説明

植木鉢、植木鉢を用いた植物の栽培方法

【課題】用土を順次追加していく栽培方法において、浅根性の植物の栽培に対する適正を向上させ、かつ、栽培に必要な労力を軽減させる。
【解決手段】植物の栽培に用いる植物栽培用容器(例えば植木鉢10)であって、上面が開口し容器の内側の空間が、複数の孔が形成された隔壁部(例えば植木鉢13)により複数の空間に仕切られたことを特徴とする。このような容器を用いることで、用土を順次追加していく栽培方法において、浅根性の植物の栽培に対する適正を向上させ、かつ、栽培に必要な労力を軽減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木鉢および植木鉢を用いた植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉢やプランター等の容器を用いた野菜等の栽培方法として、多くの方法が提案されている。本願に係る発明をした者の1人が先に出願し、登録された栽培方法もその1つである(特許文献1)。これは、上面が開口し底部に連通孔を有する大きさの異なる容器を複数個用意し、大きい容器から小さい容器の順番で、用土を詰めながら容器を重ねていき、一番小さな容器に野菜などの種若しくは苗を植えつけ、その種若しくは苗が所定の各生育段階に至った時に、容器相互の間に形成された収容空間内に目的とする野菜の各生育段階に応じて肥料を混合した用土を適量増土し、必要なら追肥しながら生育を進行させる栽培方法であり、それなりの良い結果を得ることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2960382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した栽培方法では、植物の生育段階に対応した用土の種類の数に応じた数の容器を上下に重ねる必要があるので、使用する用土の種類が多いと、その分容器全体の高さが増える。そのため、根が主に横方向に伸びる浅根性の植物の栽培には適さないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決すべく、植物の生育段階に対応した用土を順次追加していく栽培方法において、浅根性の植物の栽培に対する適正を向上させ、かつ、栽培に必要な労力を軽減させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の植物栽培用容器は、植物の栽培に用いる容器であって、上面が開口し、前記容器の内側の空間が、複数の孔が形成された隔壁部により複数の空間に仕切られたことを特徴とする。
【0007】
上記の構成としたことで、植物栽培用容器内部に複数の空間を、植物の生育段階に対応した用土を順次追加していく栽培方法に使用することができ、かつ、容器を複数重ね合わせる必要が無いので、根が横方向に伸びる浅根性の植物の栽培にも適した構造とすることができ、かつ、栽培に必要な労力を軽減させることができるようになる。
【0008】
前記隔壁部は、前記容器の重心軸を中心とする当該容器と同種の筒形状に形成された構成とされていてもよい。
【0009】
前記隔壁部は、前記容器の重心軸を中心とし、かつ、側面が前記容器の底壁部に対して垂直な当該容器と同種の筒形状に形成されていてもよい。
【0010】
前記容器及び前記隔壁部は、それぞれ、円筒形状又は多角筒形状に形成されていてもよい。
【0011】
前記隔壁部は、前記容器に対して着脱可能に形成された構成とされていてもよい。
【0012】
前記隔壁部は、該隔壁部の上方から下方に向けて空けられた孔であり、前記複数の孔それぞれの間を通る根切り孔が形成されていてもよい。すなわち、前記複数の孔と略垂直に交差し、隔壁部の形状に沿ってスリット状に形成された根切り孔が設けられていてもよい。
【0013】
前記隔壁部は、前記複数の孔を通る根を切断する切断手段を備える構成とされていてもよい。
【0014】
前記容器及び前記隔壁部は、それぞれ円筒形状に形成され、前記隔壁部は、前記容器の中心軸を中心にして回転可能に形成された構成とされていてもよい。
【0015】
また、本発明の植物の栽培方法は、植物の栽培方法であって、栽培対象とする植物の生育段階を2以上の段階に分類し、植物の栽培に用いる植物栽培用容器であって、上面が開口し、前記容器の内側の空間が、複数の孔が形成された隔壁部により複数の空間に仕切られた容器を用意し、前記複数に仕切られた空間の1つに、第1生育段階に応じた肥料を混合した用土を充填し、植物の種若しくは苗を植え付け、前記種若しくは苗の成長が第2生育段階に至ったときに、前記複数に仕切られた空間のうち、第2生育段階に応じた箇所に、第2生育段階に応じた用土を充填し、以後、前記栽培対象とする植物の成長に応じて、次の生育段階に応じた用土を前記複数に仕切られた空間に充填していくことにより、生育を進行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物の生育段階に対応した用土を順次追加していく栽培方法に使用される容器であって、浅根性の植物の栽培に適した構造の容器を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る植物栽培用容器の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る植物栽培用容器の一実施の形態の一部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る植物栽培用容器の一実施の形態を示す断面図である。
【図4】図3の植物栽培用容器に用土を充填し、野菜の苗を植生した状態を示す断面図である。
【図5】本発明と比較した植物の栽培方法の様子を示す断面図である。
【図6】本発明に係る植物栽培用容器の他の実施の形態を示す断面図である。
【図7】図6の植物栽培用容器に用土を充填し、野菜の苗を植生した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態を示す植木鉢10の斜視図である。図1に示すように、植木鉢10は、側壁部12と、側壁部12の内側に一体形成された隔壁部13(容器の中心に近いものから13a、13b)とを有する。
【0020】
図2は、本例における隔壁部13を示す斜視図である。図2に示したように、隔壁部13は、複数の孔Hが形成された筒形状ものである。植木鉢10には、重心軸を同じくする隔壁部13が1以上形成されているものとする。
【0021】
なお、本例においては隔壁部13の側面が植木鉢10の側壁部12と平行になるように傾斜した筒形状に形成されているものとするが、この傾斜角はこれに限定されるものではなく、例えば植木鉢10の中心方向に向けて傾斜するものであってもよい。
【0022】
次に、植木鉢10を使用して行う栽培方法を説明する。本実施例においては、隔壁部13が2つ(容器の中心に近いものから13a、13b)形成された植木鉢10を使用する場合を例にして説明を行う。図3は、本実施例に用いる植木鉢10の断面図である。図3に示すように、植木鉢10の底部11には排水用の排水孔11が複数形成されているものとする。
【0023】
先ず、栽培対象となる植物の生育段階を、複数の段階に分ける。本例においては、栽培対象として市販のピーマンの苗を用いて、この状態からのピーマンの生育段階を第1から第3生育段階に分類した。なお、ピーマンの根が隔壁部13a内の用土に十分に着根するまでを「第1生育段階」とし、その後ピーマンの根が隔壁部13aと隔壁部13bに挟まれた領域に伸びるまでを「第2生育段階」とし、それ以降を「第3生育段階」とした。なお、ピーマンは野菜の中でも根が放射状(横方向)に生長する種類のものである。
【0024】
次に、図4に示すように、植木鉢10における隔壁部13aの内側に、第1生育段階に適した用土14aを充填し、ピーマンの苗を植える。本例において用土14aは、赤土、堆肥、過燐酸石灰、化成肥料、その他を混合したものを使用した。
【0025】
用土14aの中にピーマンの根が十分に着根したら、隔壁部13aと隔壁部13bに挟まれた領域(隔壁部13aの外側かつ隔壁部13bの内側の領域)に第2生育段階に適した用土14bを充填する。なお、本例において用土14bは、赤土、堆肥、過燐酸石灰、化成肥料、その他を混合したものを使用した。
【0026】
さらに、ピーマンの根が用土14bにまで達したら、隔壁部13bと側壁部12に挟まれた領域に第3生育段階に適した用土14cを充填する。なお、本例において用土14cは、赤土、堆肥、過燐酸石灰、化成肥料、その他を用土14bとは異なる割合で混合したものを使用した。
【0027】
本発明との比較対象として、図5に示すように、深型10号鉢(φ=30cm、有効深さ約23cm)を3つ重ねた深さを有する鉢15(φ=30cm、有効深さ約69cm)を用いて、容器の中心から用土14a、用土14b、用土14cの順に、本例で用いた量と同じ量の用土を充填した状態で市販のピーマンの苗B植えた。本実施例の結果を試験区として、比較対象の結果を対象区として表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
以上に説明したように、上述した一実施の形態では、植物の栽培に用いる植物栽培用容器(例えば植木鉢10)は、上面が開口し、容器(植木鉢10)の内側の空間が、複数の孔(孔H)が形成された隔壁部13により複数の空間に仕切られるように形成されたことを特徴とする構造としているので、隔壁部13により仕切られた空間毎に用土を順次追加していくことができる。また、用土を栽培対象の植物に対して放射状(横方向)に追加していくことになるので、根が放射状(横方向)に伸びる浅根性の植物の栽培に有効である。さらに、容器を重ねる必要が無いので、栽培に必要な労力も軽減される。
上記の構成としたことで、植物栽培用容器内部に複数の空間を、植物の生育段階に対応した用土を順次追加していく栽培方法に使用することができ、かつ、容器を複数重ね合わせる必要が無いので、根が横方向に伸びる浅根性の植物の栽培にも適した構造とすることができ、かつ、栽培に必要な労力を軽減させることができるようになる。
【0030】
また、上述した実施の形態では、隔壁部13は、植物栽培用容器(植木鉢10)の重心軸を中心とする植物栽培用容器と同種の筒形状に形成されていてもよい。さらに、植物栽培用容器及び隔壁部13は、それぞれ、円筒形状又は多角筒形状に形成されていてもよい。このような構造とすることで、栽培対象とする植物を囲むように用土を追加していくことができるようになる。
【0031】
また、上述した実施の形態では特に言及していないが、隔壁部13は、容器(植木鉢10)の重心軸を中心とし、かつ、側面が容器の底壁部16に対して略垂直な当該容器と同種の筒形状に形成されていてもよい。このような構造とすることで、隔壁部13に形成された複数の孔(孔H)から用土14が隔壁部13の外側に出ることを防ぐことができるようになる。
【0032】
また、上述した実施の形態では、隔壁部13は容器(植木鉢10)に対して一体形成されているものとしたが、着脱可能に形成されていても良い。この場合、例えば、植木鉢10の底壁部16に、隔壁部13を嵌め込むための嵌合溝を設けるようにすればよい。このような構造とすることで、容器内部の空間を任意の間隔で仕切ることができるようになり、また、容器の手入れもしやすくなる。
【0033】
また、上述した実施の形態では、植物の栽培方法であって、栽培対象とする植物(例えばピーマン)の生育段階を2以上の段階に分類し、植物の栽培に用いる植物栽培用容器(植木鉢10)であって、上面が開口し、容器(植木鉢10)の内側の空間が、複数の孔Hが形成された隔壁部13により複数の空間に仕切られた容器を用意し、複数に仕切られた空間の1つに、第1生育段階に応じた肥料を混合した用土14(例えば用土14a)を充填し、植物の種若しくは苗を植え付け、種若しくは苗の成長が第2生育段階に至ったときに、複数に仕切られた空間のうち、第2生育段階に応じた箇所に、第2生育段階に応じた用土14(例えば用土14b)を充填し、以後、栽培対象とする植物の成長に応じて、次の生育段階に応じた用土14を複数に仕切られた空間の1つに充填していくことにより、生育を進行させることを特徴とする構成としたので、栽培対象の生育段階に合わせた用土を必要なだけ使用することができ、かつ、容器を複数積み重ねる必要が無いので、積み重ねた容器に用土を追加していく栽培方法に比して作業労力を大幅に軽減させることができる。また、用土を栽培対象の植物に対して放射状(横方向)に追加していくので、根が放射状(横方向)に伸びる浅根性の植物の栽培に有効である。
【0034】
なお、上述した実施の形態では特に言及していないが、隔壁部13に、隔壁部13の上方から下方に向けて空けられた孔であり、複数の孔Hそれぞれの間を通る根切り孔15が形成されていてもよい。すなわち、前記複数の孔と略垂直に交差し、隔壁部の形状に沿ってスリット状に形成された根切り孔が設けられていてもよい。
【0035】
以下、根切り孔15を含む本発明の一実施の形態について説明する。
【0036】
図6は、本発明の一実施の形態の例を示す植木鉢20の断面図である。図6に示すように、植木鉢20は、上述した植木鉢10の隔壁部13に、根切り孔15がスリット状に形成されたものである。根切り孔15は、例えば市販の鋏を用いて、植木鉢20の外部から孔Hを通る根を切断できるように形成されているものとする。
【0037】
次に、植木鉢20を使用して行う栽培方法を説明する。本実施例においては、植木鉢20を使用する場合を例にして説明を行う。なお、本例においては、隔壁部13の側面が傾斜を有さず、底壁部16に対して垂直であるものを使用することとする。
【0038】
本例においては、栽培対象としたピーマンが収穫するのに十分に生育するまで上述した実地の形態と同様の方法を使用した。そのため、その過程についての説明は省略することとする。
【0039】
図7に示すようにピーマンの根が用土14cにまで達し、ピーマンが、収穫するのに十分に生育した状態になったら、根切り孔15aを利用して根切りを行う。このとき、上述したように根切り孔15aは、例えば市販の鋏を用いて、植木鉢20の外部から孔Haを通る根を切断できるように形成されているので、根切りの際に用土14aを掘り返す必要がない。
【0040】
なお、この状態で1週間程度経過すると、ピーマンが用土から吸収した化学成分が消化され、化学成分の含有量が少ないピーマンとなる。
【0041】
以上に説明したように、上述した一実施の形態では、隔壁部13に、隔壁部13の上方から下方に向けて空けられた孔であり、複数の孔Hと交差するように形成された根切り孔15が形成された構造となっているので、根切り作業に要する労力を軽減させることができるようになる。
【0042】
すなわち、根切り孔15を利用して植物の根切りを行うことができるので、用土を掘り返すなどの作業が不要となり、作業労力を軽減できるようになる。
【0043】
なお、上述した一実施の形態では特に言及していないが、隔壁部13は、複数の孔Hを通る根(例えばピーマンの根)を切断する切断手段を備えた構成とされていてもよい。この場合、例えば、隔壁部13に根切り刃18(図示せず)を備える構成とすればよい。このような構造とすることで、根切りを行う際に利用できる方法の選択肢が増え、根切りの作業効率を向上させることができるようになる。
【0044】
ここで、根切り刃18による切断を可能とするためには、例えば、容器(植木鉢10、20)及び隔壁部13が、それぞれ円筒形状に形成されている場合に、隔壁部13を、容器と独立して回転可能となるように設けることなどが挙げられる。このような構造とすることで、隔壁部13を動かすことにより、孔Hを通る植物の根を切断することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、植物の生育段階に対応した用土を順次追加していく栽培方法に使用される容器であって、浅根性の植物の栽培に適した構造の容器を提供するのに有用である。
【符号の説明】
【0046】
10 植木鉢
11 排水孔
12 側壁部
13 隔壁部
14 用土
15 根切り孔
16 底部
18 根切り刃
H 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の栽培に用いる植物栽培用容器であって、
上面が開口し、
前記容器の内側の空間が、複数の孔が形成された隔壁部により複数の空間に仕切られた
ことを特徴とする植物栽培用容器。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記容器の重心軸を中心とする当該容器と同種の筒形状に形成された
請求項1記載の植物栽培用容器。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記容器の重心軸を中心とし、かつ、側面が前記容器の底壁部に対して略垂直な当該容器と同種の筒形状に形成された
請求項1または請求項2に記載の植物栽培用容器。
【請求項4】
前記容器及び前記隔壁部は、それぞれ、円筒形状又は多角筒形状に形成された
請求項2または請求項3に記載の植物栽培用容器。
【請求項5】
前記隔壁部は、前記容器に対して着脱可能に形成された
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の植物栽培用容器。
【請求項6】
前記隔壁部は、該隔壁部の上方から下方に向けて空けられた孔であり、前記複数の孔それぞれの間を通る根切り孔が形成された
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の植物栽培用容器。
【請求項7】
前記隔壁部は、前記複数の孔を通る根を切断する切断手段を備える
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の植物栽培用容器。
【請求項8】
前記容器及び前記隔壁部は、それぞれ円筒形状に形成され、
前記隔壁部は、前記容器の中心軸を中心にして前記容器と独立して回転可能に形成された
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の植物栽培用容器。
【請求項9】
植物の栽培方法であって、
栽培対象とする植物の生育段階を2以上の段階に分類し、
植物の栽培に用いる植物栽培用容器であって、上面が開口し、前記容器の内側の空間が、複数の孔が形成された隔壁部により複数の空間に仕切られた容器を用意し、
前記複数に仕切られた空間の1つに、第1生育段階に応じた肥料を混合した用土を充填し、植物の種若しくは苗を植え付け、
前記種若しくは苗の成長が第2生育段階に至ったときに、
前記複数に仕切られた空間のうち、第2生育段階に応じた箇所に、第2生育段階に応じた用土を充填し、
以後、前記栽培対象とする植物の成長に応じて、次の生育段階に応じた用土を前記複数に仕切られた空間に充填していくことにより、生育を進行させる
ことを特徴とする植物の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−193812(P2010−193812A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43399(P2009−43399)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(509040813)株式会社昭和村農園 (10)
【Fターム(参考)】