説明

椅子式マッサージ機

【課題】 腕を引っ張ってストレッチを行う際に、一気に引っ張られることによる被施療者の腕への負担を軽減することのできる椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】 被施療者50が着座する座部1と、被施療者50の背中を凭れ掛ける背凭れ部2と、被施療者50の腕を座部1側に挟持固定させる腕固定部16と、座部1に対して背凭れ部2を起倒動作させる起倒動作部5と、腕固定部16及び起倒動作部5を駆動制御する制御部14とを具備する椅子式マッサージ機である。上記制御部14は、腕固定部16により腕を挟持固定させた状態で起倒動作部5により背凭れ部2を第一傾倒角度にまで倒して停止させた後、起倒動作部5により背凭れ部2を一旦起こしたうえで、腕固定部16により腕を挟持固定させた状態で背凭れ部2を上記第一傾倒角度よりも大きな第二傾倒角度にまで倒すものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ部が起倒自在となっている椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被施療者の腕を座部側に挟持固定させる腕固定部と、座部に対して背凭れ部を起倒動作させる起倒動作部とを具備し、腕固定部により腕を固定させた状態のままで背凭れ部を倒すことにより、背凭れ部と共に上体を後方に倒す被施療者の自重で肩や腕を伸ばすストレッチを行う椅子式マッサージ機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし上記従来の椅子式マッサージ機にあっては、腕を固定した後は背凭れ部を一気に倒してストレッチを行う仕組みになっており、被施療者にとっては腕が一気に引っ張られるので痛みを感じてしまう場合があった。
【特許文献1】特開2005−152260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、腕を引っ張ってストレッチを行う際に、一気に引っ張られることによる被施療者の腕への負担を軽減することのできる椅子式マッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明を、被施療者50が着座する座部1と、被施療者50の背中を凭れ掛ける背凭れ部2と、被施療者50の腕を座部1側に挟持固定させる腕固定部16と、座部1に対して背凭れ部2を起倒動作させる起倒動作部5と、腕固定部16及び起倒動作部5を駆動制御する制御部14とを具備する椅子式マッサージ機において、上記制御部14が、腕固定部16により腕を挟持固定させた状態で起倒動作部5により背凭れ部2を第一傾倒角度にまで倒して停止させた後、起倒動作部5により背凭れ部2を一旦起こしたうえで、腕固定部16により腕を挟持固定させた状態で背凭れ部2を上記第一傾倒角度よりも大きな第二傾倒角度にまで倒すものであることを特徴とする。
【0006】
上記構成の椅子式マッサージ機にあっては、まず第一傾倒角度まで背凭れ部2を倒して被施療者50の肩や腕を軽く伸ばす前半のストレッチを行い、その後で、第一傾倒角度よりも大きな第二傾倒角度にまで背凭れ部2を倒して被施療者50の肩や腕を強く伸ばす後半のストレッチを行うことができる。
【0007】
したがって、被施療者50にとっては前半の軽めのストレッチにおいて或る程度の準備段階を経たうえで、後半の本格的なストレッチに臨むこととなるので、ストレッチ中の痛みを感じるといった事態が防止される。即ち上記構成の椅子式マッサージ機によれば、腕への負担が軽減された快適なストレッチを提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、腕を引っ張ってストレッチを行う際に、一気に引っ張られることによる被施療者の腕への負担を軽減することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態における一例の椅子式マッサージ機に被施療者50が着座している状態の側面図であり、図2は椅子式マッサージ機の正面図である。
【0010】
本例の椅子式マッサージ機は、被施療者50が着座する座部1と、座部1に着座状態にある被施療者50が自身の背中を凭れ掛ける背凭れ部2と、同じく座部1に着座状態にある被施療者50が自身の腕を置くために座部1側に一体に取付けてある左右一対の肘掛部3とを具備するものである。以下の文中においては、被施療者50が背中を凭れ掛ける方向を「後方」、その逆方向(即ち、被施療者50が正面を向く方向)を「前方」として述べる。
【0011】
背凭れ部2内には、被施療者50の背面側に施療子41を押し当てて揉みや叩き等の各種マッサージを行う施療機構40を備えている。また座部1と背凭れ部2との間には、座部1に対して背凭れ部2を前後方向に起倒動作させてリクライニング角度を変更させるリクライニング機構として、起倒モータ4により電動で角度変更を行うリンク機構から成る起倒動作部5を備えている。
【0012】
左右の肘掛部3の上面にはそれぞれ、肘掛部3上に置いた被施療者50の腕を上方から覆う腕カバー6が備えてあり、肘掛部3と腕カバー6とで形成される腕施療部7内に腕を挿入して位置させるようになっている。肘掛部3と腕カバー6とは、互いの前端部を前後方向に回動自在に連結させており、肘掛部3の上面に対して腕カバー6が閉じた位置と、肘掛部3の上面に対して腕カバー6が所定角度だけ開いた位置との間で開閉自在となっている。
【0013】
上記腕施療部7には、腕カバー6の下面に配設されて給排気により膨縮自在な上エアバッグ8と、肘掛部3の上面に配設されて給排気により膨縮自在な下エアバッグ9とが、対向箇所に備えてある。この上下エアバッグ8,9により、腕施療部7内に挿入された腕は上下方向から包み込まれるように弾力的に挟持され、適宜のエアマッサージが施されるものである。
【0014】
図3に示すように、上エアバッグ8と下エアバッグ9は、それぞれ専用の上用電磁弁10と下用電磁弁11を介して給気ポンプ12に連通接続されている。腕にエアマッサージを施す際には、給気ポンプ12を駆動させて給気を行うとともに各電磁弁10,11の開閉を選択することで、上エアバッグ8と下エアバッグ9のうち給気を行うものを選択して膨張させる。
【0015】
図4には制御構成図を示している。図示の如く、本例の椅子式マッサージ機には背凭れ部2の現在のリクライニング角度を検知する適宜の角度センサ13が備えてあり、この角度センサ13の検知結果が制御部14に入力されるようになっている。上記制御部14は、図5にも示す操作部15から入力される各種の指令に基づいて、左右の腕施療部7の上下エアバッグ8,9への給排気や、背凭れ部2の起倒動作を制御するものである。制御部14による給排気の制御は、左右それぞれの上下エアバッグ8,9に対応する上用電磁弁10及び下用電磁弁11と、給気ポンプ12とを、上記のように駆動制御することによって行う。また制御部14による背凭れ部2の起倒動作の制御は、角度センサ13により検知される現在のリクライニング角度から狙いのリクライニング角度にまで背凭れ部2が移動するように、起倒動作部5の起倒モータ4を駆動させることによって行う。なお、本例における背凭れ部2のリクライニング角度は、鉛直方向から後方に僅かに傾斜した角度から、後方に大きく傾斜した角度までの間で、8段階に等分割して設定してある(図7参照)。
【0016】
上記構成から成る本例の椅子式マッサージ機に着座した被施療者50は、操作部15に設けてある入/切ボタン20を操作して電源をオンにした後、リクライニング角度調整用のボタン(図示せず)を操作して背凭れ部2のリクライニング角度を所望角度に設定し、この状態で上述の施療機構40や腕施療部7による各種マッサージを施術させる。
【0017】
そして、操作部15に設けてある腕・肩伸ばしボタン17を押下して制御部14にストレッチ開始を指令すると、図6の動作タイミングチャートに示すような手順で腕や肩のストレッチが行われる。本例にあっては左右の腕を交互に引っ張ってストレッチするように設定してあるので、まず、右側又は左側の腕施療部7用の上用電磁弁10及び下用電磁弁11を開弁させるとともに給気ポンプ12を駆動させることで、右側又は左側の腕施療部7の上下エアバッグ8,9を同時に膨張させる。このときの背凭れ部2のリクライニング角度は、最も起立した所定のリクライニング角度[図7(a)に示す1段階目のリクライニング角度]に設定しておく。
【0018】
なお上記腕施療部7は、このストレッチ動作においては、被施療者50が肘掛部3上に置いた片腕の前腕部分を上下方向から包み込むように挟持固定する役割を果たすものである。したがって以下の文中にあっては、上記腕施療部7を、座部1側に被施療者50の片腕を挟持固定するための腕固定部16と称して説明する。
【0019】
上記制御部14は、上エアバッグ8と下エアバッグ9の膨張開始時点から一定の待ち時間T1が経過した時点から、腕を挟持固定させた状態を保ちながら起倒動作部5により背凭れ部2を後方へと一定速度で倒し始める。上記待ち時間T1は、上下エアバッグ8,9により腕が確実に固定されるまでの時間である。背凭れ部2が所定のリクライニング角度である第一傾倒角度[図7(b)に示す4段階目のリクライニング角度]にまで倒れると、この位置で、制御部14は腕を腕固定部16により挟持固定させた状態を保ちながら背凭れ部2の起倒動作を数秒間停止させ、被施療者50に対して肩や腕のストレッチを行う。この段階までが、背凭れ部2と共に上体を後方に倒す被施療者50の自重を用いて肩や腕を軽く引っ張る前半のストレッチである。
【0020】
次に制御部14は、上用電磁弁10及び下用電磁弁11を閉弁させるとともに給気ポンプ12を停止させ、上下エアバッグ8,9の排気を行うことで腕固定部16による腕の挟持固定を解除するとともに、この解除状態において背凭れ部2を、開始当初のリクライニング角度よりも僅かに後方に傾倒した所定のリクライニング角度[図7(c)に示す二段階目のリクライニング角度]にまで一旦起こす。
【0021】
背凭れ部2が上記リクライニング角度にまで起きると直ちに、制御部14は、再び上用電磁弁10及び下用電磁弁11を開弁させるとともに給気ポンプ12を駆動させることで上下エアバッグ8,9の膨張を開始させ、膨張開始時点から待ち時間T1を経過した時点から、腕を挟持固定させた状態を保ちながら背凭れ部2を再び後方へと一定速度で倒し始める。なお、被施療者50にじっくりとした施療感を与えるためには、ここでの一定速度を前回よりも遅い速度とすることが好適である。
【0022】
後方への傾倒動作を続ける背凭れ部2が、前回の第一傾倒角度よりも大きな所定リクライニング角度である第二傾倒角度[図7(d)に示す六段階目のリクライニング角度]にまで倒れると、この位置で、制御部14は腕を挟持固定させた状態を保ちながら背凭れ部2の動作を数秒間停止させ、被施療者50に対して肩や腕のストレッチを行う。
【0023】
この段階が、背凭れ部2と共に上体を後方に倒す被施療者50の自重を用いて肩や腕を強く引っ張る後半のストレッチであり、数秒停止後には、腕固定部16による腕の挟持固定を解除したうえで背凭れ部2を、開始当初のリクライニング角度[図7(a)に示す一段階目のリクライニング角度]にまで戻し、左右片方のストレッチを終了する。なお上記第一、第二傾倒角度の大小関係は、背凭れ部2が最も起立した状態を基準とし、この基準状態から後方に倒れる方向の角度の大小を比較したものである。
【0024】
制御部14はこの前半及び後半のストレッチをワンセットとして、今度は左右逆側の腕に対して上記ワンセットのストレッチを行う。なお本例にあっては腕を挟持固定する際に上下エアバッグ8,9が同時に膨張するように設定してあるが、上エアバッグ8又は下エアバッグ9のみが膨張するように設定してあっても構わない。
【0025】
上記構成の椅子式マッサージ機とすることで、被施療者50は前半の軽めのストレッチにおいて筋を多少伸ばしておく準備段階を経たうえで、後半の本格的なストレッチに臨むこととなり、被施療者50にストレッチ中の痛みを感じさせるといった事態が防止される。なお前半のストレッチにおいても背凭れ部2を第一傾倒角度にて数秒程度停止させておくことで、軽めとはいえ一定のストレッチ効果が得られるようになっている。更に、後半のストレッチにおいて背凭れ部2を第二傾倒角度で数秒停止させておくことで、効果の高いストレッチ効果が得られることは勿論である。
【0026】
実際のマッサージ師が肩や腕を伸ばすストレッチを行う際にもこのように段階的に引っ張ることで被施療者50に対して負担をかけないように配慮するものであり、このことからも上記手順に拠れば快適なストレッチを提供可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態における一例の椅子式マッサージ機に被施療者が着座した状態を示す側面図である。
【図2】同上の椅子式マッサージ機を示す正面図である。
【図3】同上の椅子式マッサージ機の腕固定部への給気構造を示す構成図である。
【図4】同上の椅子式マッサージ機の制御構成図である。
【図5】同上の椅子式マッサージ機の操作部を示す概略図である。
【図6】同上の椅子式マッサージ機のストレッチ動作における動作タイミングチャートである。
【図7】同上の椅子式マッサージ機のストレッチ動作を段階的に示す説明図であり、(a)は開始時点、(b)は前半のストレッチ時点、(c)は一旦戻した時点、(d)は後半のストレッチ時点である。
【符号の説明】
【0028】
1 座部
2 背凭れ部
5 起倒動作部
14 制御部
16 腕固定部
50 被施療者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、被施療者の背中を凭れ掛ける背凭れ部と、被施療者の腕を座部側に挟持固定させる腕固定部と、座部に対して背凭れ部を起倒動作させる起倒動作部と、腕固定部及び起倒動作部を駆動制御する制御部とを具備する椅子式マッサージ機において、上記制御部が、腕固定部により腕を挟持固定させた状態で起倒動作部により背凭れ部を第一傾倒角度にまで倒して停止させた後、起倒動作部により背凭れ部を一旦起こしたうえで、腕固定部により腕を挟持固定させた状態で背凭れ部を上記第一傾倒角度よりも大きな第二傾倒角度にまで倒すものであることを特徴とする椅子式マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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