説明

植栽基盤、緑地構造体、緑地造成方法

【課題】自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の荷重を十分に受け止めることができ、かつ、設置が容易で十分な保水量を有し、地披植物を十分に育成させることができ、緑地面積を広く確保することが可能な植栽基盤を提供する。
【解決手段】植栽基盤2は、現地地盤Gの上に敷設される混合土層11と、混合土層11の上に植栽される地披植物3と混合土層11との間に介在される板状部材21を備えている。混合土層11は、互いに当接して間に地披植物3の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体12とその各硬質粒状体12の間の間隙に充填される土壌13とを有しており、板状部材21には、地披植物3の根を挿通可能な開口部22が形成されている。これにより、板状部材21の開口部22と混合土層11の土壌13中を通過させて地披植物3の根を現地地盤Gまで到達させ、現地地盤Gから地披植物3に水分を補給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駐車場や歩道のように上方から所定の荷重が付加される場所に地披植物を育成させる植栽基盤、かかる場所に設置される緑地構造体、及びかかる場所に地披植物で覆われた緑地を造成する緑地造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素の排出量を削減する地球温暖化防止策等の観点から、駐車場や歩道等を芝草等の地披植物で覆う緑地化が積極的に行われている。そして、駐車場や歩道に植栽された地披植物を、自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の荷重から保護する技術が、従来から種々提案されている。
【0003】
図9及び図10は、第1の従来技術を説明する図であり、地披植物が植えられた植栽基盤の断面図である。第1の従来技術における植栽基盤101、102は、図9及び図10に示すように、現地地盤104の上に例えば粒径が数十ミリメートル以下の比較的細かい砕石105を敷き詰めて転圧し、その上に複数の保護資材111、121を平面状に広がるように配置し、各保護資材111、121の間に土壌107を敷設することによって構成されており、土壌107の上に地披植物106が植栽されている。
【0004】
図9に示す保護資材111は、略円柱状の複数の支持脚112と、これら各支持脚112を互いに所定間隔を有して起立させた状態に連結するベース部113とを有する合成樹脂製のシート状の部材からなり、このシート状の部材を複数枚、平面状に並べてつなぎ合わせて砕石層105の上に載せ、支持脚112の頭頂部が地披植物106よりも若干上方に突出する高さ位置となるように設置されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
図10に示す保護資材121は、立方体形状を有する煉瓦やコンクリート等のブロック部材122からなり、このブロック部材122を互いに所定間隔をおいて平面状に広がるように砕石層105の上に載せて設置している。そして、各ブロック部材122の間に土壌107を敷設し、その土壌107の上に地披植物106を植栽して、ブロック部材122の上面が地披植物106よりも若干上方に突出する高さ位置となるように設置している。
【0006】
上記した第1の従来技術では、例えば駐車場又は歩道に使用された場合に、自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の荷重を保護資材111、121と砕石層105で支持して、地披植物106を保護し、保護資材111、121の沈み込みを防止している。
【0007】
図11は、第2の従来技術を説明する図であり、地披植物106が植えられた植栽基盤103の断面図である。第2の従来技術における植栽基盤103は、図11に示すように、現地地盤104の上に例えばポーラスコンクリート等、内部に連続した空隙部を有する連続空隙硬化体131を敷設し、その上に砕石と土壌を混合した混合土を載せて所定厚さで広がる混合土層132を形成し、その混合土層132の上に地披植物106を植えることによって構成されている。
【0008】
上記した第2の従来技術では、例えば駐車場又は歩道に使用された場合に、駐車された自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の荷重を、混合土層132の砕石と連続空隙硬化体131で支持することによって、地披植物106を保護し、地披植物106の沈み込みを防止している。そして、混合土層132の土壌及び連続空隙硬化体131の空隙部に地披植物106の根を入り込ませて、地披植物106の根の育成を確保している(例えば、特許文献2を参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2007−43978号公報
【特許文献2】特開平11−21898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、第1の従来技術の場合、現地地盤104と土壌107との間に砕石層105が介在されているので、地披植物106は、地披植物106の根を砕石層105よりも下方に伸ばすことができず、現地地盤104から水分を採ることができない。従って、土壌107の保水量も限られていることから、定期的な散水を高頻度で行う必要があり、コスト高を招いていた。例えば、土壌層107の厚みが100ミリメートル、土壌107の保水率が30パーセントの場合、1平方メートルあたりの保水量は30リットルになる。1平方メートルあたりの1日の蒸散量が5リットルの地披植物106を栽培した場合には、6日に1回の散水が必要となる。
【0011】
特に、図9に示す従来技術の場合は、専用の保護資材111を用意する必要があり、その設置工事も大がかりとなる。従って、材料費及び工事費が高価であるという問題を有している。
【0012】
また、図10に示す従来技術の場合は、地披植物106の横のつながりが保護資材121によって遮断されてしまうので、例えば地披植物106が芝草である場合には匍匐茎の育成が妨げられるおそれがある。従って、ある箇所の芝草が死滅した場合に、その周囲の芝草によって回復することができない、あるいは回復が遅くなるという問題を有している。また、保護資材121がブロック部材であると、その分だけ地披植物106を栽培できる面積が狭くなり、緑化率が低いという問題を有している。
【0013】
そして、第2の従来技術の場合には、連続空隙硬化体131の強度を確保する必要があることから空隙部の大きさ及びその量が制限されており、さらに、空隙部に充填される土壌が少ないので、連続空隙硬化体131の保水量が少なく、頻繁に散水する必要があるという問題を有している。
【0014】
また、連続空隙硬化体131の空隙部に土壌を充填する必要があり、製造及び設置に手間がかかり、高コストになるという問題を有している。また、ポーラスコンクリートを用いて連続空隙硬化体を構成した場合には、製造や廃棄に手間とコストがかかるという問題がある。
【0015】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の上方からの荷重を受け止めることができ、かつ、設置が容易で十分な保水量を有し、地披植物を十分に育成させることができ、緑地面積を広く確保することが可能な植栽基盤、緑地構造体、緑地造成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明の植栽基盤は、上方から荷重が付加される場所に地披植物を育成させるための植栽基盤であって、現地地盤の上に敷設された状態で互いに当接して間に前記地披植物の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体とその各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌とを有する混合土層と、混合土層の上に植栽される地披植物と混合土層との間に介在されて平面状に延在し且つ地披植物の根を挿通可能な開口部を有する板状部材を有することを特徴としている。
【0017】
本発明の植栽基盤によれば、板状部材の開口部と混合土層の土壌中を通過させて地披植物の根を現地地盤まで到達させることができる。従って、地披植物の根を深く広く張ることができ、現地地盤から地披植物に水分を補給させることができる。従って、保水量が多くなり、定期的な散水を省略することができ、あるいは散水の時間間隔を広げることができる。
【0018】
そして、地披植物の上方から加えられる荷重を板状部材で受け止めて分散し、混合土層の硬質粒状体から現地地盤に伝達することができる。従って、荷重による沈み込みを防ぎ、また、各硬質粒状体の間の間隙に充填された土壌の固結を防ぐことができる。従って、例えば駐車場や歩道に用いられた場合には、自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の荷重から地披植物を保護することができる。
【0019】
本発明による植栽基盤の好ましい実施の形態は、混合土層と地披植物の間に土壌層を介在させて、その土壌層に板状部材を埋没させる構成とすることを特徴としている。これによれば、混合土層の上に板状部材を載せた状態で土壌を敷設して土壌層を形成し、土壌層に板状部材を埋没させることによって、植栽基盤を造成することができる。従って、上面が平らな植栽基盤を簡単に造成することができ、地披植物を容易に植栽することができる。そして、土壌層によって保水性を高めることができ、また、地披植物の根付きを良好なものとすることができ、地披植物をより積極的に育成させることができる。
【0020】
また、本発明による植栽基盤の好ましい実施の形態では、板状部材を、エキスパンドメタル、パンチングメタル、グレーチングのいずれかで構成してもよい。これによれば、板状部材に、既存の汎用品をそのまま利用することができ、専用品を購入するよりも、材料コストを抑えることができ、安価に施工することができる。
【0021】
また、硬質粒状体は、砕石で且つその粒径が20ミリメートルから100ミリメートルの間の大きさであることが好ましい。そして、各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌の量が、前記間隙の体積の1倍から1.2倍の量であることが好ましい。また、地披植物の例として芝草が挙げられる。
【0022】
本発明の緑地構造体によれば、上方から荷重が付加される場所に設置される緑地構造体であって、現地地盤の上に敷設され、互いに当接して間に地披植物の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体と各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌とを有する混合土層と、混合土層の上に植栽された地披植物を有する植物層と、植物層と混合土層との間に介在されて平面状に延在し且つ地披植物の根を挿通可能な開口部を有する板状部材を有することを特徴としている。
【0023】
また、本発明の緑地造成方法によれば、上方から荷重が加えられる場所に地披植物で覆われた緑地を造成する緑地造成方法において、現地地盤の上に、互いに当接して間に地披植物の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体と各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌とを有する混合土を敷設して混合土層を形成する工程と、地披植物の根を挿通可能な開口部を有する板状部材を混合土層の上面に沿って延在するように載せる工程と、混合土層の上に板状部材が埋没する高さ位置まで土壌を敷設して土壌層を形成する工程と、土壌層の上に地披植物を植栽して植物層を形成する工程を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、板状部材の開口部と硬質粒状体の間の間隙を通過させて地披植物の根を現地地盤まで到達させることができ、現地地盤から地披植物に水分を補給させることができる。従って、定期的な散水を省略することができ、あるいは散水の時間間隔を広げることができる。
【0025】
そして、地披植物の上方から加えられる荷重を板状部材で受け止めて分散し、混合土層の硬質粒状体から現地地盤に伝達することができる。従って、荷重による沈み込みを防ぎ、また、各硬質粒状体の間の間隙に充填された土壌の固結を防ぐことができる。従って、例えば駐車場や歩道に用いられた場合には、自動車の輪圧や歩行者の踏圧等の荷重から地披植物を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態について以下に図面を用いて説明する。
図1は、緑地構造体1を一部断面により示す斜視図、図2は、図1のI部を拡大して示す断面図、図3は、板状部材21の構成を説明する図である。
【0027】
緑地構造体1は、駐車場を緑地化したものであり、自動車1台分の駐車スペースを有している。緑地構造体1は、図1に示すように、現地地盤Gの上に形成された植栽基盤2と、植栽基盤2の上に植栽された地披植物3によって構成されている。
【0028】
植栽基盤2は、図2に示すように、混合土層11と板状部材21を備えている。混合土層11は、混合土を所定の厚さで現地地盤Gの上に敷き詰めたものである。混合土は、敷設された状態で互いに当接して間に地披植物3の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体12と各硬質粒状体12の間の間隙に充填される土壌13とからなる。
【0029】
板状部材21は、混合土層11と地披植物3との間に介在されて平面状に延在するように設置される。板状部材21は、図1に示すように、タイヤ通過部の下方に位置するように混合土層11の上に載せられる。そして、混合土層11の上に土壌を敷設して板状部材が埋没する土壌層31が形成され、その土壌層31の上に地披植物3が植栽されて植物層41が形成される。
【0030】
混合土層11は、図2に示すように、硬質粒状体12と土壌13とを混合させた混合土を略一定の厚さで現地地盤Gの上に敷き詰めたものであり、混合土層11の厚さは、50ミリメートル以上が好ましく、特に、50ミリメートルから200ミリメートルまでの範囲が特に好ましい。本実施の形態では、約100ミリメートルの厚さで敷き詰められている。
【0031】
硬質粒状体12は、例えば砕石からなり、互いに当接するように敷設された状態で間に地披植物3の根を挿通可能な間隙を形成する大きさ及び形状を有している。硬質粒状体12の強度は、上方から荷重が加えられた場合に土壌13の固結を防ぐ程度の強度を備えていればよい。
【0032】
硬質粒状体12の大きさは、10ミリメートル以下の粒径を含まないものであればよく、20ミリメートルから100ミリメートルの粒径を有するものが好ましい。本実施の形態では、粒径が30ミリメートルから50ミリメートルの大きさを有する砕石が用いられている。硬質粒状体12の大きさが10ミリメートル以下のものは、土壌13が入り込む間隙が小さくなり、好ましくない。
【0033】
混合土層11の土壌13は、互いに当接するように敷設された各硬質粒状体12の間に隙間なく充填されている。土壌13は、保水性が保てるものであればよく、有機物を混合してもよい。土壌13の量は、各硬質粒状体12の間に形成される間隙の体積の約1倍から1.2倍の量が好ましく、本実施の形態では、各硬質粒状体12の間隙の体積と同量(1倍)に設定されている。
【0034】
土壌13の量は、混合のばらつきや、土壌13の変更を考慮して決定される。各硬質粒状体12の間隙の体積よりも土壌13の量が少ないと、混合土層11内に空隙が形成されてしまい、上方からの荷重により混合土層11が変形しやすく、好ましくない。また、土壌13の量が多すぎると、硬質粒状体12によって荷重を伝達することができず、土壌13が必要以上に締め固められ、土壌13中の酸素不足や排水不良によって地披植物3の育成が阻害され、地披植物3が枯死するおそれがあり、好ましくない。
【0035】
板状部材21は、荷重のかかる部分である、自動車の左右のタイヤが通る場所に設置されている。板状部材21は、図1に示すように、自動車の左右のタイヤ間隔と一致する距離だけ離間して互いに平行に設置されている。
【0036】
各板状部材21は、タイヤTのトレッド面よりも広い横幅と(例えば、図3を参照)、駐車スペースの長手方向に亘る長さ(例えば、図1を参照)を有しており、本実施の形態では、横幅300ミリメートル、長さ1000ミリメートル、厚さ10ミリメートルの大きさに設定されている。
【0037】
板状部材21には、図3(a)に示すように、地披植物3の根が進入して下方に伸びることが可能な複数の開口部22が設けられている。板状部材21は、荷重を板状部材21全体で受けて分散し、局所的な沈み込みを防止し、硬質粒状体12の間に充填された土壌13の締め固めを防止することができる。
【0038】
板状部材21は、例えばエキスパンドメタル、パンチングメタル、グレーチング等の既存の汎用品をそのまま利用することができる。従って、専用品を購入するよりも、コストを抑えることができ、安価に施工することができる。
【0039】
板状部材21の材質は、荷重を受け止めることができる硬質のものであればよく、例えば金属製材料に代えて硬質プラスチック等の樹脂製材料としてもよい。本実施の形態では、図3に示すように、金属製の一対の棒状部材23、24の間に、エキスパンドメタル25を介在させて、エキスパンドメタル25の幅方向両端部を各棒状部材23、24にそれぞれ溶接して固定することによって構成されている。
【0040】
上記した構成を有する板状部材21は、パンチングメタルやグレーチング等で構成したものと比較して、重量を軽くすることができる。従って、施工作業の容易化、及び自重による沈み込みを防ぐことができる。
【0041】
また、一対の棒状部材23、24の間隔をタイヤTのトレッド面よりも狭く構成した場合には、一対の棒状部材23、24でタイヤTの輪圧荷重を受け止めることができる。そして、一対の棒状部材23、24の間には、タイヤTの輪圧荷重が付加されないので、かかる領域を地披植物3の育成スペースとして確保することができる。
【0042】
なお、板状部材21の設置場所は、混合土層31と地披植物3との間に限定されるものではなく、混合土層31の内部に設置してもよい。また、板状部材21をタイヤTが通過する場所のみではなく、地披植物3が育成される駐車場全面に設置してもよい。
【0043】
土壌層31は、混合土層11の上に、板状部材21を埋没させる厚さで土壌を敷き詰めることによって構成されている。本実施の形態では、約20ミリメートルの厚さで敷き詰められている。土壌は、混合土層11の土壌13と同様に、保水性が保てるものであればよく、有機物を混合してもよい。
【0044】
土壌層31を設けることによって、上面が平らな植栽基盤2を簡単に造成することができ、地披植物3を容易に植栽することができる。また、保水性を高めることができ、地披植物3の根付きを良好なものとすることができる。従って、地披植物3をより積極的に育成させることができる。
【0045】
地披植物3は、駐車スペース全面に亘って植栽されている。地披植物3は、本実施の形態では、芝草51が用いられているが、上方から荷重に耐えられるものであれば他の植物でもよい。芝草51は、土壌層31の上面に沿って伸びる匍匐茎52と、土壌層31の上面から上方に向かって伸びる直立茎53を備えている。
【0046】
上記構成を有する緑地構造体1によれば、板状部材21の開口部22と混合土層11の土壌13中を通過させて地披植物3の根を現地地盤Gまで到達させることができる。従って、地披植物3の根を深く広く張ることができ、現地地盤Gから地披植物3に水分を補給させることができる。従って、保水量が多くなり、定期的な散水を省略することができ、あるいは散水の時間間隔を広げることができる。従って、頻繁な散水を行うことなく、地披植物3を健全に育成させることができる。
【0047】
そして、地披植物3の上方から加えられる自動車の荷重を、板状部材21で受け止めて板状部材21全体に分散し、混合土層11の硬質粒状体12から現地地盤Gに伝達することができ、荷重による沈み込みを防ぐことができる。従って、タイヤTが通過する部分に轍が形成されるの防ぐことができる。また、各硬質粒状体12の間の間隙に充填された土壌13の固結を防ぐことができる。
【0048】
そして、板状部材21は、混合土層11と地披植物3との間に介在された構成を有するので、例えば地披植物3が芝草51である場合には、匍匐茎52の育成を妨げることがない。従って、芝草51がダメージを受けた場合に、迅速に回復させることができる。また、板状部材21によって地披植物3の植栽面積が制限されることはなく、緑地面積を広く確保することができる。また、板状部材21は、土壌層31に埋没されており、外部に露出していないので、例えば駐車後に自動車から降りて歩行する際に、足が引っかかることがなく、良好な歩行性を得ることができる。
【0049】
図4は、上記した緑地構造体1の変形例であり、図2に対応する図である。緑地構造体1において土壌層31は必須ではなく、図4に示すように、板状部材21を混合土層11に埋設する構成としてもよい。
【0050】
また、図5は、上記した緑地構造体1のさらに他の変形例であり、図2に対応する図である。板状部材21の設置場所は、タイヤTが通過する場所に限定されるものではなく、例えば駐車スペース全面に亘って延在するように設置してもよい。
【0051】
[実証実験]
次に、図6から図8に基づいて、発明者等が行った実証実験の概要とその結果について説明する。この実験は、地披植物3の沈み込みと、傷み具合を実証したものである。
【0052】
図6は、実験に用いた駐車場の構成を模式的に示す断面図、図7は、轍の深さの測定結果を示すグラフである。
実験方法は、図6に示すように、自動車の片輪側のみに板状部材21を設置した駐車場を用意し、駐車場の稼働率が3割から5割になるように1週間ごとに駐車し、約2ヶ月後に轍の深さを測定した。混合土層の厚さを100ミリメートル、土壌層の厚さを20ミリメートル、地披植物の厚さを約40ミリメートルに設定した。
【0053】
実験結果は、図7に示すように、板状部材21が設けられていない車輪側では、轍の深さが約15ミリメートルであったのに対して、板状部材21が設けられている車輪側では、轍の深さは、エキスパンドメタルの場合に約7ミリメートル、グレーチングの場合に8ミリメートルであり、従来の点状保護材(例えば、図9の保護資材111を参照)やブロック部材(例えば、図10の保護資材121を参照)を用いたものとほぼ同様の轍の深さになった。
【0054】
以上の実験結果より、エキスパンドメタルやグレーチング等の板状部材21を混合土層11と地披植物3との間に介在させることによって轍の深さが深くなるのを抑えることができることが明らかとなった。これは、タイヤTからの荷重を板状部材21が受け止めて分散し、混合土層11の硬質粒状体12から現地地盤Gに伝達しており、荷重による沈み込みを防ぎ、混合土層11の土壌13の固結を防いでいるためであると結論付けることができる。
【0055】
図8は、タイヤ通過部分における地披植物3の傷み具体を示す表である。実験方法は、図6に示すように、自動車の片輪側のみに板状部材21を設置した駐車場を用意し、定期的に自動車を駐車させて地披植物3の傷み程度を測定した。駐車場の稼働率は、3割から5割であった。
【0056】
実験結果は、図8に示すように、混合土層の厚さが200ミリメートル、ピートモスなし、土壌量が5割の緑地構造体1において、タイヤTによる地披植物3の傷みが少ないことがわかった。特に、従来の点状保護材と比較して地披植物3の傷みが少なく、本発明の方が優位性を有することがわかった。
【0057】
以上の実験結果より、芝草の傷みを抑えることができることが明らかとなった。これは、タイヤTからの荷重を板状部材21が受け止めて分散し、混合土層11の硬質粒状体12から現地地盤Gに伝達しているためであると結論付けることができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0059】
例えば、上記した実施の形態では、駐車場の場合を例に説明したが、例えば、歩行者が歩く歩道等のように、上方から繰り返し荷重が加えられる場所にも十分に適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。特に、従来技術と比較して地披植物3から上方に突出する突起物が存在しないので、歩行者の足が引っかかることがなく、良好な歩行性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態における緑地構造体の構成を部分的に断面で示す全体図。
【図2】図1のI部を拡大して示す断面図。
【図3】板状部材の構成を説明する図。
【図4】本実施の形態の変形例を示す断面図。
【図5】本実施の形態のさらに他の変形例を示す断面図。
【図6】試験に用いた駐車場の構成を模式的に示す断面図。
【図7】轍の深さの測定結果を示すグラフ。
【図8】タイヤ通過部分の芝生の傷み具体を示す表。
【図9】従来技術を説明する図。
【図10】従来技術を説明する図。
【図11】従来技術を説明する図。
【符号の説明】
【0061】
1 緑地構造体
2 植栽基盤
3 地披植物
11 混合土層
12 硬質粒状体
13 土壌
21 板状部材
22 開口部
31 土壌層
41 植物層
51 芝草
52 匍匐茎
53 直立茎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から荷重が付加される場所に地披植物を育成させるための植栽基盤であって、
現地地盤の上に敷設された状態で互いに当接して間に前記地披植物の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体と該各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌とを有する混合土層と、
該混合土層の上に植栽される前記地披植物と前記混合土層との間に介在されて平面状に延在し且つ前記地披植物の根を挿通可能な開口部を有する板状部材と、
を有することを特徴とする植栽基盤。
【請求項2】
前記混合土層と前記地披植物の間に土壌層を介在させて、該土壌層に前記板状部材を埋没させる構成とすることを特徴とする請求項1に記載の植栽基盤。
【請求項3】
前記板状部材は、エキスパンドメタル、パンチングメタル、グレーチングのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽基盤。
【請求項4】
前記硬質粒状体は、砕石で且つその粒径が20ミリメートルから100ミリメートルの間の大きさであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の植栽基盤。
【請求項5】
前記各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌の量が、前記間隙の体積の1倍から1.2倍の量であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の植栽基盤。
【請求項6】
前記地披植物が芝草であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の植栽基盤。
【請求項7】
上方から荷重が付加される場所に設置される緑地構造体であって、
現地地盤の上に敷設され、互いに当接して間に地披植物の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体と各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌とを有する混合土層と、
該混合土層の上に植栽された地披植物を有する植物層と、
該植物層と前記混合土層との間に介在されて平面状に延在し且つ地披植物の根を挿通可能な開口部を有する板状部材と、
を有することを特徴とする緑地構造体。
【請求項8】
上方から荷重が加えられる場所に地披植物で覆われた緑地を造成する緑地造成方法において、
現地地盤の上に、互いに当接して間に前記地披植物の根を挿通可能な間隙を形成する硬質粒状体と該各硬質粒状体の間の間隙に充填される土壌とを有する混合土を敷設して混合土層を形成する工程と、
前記地披植物の根を挿通可能な開口部を有する板状部材を前記混合土層の上面に沿って延在するように載せる工程と、
前記混合土層の上に前記板状部材が埋没する高さ位置まで土壌を敷設して土壌層を形成する工程と、
該土壌層の上に前記地披植物を植栽して植物層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする緑地造成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−11809(P2010−11809A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175852(P2008−175852)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】