源;および該電極で電流を測定するためのデータ収集コントローラーを備える。このシステムのいくつかの実施形態では、必要に応じて、流体取り扱いシステム、温度制御システム、および/または光学的スキャナーをさらに備える。
【0004】
本発明の別の局面は、標的核酸配列を検出するための方法を提供する。この方法の実施形態は、少なくとも:核酸プローブを、標的核酸および非共有結合光電気化学的標識と接触し、反応混合物を形成する工程;該混合物を照射する工程;および該電極で光電流を観察する工程を包含し、ここで、該光電流が該標的核酸の存在および/またはその量を示す。この核酸プローブは電極に付着され、この核酸プローブは標的核酸配列に相補的な配列を含み、そして支持体がこの核酸プローブおよび電極を備える。
【0005】
いくつかの実施形態では、この方法は、上記核酸プローブを犠牲的還元剤または犠牲的酸化剤と接触する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、この犠牲的還元剤は、三級アミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの塩の少なくとも1つを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、この方法は、上記核酸プローブを、核酸ハイブリダイゼーションを誘導する条件下に維持する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、上記核酸プローブを洗浄し、過剰の核酸標的を除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態では、この方法は、上記核酸プローブを洗浄し、過剰の非共有結合光電気化学的標識を除去する工程をさらに包含する。
【0007】
別の局面では、標的核酸配列を検出するためのキットが提供される。キットの実施形態は:支持体であって、電極およびそれに付着した核酸プローブを備え、そしてこの核酸プローブが、上記標的核酸配列に相補的な配列を含む、支持体;および非共有結合光電気化学的標識を備える。
【0008】
いくつかの実施形態では、上記核酸プローブはDNAを含む。いくつかの実施形態では、上記核酸プローブはRNAを含む。いくつかの実施形態では、上記標的核酸はDNAを含む。いくつかの実施形態では、上記標的核酸はRNAを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記支持体は、核酸プローブ要素のアレイを備える。いくつかの実施形態では、上記アレイは、約10より多い核酸プローブ要素を備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記電極は、金、白金、シリコン、ガラス状炭素、グラファイト、インジウム−錫酸化物、およびダイヤモンドの少なくとも1つを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記非共有結合光電気化学的標識は:ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、および白金の少なくとも1つを含む金属;およびポリピリジルリガンドである、bipy、phen、DIP、dppz、phi、terpy、およびそられの誘導体を含む。いくつかの実施形態では、上記非共有結合光電気化学的標識が:[Ru(bipy)、[Ru(bipy)dppz]2+、[Ru(bipy)(phen)2+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記光源はレーザーである。いくつかの実施形態では、上記光源は可視光源である。
【0013】
いくつかの実施形態は、上記核酸プローブと接触するための犠牲的還元剤または犠牲的酸化剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記犠牲的還元剤は、三級アミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(好適な実施形態の詳細な説明)
本明細書で用いられるとき、「bipy」は、2,2’−ビピリジンであり、「phen」は、1,10−フェナントロリンであり、「DIP」は、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンであり、「dppz」は、ジピリド[3,2−a:2’,3’−c]フェナジンであり、そして、「terpy」は、2,2’:6,2’’−ターピリジンである。これらのリガンドは、複数のピリジン単位であり、そして本明細書で「ポリピリジルリガンド」と称されるリガンドのファミリーのメンバーである。用語「phi」は、9,10−フェナントレンキノンジイミンを表す。「核酸」は、DNA、RNA、PNA、ロックされた核酸(LNA)、およびそれらの組み合わせを含み、それらのいずれも一本および/または二本鎖である。二本鎖核酸は、ホモ二重鎖、例えばDNA−DNA、およびヘテロ二重鎖、例えば、DNA−RNAを包含する。「ss」接頭辞は、「一本鎖」を意味する。同様に、「ds」は、「二本鎖」または二重鎖を意味する。本開示におけるDNAへの参照はまた、他であることが提供されなければ、他の核酸、例えば、RNA、PNA、LNA、およびそれらの組み合わせに関する。用語「光電気化学」はまた、当業者によって「電気化学的発光」または「ECL」としばしば称されている。
【0015】
図1は、開示された方法を実施するために適切な装置100の実施形態を示す。この装置100は、電気化学的セル102、作動電極104、対電極106、データ捕獲コントローラー108、光源110、選択が自由の流体取り扱いシステム112、および選択が自由の温度制御システム114を備える。作動電極104はまた、本明細書では「支持体」とも呼ばれる。
【0016】
電気化学的セル102は、支持体104、対電極106、および必要に応じて参照電極(図示せず)を備える。選択が自由の参照電極は、当該技術分野で公知の任意のタイプである。いくつかの実施形態は、中実の参照電極を用いる。いくつかの実施形態では、支持体104は、電気化学的セル102の1つ以上の壁を備える。この電気化学的セル102は、必要に応じて、例えば、サンプルを注入するため、細胞を洗浄するため、試薬を添加するためなどに用いられる、当該技術分野で公知の任意のタイプの流体取り扱いシステム112を備える。いくつかの実施形態では、この電気化学的セル102は、フローセルである。いくつかの実施形態では、この電気化学的セル102は、上記支持体104および/または電気化学的セル102を加熱および/または冷却するために用いられる、当該技術分野で公知の任意のタイプの温度制御システム114を装備する。いくつかの実施形態は、その使用が以下により詳細に考察される当該技術分野で公知の任意のタイプの光学的スキャナー116をさらに備え得る。
【0017】
上記支持体104は、1つ以上のタイプの核酸プローブが付着される電極を備える。この支持体104は、以下により詳細に説明される。対電極106および選択が自由である参照電極は、開示される装置および方法に適合する当該技術分野で公知の任意のタイプである。
【0018】
上記光源110は、上記支持体104を電磁照射で照射するように構成される。この光源110は、以下により詳細に記載される開示された光電気化学的反応を開始するに十分なエネルギーおよび強度の任意の供給源である。適切な光源の例は、白熱ランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、蛍光ランプ、アーク灯、日光、およびレーザーを含む。いくつかの実施形態では、上記電磁照射は、赤外線照射、可視光、および/または紫外線照射である。いくつかの実施形態では、上記光源110は、電磁照射を、支持体104またはその部分に衝突するように向けるよう構成された光学的システムを含む。いくつかの実施形態では、この光源110は、支持体104の表面を走査するように構成される。いくつかの実施形態では、この光源110は、この支持体104を移動することにより支持体104の表面を走査する。
【0019】
上記データ捕獲コントローラー108は、上記電気化学的セル102を制御するために用いられる。いくつかの実施形態では、このデータ捕獲コントローラー108は、以下に説明されるように、装置100のその他のコンポーネントの操作を制御する。電気化学的セル102に対し、データ捕獲コントローラーは、少なくとも、ポテンシオスタットの機能を備え、すなわち、上記セル102内の電圧および/または電流を制御および測定し得る。ナノアンペアおよびピコアンペアの大きさの電流が、当該技術分野で公知のデバイスを用いて慣用的に測定される。単一電子と同じぐらい小さな電流もまた測定可能であり、例えば、量子ドット、走査プローブデバイス、および単一電子トンネル(SET)デバイスを用いる。データ捕獲コントローラー108が光源110を調節する実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、少なくとも、支持体104の照射を制御する。いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108はまた、支持体104の照射を制御する。いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108はまた、支持体104のどの部分が照射されるのかを制御する。例えば、いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、上記光源110が支持体104を所定のパターンで走査するようにする。この実施形態は、例えば、支持体が以下により詳細に論議されるようなアレイを備える実施形態で有用である。いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、必要に応じて、支持体104からの光学的情報を読み取るように構成された光学的スキャナーまたは検出器116からのデータを受容する。例えば、いくつかの実施形態では、支持体104は、光学的にコードされた識別印、例えば、バーコードまたは以下で考察されるその他の印を含む。以下に考察されるその他の実施形態では、上記光学的スキャナー116は、支持体104からの蛍光を検出するように構成される。その他の実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、その他の方法、例えば、高周波(RF)タグを用いるか、または集積デバイス、例えば、マイクロプロセッサを用いてコードされる識別印を読み取るように構成される。いくつかの実施形態では、この印がデータ捕獲コントローラーのためのプログラムを識別する。データ捕獲コントローラー108は、例えば、ディスプレイ、キーボード、プリンター、ディスクドライブ、データポート、I/Oポートなど、当該技術分野で公知のデータ獲得および/またはデータ入力のための1つ以上のインターフェースを備える。
【0020】
いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108はまた、流体取り扱いシステム112、温度制御システム114、および/または光学的スキャナー116を含む光学的コンポーネントからのデータを制御および獲得する。このデータ捕獲コントローラー108は単一ユニットとして示されているが、機能の各々、または機能の組み合わせを履行する別個のユニットを備え得る。例えば、いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、モジュールユニットを備え、それによってユーザーが制御およびデータ獲得機能を付加することを許容し、開示された装置の能力を増強する。いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、マイクロプロセッサを基礎にしたデバイスである。いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、ユーザーがプログラム可能である。いくつかの実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、予めプログラムされている。
【0021】
支持体104の実施形態の詳細図を図2に示す。支持体104は、核酸プローブ24が付着される電極22を備える。相補的核酸配列(「核酸標的」)26は、このプローブ24に結合する。非相補的核酸配列(図示せず)はこのプローブ24に結合しない。
【0022】
開示されたシステムは、一本鎖核酸よりも二本鎖核酸を優先的に標識する非共有結合光電気化学的化合物を用いる。いくつかの実施形態は、複数の光電気化学的化合物を用いる。いくつかの実施形態では、この光電気化学的化合物は、二本鎖核酸のための非共有結合標識である。例示の実施形態では、この光電気化学的標識は、二本鎖核酸に結合するが、一本鎖核酸には感知し得るほどに結合しない光電気化学的インターカレーター30である。任意の理論に拘束されることなく、結合したインターカレーター30を照射することは、励起された状態にあるインターカレーターを生成すると考えられる。この励起されたインターカレーター32は、基底状態のインターカレーター30よりも容易に酸化される。電極22を励起されたインターカレーター32は酸化するに十分であるが、基底状態のインターカレーター30は酸化しない電位に偏移することは、励起されたインターカレーター32の酸化されたインターカレーター34への酸化を引き起こす。例示の実施形態では、酸化されたインターカレーター34は、二本鎖核酸に結合したままである。いくつかの実施形態では、犠牲的還元剤が提供され、これは、酸化されたインターカレーター340基底状態インターカレーター30に戻し、それによって、この犠牲的還元剤が消費されるか、または照射が中断するまで光電流を提供する。
【0023】
電極22は、開示されたアッセイと適合する当該分野で公知の任意の電極材料、例えば、金、白金、シリコン、ガラス状炭素、グラフィイト、インジウム−錫酸化物、および導電性または半導電性ダイヤモンドである。ダイヤモンドおよびインジウム−錫酸化物電極は透明であり、例えば、上記支持体104が電気化学的セル102で壁を形成する実施形態で、コンポーネントの光学的配列において柔軟性を提供する。いくつかの実施形態では、この電極22は、当該分野で公知の任意の手段、例えば、物理的蒸着、化学的蒸着、スピンコーティング、プリンティングなどによって基体上に堆積された層である。この基体は、任意の適切な基体、例えば、半導体基体、シリコン、ガラス、シリカ、またはサファイアである。この電極22は、任意の適切な形状、例えば、矩形、円形、六角形、または任意のその他の適切な形状を有する。図1に示される実施形態では、この電極22は平面状である。当業者は、この電極22が非平面状、例えば、円筒形、管状、プリズム、ピラミッドなどである得ることを理解する。いくつかの実施形態では、電気化学的セル102の全内壁が電極22である。
【0024】
核酸プローブ34は、当該分野で公知の方法を用いて電極22に付着される。いくつかの実施形態では、この核酸プローブ34は、付着基を用いて付着される。この付着基は、誘導体化されるべき特定の電極材料の組成に依存し得る。例えば、チオール付着基で終結する核酸の単層で金電極を誘導体化することは、例えば、米国特許第5,472,881号に記載されるように、当該技術分野で周知である。ダイヤモンド電極は、Kuoら、「ホウ素ドープされた化学的蒸着ダイヤモンド表面の共有結合単層での電気化学的改変」Electrochem.Solid−State Lett.1999、2:6、288〜290に記載のように、ジアゾニウム化合物で誘導体化されている。シリコン電極は、Yi Cuiら、Science 2001、293、1289〜92に記載のように、置換されたアルコシキシランを用いて誘導体化されている。ガラス状炭素電極は、R.Deinhammerら、Langmuir 1994、10、1306に記載されるようにアミンにより、またはMikkelsenら、Electroanalysis 1992、4、929に記載のようにカルボジイミドにより誘導体化されている。電極はまた、カルボキシレート−アミン官能基およびビオチン−アビジンカップリングにより誘導体化されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記支持体104は、核酸プローブ要素のアレイまたはミクロアレイを備え、これは、複数の標的核酸配列を掲出することで有用である。このようなアレイおよびミクロアレイはまた、しばしば、「チップ」と称される。各アレイ要素は、核酸プローブ24を備える。これらプローブは、DNA、RNA、PNA、および/またはロックされた核酸(LNA)任意のタイプのヌクレオチドまたはそのアナログ、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。上記アレイの核酸プローブ要素は、光学的にアドレス可能であるので、アレイは、各アレイ要素が電気的にアドレス可能ある必要でなく構築され得る。この光学的にアドレス可能性の結果は、全体の核酸アレイが単一の電極上に据え付けられ得、それによって構築を単純化することである。いくつかの実施形態では、このアレイは、複数の電極上でパターン化され得る。いくつかの実施形態では、このアレイは、支持体104の1つの表面上でパターン化される。いくつかの実施形態では、このアレイは、支持体104の複数の表面、例えば、平面状支持体104の両側面上でパターン化される。
【0026】
上記アレイを構築する際に、上記核酸プローブ24は、上記電極22に、当該技術分野で公知の任意の手段、例えば、ピペット、インクジェットプリンティング、フォトリソグラフィー、または接触プリンティングにより付与される。アレイをアセンブルする際に、プローブ24は、電極に、上記のように付着される。本明細書で用いられるとき、アレイ要素または要素は、アレイのアドレス可能なユニットである。要素は、1つ以上のプローブを備え得る。アレイは、少なくとも2つの要素を備える。約10までの要素を含むアレイが報告されている。従って、本開示に従って構築されたアレイ中の要素の数は、約10、100、1000、10,000、100,000、10、10、10、10、またはそれ以上であり得る。このアレイ要素の間隔は、均一であるか、または変動し得る。多数の要素を備えるアレイには、より近い要素間間隔は、物理的により小さいアレイの構築を許容する。100μmの大きさの要素の中心から中心までの間隔が一般的である。約10μm、1μm、およびより小さな間隔が報告されている。本開示は、これら値の任意またはすべての要素間間隔をもつアレイを企図する。例によれば、10,000を超える要素のアレイが標準的な顕微鏡スライド上に慣用的に製作される。アレイ要素の100μmの中心から中心までの間隔は、標準的な96ウェルのマイクロタイタープレート中に100,000を超える要素のアレイを提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、これらアレイ要素は、方形の格子、矩形の格子、六角形の格子、または所望の任意のパターンまたはパターンの組み合わせを形成する。いくつかの実施形態では、これらアレイ要素はランダムに据え付けられ、次いで、それらの空間的アドレスを決定するために検索される。これら要素がアドレス可能である限り、アイレ要素の任意の空間的配列が用いられ得る。これら要素のサイズは、特定の適用に依存する。例えば、小量の核酸の検出は、小さなアレイ要素を必要とし得る。マイクロアレイの構築は、同様に小要素を用いる。単一アレイは、異なるサイズの要素を備え得る。接触プリンティングは、ナノリットルの大きさで溶液のサンプルを堆積し得る。当業者は、要素のサイズが要素間間隔によって制限されることを認識する。
【0028】
アレイの表面は、実質的に平滑であり得るか、または特徴を有し得る。例えば、これらアレイ要素は、窪みで、または高まった特徴で付与され得る。さらに、複数のアレイ要素は、各々が窪んだ、または高められた特徴で配置され得る。10,000要素をもつアレイが標準的な96ウェルプレート上に形成された上記で引用した例では、各ウェルは約100の要素を含んだ。これらの窪んだか、または高められた領域は、例えば、溶液を保持することによるか、または乾燥を容易にすることにより、これらアレイ要素のための特定の環境を提供するために供し得る。
【0029】
上記支持体は、印またはマーキングをさらに所有し得、これらアレイ要素のアドレス可能性を提供または支援する。上記に記載の窪んだ、または高められた特徴もまた、この目的のために供し得る。このマーキングまたは印は、バーコードまたは別の機械読み取り可能なマーキングを用いて、装置中に支持体104を配向するため、またはそれを識別するために供し得る。この印は、任意の便利な位置に付与され、これは、アレイが付与される支持体104の表面上か、または異なる表面上であり得る。この位置は、光学的スキャナー116により読み取り可能であるように選択される。いくつかの実施形態では、支持体104は、別の機械読み取り可能な識別、例えば、RFタグまたは集積デバイス(例えば、マイクロプロセッサ)を備える。
【0030】
レーザーは、小アレイ要素を備えるシステムのために有用な光源110であるが、任意の十分に焦点を合わされた光源が用いられ得る。レーザーを用いてアレイを走査するための方法は、当該分野で周知である。
【0031】
いくつかの実施形態では、支持体104には、光源が光学的スキャナー116と組み合わせて照射している位置を決定するための手段が提供される。例えば、電極それ自身が格子またはその他の参照マークまたは印を有し得る。このような参照マークを生成するための方法は、電極のタイプで変動し、そして当業者に公知であり、例えば、リソグラフィー、電気化学的エッチング、イオン支援エッチング、電気メッキ、物理的蒸着、および化学的蒸着である。あるいは、このような印は、アレイパターンの一部であり得る。例えば、着色、蛍光、または光電気化学的分子がアレイ要素として電極に付着され得る。いくつかの実施形態では、指標は、核酸プローブである。この指標プローブに結合することが知られる指標標的が添加され、そしてこのプローブにハイブリダイズされる。上記光源がアレイを走査するとき、それは、これらの指標要素の各々が照射されるとき光電流を生成する。いくつかの実施形態では、上記指標標的は、着色、蛍光、または光電気化学的分子に結合される。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記支持体104は、照射されるとき電気的信号を生成する要素、例えば、当該技術分野で公知の、光起電力、光抵抗、または別の光感受性要素を含む。
【0033】
光電気化学的インターカレーターが蛍光で実施形態では、このインターカレーターが結合する二本鎖核酸を含むアレイ要素が光学的に決定され得、それによって、蛍光アレイ要素のみを走査することによりシステムスループットを増加する。
【0034】
図3は、図2に示される支持体に関して核酸配列を検出するための方法300を提供する。ステップ310では、支持体104が得られる。ステップ320では、この支持体104に付着されている核酸プローブ24は、核酸標的26と接触される。ステップ330では、核酸プローブ24は、ハイブリダイゼーションに誘導する条件になる。プローブ24と標的26相補的配列を有する場合、それらはハイブリダイズし、それによって二本鎖核酸を形成する。そうでなければ、それらは、感知し得るようにハイブリダイズしない。この支持体104は、次いで、必要に応じて洗浄され、ステップ335でハイブリダイズした標的26を除去する。ステップ340では、核酸プローブ24は、光電気化学的インターカレーター30と接触される。このインターカレーター30は、ハイブリダイゼーションステップで形成された二本鎖核酸に結合する。プローブ24が一本鎖のまま、すなわち、ハイブリダイズしない場合、ハイブリダイゼーション30は、感知し得るほどに結合しない。ステップ345では、支持体104は、必要に応じて洗浄されて非結合インターカレーター30を除去する。ステップ350では、核酸プローブ24は、必要に応じて犠牲的還元剤と接触される。核酸プローブ24、核酸標的26、光電気化学的インターカレーター30、および選択が自由の犠牲的還元剤は、一緒に反応混合物を形成し、それは、さらなる成分をさらに含み得る。ステップ360では、反応混合物は、電磁照射によって、基底状態にある結合したインターカレーター30を、基底状態のインターカレーターより酸化するのがより容易な励起状態インターカレーター32に励起するに十分なエネルギーおよび強度で照射される。ステップ370では、電極22が、励起状態にあるインターカレーター32を、酸化されたインターカレーター36に酸化するが、基底状態にあるインターカレーターはそうしない電位に偏位される。励起状態のインターカレーター32の酸化は、光電流を生成する。ステップ380では、光電流が測定される。
【0035】
ステップ310では、支持体104が得られる。この開示された方法は、本明細書に開示の任意の核酸支持体104を用いて実施される。いくつかの実施形態では、この支持体104は、核酸プローブのアレイまたはマイクロアレイを備える。
【0036】
ステップ320では、核酸標的26は、支持体104上の電極に結合した核酸プローブ24と接触される。代表的には、この核酸標的26は、溶媒、例えば、水、水性緩衝液、有機溶媒、または別の適切な溶媒中に溶解される。いくつかの実施形態では、核酸標的26は、流体取り扱いシステム112を用いて核酸プローブ24と接触される。いくつかの実施形態では、この流体取り扱いシステム112は、データ捕獲コントローラー108によって制御される。
【0037】
ステップ330では、標的26およびプローブはハイブリダイズされる。いくつかの実施形態では、このハイブリダイゼーション状態は、上記で説明されたように、流体取り扱いシステム112および/または温度制御システム112と協調するデータ捕獲コントローラー108を用いて確立および維持される。
【0038】
核酸ハイブリダイゼーションに誘導する条件は当該技術分野で公知であり、そして核酸標的26およびプローブ24の性質、溶媒のイオン強度、および溶媒の個性を含む因子に依存して異なる。例えば、一本鎖DNA標的を一本鎖DNAプローブにハイブリダイズすることは、一本鎖RNA標的を一本鎖DNAプローブにハイブリダイズすることとは異なる条件を必要とする。標的およびプローブのいずれか、または両方はまた、二本鎖であり得、その場合、この二本鎖核酸は、ハイブリダイゼーションステップの前に変性される。プローブおよび標的は、それらの個々の長さの部分に沿ってのみハイブリダイズする必要があり、すなわち、プローブおよび標的のいずれか、または両方は、ハイブリダイゼーションステップの後、一本鎖部分を有し得る。最適ハイブリダイゼーション条件は、代表的には、核酸の融点性質(Tm)、およびハイブリダイゼーション溶液のイオン強度により決定される。ハイブリダイゼーション速度は、一般に、Tmの下約20〜30℃で最適であるが、特定の場合には、温度は、Tmよりわずかに低いか、Tmであるか、またはTmの上でさえ、有用であり得る。代表的なプロトコールで提供される洗浄条件は、ストリリンジェンシーを最大にする、すなわち、(完全相補性が要求される場合)完全に相補的でない核酸とのハイブリダイゼーションを防ぐために供される。高ストリンジェンシーが必要ではない場合、洗浄温度は減少され得るか、および/または洗浄緩衝液のイオン強度が上昇され得る。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、慣用的な最適化により容易に決定可能であり、そして核酸鎖の長さ、洗浄温度、および塩濃度に依存して実験に基づいた計算である。一般に、より長い鎖は、適正なアニーリングにより高い温度を必要とし、その一方、より短い鎖はより低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補的鎖がそれらの融点温度未満の環境に存在するとき、変性された核酸がアニールする能力に依存する。プローブと標的との間の所望の相同性の程度が高くなるほど、用いられ得る相対温度は高くなる。結果として、より高い相対温度は、よりストリンジェントな反応条件を作製する傾向になり、その一方、より低い温度はそのような傾向が少なくなる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明は、Ausbelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley;1995を参照のこと。
【0039】
ステップ340では、核酸プローブ24は、光電気化学的インターカレーター30と接触される。いくつかの実施形態では、この光電気化学的インターカレーター30は、必要に応じてデータ捕獲コントローラー108を用いて制御される流体取り扱い器(ハンドラー)112を用いて核酸プローブ24と接触される。いくつかの実施形態は、複数の光電気化学的インターカレーター30を用いる。いくつかの実施形態では、核酸プローブ24は、標的核酸と同時に(ステップ320)および光電気化学的インターカレーター30と(ステップ340)接触される。
【0040】
光電気化学的インターカレーター30は、ハイブリダイゼーションステップで形成された二重鎖核酸に結合するが、一本鎖プローブ24または標的26には結合しないように選択される。その他の要求は、インターカレーター30が光電気化学的に活性であることである。これらの規準に合致する任意のインターカレーターが用いられ得る。このインターカレーターは、有機物、無機物、または有機金属であり得る。有機のインターカレーターは、臭化エチジウムおよび関連化合物を含む。少なくとも1つのリガンドが、bipy、phen、DIP、dppz、phi、terpy、またはそれらの誘導体である、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、および白金の金属錯塩が適切な電気化学的インターカレーターである。このような錯塩の例は、米国特許第5,112,974号、同第4,699,987号、同第4,980,473号、およびErkkilaら、「金属インターカレーターのDNAとの認識および反応」Chem.Rev.、1999、99、2777に開示されている。米国特許第4,980,473号は、Z−およびB−DNAを鑑別的に結合する[Ru(DIP)2+のそのエナンチオマーを開示している。
【0041】
特にその中でカチオンが[Ru(bipy)2+、[Ru(bipy)dppz]2+、または[Ru(phen)2+である、トリス(ポリピリジル)ルテニウム化合物が光電気化学的インターカレーターとして有用である。オスミウムアナログもまた、有用な光電気化学的インターカレーターである。
【0042】
光電気化学的インターカレーター30がハイブリダイズしたプローブ−標的に添加されるとき、それは、二本鎖核酸に結合するが、一本鎖核酸には結合しない。従って、インターカレーター30は、標的核酸26にハイブリダイズしない任意のプローブ核酸24に有意に結合しない。従って、インターカレーター30は、二本鎖核酸のための汎用標識であって、それは共有結合により付着される必要がないという利点を付加する。二本鎖DNA−インターカレーター種は、本明細書では「インターカレーター−標識DNA」と称される。
【0043】
ルテニウムのポリピリジルインターカレーターは、代表的には、二本鎖核酸にランダムに結合する。光電気化学的信号を最適化するために必要な光電気化学的インターカレーターの濃度は、プローブ24と標的26との間の重複長さ、プローブ24および標的26の量、インターカレーター30の励起状態32への光励起の効率、励起インターカレーター32の酸化形態34への酸化の効率、およびもし存在する場合犠牲的還元剤の濃度を含む因子に依存する。この濃度は、当業者により容易に決定される。このアッセイは較正され得、定量結果を提供する。さらに、特有の構造特徴をもつ二本鎖核酸に選択的に結合するインターカレーターを選択し得る。上記のように、特定のインターカレーターのエナンチオマーが、B−またはZ−DNAのために選択されることが知られている。米国特許第6,031,098号に記載されるインターカレーターを用いる塩基対ミスマッチのために選択することもまた可能である。
【0044】
ステップ350では、プローブ核酸24は、必要に応じて犠牲的還元剤と接触される。この犠牲的還元剤は、酸化されたインターカレーター34を基底状態インターカレーター30に還元し得、それによって、インターカレーター30を、それが照射されている限り光電流を生成することを可能にし、これは、光電流の検出および測定を容易にする。適切な犠牲的還元剤は、このアッセイが使用不能である程度まで妨害しない。いくつかの実施形態では、電極22は、この犠牲的還元剤を直接酸化せず、それによって潜在的に妨害するバックグラウンド電流を減少する。この犠牲的還元剤は、用いられる特定の光電気化学的インターカレーターに依存する。ルテニウムを基礎にしたインターカレーターのための適切な犠牲的還元剤は、一般に、三級アミン、特に、トリプロピルアミン(TPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。別の適切な犠牲的還元剤はβ−ラクタムである。
【0045】
プローブ核酸24、核酸標的26、光電気化学的インターカレーター30、および選択が自由の犠牲的還元剤は、一緒に反応混合物を形成し、これはさらに、さらなる成分を含み得る。
【0046】
以下により詳細に記載されるその他の実施形態は、犠牲的還元剤の代わりに犠牲的酸化剤を用いる。他の実施形態は、犠牲的還元剤または犠牲的酸化剤のいずれをも用いない。
【0047】
ステップ360では、この反応混合物は、必要に応じてデータ捕獲コントローラー108を用いて調節される光源110を用いて照射される。光のエネルギーおよび強度は、ハイブリダイズしたプローブ−標的の二本鎖領域に結合したインターカレーター30を励起された状態のインターカレーター32に励起するように選択される。いくつかの実施形態では、この装置は、光源110で支持体104の表面の走査を可能するように構成される。支持体104が核酸プローブのアレイを備える実施形態では、この装置は、各アレイ要素を個々に照射するよう構成される。アレイ要素を作製するプローブ核酸24の塩基配列は既知であるので、アレイ中のプローブの位置によってプローブに結合する任意の標的26の配列の部分を同定し得る。
【0048】
ステップ370では、電極22は、励起されたインターカレーター32に対して酸化する電位に偏位される。この電極22の電位は、データ捕獲コントローラー108によって制御される。いくつかの実施形態では、この電極22は、励起されたインターカレーター32を酸化し得るが、基底状態にあるインターカレーター30は酸化しない電位に偏位される。いくつかの実施形態では、ステップ360および370は、時間が重複する。
【0049】
いくつかの実施形態では、この電極22は、基底状態インターカレーター30を酸化し得る電位に偏位される。この実施形態は、光学的アドレス付けが必要ではない、例えば、支持体104が1つのタイプのみのプローブ核酸24を含む場合に有用である。このアッセイは、光電気化学的アッセイよりはむしろ電気化学的アッセイである。
【0050】
いくつかの実施形態では、以下により詳細に考察されるが、この電極22は、還元電位に偏位される。
【0051】
ステップ380では、電極22における電流は、当該技術分野で公知の任意の手段を用いて測定される。例示される実施形態では、データ捕獲コントローラー108は、電流を測定するように構成される。犠牲的還元剤を用いる実施形態では、上記光電流は、犠牲的還元剤が消費されるか、または照射が終了するまで継続する。犠牲的還元剤を用いない実施形態では、光電流は、励起されたインターカレーター32が酸化されるまで光電流が継続する。
【0052】
いくつかの実施形態では、電極は、さらなるアッセイのために再利用可能である。いくつかの実施形態では、支持体104は、単に変性条件にされ、そして変性した一本鎖核酸は、電極から洗浄される。
【0053】
任意の理論によって拘束されることなく、以下は、光電気化学的インターカレーターとして[Ru(bipy)2+を用いるシステムで作動すると考えられる機構を記載する。同様の機構が、その他の光電気化学的インターカレーターに同様に適用されると考えられる。以下の説明では、基底状態インターカレーター30は、[Ru(bipy)2+であり、励起状態インターカレーター32は、[Ru(bipy)2+*であり、そして酸化されたインターカレーター32は、[Ru(bipy)3+である。[Ru(bipy)2+を照射することは、励起種[Ru(bipy)2+*を生成し、これは、[Ru(bipy)2+より[Ru(bipy)3+により容易に酸化される。励起種の正確な性質は、この方法にとって重要ではなく、そして光電子は、金属中心またはリガンド中心に存在し得る。[Ru(bipy)2+は、電極22に付着したプローブ核酸24にハイブリダイズした標的26の二本鎖領域にインターカレートする。このインターカレーターを照射することは、このインターカレーターを励起された状態[Ru(bipy)2+*にする。
【0054】
いくつかの実施形態では、電極22は、[Ru(bipy)2+*を[Ru(bipy)3+に酸化するが、[Ru(bipy)2+はそうしない電位の偏位される。インターカレーター−標識核酸を照射することは、インターカレートされた[Ru(bipy)2+*を生成し、これは、電極22によって[Ru(bipy)3+に酸化され、光電流を生成する。プローブ24がハイブリダイズしない場合、インターカレーター30は結合せず、そして光電流は観察されない。
【0055】
任意の理論に拘束されることなく、光電子量子は、励起された[Ru(bipy)2+*から電極22に機械的にトンネルを通り抜けると考えられる。トンネル通り抜けの速度は、[Ru(bipy)2+*と電極22との間の距離に依存するので、光電流は、電極表面の近傍にある[Ru(bipy)2+*分子によってのみ生成される。代表的には、電極22の表面に付着した標的−プローブ二重鎖に結合したような[Ru(bipy)2+*分子のみが、光電流を生成するに十分なこの電極の近傍にある。その他の研究は、DNA二重ヘリックス自体が、電子移動を容易にすることを示す。例えば、Murphyら、「DNAインターカーレーションを通る迅速光誘導電子移動」Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1994、91、5315を参照のこと。
【0056】
その他の実施形態では、[Ru(bipy)3+を[Ru(bipy)2+に還元するが、[Ru(bipy)2+を[Ru(bipy)1+に還元しない犠牲的還元剤が添加される。この実施形態では、上記電極22は、[Ru(bipy)2+*を[Ru(bipy)3+に酸化するが、[Ru(bipy)2+はそうしない電位に偏位される。インターカレーター−結合核酸を照射することは、インターカレートされた[Ru(bipy)2+*を生成し、これは、電極によって酸化されて[Ru(bipy)3+に酸化し、光電流を生成する。犠牲的還元剤は、インターカレートされた[Ru(bipy)3+を、[Ru(bipy)2+に戻す。[Ru(bipy)2+は、この実施形態では再生されるので、光電流は、この犠牲的還元剤が消費されるか、または照射が終了されるまで継続する。ここで再び、プローブがハイブリダイズしないとき、結合するインターカレーター30はなく、そして光電流は観察されない。
【0057】
なお別の実施形態では、[Ru(bipy)2+*を[Ru(bipy)3+に酸化するが、[Ru(bipy)2+はそうしない犠牲的酸化剤がシステムに添加される。電極は、[Ru(bipy)3+を[Ru(bipy)2+に還元するが、[Ru(bipy)1+にしない電位に偏位される。インターカレーター−結合核酸を照射することは、インターカレートされた[Ru(bipy)2+*を生成し、これは、犠牲的酸化剤によって[Ru(bipy)2+に酸化されて光電流を生成する。この実施形態では、[Ru(bipy)2+が再生されるので、光電流は、この犠牲的酸化剤が消費されるか、または照射が終了するまで継続する。ここで再び、プローブがハイブリダイズしないとき、結合するインターカレーター30はなく、そして光電流は観察されない。その他にこのアッセイを妨害しない任意の犠牲的酸化剤が用いられ得る。[Co(C)]3−およびビドラジンが適切な犠牲的酸化剤である。
【0058】
先行する記載は、光支援酸化を受ける光電気化学的インターカレーターを論議している。当業者は、光支援還元を受ける光電気化学的インターカレーターもまた開示された発明の範囲内で用いられ得ることを明確に理解する。
【実施例】
【0059】
Au作動電極、Ptワイヤー対電極、およびAg/AgCl参照電極を備えた3電極電気化学的セルを、電位の偏位を制御するようセットアップされ、そして電流を測定するポテンショスタットに接続した。光源は、ピンホールを通じて50−μmのビームサイズに焦光された405−nmのダイオードレーザー、および作動電極表面上の1セットの光学的レンズであった。コンピューターを用いてこのレーザーを矩形波(オフ−オン)によって調整し、そしてデータ獲得ボードを通じてデータを獲得した。
【0060】
金の作動電極は、硫酸および30%の過酸化水素の70/30−V/V溶液で清澄化し、次いで、脱イオン水で完全にすすいだ。チオール化プローブオリゴヌクレオチドX20(チオール−AACCAGGATTATCCGCTCAC)を電極の表面上に配置し、そして電極を脱イオン水で完全にすすいだ。このプローブを金表面上の単層に自己アセンブルした。1×SSC緩衝液中の標的オリゴヌクレオチドT20(GTGAGCGGATAATCCTGGTT)をこの電極に添加し、そして38℃でハイブリダイズさせた。この電極を1×SSC緩衝液ですすぎ、任意の過剰の標的を除去した。1×SSC緩衝液中の[Ru(bipy)]Clの1mM溶液を電極に添加し、そして電極を1×SSC緩衝液ですすいだ。光電気化学的検出を、50mM EDTAおよび0.1mM NaCl中で実施した。電極電位は、Ag/AgCl参照電極に対し0〜0.7Vであった。
【0061】
レーザーが1Hzで調整される試験では、32Hzで、そして電極電位が0.5Vであた収集されたデータは、図4で提供されるデータを生成した。一本鎖DNAのデータでは、電流は、レーザーの調整で認知し得る変化をしなかった。二本鎖DNAデータでは、電流は、レーザーの調整とカップルしている。図5は、電極における電位に対する光電流の依存性を示す。
【0062】
上記に示され、かつ記載された実施形態は、例示のみとして提供される。種々の変更および改変が、本明細書の教示の思想および範囲から逸脱することなく、当業者によって、本明細書中に存在する実施形態になされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本明細書に開示される光電気化学的方法を実施するために適切な装置の実施形態の概略である。
【図2】図2は、開示される方法が作動され得る可能な機構を示す。
【図3】図3は、開示される方法のいくつかの実施形態のフローチャートである。
【図4】図4は、[Ru(bipy)2+およびEDTAの存在下、一本鎖および二本鎖DNAで修飾された電極で測定された光電流である。
【図5】図5は、二本鎖DNAで修飾された電極の電位と、[Ru(bipy)2+およびEDTAの存在下で観察された光電流との間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸配列を検出するためのシステムであって:
電極およびそれに付着した核酸プローブを備えた支持体であって、該核酸プローブが該標的核酸配列に相補的な配列を含む、支持体;
該核酸プローブと接触するための非共有結合光電気化学的標識;
該核酸プローブを照射するための光源;および
該電極で電流を測定するためのデータ収集コントローラー、を備える、システム。
【請求項2】
前記核酸プローブがDNAを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記核酸プローブがRNAを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記標的核酸配列がDNA配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記標的核酸配列がRNA配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記支持体が核酸プローブ要素のアレイを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記アレイが約10より多い核酸プローブ要素を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記電極が、金、白金、シリコン、ガラス状炭素、グラファイト、インジウム−錫酸化物、およびダイヤモンドの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記非共有結合光電気化学的標識が:
ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、および白金の少なくとも1つを含む金属;および
ポリピリジルリガンドである2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ジピリド[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン、9,10−フェナントレンキノンジイミン、2,2’:6,2’’−ターピリジン、およびその誘導体の少なくとも1つを含むリガンドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記非共有結合光電気化学的標識が:[Ru(bipy)2+、[Ru(bipy)dppz]2+、[Ru(phen)2+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記光源がレーザーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記光源が可視光を照射する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記核酸プローブと接触するための犠牲的還元剤をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記犠牲的還元剤が、三級アミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの塩の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記支持体を走査するための光学的スキャナーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記支持体のための流体取り扱いシステムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記支持体のための温度制御システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記支持体が機械読み取り可能な識別印をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
標的核酸配列を検出するための方法であって:
核酸プローブを、標的核酸および非共有結合光電気化学的標識と接触し、反応混合物を形成する工程であって、
ここで、該核酸プローブが電極に取り付けられ、該核酸プローブが該標的核酸配列に相補的な配列を含み、そして支持体が該核酸プローブおよび該電極を備える、工程;
該混合物を照射する工程;および
該電極で光電流を観察する工程であって、該光電流が該標的核酸の存在および/またはその量を示す、工程、を包含する、方法。
【請求項20】
前記核酸プローブがDNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸プローブがRNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記標的核酸がDNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記標的核酸がRNAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記支持体が核酸プローブ要素のアレイを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記アレイが約10より多い核酸プローブ要素を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記電極が、金、白金、シリコン、ガラス状炭素、グラファイト、インジウム−錫酸化物、およびダイヤモンドの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記非共有結合光電気化学的標識が:
ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、および白金の少なくとも1つを含む金属;および
ポリピリジルリガンドである2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ジピリド[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン、9,10−フェナントレンキノンジイミン、2,2’:6,2’’−ターピリジン、およびその誘導体の少なくとも1つを含むリガンドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記非共有結合光電気化学的標識が:[Ru(bipy)2+、[Ru(bipy)dppz]2+、[Ru(phen)2+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸プローブがレーザーを用いて照射される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸プローブが可視光で照射される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記核酸プローブを犠牲的還元剤または犠牲的酸化剤と接触する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記犠牲的還元剤が、三級アミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの塩の少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記核酸プローブを、核酸ハイブリダイゼーションを誘導する条件下に維持する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記核酸プローブを洗浄し、過剰の核酸標的を除去する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸プローブを洗浄し、過剰の非共有結合光電気化学的標識を除去する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
標的核酸配列を検出するためのキットであって:
電極およびそれに付着した核酸プローブを備えた支持体であって、該核酸プローブが該標的核酸配列に相補的な配列を含む、支持体;および
非共有結合光電気化学的標識を備える、キット。
【請求項37】
前記核酸プローブがDNAを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記核酸プローブがRNAを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記支持体が核酸プローブ要素のアレイを備える、請求項36に記載のキット。
【請求項40】
前記電極が、金、白金、シリコン、ガラス状炭素、グラファイト、インジウム−錫酸化物、およびダイヤモンドの少なくとも1つを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項41】
前記非共有結合光電気化学的標識が:
ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、および白金の少なくとも1つを含む金属;および
ポリピリジルリガンドである2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ジピリド[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン、9,10−フェナントレンキノンジイミン、2,2’:6,2’’−ターピリジン、およびその誘導体の少なくとも1つを含む、リガンド、を含む、請求項36に記載のキット。
【請求項42】
前記非共有結合光電気化学的標識が:[Ru(bipy)2+、[Ru(bipy)dppz]2+、[Ru(phen)2+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
犠牲的還元剤または犠牲的酸化剤をさらに含む、請求項36に記載のキット。
【請求項44】
前記犠牲的還元剤が、三級アミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの塩の少なくとも1つを含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記支持体が機械読み取り可能な識別印をさらに備える、請求項36に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−506644(P2006−506644A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553608(P2004−553608)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036197
【国際公開番号】WO2004/046369
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】