説明

桟橋床版撤去方法

【課題】桟橋のコンクリート床版を従来よりも小さいブロックにして切り出し、かつ切断ブロックが落下しないように支持し、安全に吊り上げ撤去できる。
【解決手段】杭頭部3を含む切断ブロック12aと杭頭部間の切断ブロック12bを切り取るように縦、横の切断線15、16によりコンクリート床版1を平面的に区画する。縦、横の切断線15、16を跨ってブロックの上面に配設された押さえ金具20の一端が杭頭部3を取り囲むようにその縁部を押さえる。押さえ金具20の他端は縦、横の切断線15、16を介して杭頭部3の縁部と隔てられた側の切断ブロックを上下方向に貫通するアンカー部材19の上端に固定される。縦と横の切断線15、16に沿って鉛直方向にブロックを切断し、杭頭部間の切断ブロック12bを吊り上げ撤去した後、杭周辺を鉛直方向に切断し、杭2から切り離された杭頭部3を含む切断ブロック12aを吊り上げ撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート(RC構造)で施工された桟橋で、老朽化が進み、取り替えが必要となったコンクリート床版を撤去する方法に係り、該コンクリート床版を小さく切断して撤去し、かつ安全に切断・撤去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した桟橋のコンクリート床版を切断して吊り上げ撤去する場合、切断されるコンクリートブロックの表面に盲孔を削孔し、その盲孔にアンカー部材を挿入し、アンカー部材を樹脂系の接着剤で固定するケミカルアンカー部材により吊り治具を固定し、クレーン等の揚重機により吊り上げて撤去する方法が採用されてきた。
【0003】
すなわち、図7、図8に示すように、桟橋のコンクリート床版1は、杭2を打ち込みその杭頭部3に杭頭コンクリートを打設し、杭頭部3の間に梁4を含むコンクリートスラブを構築してコンクート床版1とされている。コンクリート床版1を老朽化により切断・撤去するときは、前後左右に多数存在する杭2とその間に一体的になって展在するコンクリート床版1を平面的にみて縦切断線5と横切断線6で示す位置をワイヤーソーで鉛直方向に切断するとともに、杭2の周辺をチエーンソーを用いて杭の周辺部切断線7に沿って鉛直方向に切断して、所定大きさの切断ブロック8を切り出し、この切断ブロック8の上面部にケミカルアンカー10を取り付け、これにクレーン等の揚重機のワイヤーに取り付けた吊治具11を連結して吊り上げて撤去する方法が採用されている。
【0004】
コンクリート床版を切断して撤去する際、 切り取る切断ブロック8の大きさは、大きい方が切断回数を少なくできて好都合であるが、あまり大きい切断ブロックでは大型の揚重機が必要になり、運搬も困難で、さらには切断時に不安定であるなどの不利がある。このため前記両方の条件を満たすような大きさの切断ブロックとして切り出される。さらに、コンクリート床版は、杭頭部と他の部位でコンクリート厚が均一ではなく、部分ごとに厚い場所と薄い場所が存在し、このような大小様々な厚み断面が存在するコンクリート床版を所定の大きさの単位に切断したとき、コンクリートの重心が、切断ブロックの吊り上げ中心と一致しているとは限らず、中心部から外れた位置にあることが多い。
【0005】
この場合、切断ブロックの平面対称の2点位置を吊り上げ支点とし、クレーン等の揚重機により吊り上げるとき、吊り上げ中心と切断ブロックの重心がずれているためアンバランスになって傾くことが多い。切断ブロックを吊り上げるとき、該切断ブロックが傾くとワイヤーソーの切断跡である1cm程度の切断間隙を介して隣接のコンクリート床版の切断面とぶつかり、水平を保って円滑に吊り上げることが困難になる。
【0006】
前記の問題点に鑑みて、コンクリート床版等の複雑な形状のコンクリート構造物を切断してバランスを取りながら吊り上げ撤去する方法として、特開2003−252563(特許文献1)が提案されている。この従来技術の撤去方法において、コンクリート床版を一回で吊り上げ作業で撤去するための1つの切断ブロックの大きさは、図7に示した縦、横の切断線5、6で示す切断区画から切り出されている。この切断ブロック8にはコンクリート厚が厚くて重量が大きくなる2つの柱頭部3が含まれているために大型のクレーン等の揚重機が必要である。
【特許文献1】特開2003−252563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
桟橋の老朽化したコンクリート床版を切断・撤去するときの一つ一つの切断ブロックは、できるだけ小さい重量のブロックに切断すれば揚重機が小型ですみ、かつ、1cm程度の小さい切断間隙を介して安全確実に吊り上げるうえで好ましい。この点から、特開2003−252563号公報のように、2つの杭頭部を含むブロックを1切断ブロック単位として切り出すと、この切断ブロックは重量が重くなり(この場合、普通は約50トンの重量がある)、それに伴って吊り上げる重機も大型とならざるを得ない。
【0008】
このことから、図7、図8の切断ブロックをさらに2分割して切断することが考えられる。その2分割の方法として、杭頭部の存在する切断ブロックの列と、杭頭部の存在しない切断ブロックの列との2列に分けて切断し、その後に、各列をさらに直角方向に切断して、2種類の小さい切断ブロックを切り出すことが考えられる。
【0009】
しかし、その場合は、杭頭部の存在しない切断ブロックの列では、該切断ブロックが切断されると上方から吊り支持される部材が存在しないと、切断と共に落下する問題が生じる。また。杭頭部の存在する列の各切断ブロックには長手方向に片寄った位置に1つの杭頭部が存在するだけであるので、該切断ブロックの水平バランスを保って、かつ、小さい切断間隙を利用して安定に吊り上げるのは極めて困難である。
【0010】
前記から従来は一般に、比較的バランスよく2点支持で吊り上げ可能な最小の切断ブロックとなるように、最低2つの柱頭部が含まれるように切断される。しかし、このような切断であると切断ブロックの重量が大きくなり、揚重機は大きな吊り上げ能力を有していることが必要となる。また、切断ブロックの重量が大きいほど、正確に水平を保って吊り上げる作業が困難となる。さらに、切断中も大きい重量を水平に支えて切断しなければならず、切断作業に困難が伴う。
【0011】
本発明は、前記従来例の欠点に鑑みて提案されたもので、老朽化により切断・撤去する桟橋におけるコンクリート床版の切断ブロックをできるだけ小さいブロックに切断することで、小型の揚重機で安全、迅速に吊り上げ可能とする。また、杭頭部の存在する列と杭頭部の存在しない列とに分けて切断し、1つの杭頭部のある切断ブロックと、杭頭部間の切断ブロックの2種類が生じるように切断する。そして、杭頭部間の切断ブロックも切断時に簡易な支持手段で支持することで落下のおそれをなくし、かつ、両切断ブロックともに、円滑に吊り上げて撤去できるようにした、桟橋の床版撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するため、本発明は次のように構成する。
【0013】
第1の発明は、桟橋の床版撤去方法において、杭頭部を含む切断ブロックと杭頭部間の切断ブロックが切り出されるように平面的に縦切断線と横切断線により床版を区画し、前記縦、横の切断線を跨ってブロックの上面に配設された押さえ金具の一端で杭頭部を含む切断ブロックの縁部を押さえ、かつ該押さえ金具は縦、横の切断線を介して杭頭部を含む切断ブロックの縁部と隔てられた側の切断ブロックを上下方向に貫通するアンカー部材の上端に固定し、前記縦、横の切断線に沿って鉛直方向にブロックを切断し、杭頭部間の切断ブロックを吊り上げ撤去した後、杭周辺を鉛直方向に切断し、杭から切り離された杭頭部を含む切断ブロックを吊り上げ撤去することを特徴とする。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記押さえ金具は、所定長の溝形鋼で構成され、該溝形鋼の上面をアンカー部材のねじ部に螺合したナットにて押さえ、該ナットからさらに上方に伸びるアンカー部材の上端を吊ワイヤーを連結する吊治具のボルト挿入孔に通したうえナットにて締結することを特徴とする。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記縦、横の切断線で区画される杭頭部間の切断ブロックの重心位置と吊ワイヤーを一定長さに設定することによる吊り中心位置を合致させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、杭頭部を含む切断ブロックと杭頭部間の切断ブロックを切り取ることで、従来よりも小さい区画で切断ブロックを切り取ることができ、これにより各切断ブロックの重量を軽くできるので、小型の揚重機をによる吊り上げが容易となり、かつ、アンバランスな切断ブロックの水平を確保して安全に撤去することができる。しかも、杭頭部のない側の切断ブロックは、吊り兼用押さえ金具を介して杭頭部のある切断ブロック側で支持されるので、前記押さえ金具により切断後も落下するおそれがなく、したがって、切断時に杭頭部間の切断ブロックを上方から吊り支持していなくても円滑に切断できる。吊り兼用押さえ金具の構成は簡潔である。
【0017】
また、本発明の吊り兼用押さえ金具を設置することにより、所定面積を縦および横の切断線に沿って切断して複数の切断ブロックを切り取っておき、その後に切断ブロックを順次吊り上げて撤去できるので、ブロックの切断作業と吊り上げ作業にグループ化でき、1つの切断ブロック毎に切り出し作業と吊り上げ作業を交互に行う従来方法に比べて作業変えによる時間のロスが少なくでき撤去作業を効率的に行うことができる。
【0018】
さらに、杭頭部間の切断ブロックの重心位置と吊ワイヤーを一定長さに設定切断され吊り上げ撤去される床版ブロックの重心位置を合致させて、当該切断ブロックを吊り上げるので、杭頭部間の切断ブロックの吊り上げ撤去作業が安全に且つ効率的に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態を図により説明する。
【0020】
図1は、桟橋の撤去予定のコンクリート床版を示す平面図であり、図2は、図1のA−A断面図、図3(a)(b)は、吊り兼用押さえ金具の詳細図、図4(a)(b)は、切断ブロックの吊り上げのため、吊り兼用押さえ金具に吊治具を吊り降ろしている状態の詳細図、図5は、吊り兼用押さえ金具に吊治具を結合した状態を示す詳細図、図6は、コンクリート床版の端部の吊り上げ態様を示す詳細図である。
【0021】
図1、図2に示すように、桟橋のコンクリート床版1は、杭頭部3に杭頭コンクリートを打設し、杭頭部3の間に梁4を含むコンクリートスラブを構築してコンクート床版1とされている。
【0022】
本発明では、このコンクリート床版1を老朽化により切断・撤去するに際し、前後左右に多数存在する杭2とその間に一体的になって展在するコンクリート床版1を平面的にみて縦切断線15と横切断線16(切断予定線と同じ意味)で示す位置をワイヤーソーで鉛直方向に切断するとともに、杭2の周辺部を鉛直方向に切断することで、杭頭部3を杭2の周辺部から切離して、所定大きさの切断ブロック12を切り出し、これをクレーン等の揚重機により吊り上げて撤去するに際し、切断ブロック12を区画形成する縦切断線15と横切断線16の位置が従来と異なっていると共に、切断に際し、切断ブロックの転倒防止手段が従来と相違している。
【0023】
さらに説明すると、杭頭部3の両側に沿って多数の縦切断線15を区画することによって、杭頭部3を含む切断ブロック列13と杭頭部間の切断ブロック列14が横方向に交互に形成される。さらに縦切断線15と直交して、かつ、各杭頭部3の一側に近接した位置に横切断線16を通して区画することで、この横切断線16と縦切断線15とで区画される部位に一つの杭頭部3を含む切断ブロック12aと、杭頭部間の切断ブロック12bとの2種類が区画形成される。このように一つの杭頭部3を含む切断ブロック12aと、杭頭部間の切断ブロック12bの何れも、図7、図8に示す、従来の杭頭部3を2つ含む切断ブロックに比べて、その重量は大幅に低減化されている。
【0024】
前記のとおり縦切断線15は、杭頭部3の両側に沿って延長しており、横切断線16は、各杭頭部3の一側に近接した位置を横方向に延長しているので、切り出された切断ブロック12aの杭頭部3は、平面的に長手方向の一側に片寄って位置している。また、杭頭部3の存在しない切断ブロック12bでは、梁4が平面的にみて長手方向の一側に片寄って位置している。このことから、各切断ブロック12a、12bは各部でコンクリート床版の厚みが変化しており、いずれも重心が中心から偏って位置している。
【0025】
また、縦、横の切断線15、16に沿ってコンクリート床版1から切断ブロック12a、12bを切り出す前に、押さえ金具18とアンカー部材19とからなる吊り兼用押さえ金具20をコンクリート床版1の所定の平面位置に多数配設する。押さえ金具18は、短尺に切断した2本の溝形鋼のウエブを背中合わせに配置して構成され、この押さえ金具18は縦、横の切断線15、16を跨いでコンクリート床版1の上面に配置され、一端が杭頭部3に係合するように設けられる。
【0026】
図3に示すようにアンカー部材19は、切断ブロック12を上下方向に貫通して設けられ、切断ブロック12の下面においてアンカー部材19の下端ねじ部にアンカープレートを介してナット22を締結して固定されている。アンカー部材19の上端部は、押さえ金具18の2本の溝形鋼の間を立ち上がっており、その上端部のねじ部に螺合したナット22にて定着板23を介して溝形鋼の上面を押さえている。アンカー部材19の上端はさらに所定寸法上方に伸びている。
【0027】
揚重機(図示省略)から垂下する吊り上げワイヤー24の下端には吊治具25が設けられている。吊治具25はボルト挿通孔26が形成された底板27の下面に脚部材28を取り付けた箱型断面であり、躯体29を横方向に貫通した支軸30の両端にナット31を締結し、該支軸30に吊り上げワイヤー24の下端が係合されている。
【0028】
吊治具25は、図4と図5に示すように上方から吊り降ろしてアンカー部材19の上端を底板27のボルト挿通孔26に通し、ナット32を締結することで吊治具25を吊り兼用押さえ金具20に固着できる。
【0029】
図1に示すように杭頭部3を取り囲んで複数配設される吊り兼用押さえ金具20のうち、両側部の4個の押さえ金具18のアンカー部材19は、杭頭部間の切断ブロック12bの側に設けられていて、その押さえ金具18の一端は杭頭部3の縁部を押さえている。また、杭頭部3を含む切断ブロック12aの列13において、杭頭部3から離れた側の一端部33にも吊り兼用押さえ金具20のアンカー部材19が設けられ、これに締結された押さえ金具18の一端が杭頭部3の縁部を押さえている。
【0030】
吊り兼用押さえ金具20は、図1の(イ)部に示す配置で杭頭部3を取り囲むように多数設けられる。このとき吊り兼用押さえ金具20は図3に示す状態にある。次に、縦切断線15に沿って縦列を杭頭部3の両側に沿ってワイヤーソーなどで鉛直方向に切削する。この場合、コンクリート床版の厚み方向の下方から上方に向けて吊り兼用押さえ金具20にぶつかる手前まで切断する。これによりコンクリート床版は、杭頭部3を含む切断ブロック列13と、杭頭部間の切断ブロック列14とに切断分離される。続いて横切断線16に沿って横列を切削する。これにより、平面的に見て杭頭部3を含む切断ブロック12aと、杭頭部間の切断ブロック12bが切り出される。
【0031】
このとき杭頭部3はまだ、杭2自体とは切離されていないので、杭2を介して杭頭部3を含む列の切断ブロック12aは安定に自立している。他方、杭頭部間の切断ブロック12bは、支持手段が存在しないと落下するが、吊り兼用押さえ金具20を介して杭頭部3を含む切断ブロック12aに支持されるので落下しない。このようにしてコンクリート床版1の所定の面積に渡って多数の切断ブロック12a、12bを切り出しておく。
【0032】
続いて、図4に示すように、クレーン等の揚重機(図示省略)から垂下する吊り上げワイヤー24の下端に設けた吊治具25を吊り降ろし、その底板27のボルト挿通孔26に吊り兼用押さえ金具20のアンカー部材19の上端ねじ部を挿通し、底板27の上面でナット32を締結して吊治具25を吊り兼用押さえ金具20に固定し、揚重機で杭頭部3の存在しない切断ブロック12bを吊り上げる。
【0033】
このとき切断ブロック12bは、図1に示すように4箇所の吊り兼用押さえ金具20で吊り上げられるので安定に水平を保って吊り上げることができる。この4個の吊り兼用押さえ金具20は、平面的に見て切断ブロック12bの片側に寄った位置に設けられているが、所定の計算により、この4箇所の吊り兼用押さえ金具20による吊り上げ中心と、切断ブロック12bの重心(記号34で示す)の位置が一致するように設けてあり、一定長さ(約10m)の吊り上げ用ワイヤー24により切断ブロック12bの吊り上げ撤去作業が安全、効率的に行われる。
【0034】
縦、横切断線15、16に沿ってコンクリート床版1を鉛直方向に切断し、杭頭部間の切断ブロック12bを吊り上げて撤去することにより、杭頭部3を含む切断ブロック12aが杭2で支持された状態で残る。この各切断ブロック12aは、杭2と一体であるので落下するおそれはない。そこで次に、チエーンソーを用いて図1、図2に示す杭周辺部切断線17に沿って杭2の周辺を平面的に見て矩形にかつ、鉛直方向に下方から上方に向けて切断する。これにより杭2の周辺に出張って設けられている杭頭部3を杭2から切り離すことができ、杭頭部3を含む切断ブロック12aが切り出される。切断ブロック12aは杭2から切離されたとき落下するので、その切断に際しては切断ブロック12aの長手方向の両端部をクレーン等の揚重機で吊り上げ支持した状態で切断し、切断が終わったならば、杭2を残して切断ブロック12aを吊り上げて撤去する。
【0035】
図6には、杭周辺部切断線17に沿って杭2の周辺を鉛直方向に下方から上方に向けて切断し、切断ブロック12aを杭2から切り離すときの切断ブロック12aの吊り支持状態が示されている。図6において、杭2から外れた位置において杭頭部3周辺を鉛直方向に貫通してアンカー部材36を設け、杭頭部3の下面において、アンカー部材36のねじ部にアンカープレートを介してナット32を締結し、このアンカー部材36を杭頭部3の上面から突出させる。さらに、アンカー部材36を定着板37と筒状部38が一体の脚部材39の内部を挿通し、さらに、筒状部38の上端に載置した吊治具25の底板27のボルト挿通孔26を通してアンカー部材36を立ち上げ、底板27の上面からアンカー部材36の上端のねじ部にナット32を締結することで吊治具25を切断ブロック12aの杭頭部3に結合する。切断ブロック12aにおける杭頭部3と反対側の端部には、吊り兼用押さえ金具20が設けられている。前記脚部材39は、その上部に設置する吊治具25(図6の左側)と押さえ金具18の上部に設置する吊治具25(図6の右側)の高さを揃えるために設けられる。
【0036】
前記のように切断ブロック12aの長手方向の両端部に設けた2つの吊治具25を揚重機の吊り上げ用ワイヤー24で吊り上げ支持することで、切断ブロック12aを安定に支持して杭周辺部切断線17に沿って杭2から切離できる。切離した後は切断ブロック12aを吊り上げて撤去できる。
【0037】
前記のようにして、杭頭部の切断ブロック12aをその両端部に設置した2つの吊治具25で支持することで、落下や傾斜の恐れなく切断ブロック12aを切り出すことができ、かつ、円滑に吊り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の切断方法により撤去する予定の桟橋のコンクリート床版を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a)は、図2のB部の吊り兼用押さえ金具の詳細図、(b)は、図(a)のC−C断面図である。
【図4】(a)(b)は、図3の吊り兼用押さえ金具に吊治具を吊り降ろす工程の説明図である。
【図5】(a)(b)は、図4の吊り兼用押さえ金具に吊治具を結合した説明図である。
【図6】杭頭部切断ブロックの切断時と吊り上げ時の吊り支持構造を示す断面図である。
【図7】従来の切断方法により撤去予定の桟橋のコンクリート床版を示す平面図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 コンクリート床版
2 杭
3 杭頭部
4 梁部材
5 縦切断線
6 横切断線
7 杭の周辺部切断線
8 切断ブロック
10 ケミカルアンカー
11 吊治具
12a 杭頭部を含む切断ブロック
12b 杭頭部間の切断ブロック
12c 周辺部切断ブロック
13 杭頭部を含む切断ブロック列
14 杭頭部間の切断ブロック列
15 縦切断線
16 横切断線
17 杭の周辺部切断線
18 押さえ金具
19 アンカー部材
20 吊り兼用押さえ金具
21 ナット
22 ナット
23 定着板
24 吊り上げ用ワイヤー
25 吊治具
26 ボルト挿通孔
27 底板
28 脚部材
29 躯体
30 支軸
31 ナット
32 ナット
33 一端部
34 重心
35 外端部
36 アンカー部材
37 定着板
38 筒状部
39 脚部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桟橋の床版撤去方法において、杭頭部を含む切断ブロックと杭頭部間の切断ブロックが切り出されるように平面的に縦切断線と横切断線により床版を区画し、前記縦、横の切断線を跨ってブロックの上面に配設された押さえ金具の一端で杭頭部を含む切断ブロックの縁部を押さえ、かつ該押さえ金具は縦、横の切断線を介して杭頭部を含む切断ブロックの縁部と隔てられた側の切断ブロックを上下方向に貫通するアンカー部材の上端に固定し、前記縦、横の切断線に沿って鉛直方向にブロックを切断し、杭頭部間の切断ブロックを吊り上げ撤去した後、杭周辺を鉛直方向に切断し、杭から切り離された杭頭部を含む切断ブロックを吊り上げ撤去することを特徴とする桟橋床版撤去方法。
【請求項2】
前記押さえ金具は、所定長の溝形鋼で構成され、該溝形鋼の上面をアンカー部材のねじ部に螺合したナットにて押さえ、該ナットからさらに上方に伸びるアンカー部材の上端を吊ワイヤーを連結する吊治具のボルト挿入孔に通したうえナットにて締結することを特徴とする請求項1記載の桟橋床版撤去方法。
【請求項3】
前記縦、横の切断線で区画される杭頭部間の切断ブロックの重心位置と吊ワイヤーを一定長さに設定することによる吊り中心位置を合致させたことを特徴とする請求項1または2記載の桟橋床版撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−183285(P2006−183285A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376422(P2004−376422)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】