梱包ケースおよび梱包方法
【課題】梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケース、および梱包方法を提供する。
【解決手段】梱包ケース10は、外装箱5内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置8を複数個重ねて保持する保持部材1が設けられている。外装箱5内には、半導体装置8を複数個重ねた状態で半導体装置8の側面を挟持する溝4が設けられた対の保持部材1が対向配置されており、保持部材1は、軟質ウレタンフォームで形成されている。
【解決手段】梱包ケース10は、外装箱5内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置8を複数個重ねて保持する保持部材1が設けられている。外装箱5内には、半導体装置8を複数個重ねた状態で半導体装置8の側面を挟持する溝4が設けられた対の保持部材1が対向配置されており、保持部材1は、軟質ウレタンフォームで形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等の半導体装置を梱包するための梱包ケースおよび該梱包ケースを用いる梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の生産量の増大に伴い、半導体装置を大量に輸送することが要求されている。半導体装置を大量に輸送するためには、半導体装置の生産性を下げることなく、作業性よく梱包および開梱ができ、且つ輸送中において半導体装置に割れ等が発生しないことが必要条件となる。
【0003】
従来、上記半導体装置の梱包方法としては、(1)積層した複数枚の半導体装置を薄いフィルム状に形成した有機材料等で覆うことで保護・固定する方法(シュリンク方式)(例えば、特許文献1参照)、(2)成型した硬質プラスチック等のトレーに半導体装置を1枚ずつ収納する方法(枚葉トレー方式)、(3)積層した複数枚の半導体装置を緩衝材で覆い、個装ケースに収納する方法(個装ケース収納方式)(例えば、特許文献2参照)、(4)成型した硬質のプラスチック等のトレーに、積層した複数枚の半導体装置を収納する(主に積層した半導体装置を、半導体装置の底面がトレーの底面に対して垂直となるように収納、緩衝材等で覆っても良い)方法(積層トレー方式)、またこれらの方法を組み合わせた方法等が知られている。
【0004】
この中で、シュリンク方式による梱包方法について、図12を用いて以下に説明する。
【0005】
図12は、シュリンク方式による梱包方法を示すものであり、梱包ケースの概略構成を示す断面図である。
【0006】
図12に示すように、シュリンク方式の梱包では、外装箱504の中に、空気マット502が収容され、積層した複数枚の半導体装置501が空気マット502の凹部に収められている。複数枚の半導体装置501上には、空気マット502と接していない部分を保護する第2の空気マット505が設置される。このように、積層した複数枚の半導体装置501の周囲を空気マットで囲むことにより外部の衝撃等から半導体装置501を保護している。
【特許文献1】特開2004−269026号公報(平成16年9月30日公開)
【特許文献2】特開2003−34363号公報(平成15年2月4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、梱包時または輸送時に半導体装置501が破損してしまうという問題を生じる。
【0008】
具体的には、近年の半導体装置501の薄型化により、半導体装置501の基板の厚さがより薄くなっているため、半導体装置501の基板に反りが発生し易く、半導体装置501は応力に対してより脆弱となっている。このため、振動や衝撃等の外力により、半導体装置501に割れ等がより生じ易くなっている。
【0009】
特に、太陽電池セルのように、電極等の部材を平板状の半導体板表面に備える構成の半導体装置501の場合では、表面が凹凸のある構造であるため、上記半導体装置501を複数枚積層して梱包すると外部からの振動および衝撃等により半導体装置501に割れが生じ易い。また、半導体装置501の厚さの僅かなバラツキであっても半導体装置501を積層すると厚さに大きな差が生じるため、上記積層物と梱包ケースとの大きさのミスマッチによって半導体装置501に負荷がかかり割れが生じ易くなる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置に対して、振動および衝撃等の外力から保護することにより、梱包作業及び輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースおよび梱包方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る梱包ケースは、上記課題を解決するために、外装箱内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を複数個重ねて保持する保持部材が設けられた梱包ケースであって、上記外装箱内に、上記半導体装置を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置されているとともに、上記保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、軟質ウレタンフォームで形成された保持部材を備えているため、複数個重ねられた半導体装置は保持部材により安定に保持され、梱包作業及び輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる。具体的には、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であり、半導体装置を保持するための適度な応力を有するため、外部からの振動及び衝撃等に対して半導体装置を保護することができる。また、軟質ウレタンフォームは柔軟性に優れているため、複数個重ねられた半導体装置の厚さにバラツキが生じたとしても、複数個重ねられた半導体装置と保持部材の溝との大きさのミスマッチによる半導体装置へかかる負荷が小さい。更には、半導体装置の側面を挟持する構成であるため、半導体装置の基板上の凹凸部に負荷がかかり難い。これにより、半導体装置に不均一な負荷がかかり難いため、半導体装置を安定に保持することができる。従って、上記構成によれば、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースを提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であるため、上記半導体装置を梱包する際に緩衝材または薄型フィルム等を別途使用する必要がない。さらには、軟質ウレタンフォームは発泡体であり、密度が低いことから、通常のプラスチック成型品と比べて梱包ケースの軽量化を図ることができる。従って、より少ない労力で梱包作業及び輸送を行うことができる梱包ケースを提供することができる。
【0014】
更には、軟質ウレタンフォームは加工性に優れているため、ポリプロピレン、PET樹脂等のプラスチックのように、金型等の高価な冶具を用いて加工する必要がない。従って、より低いコストで梱包ケースを製造することができる。
【0015】
本発明に係る梱包ケースでは、上記対の保持部材は、上記半導体装置をそれぞれ起立状態で保持することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、半導体装置が他の半導体装置の上に寄り掛かるように位置することがないので、半導体装置にかかる負荷が低減される。更には、輸送の際にかかる振動は主に上下振動であるため、半導体装置における凹凸を形成する層にかかる振動時の負荷が低減される。よって、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記対の保持部材はそれぞれ上記外装箱の内部に立設されているとともに、上記溝はそれぞれ鉛直線に沿って設けられており、かつ、上記外装箱の内部に、起立状態の半導体装置の下面を保持する溝が設けられた、軟質ウレタンフォームからなる第2の保持部材がさらに設けられていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、起立状態の半導体装置の下面を保持する溝が設けられた第2の保持部材がさらに設けられているため、半導体装置をさらに下側からも保持することができる。従って、縦方向の振動に対してより安定に半導体装置は保持されるため、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記軟質ウレタンフォームは、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームであることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームは、様々な種類の原料をブレンドして製造することが可能であるため、弾性率やクッション性等の性能を用途に応じて幅広く調整することができるという更なる効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記軟質ウレタンフォームは、10〜30(kg/314cm2)の硬度を有するウレタンフォームであることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、保持部材が適度な硬さとなるため、より安定に半導体装置を保持することができ、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記外装箱の内部に、上記外装箱を補強する補強部材を備えているとともに、上記保持部材は、上記補強部材に固定されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、振動や衝撃に対して、外装箱および保持部材の変形を抑制することができるため、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記補強部材は、開口面を有する箱状の補強部材であり、上記外装箱の内部に、上記箱状の補強部材が複数収容され、上記保持部材は、上記箱状の補強部材の内壁に設けられていることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、補強部材が、上面が開口した箱形の形状であるため、外装箱および保持部材の変形をより抑制することができる。また、1つの外装箱の中に補強部材を複数収容しているため、1つの外装箱の中により多くの半導体装置を安定に収容することができるという更なる効果を奏する。
【0027】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記半導体装置として、太陽電池セルを梱包するようになっていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、太陽電池セルを梱包することができるため、破損を抑制して、太陽電池セルの梱包作業および輸送を安定して行うことができる。
【0029】
本発明に係る梱包方法は、上記課題を解決するために、上記本発明に係る梱包ケースを用いた半導体装置の梱包方法であって、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を、上記梱包ケースに設けられた溝内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置を上記梱包ケースで梱包することを特徴としている。
【0030】
上記方法によれば、上記本発明に係る梱包ケースを用いているため、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0031】
また、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であるため、上記半導体装置を梱包する際に緩衝材または薄型フィルム等を別途使用する必要がない。さらには、軟質ウレタンフォームは発泡体であり、密度が低いことから、通常のプラスチック成型品と比べて梱包ケースの軽量化を図ることができる。従って、より少ない労力で梱包作業及び輸送を行うことができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る梱包ケースは、以上のように、外装箱内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を複数個重ねて保持する保持部材が設けられた梱包ケースであって、上記外装箱内に、上記半導体装置を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置されているとともに、上記保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されていることを特徴としている。
【0033】
これにより、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースを提供することができるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明に係る梱包方法は、以上のように、上記本発明に係る梱包ケースを用いた半導体装置の梱包方法であって、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を、上記梱包ケースに設けられた溝内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置を上記梱包ケースで梱包することを特徴としている。これにより、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すると以下の通りである。
【0036】
図1は、収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。また、図2は、収容された半導体装置の起立方向に対して平行に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。図3は、本実施の形態に係る梱包ケースにおける保持部材の一例を示す断面図である。また、図4は、本実施の形態に係る梱包ケースにおける保持部材の他の一例を示す断面図である。
【0037】
図1に示すように、本実施の形態に係る梱包ケース10は、外装箱5内に、半導体装置8を複数個重ねて保持する保持部材1が設けられている。上記保持部材1には、上記半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置8の側面を挟持する溝4が設けられており、保持部材1は上記外装箱5内に対となって対向配置されている。上記対の保持部材1はそれぞれ上記外装箱5の内部に立設されており、上記溝4はそれぞれ鉛直線に沿って設けられている。
【0038】
梱包ケース10は、さらに上記外装箱の内部に、起立状態の半導体装置8の下面を保持する溝4が設けられた保持部材(第2の保持部材)7が設けられている。これにより、図2に示すように、下面および2つの側面の3方向から半導体装置8は保持されている。
【0039】
上記半導体装置8は、基板上に凹凸を形成する層が設けられている。つまり、割れ易いが、厚さが均一で表面が平滑であり、重ねて均一に荷重がかかっただけでは割れないガラス基板等とは異なり、本実施の形態に係る半導体装置8は厚さが不均一で表面が凸凹である。このため、複数個重ねて収容する場合には、ガラス基板などと比べて、半導体装置8は振動や衝撃等の外力によってより破損し易い。
【0040】
上記半導体装置8における基板上の凸凹を形成する層としては、ハンダ、アルミニウム、銀などからなる金属電極、銅、銀、ハンダなどからなる配線された電極、酸化錫や酸化亜鉛などの透明導電性金属酸化物などが挙げられる。
【0041】
半導体装置8における凹凸を形成する層の厚さが半導体装置8における基板の厚さよりも厚い場合では、半導体装置8における凸凹による厚さの差が大きいため、外力に対して半導体装置8はより破損が生じ易い。更には、半導体装置8における凹凸を形成する層が、半導体装置8における基板よりも硬い場合には、半導体装置8の硬さが不均一となるため、半導体装置8は外力に対してより破損が生じ易い。このような場合では、従来は別途緩衝材やフィルムなどを用いていたが、本実施の形態に係る梱包ケース10では、後述するように保持部材1・7が高緩衝性であり、半導体装置8を保持するための適度な応力を有するため、別途緩衝材やフィルムなどを用いることなく、外部からの振動及び衝撃等に対して半導体装置8を保護することができる。
【0042】
上記半導体装置8における基板の底面の形状は、特には限定されず、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形等が挙げられる。上記半導体装置8の具体例としては、IC(integrated circuit)、光学ピックアップ、レ−ザ−などの電子部品、太陽電池セル等が挙げられる。特に、太陽電池セルは、非常に割れ易い極薄基板(厚さ50〜300μm)表面に、基板よりも厚く(0.1〜1mm)て硬い金属電極が形成され、表面が凸凹となっているため、本実施の形態に係る梱包ケース10により好適に梱包することができる。
【0043】
上記保持部材1・7の形状は特には限定されないが、半導体装置8を安定に保持するという観点から、溝4の方向における保持部材1・7の幅が、半導体装置8を該溝4に設置したときの溝4の方向と平行な半導体装置8の幅(以下、溝4に対応する半導体装置8の幅と記す)の1/2以上であることが好ましい。つまり、保持部材1・7は、半導体装置8の側面の1/2以上と接触して半導体装置8を保持する構成であることが好ましい。
【0044】
上記保持部材1・7に設けられる溝4の数は特には限定されないが、複数設けられていることが好ましい。
【0045】
溝4の幅W(半導体装置8を挟持した場合における半導体装置8の側面と平行な方向における幅)は、特には限定されないが、半導体装置8の収容効率と半導体装置8にかかる負荷とのバランスをとるという観点から、溝4に挿入する複数個重ねられた半導体装置8の厚さ(側面における積み重ね方向における幅)の1.5倍以下であることが好ましい。また、作業性を良くするという観点から、溝4の幅Wは、溝4に挿入する複数個重ねられた半導体装置8の厚さよりも少し大きいことが好ましい。
【0046】
また、隣接する溝4間の幅dは、溝4の底面における幅Wと略等しいことが好ましい。隣接する溝4間の幅dが、溝4の底面における幅Wよりも大きくなると、収容できる半導体装置8の数が少なくなる。また、隣接する溝4間の幅dが、溝4の底面における幅Wよりも小さいと、溝4の強度が低下し、外部からの衝撃等によって半導体装置8が動き易くなる。更には、隣接する溝4間の幅dが、溝4の底面における幅Wよりも小さいと、半導体装置8を収容した際に、隣接する積層した半導体装置8の間の隙間が小さくなるため、作業性が悪化する。
【0047】
溝4の幅Wは、図3および図4に示すように、底面の幅(底面幅)W1よりも開口部の幅(開口幅)W2の方が広くなっていることが好ましく、底面幅W1よりも開口幅W2の方が10%〜20%広くなっていることがより好ましい。上記底面幅W1よりも上記開口幅W2を広くすることで、半導体装置8を上記梱包ケース10に収容する際に、半導体装置8を溝4に挿入し易くなる。この場合における溝4の形状としては、図3のように開口部付近のみの幅が広くなる構成であってもよいし、図4のように底面から開口部に向かって緩やかに幅が広くなる構成であってもよい。
【0048】
溝4の深さbは、特には限定されないが、半導体装置8における凹凸を形成する層が基板の端部に形成されていない場合には、凹凸を形成する層に負荷をかけることを避けるために、半導体装置8における基板のみを保持する深さであることが好ましい。つまり、溝4の深さbは、半導体装置8の端部から、凹凸を形成する層が設けられている領域までの距離よりも短いことが好ましい。
【0049】
溝4の長さ(溝4の幅Wと直交する方向における長さ)は、溝4の長さが、溝4によって保持されたときの溝4の長さ方向と平行な半導体装置8の幅(溝4に対応する半導体装置8の幅)よりも短い場合には、溝4の長さは、溝4の長さ方向と平行な保持部材1・7の長さと同じであることが好ましい。つまり、溝4は、溝4の長さ方向に貫通していることが好ましい。
【0050】
また、保持部材1・7の長さ(溝4の長さ方向と平行な長さ)が、溝4に対応する半導体装置8の幅よりも長い場合には、溝4の長さは、溝4に対応する半導体装置8の幅と略等しいことが好ましい。
【0051】
また、保持部材1の対向する1組の溝4の底面間の距離fは、半導体装置8の長さ(溝4に挟持される半導体装置8の左右両側面間の距離)よりも0.5〜1.0cm長いことが好ましい。上記距離fが上記範囲内であれば、半導体装置8を適度に固定することができ、半導体装置8を挿入する場合に半導体装置8が保持部材1に引っかかり難いため、半導体装置8を容易に挿入することができる。
【0052】
また、例えば、後述するように、保持部材7と対向する位置に保持部材を有する蓋を含む構成である場合のように、保持部材7と対向する位置に保持部材を設けた構成では、それぞれの保持部材における対向する溝4の底面間の距離は、半導体装置8の長さ(溝4に挟持される半導体装置8の上下両側面間の距離)よりも0.2〜0.5cm短いことが好ましい。上記距離が上記範囲内であれば、半導体装置8を適度に固定することができ、半導体装置8にダメ-ジが伝わり難く、半導体装置8の割れの発生を抑制することができる。
【0053】
また、上記保持部材1・7は、軟質ウレタンフォームからなるものである。軟質ウレタンフォームとしては、半導体装置8を安定に保持するための適度な応力、外部からの振動又は衝撃を低減するための高い緩衝力を有するものであれば特には限定されず、ポリエーテル系軟質ウレタンフォーム、ポリエステル系軟質ウレタンフォーム等が挙げられる。様々な種類の原料をブレンドして製造することが可能であるため、弾性率やクッション性等の性能を用途に応じて幅広く調整することができるため、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームがより好ましい。
【0054】
尚、本実施の形態における「軟質ウレタンフォーム」とは、発泡倍率が約10〜60倍であり、見かけ密度が16〜100kg/m3程度のウレタンフォームのことである。
【0055】
ポリエーテル系軟質ウレタンフォームは、様々なポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、整泡剤等を組み合わせることによって製造することができ、従来公知の材料を用いて製造することができる。
【0056】
上記軟質ウレタンフォームは、硬度が10〜30(kg/314cm2)の範囲内であることが好ましく、12〜15(kg/314cm2)の範囲内であることがより好ましい。硬度が10(kg/314cm2)未満であると、保持部材1・7の保持力が弱くなるため、半導体装置8が動き易くなり、梱包作業及び輸送時における半導体装置8の破損が生じ易くなる。硬度が30(kg/314cm2)を超えると、保持部材1・7の緩衝力が弱くなるため、半導体装置8が受ける衝撃が大きくなり、梱包作業及び輸送時における半導体装置8の破損が生じ易くなる。
【0057】
引張強度、伸度、圧縮残留歪などの硬度以外の軟質ウレタンフォームの諸物性の値は、特には限定されず、従来公知の軟質ウレタンフォームが有する範囲内であればよい。
【0058】
また、本実施の形態に係る梱包ケース10は、上記の構成の他に、図1に示すように、外装箱5を補強する補強部材2をさらに備えている。補強部材2は外装箱5の内部に備えられ、外装箱5と接する面の裏面に保持部材1・7を備えている。補強部材2の材質としては、ダンボール、硬質プラスチック等が挙げられる。
【0059】
補強部材2の形状としては、外装箱5および保持部材1・7を補強することができれば、特には限定されないが、外装箱5を均一に補強するという観点から、補強部材2は、取り付けられる外装箱5における内面と略同じ形状の底面を有する平板状であることが好ましい。また、外装箱5の内面に複数個の平板状の補強部材2を設ける場合、それぞれの面に対応する補強部材2は互いに繋がって1つの部材を構成していてもよいし、それぞれ別個の部材となっていてもよい。尚、本実施の形態では、保持部材1・7の裏面を保持するため、それぞれの保持部材1・7に対応した3つの平板状の補強部材2がそれぞれ繋がって1つの部材となったコの字形状を有する補強部材2を用いている。
【0060】
外装箱5は、上記補強部材2と保持部材1・7とからなる梱包トレー20と略同じ大きさの収容部を有する箱である。外装箱5によって梱包トレー20の形状が維持され、梱包トレー20は輸送可能となる。外装箱5の材質としては、ダンボール、硬質プラスチック、軽金属等が挙げられる。
【0061】
以下に、上記梱包ケース10の作製方法の一例について図5および図6を用いて説明する。
【0062】
図5は、梱包ケース10における梱包トレー20の作製方法を説明するための斜視図である。また、図6は、梱包ケース10の作製方法を説明するための斜視図である。
【0063】
図5に示すように、保持部材1・7は、適当な厚さと大きさとを有し、底面が長方形である平板状の軟質ウレタンフォーム材3(例えば、幅10cm、長さ50cm、厚さ4cm程度の軟質ウレタンフォーム材)を用いて作製される。上記軟質ウレタンフォーム材3の底面における長辺と接する側面(以下、長辺側の側面と記す)から、反対側の長辺側の側面へ向かって、軟質ウレタンフォーム材3を圧縮する。そして、圧縮された軟質ウレタンフォーム材3の底面に溝を形成するため、長辺側の側面から圧縮方向に貫通する凹部を一定の間隔で切り抜く。ここで、上記切抜きの作業は、コの字型の刃物等で行うことで効率よく作業を行うことができる。これにより、圧縮された軟質ウレタンフォーム材3の底面上には、圧縮方向に貫通した溝4が設けられることになる。上記溝4は、例えば、深さが軟質ウレタンフォーム材3の厚さの1/2程度である2cm程度、幅が1cm程度に設定される。
【0064】
上記切り抜き作業後、軟質ウレタンフォーム材3を圧縮から開放し、膨張させて元の大きさに戻す。そして、保持部材1・7の溝4が形成されている面の裏面と長方形の補強部材2とを両面テープ等で固定する。このとき、溝4の方向が補強部材2の長辺の方向と平行になるように、保持部材1・7を配置する。そして、補強部材2の短辺の方向と折り目が平行になるように、隣接する保持部材1・7の間の補強部材2をそれぞれ1箇所ずつ、計2箇所を折り曲げることによりコの字状の梱包トレー20を作製する。そして、図6に示すように、梱包トレー20を、外装箱5の中に収容することで、梱包ケース10を作製することができる。
【0065】
尚、梱包ケース10は、図6に示すように、蓋6を備える構成であってもよい。つまり、梱包ケース10に被梱包物である半導体装置8を収容した後、露出した半導体装置8の上に蓋6を配置し、梱包ケース10を梱包する構成であってもよい。
【0066】
上記蓋6は、上述した梱包ケース10に収容される半導体装置8の露出する上面を保護するためのものである。蓋6は、半導体装置8を保護するものであれば、どのようなものでもかまわないが、梱包ケース10と同様に補強部材2の上に保持部材1が設けられたものであることが好ましい。この場合、収容された半導体装置8側へ保持部材1が向くように、蓋6を配置する。本実施の形態では、蓋6は、補強部材2の上に保持部材1が設けられたものを用いている。また、上記蓋6における保持部材1には溝4が設けられていてもよい。これにより、より安定に半導体装置8を保持することができる。
【0067】
次に、上記梱包ケース10を使用して、半導体装置8を梱包する方法について以下に説明する。
【0068】
まず、梱包ケース10の中の保持部材1・7の各溝4の中に、半導体装置8が起立状態となるように、半導体装置8を収容する。この際、半導体装置8を1枚ずつ収容してもよいし、積層した複数の半導体装置8を一度に収容してもよい。次に、蓋6を有する構成の場合には、蓋6の保持部材1が半導体装置8側に向くように、梱包ケース10における半導体装置8が露出した面の上に蓋6を配置する。これにより、保持部材1・7によって、半導体装置8を四方向から保持することになり、輸送時の振動および衝撃などの外力から半導体装置8を安定に保護することができる。最後に、外装箱5の蓋を閉めることで、半導体装置8の梱包は完了する。
【0069】
以上のように、本実施の形態に係る梱包ケース10は、外装箱5内に、半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置8の側面を挟持する溝4が設けられた対の保持部材1が対向配置されているとともに、上記保持部材1は、軟質ウレタンフォームで形成されている。このため、複数個重ねられた半導体装置8は保持部材1により安定に保持され、輸送時などにおける半導体装置8の破損を抑制することができる。具体的には、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であり、半導体装置8を保持するための適度な応力を有するため、外部からの振動及び衝撃等に対して半導体装置8を保護することができる。また、軟質ウレタンフォームは柔軟性に優れているため、複数個重ねられた半導体装置8の厚さにバラツキが生じたとしても、複数個重ねられた半導体装置8と保持部材1の溝4との大きさのミスマッチによる半導体装置8への負荷が小さい。更には、半導体装置8の側面を挟持する構成であるため、半導体装置8の基板上の凹凸部に負荷がかかり難い。これにより、半導体装置8に不均一な負荷がかかり難いため、半導体装置8を安定に保持することができる。従って、上記構成によれば、振動および衝撃等の外力から半導体装置8を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損を抑制することができる梱包ケース10を提供することができる。
【0070】
また、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であるため、上記半導体装置8を梱包する際に緩衝材または薄型フィルム等を別途使用する必要がない。さらには、軟質ウレタンフォームは発泡体であり、密度が低いことから、通常のプラスチック成型品と比べて梱包ケース10の軽量化を図ることができる。従って、より少ない労力で梱包作業及び輸送を行うことができる梱包ケース10を提供することができる。
【0071】
更には、軟質ウレタンフォームは加工性に優れているため、ポリプロピレン、PET樹脂等のプラスチックのように、金型等の高価な冶具を用いて加工する必要がない。従って、より低いコストで梱包ケース10を製造することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る梱包方法は、上記梱包ケース10を用いて、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置8を、上記梱包ケース10に設けられた溝4内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置8を上記梱包ケース10で梱包する方法である。本実施の形態に係る梱包方法は、上記梱包ケース10を使用するため、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損を抑制することができる。
【0073】
尚、上述の説明では、保持部材1・7を3つ備える構成である場合について説明したが、これに限るものではない。半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を、2つの保持部材1で挟持する構成であってもかまわない。但し、本実施形態のように、半導体装置8の2つの側面および底面を保持する構成である場合は、半導体装置8を下側からも保持することになり、縦方向の振動に対してより安定に半導体装置8を保持することができるため、より好ましい。
【0074】
また、上述の説明では、半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置8の側面を挟持する対の保持部材1が、外装箱5の内部に立設されている場合について説明したが、これに限るものではない。上記対の保持部材1が、外装箱5の内部に横設されている構成であってもかまわない。但し、この場合には、外装箱5の開口面は、上面ではなく側面にする必要がある。
【0075】
また、上述の説明では、外装箱5として、1つの箱からなる構成のものを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。外装箱5の強度を高める目的などで、外装箱5の中に、外装箱5よりも小さい別の箱を1個以上設けた多重構造の箱であってもよい。
【0076】
また、外装箱5として、中に仕切り板などで仕切られている構成であってもよい。この場合には、保持部材1・7は上記仕切り板に設けられていてもかまわない。
【0077】
また、上述の説明では、半導体装置8をそれぞれ起立状態で保持する構成である場合について説明したが、これに限るものではない。半導体装置8をそれぞれ横設状態で保持する構成であってもよい。但し、本実施形態のように、半導体装置8をそれぞれ起立状態で保持する構成である場合は、半導体装置8が他の半導体装置8の上に寄り掛かるように位置し難く、半導体装置8に負荷がかかり難いため、より好ましい。更には、輸送の際にかかる振動は主に上下振動であるため、半導体装置8における凹凸を形成する層にかかる負荷が低減される。また、半導体装置8をそれぞれ横設状態で保持する構成である場合には、外装箱5の側面を開けて横から半導体装置8を収容する構成とする必要がある。
【0078】
また、上述の説明では、補強部材2が設けられている場合について説明したが、これに限るものではない。補強部材2を設けないで、保持部材1・7を直接外装箱5に貼り付ける構成であってもよい。但し、補強部材2が設けられている場合には、振動や衝撃に対して、外装箱5および保持部材1・7の変形をより抑制することができ、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損をより抑制することができるため、より好ましい。
【0079】
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施の形態について、図7〜図11を用いて以下に詳細に説明する。但し、上述した実施の形態1における部材と同一の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。尚、本実施の形態に係る梱包ケースは、補強部材2の形状が異なっていること、および1つの外装箱5の中に梱包トレーが3つ配置されていること以外は実施の形態1の梱包ケース10と同様の構成を有している。
【0080】
図7は、収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。また、図8は、本実施の形態に係る梱包ケースにおける梱包トレーの概略構成を示す斜視図である。また、図9は、本実施の形態に係る梱包ケースの概略構成を示す斜視図である。
【0081】
図7に示すように、梱包ケース50は、1つの外装箱5の中に梱包トレー20が3つ配置されている。また、補強部材2は、図8に示すように、実施の形態1における補強部材2に、該補強部材2を構成する面同士がさらに1組の平行関係にある面により繋がった構成となっている。つまり、補強部材2は、開口面を1つ有する箱形の形状を有している。これにより、より強固に保持部材1・7の形状を維持することができる。
【0082】
また、図9に示すように梱包ケース50は、実施の形態1の梱包ケース10と同様に、梱包トレー20と外装箱5と蓋6とを含む構成となっている。
【0083】
梱包ケース50の作製方法については、実施の形態1における梱包ケース10と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、梱包ケース50を用いた梱包方法についても、実施の形態1における梱包ケース10を用いた梱包方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0084】
以下に、半導体装置8として結晶シリコン太陽電池セルを用いて、本実施の形態に係る梱包ケース50による梱包試験および実輸送試験を行った結果について説明する。まず、結晶シリコン太陽電池セルの製造方法について図10および図11を用いて説明する。
【0085】
図10は、太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。また図11は、太陽電池セルの概略構成を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図であり、(c)は底面図である。尚、図11(b)に記載されている矢印は、図11(b)に示す面が受光面であることを表すものである。
【0086】
図10に示すように、半導体基板101(例えばP型シリコン基板、厚さ200μm)の上面(受光面)101aに不純物を含む溶液を塗布して、または気相中から800〜900℃程度で熱拡散することにより、N型の不純物拡散層102を形成し、PN接合層102aを作製する。
【0087】
次に、底面(裏面)101bに900〜1100℃程度で不純物を熱拡散させて、P型の高濃度の不純物拡散層103を形成してBSF(Back Surface Field)を形成する。なお、裏面コンタクト用電極としてアルミニウムを使用すれば、BSFを700〜900℃程度の焼成により局部的に形成することができる。
【0088】
次に、上面101a上に、金属酸化物等からなる表面反射防止膜104を形成し、底面101b側に金属酸化物等からなる反射防止膜105を形成する。そして、半導体基板101の上面101a側にグリッド状の受光面電極106を形成する。そして、底面101b側に反射防止膜105の上から部分的に裏面コンタクト用電極107を形成する。この際、受光面電極106および裏面コンタクト用電極107が半導体層とオーミック接触するために、作製した太陽電池セルを400〜800℃で焼成することが望ましい。また、裏面コンタクト用電極107は底面101b全体に形成していても良い。
【0089】
これらの受光面電極106及び裏面コンタクト用電極107は、真空蒸着法、スクリーン印刷法、スパッタ法等で形成することができる。また、受光面電極106及び裏面コンタクト用電極107の表面には、必要に応じてハンダ(図示せず)が被覆されてもよい。
【0090】
このようにして製造される太陽電池セルは、図11に示すように、上面101a上には受光面電極106が突出しており、底面101b上には裏面コンタクト用電極107が突出しているため、表面が平滑ではなく、凹凸となっている。上記太陽電池セルの表面の凹凸は、上記製造工程の中で、電極形成工程のみならず、焼成工程における電極の異常成長による突起、ハンダ被覆の際の電極上に生じる粒または溜り等が原因によっても形成する。
【0091】
次に、実際に上記太陽電池セルを本実施の形態の梱包ケース50により梱包して、梱包試験および実輸送試験を行った結果について以下に説明する。
【0092】
梱包試験および実輸送試験では、156mm角で厚さが200μmである多結晶シリコン太陽電池セルを使用した。本実施の形態の梱包ケース50は、各梱包トレー20の保持部材1・7に同じ形状を有する溝4がそれぞれ20個設けられており、各溝4には15枚の太陽電池セルを収容することができる。よって、梱包ケース50には計900枚の太陽電池セルを収容することができる。尚、本試験は、梱包ケース50に900枚の太陽電池セルを収容して行った。
【0093】
上記溝4の幅は10mmであり、溝4間の幅は溝4の幅と同じ10mmに設定されている。また、上記溝4の長さは160mmであり、溝4の深さは15mmに設定されている。梱包トレー20は、幅196mm×長さ506×高さ186mmの大きさのものを用いた。外装箱5は、幅715mm×長さ745×高さ275mmの大きさの箱(外箱)の中に、幅635mm×長さ560×高さ210mmの大きさの箱(内箱)を収容した2重構造のものを用いた。上記外装箱5における内箱と外箱との間には、衝撃などの外力を吸収させる目的で、外箱の内側の底面における4つの角にそれぞれアースリパブリック素材からなるコーナーパッドを挿入している。
【0094】
各試験における評価は、各試験後に上記太陽電池セルを目視観察して、何枚に割れが発生しているかを算出することにより行った。梱包試験は、上記太陽電池セルを収容した梱包ケース50に対して、振動試験(JIS Z 0232 包装貨物−振動試験方法、IMV社製の振動試験機(VS−150−1,SC−1000)を使用、振動数:5〜50Hz、周期:3分、加速度1G(一定)、全振幅20〜0.2mm)を上下方向に60分間、前後方向に15分間、左右方向に15分間の計90分間行った後、落下試験を行うことにより実施した。
【0095】
上記落下試験は、15cmの高さから3回行うことにより実施した。一回目は、梱包ケース50の底面における長辺の1つを落下面に向け、梱包ケース50の重心を通る落下面の法線と上記長辺とを直交させた状態で落下させた。2回目は、梱包ケース50の底面における一回目とは反対側の長辺を落下面に向け、梱包ケース50の重心を通る落下面の法線と上記長辺とを直交させた状態で落下させた。そして、3回目は、梱包ケース50の底面を落下面に向け、底面と落下面とを平行にした状態で落下させた。
【0096】
実輸送試験は、実際に関西国際空港(日本)からヒースロー空港(ロンドン)へ旅客便の貨物にて空輸(途中トラック輸送有り)を行うことにより実施した。
【0097】
梱包試験における比較のために、成型した発泡ポリプロピレンのトレーに被梱包物を収納する積層トレー方式の梱包ケース(幅720mm×長さ635mm×高さ310mm、12枚/溝、計720枚)、および成型したポリプロピレンのトレーに被梱包物を収納する積層トレー方式の梱包ケース(幅720mm×長さ635mm×高さ310mm、12枚/溝、計720枚)を用いて、積層した複数枚の太陽電池セルを梱包したものについてそれぞれ同じ試験を行った。また、実輸送試験における比較のために、成型した発泡ポリプロピレンのトレーに被梱包物を収納する積層トレー方式の上記梱包ケースを用いて同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、梱包試験において、太陽電池セルの割れ率は、積層トレー方式(ポリプロピレントレー)による梱包では3.4%、積層トレー方式(発泡ポリプロピレントレー)による梱包では1.4%であったのに対して、本実施の形態の梱包ケース50による梱包では0.44%であり、従来の積層トレー方式による梱包と比べて1/3以下に割れ率が抑制されている。
【0100】
また、実空輸試験においても、太陽電池セルの割れ率は、積層トレー方式(発泡ポリプロピレントレー)による梱包では3.4%であったのに対して、梱包ケース50による梱包では1.0%であり、従来の積層トレー方式による梱包と比べて1/3以下に割れ率が抑制されている。
【0101】
このように、本実施の形態に係る梱包ケース50は、振動および衝撃等の外力から半導体装置8を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損を抑制することができる。
【0102】
また、本発明に係る梱包ケースは、板状半導体装置を複数重ねて梱包する梱包ケースであって、板状半導体装置を補強する補強材にウレタンが固定されており、該ウレタンには溝が形成されている構成であってもかまわない。この場合には、上記補強材が容器の中に入っていることが好ましい。また、上記補強材が容器に複数入っていることが好ましい。更には、上記補強材は四角形状であって補強材に固定されたウレタンの少なくとも3面に溝が形成されていることが好ましい。また、上記ウレタンがポリエーテル系軟質ウレタンフォームであることが好ましい。
【0103】
また、本発明に係る梱包方法は、板状半導体装置を上記梱包ケースで梱包する方法であってもよい。この場合には、上記板状半導体装置が太陽電池セルであることが好ましい。
【0104】
尚、上述の各実施形態で示した梱包ケース10・50における各々の具体的数値は一例であり、本発明はその値に限定されない。
【0105】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る梱包ケースは、軟質ウレタンフォームからなる保持部材を備えているため、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる。よって、太陽電池セル等の梱包ケースとして好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。
【図2】収容された半導体装置の起立方向に対して平行に切断した上記梱包ケースの断面図である。
【図3】上記梱包ケースにおける保持部材の一例を示す断面図である。
【図4】上記梱包ケースにおける保持部材の他の一例を示す断面図である。
【図5】上記梱包ケースにおける梱包トレーの作製方法を説明するための斜視図である。
【図6】上記梱包ケースの作製方法を説明するための斜視図である。
【図7】収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の他の形態に係る梱包ケースの断面図である。
【図8】本実施の他の形態に係る梱包ケースにおける梱包トレーの概略構成を示す斜視図である。
【図9】本実施の他の形態に係る梱包ケースの概略構成を示す斜視図である。
【図10】太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。
【図11】太陽電池セルの概略構成を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図であり、(c)は底面図である。
【図12】従来技術を示すものであり、梱包ケースの概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1 保持部材
2 補強部材
4 溝
5 外装箱
7 保持部材(第2の保持部材)
8 半導体装置
10 梱包ケース
20 梱包トレー
50 梱包ケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等の半導体装置を梱包するための梱包ケースおよび該梱包ケースを用いる梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の生産量の増大に伴い、半導体装置を大量に輸送することが要求されている。半導体装置を大量に輸送するためには、半導体装置の生産性を下げることなく、作業性よく梱包および開梱ができ、且つ輸送中において半導体装置に割れ等が発生しないことが必要条件となる。
【0003】
従来、上記半導体装置の梱包方法としては、(1)積層した複数枚の半導体装置を薄いフィルム状に形成した有機材料等で覆うことで保護・固定する方法(シュリンク方式)(例えば、特許文献1参照)、(2)成型した硬質プラスチック等のトレーに半導体装置を1枚ずつ収納する方法(枚葉トレー方式)、(3)積層した複数枚の半導体装置を緩衝材で覆い、個装ケースに収納する方法(個装ケース収納方式)(例えば、特許文献2参照)、(4)成型した硬質のプラスチック等のトレーに、積層した複数枚の半導体装置を収納する(主に積層した半導体装置を、半導体装置の底面がトレーの底面に対して垂直となるように収納、緩衝材等で覆っても良い)方法(積層トレー方式)、またこれらの方法を組み合わせた方法等が知られている。
【0004】
この中で、シュリンク方式による梱包方法について、図12を用いて以下に説明する。
【0005】
図12は、シュリンク方式による梱包方法を示すものであり、梱包ケースの概略構成を示す断面図である。
【0006】
図12に示すように、シュリンク方式の梱包では、外装箱504の中に、空気マット502が収容され、積層した複数枚の半導体装置501が空気マット502の凹部に収められている。複数枚の半導体装置501上には、空気マット502と接していない部分を保護する第2の空気マット505が設置される。このように、積層した複数枚の半導体装置501の周囲を空気マットで囲むことにより外部の衝撃等から半導体装置501を保護している。
【特許文献1】特開2004−269026号公報(平成16年9月30日公開)
【特許文献2】特開2003−34363号公報(平成15年2月4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、梱包時または輸送時に半導体装置501が破損してしまうという問題を生じる。
【0008】
具体的には、近年の半導体装置501の薄型化により、半導体装置501の基板の厚さがより薄くなっているため、半導体装置501の基板に反りが発生し易く、半導体装置501は応力に対してより脆弱となっている。このため、振動や衝撃等の外力により、半導体装置501に割れ等がより生じ易くなっている。
【0009】
特に、太陽電池セルのように、電極等の部材を平板状の半導体板表面に備える構成の半導体装置501の場合では、表面が凹凸のある構造であるため、上記半導体装置501を複数枚積層して梱包すると外部からの振動および衝撃等により半導体装置501に割れが生じ易い。また、半導体装置501の厚さの僅かなバラツキであっても半導体装置501を積層すると厚さに大きな差が生じるため、上記積層物と梱包ケースとの大きさのミスマッチによって半導体装置501に負荷がかかり割れが生じ易くなる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置に対して、振動および衝撃等の外力から保護することにより、梱包作業及び輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースおよび梱包方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る梱包ケースは、上記課題を解決するために、外装箱内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を複数個重ねて保持する保持部材が設けられた梱包ケースであって、上記外装箱内に、上記半導体装置を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置されているとともに、上記保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、軟質ウレタンフォームで形成された保持部材を備えているため、複数個重ねられた半導体装置は保持部材により安定に保持され、梱包作業及び輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる。具体的には、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であり、半導体装置を保持するための適度な応力を有するため、外部からの振動及び衝撃等に対して半導体装置を保護することができる。また、軟質ウレタンフォームは柔軟性に優れているため、複数個重ねられた半導体装置の厚さにバラツキが生じたとしても、複数個重ねられた半導体装置と保持部材の溝との大きさのミスマッチによる半導体装置へかかる負荷が小さい。更には、半導体装置の側面を挟持する構成であるため、半導体装置の基板上の凹凸部に負荷がかかり難い。これにより、半導体装置に不均一な負荷がかかり難いため、半導体装置を安定に保持することができる。従って、上記構成によれば、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースを提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であるため、上記半導体装置を梱包する際に緩衝材または薄型フィルム等を別途使用する必要がない。さらには、軟質ウレタンフォームは発泡体であり、密度が低いことから、通常のプラスチック成型品と比べて梱包ケースの軽量化を図ることができる。従って、より少ない労力で梱包作業及び輸送を行うことができる梱包ケースを提供することができる。
【0014】
更には、軟質ウレタンフォームは加工性に優れているため、ポリプロピレン、PET樹脂等のプラスチックのように、金型等の高価な冶具を用いて加工する必要がない。従って、より低いコストで梱包ケースを製造することができる。
【0015】
本発明に係る梱包ケースでは、上記対の保持部材は、上記半導体装置をそれぞれ起立状態で保持することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、半導体装置が他の半導体装置の上に寄り掛かるように位置することがないので、半導体装置にかかる負荷が低減される。更には、輸送の際にかかる振動は主に上下振動であるため、半導体装置における凹凸を形成する層にかかる振動時の負荷が低減される。よって、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記対の保持部材はそれぞれ上記外装箱の内部に立設されているとともに、上記溝はそれぞれ鉛直線に沿って設けられており、かつ、上記外装箱の内部に、起立状態の半導体装置の下面を保持する溝が設けられた、軟質ウレタンフォームからなる第2の保持部材がさらに設けられていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、起立状態の半導体装置の下面を保持する溝が設けられた第2の保持部材がさらに設けられているため、半導体装置をさらに下側からも保持することができる。従って、縦方向の振動に対してより安定に半導体装置は保持されるため、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記軟質ウレタンフォームは、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームであることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームは、様々な種類の原料をブレンドして製造することが可能であるため、弾性率やクッション性等の性能を用途に応じて幅広く調整することができるという更なる効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記軟質ウレタンフォームは、10〜30(kg/314cm2)の硬度を有するウレタンフォームであることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、保持部材が適度な硬さとなるため、より安定に半導体装置を保持することができ、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記外装箱の内部に、上記外装箱を補強する補強部材を備えているとともに、上記保持部材は、上記補強部材に固定されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、振動や衝撃に対して、外装箱および保持部材の変形を抑制することができるため、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記補強部材は、開口面を有する箱状の補強部材であり、上記外装箱の内部に、上記箱状の補強部材が複数収容され、上記保持部材は、上記箱状の補強部材の内壁に設けられていることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、補強部材が、上面が開口した箱形の形状であるため、外装箱および保持部材の変形をより抑制することができる。また、1つの外装箱の中に補強部材を複数収容しているため、1つの外装箱の中により多くの半導体装置を安定に収容することができるという更なる効果を奏する。
【0027】
また、本発明に係る梱包ケースでは、上記半導体装置として、太陽電池セルを梱包するようになっていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、太陽電池セルを梱包することができるため、破損を抑制して、太陽電池セルの梱包作業および輸送を安定して行うことができる。
【0029】
本発明に係る梱包方法は、上記課題を解決するために、上記本発明に係る梱包ケースを用いた半導体装置の梱包方法であって、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を、上記梱包ケースに設けられた溝内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置を上記梱包ケースで梱包することを特徴としている。
【0030】
上記方法によれば、上記本発明に係る梱包ケースを用いているため、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0031】
また、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であるため、上記半導体装置を梱包する際に緩衝材または薄型フィルム等を別途使用する必要がない。さらには、軟質ウレタンフォームは発泡体であり、密度が低いことから、通常のプラスチック成型品と比べて梱包ケースの軽量化を図ることができる。従って、より少ない労力で梱包作業及び輸送を行うことができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る梱包ケースは、以上のように、外装箱内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を複数個重ねて保持する保持部材が設けられた梱包ケースであって、上記外装箱内に、上記半導体装置を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置されているとともに、上記保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されていることを特徴としている。
【0033】
これにより、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースを提供することができるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明に係る梱包方法は、以上のように、上記本発明に係る梱包ケースを用いた半導体装置の梱包方法であって、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を、上記梱包ケースに設けられた溝内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置を上記梱包ケースで梱包することを特徴としている。これにより、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すると以下の通りである。
【0036】
図1は、収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。また、図2は、収容された半導体装置の起立方向に対して平行に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。図3は、本実施の形態に係る梱包ケースにおける保持部材の一例を示す断面図である。また、図4は、本実施の形態に係る梱包ケースにおける保持部材の他の一例を示す断面図である。
【0037】
図1に示すように、本実施の形態に係る梱包ケース10は、外装箱5内に、半導体装置8を複数個重ねて保持する保持部材1が設けられている。上記保持部材1には、上記半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置8の側面を挟持する溝4が設けられており、保持部材1は上記外装箱5内に対となって対向配置されている。上記対の保持部材1はそれぞれ上記外装箱5の内部に立設されており、上記溝4はそれぞれ鉛直線に沿って設けられている。
【0038】
梱包ケース10は、さらに上記外装箱の内部に、起立状態の半導体装置8の下面を保持する溝4が設けられた保持部材(第2の保持部材)7が設けられている。これにより、図2に示すように、下面および2つの側面の3方向から半導体装置8は保持されている。
【0039】
上記半導体装置8は、基板上に凹凸を形成する層が設けられている。つまり、割れ易いが、厚さが均一で表面が平滑であり、重ねて均一に荷重がかかっただけでは割れないガラス基板等とは異なり、本実施の形態に係る半導体装置8は厚さが不均一で表面が凸凹である。このため、複数個重ねて収容する場合には、ガラス基板などと比べて、半導体装置8は振動や衝撃等の外力によってより破損し易い。
【0040】
上記半導体装置8における基板上の凸凹を形成する層としては、ハンダ、アルミニウム、銀などからなる金属電極、銅、銀、ハンダなどからなる配線された電極、酸化錫や酸化亜鉛などの透明導電性金属酸化物などが挙げられる。
【0041】
半導体装置8における凹凸を形成する層の厚さが半導体装置8における基板の厚さよりも厚い場合では、半導体装置8における凸凹による厚さの差が大きいため、外力に対して半導体装置8はより破損が生じ易い。更には、半導体装置8における凹凸を形成する層が、半導体装置8における基板よりも硬い場合には、半導体装置8の硬さが不均一となるため、半導体装置8は外力に対してより破損が生じ易い。このような場合では、従来は別途緩衝材やフィルムなどを用いていたが、本実施の形態に係る梱包ケース10では、後述するように保持部材1・7が高緩衝性であり、半導体装置8を保持するための適度な応力を有するため、別途緩衝材やフィルムなどを用いることなく、外部からの振動及び衝撃等に対して半導体装置8を保護することができる。
【0042】
上記半導体装置8における基板の底面の形状は、特には限定されず、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形等が挙げられる。上記半導体装置8の具体例としては、IC(integrated circuit)、光学ピックアップ、レ−ザ−などの電子部品、太陽電池セル等が挙げられる。特に、太陽電池セルは、非常に割れ易い極薄基板(厚さ50〜300μm)表面に、基板よりも厚く(0.1〜1mm)て硬い金属電極が形成され、表面が凸凹となっているため、本実施の形態に係る梱包ケース10により好適に梱包することができる。
【0043】
上記保持部材1・7の形状は特には限定されないが、半導体装置8を安定に保持するという観点から、溝4の方向における保持部材1・7の幅が、半導体装置8を該溝4に設置したときの溝4の方向と平行な半導体装置8の幅(以下、溝4に対応する半導体装置8の幅と記す)の1/2以上であることが好ましい。つまり、保持部材1・7は、半導体装置8の側面の1/2以上と接触して半導体装置8を保持する構成であることが好ましい。
【0044】
上記保持部材1・7に設けられる溝4の数は特には限定されないが、複数設けられていることが好ましい。
【0045】
溝4の幅W(半導体装置8を挟持した場合における半導体装置8の側面と平行な方向における幅)は、特には限定されないが、半導体装置8の収容効率と半導体装置8にかかる負荷とのバランスをとるという観点から、溝4に挿入する複数個重ねられた半導体装置8の厚さ(側面における積み重ね方向における幅)の1.5倍以下であることが好ましい。また、作業性を良くするという観点から、溝4の幅Wは、溝4に挿入する複数個重ねられた半導体装置8の厚さよりも少し大きいことが好ましい。
【0046】
また、隣接する溝4間の幅dは、溝4の底面における幅Wと略等しいことが好ましい。隣接する溝4間の幅dが、溝4の底面における幅Wよりも大きくなると、収容できる半導体装置8の数が少なくなる。また、隣接する溝4間の幅dが、溝4の底面における幅Wよりも小さいと、溝4の強度が低下し、外部からの衝撃等によって半導体装置8が動き易くなる。更には、隣接する溝4間の幅dが、溝4の底面における幅Wよりも小さいと、半導体装置8を収容した際に、隣接する積層した半導体装置8の間の隙間が小さくなるため、作業性が悪化する。
【0047】
溝4の幅Wは、図3および図4に示すように、底面の幅(底面幅)W1よりも開口部の幅(開口幅)W2の方が広くなっていることが好ましく、底面幅W1よりも開口幅W2の方が10%〜20%広くなっていることがより好ましい。上記底面幅W1よりも上記開口幅W2を広くすることで、半導体装置8を上記梱包ケース10に収容する際に、半導体装置8を溝4に挿入し易くなる。この場合における溝4の形状としては、図3のように開口部付近のみの幅が広くなる構成であってもよいし、図4のように底面から開口部に向かって緩やかに幅が広くなる構成であってもよい。
【0048】
溝4の深さbは、特には限定されないが、半導体装置8における凹凸を形成する層が基板の端部に形成されていない場合には、凹凸を形成する層に負荷をかけることを避けるために、半導体装置8における基板のみを保持する深さであることが好ましい。つまり、溝4の深さbは、半導体装置8の端部から、凹凸を形成する層が設けられている領域までの距離よりも短いことが好ましい。
【0049】
溝4の長さ(溝4の幅Wと直交する方向における長さ)は、溝4の長さが、溝4によって保持されたときの溝4の長さ方向と平行な半導体装置8の幅(溝4に対応する半導体装置8の幅)よりも短い場合には、溝4の長さは、溝4の長さ方向と平行な保持部材1・7の長さと同じであることが好ましい。つまり、溝4は、溝4の長さ方向に貫通していることが好ましい。
【0050】
また、保持部材1・7の長さ(溝4の長さ方向と平行な長さ)が、溝4に対応する半導体装置8の幅よりも長い場合には、溝4の長さは、溝4に対応する半導体装置8の幅と略等しいことが好ましい。
【0051】
また、保持部材1の対向する1組の溝4の底面間の距離fは、半導体装置8の長さ(溝4に挟持される半導体装置8の左右両側面間の距離)よりも0.5〜1.0cm長いことが好ましい。上記距離fが上記範囲内であれば、半導体装置8を適度に固定することができ、半導体装置8を挿入する場合に半導体装置8が保持部材1に引っかかり難いため、半導体装置8を容易に挿入することができる。
【0052】
また、例えば、後述するように、保持部材7と対向する位置に保持部材を有する蓋を含む構成である場合のように、保持部材7と対向する位置に保持部材を設けた構成では、それぞれの保持部材における対向する溝4の底面間の距離は、半導体装置8の長さ(溝4に挟持される半導体装置8の上下両側面間の距離)よりも0.2〜0.5cm短いことが好ましい。上記距離が上記範囲内であれば、半導体装置8を適度に固定することができ、半導体装置8にダメ-ジが伝わり難く、半導体装置8の割れの発生を抑制することができる。
【0053】
また、上記保持部材1・7は、軟質ウレタンフォームからなるものである。軟質ウレタンフォームとしては、半導体装置8を安定に保持するための適度な応力、外部からの振動又は衝撃を低減するための高い緩衝力を有するものであれば特には限定されず、ポリエーテル系軟質ウレタンフォーム、ポリエステル系軟質ウレタンフォーム等が挙げられる。様々な種類の原料をブレンドして製造することが可能であるため、弾性率やクッション性等の性能を用途に応じて幅広く調整することができるため、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームがより好ましい。
【0054】
尚、本実施の形態における「軟質ウレタンフォーム」とは、発泡倍率が約10〜60倍であり、見かけ密度が16〜100kg/m3程度のウレタンフォームのことである。
【0055】
ポリエーテル系軟質ウレタンフォームは、様々なポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、整泡剤等を組み合わせることによって製造することができ、従来公知の材料を用いて製造することができる。
【0056】
上記軟質ウレタンフォームは、硬度が10〜30(kg/314cm2)の範囲内であることが好ましく、12〜15(kg/314cm2)の範囲内であることがより好ましい。硬度が10(kg/314cm2)未満であると、保持部材1・7の保持力が弱くなるため、半導体装置8が動き易くなり、梱包作業及び輸送時における半導体装置8の破損が生じ易くなる。硬度が30(kg/314cm2)を超えると、保持部材1・7の緩衝力が弱くなるため、半導体装置8が受ける衝撃が大きくなり、梱包作業及び輸送時における半導体装置8の破損が生じ易くなる。
【0057】
引張強度、伸度、圧縮残留歪などの硬度以外の軟質ウレタンフォームの諸物性の値は、特には限定されず、従来公知の軟質ウレタンフォームが有する範囲内であればよい。
【0058】
また、本実施の形態に係る梱包ケース10は、上記の構成の他に、図1に示すように、外装箱5を補強する補強部材2をさらに備えている。補強部材2は外装箱5の内部に備えられ、外装箱5と接する面の裏面に保持部材1・7を備えている。補強部材2の材質としては、ダンボール、硬質プラスチック等が挙げられる。
【0059】
補強部材2の形状としては、外装箱5および保持部材1・7を補強することができれば、特には限定されないが、外装箱5を均一に補強するという観点から、補強部材2は、取り付けられる外装箱5における内面と略同じ形状の底面を有する平板状であることが好ましい。また、外装箱5の内面に複数個の平板状の補強部材2を設ける場合、それぞれの面に対応する補強部材2は互いに繋がって1つの部材を構成していてもよいし、それぞれ別個の部材となっていてもよい。尚、本実施の形態では、保持部材1・7の裏面を保持するため、それぞれの保持部材1・7に対応した3つの平板状の補強部材2がそれぞれ繋がって1つの部材となったコの字形状を有する補強部材2を用いている。
【0060】
外装箱5は、上記補強部材2と保持部材1・7とからなる梱包トレー20と略同じ大きさの収容部を有する箱である。外装箱5によって梱包トレー20の形状が維持され、梱包トレー20は輸送可能となる。外装箱5の材質としては、ダンボール、硬質プラスチック、軽金属等が挙げられる。
【0061】
以下に、上記梱包ケース10の作製方法の一例について図5および図6を用いて説明する。
【0062】
図5は、梱包ケース10における梱包トレー20の作製方法を説明するための斜視図である。また、図6は、梱包ケース10の作製方法を説明するための斜視図である。
【0063】
図5に示すように、保持部材1・7は、適当な厚さと大きさとを有し、底面が長方形である平板状の軟質ウレタンフォーム材3(例えば、幅10cm、長さ50cm、厚さ4cm程度の軟質ウレタンフォーム材)を用いて作製される。上記軟質ウレタンフォーム材3の底面における長辺と接する側面(以下、長辺側の側面と記す)から、反対側の長辺側の側面へ向かって、軟質ウレタンフォーム材3を圧縮する。そして、圧縮された軟質ウレタンフォーム材3の底面に溝を形成するため、長辺側の側面から圧縮方向に貫通する凹部を一定の間隔で切り抜く。ここで、上記切抜きの作業は、コの字型の刃物等で行うことで効率よく作業を行うことができる。これにより、圧縮された軟質ウレタンフォーム材3の底面上には、圧縮方向に貫通した溝4が設けられることになる。上記溝4は、例えば、深さが軟質ウレタンフォーム材3の厚さの1/2程度である2cm程度、幅が1cm程度に設定される。
【0064】
上記切り抜き作業後、軟質ウレタンフォーム材3を圧縮から開放し、膨張させて元の大きさに戻す。そして、保持部材1・7の溝4が形成されている面の裏面と長方形の補強部材2とを両面テープ等で固定する。このとき、溝4の方向が補強部材2の長辺の方向と平行になるように、保持部材1・7を配置する。そして、補強部材2の短辺の方向と折り目が平行になるように、隣接する保持部材1・7の間の補強部材2をそれぞれ1箇所ずつ、計2箇所を折り曲げることによりコの字状の梱包トレー20を作製する。そして、図6に示すように、梱包トレー20を、外装箱5の中に収容することで、梱包ケース10を作製することができる。
【0065】
尚、梱包ケース10は、図6に示すように、蓋6を備える構成であってもよい。つまり、梱包ケース10に被梱包物である半導体装置8を収容した後、露出した半導体装置8の上に蓋6を配置し、梱包ケース10を梱包する構成であってもよい。
【0066】
上記蓋6は、上述した梱包ケース10に収容される半導体装置8の露出する上面を保護するためのものである。蓋6は、半導体装置8を保護するものであれば、どのようなものでもかまわないが、梱包ケース10と同様に補強部材2の上に保持部材1が設けられたものであることが好ましい。この場合、収容された半導体装置8側へ保持部材1が向くように、蓋6を配置する。本実施の形態では、蓋6は、補強部材2の上に保持部材1が設けられたものを用いている。また、上記蓋6における保持部材1には溝4が設けられていてもよい。これにより、より安定に半導体装置8を保持することができる。
【0067】
次に、上記梱包ケース10を使用して、半導体装置8を梱包する方法について以下に説明する。
【0068】
まず、梱包ケース10の中の保持部材1・7の各溝4の中に、半導体装置8が起立状態となるように、半導体装置8を収容する。この際、半導体装置8を1枚ずつ収容してもよいし、積層した複数の半導体装置8を一度に収容してもよい。次に、蓋6を有する構成の場合には、蓋6の保持部材1が半導体装置8側に向くように、梱包ケース10における半導体装置8が露出した面の上に蓋6を配置する。これにより、保持部材1・7によって、半導体装置8を四方向から保持することになり、輸送時の振動および衝撃などの外力から半導体装置8を安定に保護することができる。最後に、外装箱5の蓋を閉めることで、半導体装置8の梱包は完了する。
【0069】
以上のように、本実施の形態に係る梱包ケース10は、外装箱5内に、半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置8の側面を挟持する溝4が設けられた対の保持部材1が対向配置されているとともに、上記保持部材1は、軟質ウレタンフォームで形成されている。このため、複数個重ねられた半導体装置8は保持部材1により安定に保持され、輸送時などにおける半導体装置8の破損を抑制することができる。具体的には、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であり、半導体装置8を保持するための適度な応力を有するため、外部からの振動及び衝撃等に対して半導体装置8を保護することができる。また、軟質ウレタンフォームは柔軟性に優れているため、複数個重ねられた半導体装置8の厚さにバラツキが生じたとしても、複数個重ねられた半導体装置8と保持部材1の溝4との大きさのミスマッチによる半導体装置8への負荷が小さい。更には、半導体装置8の側面を挟持する構成であるため、半導体装置8の基板上の凹凸部に負荷がかかり難い。これにより、半導体装置8に不均一な負荷がかかり難いため、半導体装置8を安定に保持することができる。従って、上記構成によれば、振動および衝撃等の外力から半導体装置8を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損を抑制することができる梱包ケース10を提供することができる。
【0070】
また、軟質ウレタンフォームは高緩衝性であるため、上記半導体装置8を梱包する際に緩衝材または薄型フィルム等を別途使用する必要がない。さらには、軟質ウレタンフォームは発泡体であり、密度が低いことから、通常のプラスチック成型品と比べて梱包ケース10の軽量化を図ることができる。従って、より少ない労力で梱包作業及び輸送を行うことができる梱包ケース10を提供することができる。
【0071】
更には、軟質ウレタンフォームは加工性に優れているため、ポリプロピレン、PET樹脂等のプラスチックのように、金型等の高価な冶具を用いて加工する必要がない。従って、より低いコストで梱包ケース10を製造することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る梱包方法は、上記梱包ケース10を用いて、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置8を、上記梱包ケース10に設けられた溝4内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置8を上記梱包ケース10で梱包する方法である。本実施の形態に係る梱包方法は、上記梱包ケース10を使用するため、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損を抑制することができる。
【0073】
尚、上述の説明では、保持部材1・7を3つ備える構成である場合について説明したが、これに限るものではない。半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を、2つの保持部材1で挟持する構成であってもかまわない。但し、本実施形態のように、半導体装置8の2つの側面および底面を保持する構成である場合は、半導体装置8を下側からも保持することになり、縦方向の振動に対してより安定に半導体装置8を保持することができるため、より好ましい。
【0074】
また、上述の説明では、半導体装置8を複数個重ねた状態で上記半導体装置8の側面を挟持する対の保持部材1が、外装箱5の内部に立設されている場合について説明したが、これに限るものではない。上記対の保持部材1が、外装箱5の内部に横設されている構成であってもかまわない。但し、この場合には、外装箱5の開口面は、上面ではなく側面にする必要がある。
【0075】
また、上述の説明では、外装箱5として、1つの箱からなる構成のものを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。外装箱5の強度を高める目的などで、外装箱5の中に、外装箱5よりも小さい別の箱を1個以上設けた多重構造の箱であってもよい。
【0076】
また、外装箱5として、中に仕切り板などで仕切られている構成であってもよい。この場合には、保持部材1・7は上記仕切り板に設けられていてもかまわない。
【0077】
また、上述の説明では、半導体装置8をそれぞれ起立状態で保持する構成である場合について説明したが、これに限るものではない。半導体装置8をそれぞれ横設状態で保持する構成であってもよい。但し、本実施形態のように、半導体装置8をそれぞれ起立状態で保持する構成である場合は、半導体装置8が他の半導体装置8の上に寄り掛かるように位置し難く、半導体装置8に負荷がかかり難いため、より好ましい。更には、輸送の際にかかる振動は主に上下振動であるため、半導体装置8における凹凸を形成する層にかかる負荷が低減される。また、半導体装置8をそれぞれ横設状態で保持する構成である場合には、外装箱5の側面を開けて横から半導体装置8を収容する構成とする必要がある。
【0078】
また、上述の説明では、補強部材2が設けられている場合について説明したが、これに限るものではない。補強部材2を設けないで、保持部材1・7を直接外装箱5に貼り付ける構成であってもよい。但し、補強部材2が設けられている場合には、振動や衝撃に対して、外装箱5および保持部材1・7の変形をより抑制することができ、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損をより抑制することができるため、より好ましい。
【0079】
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施の形態について、図7〜図11を用いて以下に詳細に説明する。但し、上述した実施の形態1における部材と同一の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。尚、本実施の形態に係る梱包ケースは、補強部材2の形状が異なっていること、および1つの外装箱5の中に梱包トレーが3つ配置されていること以外は実施の形態1の梱包ケース10と同様の構成を有している。
【0080】
図7は、収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。また、図8は、本実施の形態に係る梱包ケースにおける梱包トレーの概略構成を示す斜視図である。また、図9は、本実施の形態に係る梱包ケースの概略構成を示す斜視図である。
【0081】
図7に示すように、梱包ケース50は、1つの外装箱5の中に梱包トレー20が3つ配置されている。また、補強部材2は、図8に示すように、実施の形態1における補強部材2に、該補強部材2を構成する面同士がさらに1組の平行関係にある面により繋がった構成となっている。つまり、補強部材2は、開口面を1つ有する箱形の形状を有している。これにより、より強固に保持部材1・7の形状を維持することができる。
【0082】
また、図9に示すように梱包ケース50は、実施の形態1の梱包ケース10と同様に、梱包トレー20と外装箱5と蓋6とを含む構成となっている。
【0083】
梱包ケース50の作製方法については、実施の形態1における梱包ケース10と同様であるので、ここでは説明を省略する。また、梱包ケース50を用いた梱包方法についても、実施の形態1における梱包ケース10を用いた梱包方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0084】
以下に、半導体装置8として結晶シリコン太陽電池セルを用いて、本実施の形態に係る梱包ケース50による梱包試験および実輸送試験を行った結果について説明する。まず、結晶シリコン太陽電池セルの製造方法について図10および図11を用いて説明する。
【0085】
図10は、太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。また図11は、太陽電池セルの概略構成を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図であり、(c)は底面図である。尚、図11(b)に記載されている矢印は、図11(b)に示す面が受光面であることを表すものである。
【0086】
図10に示すように、半導体基板101(例えばP型シリコン基板、厚さ200μm)の上面(受光面)101aに不純物を含む溶液を塗布して、または気相中から800〜900℃程度で熱拡散することにより、N型の不純物拡散層102を形成し、PN接合層102aを作製する。
【0087】
次に、底面(裏面)101bに900〜1100℃程度で不純物を熱拡散させて、P型の高濃度の不純物拡散層103を形成してBSF(Back Surface Field)を形成する。なお、裏面コンタクト用電極としてアルミニウムを使用すれば、BSFを700〜900℃程度の焼成により局部的に形成することができる。
【0088】
次に、上面101a上に、金属酸化物等からなる表面反射防止膜104を形成し、底面101b側に金属酸化物等からなる反射防止膜105を形成する。そして、半導体基板101の上面101a側にグリッド状の受光面電極106を形成する。そして、底面101b側に反射防止膜105の上から部分的に裏面コンタクト用電極107を形成する。この際、受光面電極106および裏面コンタクト用電極107が半導体層とオーミック接触するために、作製した太陽電池セルを400〜800℃で焼成することが望ましい。また、裏面コンタクト用電極107は底面101b全体に形成していても良い。
【0089】
これらの受光面電極106及び裏面コンタクト用電極107は、真空蒸着法、スクリーン印刷法、スパッタ法等で形成することができる。また、受光面電極106及び裏面コンタクト用電極107の表面には、必要に応じてハンダ(図示せず)が被覆されてもよい。
【0090】
このようにして製造される太陽電池セルは、図11に示すように、上面101a上には受光面電極106が突出しており、底面101b上には裏面コンタクト用電極107が突出しているため、表面が平滑ではなく、凹凸となっている。上記太陽電池セルの表面の凹凸は、上記製造工程の中で、電極形成工程のみならず、焼成工程における電極の異常成長による突起、ハンダ被覆の際の電極上に生じる粒または溜り等が原因によっても形成する。
【0091】
次に、実際に上記太陽電池セルを本実施の形態の梱包ケース50により梱包して、梱包試験および実輸送試験を行った結果について以下に説明する。
【0092】
梱包試験および実輸送試験では、156mm角で厚さが200μmである多結晶シリコン太陽電池セルを使用した。本実施の形態の梱包ケース50は、各梱包トレー20の保持部材1・7に同じ形状を有する溝4がそれぞれ20個設けられており、各溝4には15枚の太陽電池セルを収容することができる。よって、梱包ケース50には計900枚の太陽電池セルを収容することができる。尚、本試験は、梱包ケース50に900枚の太陽電池セルを収容して行った。
【0093】
上記溝4の幅は10mmであり、溝4間の幅は溝4の幅と同じ10mmに設定されている。また、上記溝4の長さは160mmであり、溝4の深さは15mmに設定されている。梱包トレー20は、幅196mm×長さ506×高さ186mmの大きさのものを用いた。外装箱5は、幅715mm×長さ745×高さ275mmの大きさの箱(外箱)の中に、幅635mm×長さ560×高さ210mmの大きさの箱(内箱)を収容した2重構造のものを用いた。上記外装箱5における内箱と外箱との間には、衝撃などの外力を吸収させる目的で、外箱の内側の底面における4つの角にそれぞれアースリパブリック素材からなるコーナーパッドを挿入している。
【0094】
各試験における評価は、各試験後に上記太陽電池セルを目視観察して、何枚に割れが発生しているかを算出することにより行った。梱包試験は、上記太陽電池セルを収容した梱包ケース50に対して、振動試験(JIS Z 0232 包装貨物−振動試験方法、IMV社製の振動試験機(VS−150−1,SC−1000)を使用、振動数:5〜50Hz、周期:3分、加速度1G(一定)、全振幅20〜0.2mm)を上下方向に60分間、前後方向に15分間、左右方向に15分間の計90分間行った後、落下試験を行うことにより実施した。
【0095】
上記落下試験は、15cmの高さから3回行うことにより実施した。一回目は、梱包ケース50の底面における長辺の1つを落下面に向け、梱包ケース50の重心を通る落下面の法線と上記長辺とを直交させた状態で落下させた。2回目は、梱包ケース50の底面における一回目とは反対側の長辺を落下面に向け、梱包ケース50の重心を通る落下面の法線と上記長辺とを直交させた状態で落下させた。そして、3回目は、梱包ケース50の底面を落下面に向け、底面と落下面とを平行にした状態で落下させた。
【0096】
実輸送試験は、実際に関西国際空港(日本)からヒースロー空港(ロンドン)へ旅客便の貨物にて空輸(途中トラック輸送有り)を行うことにより実施した。
【0097】
梱包試験における比較のために、成型した発泡ポリプロピレンのトレーに被梱包物を収納する積層トレー方式の梱包ケース(幅720mm×長さ635mm×高さ310mm、12枚/溝、計720枚)、および成型したポリプロピレンのトレーに被梱包物を収納する積層トレー方式の梱包ケース(幅720mm×長さ635mm×高さ310mm、12枚/溝、計720枚)を用いて、積層した複数枚の太陽電池セルを梱包したものについてそれぞれ同じ試験を行った。また、実輸送試験における比較のために、成型した発泡ポリプロピレンのトレーに被梱包物を収納する積層トレー方式の上記梱包ケースを用いて同じ試験を行った。その結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、梱包試験において、太陽電池セルの割れ率は、積層トレー方式(ポリプロピレントレー)による梱包では3.4%、積層トレー方式(発泡ポリプロピレントレー)による梱包では1.4%であったのに対して、本実施の形態の梱包ケース50による梱包では0.44%であり、従来の積層トレー方式による梱包と比べて1/3以下に割れ率が抑制されている。
【0100】
また、実空輸試験においても、太陽電池セルの割れ率は、積層トレー方式(発泡ポリプロピレントレー)による梱包では3.4%であったのに対して、梱包ケース50による梱包では1.0%であり、従来の積層トレー方式による梱包と比べて1/3以下に割れ率が抑制されている。
【0101】
このように、本実施の形態に係る梱包ケース50は、振動および衝撃等の外力から半導体装置8を保護することにより、梱包作業および輸送時における半導体装置8の破損を抑制することができる。
【0102】
また、本発明に係る梱包ケースは、板状半導体装置を複数重ねて梱包する梱包ケースであって、板状半導体装置を補強する補強材にウレタンが固定されており、該ウレタンには溝が形成されている構成であってもかまわない。この場合には、上記補強材が容器の中に入っていることが好ましい。また、上記補強材が容器に複数入っていることが好ましい。更には、上記補強材は四角形状であって補強材に固定されたウレタンの少なくとも3面に溝が形成されていることが好ましい。また、上記ウレタンがポリエーテル系軟質ウレタンフォームであることが好ましい。
【0103】
また、本発明に係る梱包方法は、板状半導体装置を上記梱包ケースで梱包する方法であってもよい。この場合には、上記板状半導体装置が太陽電池セルであることが好ましい。
【0104】
尚、上述の各実施形態で示した梱包ケース10・50における各々の具体的数値は一例であり、本発明はその値に限定されない。
【0105】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る梱包ケースは、軟質ウレタンフォームからなる保持部材を備えているため、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる。よって、太陽電池セル等の梱包ケースとして好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の形態に係る梱包ケースの断面図である。
【図2】収容された半導体装置の起立方向に対して平行に切断した上記梱包ケースの断面図である。
【図3】上記梱包ケースにおける保持部材の一例を示す断面図である。
【図4】上記梱包ケースにおける保持部材の他の一例を示す断面図である。
【図5】上記梱包ケースにおける梱包トレーの作製方法を説明するための斜視図である。
【図6】上記梱包ケースの作製方法を説明するための斜視図である。
【図7】収容された半導体装置の起立方向に対して垂直に切断した本実施の他の形態に係る梱包ケースの断面図である。
【図8】本実施の他の形態に係る梱包ケースにおける梱包トレーの概略構成を示す斜視図である。
【図9】本実施の他の形態に係る梱包ケースの概略構成を示す斜視図である。
【図10】太陽電池セルの製造工程を説明するための断面図である。
【図11】太陽電池セルの概略構成を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図であり、(c)は底面図である。
【図12】従来技術を示すものであり、梱包ケースの概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1 保持部材
2 補強部材
4 溝
5 外装箱
7 保持部材(第2の保持部材)
8 半導体装置
10 梱包ケース
20 梱包トレー
50 梱包ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装箱内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を複数個重ねて保持する保持部材が設けられた梱包ケースであって、
上記外装箱内に、上記半導体装置を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置されているとともに、
上記保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されていることを特徴とする梱包ケース。
【請求項2】
上記対の保持部材は、上記半導体装置をそれぞれ起立状態で保持することを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項3】
上記対の保持部材はそれぞれ上記外装箱の内部に立設されているとともに、上記溝はそれぞれ鉛直線に沿って設けられており、かつ、
上記外装箱の内部に、起立状態の半導体装置の下面を保持する溝が設けられた、軟質ウレタンフォームからなる第2の保持部材がさらに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の梱包ケース。
【請求項4】
上記軟質ウレタンフォームは、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項5】
上記軟質ウレタンフォームは、10〜30(kg/314cm2)の硬度を有するウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項6】
上記外装箱の内部に、上記外装箱を補強する補強部材を備えているとともに、
上記保持部材は、上記補強部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項7】
上記補強部材は、開口面を有する箱状の補強部材であり、
上記外装箱の内部に、上記箱状の補強部材が複数収容され、上記保持部材は、上記箱状の補強部材の内壁に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の梱包ケース。
【請求項8】
上記半導体装置として、太陽電池セルを梱包するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の梱包ケースを用いた半導体装置の梱包方法であって、
基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を、上記梱包ケースに設けられた溝内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置を上記梱包ケースで梱包することを特徴とする半導体装置の梱包方法。
【請求項1】
外装箱内に、基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を複数個重ねて保持する保持部材が設けられた梱包ケースであって、
上記外装箱内に、上記半導体装置を複数個重ねた状態で上記半導体装置の側面を挟持する溝が設けられた対の保持部材が対向配置されているとともに、
上記保持部材は、軟質ウレタンフォームで形成されていることを特徴とする梱包ケース。
【請求項2】
上記対の保持部材は、上記半導体装置をそれぞれ起立状態で保持することを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項3】
上記対の保持部材はそれぞれ上記外装箱の内部に立設されているとともに、上記溝はそれぞれ鉛直線に沿って設けられており、かつ、
上記外装箱の内部に、起立状態の半導体装置の下面を保持する溝が設けられた、軟質ウレタンフォームからなる第2の保持部材がさらに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の梱包ケース。
【請求項4】
上記軟質ウレタンフォームは、ポリエーテル系軟質ウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項5】
上記軟質ウレタンフォームは、10〜30(kg/314cm2)の硬度を有するウレタンフォームであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項6】
上記外装箱の内部に、上記外装箱を補強する補強部材を備えているとともに、
上記保持部材は、上記補強部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項7】
上記補強部材は、開口面を有する箱状の補強部材であり、
上記外装箱の内部に、上記箱状の補強部材が複数収容され、上記保持部材は、上記箱状の補強部材の内壁に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の梱包ケース。
【請求項8】
上記半導体装置として、太陽電池セルを梱包するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の梱包ケースを用いた半導体装置の梱包方法であって、
基板上に凹凸を形成する層が設けられた半導体装置を、上記梱包ケースに設けられた溝内に、複数個重ねて収容することにより、上記半導体装置を上記梱包ケースで梱包することを特徴とする半導体装置の梱包方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−210641(P2007−210641A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32451(P2006−32451)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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