説明

梱包材

【課題】 合成樹脂発泡成形品である芯材10と表皮成形材30、50とで構成される梱包材Aにおいて、全体としては所要の強度を保持することができ、かつ、リサイクル時の分別回収も容易であるより改良された梱包材Aを提供する。
【解決手段】 合成樹脂発泡成形品である芯材10を上下の表皮成形材30、50とで上下からパッキングする。その際に、上下の表皮成形材の周囲にフランジ部37、57を形成し、そこに設けた第1の凸部38と第2の凸部58とによる嵌合構造により、上下の表皮成形材30、50を分離可能に一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品を梱包するのに用いる梱包材、特に、コスト的にも有利であり、かつリサイクル時の分別回収を確実に行えるようにした梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の梱包材として、軽量でありながら所要の強度を持つこと、成形性に優れていること等の観点から合成樹脂発泡成形品からなる梱包材が多く用いられている。一方、合成樹脂発泡成形品は表面が荒れやすいこと、油等により変形する場合があること、などの理由から、梱包しようとする物品に対応して、合成樹脂発泡成形品の物品収容凹部内に非発泡の合成樹脂成形品を配置したり(特許文献1)、芯材としての合成樹脂発泡成形品の表裏両面を非発泡の合成樹脂成形品で一体成形することが行われる(特許文献2)。他の形態の梱包材として、芯材に段ボールを使用し、物品支持部の上に合成樹脂製のトレーを被せるようにしたものも知られている(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】実開平7−40579号公報
【特許文献1】特開2002−326246号
【特許文献1】実開平4−65790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される形態の梱包材は、物品収容凹部内に配置した非発泡の合成樹脂成形品を分離することは容易であり、リサイクル時の分別回収は容易である。しかし、コストを下げるため本体である合成樹脂発泡成形品を高倍率で成形すると、機械部品等のように重量の重たいものを梱包するときに、強度不足となる恐れがある。また、この裏面側は発泡体の表面がそのまま残っており、多段に積み重ねたときに、梱包した物品に発泡体の削れによる粉屑が付着したり、梱包材の裏面が油で汚染することが起こり得る。
【0005】
特許文献2に記載される形態の梱包材は、芯材である合成樹脂発泡成形品の表裏全面が非発泡の合成樹脂成形品で被覆されており、上記の不都合は解消されると共に、芯材を高倍率で成形した場合でも、所要の強度を確保することができる。しかし、全体が一体成形品であり、リサイクル時に芯材の合成樹脂発泡成形品と表皮材である非発泡の合成樹脂成形品とを分離回収することが容易でないという課題が残っていた。特に、国によっては、素材樹脂が同じであっても、発泡材と非発泡材とを分別回収することを義務付けている場合があり、特許文献2の形態の梱包材は、それに対処することが容易でない。
【0006】
特許文献3に記載される形態の梱包材は分別回収は容易であり、段ボールが基材であることから、合成樹脂発泡成形品に起因する不都合は生じないが、段ボールの基本的な課題となる湿度によるトレー自体の強度変化という不都合を避けることができない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、合成樹脂発泡成形品である芯材と表皮成形材とで構成される梱包材において、コストを低減すべく芯材として発泡倍率の高い合成樹脂発泡成形品を用いても、全体としては所要の強度を保持することができ、多段に段積みする場合でも梱包品に異物が付着したり、梱包材の裏面が汚染することもなく、かつ、リサイクル時の分別回収も容易である、より改良された梱包材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による梱包材は、物品収容凹部を備える合成樹脂発泡成形品である芯材と、該芯材全体を上下からパッキングする上下の表皮成形材とで構成される梱包材であって、上下の表皮成形材は嵌合構造によって分離可能に組み付けられていることを特徴とする。表皮成形材は芯材の樹脂と同じ樹脂の非発泡成形品であることが望ましいが、それに限らない。低倍率の発泡成形品であってもよく、芯材の樹脂とは異なる樹脂あるいは異なる素材であってもよい。
【0009】
本発明による梱包材では、芯材全体を上下からパッキングする上下の表皮成形材は、嵌合構造により分離可能に一体に組み付けられる構成であり、芯材への組み付け作業は容易であると共に、必要時には、上下の表皮成形材を分離して、芯材と表皮成形材とを容易に分別することができる。従って、素材が異なる場合はもちろんのこと、同じ素材であっても、発泡材と非発泡材とを分別することを求められるような場合でも、それに対処することは容易となる。
【0010】
また、芯材を嵌合構造で一体化する表皮成形材で覆う形態であり、強度を芯材と表皮成形材とで分担することができるので、芯材である合成樹脂発泡成形品を高倍率のもので成形しても、梱包材全体しては所要の強度を持たせることができるので、コスト低減にもつながる。また、合成樹脂発泡成形品である芯材は表皮成形材で覆われており、合成樹脂発泡体の粉屑が収容する機械部品のような梱包品に付着することもない。段積みした場合での裏面の油付着による汚れや変形も回避できる。また、芯材が段ボールの場合に見られるような、湿度による強度変化も生じない。
【0011】
好ましくは、上下の表皮成形材は周囲にフランジを有しており、該フランジ部には嵌合構造を形成する対となる凸部が形成され、かつ芯材の該フランジ部に相当する箇所では壁厚が薄くされるか除去されている。この構造とすることにより、梱包材の外寸法を大きくすることなく、上下の表皮成形材で芯材をパッキングすることが可能となり、嵌合構造のための出っ張った部分を必要としないことから、梱包材の取り扱いが容易となり、保管時のスペースも少なくてすむ。
【0012】
本発明による梱包材では、芯材と表皮成形材は組み付け前には別部材であり、個々に分離して保管しておくことができる。その際に、上下の表皮成形材はそれぞれ少ないスペースでスタックとして保管することが可能となる。また、それぞれが独立的に再利用可能であり、いずれかの部材が汚染あるいは破損した場合でも、その部材のみを新規なものと交換して再使用が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による梱包材では、リサイクル時に芯材と表皮形成材との分別回収がきわめて容易となり、環境に優しいものとなる。また、コストを低減すべく発泡倍率の高い合成樹脂発泡成形品を芯材として用いても、梱包材は所要の強度を保持することができる。梱包材を多段に段積みする場合でも梱包品に異物が付着したり、梱包材の裏面が汚染することも回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明による梱包材の一実施の形態を部材ごとに分解して示す斜視図であり、図2は上下の表皮成形材の嵌合部を示す図であり、図2aは各部材を組み立てた状態での平面図、図2bは部材ごとに分解して示す断面図、図2cは図2aのc−c線による断面図である。本発明において、梱包材Aは、芯材10と、芯材10の全体を上下からパッキングする上表皮成形材30および下表皮成形材50とで構成される。
【0015】
芯材10は、例えば発泡性ポリスチレン系樹脂粒子などの発泡性樹脂粒子からの型内発泡成形品であり、底板11と4方の側壁12で区画される物品収容空間13を有する。物品収容空間13の中央領域を除いた部分は肉厚部とされ、そこには、収容すべき梱包品の形状に応じた適宜形状の座部14が形成されている。4周の側壁12は外側に突き出る段差部15を有し、段差部15より上方の側壁12(12a)は肉厚とされる。側壁12の段差部15より下方部分(12b)は、次第に断面積が小さくなるように、内側に向けた傾斜面となっている。側壁12の上端内壁面には芯材10の下端面とほぼ同じ大きさとなるように切り欠き部16が形成されると共に、4周の各側壁12の中央部は軽量化の目的から除去されている。なお、側壁12の中央部には、後記する上表皮成形材30と下表皮成形材50に形成するフランジ37、37が入り込むスペースが確保できればよく、所要のスペースが確保できる場合には、側壁12の中央部を全体として除去するのではなく、単に肉薄な構造としてもよい。
【0016】
合成樹脂発泡成形品である芯材10の発泡倍率に特に制限はないが、全体が上表皮成形材30と下表皮成形材50とでパッキングされるために、かなり高倍率(例えば、40〜80倍程度)の成形品であっても、梱包材Aとしての所要の強度を保持することができる。そのために、例えば、梱包品がカムシャフトのようなエンジン回りの重量物であっても、梱包材Aに変形等を伴うことなく、所要の物流に供することができる。
【0017】
上表皮成形材30は、この例では、厚さ0.5mm程度のポリスチレン系樹脂シートの真空成形品であり、芯材10の上半分、すなわち芯材10の段差部15よりも上の部分を、その外郭形状にほぼ沿ってすべて覆うことのできる形状となっている。すなわち、上表皮成形材30の側面部分32は芯材10の段差部15より上位の側壁12(12a)の部分が内部に入り込む空間Sを有しており、該側面部分32により段差部15より上位の側壁12(12a)は外側から覆われる。底部分33は芯材10の底板11の上面部分を上から覆う部分であり、凹部34は座部14を上から覆う部分である。また、段差部36は芯材10の切り欠き部16を上から覆う部分である。
【0018】
上表皮成形材30における、前記芯材10の側壁12が除去されている部分に相当する4つの領域には、それぞれ水平フランジ37が内側に向けて形成されており、該水平フランジ部37には第1の凸部38が一体成形されている。4つの水平フランジ部37のうち、凹部34、34の間に位置する水平フランジ部37a側の立ち上がり壁には縦方向の補強リブ39が形成されており、その部分に芯材10の側壁12が無いことで強度が不足し、その部分で上表皮成形材30が座屈するのを防いでいる。
【0019】
下表皮成形材50は、上表皮成形材30と同様に、この例では、厚さ0.5mm程度のポリスチレン系樹脂シートの真空成形品であり、芯材10の下半分、すなわち芯材10の段差部15よりも下の側壁部分12bを、その外郭形状にほぼ沿ってすべて覆うことのできる形状となっている。すなわち、側面部分52は芯材10の段差部15より下位の内側に傾斜した側壁12(12b)の部分を外から覆う部分であり、側面12の斜面に沿うようにして内側に傾斜している。底部分53は芯材10の底面を下から覆う部分である。
【0020】
4つの側面部分52の上縁は水平フランジ57とされており、該水平フランジ57は芯材10の段差部15に下方から衝接する。前記のように、芯材10の4つの側壁12の中央部は除去されており、その部分には前記段差部15が存在しないので、その領域では、下表皮成形材50の水平フランジ57と上表皮成形材30の水平フランジ37は互いに衝接した状態となる。そして、衝接したときに上表皮成形材30の水平フランジ37に形成した第1の凸部38に対向することとなる水平フランジ57の部分には、前記第1の凸部38に自由には分離しない状態で内嵌合する大きさの第2の凸部58が一体成形されている。
【0021】
上記した芯材10、上表皮成形材30、下表皮成形材50は、梱包材として使用されないときは、それぞれ別個に保管される。図3に示すように、上表皮成形材30は、側面部分32に形成される空間S内に、下位に位置する上表皮成形材30の側面部分32が入り込んだ姿勢となることによって、積み上げ高さを少なくして多数の上表皮成形材30をスタックとして積み重ねることができる。下表皮成形材50も側面部分52が内側に傾斜した面となっており、図4に示すように、やはり積み上げ高さを少なくして多数の下表皮成形材50をスタックとして積み重ねることができる。
【0022】
そのようにして保管スペースに個々に保管されている各部材(芯材10、上表皮成形材30、下表皮成形材50)は、梱包現場に搬入されて、1つの梱包体Aとして組み付けられる。組み付け時には、上表皮成形材30と下表皮成形材50とで芯材10を上下から挟み込むようにし、上表皮成形材30の水平フランジ37と下表皮成形材50の水平フランジ57を衝接させる。そして、4箇所の第1の凸部38に4箇所の第2の凸部58をそれぞれ内嵌合させることにより、3部材は分離可能に一体化されて梱包材Aとなる。芯材10が高倍率の合成樹脂発泡成形品であっても、全体が上表皮成形材30と下表皮成形材50とで被覆されており、梱包材Aとしては、充分な強度を持つようになる。
【0023】
所望の梱包品を収容した梱包材Aを、切り欠き部16に上位の梱包材Aの底部を嵌め込むようにして多段に積み上げ、最上段の梱包材Aに適宜の蓋をした状態で、全体を梱包紐で一体に締め付けて安定した状態とし、物流に供する。芯材10はその全表面が上表皮成形材30と下表皮成形材50とで覆われており、合成樹脂発泡体の粉屑が収容する梱包品に付着することもない。段積みしたときに、裏面に油付着による汚れや変形が生じるのも回避できる。
【0024】
また、芯材10、上表皮成形材30、下表皮成形材50の一部に破損や汚れが生じたとき、さらには、梱包材A全体を配置するようなときには、上表皮成形材30と下表皮成形材50とを引き剥がす方向に引っ張ることにより、第1の凸部38と第2の凸部58との嵌合を容易に解除することができるので、部材の交換は容易であり、各部材の分別回収も確実に行うことができる。
【0025】
なお、上表皮成形材30と下表皮成形材50の寸法は、芯材10を外側から実質的に隙間のない状態で覆うことのできる寸法であることは、収容する梱包品の安定化の点からは好ましいが、組み付け作業を容易かつ迅速に行うために、上表皮成形材30と下表皮成形材50を幾分大きめな寸法としておくことが望ましい。その場合、組み付け後に芯材10と上表皮成形材30あるいは下表皮成形材50との間にわずかな隙間が生じるが、梱包品の重量によって上表皮成形材30と下表皮成形材50は芯材10との間の隙間を無くす方に変形するので、物流中での梱包品の姿勢は安定した状態で保たれる。
【0026】
なお、上記の説明では、上表皮成形材30の水平フランジ37と下表皮成形材50の水平フランジ57とが、芯材10の側壁12の除去した部分内に入り込むようにしたが、これは、芯材10を軽量化することと、梱包材Aの外寸法を大きくしないためであり、そのようなことを求めない場合には、フランジ37、57とを芯材10の側方に飛び出るようにして形成し、そこに第1の凸部38と第2の凸部58を設けるようにしても、本発明による梱包材の所期の目的は達成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による梱包材の一実施の形態を部材ごとに分解して示す斜視図。
【図2】上下の表皮成形材の嵌合部を示す図であり、図2aは各部材を組み立てた状態での平面図、図2bは部材ごとに分解して示す断面図、図2cは図2aのc−c線による断面図。
【図3】上表皮成形材を積み重ねた状態を示す図。
【図4】下表皮成形材を積み重ねた状態を示す図。
【符号の説明】
【0028】
A…梱包材、10…合成樹脂発泡成形品である芯材、11…底板、12…側壁、13…物品収容空間、14…座部、15…外側に突き出る段差部、16…切り欠き部、30…上表皮成形材、32…側面部分、S…側面部分に形成される空間、33…底部分、34…凹部、36…段差部、37…水平フランジ、38…第1の凸部、39…補強リブ、50…下表皮成形材、52…側面部分、53…底部分、57…水平フランジ、58…第2の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品収容凹部を備える合成樹脂発泡成形品である芯材と、該芯材全体を上下からパッキングする上下の表皮成形材とで構成される梱包材であって、上下の表皮成形材は嵌合構造によって分離可能に一体化されていることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
上下の表皮成形材は周囲にフランジ部を有しており、該フランジ部には嵌合構造を形成する対となる凸部が形成されており、かつ、芯材の前記フランジ部に相当する箇所では壁厚が薄くされるか除去されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−82845(P2006−82845A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269545(P2004−269545)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(504352700)株式会社スバルロジスティクス (3)
【Fターム(参考)】