説明

椅子式マッサージ機

【課題】
座部において下腿全域に対するマッサージを満遍なく実施できる椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】
座部11aとその後方に設けた背凭れ部12aとを備えた椅子式マッサージ機1aにおいて、座部11aの内部で幅方向及び長さ方向においてマッサージ部材71aを複数並設したマッサージ無端ベルト帯7aを駆動部73aで前後方向に回転させるよう構成する。また、これら複数の各マッサージ部材71aを幅方向同軸上において回転可能に並設させてマッサージ列体70aを構成し、該マッサージ列体70aをこのマッサージ無端ベルト帯7aの長さ方向に並設させたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部において下腿全域に対するマッサージを満遍なく実施できる椅子式マッサージ機を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子式マッサージ機において、背凭れ部に昇降可能な電動の揉み玉や空気給排装置による空気の給排で膨縮する膨縮袋などから構成されるマッサージ機構を適所に設けた構成のものは主流となっており、加えて背凭れ部の他に座部や足載せ部などにも同様のマッサージ機構を配設することで下腿をもマッサージできるようにした、全身マッサージが可能な構成のものは既によく知られている。
【0003】
この種従来の椅子式マッサージ機としては、例えば図9に示したようなものがあり、人体の大腿部と臀部を支持する座部の基盤2に、基盤2の上方に位置する人体の大腿部Aに向かって起立し先端部に揉み輪7を備えたアーム6を有するプレート5を配設し、このプレート5を基盤2の臀部側において枢着支持するとともにプレート5と基盤2との間に空気の給排によって伸縮する揺動用のエアーセル8を配してこの揺動用のエアーセル8の伸縮によってプレート5を上下方向に揺動させるようになし、このプレート5の揺動によって揉み輪7に円弧軌跡の斜め方向の上下運動を付与して大腿部Aに押し込みマッサージが施されるように構成したものとしている。
また、上記基盤2の左右の臀部Bが位置する部分には、それぞれ空気の給排によって上下方向に伸縮する押圧用エアーセル(膨張袋)9,9が配設されていて、この押圧用エアーセル9,9の伸縮によって人体の左右の臀部Bに押し揉み作用が施されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−155853号公報(第5頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の上記椅子式マッサージ機は、座部において上下運動するマッサージ部材の揉み輪及び空気の給排により上下伸縮する膨張袋により下腿に対し押圧マッサージできるよう構成するものであるが、これらの揉み輪及び膨張袋は座部において所定の位置に固設されている。
【0005】
そのため、被施療者は下腿の限られた部位しかマッサージを受けられず、下腿における他の部位をマッサージするためには座部における着座位置をずらすなどしなければならない。
【0006】
しかしながら、そのような座部における被施療者の移動は、背凭れ部に凭れた被施療者の背部もずれることになり、背凭れ部に設けた背部マッサージ機構による的確なマッサージを妨げるという課題が生じると考えられる。
【0007】
よってこのような課題を解決すべく、座部における着座位置をずらさずして下腿全域に対するマッサージを満遍なく実施できる新たな構成の椅子式マッサージ機における開発が要望されていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、座部において下腿全域に対するマッサージを満遍なく実施できる椅子式マッサージ機を提供する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の椅子式マッサージ機は、座部とその後方に設けた背凭れ部とを備えた椅子式マッサージ機であって、座部の内部で幅方向及び長さ方向においてマッサージ部材を複数並設したマッサージ無端ベルト帯を駆動部で前後方向に回転させたものとしている。
【0010】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、複数の前記マッサージ部材を幅方向同軸上において回転可能に並設させてマッサージ列体を構成し、該マッサージ列体を前記マッサージ無端ベルト帯の長さ方向に並設させたものとしている。
【0011】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記マッサージ部材を玉状に形成したものとしている。
【0012】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記駆動部により回転する歯車を前記マッサージ無端ベルト帯の内面に噛合して設けたものとしている。
【0013】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記駆動部を前記歯車と同軸上に設けたものとしている。
【発明の効果】
【0014】
よって、本発明の椅子式マッサージ機は、座部とその後方に設けた背凭れ部とを備えた椅子式マッサージ機であって、座部の内部で幅方向及び長さ方向においてマッサージ部材を複数並設したマッサージ無端ベルト帯を駆動部で前後方向に回転させたものとしているため、座部において下腿全域に対するマッサージを満遍なく実施することができる。
【0015】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、複数の前記マッサージ部材を幅方向同軸上において回転可能に並設させてマッサージ列体を構成し、該マッサージ列体を前記マッサージ無端ベルト帯の長さ方向に並設させたものとしているため、下腿全体をローリングマッサージすることができる。
【0016】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記マッサージ部材を玉状に形成したものとしているため、比較的ソフトなマッサージ感のローリングマッサージが実現できる。
【0017】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記駆動部により回転する歯車を前記マッサージ無端ベルト帯の内面に噛合して設けたものとしているため、駆動部の駆動力伝達効率を高めることができる。
【0018】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記駆動部を前記歯車と同軸上に設けたものとしているため、座部におけるこのようなマッサージ機構をコンパクトに構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の椅子式マッサージ機を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す斜視図であり、図2は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用状態図であり、図3は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す右側面図であり、図4は本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯の一実施形態を示す斜視説明図であり、図5は本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯の動作に関する一実施形態を示す平面説明図であり、図6は本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯の回転動作に関する一実施形態を示す側面説明図であり、図7は本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯に伸縮機構を設けた一実施形態を示す側面説明図であり、図8は本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯に設けた伸縮機構の伸縮動作に関する一実施形態を示す側面説明図であり、図9は従来技術を示す参考図である。
【0020】
すなわち、図1乃至図3の実施形態で示したように、本発明の椅子式マッサージ機1aは、被施療者の臀部及び大腿部などが当接する座部11aと、その後方に被施療者の背部及び腰部、それに頭部などが当接するリクライニング可能な背凭れ部12aと、座部11aの前方に出没可能な被施療者の脛部などを載置する足載せ部13aとを備えたものである。
【0021】
また、前記座部11aの両側において、被施療者の手部や腕部を載置するための肘掛け部14aをそれぞれ立設している。
【0022】
尚、図3に示すように、前記片側の肘掛け部14aの上方にリモコンである操作部5aを立設させており、この椅子式マッサージ機1aにおける全操作を行うようにしている。
【0023】
さらに、図1に示すように前記背凭れ部12aにおいて、左右一対の揉み玉から構成するマッサージ部材31aを備えた背部及び腰部方向に昇降する背部マッサージ機構3aを設けると共に、空気給排装置41aの空気給排により膨縮する膨縮袋4aを適所に複数設けたものとしている。
【0024】
前記背部マッサージ機構3aは、前記背凭れ部12aの内部左右に設けた左右一対のガイドレール32aに沿って該背凭れ部12aの上端から下端にかけて昇降するようにしている。
【0025】
加えて、前記背部マッサージ機構3はモータ等を駆動源とした機械式の施療機構であり、前記背凭れ部12aに凭れた被施療者の首部、背部、腰部、臀部等の背面全域を、たたき、揉み、ローリング、振動、指圧などの多様な形態で施療するようにしたものである。
【0026】
さらに、前記背凭れ部12aの左右両側において、前方に向かってそれぞれ突出した側壁部2a・2aを夫々配設している。この左右の側壁部2aは、前記座部11aに着座した施療者の肩または上腕側方となる位置に配設しており、該左右の側壁部2aの内側面には夫々左右方向に重合した前記膨縮袋4aを並列状態に埋設している。
【0027】
これら重合した前記側壁部2a・2aの前記各膨縮袋4a・4aは、その基端部のみを側壁部2aの基端部に取り付けているため、膨張時には重合した膨縮袋4a・4aが扇状に広がって施療者の身体側部を挟圧しつつ、身体前方まで覆うようになる。よって、施療者の身体が前記背凭れ部12aから離れないようにしっかりと保持する事ができ、この状態で前記背部マッサージ機構3aによる背部からのマッサージを効果的に受ける事が可能となる。
【0028】
前記足載せ部13aは、人体の脚部である脛部または足先部を夫々嵌入させる左右一対の凹部を夫々形成したものであり、各凹部に前記膨縮袋4aを左右一対として対設するよう設けて、凹部内部で人体の脛部及び足先部に対する挟圧施療を実施するようにしている。
【0029】
他にも、図1に示すように前記左右の肘掛け部14aの上部には、必要に応じて人体の手や前腕を嵌入保持して施療するための凹部を形成する腕保持部15aを設ける事ができる。この図1の場合、該腕保持部15aの内部において、上下に前記各膨縮袋4aを夫々対設するよう設けて、凹部内部で人体の手や前腕に対する挟圧施療を実施するようにしている。
【0030】
尚、前記空気給排装置41aは、図示していないが圧縮空気を発生させるエアポンプと、該圧縮空気を各エアホースに分配する複数の電磁弁からなる分配器と、該分配器の内部機構を電子回路により制御する電子制御回路とから主に構成され、前記座部11aの下部空間に配備している。
【0031】
また、前記膨縮袋4aについては、軟質樹脂やナイロンのシートによる溶着成形、または同材質のブロー成形等で製造され、前記空気給排装置3aの空気の給排気による継続的な膨縮に耐え得るものを採用している。
【0032】
上述した本発明の椅子式マッサージ機1aはさらに、図1、図4、図6に示すように前記座部11aの内部で幅方向及び長さ方向においてマッサージ部材71aを複数並設したマッサージ無端ベルト帯7aを駆動部73aで前後方向に回転させたものとしている。
【0033】
すなわち、複数の前記各マッサージ部材71aを幅方向に横設した支持軸711a上において回転可能に並設させてマッサージ列体70aを構成し、該マッサージ列体70aをこのマッサージ無端ベルト帯7aの長さ方向に並設させたものとして構成している。
【0034】
また、前記各マッサージ部材71aを玉状に形成したものとしており、その材質としては軟質樹脂又はゴムなどを適用できる。
【0035】
さらに、前記駆動部73aはモータと減速機が一体構成したものであり、図6に示すように該駆動部73aにより回転する駆動歯車721aを前記マッサージ無端ベルト帯7aの内面に噛合して設けたものとしている。
【0036】
尚、前記駆動部73aは前記駆動歯車721aと同軸上に設けたものとしている。よって、前記座部11aにおける前記マッサージ無端ベルト帯7aをコンパクトに構成することができる。
【0037】
また、前記駆動歯車721aを前記駆動部73aを介して左右に分割されたものとしてもよい。
【0038】
加えて、前記駆動部73aは、図示しないが前記座部11aの下部に内設する左右一対の支持フレーム6aに固設されたものとしており、さらに前記駆動歯車721aは該支持フレーム6aに回転可能に軸設されたものとしている。
【0039】
前記マッサージ無端ベルト帯7aのさらなる構成として、図4乃至図6に示すように、前記左右一対の各支持フレーム6aの幅方向内側に、左右一対の各ベルト74aを回転可能に取り付けている。すなわち、図6に示すように該各ベルト74aは、前記支持フレーム6aの後端側に軸設された前記駆動歯車721a及び支持フレーム6aの前端側において該支持フレーム6aに回転可能に軸設した追従歯車741aとそれぞれ噛合して、前記座部11aの長さ方向において回転動作できるようにしている。
【0040】
さらに、図4及び図5に示すように前記左右のベルト74a・74aの間に前記支持軸711aを前記座部11aの長さ方向に一定の間隔を存して多数並設させている。尚、前述したように各支持軸711aには前記各マッサージ部材71aを回転可能に多数軸設している。
【0041】
このように構成した前記マッサージ無端ベルト帯7aは、図6に示すように前記駆動部73aの駆動力により前記駆動軸72aが一方向に回転し、その回転が前記駆動歯車721aに伝達されるので、前記ベルト74aは一方向に回転することになり、前記各マッサージ部材71aが前記座部11aに着座した被施療者の下腿下部を押圧しながら転動して、その下腿下部全体を隈無くマッサージするようにしているのである。
【0042】
尚、前記ベルト74aの回転方向は、被施療者が前記操作部5aにおいて選択できるようにしてもよい。また、その回転の速さを調節したり、さらには所定時間経過毎にその回転方向を逆転させたりしてもよい。
【0043】
図7及び図8に示すのは、前記追従歯車741aの軸を基軸とすると共に、前記駆動歯車721a側に伸縮機構75aを設け、前記マッサージ無端ベルト帯7aを上下方向に移動可能にしたものである。
【0044】
これによって、前記マッサージ無端ベルト帯7aの下腿に対する加圧を被施療者の好みに応じて調整でき、前記座部11aにおける多様なマッサージ感が実現できることになる。
【0045】
前述したように本発明の椅子式マッサージ機1aは、前記背凭れ部12aの左右両側に設けた前記側壁部2a・2aの前記各膨縮袋4aの膨張によって、被施療者の身体が背凭れ部12aから離れないようにしっかりと保持する事ができようにしている。
【0046】
よって、前記背凭れ部12aにおいて被施療者の身体を保持した最適な姿勢で前記マッサージ無端ベルト帯7aによる下腿マッサージが実施できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用状態図である。
【図3】本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す右側面図である。
【図4】本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図5】本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯の動作に関する一実施形態を示す平面説明図である。
【図6】本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯の回転動作に関する一実施形態を示す側面説明図である。
【図7】本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯に伸縮機構を設けた一実施形態を示す側面説明図である。
【図8】本発明の椅子式マッサージ機におけるマッサージ無端ベルト帯に設けた伸縮機構の伸縮動作に関する一実施形態を示す側面説明図である。
【図9】従来技術を示す参考図である。
【符号の説明】
【0048】
1a 椅子式マッサージ機
11a 座部
12a 背凭れ部
13a 足載せ部
14a 肘掛け部
15a 腕保持部
2a 側壁部
3a 背部マッサージ機構
31a マッサージ部材
32a ガイドレール
4a 膨縮袋
41a 空気給排装置
5a 操作部
6a 支持フレーム
7a マッサージ無端ベルト帯
70a マッサージ列体
71a マッサージ部材
711a 支持軸
72a 駆動軸
721a 駆動歯車
73a 駆動部
74a ベルト
741a 追従歯車
75a 伸縮機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部とその後方に設けた背凭れ部とを備えた椅子式マッサージ機であって、座部の内部で幅方向及び長さ方向においてマッサージ部材を複数並設したマッサージ無端ベルト帯を駆動部で前後方向に回転させたものとしたことを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
複数の前記マッサージ部材を幅方向同軸上において回転可能に並設させてマッサージ列体を構成し、該マッサージ列体を前記マッサージ無端ベルト帯の長さ方向に並設させたことを特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
前記マッサージ部材を玉状に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
前記駆動部により回転する歯車を前記マッサージ無端ベルト帯の内面に噛合して設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】
前記駆動部を前記歯車と同軸上に設けたことを特徴とする請求項4記載の椅子式マッサージ機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−56051(P2009−56051A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224869(P2007−224869)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【Fターム(参考)】