説明

梱包ユニット

【課題】 宅配便として外箱内への物品の梱包を容易に行い、衝撃から有効に保護する、
【解決手段】保護マット10と外箱11との組み合わせを有している。保護マット10は、格納すべき物品Mを挟んで一定位置に保持させるホルダーであり、外箱11は、それぞれバネ作用によって支持された下板14と上板16との対を有し、下板14と上板16とは、バネ力を作用させた状態で物品Mを挟んだ保護マット10の上下面を支えて外箱11内の定位置に保持させる運搬箱である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、特に宅配便用の物品配送に用いる梱包ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を輸送する際には、輸送中に受ける衝撃や振動などから物品を有効に保護するため、通常は緩衝性を有する紙やプラスチックシートその他の緩衝材を用いて物品を梱包し、更に、必要に応じて物品が動かないよう詰め物をして外箱内に梱包される。
【0003】
物品運送用の袋ではないが、買い物袋などとして使用することを目的とした保温袋として、特許文献1には、発泡粒状体の断熱効果を利用した袋が記載されている。この保温袋は、相互間に粒状体収容部を形成して自在に変形可能な内側袋部及び外側袋部を有する2重袋で、保温物を収納可能に形成され、かつ前記両袋部の内の少なくとも外側袋部が非通気性をなす袋本体と、前記粒状体収容部に収容され、この収容部が脱気されるにつれて互いに密着状態に集合して固化状態となる無数の発泡粒状体と、前記粒状体収容部に連通して前記袋本体に設けられ、前記粒状体収容部が脱気した状態を保持する吸気弁を有する給排気口とを具備したことを特徴とする保温袋である。
【0004】
特許文献1に記載された保温袋によれば、粒状体収容部内に収容されている無数の発泡粒状体を被保温物の形状に沿うように固化状態とすることによって、袋本体内で被保温物の周囲の空気の対流による熱損失をなくすとともに、発泡粒状体群で断熱ができるから、被保温物の温度変化を長時間にわたり抑制できるとともに、前記固化状態の発泡粒状体で被保温物を袋本体内で動かないように位置決めすることによって、被保温物が動くことに基づく被保温物の品質劣化を防止できるという効果が強調されている。
【0005】
特許文献1に記載の保温袋は、被保温物の形状に沿うように固化状態として発泡粒状体群の断熱効果を被保温物の保温に利用したものであるが、固化状態とした発泡粒状体群は断熱効果だけでなく、緩衝効果を期待でき、前記固化状態の発泡粒状体を緩衝体として物品を袋本体内で動かないように位置決めできることは、宅配便として輸送される物品を外部から受ける衝撃から保護する上にも大きな効果が期待できる。
【0006】
上記知見に基づき、発明者らは先に、緩衝体ビーズを充填した気密性の袋内をマットとして物品を梱包する保護マットを各種開発した。この保護マットによれば、マットの表面を梱包物品の表面に接触させ、袋内を脱気することによって、保護マットは、物品の表面形状を象って固化し、物品の少なくとも1面をささえるとともに、緩衝体ビーズの固化によって緩衝作用が生じ、輸送中に受ける衝撃や振動から物品を有効に保護することができる。
【0007】
実際に保護マットを宅配便に使用するには、物品をマットで梱包し、これを定型の外箱内に格納されるのが通例である。定型の外箱を利用するのは、形状を定型化することによってトラックへの積載、保管時の積み込みを容易にするためである。すなわち、物品はもっぱら保護マットに包装されて運搬時の振動や衝撃から保護され、外箱は単に物品を包装したマットを固定し、定型に保形する目的で使用されていた。
【0008】
ところで、気密性の袋内に緩衝体として緩衝体ビーズを充填した保護マットは、袋内を脱気することによって、緩衝体ビーズが物品の表面形状を象って固化し、袋内での緩衝体ビーズの充填密度が高まることによって、物品の保持と緩衝効果が得られるのであるが、実際に保護マットを宅配便の梱包に使用するには、積荷の形状を定型に保たせるため、物品を包んで脱気した保護マットを定型の外箱内に収納することが望ましい。
【0009】
そして、外箱に収容した物品を外箱内で安定させるためには、結束バンドなどを用いて物品を包んで脱気した保護マットを固定する、必要がある。しかし、保護マットは物品の形状を象って固化するため、その形状は通常不定形となり、物品ごとに結束バンドの長さを調整して締め付けなければならず、固定に手数がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−321217
【特許文献2】特許第2847651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、物品を包んで脱気した保護マットを定型の外箱内に固定する作業に際しては、物品の形状を象って固化した保護マットの形状は通常不定形となるため、物品ごとに結束バンドの長さを調整して締め付け固定しなければならず、梱包作業に手数がかかるという問題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明による梱包ユニットは、物品を2つ折に折曲した保護マット間に挟み、マット内を脱気して保護マット間に物品を固定し、そのまま外箱の下板と上板間で挟むことにより、厄介な手数を要することなく物品を外箱内に梱包することを最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による梱包ユニットによれば、格納物品を2つ折に折りたたんだ保護マットの間に挟み、保護マット内を脱気してマットを固化させ、そのまま外箱の下板と上板との間に挟んで施蓋し、施錠すればよいため、梱包の手数を簡略化できる。もっとも、念のため、結束バンドを用いてことによってより安定に格納できるが、結束バンドは必ずしもマットを外箱に緊締する必要はなく前後左右方向のずれを抑える程度で十分である。物品を挟んで固化させた保護マットは、下板と上板間で押さえられ、外箱の有する弾力性によって外箱内の定位置に安定に保持することができる。
【0014】
さらに、外箱を施蓋し、施錠することによって下板の下方及び上板の上方には緩衝空間が形成され、また、外箱の4周縁にも緩衝空間が確保されることになるため、運搬中の落下あるいは転倒などによって、外部から外箱に強い衝撃が作用してもその衝撃は緩衝空間に有効に吸収されて保護マットに包まれた物品にはほとんど衝撃が伝えられることがなく、収納物品を有効に安全に保護できる。なお、保護マット内を脱気するポンプは、箱本体と、蓋体との4周縁に形成される緩衝空間の一部を収納空間に利用し、ポンプを外箱内に保管しておくことによって必要時には迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1実施例による梱包ユニットの組み合わせを示す図である。
【図2】本発明による保護マットの1実施例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】(a)、(b)は保護マットの内袋に設ける接合点の態様を示す図である。
【図4】接合点が形成する区画を示す図である。
【図5】バルブの構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図6】(a)は外箱を閉じた状態を示す図、(b)は外箱を施蓋した状態を示す(a)のY−Y線断面図である。
【図7】(a)〜(f)は、保護マットを外箱と組み合わせて物品を外箱内に梱包する要領を示す図である。
【図8】物品を入れたマットを外箱に収納し、さらに外箱内に形成される緩衝空間の一部を利用して脱気用ポンプを格納した状態を示す図である。
【図9】外箱内に物品を入れたマットを収納し、外箱を施蓋したのち、マット内を脱気する例を示すもので、(a)は、マットを敷いた外箱の斜視図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は脱気用ポンプでマット内を脱気している状態を示す断面図である。
【図10】外箱に付されたリブの他の形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)梱包ユニット
図1において、本発明による梱包ユニットは、保護マット10と外箱11との組み合わせからなるものである。保護マット10は、格納すべき物品を挟んで保持させるものであり、外箱11は、後述するように、外箱の材質が有するバネ作用を保有させた下板14と上板16との組を向き合わせに有している。下板14と上板16とは、バネ力を作用させた状態で物品を挟んだ保護マット10の上下面を加圧して外箱11内の定位置に保持させる運搬箱である。
【0017】
(2)保護マット
図2において、保護マット(以下マットと略称する)10は、外袋1と、内袋2と、内袋2内に充填された緩衝体ビーズ3との組み合わせからなっている。この実施例において、外袋1は、気密性を有する対の外層シート1a、1bを上下に重ね合わせ、その周縁を気密にシールして扁平な長方形の袋状に加工されたものである。外袋1のシート面の一部にはバルブ4が取り付けられている。マット10は、2つ折に折曲され、物品をはさんだ状態で外箱内に収容するものであるため、外箱の形状に合わせてこの実施例では長方形である。
【0018】
内袋2は、伸縮性を有する通気性の袋であり、その内部に定量の緩衝体ビーズ3を充填したものであるが、緩衝体ビーズ3は、内袋2内で偏りなく充填されて一定厚みの扁平なマットに保形されていることが望ましい。この実施例において、内袋2は、通気性を有する長方形の対のシートの周縁を縫合して外袋1よりひと周り小さい平坦な長方形の袋状に加工されている。緩衝体ビーズ3を充填した内袋2は外袋1に挿入される。内袋2は、袋を形成する上下のシート面には接合点5を有している。接合点5は、内袋2の上下のシート面の全面にわたり、図2に示すように縦横の一定間隔ごとに微小範囲を一体に結合した部分である。各接合点5は、図3(a)のように内袋2を上方から視たときに、行列方向の列ごとに縦横の位置を互いにずらせて各所に散在させているが、これは図3(b)のように縦横に整列させてもかまわない。
【0019】
内袋2は、通気性のシートの周縁を縫合し、あるいは袋状の編み物についてその要所を接合することに得られるが、この実施例に用いた内袋2のシートには、繊維糸の編み地の表編み地と裏編み地とこれらを連結する連結糸から構成された立体編み物を用いている。このような編み物には、例えば旭化成株式会社の立体編み物「ダブルラッセル(登録商標)」(特許文献2参照)がある。
【0020】
このような立体編み物によれば、互いに近接する3点以上のいくつかの区画、この実施例では図4に示すように4つの接合点5,5,5,5によって囲まれた区画が実質的に独立した構造体を構成し、編み地は伸縮性に富んでいるため、各接合点5を結ぶ区画内に定量の緩衝体ビーズ3を実質的に閉じ込めることができ、緩衝体ビーズ3が充填された内袋2は平坦なほぼ一定厚みとなる。
【0021】
また、上記立体編み物によるときには、最初に内袋2内に緩衝体ビーズ3を封入するに際し、内袋2の一部に開口(図示略)を設け、その開口から高圧空気で緩衝体ビーズを圧送して各接合点5を結ぶ区画内に適量を均等に封入することができる。開口は後に閉じて緩衝体ビーズの流失を防止する。なお、内袋2を形成する上下のシートは伸縮性を有することが必要であるが、必ずしも編み物である必要はない。伸縮性の織物であっても使用できる。
【0022】
緩衝体ビーズ3は、弾力性、あるいは伸縮性を有する粒であり、発泡ポリエチレンあるいは発泡ポリスチレンの粒状体を用いている。ビーズの粒径の大きさは問わないが、粒径が小さいほど物品の形状によくなじませることができる。緩衝体ビーズ3を充填した通気性の内袋2を気密性の外袋1内に挿入することによって緩衝体ビーズ3は、外袋1の密閉空間に定量ずつ分散して充填されることになる。緩衝体ビーズ3の層の厚みは内袋2の高さによって規制され、内袋2は、ほぼ一定厚さの緩衝層となり、外袋1は内袋2と組み合わされて扁平なマットとなる。
【0023】
(3)バルブ
外袋1のシート面に備えたバルブ4は、逆止弁と吸気弁との組み合わせからなっている。図5にバルブ4の構造の1例を示す。バルブ4は、逆止弁6と吸気弁7との組み合わせからなり、吸気弁7は、円筒状の弁箱8の内部中心の流路に組み込まれ、逆止弁6は、その周囲に同心上の位置に形成された流路に組み込まれている。
【0024】
逆止弁6は、保護マット10内の脱気に際し、ポンプの吸引力が作用したときにその吸引力を受けて開弁し、脱気後は閉弁してマット10内への外気の導入を阻止するものであり、吸気弁7は、弁箱8の上端に備えたキャップ9を手動で回転することによって、押し上げられて開弁し、脱気されたマット1内への外気の導入を可能にするものである。脱気されたマット10はその内容量を減じ、内袋内での緩衝体ビーズの充填密度の増加することになり、その結果マットを固化させる。本発明に用いるバルブは、要は逆止弁と吸気弁とが組み合わされていて物品の梱包時にマット内を脱気してマットを固化し、開梱時に吸気してマットを軟化させるためのものであって、必ずしも上記構造に限られるものではない。梱包の作業上、できるだけ操作性に優れた構造のものが望ましい。
【0025】
(4)外箱
外箱11は、例えば、外面が柔軟な布などで覆われた合成樹脂などの弾力性を有する材料にて作られたもので、図1に示すように上面が開放された中空角型の箱本体12と、箱本体12の上縁開口縁に開閉可能に取り付けられた蓋体13との組み合わせから構成されている。箱本体12は、その内部に物品を包んだ保護マットを収納するものであり、蓋体13は、箱本体12の開口縁を施蓋するものである。なお、蓋体13及び箱本体12には、その開口縁を封止して施錠するファスナー21が取付けられている。もっとも蓋体13及び箱本体12との施錠手段はファスナーに限らず、鍵つきの公知のバンドであってもかまわない。
【0026】
箱本体12および蓋体13は、図6(a),(b)に示すようにそれぞれ外面の中央領域に凹部12a、13aを有し、その凹部形状を象って凹部の4周縁には突条のリブ12b、13bがそれぞれ形成されている。
【0027】
箱本体12の外面の外面中央領域に形成された凹部12aは、箱本体12の内部に中高状に突出する方形の下板14を形成するものであり、4周縁の突条のリブ12bは、箱本体の内部から見たときには、下板14の4周縁に半割りの環状溝17を形成するものである。蓋体13についても同様に外面中央領域に形成された凹部13aは、箱本体側に向けて中高状に突出する方形の上板16を形成するものであり、4周縁の突条のリブ13bは、蓋体13の内部から見たときには、上板16の形状を象ってその4周に形成される半割りの環状溝15を形成するものである。なお、この実施例において上板16は、蓋体13の一部を変形させて両側の環状溝15内にリブ状に張り出させたアーム15aによって保形され、下板14は、箱本体12の一部を変形させて両側の環状溝17内にリブ状に張り出させたアーム17aによって保形されている。
【0028】
したがって箱本体12を蓋体13で施蓋したときには下板14と上板16とが一定間隔で上下に向き合い、その4周外縁には、上下の環状溝15、17が向き合い、その間に環状の空間が形成される。後に説明するように上下の環状溝15、17の空間は緩衝空間となる。また、環状溝15、17を形成する突条のリブ12b、13bは、外箱の材質が保有する弾性によるバネ作用が付与され、そのバネ作用によってそれぞれ下板14および上板16を上下方向に相対変位可能に支えている。
【0029】
(5)物品の梱包の要領
次に、本発明による梱包ユニットを用いて物品を運送する要領を説明する。図7(a)において、まず蓋体13を開いて箱本体12を開放し、箱本体12内にマット10を2つ折りにして差し込み、これを箱本体12の下板14上に支える。この状態でマット10の上層部分を開いてマット10の下層部分の上に物品Mを置く。次いで、図7(b)のようにマット10の上層部分を物品M上に折り重ね、マット10の上下層間に物品Mを挟んだ状態で、図7(c)のようにマット10の一部に取り付けたバルブ4にポンプ18の吸引口を差し込み、ハンドル19を操作し、マット10の外袋1内を脱気する。この例はレシプロ型のポンプを用いており、したがってハンドルを進退動させてマット内の空気を脱気する。これによって、図7(d)のようにマット10はその容積を減じるため、マット内での緩衝体ビーズ3の充填密度が増大し、物品Mを間に挟んだ状態で固化する。
【0030】
この状態で図7(e)のように、必要により箱本体に取り付けられた結束バンド20でマットの表面を押さえてこれを定位置に保持させ、蓋体13をマット10の上面に倒して箱本体12を施蓋し、図7(f)のように外箱11の開口をファスナー(図示略)で封止し、施錠して梱包を完了する。これによって、物品Mは、固化したマットに挟まれ、突条のリブ12b、13bの弾性が上下方向から作用した状態で箱本体の下板14と蓋体13の上板16間に押さえられ、外箱11の定位置に安定に収納される。
【0031】
なお、ポンプ18は、図8に示すように箱本体12と、蓋体13との4周縁に形成される緩衝空間内に適宜収容して保管する。すなわち、箱本体12と、蓋体13との4周縁に形成される緩衝空間は、ポンプの格納空間として利用するものである。本発明において、結束バンド20は、収納物品を抱えた保護マットを外箱に固定することが目的でなく、外箱内の定位置にとどめるために補助的に用にいているものである。
【0032】
物品Mは外箱11に格納され、宅配便の貨物として運送されるが、その運搬中に、振動や衝撃が加えられても物品Mは外箱内で浮動、転動することがなく、万一外箱11が高所から落下したり、あるいは外部から強い衝撃を受けるようなことがあっても、その衝撃力のほとんどは、外箱の4周の環状リブに作用し、外箱の上下の凹部の空間及び4周の環状リブ内の空間に吸収され、マット10に包まれた物品Mに強い衝撃力が直接作用することがない。もっとも、運搬中に受けた振動や衝撃が外箱内のマット10に作用したとしてもその振動や衝撃は、マット内で固化した緩衝体ビーズ3の緩衝層によって有効に吸収される。
【0033】
(6)開梱の要領
目的地に届けられた貨物を開梱するには、外箱11の蓋体13を開き、結束バンド20を外し、吸気弁7を押し上げて流路を開き、その流路を通してマット10内に外気を導入する。外気の流入によって、マット10内の外袋1の容量が増加して緩衝体ビーズ3の充填密度が減少し、マット10の緊張がほぐれてやわらかくなり、容易にマット10を開いて物品Mを外箱11から取り出すことができる。
【0034】
(7)物品梱包の簡略化
図9に、本発明の他の実施例を示す。この実施例においては、蓋体13の一部には、前記マット10のバルブ4を蓋体13の外部に臨ませる小孔22が開口されている(図9(b)、(c)参照)。この実施例において、物品を梱包するには、図9(a)に示すように外箱11の蓋体13を開いた状態で、図9(b)に示すようにマット10のバルブ4を蓋体13の小孔22内に臨ませて箱本体12と、蓋体13とに跨ってマット10を広げる。次いで箱本体12内に敷かれたマット10の中央に物品Mを置き、そのまま蓋体13を倒して図9(c)に示すように2つ折にしたマット10間に物品Mを挟み、上下層間に物品Mを挟んだ状態で施蓋したのち、図9(c)に示すように蓋体13の小孔22内に臨むバルブ4にポンプ18の吸引口を差し込み、ハンドル19を操作し、マット10の外袋1内を脱気する。これによって、マット10は外箱11の内部形状になじんでその容積を減じ、物品Mを間に挟んだ状態で固化する。この実施例によれば、物品をマット間に挟んだ状態で施蓋し、そのままマット内を脱気すれば、マットはおのずから外箱の内部形状になじんで固化し、物品は外箱内に安定に保持され、敢えて図8のようにマットを結束する必要はない。
【0035】
(8)構成部品の機能
本発明において、マットは物品のホルダーである。マットに物品を挟んで固化することによって物品はマットと一体になり、箱本体を蓋体で施蓋して物品をホルダーごと外箱の上板と下板との間に挟み、そのまま施錠すれば、物品はマットに挟まれた状態で、上板と下板間のバネ作用で抑えられて外箱の定位置に保持されるため、必要により結束し、あるいはそのまま施錠するだけで物品を梱包することが可能となり、物品の梱包の手数を簡略化できる。もっとも、物品をマット間に挟んだ状態で上板と下板間の隙間よりも薄いものは、バンドで抑えることによって定位置に保持できる。
【0036】
(9)衝撃緩和効果の向上
図10は、外箱11の上板を形成する凹部13aを内外2重のリブ13b及び13bにて囲み、それぞれのリブ13b及び13bにアーム15a及び15aを付した例を示している。図示は省略するが、箱本体の底に対しても同様の措置が施されているのはいうまでもない。落下時の衝撃を緩和するには、保護マットに挟んだ物品を安定に支えた状態で、外箱を定型に保形し、可能な限り衝突面からの衝撃を箱本体に分散させて収納物品への衝撃の影響を避けることが必要である。その対策として蓋体及び箱本体の底にリブを多重にもうけることは衝撃緩和効果の向上に有効である。
【0037】
いずれにしてもマットで包んで箱内の定位置に物品を保持した状態で箱本体と蓋体の凹部は、物品の上下の緩衝空間となり、4周の上下の環状溝は物品の4側方の緩衝空間となって外箱に加えられる衝撃から物品を有効に保護することができる。以上実施例においてはノートパソコンのような扁平な物品を梱包する場合の例を説明したが、小型のデジタルカメラ、電子ゲーム機器類の2個以上を2つ折りに折りたたんだマット間に並列に保持させて外箱内に梱包することももちろんできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による保護マットは、小売店、量販店から買主に商品を届ける場合、物品の修理のために、物品の使用者から、修理センターに物品を配送する場合、修理を終えた製品を修理センターから依頼主に返送する場合はもとより、引越しや宅配便による商品の運送、デパート、小売店からの商品の配送、工場や事務所間の物品、書類の輸送にも広く活用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 外袋、1a,1b 外層シート、2 内袋、3 緩衝体ビーズ、4 バルブ、5 接合点、6 逆止弁、7 吸気弁、8 弁箱、9 キャップ、10 マット、11 外箱、12 箱本体、12a 凹部、12b リブ、13 蓋体、13a凹部、13b リブ、14 下板、15,17 環状溝、15a アーム、16 上板、18 ポンプ、19 ハンドル、20 結束バンド、21 ファスナー、22 小孔、M 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護マットと外箱との組み合わせを有する梱包ユニットであって、
保護マットは、格納すべき物品を挟んで一定位置に保持させる物品のホルダーであり、
前記外箱は、それぞれバネ作用によって支持された下板と上板との対を有し、
前記下板と上板とは、バネ力を作用させた状態保護マットの上下面を支えて外箱内の定位置に保持させる運搬箱であることを特徴とする梱包ユニット。
【請求項2】
前記外箱は、箱本体と、箱本体の開口縁に開閉可能に取り付けられた蓋体とからなり、
前記下板および上板は、それぞれバネ力を保有させた突条のリブに支えられているものであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ユニット。
【請求項3】
前記箱本体および蓋体は、いずれもその外面中央領域に凹部を有し、
前記下板及び上板は、凹部内で中高状に突出させて形成されたものであり、
前記箱本体および蓋体の4周縁の突条のリブは、箱本体および蓋体の内部から見たときには、下板及び上板の4周に環状溝を形成するものであり、
前記箱本体および蓋体の4周縁に形成される環状溝は、保護マットをホルダーとして箱本体および蓋体の下板と上板間に保持される物品の4周側方の緩衝空間となるものであることを特徴とする請求項2に記載の梱包ユニット。
【請求項4】
前記箱本体の外面の外面中央領域に形成された凹部は、箱本体の内部に中高状に突出する方形の下板を形成するものであり、4周縁の突条のリブは、箱本体の内部から見たときには、下板の4周縁に半割りの環状溝を形成するものであり、
前記蓋体についても同様に外面中央領域に形成された凹部は、箱本体側に向けて中高状に突出する方形の上板を形成するものであり、4周縁の突条のリブは、蓋体の内部から見たときには、上板の形状を象ってその4周に形成される半割りの環状溝を形成するものであることを特徴とする請求項2に記載の梱包ユニット。
【請求項5】
前記下板と上板との有するバネ力は、外箱の材質が有する弾性を利用するものであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ユニット。
【請求項6】
前記保護マットは、外袋と、内袋と、緩衝体ビーズからなり、2つ折りにしてその間に物品を保持するホルダーであり、
外袋は、内袋を収容する気密性を有する袋であり、バルブを有し、
バルブは、逆止弁と吸気弁との組み合わせであり、
逆止弁は、外袋内の脱気に際し、ポンプの吸引力が作用したときに開弁し、脱気後は閉弁して外袋内への外気の導入を阻止するものであり、
吸気弁は、手動操作により開弁し、脱気された外袋内へ外気を導入させるものであり、
内袋は、伸縮性を有する通気性の袋であり、袋を形成する上下のシート面には接合点を有し、
接合点は、内袋の上下のシート面の全面にわたり縦横の一定間隔ごとに微小範囲を一体に結合した部分であり、
緩衝体ビーズは、緩衝性を有する粒状体であり、内袋内に定量が充填され、前記内袋の3点以上のいくつかの接合点を結ぶ区画内に実質的に閉じ込められ、
緩衝体ビーズが充填された内袋は平坦なほぼ一定厚みの緩衝層となって外袋内に挿入されているものであることを特徴とする請求項1に記載の梱包ユニット。
【請求項7】
前記蓋体の一部には、前記マットのバルブを蓋体の外部に臨ませる小孔が開口され、
前記マットは、外箱の蓋体を開いた状態で、バルブを蓋体の小孔内に臨ませて箱本体と、蓋体とに跨って広げられ、2つ折にして箱本体内に敷かれたマットの中央に置かれた物品を挟み、
前記外箱は、上下層間に物品を挟んだ状態で施蓋され、
前記マットは、蓋体の小孔内に臨むバルブを通して脱気されるものであることを特徴とする請求項6に記載の梱包ユニット。
【請求項8】
前記箱本体および蓋体の4周縁の突条のリブは、内外多重に形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載の梱包ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−219106(P2011−219106A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87756(P2010−87756)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(507022983)ヤマト包装技術研究所株式会社 (19)
【Fターム(参考)】