説明

棒鋼の抵抗溶接方法および抵抗溶接システム

【課題】予熱を適切に行うことにより、棒鋼の溶接部を焼き入れ状態に移行させずに、焼き戻し工程を必要とすることなく硬度および靭性に優れた溶接部を形成可能な棒鋼の抵抗溶接方法を提案すること。
【解決手段】棒鋼の抵抗溶接方法は、予熱装置を用いて、溶接対象の棒鋼の溶接部を約200℃に予熱する予熱工程と、スポット溶接機を用いて、予熱後の溶接部をスポット溶接する溶接工程とを備えている。予熱温度を200℃程度にすることにより、スポット溶接後の溶接部の冷却時間を長くでき、硬度が400Hv以下で靭性に優れたスポット溶接部が得られる。焼き戻し制御、溶接電流制御などが不要となり、生産管理が容易で生産性良くスポット溶接を行なうことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用基礎鉄筋の溶接などに用いられる棒鋼の抵抗溶接方法および抵抗溶接システムに関する。さらに詳しくは、溶接前に溶接部を加熱することにより、焼き戻し工程を必要とせずに硬度および靭性に優れた溶接部を形成することのできる棒鋼の抵抗溶接方法および抵抗溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接は抵抗発熱によって金属を溶接する方法であり、溶接電流によって溶接部が急熱急冷する溶接熱サイクルを辿り溶接熱影響部が母材よりも硬い組織となる。住宅基礎鉄筋などのような炭素を含有する棒鋼では、このような急熱急冷による焼き入れ効果が得られるが、これと共に溶接部の靭性(伸び)が劣化するという弊害も併発する。鉄筋コンクリート構造は鉄筋により引張り力を負担させるものであり、靭性が劣化すると、主筋の脆性破壊が発生しやすくなり危険である。
【0003】
従来においては、焼き入れ状態の棒鋼の溶接部に焼き戻しを行い、溶接部の硬度を低下させる代わりに所定の靭性を溶接部に付与し、棒鋼が脆性破壊を起こさないようにしている。特許文献1、2においては、主筋とあばら筋の溶接部の溶接強度が、あばら筋降伏点強度以上となるように大きな溶接電流を用いてスポット溶接を行い、溶接時間と同程度の冷却時間を置き、しかる後に溶接電流の70%の電流を溶接部に流すことによって、溶接部の焼き戻しを行い、これによって、溶接部の靭性を確保している。
【0004】
このような鉄筋のスポット溶接方法では、溶接部の強度を高めるために急熱急冷によって焼き入れ状態になった溶接部に焼き戻しの処理を施すことによって所望の靭性を確保するようにしている。この焼き入れ、焼き戻し技術にあっては、焼き入れからの急冷、焼き戻しからの徐冷など、生産性を制約する要素が多く、抵抗溶接の生産タクト下でこのような温度管理を実現するためには優れた技術と高度な生産管理が必要である。
【0005】
特許文献3には、高張力鋼板の連続冷却変態曲線に基づき目標冷却曲線を事前に記憶保持し、抵抗溶接時には、高張力鋼板の溶接部の温度低下速度が、記憶保持されている目標冷却曲線に一致するように温度低下速度を制御する溶接装置および溶接方法が開示されている。また、特許文献4においては、溶接時の投入電力密度を制御することにより、溶接後の急冷を抑制して溶接部の硬化を防止する技術が記載されている。
【0006】
本願出願人は、特許文献5において、抵抗溶接機を用いた溶接工程において溶接部に予熱を与えることにより、溶接対象物の投入熱量を増加させ、これによって、溶接部が急冷に起因する焼き入れ状態に陥ることを防止する溶接方法を提案している。
【0007】
【特許文献1】特許第365833号公報
【特許文献2】特開2006−346745号公報
【特許文献3】特開2003−285193号公報
【特許文献4】特開平11−197850号公報
【特許文献5】特開2007−319887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献5に開示の溶接方法の改良に関するものであり、その課題は、硬度および靭性に優れた溶接部を形成することのできる棒鋼のスポット溶接方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の棒鋼の抵抗溶接方法は、
予熱装置により、炭素鋼からなる溶接対象の第1棒鋼および第2棒鋼における少なくとも一方の棒鋼の溶接部を予熱する予熱工程と、抵抗溶接装置により、前記第1および第2棒鋼を溶接する溶接工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
ここで、予熱装置による棒鋼の溶接部の予熱温度を、175℃から475℃までの範囲内の温度にしておくことが望ましい。特に、予熱工程後の溶接部の予熱温度を、200℃以上にしておくことが望ましい。
【0011】
本発明の抵抗溶接方法では、溶接工程後に急冷による鉄筋溶接部の組織変化を抑制できるように、抵抗溶接装置による抵抗溶接に先立って、予熱装置によって溶接部を加熱している。したがって、溶接後の溶接部の熱量が多いので、急熱状態の棒鋼溶接部の冷却時間を長くできる。すなわち、急熱状態の溶接部が第1温度から第2温度まで冷却するために要する時間を長くすることにより、得られた溶接部に所望の強度および靭性を確保できる。本発明の方法によれば、抵抗溶接工程における急冷(焼き入れ)、焼き戻しの制御が不要となり、制御が容易になる。また、焼き戻し時間が不要なので、棒鋼の抵抗溶接作業の生産性も向上する。さらには、目標冷却曲線に沿って冷却速度をフィードバック制御する場合に比べて、予熱装置による溶接部の予熱温度を管理するだけでよいので、制御管理も極めて容易である。
【0012】
本発明者等の実験によれば、予熱工程の溶接部の予熱温度を、175℃から475℃までの範囲内の温度にしておけば、硬度および靭性に優れ、脆性破壊の発生確率が少ない溶接部が得られることが確認された。特に、予熱工程の溶接部の予熱温度を、200℃以上にすれば、極めて良好な溶接部が得られることが確認された。
【0013】
次に、本発明の抵抗溶接方法において、第1棒鋼は第2棒鋼に比べて前記溶接部における断面積が大きく、予熱工程では第1棒鋼の溶接部を加熱することを特徴としている。熱容量の高い太い棒鋼の溶接部は、溶接時において、細い棒鋼の溶接部ほど十分に加熱されず、溶接後に急冷状態に陥りやすい。細い棒鋼の溶接部は溶接時に十分に加熱されているので溶接後には急冷状態に陥らずに徐冷状態になりやすい。したがって、太い棒鋼の溶接部のみを予熱しておけばよく、また、そうすることが経済的でもある。
【0014】
ここで、本発明の棒鋼の抵抗溶接方法は溶接鉄筋のスポット溶接に用いるのに適している。すなわち、本発明の方法において、第1棒鋼および第2棒鋼は、鉄筋コンクリート部材に用いられる鉄筋、例えば、鉄筋コンクリート構造物に用いられる主筋およびせん断補助筋であることを特徴としている。
【0015】
例えば、前記第1棒鋼および第2棒鋼がそれぞれSD345およびSD295Aの場合には、前記予熱温度を約200℃にすることが望ましい。また、前記第1棒鋼および第2棒鋼がそれぞれSD490およびSD295Aの場合には、前記予熱温度を約300℃にすることが望ましい。
【0016】
また、前記溶接部の溶接熱サイクルにおける約1070K(800℃)から770K(500℃)までの間の冷却時間が4秒以上となるように、前記予熱工程における前記溶接部の予熱温度を設定することが望ましい。
【0017】
一般の鋼材溶接部のミクロ組織は溶接熱サイクルの約1070K(800℃)から770K(500℃)の冷却時間によってほぼ決まる。この物性は溶接用CCT図(連続冷却変態図)として知られている。溶接用CCT図から棒鋼溶接部の硬度、組織などを分析することにより、使用する棒鋼の溶接部として最も適した硬度および靭性が備わった組織状態が得られる溶接プロセスの冷却速度を推定できる。したがって、目標冷却曲線を記憶保持しなくても、上記の範囲の温度低下に要する時間幅を溶接対象の棒鋼の組成などに応じて適切に設定し、設定した時間幅以上となるように予熱温度を設定することにより、所望の硬度および靭性が備わった棒鋼溶接部を得ることができる。
【0018】
冷却時間に基づき予熱温度を設定する代わりに、溶接部の硬度がHv400以下となるように、前記予熱工程における前記溶接部の予熱温度を設定しておいてもよい。
【0019】
次に、本発明の方法により、住宅などにおける鉄筋コンクリート梁、鉄筋コンクリート基礎に用いられているシングル配筋などを工場などにおいて溶接する場合には、
前記第1棒鋼に対して、その材軸方向に沿って、一定の溶接ピッチで各第2棒鋼を交差状態に配置し、
抵抗溶接装置による溶接位置を経由する送り経路上における当該溶接位置から1溶接ピッチ分手前の位置に、予熱装置による予熱位置を配置し、
前記送り経路に沿って、前記第1棒鋼をその材軸方向に前記溶接ピッチずつ間欠的に送り、
前記予熱位置および前記溶接位置に位置決めされた前記第1棒鋼および各第2棒鋼の溶接部に対して、それぞれ、前記予熱工程および前記溶接工程を行う動作を繰り返すようにすればよい。
【0020】
また、予熱工程では効率良く溶接部を加熱できる誘導加熱装置を用いることが望ましい。
【0021】
一方、本発明は抵抗溶接システムに関するものであり、本発明の抵抗溶接システムは、
予熱装置と、
抵抗溶接装置と、
前記予熱装置の予熱位置および前記抵抗溶接装置の溶接位置を経由させて、溶接対象の第1棒鋼および第2棒鋼を搬送する送り経路とを有し、
前記予熱装置による前記第1棒鋼および前記第2棒鋼の溶接部の予熱温度を、175℃から475℃までの範囲内の温度にすることを特徴としている。
【0022】
ここで、前記予熱装置による前記溶接部の予熱温度を200℃以上にすることが望ましい。
【0023】
また、溶接鉄筋枠などの溶接を行なう場合には、溶接対象の前記第1、第2棒鋼は、前記第1棒鋼に対して、その材軸方向に沿って、一定の溶接ピッチで各第2棒鋼を交差状態に配置し、前記抵抗溶接装置による溶接位置を経由する送り経路上における当該溶接位置から1溶接ピッチ分手前の位置に、前記予熱装置による予熱位置を配置しておき、前記送り経路に沿って、前記第1棒鋼をその材軸方向に前記溶接ピッチずつ間欠的に送り、前記予熱位置および前記溶接位置に位置決めされた前記第1棒鋼および各第2棒鋼の溶接部に対して、それぞれ、前記予熱装置による予熱および前記抵抗溶接装置による抵抗溶接を繰り返し行うことが望ましい。
【0024】
さらに、前記予熱装置は誘導加熱装置であることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の棒鋼の抵抗溶接方法によれば、抵抗溶接装置による抵抗溶接に先立って行なわれる予熱装置による予熱工程における溶接部の予熱温度を所定の温度に設定することにより、所望の硬度および靭性を備え、脆性破壊の発生確率の少ない溶接部を得ることができる。したがって、溶接後に焼き戻しなどの後工程を必要とするとなく、また、高精度に溶接電流を制御することなく、溶接部の焼き入れに起因する棒鋼溶接部の特性劣化を抑制できる。よって、生産管理が容易になり、また、焼き戻し時間が不要になるので棒鋼の溶接作業の生産性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態は、本発明の抵抗溶接方法を、住宅基礎、梁などに用いられる主筋およびあばら筋のスポット溶接方法に適用したものである。主筋およびあばら筋のうち、少なくとも主筋の溶接部を予熱装置を用いて予熱する予熱工程と、予熱後に主筋にあばら筋をスポット溶接機を用いてスポット溶接する溶接工程とを含み、予熱工程後の溶接部の予熱温度を、175℃から475℃までの範囲内の温度にしている。
【0027】
好適な実施の形態では、第1棒鋼および第2棒鋼がそれぞれSD345およびSD295Aの場合に、予熱温度を約200℃にしており、また、第1棒鋼および第2棒鋼がそれぞれSD490およびSD295Aの場合に、予熱温度を約300℃にしている。
【0028】
このように予熱装置を用いて予熱を行なうことにより、溶接部の溶接熱サイクルにおける約1070K(800℃)から770K(500℃)までの間の冷却時間を4秒以上にすることができ、溶接部の硬度をHv400以下にすることができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
本発明者等は、図1に示す試験体を作成してスポット溶接実験を行った。試験体1は、住宅用の基礎鉄筋などに用いられる鉄筋格子であり、平行に延びる2本の主筋(D22)2の間に、それらの材軸方向に沿って一定のピッチであばら筋3(D10)を直交する状態にスポット溶接したものである。スポット溶接位置は、網掛けの丸印で示してある。使用鉄筋(主筋2およびあばら筋3の材質)、スポット溶接条件、および、実験に使用した試験機は次の通りである。
【0030】
使用鉄筋
あばら筋 D10(SD295A)
主筋 S22(SD345)
試験設備
直流インバータ1点溶接機(NASTOA)
アムスラー型万能試験機(300kN/500kN)(島津製作所)
ピッカーズ硬度計(AAV−5000)(ミツトヨ)
ファイバ型放射温度計(FTZ6)(ジャパンセンサー)
スポット溶接条件
電流値 13.3kA
通電時間 460ms
加圧力 550kgf
電極径 上下ともφ30mm
【0031】
試験体1として、同一のものを10本(N1〜N10)用意し、各試験体N1〜N10について、それらのスポット溶接部の予熱温度を、予熱なし(10℃)、50℃、100℃、150℃、175℃、200℃、225℃および250℃の8段階に切り替えてスポット溶接を行なった。予熱は誘導加熱装置を用いて行なった。各試験体N1〜N10について、スポット溶接部の硬度、および、主筋2のせん断強度、伸びを測定した。
【0032】
図2はせん断強度と脆性破壊発生率の測定結果を示すグラフである。せん断強度は、予熱温度が170℃〜225℃の範囲において高く、脆性破壊発生率は予熱温度が175℃〜250℃において零となっている。図3は破断伸びの測定結果を示すグラフである。破断伸びは、予熱温度が175℃以上の場合にはいずれの試験体においても18%を超えている。したがって、せん断強度および脆性の点からは、予熱温度を175℃〜250℃の範囲内にすればよいことが分かる。
【0033】
図4A〜図4Hは、各予熱温度の場合の硬度(ビッカーズ硬さ)の測定結果を示すグラフである。これらの図から分かるように、予熱温度が175℃〜250℃の場合には硬度がほぼ350Hv以下になる。特に、200℃〜225℃では硬度が350Hv未満になっている。
【0034】
これらの測定結果からは、予熱温度を175℃から250℃にすれば、硬度および脆性に優れたスポット溶接部が得られることが分かる。特に、200℃前後において硬度および脆性が共に優れたスポット溶接部が得られることが分かる。
【0035】
次に、図5(A)および(B)は、スポット溶接部における予熱なし(室温28℃)の場合および予熱温度200℃の場合における温度変化を示すグラフである。予熱の無い場合には、スポット溶接部の溶接熱サイクルにおける約1070K(800℃)から770K(500℃)までの間の冷却時間が2.09秒であり、予熱温度が200℃の場合には4.34秒であった。これらの冷却時間に基づきシミュレーションした予測硬度は、予熱なしの場合が約494Hvであり、予熱温度200℃の場合が約298Hvであった。これらの温度の変化からも、予熱温度を適切に設定することにより、スポット溶接後の冷却時間を長くでき、母材の靭性が損なわれることが防止されることが分かる。換言すると、800℃から500℃までの冷却時間が所定時間幅以上、例えば、4秒以上となるように、予熱温度を決めることができる。あるいは、温度変化に基づき算出される予測硬度が400Hv以下、好ましくは350Hv以下となるように、予熱温度を決めることができる。
【0036】
(実施例2)
あばら筋D10(SD295A)および主筋S22(SD490)を使用し、スポット溶接電流13kA、通電時間562msとして、実施例1と同様な試験体を作成して同様なスポット溶接実験を行った。
【0037】
各試験体について、それらのスポット溶接部の予熱温度を、予熱なし(25℃)、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃などの複数の値に切り替えてスポット溶接を行なった。予熱は誘導加熱装置を用いて行なった。各試験体について、スポット溶接部の硬度、および、主筋2のせん断強度、伸びを測定した。
【0038】
この結果、せん断強度は、予熱温度が300℃前後において高く、脆性破壊発生率も予熱温度が300℃前後において最も低いことが確認された。また、予熱温度が300℃前後の場合には溶接部の硬度が375Hv以下になることが確認された。
【0039】
これらの測定結果から、主筋D22(SD490)とあばら筋D10(SD490)の組み合わせの場合には、予熱温度を300℃程度にすると、硬度および脆性に優れたスポット溶接部が得られることが確認された。
【0040】
(スポット溶接システム)
次に、図6は本発明に用いることのできるスポット溶接システムの一例を示す説明図である。図示のスポット溶接システム10において、溶接対象の鉄筋枠11は、試験体1と同様に、主筋2に対して、その材軸方向に沿って、一定の溶接ピッチpで各あばら筋3が直交する状態に配置されたものである。これらの鉄筋の交差位置、図においてA、B、C、Dとして示す位置が溶接部である。
【0041】
鉄筋枠11は水平な送り経路12に沿って搬送される。送り経路12は、スポット溶接装置13によるスポット溶接位置13aを経由している。また、スポット溶接装置13によるスポット溶接位置13aに対して1溶接ピッチp分だけ手前の位置には、予熱装置14による予熱位置14aが配置されている。
【0042】
この構成のスポット溶接システム10では、送り経路12に沿って、鉄筋枠11をその材軸方向に溶接ピッチpずつ間欠的に送り、まず、図6(A)に示すように、鉄筋枠11の先頭の溶接部Aを予熱位置14aに位置決めする。この状態で予熱装置14によって溶接部Aを予熱する。次に、鉄筋枠11を1溶接ピッチpだけ送り出す。この結果、図6(B)に示すように、予熱後の溶接部Aがスポット溶接位置13aに位置決めされ、後側の溶接部Bが予熱位置14aに位置決めされる。この状態において、溶接部Aではスポット溶接が行なわれ、溶接部Bでは予熱が行なわれる。
【0043】
これ以後は、図6(C)に示すように、鉄筋枠11を順次に1溶接ピッチずつ間欠送りして、予熱およびスポット溶接を繰り返し行う。
【0044】
なお、溶接ピッチは溶接対象に応じて変化するので、スポット溶接装置13と予熱装置14を相対的に前後に移動可能としておき、それらのスポット溶接位置13aと予熱位置14aの間隔を溶接ピッチに合うように調整できるようにすればよい。また、予熱装置としては各種の加熱機構のものを採用することができるが、誘導加熱装置を用いるのが一般に効率がよい。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記の実施例は鉄筋コンクリート構造に用いられる鉄筋のスポット溶接についてのものであるが、これ以外の炭素鋼からなる棒鋼のスポット溶接に対して本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】主筋とあばら筋がスポット溶接された試験体を示す説明図である。
【図2】せん断強度と脆性破壊発生率の測定結果を示すグラフである。
【図3】破断伸びの測定結果を示すグラフである。
【図4A】10℃(予熱なし)の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4B】50℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4C】100℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4D】150℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4E】175℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4F】200℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4G】225℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図4H】250℃の場合の硬度の測定結果を示すグラフである。
【図5】予熱なし(室温28℃)および200℃に予熱した場合におけるスポット溶接部の温度変化を示すグラフである。
【図6】本発明を適用したスポット溶接システムの構成および動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 試験体
2 主筋(第1棒鋼)
3 あばら筋(第2棒鋼)
10 スポット溶接システム
11 鉄筋枠
12 送り経路
13 スポット溶接装置
13a スポット溶接位置
14 予熱装置
14a 予熱位置
A、B、C、D 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予熱装置により、炭素鋼からなる溶接対象の第1棒鋼および第2棒鋼における少なくとも一方の棒鋼の溶接部を予熱する予熱工程と、
抵抗溶接装置により、予熱後の前記第1および第2棒鋼を溶接する抵抗溶接工程とを有することを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記予熱工程後の前記溶接部の予熱温度を、175℃から475℃までの範囲内の温度にすることを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項3】
請求項2に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記予熱工程後の前記溶接部の予熱温度を200℃以上にすることを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記第1棒鋼は前記第2棒鋼に対して、前記溶接部における断面積が大きく、
前記予熱工程では、前記第1棒鋼の溶接部を加熱することを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記第1棒鋼および前記第2棒鋼は鉄筋コンクリート構造物に用いられる鉄筋であることを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項6】
請求項5に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記第1棒鋼および第2棒鋼がそれぞれSD345およびSD295Aの場合に、
前記予熱温度を約200℃にすることを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項7】
請求項5に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記第1棒鋼および第2棒鋼がそれぞれSD490およびSD295Aの場合に、
前記予熱温度を約300℃にすることを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項8】
請求項5に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記溶接部の溶接熱サイクルにおける約1070K(800℃)から770K(500℃)までの間の冷却時間が4秒以上となるように、前記予熱工程における前記溶接部の予熱温度を設定することを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項9】
請求項5に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記溶接部の硬度がHv400以下となるように、前記予熱工程における前記溶接部の予熱温度を設定することを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記第1棒鋼に対して、その材軸方向に沿って、一定の溶接ピッチで各第2棒鋼を交差状態に配置し、
前記抵抗溶接装置による溶接位置を経由する送り経路上における当該溶接位置から1溶接ピッチ分手前の位置に、前記予熱装置による予熱位置を配置し、
前記送り経路に沿って、前記第1棒鋼をその材軸方向に前記溶接ピッチずつ間欠的に送り、
前記予熱位置および前記溶接位置に位置決めされた前記第1棒鋼および各第2棒鋼のボンド部に対して、それぞれ、前記予熱工程および前記溶接工程を行う動作を繰り返すことを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のうちのいずれかの項に記載の棒鋼の抵抗溶接方法において、
前記予熱装置として誘導加熱装置を用いることを特徴とする棒鋼の抵抗溶接方法。
【請求項12】
予熱装置と、
抵抗溶接装置と、
前記予熱装置の予熱位置および前記抵抗溶接装置の溶接位置を経由させて、溶接対象の第1棒鋼および第2棒鋼を搬送する送り経路とを有し、
前記予熱装置による前記第1棒鋼および前記第2棒鋼の溶接部の予熱温度を、175℃から475℃までの範囲内の温度にすることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項13】
請求項12に記載の抵抗溶接システムにおいて、
前記予熱装置による前記溶接部の予熱温度を200℃以上にすることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項14】
請求項12または13に記載の抵抗溶接システムにおいて、
溶接対象の前記第1、第2棒鋼は、前記第1棒鋼に対して、その材軸方向に沿って、一定の溶接ピッチで各第2棒鋼を交差状態に配置されており、
前記抵抗溶接装置による溶接位置を経由する送り経路上における当該溶接位置から1溶接ピッチ分手前の位置に、前記予熱装置による予熱位置が配置されており、
前記送り経路に沿って、前記第1棒鋼がその材軸方向に前記溶接ピッチずつ間欠的に送られ、前記予熱位置および前記溶接位置に位置決めされた前記第1棒鋼および各第2棒鋼の溶接部に対して、それぞれ、前記予熱装置による予熱および前記抵抗溶接装置による抵抗溶接が繰り返し行われることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項15】
請求項12ないし14のうちのいずれかの項に記載の抵抗溶接システムにおいて、
前記予熱装置は誘導加熱装置であることを特徴とする抵抗溶接システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図4G】
image rotate

【図4H】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−29920(P2010−29920A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195815(P2008−195815)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000121729)奥地建産株式会社 (20)
【Fターム(参考)】