説明

椅子

【課題】着座者の頭部がハンガーに掛けた衣服に触れてしまうことを有効に回避し得る椅子を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る椅子Cは、椅子本体1にヘッドレスト8を前後傾動可能に設けた椅子Cにおいて、ヘッドレスト8の後方に配された椅子本体1に対して前後傾動可能なハンガー2と、ヘッドレスト8の背面にハンガー2が一定以上近接するのを防ぐ接近防止手段Xとを具備してなることを特徴とする。この接近防止手段Xによって、着座者が頭を後傾させても、ヘッドレスト8にハンガー2が一定以上近接することが無く、結果として着座者の頭や髪の毛がハンガー2に掛けた衣服に触れることを有効に回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストを具備する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者の上着などを掛けておくためにハンガーを背凭れに取り付けた椅子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように、同文献に記載のものは、着座者が着席する際に別の場所へ移動することなく上着などを掛けることができるものとなっている。
【0003】
他方、従来、背の上端部にヘッドレストを設けた椅子は多く提案されており、斯かるヘッドレストは、固定の態様の他、着座者の頭部の位置に合わせるために前後傾動可能に設けられたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−49081号公報
【特許文献2】特開2001―314268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、上着などの衣服をハンガーに掛ける場合、衣服の下端が床面に触れないよう、ハンガーは椅子におけるなるべく高い位置に設けることが望ましいため、その多くは背の後方上部に設けられたものとなっている。すなわち、ハンガーを取り付けるに最も相応しい位置とは、背の上端、すなわち、ヘッドレストの位置そのもの、或いは近接した位置であるということが云える。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献2のように、ヘッドレストが前後傾動するようなものにハンガーを取り付ける場合、着座者の動作によって、ヘッドレストを動作後端まで後傾させた場合には、着座者の頭部がハンガーに当たってしまい、着座者に違和感を覚えさせるものとなるか、衣服が汚れてしまうといったことが起こり得る。また、ヘッドレストの動作範囲よりも離れた位置にハンガーを設けたものであると、椅子自体の占有面積を大きくしてしまうこととなり、オフィス内での椅子の移動にも支障を来してしまうものとなる。
【0006】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、着座者の頭部がハンガーに掛けた衣服に触れてしまうことを有効に回避し得る椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る椅子は、椅子本体にヘッドレストを前後傾動可能に設けた椅子において、前記ヘッドレストの後方に配された椅子本体に対して前後傾動可能なハンガーと、前記ヘッドレストの背面に前記ハンガーが一定以上近接するのを防ぐ接近防止手段とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
ここで、「ヘッドレストの背面にハンガーが一定以上近接するのを防止する」という概念には、ヘッドレストとハンガーが上記同期して動作して近接を防止する態様のみならず、原則としてヘドレストとハンガーは相互に独立して動作可能であり、一定以上近接しようとした場合にだけ、ハンガーを退避させる態様も含まれる。
【0009】
このようなものであれば、着座者が頭を後傾させても、ヘッドレストにハンガーが一定以上近接することが無く、結果として着座者の頭がハンガーに掛けた衣服に触れることを有効に回避することができるので、着座者がハンガーに掛けた衣服を気にすることなくヘッドレストを動作させることができる。また、着座者の頭が衣服に付着してしまうと不具合を有効に解消し得るものとなる。
【0010】
また、格別の機構を採用することなく接近防止手段を実現するためには、当該接近防止手段を、ヘッドレストとハンガーとの距離を常に一定に保持するものとすれば望ましい。そしてその具体的な態様として、ヘッドレストとハンガーとを一体に設けたものを挙げることができる。
【0011】
そして接近防止手段が、ヘッドレストにハンガーの基端部を相対移動不能に装着するようにしたものとすれば、ハンガーを使用しない場合には取り外し、必要な時だけ取り付けるようにすることができる。そして回転可能に動作するヘッドレストにハンガーを好適に装着するための具体的な構成としては、ヘッドレストを、椅子本体に取り付けられる取付部と、この取付部に枢着された水平軸周りに回転可能な回転部材と、この回転部材に支持させたヘッドレスト本体とを備えたものとし、接近防止手段が、ヘッドレストの前後傾動に伴って回転する回転部材に、ハンガーの基端部を相対移動不能に装着するようにしたものを挙げることができる。
【0012】
他方、着座者の頭部が衣服に接しないものとしつつ、ハンガーに掛けた衣服がヘッドレストの動作によって揺れ動くといったことを有効に少なくするためには、接近防止手段を、ヘッドレストに対してハンガーの基端部を相対移動可能に装着するようにたものとし、接近防止手段を、ヘッドレスト及びハンガーの何れか一方又は両方から突出し、ハンガー及びヘッドレストが一定距離にまで近接する際に互いに当接する当接部を有するものとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヘッドレストにハンガーが一定以上近接することが無く、結果として着座者の頭がハンガーに掛けた衣服に触れることを有効に回避することができる。そうすることにより、着座者がハンガーに掛けた衣服を気にすることなくヘッドレストを動作させることができるとともに、着座者の頭が衣服に付着してしまうと不具合を有効に解消し得るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明の第1実施形態に係る椅子Cは、椅子本体1にヘッドレスト8を設けたものである。
【0016】
椅子本体1は、図1に示すように、脚体3上に基体4を支持させ、その基体4上に座5を設けるとともに、基体4に背フレーム6を前後傾動可能に枢着し、その背フレーム6に背凭れ7を支持させたものである。
【0017】
背フレーム6は、図1に示すように、基端を基体4に枢着した対をなす縦フレーム部61と、それら両縦フレーム部61の上端部間に架設した横フレーム部62とを備えたものである。
【0018】
背凭れ7は、図1に示すように、背フレーム6に対応させて門型に形成した枠部と、その枠部間に設けた張り地とを備えたものである。背凭れ7の下端部は、縦フレーム部61の前面に上下方向にスライド可能に支持されているとともに、上端部は図示しない止着具を介して縦フレーム部61の前面に着脱可能に止着されている。
【0019】
そしてヘッドレスト8は、図2及び図3に示すように、椅子本体1に着脱可能に取り付けられる取付部82と、この取付部82に支持されたヘッドレスト本体81とを備えてなる。取付部82は、対をなす板状の挿入部821と、これら両挿入部821に回動可能に支持された回転部材たる軸部822とを備えてなり、軸部822の回転によりヘッドレスト8の前後方向の傾動位置を調整することができるようになっている。挿入部821は、止着具挿通孔821aを有した薄板状のもので、止着具を止着具挿通孔821aに挿通させた状態で、縦フレーム部61と背凭れ7との間に挟着され得るようになっている。
【0020】
このような椅子Cにおいて、本実施形態ではヘッドレスト8の後方に、ハンガー2を配している。
【0021】
ここで、本実施形態に係る椅子Cは、椅子本体1にヘッドレスト8を前後傾動可能に設けた椅子Cにおいて、ヘッドレスト8の後方に配された椅子本体1に対して前後傾動可能なハンガー2と、ヘッドレスト8の背面にハンガー2が一定以上近接するのを防ぐ接近防止手段Xとを具備してなることを特徴とする。
【0022】
ハンガー2は、図2、図3(a)及び図3(b)に示すように、衣類を掛けることができるハンガー本体21と、このハンガー本体21を支持するためのハンガー脚22と、このハンガー脚22をヘッドレスト8の軸部822から立ち上がる基端部24とを具備してなる。そしてこのように、ヘッドレスト8とハンガー2とを一体に設けることによって、このハンガー2と、ヘッドレスト8とが一定の距離を保持しながら前後傾動し得るようになっている。
【0023】
このように、ヘッドレスト8とハンガー2とを一体に設けることによって本発明に係る接近防止手段Xを構成しているので、図3(a)及び図3(b)に示すように、着座者の動作に応じてヘッドレスト8が軸部822を中心に回動する場合においても、常に一定以上近接することなく、一定の距離を保ち得るものとなっている。
【0024】
以上のように、本実施形態に係る椅子Cは、接近防止手段Xによって、着座者が頭を後傾させても、ヘッドレスト8にハンガー2が一定以上近接することが無く、結果として着座者の頭や髪の毛がハンガー2に掛けた衣服に触れることを有効に回避することができるので、着座者がハンガー2に掛けた衣服を気にすることなくヘッドレスト8を動作させることができる。また、着座者の頭や髪の毛が衣服に付着してしまうと不具合を有効に解消し得るものとなっている。
【0025】
また、格別の機構を採用することなく接近防止手段Xを実現するために本実施形態では、接近防止手段Xを、ヘッドレスト8とハンガー2との距離を常に一定に保持する態様を採用し、具体的には、ヘッドレスト8とハンガー2とを一体に設けることによって、格別の機構・部品等を追加することなく上記効果を獲得し得たものとなっている。
【0026】
<変形例1>
続いて、本実施形態の変形例1について説明する。以下の各変形例において、本実施形態と同様の構成要素に対しては同じ符合を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0027】
本変形例は、接近防止手段Xが、ヘッドレスト8にハンガー2を相対移動不能に装着するようにしたものである。
【0028】
ハンガー2は、本変形例では図4に示すように、衣類を掛けることができるハンガー本体21と、このハンガー本体21を支持するためのハンガー脚22と、このハンガー脚22をヘッドレスト8の軸部822に取り付けるための取付部23とを具備してなる。他方、ヘッドレスト8においては、ヘッドレスト本体81及び軸部822の中央には、上述したハンガーの取付部23を挿入可能な取付部挿入穴822aを設けている。そして、この取付部23を回転部材であるヘッドレスト8の軸部822に設けた取付部挿入穴822aに着脱可能に装着することによって、このハンガー2と、ヘッドレスト8とが一定の距離を保ちながら前後傾動し得るようになっている。
【0029】
斯かる構成によれば、ハンガー2を使用しない場合にはハンガー2を取り外しておいたり、着座者の体格や衣服に応じたサイズ・形状の図示しない別のハンガー2を取り付けたりする態様とすることも可能となる。
【0030】
<変形例2>
続いて本変形例では、図5に示すように、ハンガー2に幅調節部材25を設けたものである。具体的に説明すると、この幅調節部材25は、ハンガー本体21の両端にそれぞれ取り付けるものであり、ハンガー本体21の長手方向に沿って適宜移動させることによって、掛けようとする衣服の幅寸法に適応させることができるものである。
【0031】
このようなものであれば、幅寸法の異なる種々の衣服に好適に対応させることによって、掛けた衣服を型くずれさせることなく良好な状態で掛けておくことができる。
【0032】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。同実施形態においては上記実施形態と同様の構成要素については同じ符合を付して詳細な説明を省略するとともに、同実施形態特有の構成については符号に「A」を付して示すものとする。
【0033】
本実施形態に係る椅子Cは、図6及び図7に示すように、椅子本体1の横フレーム部62を取り外し、その代わりにヘッドレストA8の軸部A822を取り付ける構成としたものである。そして、斯かる軸部A822にハンガーA2を着脱可能且つ回動可能に装着している。
【0034】
具体的に説明すると、図6及び図7に示すように、まず背フレーム6において、縦フレーム部61は、横フレーム部62に対して係合し得る係合突起を有している。そしてこの係合突起は、取付の際にねじbを挿通させるためのねじ挿通孔611xを有している。そして横フレーム部62は、係合突起を挿入し得る凹部と、縦フレーム部61に取り付けた状態で縦フレーム部61のねじ挿通孔611xに連通し得る図示しない雌ねじ孔を有している。
【0035】
ヘッドレストA8は、図6及び図7に示すように、椅子本体1に着脱可能に取り付けられる取付部A82と、この取付部A82に支持されたヘッドレスト本体A81とを備えてなる。ヘッドレスト本体A81は、後側の2箇所において後方に突出する当接部A83を有するものとなっているが、斯かる当接部A83については詳述する。取付部A82は、横フレーム部62と略同形状の軸部A822と、軸部A822の中央に回動可能に支持された回転部材A823とを備えてなり、回転部材A823の回転によりヘッドレストA8の前後方向の傾動位置を調整することができるようになっている。そして取付部A82の両端は横フレーム部62と同じ構成、すなわち凹部A82xと図示しない雌ねじ孔とをさらに具備したものとなっており、縦フレーム部61への取り付けは横フレーム部62のそれと同様に、2本のねじbを雌ねじ孔に締結することによって行うものとしている。
【0036】
またハンガーA2は、衣類を掛けることができるハンガー本体21と、このハンガー本体21を支持するためのハンガー脚22と、このハンガー脚22をヘッドレストA8の軸部A822の2箇所に外嵌することによって取り付けるための枢着部たる取付部A82とを具備してなる。そして取付部A82は軸部A822に取り付けた状態で、当該軸部A822に対して回動可能に構成してある。
【0037】
しかして本実施形態に係る椅子Cは、図7、図8(a)及び図8(b)に示すように、ヘッドレスト本体A81が、後側の2箇所において後方に突出する当接部A83を有するものとなっている。すなわち、接近防止手段Xを、ヘッドレストA8が一定距離にまでハンガーA2に近接する際に当接する当接部A83を設けることによって構成している。
【0038】
そしてこの当接部A83によって、図8(a)及び図8(b)に示すように、着座者の動作に合わせてヘッドレストA8が後傾した場合には当接部A83がハンガー本体21に適宜当接するため、ハンガーA2とヘッドレストA8が一定距離以上近接することが有効に回避されることとなる。
【0039】
このようにすることで、本実施形態に着座者の頭部が衣服に接しないものとしつつ、ハンガーA2に掛けた衣服がヘッドレストA8の動作によって揺れ動くということを有効に少なくし得るものとなっている。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0041】
例えばヘッドレストに椅子に対する取り付け位置は上記各実施形態に限定されることはなく、既存の種々の構成を適用することができる。また、ハンガーが当接部を介してヘッドレストに当接した際の動作を、部材の弾性変形を利用したものとしてもよい。
【0042】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る椅子を示す外観図。
【図2】同実施形態に係る接近防止手段を示す説明図。
【図3】同接近防止手段の動作説明図。
【図4】同実施形態の変形例1に斯かる接近防止手段を示す説明図。
【図5】同変形例2に係る幅調節部材25を示す説明図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る接近防止手段を示す外観図。
【図7】同接近防止手段を示す説明図。
【図8】同接近防止手段を示す動作説明図。
【符号の説明】
【0044】
1…椅子本体
C…椅子
2、A2…ハンガー
8…ヘッドレスト
81、A81…ヘッドレスト本体
82、A82…取付部
822…回転部材(軸部)
A823…回転部材
A83…当接部
X…接近防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子本体にヘッドレストを前後傾動可能に設けた椅子において、前記ヘッドレストの後方に配された椅子本体に対して前後傾動可能なハンガーと、前記ヘッドレストの背面に前記ハンガーが一定以上近接するのを防ぐ接近防止手段とを具備してなることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記接近防止手段が、前記ヘッドレストと前記ハンガーとの距離を常に一定に保持するものである請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記ヘッドレストと前記ハンガーとを一体に設けたものである請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記接近防止手段が、前記ヘッドレストに前記ハンガーの基端部を相対移動不能に装着するようにしたものである請求項2記載の椅子。
【請求項5】
前記ヘッドレストが、椅子本体に取り付けられる取付部と、この取付部に枢着された水平軸周りに回転可能な回転部材と、この回転部材に支持させたヘッドレスト本体とを備え、
前記接近防止手段が、前記ヘッドレストの前後傾動に伴って回転する回転部材に、前記ハンガーの基端部を相対移動不能に装着するようにしたものである請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記接近防止手段が、前記ヘッドレストに対して前記ハンガーの基端部を相対移動可能に装着するようにし、
前記接近防止手段が、前記ヘッドレスト及び前記ハンガーの何れか一方又は両方から突出し、前記ハンガー及び前記ヘッドレストが一定距離にまで近接する際に互いに当接する当接部を有するものである請求項1記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−291327(P2009−291327A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146277(P2008−146277)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】