植物の水ストレス計測方法及び装置
【課題】 植物のある現場で植物の水ストレスの指標である水ポテンシャル値を迅速に且つ高精度に得ることができるようにする。
【解決手段】 木本類のメロンでは結実しない時点の基準日の葉を、又は草本類のメロンでは天葉の葉を波長が異なる発光ダイオードを複数用いた光源の光を照射し、葉の透過光又は反射光の光量を第2検出器15で測定し、又その際の光源の光量と標準白色板からの反射光又は透過光の光量から分光特性値A01〜A0Nを数aにより算出し、測定した葉のプレッシャチャンバ法の水ポテンシャル値Ψ0とから測定時tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を求め、その後葉の測定からAt1〜AtNのデータを算出して、これを一般式に代入して水ポテンシャル値を算出する。
【解決手段】 木本類のメロンでは結実しない時点の基準日の葉を、又は草本類のメロンでは天葉の葉を波長が異なる発光ダイオードを複数用いた光源の光を照射し、葉の透過光又は反射光の光量を第2検出器15で測定し、又その際の光源の光量と標準白色板からの反射光又は透過光の光量から分光特性値A01〜A0Nを数aにより算出し、測定した葉のプレッシャチャンバ法の水ポテンシャル値Ψ0とから測定時tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を求め、その後葉の測定からAt1〜AtNのデータを算出して、これを一般式に代入して水ポテンシャル値を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカン等の木本類やメロン等の草本類を中心とした植物の水ストレスの評価指標である水ポテンシャル値を光検出器を使って計測する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の水ストレスの状態は、水ポテンシャル値を測定し、水ポテンシャル値で評価されている。
この水ストレスの従来の測定方法としては、葉に圧力をかけて水ポテンシャルを直接測定するプレッシャチャンバ法と、緑葉の分光反射率特性から計測する方法とがある。
【0003】
前者のプレッシャチャンバ法は、葉柄のみを外に出して圧力容器に納めた葉に、圧搾空気を用いて徐々に高い圧力をかけていけば、圧力に耐えきれなくなった葉内の水分が葉柄から吹き出してくる。プレッシャチャンバ法とは、この水分が吹き出すときの圧力容器内の圧力を、葉が水を保持する力と見なす方法である。
尚、この方法では、緑葉裏面の気孔が閉じている深夜に葉をサンプルして測定することが必要である。
【0004】
後者の分光反射率特性による計測方法は、本発明者がその方法を開発して特開2005−308733号公報に開示されている。緑葉に光を照射し、その反射光・透過光を分光して500〜800nmの連続波長に対して分光反射率を算出し、それが急激に立ち上る(一次微分が高い)波長域(レッドエッジ)を求め、そのレッドエッジの又はその中心波長の推移から水ストレスを判断するものである。
【0005】
前者のプレッシャチャンバ法の水ポテンシャル直接測定法は、その水ポテンシャル値は信頼性があるが、緑葉裏面の気孔が閉じた深夜でなければ測定できず、現場でその水ストレスを算出して表示することができない。
【0006】
後者の分光反射率特性では、計測に分光器が必要となって計測装置が高価となり、又精度がまだ充分でない場合があった。
【特許文献1】特開2005−308733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来の植物のストレスの計測法の問題点を解消し、プレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値に近づけられて精度がよく、しかも高価な分光器を使用せずに現場で水ストレスが算出できる、植物のストレスの計測法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 測定対象が木本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、木本類の植物が結実する前の基準日において、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準日0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準日の測定した葉のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準日0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意時点tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、基準日0以後における時点tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
2) 多変量解析法が重回帰分析法である、前記1)記載の木本類の植物の水ストレス計測方法
3) 植物がミカンである、前記1)又は2)記載の植物の水ストレス計測方法
4) 測定対象が草本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、草本類の植物の基準とする葉に対し、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準葉0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準葉0のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準葉0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意の葉tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、葉tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
5) 植物がメロンであり、その基準葉が天葉である、前記4)記載の植物の水ストレス計測方法
6) 多変量解析法が重回帰分析法である、前記4)又は5)記載の植物の水ストレス計測方法
7) 中心発光波長が400〜900nmの波長の範囲でその中心発光波長が異なる複数の発光ダイオードを集合させ且つ各発光ダイオードを独立して交代的に点灯できる光源と、同光源の光を分散透過させるディフューザーと、同ディフューザーからの光を直接受光して光量を測定する第1光検出器と、ディフューザーからの光を植物体の葉に対し照射してその反射光又は透過光を受光できる第2光検出器と、ディフューザーからの光が照射され、その反射光又は透過光を第2光検出器又は別の光検出器に受光させる標準白色板と、発光ダイオードの点灯と同期して、第1光検出器、第2検出器又は別の光検出器の受光した光の光量の値を、点灯させた発光ダイオードの波長λ情報と測定時の年月日時刻情報とともに記憶する記憶部を備えた、植物の水ストレス計測装置
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水ストレスの指標として精度がよいプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値に精度よく近似できる水ポテンシャルの計測方法とそのための装置を提供できる。しかも、基準日又は基準葉での測定を使って予め一般式を計算することで、植物のある現場で水ポテンシャル値が即時計算して得ることが可能となり、農作業での水ストレスが正確且つ迅速に分かり、その対応を迅速にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の多変量解析方法は、データから一般式を求める手法として知られた数学的手法であり、複数の説明変数のデータと目的変数のデータとから説明変数と目的変数の一般式を算出する重回帰分析方法と、中間に主成分を導入して説明変数と目的変数の一般式を求める主成分回帰法とがある。
本発明の光源としては、400〜900nmの波長の範囲に中心発光波長を有する異なった中心波長の発光ダイオードを複数組み合わせ、これら発光ダイオードを交代的に点灯できるような回路を設け、発光ダイオードの光はディフューザーに当てて拡散させて複数の光検出器・葉・標準白色板に照射可能にするのが、高価な分光器を使用しないので好ましい。
更に、葉を照射する測定の場合に、測定されるべき葉がセットされていない場合を、その反射・透過光の光量から葉がない数値であることを判別して警告するコンピュータソフトがあれば測定操作エラーを無くし、更に好ましい。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1について図面に基づいて説明する。実施例1は植物をミカンとし、基準日0を結実しない5〜6月頃とし、測定するのは結実して水ストレスを与える8〜10月頃である。
【0012】
図1は、実施例1の植物の水ストレスを方法の基準日(日付1)と水ストレスを求める測定時(日付2)を示す説明図である。
図2は、実施例1で使用する植物の水ストレス計測装置の外観図である。
図3,4は、実施例1の植物の水ストレス計測装置の構造とその測定を示す説明図である。
図5は、本発明の他の測定構造例を示す説明図である。
図6は、実施例1の測定の説明図である。
図7は、実施例1に使用するコンピュータのハード構成図である。
図8は、実施例1の算出の水ポテンシャル値Ψ(推定値)と葉のプレッシャチャンバ法による実測の水ポテンシャル値(実験値)との相関性を示す図面である。
図9は、コンピュータソフトのブロック図である。
【0013】
この実施例1は、図2,3,4に示す携帯式の植物の水ストレス計測装置を用い、5〜6月の結実していない基準日(日付1)で、ミカンの木の葉の透過・反射光と、光源の光量と、標準白色板の光量を測定する。
【0014】
図3,4,5中、1は携帯式の植物の水ストレス計測装置、10はその測定部、11は複数の波長を異にする発光ダイオードの光源、12はディフューザーである拡散透過板、13は拡散反射板、14は植物体の葉である測定ワーク、15は第2光検出器、16は第1光検出器である。
【0015】
この測定の原理図を図6に示すように、発光ダイオード群からなる光源11から、その中心発光波長の光が交代的に一定時間ピッチで照射される。葉に照射された光の透過光又は反射光は第2光検出器15によって、又光源の光は直接第1光検出器16に検出される。又、標準白色板の反射光又は透過光は第2光検出器15で、又その時の光源の光は第1出器16で受光される。
【0016】
測定された第1,第2検出器の光量はS2(λ),S1(λ),R2(λ),R1(λ)として、受光した時の照射された光(発光ダイオード)の波長とその測定時について図7に示すインターフュースを介してコンピュータに入力され、記憶部に記憶される。
又、測定された葉は夜においてプレッシャチャンバ法によってその水ポテンシャル値Ψ0が計測され、コンピュータに入力されて記憶される。
【0017】
基準日の測定データと実測水ポテンシャル値Ψ0が測定されて記憶された後、コンピュータで一般式解析ソフトを起動させ、これらデータに基づいて重回帰分析法による多変量解析がなされ、一般式が求められる。
【0018】
使用した多変量解析法について、詳しく説明する。
使用するLED1〜LEDNの中心発光波長を
λ1,λ2,λ3,…λN
とする。このとき、それぞれのLEDに対する基準となる緑葉の反射率(分光特性値)を
A01,A02,A03,…,A0N、
対象となる緑葉の反射率を
At1,At2,At3,…,AtN、
とし、求める水ポテンシャル(水分ストレス量の物理的な指標)をΨtとするとき、Ψtの一般式は次のように考えることができる。
Ψt=f(A01,A02,A03,…,A0N,At1,At2,At3,…,AtN)・・・式1
又、基準と対象の緑葉のとり方が、同一植物体の位置の違いによるものでなく(草本類ではなく)、時間的な違いの場合(木本類の場合)、基準となる緑葉の分光特性が計測されたときの水ポテンシャルの実測値も同時に得られており、それがΨ0であるとすれば、求める水ポテンシャルΨtは、次のように考えることもできる。
【0019】
【数1】
【0020】
尚、本発明中では、これらの一般式を具体的に重回帰分析で求めるため、式1を例に、次の式を想定した解析処理を行った。
【0021】
【数2】
【0022】
その結果として、具体的には下式の一般式となった。
【0023】
【数3】
【0024】
この多変量解析法によって得られたAtNを変数とする一般式に、基準日後において葉を同様にして複数回測定し、S2(λ),S1(λ),R2(λ),R1(λ)から、At1〜AtNを求め、これを一般式に代入して計算した水ポテンシャル値Ψtと、プレッシャチャンバ法に基づいて測定した実測水ポテンシャル値Ψ0との相関状態を図8に示している。
この図から分かるように、計算の水ポテンシャル値Ψtの直線に沿って実測の水ポテンシャル値Ψ0が存在し、一般式がよい近似式となっていることが分かる。
【0025】
尚、図3,4,5の構造の測定装置では、植物緑葉の分光反射率あるいは分光透過率を求めるプローブに光源の発光光量をモニタする機構を設け、標準白色板を計測するときの発光光量と、反射光量あるいは透過光量との関係を保持しておくことで、サンプルの測定の度に標準白色板の測定をすることが必要でないようにできる。
【0026】
図10,11に示す実施例2は、草本類のメロンの水ストレスの計測方法であり、計測に使用する器具は、前記実施例1での葉の測定方法は同様であり、又A01〜A0N,At1〜AtNの求め方も同様である。
【0027】
図10は、実施例2のメロンの天葉と中葉を示す説明図である。
図11は、メロンの一般式による水ポテンシャル値Ψtと、実測水ポテンシャル値Ψ0との相関を示す説明図である。
【0028】
実施例2の植物の対象は図10に示すメロンであって、基準となる測定の葉は、メロンの一番上の葉(天葉)の測定を基準葉0とし、これを参照させて、その下方の中葉の葉の測定をtとするものであり、第1,2の光検出器16,15でS2(λ),S1(λ),R2(λ),R1(λ)を測定し、数aよりコンピュータでA01〜A0N(λ)を求め、それと天葉の水ポテンシャルの実測値Ψ0を求め、これから中葉の水ポテンシャル値Ψtの一般式を下記の様に重回帰分析法に基づいて数3の一般式を算出した。
【0029】
【数4】
【0030】
この一般式による中葉の水ポテンシャル値Ψtと中葉のプレッシャチャンバ法による実測水ポテンシャル値Ψ0の結果の各差分を比較した。その相関図を図11に示している。これから、この一般式がプレッシャチャンバ法による実測水ポテンシャルのよい近似式となっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ミカン以外の木本類にも、又メロン以外の草本類にも同様に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の植物の水ストレスを方法の基準日(日付1)と水ストレスを求める測定時(日付2)を示す説明図である。
【図2】実施例1で使用する植物の水ストレス計測装置の外観図である。
【図3】実施例1の植物の水ストレス計測装置の構造とその測定を示す説明図である。
【図4】実施例1の植物の水ストレス計測装置の構造とその測定を示す説明図である。
【図5】本発明の他の測定構造例を示す説明図である。
【図6】実施例1の測定の説明図である。
【図7】実施例1に使用するコンピュータのハード構成図である。
【図8】実施例1の算出の水ポテンシャル値Ψ(推定値)と葉のプレッシャチャンバ法による実測の水ポテンシャル値(実験値)との相関性を示す図面である。
【図9】コンピュータソフトのブロック図である。
【図10】実施例2のメロンの天葉と中葉を示す説明図である。
【図11】メロンの一般式による水ポテンシャル値(推定値)と、実測水ポテンシャル値(実験値)との相関を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 植物の水ストレス計測装置
10 測定部
11 発光ダイオードの光源
12 拡散透過板
13 拡散反射板
14 測定ワーク
15 第2光検出器
16 第1光検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカン等の木本類やメロン等の草本類を中心とした植物の水ストレスの評価指標である水ポテンシャル値を光検出器を使って計測する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の水ストレスの状態は、水ポテンシャル値を測定し、水ポテンシャル値で評価されている。
この水ストレスの従来の測定方法としては、葉に圧力をかけて水ポテンシャルを直接測定するプレッシャチャンバ法と、緑葉の分光反射率特性から計測する方法とがある。
【0003】
前者のプレッシャチャンバ法は、葉柄のみを外に出して圧力容器に納めた葉に、圧搾空気を用いて徐々に高い圧力をかけていけば、圧力に耐えきれなくなった葉内の水分が葉柄から吹き出してくる。プレッシャチャンバ法とは、この水分が吹き出すときの圧力容器内の圧力を、葉が水を保持する力と見なす方法である。
尚、この方法では、緑葉裏面の気孔が閉じている深夜に葉をサンプルして測定することが必要である。
【0004】
後者の分光反射率特性による計測方法は、本発明者がその方法を開発して特開2005−308733号公報に開示されている。緑葉に光を照射し、その反射光・透過光を分光して500〜800nmの連続波長に対して分光反射率を算出し、それが急激に立ち上る(一次微分が高い)波長域(レッドエッジ)を求め、そのレッドエッジの又はその中心波長の推移から水ストレスを判断するものである。
【0005】
前者のプレッシャチャンバ法の水ポテンシャル直接測定法は、その水ポテンシャル値は信頼性があるが、緑葉裏面の気孔が閉じた深夜でなければ測定できず、現場でその水ストレスを算出して表示することができない。
【0006】
後者の分光反射率特性では、計測に分光器が必要となって計測装置が高価となり、又精度がまだ充分でない場合があった。
【特許文献1】特開2005−308733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来の植物のストレスの計測法の問題点を解消し、プレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値に近づけられて精度がよく、しかも高価な分光器を使用せずに現場で水ストレスが算出できる、植物のストレスの計測法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 測定対象が木本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、木本類の植物が結実する前の基準日において、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準日0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準日の測定した葉のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準日0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意時点tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、基準日0以後における時点tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
2) 多変量解析法が重回帰分析法である、前記1)記載の木本類の植物の水ストレス計測方法
3) 植物がミカンである、前記1)又は2)記載の植物の水ストレス計測方法
4) 測定対象が草本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、草本類の植物の基準とする葉に対し、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準葉0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準葉0のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準葉0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意の葉tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、葉tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
5) 植物がメロンであり、その基準葉が天葉である、前記4)記載の植物の水ストレス計測方法
6) 多変量解析法が重回帰分析法である、前記4)又は5)記載の植物の水ストレス計測方法
7) 中心発光波長が400〜900nmの波長の範囲でその中心発光波長が異なる複数の発光ダイオードを集合させ且つ各発光ダイオードを独立して交代的に点灯できる光源と、同光源の光を分散透過させるディフューザーと、同ディフューザーからの光を直接受光して光量を測定する第1光検出器と、ディフューザーからの光を植物体の葉に対し照射してその反射光又は透過光を受光できる第2光検出器と、ディフューザーからの光が照射され、その反射光又は透過光を第2光検出器又は別の光検出器に受光させる標準白色板と、発光ダイオードの点灯と同期して、第1光検出器、第2検出器又は別の光検出器の受光した光の光量の値を、点灯させた発光ダイオードの波長λ情報と測定時の年月日時刻情報とともに記憶する記憶部を備えた、植物の水ストレス計測装置
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水ストレスの指標として精度がよいプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値に精度よく近似できる水ポテンシャルの計測方法とそのための装置を提供できる。しかも、基準日又は基準葉での測定を使って予め一般式を計算することで、植物のある現場で水ポテンシャル値が即時計算して得ることが可能となり、農作業での水ストレスが正確且つ迅速に分かり、その対応を迅速にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の多変量解析方法は、データから一般式を求める手法として知られた数学的手法であり、複数の説明変数のデータと目的変数のデータとから説明変数と目的変数の一般式を算出する重回帰分析方法と、中間に主成分を導入して説明変数と目的変数の一般式を求める主成分回帰法とがある。
本発明の光源としては、400〜900nmの波長の範囲に中心発光波長を有する異なった中心波長の発光ダイオードを複数組み合わせ、これら発光ダイオードを交代的に点灯できるような回路を設け、発光ダイオードの光はディフューザーに当てて拡散させて複数の光検出器・葉・標準白色板に照射可能にするのが、高価な分光器を使用しないので好ましい。
更に、葉を照射する測定の場合に、測定されるべき葉がセットされていない場合を、その反射・透過光の光量から葉がない数値であることを判別して警告するコンピュータソフトがあれば測定操作エラーを無くし、更に好ましい。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1について図面に基づいて説明する。実施例1は植物をミカンとし、基準日0を結実しない5〜6月頃とし、測定するのは結実して水ストレスを与える8〜10月頃である。
【0012】
図1は、実施例1の植物の水ストレスを方法の基準日(日付1)と水ストレスを求める測定時(日付2)を示す説明図である。
図2は、実施例1で使用する植物の水ストレス計測装置の外観図である。
図3,4は、実施例1の植物の水ストレス計測装置の構造とその測定を示す説明図である。
図5は、本発明の他の測定構造例を示す説明図である。
図6は、実施例1の測定の説明図である。
図7は、実施例1に使用するコンピュータのハード構成図である。
図8は、実施例1の算出の水ポテンシャル値Ψ(推定値)と葉のプレッシャチャンバ法による実測の水ポテンシャル値(実験値)との相関性を示す図面である。
図9は、コンピュータソフトのブロック図である。
【0013】
この実施例1は、図2,3,4に示す携帯式の植物の水ストレス計測装置を用い、5〜6月の結実していない基準日(日付1)で、ミカンの木の葉の透過・反射光と、光源の光量と、標準白色板の光量を測定する。
【0014】
図3,4,5中、1は携帯式の植物の水ストレス計測装置、10はその測定部、11は複数の波長を異にする発光ダイオードの光源、12はディフューザーである拡散透過板、13は拡散反射板、14は植物体の葉である測定ワーク、15は第2光検出器、16は第1光検出器である。
【0015】
この測定の原理図を図6に示すように、発光ダイオード群からなる光源11から、その中心発光波長の光が交代的に一定時間ピッチで照射される。葉に照射された光の透過光又は反射光は第2光検出器15によって、又光源の光は直接第1光検出器16に検出される。又、標準白色板の反射光又は透過光は第2光検出器15で、又その時の光源の光は第1出器16で受光される。
【0016】
測定された第1,第2検出器の光量はS2(λ),S1(λ),R2(λ),R1(λ)として、受光した時の照射された光(発光ダイオード)の波長とその測定時について図7に示すインターフュースを介してコンピュータに入力され、記憶部に記憶される。
又、測定された葉は夜においてプレッシャチャンバ法によってその水ポテンシャル値Ψ0が計測され、コンピュータに入力されて記憶される。
【0017】
基準日の測定データと実測水ポテンシャル値Ψ0が測定されて記憶された後、コンピュータで一般式解析ソフトを起動させ、これらデータに基づいて重回帰分析法による多変量解析がなされ、一般式が求められる。
【0018】
使用した多変量解析法について、詳しく説明する。
使用するLED1〜LEDNの中心発光波長を
λ1,λ2,λ3,…λN
とする。このとき、それぞれのLEDに対する基準となる緑葉の反射率(分光特性値)を
A01,A02,A03,…,A0N、
対象となる緑葉の反射率を
At1,At2,At3,…,AtN、
とし、求める水ポテンシャル(水分ストレス量の物理的な指標)をΨtとするとき、Ψtの一般式は次のように考えることができる。
Ψt=f(A01,A02,A03,…,A0N,At1,At2,At3,…,AtN)・・・式1
又、基準と対象の緑葉のとり方が、同一植物体の位置の違いによるものでなく(草本類ではなく)、時間的な違いの場合(木本類の場合)、基準となる緑葉の分光特性が計測されたときの水ポテンシャルの実測値も同時に得られており、それがΨ0であるとすれば、求める水ポテンシャルΨtは、次のように考えることもできる。
【0019】
【数1】
【0020】
尚、本発明中では、これらの一般式を具体的に重回帰分析で求めるため、式1を例に、次の式を想定した解析処理を行った。
【0021】
【数2】
【0022】
その結果として、具体的には下式の一般式となった。
【0023】
【数3】
【0024】
この多変量解析法によって得られたAtNを変数とする一般式に、基準日後において葉を同様にして複数回測定し、S2(λ),S1(λ),R2(λ),R1(λ)から、At1〜AtNを求め、これを一般式に代入して計算した水ポテンシャル値Ψtと、プレッシャチャンバ法に基づいて測定した実測水ポテンシャル値Ψ0との相関状態を図8に示している。
この図から分かるように、計算の水ポテンシャル値Ψtの直線に沿って実測の水ポテンシャル値Ψ0が存在し、一般式がよい近似式となっていることが分かる。
【0025】
尚、図3,4,5の構造の測定装置では、植物緑葉の分光反射率あるいは分光透過率を求めるプローブに光源の発光光量をモニタする機構を設け、標準白色板を計測するときの発光光量と、反射光量あるいは透過光量との関係を保持しておくことで、サンプルの測定の度に標準白色板の測定をすることが必要でないようにできる。
【0026】
図10,11に示す実施例2は、草本類のメロンの水ストレスの計測方法であり、計測に使用する器具は、前記実施例1での葉の測定方法は同様であり、又A01〜A0N,At1〜AtNの求め方も同様である。
【0027】
図10は、実施例2のメロンの天葉と中葉を示す説明図である。
図11は、メロンの一般式による水ポテンシャル値Ψtと、実測水ポテンシャル値Ψ0との相関を示す説明図である。
【0028】
実施例2の植物の対象は図10に示すメロンであって、基準となる測定の葉は、メロンの一番上の葉(天葉)の測定を基準葉0とし、これを参照させて、その下方の中葉の葉の測定をtとするものであり、第1,2の光検出器16,15でS2(λ),S1(λ),R2(λ),R1(λ)を測定し、数aよりコンピュータでA01〜A0N(λ)を求め、それと天葉の水ポテンシャルの実測値Ψ0を求め、これから中葉の水ポテンシャル値Ψtの一般式を下記の様に重回帰分析法に基づいて数3の一般式を算出した。
【0029】
【数4】
【0030】
この一般式による中葉の水ポテンシャル値Ψtと中葉のプレッシャチャンバ法による実測水ポテンシャル値Ψ0の結果の各差分を比較した。その相関図を図11に示している。これから、この一般式がプレッシャチャンバ法による実測水ポテンシャルのよい近似式となっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ミカン以外の木本類にも、又メロン以外の草本類にも同様に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の植物の水ストレスを方法の基準日(日付1)と水ストレスを求める測定時(日付2)を示す説明図である。
【図2】実施例1で使用する植物の水ストレス計測装置の外観図である。
【図3】実施例1の植物の水ストレス計測装置の構造とその測定を示す説明図である。
【図4】実施例1の植物の水ストレス計測装置の構造とその測定を示す説明図である。
【図5】本発明の他の測定構造例を示す説明図である。
【図6】実施例1の測定の説明図である。
【図7】実施例1に使用するコンピュータのハード構成図である。
【図8】実施例1の算出の水ポテンシャル値Ψ(推定値)と葉のプレッシャチャンバ法による実測の水ポテンシャル値(実験値)との相関性を示す図面である。
【図9】コンピュータソフトのブロック図である。
【図10】実施例2のメロンの天葉と中葉を示す説明図である。
【図11】メロンの一般式による水ポテンシャル値(推定値)と、実測水ポテンシャル値(実験値)との相関を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 植物の水ストレス計測装置
10 測定部
11 発光ダイオードの光源
12 拡散透過板
13 拡散反射板
14 測定ワーク
15 第2光検出器
16 第1光検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象が木本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、木本類の植物が結実する前の基準日において、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準日0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準日の測定した葉のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準日0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意時点tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、基準日0以後における時点tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法。
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法。
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
【請求項2】
多変量解析法が重回帰分析法である、請求項1記載の木本類の植物の水ストレス計測方法。
【請求項3】
植物がミカンである、請求項1又は2記載の植物の水ストレス計測方法。
【請求項4】
測定対象が草本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、草本類の植物の基準とする葉に対し、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準葉0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準葉0のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準葉0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意の葉tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、葉tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法。
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法。
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
【請求項5】
植物がメロンであり、その基準葉が天葉である、請求項4記載の植物の水ストレス計測方法。
【請求項6】
多変量解析法が重回帰分析法である、請求項4又は5記載の植物の水ストレス計測方法。
【請求項7】
中心発光波長が400〜900nmの波長の範囲でその中心発光波長が異なる複数の発光ダイオードを集合させ且つ各発光ダイオードを独立して交代的に点灯できる光源と、同光源の光を分散透過させるディフューザーと、同ディフューザーからの光を直接受光して光量を測定する第1光検出器と、ディフューザーからの光を植物体の葉に対し照射してその反射光又は透過光を受光できる第2光検出器と、ディフューザーからの光が照射され、その反射光又は透過光を第2光検出器又は別の光検出器に受光させる標準白色板と、発光ダイオードの点灯と同期して、第1光検出器、第2検出器又は別の光検出器の受光した光の光量の値を、点灯させた発光ダイオードの波長λ情報と測定時の年月日時刻情報とともに記憶する記憶部を備えた、植物の水ストレス計測装置。
【請求項1】
測定対象が木本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、木本類の植物が結実する前の基準日において、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準日0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準日の測定した葉のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準日0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意時点tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、基準日0以後における時点tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法。
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法。
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
【請求項2】
多変量解析法が重回帰分析法である、請求項1記載の木本類の植物の水ストレス計測方法。
【請求項3】
植物がミカンである、請求項1又は2記載の植物の水ストレス計測方法。
【請求項4】
測定対象が草本類の植物であり、その水ストレスをコンピュータのメモリーと計算機能を用いて記憶・計算して算出する植物の水ストレス計測方法であって、草本類の植物の基準とする葉に対し、下記イの分光特性値計算方法通りに植物体の葉と標準白色体と光源の光の光量を測定して基準葉0の分光特性値A01〜A0Nを算出し、又この基準葉0のプレッシャチャンバ法による水ポテンシャル値Ψ0を実測し、次にこの基準葉0の分光特性値A01〜A0Nと実測水ポテンシャル値Ψ0のデータから任意の葉tの分光特性値At1〜AtNを変数として一般式を多変量解析法の手法で算出し、その後、葉tの葉の分光特性値At1〜AtNの値を下記イの分光特性値計算方法通りの測定と計算から求めて、これらの値を算出した上記一般式Ψtに代入して水ポテンシャル値Ψtを算出し、同水ポテンシャル値が高い程水ストレスが高いと評価する、植物の水ストレス計測方法。
記イ
一回の測定時において400〜900nmの波長の範囲の複数の異なった波長λの光を交代的に植物体の葉に照射してその反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量を測定し、その光量S2(λ)を照射した光の波長λと測定時の情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
葉に照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量S1(λ)を測定し、その光量を光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、又、照射した光を標準白色板に反射させ又は透過させ、その反射光又は透過光を光検出器で受光してその光量R2(λ)を測定し、その光量をその照射光の波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、標準白色板を照射した光を直接光検出器で受光して光源の光量R1(λ)を測定し、その光量を波長λと測定時情報とともに関連付けてメモリーに記憶し、
下の数式aから分光特性値Aを各波長毎に算出し、その分光特性値Aをその照射波長λとともに関連付けてメモリーに記憶する分光特性値計算方法。
(数式a)
A1〜N=(S2(λ)/S1(λ))/(R2(λ)/R1(λ))
1〜N:照射した異なった波長λの光のインデックス
S2(λ):記憶された上記波長λにおける葉の反射又は透過光の光量
S1(λ):記憶された上記葉を測定した時点の波長λの光源の光量
R2(λ):記憶された上記波長λにおける標準白色板の反射光又は透過光の光量
R1(λ):標準白色板に照射した時点の記憶された上記波長λにおける光源の光量
【請求項5】
植物がメロンであり、その基準葉が天葉である、請求項4記載の植物の水ストレス計測方法。
【請求項6】
多変量解析法が重回帰分析法である、請求項4又は5記載の植物の水ストレス計測方法。
【請求項7】
中心発光波長が400〜900nmの波長の範囲でその中心発光波長が異なる複数の発光ダイオードを集合させ且つ各発光ダイオードを独立して交代的に点灯できる光源と、同光源の光を分散透過させるディフューザーと、同ディフューザーからの光を直接受光して光量を測定する第1光検出器と、ディフューザーからの光を植物体の葉に対し照射してその反射光又は透過光を受光できる第2光検出器と、ディフューザーからの光が照射され、その反射光又は透過光を第2光検出器又は別の光検出器に受光させる標準白色板と、発光ダイオードの点灯と同期して、第1光検出器、第2検出器又は別の光検出器の受光した光の光量の値を、点灯させた発光ダイオードの波長λ情報と測定時の年月日時刻情報とともに記憶する記憶部を備えた、植物の水ストレス計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−109363(P2009−109363A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282521(P2007−282521)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発事業、九州経済産業局委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発事業、九州経済産業局委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】
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