説明

梯子、及び、梯子の設置方法

【課題】水密性の確保された梯子、及び、この梯子の設置方法を提供する。
【解決手段】一対の支柱22は、円筒形状とされ、継ぎ目なく各々が一体的に、すなわち、各々が1本のパイプで構成されている。ステップ30は、踏部32、取付部34、アーチリブ36、長リブ37、及び、短リブ38を備えている。踏部32は、一対の支柱22の間に架け渡される長さで構成され、上面が平坦形状とされている。取付部34は、踏部32の両端に構成され、略円筒形状とされ、円筒内部には、嵌合空間35が構成されている。支柱22が嵌合空間35へ嵌め込まれ、接着剤39を介して、取付部34と支柱22とが接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽などの水が貯留された場所で用いられる梯子、及び、この梯子の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション、テナントビル、工場、商業施設等には、飲料水、中水などを貯留する水槽が設置されている。このような水槽には、通常、点検や清掃などのために水槽内に出入りするための梯子が設置されている。ここで用いられる梯子は、衛生性、耐食性の観点より、樹脂製のものが主流である。そして、さらに衛生性を確保するために、パイプなどの中空部分に水が入り込まないように、水密性が要求されている。
【0003】
この水密性を確保するために、梯子を複数のパイプ部品を接続して構成する場合には、接続部分について、TS工法が用いられている。また、特許文献1に記載の技術では、接続部分について、金型を用いてブロー成型により密着させている。
【0004】
しかしながら、TS工法を用いた場合でも、接着不良が生じた場合には、接続部分からパイプ内に水が進入することも考えられる。また、特許文献1に記載の構造では、横木と柱との水密性については確保されているが、金型を用いているため、一体形成可能な柱の長さが制限されてしまい、柱については複数本のものを接続する必要がある。したがって、柱同士の接続部分について水が進入する可能性がある。
【特許文献1】特開2006−307605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、水密性の確保された梯子、及び、この梯子の設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の梯子は、各々が一体形成された一対の筒状の支柱と、前記一対の支柱間に支柱軸方向に間隔をあけて架け渡された複数のステップと、前記ステップの両端に前記支柱の外周面を囲むように各々形成され、前記支柱を嵌め込み可能とされた嵌合空間を構成する取付部と、を備え、前記支柱が前記嵌合空間に嵌め込まれた状態で、前記支柱の外周面と前記嵌合空間の内壁とが接着剤により接着されている。
【0007】
本発明の梯子によれば、支柱が一体形成されており、ステップも支柱の外面へ取付けるので、支柱やステップの内部に水が進入することがなく、水密性を確実に確保することができる。
【0008】
また、支柱が一体形成されているため、複数の部品を接続して支柱を構成する場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の梯子は、前記取付部に、前記支柱を前記嵌合空間へ嵌め込み可能とする開口が構成されていること、を特徴とする。
【0010】
このように、取付部に開口を構成することにより、容易に支柱を嵌合空間へ嵌め込むことができる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の梯子は、前記開口は、前記両端の各々で同一方向に向かって開口されていること、を特徴とする。
【0012】
このように、開口の開口方向を同一方向とすることにより、ステップの支柱への取付作業を効率的に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載する本発明の梯子は、前記取付部の内径が、前記支柱が嵌め込まれていない状態では、前記支柱の外径よりも小さいこと、を特徴とする。
【0014】
このように、取付部の内径を支柱の外径よりも小さく構成することにより、取付部の支柱への密着度が高くなり、取付強度を高くすることができる。
【0015】
請求項5に記載する本発明の梯子は、前記ステップの上面が平坦形状とされると共に、下側には一方の支柱から他方の支柱に架けて中央部の幅が短くなるようなアーチ形状のアーチリブが形成されていること、を特徴とする。
【0016】
このように、アーチリブを形成することにより、ステップの強度を高くすることができる。
【0017】
請求項6に記載する本発明の梯子は、前記ステップの下側に、一方の支柱から他方の支柱に架けて前記アーチリブを挟むように前記アーチリブよりも短い幅のリブが形成されていること、を特徴とする。
【0018】
このように、リブを設けることにより、ステップの強度を高くすることができると共に、リブをアーチリブよりも狭い幅とすることで、アーチリブの側面の清掃を行いやすくすることができる。
【0019】
請求項7に記載する本発明の梯子の設置方法は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の梯子の設置方法であって、前記一対の筒状の支柱を所定間隔開けて配置し、前記取付部の嵌合空間を構成する内壁、及び、前記一対の支柱の前記取付部が取付けられる被取付位置に接着剤を塗布し、前記取付部の前記嵌合空間へ前記支柱を嵌合させて前記ステップを前記一対の支柱へ取付けて、梯子を設置する。
【0020】
本発明によれば、一対の支柱の各々が一体形成されているので、部品を連結させて支柱を製作する必要がなく、容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の梯子、及び、梯子の設置方法によれば、水密性が確保され、梯子の設置も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本実施形態に係る梯子20は、図1に示すような、水槽10に設置されている。水槽10は、マンション、テナントビル、工場、商業施設等に設けられる、飲料水、中水などを貯留する水槽である。水槽10は、中仕切壁12によって2つの貯水室14、16に仕切られている。
【0023】
貯水室14、16の各々には、点検口14A、16Aが構成され、点検口14A、16Aから貯水室14、16の底部へ向かって、梯子20が設置されている。梯子20は、同一のものが、点検口14A、16Aの各々に設けられている。
【0024】
梯子20は、図2に示すように、一対の支柱22、複数のステップ30、上部取付部材24、及び、下部接続部材26を備えている。
【0025】
一対の支柱22は、円筒形状とされ、継ぎ目なく各々が一体的に、すなわち、各々が1本のパイプで構成されている。一対の支柱22は、鉛直方向に互いに平行に配置されている。
【0026】
支柱22の上端には、上部取付部材24が接続されている。上部取付部材24は、一端側が支柱22を挿入可能な円筒形状とされ(以下「上接続円筒部24A」という)、他端側が貯水室14、16の内壁に沿う平板形状とされ(以下「上取付平板部24B」という)ている。上接続円筒部24Aの内壁は、図3に示すように、開放側が大径となるようなテーパー形状とされている。上部取付部材24と支柱22とは、支柱22の上端を上接続円筒部24Aに挿入し、TS工法で接続されている。上取付平板部24Bには、孔23が構成されており、ボルトにより貯水室14、16の内壁に取付けられている。
【0027】
支柱22の下端には、下部接続部材26が接続されている。下部接続部材26は、U字形状とされ、U字の両端が支柱22を挿入可能な円筒形状とされると共に貯水室14、16の内壁に近づく方向に屈曲され(以下「下接続円筒部26A」という)、中間部26BがU字状に屈曲されている。下接続円筒部26Aの内壁は、上接続円筒部24Aと同様に、開放側が大径となるようなテーパー形状とされており、下部接続部材26と支柱22とは、支柱22の下端を下接続円筒部26Aに挿入し、TS工法で接続されている。
【0028】
ステップ30は、図4及び図5に示すように、踏部32、取付部34、アーチリブ36、長リブ37、及び、短リブ38を備えている。
【0029】
踏部32は、一対の支柱22の間に架け渡される長さで構成され、上面が平坦形状とされている。踏部32は、一対の支柱22の間に支柱22と直交する方向で配置されている。踏部32の上面には、滑り止め用の突線部32Aが構成されている。
【0030】
取付部34は、踏部32の両端に構成されている。取付部34は、略円筒形状とされ、軸方向の中間部から下側は、踏部32と逆側(端部外側)が切り欠かれて断面半円形状とされている。この切欠き部分は、必ずしも必要ではなく、取付部34は下側部分についても円筒状としてもよい。取付部34の円筒内部には、嵌合空間35が構成されている。取付部34の内径34Aは、支柱22に取付けられていない状態のときに、支柱22の外径22Aよりも僅かに小径とされている。したがって、支柱22が嵌合空間35へ嵌め込まれると、取付部34は嵌合空間35が広がる方向へ拡径される。内径34Aは、取付部34の弾力性、取付部34の支柱22への密着性を考慮して設定される。
【0031】
なお、内径34Aは、必ずしも支柱22の外径22Aよりも小径である必要はなく、同一サイズであってもよい。
【0032】
取付部34には、側壁が軸方向両端に亘って切り欠かれて開口34Kが構成されている。両端の2つの開口34Kは、踏部32の長手方向と直交する方向に向かって同一方向に開口されている。開口34Kは、支柱22を開口34Kを介して嵌合空間35へ嵌め込み可能とする幅サイズとされている。すなわち、開口34Kの幅サイズは、取付部34の撓み変形可能量、支柱22の外径22A、取付部34の内径34Aなどに応じて設定される。なお、嵌合空間35へ支柱22を嵌合させたときの保持力を考慮すると、開口34Kの中心角θは、90°以下であることが好ましい。
【0033】
取付部34の嵌合空間35を構成する内壁34Bと、支柱22の取付部34に取付けられる部分の外周面とは、図5に示すように、接着剤39を介して接着されている。接着剤39としては、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、及びポリ塩化ビニル塩素化物の混合液などの、ポリ塩化ビニル樹脂系接着剤を使用することができる。
【0034】
図6及び、図7に示すように、踏部32の下面には、板状の、アーチリブ36、長リブ37、及び、短リブ38が形成されている。踏部32、取付部34、アーチリブ36、長リブ37、及び、短リブ38は、一体的に構成されている。これらの部材を含めたステップ30は、ポリ塩化ビニル樹脂などの樹脂材料で構成することができる。
【0035】
アーチリブ36は、踏部32の下側の幅方向中央部に、一方の取付部34と他方の取付部34との間を横断するように配置されている。アーチリブ36は、一端及び他端の上下方向の幅の長さが最も長、中央部の上下方向の幅の長さが最も短くなる、弧状(アーチ状)とされている。アーチリブ36の一端及び他端は、取付部34と一体的に連結されている。
【0036】
長リブ37は、アーチリブ36を挟んで両側に2本、アーチリブ36と平行に配置されている。長リブ37の上下方向の幅の長さは、アーチリブ36の幅の最も短い部分と略同一とされている。
【0037】
短リブ38は、踏部32の下側の幅方向の、3箇所に配置されている。図8に示すように、短リブ38は、2本の長リブ37の各々からアーチリブ36にかけて配置され、各々中央部の厚みが薄くなるようなアーチ形状とされている。取付部34と他方の取付部34との間を横断するように配置されている。
【0038】
ステップ30は、図1に示すように、一方の取付部34が一対の支柱22の一方側に取付けられ、他方の取付部34が一対の支柱22の他方側に取付けられ、一対の支柱22の間で支柱22と直交する方向に架け渡されている。一対の支柱22には、複数のステップ30(本実施形態では5本)が、支柱22の軸方向に所定間隔をあけて取付けられている。
【0039】
次に、上記構成の梯子20を水槽10の貯水室14、16へ設置する設置方法について説明する。
【0040】
まず、2本の支柱22を所定間隔で平行に並べ、支柱22の各々の上端に上部取付部材24を、下端に下部接続部材26を、各々、TS工法で接続する。具体的には、支柱22と上部取付部材24との接続は、支柱22の上端外周面と上接続円筒部24Aの内側のテーパー部分に接着剤39を塗布し、支柱22の上端を上接続円筒部24Aに挿入し、接着剤39による接着が完了するまでの時間、接続部分を養生する。また、支柱22と下部接続部材26との接続は、支柱22の下端外周面と下接続円筒部26Aの内側のテーパー部分に接着剤を塗布し、支柱22の下端を下接続円筒部26Aに挿入し、接着剤による接着が完了するまでの時間、接続部分を養生する。
【0041】
次に、複数のステップ30を、所定間隔で一対の支柱22へ取付ける。個々のステップ30の支柱22への取付けは、次のようにして行う。まず、取付部34の内壁34Bと、支柱22の取付部34に取付けられる部分の外周面へ接着剤39を塗布し、支柱22を嵌合空間35へ嵌め込む。そして、接着剤39による接着が完了するまでの時間、接続部分を養生する。
【0042】
そして、上部取付部材24の孔23を介して、ボルトで梯子20を貯水室14、16の内壁に固定する。
【0043】
このようにして、梯子20を水槽10の貯水室14、16へ設置する。本実施形態によれば、支柱22が一本の管で構成されているので、多くの部品を連結させて支柱を構成する必要がなく、簡易に組み立てることができると共に、多くの部品を連結させた場合と比較して、水密性がより確保され、支柱22の寸法精度も向上させることができる。また、ステップ30の取付けについても、嵌合及び接着により簡単に行うことができる。また、水密性の試験も支柱22と下部接続部材26との接続部分のみで行えばよいので、水密検査の煩雑さが緩和される。
【0044】
なお、本実施形態では、ステップ30の両端の取付部34に構成される開口34Kを、踏部32の長手方向と直交する方向に向かって同一方向に開口するようにしたが、必ずしもこの方向に構成する必要はなく、図9に示すように、ステップ30の長手方向の外側に向けて開口させてもよい。特に、本実施形態のように同一方向に構成することにより、支柱22へステップ30を取付ける際に、作業者が一対の支柱22の幅を変えることなく取付けることができ、スムーズに取付作業を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、弧状のアーチリブ36を設けたが、アーチリブ36は必ずしも設ける必要はなく、さらに、アーチリブの形状も必ずしも弧状でなくてもよい。特に、本実施形態のように、弧状のアーチリブ36とすることにより、支柱22に近い部分の厚みが確保され、上部から踏部32への荷重が下方向へのせん断力として負担されることから、取付部34の内壁34Bと支柱22の外周面との間の接着部に発生する剥離力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態の梯子と、梯子の設置される水槽の概略構成図である。
【図2】本実施形態の梯子の斜視図である。
【図3】本実施形態の上部取付部材と支柱の接続部分の断面図である。
【図4】本実施形態の梯子のステップの斜視図である。
【図5】本実施形態の梯子のステップの上面図である。
【図6】本実施形態の梯子のステップの短手方向からみた側面図である。
【図7】本実施形態の梯子のステップの下面図である。
【図8】本実施形態の梯子のステップの長手方向からみた断面図である。
【図9】本実施形態の梯子のステップの変形例の上面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 水槽
20 梯子
20 平成
22 支柱
30 ステップ
32 踏部
34K 開口
34 取付部
35 嵌合空間
36 アーチリブ
37 接着剤
37 長リブ
38 短リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が一体形成された一対の筒状の支柱と、
前記一対の支柱間に支柱軸方向に間隔をあけて架け渡された複数のステップと、
前記ステップの両端に前記支柱の外周面を囲むように各々形成され、前記支柱を嵌め込み可能とされた嵌合空間を構成する取付部と、
を備え、
前記支柱が前記嵌合空間に嵌め込まれた状態で、前記支柱の外周面と前記嵌合空間の内壁とが接着剤により接着された、梯子。
【請求項2】
前記取付部には、前記支柱を前記嵌合空間へ嵌め込み可能とする開口が構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の梯子。
【請求項3】
前記開口は、前記両端の各々で同一方向に向かって開口されていること、を特徴とする請求項2に記載の梯子。
【請求項4】
前記取付部の内径は、前記支柱が嵌め込まれていない状態では、前記支柱の外径よりも小さいこと、を特徴とする請求項2または請求項3に記載の梯子。
【請求項5】
前記ステップは上面が平坦形状とされると共に、下側には一方の支柱から他方の支柱に架けて中央部の幅が短くなるようなアーチ形状のアーチリブが形成されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の梯子。
【請求項6】
前記ステップの下側には、一方の支柱から他方の支柱に架けて前記アーチリブを挟むように前記アーチリブよりも短い幅のリブが形成されていること、を特徴とする請求項5に記載の梯子。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の梯子の設置方法であって、
前記一対の筒状の支柱を所定間隔開けて配置し、
前記取付部の嵌合空間を構成する内壁、及び、前記一対の支柱の前記取付部が取付けられる被取付位置に接着剤を塗布し、
前記取付部の前記嵌合空間へ前記支柱を嵌合させて前記ステップを前記一対の支柱へ取付けて、梯子を設置する、梯子の設置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−257040(P2009−257040A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110151(P2008−110151)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】