説明

案内装置

【課題】案内レールとスライダと転動体を備えた案内装置において、スライダ内に浸入した液体を素早く外部に排出できるようにする。
【解決手段】スライダ本体2Aは、戻し通路24と外部を連通させるドレン通路25を有する。ドレン通路25は、戻し通路24の下端部から斜め下方に延びて、スライダ本体2Aの側面26に至る。すなわち、ドレン通路25の開口25aは、スライダ本体2Aの側面26の戻し通路24より下側となる位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、案内レールとスライダと転動体を備えた案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
案内レールとスライダと転動体を備えた案内装置としては、直線状に延びる所定長さの案内レールを有する直動案内装置と、無端状の案内レールを有する曲線運動案内装置が挙げられる。直動案内装置は、図6および7に示すように、案内レール1とスライダ(「ベアリング」とも称される)2と複数個のボール(転動体)3とを備えている。
案内レール1およびスライダ2は、互いに対向配置されて転動体3の転動通路を形成する転動溝11,21を有する。この例では、案内レール1の側面と上角部に転動溝11が形成されており、側面に形成されている軌道溝を11a、上角部に形成されている軌道溝を11bで示す。
【0003】
スライダ2は、案内レール1の幅方向両側に配置される脚部22と、両脚部22の上部を連結する胴部23とからなる。案内レール1の長手方向で、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その移動方向両端部に固定されたエンドキャップ2Bおよびサイドシール2Cとからなる。サイドシール2Cは、案内レール1とスライダ2の隙間を塞いでスライダ2の内部に異物が侵入することを防止する。
【0004】
スライダ2は、また、転動体3の戻し通路24と、この戻し通路24と前記転動通路とを連通させる方向転換路を有する。転動溝11a,11bと戻し通路24はスライダ本体2Aに形成されている。方向転換路はエンドキャップ2Bに形成されている。そして、前記転動通路、戻し通路、および方向転換路で転動体の循環経路が構成され、この循環経路内をボール3が循環することにより、案内レール1およびスライダ2の一方が他方に対して相対的に直線運動する。
【0005】
このような直動案内装置を冷却水などの液体がかかる環境で使用すると、その液体が、スライダ2を構成する各部品の継ぎ目などからスライダ2内に浸入する恐れがある。しかし、これまでに、直動案内装置のスライダ2内に浸入した液体を外部に排出する機構についての提案はなされていない。
なお、特許文献1には、冷却水がかかる用途で使用されるころ軸受に関し、外輪部材に排水路を形成することで、非接触形密封手段から効果的に水抜きを行うことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−173669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、案内レールとスライダと転動体を備えた案内装置において、スライダ内に浸入した液体を素早く外部に排出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の案内装置は、下記の構成(1) 〜(5) を有する案内装置であって、下記の構成(6) を有することを特徴とする。
(1) 案内レールと、スライダと、複数個の転動体と、を備える。
(2) 前記スライダは、前記案内レールの幅方向両側に配置される脚部と、両脚部の上部を連結する胴部とからなる。
(3) 前記案内レールおよびスライダは、互いに対向配置されて転動体の転動通路を形成する転動面を有する。
(4) 前記スライダは、スライダ本体と、その移動方向両端部に固定されたエンドキャップとを有する。
(5) 前記スライダ本体は前記転動面と前記転動体の戻し通路を有し、前記エンドキャップは前記戻し通路と前記転動通路とを連通させる方向転換路を有し、前記転動通路、戻し通路、および方向転換路で転動体の循環経路が構成され、前記循環経路を転動体が循環することにより、案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に案内レールに沿って運動する。
(6) 前記スライダ本体は、前記戻し通路と外部を連通させるドレン通路を有し、前記ドレン通路の開口は、前記スライダ本体の側面の前記戻し通路より下側となる位置および前記脚部の下面の少なくともいずれかに形成されている。
【0009】
前記構成(1) 〜(5) を有する案内装置を、冷却水などの液体がかかる環境で使用してスライダ内に液体が浸入した場合、その液体は前記戻し通路内に溜まることが多いが、この発明の案内装置によれば、前記戻し通路内に入った液体が前記ドレン通路から外部に排出される。
【発明の効果】
【0010】
この発明の案内装置によれば、スライダ内に浸入した液体をドレン通路から素早く外部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1および第2実施形態の直動案内装置を示す部分破断正面図であって、図2および図3のA−A断面図に相当する。
【図2】第1実施形態の直動案内装置のスライダを示す側面図である。
【図3】第2実施形態の直動案内装置のスライダを示す側面図である。
【図4】第3実施形態の直動案内装置を示す部分破断正面図である。
【図5】第4実施形態の直動案内装置を示す部分破断正面図である。
【図6】直動案内装置の従来例を示す側面図である。
【図7】直動案内装置の従来例を示す部分破断正面図であって、断面部は図6のA−A断面に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、この実施形態の直動案内装置では、スライダ本体2Aに、戻し通路24と外部を連通させるドレン通路25が形成されている。これ以外の点は図6および7に示す従来例と同じである。
戻し通路24は、スライダ本体2Aの両脚部22に2列ずつ合計4列形成されている。これら全ての戻し通路24にドレン通路25が設けられている。ドレン通路25は、各戻し通路24とスライダ本体2Aの外部を連通させる円柱状の穴である。各戻し通路24用のドレン通路25は、図2に示すように、スライダ本体2Aの移動方向に沿って複数個、等間隔で形成されている。
【0013】
全てのドレン通路25は、各戻し通路24の下端部から斜め下方に延びて、スライダ本体2Aの側面26に至っている。すなわち、ドレン通路25の開口25aは、スライダ本体2Aの側面26の戻し通路24より下側となる位置に形成されている。
ドレン通路25の形成は、スライダ本体2Aに戻し通路24を切削加工で形成した後、スライダ本体2Aの側面26から切削加工することで行う。
【0014】
この実施形態の直動案内装置によれば、冷却水などの液体がかかる環境で使用して液体がスライダ2内に浸入した場合に、戻し通路24内に入った液体がドレン通路25から外部に排出される。そのため、スライダ2内に浸入した液体をドレン通路25から素早く外部に排出できる。
したがって、スライダ2内に液体が溜まった状態で直動案内装置を停止したままにすることにより生じる不具合、例えば、溜まった液体により鉄鋼製の戻し通路24およびボール(転動体)3に腐食が生じたり、液体が潤滑剤に混入された状態となって潤滑性能が低下したりすることが防止できる。
【0015】
[第2実施形態]
図3は、この実施形態の直動案内装置を構成するスライダの側面図である。図3のA−A断面図は図1と同じである。図3に示すように、ドレン通路25の断面形状および開口25aの形状が長穴である。また、各戻し通路24用に、スライダ本体2Aの移動方向に沿って二個のドレン通路25が形成されている。これらの点以外は第1実施形態と同じである。
この実施形態の直動案内装置によれば、第1実施形態と同じ効果が得られるとともに、第1実施形態と比較して、大きな断面形状および開口25aのドレン通路25が少ない数で形成されていることで、製造コストが低減できる効果もある。
【0016】
[第3実施形態]
図4は、この実施形態の直動案内装置を示す部分破断正面図である。
上側の戻し通路24には、第1実施形態と同じく、戻し通路24の下端部から斜め下方に延びて、スライダ本体2Aの側面26に至るドレン通路25が形成されている。下側の戻し通路24は、戻し通路24の下端部から真下に延びて、スライダ本体2Aの下面27に至るドレン通路25が形成されている。すなわち、ドレン通路25の開口25aがスライダ本体2Aの下面27に形成されている。
【0017】
[第4実施形態]
図5は、この実施形態の直動案内装置を示す部分破断正面図である。
この例では、右側の脚部22で、上側の戻し通路24には、第1実施形態と同じく、戻し通路24の下端部から斜め下方に延びて、スライダ本体2Aの側面26に至るドレン通路25が形成されている。下側の戻し通路24は、戻し通路24の下端部から真下に延びて、スライダ本体2Aの下面27に至るドレン通路25が形成されている。すなわち、ドレン通路25の開口25aがスライダ本体2Aの下面27に形成されている。
【0018】
左側の脚部22では、上側および下側の戻し通路24の両方で、第1実施形態と同じく、戻し通路24の下端部から斜め下方に延びて、スライダ本体2Aの側面26に至るドレン通路25が形成されている。
このように左右の脚部22でドレン通路25を非対称に設けてもよいし、対称に設けてもよい。
【0019】
なお、上記各実施形態では、転動体がボール3の例について説明しているが、この発明は、転動体がころの場合でも適用できる。
また、上記各実施形態では、戻し通路24が、スライダ本体2Aの両脚部22に2列ずつ合計4列形成されている例について説明しているが、この発明は、循環経路が4路以外の案内装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0020】
1 案内レール
11a,11b 案内レールの転動溝(転動面)
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
2C サイドシール
21 スライダの転動溝(転動面)
22 脚部
23 胴部
24 戻し通路
25 ドレン通路
25a ドレン通路の開口
26 スライダ本体の側面
27 スライダ本体の下面
3 ボール(転動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、スライダと、複数個の転動体と、を備え、
前記スライダは、前記案内レールの幅方向両側に配置される脚部と、両脚部の上部を連結する胴部とからなり、
前記案内レールおよびスライダは、互いに対向配置されて転動体の転動通路を形成する転動面を有し、
前記スライダは、スライダ本体と、その移動方向両端部に固定されたエンドキャップとを有し、
前記スライダ本体は前記転動面と前記転動体の戻し通路を有し、前記エンドキャップは前記戻し通路と前記転動通路とを連通させる方向転換路を有し、
前記転動通路、戻し通路、および方向転換路で転動体の循環経路が構成され、
前記循環経路を転動体が循環することにより、案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に案内レールに沿って運動する案内装置において、
前記スライダ本体は、前記戻し通路と外部を連通させるドレン通路を有し、
前記ドレン通路の開口は、前記スライダ本体の側面の前記戻し通路より下側となる位置および前記脚部の下面の少なくともいずれかに形成されていることを特徴とする案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92216(P2013−92216A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235259(P2011−235259)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】