説明

植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法

【課題】褐変した植物を鮮明な緑色に復元する。植物に酵母臭をつけることなく、安全な方法で緑色に処理する。
【解決手段】植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法は、アスコルビン酸と、グルタミン酸と、グルコン酸と、酢酸と、有機酸の復塩とのいずれかからなる有機酸と、植物の葉緑素に作用して緑色に処理する葉緑素緑化金属との化合物である有機酸の金属塩を溶解してなる有機金属塩溶液に植物を接触させて、植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、食べ物や装飾用の植物を金属イオンの作用で緑色に復元する方法、あるいは、緑色に保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、葉緑素に含有されるマグネシウムが失われると、緑色を失って枯渇した色に退色する。葉緑素は、植物を金属イオンを含む溶液に浸漬し、金属イオンの作用で緑色に復元できる。この性質を利用して、本発明者は、退色した植物を緑色にする技術を開発した(特許文献1参照)。植物の緑色を復元する金属イオンとして、鉄イオン、銅イオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン等が使用される。
【0003】
植物を鉄イオンを含む溶液に浸漬して、植物の葉緑素を緑色にすると、暗色の緑色となり、全ての植物を自然な色調の緑色にできない。銅イオンを含む溶液に浸漬する方法は、銅イオンの溶液に浸漬されるので、植物の銅の含有量が多くなる。銅は、植物に少量含まれるが、多量の銅を添加することは、健康上決して好ましくない。このため、銅イオンの作用で葉緑素を緑色にする方法は、食べ物の処理として好ましくない。さらに、植物をマグネシウムの溶液に浸漬して緑色に処理すると、緑色に変色した葉緑素が水に溶けやすい欠点がある。このため、たとえば水に浸漬して販売する惣菜等をこの方法で処理すると、水に葉緑素が溶けて緑色となり、植物の緑色が薄くなる。また、水が緑色になると、植物をあたかも顔料や染料で着色したものと同じように見られる欠点もある。亜鉛イオンで植物の緑色を復元する方法は、褐変した植物を優れた色調の緑色に復元でき、しかも長時間にわたって緑色を保持できる特長もある。
【0004】
ただ、亜鉛イオンで植物を緑色にする方法は、たとえば、植物を浸漬する溶液の調整に硫酸亜鉛や草木灰等を使用する。これ等を水に入れて亜鉛イオンを溶解させる。この方法は、薬品である硫酸亜鉛を使用し、あるいは種々の成分が混合されて混合成分を調整するのが極めて難しい草木灰を使用するので、安心して植物を緑色にするのが難しい。草木灰は、種々の植物を焼却して製作されるので、原料となる植物に好ましくない成分が含まれていると、これを除去するのが極めて難しい。
【0005】
本発明者は、このような欠点を解決することを目的として、植物を金属酵母を含む酵母液に接触させて、植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法を開発した(特許文献2参照)。
この方法は、酵母液に、Znを含有するZn酵母、Cuを含有するCu酵母、Feを含有するFe酵母、Mgを含有するMg酵母のいずれかまたは複数を使用する。
【特許文献1】特開2005−160471号公報
【特許文献2】特開2006−314300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の方法は、褐変した植物を緑色に復元できると共に、植物を緑色に処理した状態で長期保存できる。また、金属酵母を使用して安全な方法で植物を緑色に変色できる特長がある。
【0007】
しかしながら、以上の方法は、緑色にされた植物に酵母特有の臭いが付着し、酵母臭が植物の風味を低下させる原因となる欠点がある。本発明は、さらにこの欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、褐変した植物を鮮明な緑色に復元できると共に、植物に酵母臭をつけることなく、安全な方法で緑色に処理できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の目的を達成するために、以下の方法で植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する。本発明の方法は、アスコルビン酸と、グルタミン酸と、グルコン酸と、酢酸と、有機酸の復塩とのいずれかからなる有機酸と、植物の葉緑素に作用して緑色に処理する葉緑素緑化金属との化合物である有機酸の金属塩を溶解してなる有機金属塩溶液に植物を接触させて、植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する。
【0009】
本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法は、葉緑素緑化金属を、ZnとCuとFeとMgのいずれかとすることができる。
【0010】
本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法は、有機酸の復塩を、グルコン酸と乳酸の復塩、グルコン酸とアスコルビン酸の復塩、グルコン酸とグルタミン酸の復塩、グルコン酸と酢酸の復塩、アスコルビン酸と乳酸の復塩、アスコルビン酸とグルタミン酸の復塩、アスコルビン酸と酢酸の復塩のいずれかとすることができる。
【0011】
本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法は、葉緑素緑化金属を、Zn、Se、Mo、Cr、Mn、Niのいずれかの金属とすることができる。
【0012】
さらに、本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法は、植物を接触させる有機金属塩溶液の金属濃度を0.5ppm以上とすることができる。
【0013】
さらに、本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法は、植物を接触させる有機金属塩溶液の温度を、15℃〜100℃とすることができる。
【0014】
さらに、本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法は、有機金属塩溶液を植物に接触させる時間を、1分以上とすることができる。また、本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法は、金属塩溶液を植物に接触させる時間を60分以下とすることができる
【0015】
さらにまた、本発明の植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法は、有機金属塩溶液がカルシウムを含有することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、褐変した植物を鮮明な色調の緑色に復元できると共に、植物を緑色に処理した状態で長期保存でき、さらに、植物に酵母臭をつけることなく、安全な方法で緑色に処理できる特徴がある。それは、本発明の方法が、植物を緑色にする亜鉛や銅などを、従来のように無機の金属イオンの状態で溶解するのでなく、アスコルビン酸とグルタミン酸と酢酸と有機酸の復塩のいずれかからなる有機酸と葉緑素緑化金属との金属塩を溶解していることから、葉緑素緑化金属と葉緑素との反応性がよく、葉緑素に効果的に作用して、植物を鮮明な緑色に処理できるからである。また、本発明は、酵母金属のように、植物に特有の臭いをつけることなく、植物本来の風味を生かしながら、鮮明な緑色に処理できる特徴がある。
とくに、有機酸をアスコルビン酸として、アスコルビン酸と葉緑素緑化金属との化合物を溶解している溶液に植物を接触させる方法は、ビタミンCであるアスコルビン酸の作用で、緑色に処理された状態で変色しない状態に保持され、また植物に残存しても安全に食べることができる。
また、有機酸をグルタミン酸として、グルタミン酸と葉緑素緑化金属との化合物を溶解している溶液に植物を接触させる方法は、調味料に使用されるグルタミン酸の作用で、植物を美味な風味としながら、緑色に処理できる特徴がある。
さらにまた、有機酸を酢酸として、酢酸と葉緑素緑化金属との化合物を溶解している溶液に植物を接触させる方法は、柑橘類に等に含まれる酢酸に葉緑素緑化金属を化合させたものであるから、食品を美味な風味としながら安全に使用できる特徴がある。
また、有機酸の復塩と葉緑素緑化金属との化合物を溶解している溶液に植物を接触させる方法は、復塩を構成する有機酸を選択して、各々の植物に最適な状態で、さらに各々の植物を好ましい緑色に処理できる特徴がある。また、この有機酸の復塩として、グルコン酸と乳酸との復塩を使用すると、食品を安全に処理して鮮明な緑色にできる。とくに、グルコン酸と乳酸の復塩は、安定して分解し難いことから保存性もよく、安定して植物を鮮明な緑色に処理できる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための方法を例示するものであって、本発明は植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法を下記のものに特定しない。
【0018】
植物の緑色を復元し、あるいは緑色に保持する方法は、アスコルビン酸とグルタミン酸と酢酸と有機酸の復塩とのいずれかからなる有機酸と、植物の葉緑素に作用して緑色に処理する葉緑素緑化金属との化合物である有機酸の金属塩を溶解してなる有機金属塩溶液に、植物を浸漬し、あるいは、この有機金属塩溶液を植物に散布して有機金属塩溶液を植物に接触させる。有機酸の復塩には、グルコン酸と乳酸の復塩、グルコン酸とアスコルビン酸の復塩、グルコン酸とグルタミン酸の復塩、グルコン酸と酢酸の復塩、アスコルビン酸と乳酸の復塩、アスコルビン酸とグルタミン酸の復塩、アスコルビン酸と酢酸の復塩等が使用できる。有機酸の復塩は、緑色に処理する植物に最適な組み合わせを選択して、種々の植物を最適な緑色に処理できる。また、異なる複数の復塩を使用することで、単独の有機酸では実現できない、理想的な緑色に処理できる。
【0019】
たとえば、有機酸の復塩には、グルコン酸の復塩を使用すると、この復塩は、Znなどの葉緑素緑化金属の一方にグルコン酸が結合し、他方には乳酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、酢酸等が結合する状態となる。グルコン酸の復塩と葉緑素緑化金属との化合物である有機酸の金属塩を使用する方法は、植物を極めて鮮明な緑色に処理できることに加えて、安定性に優れることから、有機酸の金属塩の変質を防止して、長期間にわたって植物を安定して鮮明な緑色に処理できる。有機酸に含まれる葉緑素緑化金属は、Zn、Cu、Fe、Mg、Se、Mo、Cr、Mn、Ni等である。
【0020】
有機金属塩溶液は、好ましくは、60〜100℃で、沸騰する温度よりも低い温度に加温される。植物が、加温された有機金属塩溶液に浸漬されると、葉緑素は、短い時間で速やかに緑色に変色される。植物を浸漬する有機金属塩溶液の有機物の金属塩の濃度を濃くしても、葉緑素を緑色にできる時間は短くなる。したがって、短時間で葉緑素を緑色にする場合は、加温された有機物の金属塩濃度の高い溶液に植物を浸漬する。植物の葉緑素をゆっくりと時間をかけて緑色にするときは、加温されない有機物の金属塩濃度の低い有機金属塩溶液に浸漬する。
【0021】
有機金属塩溶液の金属濃度は、葉緑素を緑色にする時間と、溶液の温度とを考慮して最適値に調整する。たとえば、60℃以上に加熱して、浸漬する植物の葉緑素を10分程度で緑色にする溶液は、金属濃度が2ppm以上となるように有機物の金属塩の添加量を調整する。植物を加熱された有機金属塩溶液に接触させて、葉緑素を緑色にできる最低の金属濃度は、0.5ppmである。したがって、有機金属塩溶液の金属濃度は、植物を緑色に変色させる時間と、溶液の加熱温度とを考慮して、たとえば、0.5ppm以上、好ましくは1.5ppm以上、さらに好ましくは2ppm以上とする。また、金属濃度が多すぎると、有機物の金属塩の使用量が多くなり、処理コストが高くなるので、好ましくは金属濃度は500ppm以下とする。
【0022】
植物は、溶液に浸漬すると柔らかくなる性質がある。とくに、加熱された有機金属塩溶液に浸漬すると、水分を吸収して柔らかくなる性質がある。溶液に浸漬して柔らかくなるのは、たとえば、有機金属塩溶液に乳酸カルシウム等のカルシウムイオンを添加して防止できる。カルシウムイオンは、植物が水分を吸収して膨潤状態となるのを防止する。乳酸カルシウム等のカルシウム添加量は、植物の種類、浸漬時間、溶液温度等を考慮して最適値に調整する。カルシウムの添加量を多くすると、植物が柔らかくなるのを効果的に防止できる。カルシウムの添加量は、たとえば、30〜1000ppm、好ましくは100〜500ppm、さらに好ましくは150〜400ppmとされる。
【0023】
さらに、有機金属塩溶液には、他の金属イオンを有機物の金属塩に加えて添加することもできる。たとえば、鉄イオンや銅イオン等を添加して、植物を緑色にする時間を短くし、あるいは、植物によっては色調を濃い緑色とすることもできる。有機金属塩溶液に接触させて緑色になった植物は、その後、調整液に浸漬して色調を調整し、あるいは、短時間で洗浄を完了することもできる。
【0024】
調整液は、クエン酸のように、金属イオンと反応して錯塩を作るものが使用できる。緑色になった植物がクエン酸の溶液に浸漬されると、遊離して植物表面に付着している金属イオンがクエン酸と反応し、錯塩となって分離できる。このため、クエン酸の溶液に浸漬して、植物を短時間で水洗できる。
【0025】
さらに、調整液には、還元糖や還元剤を含ませることもできる。還元糖や還元剤の溶液に、緑色になった植物を浸漬すると、顔料や染料で人工的に着色したような不自然な色が調整される。また、処理後における植物の変色を防止できる。それは、還元糖や還元剤が、酸化を防止して、変色するのを少なくするからである。さらに、還元糖や還元剤で色調を調整する方法は、有機金属塩溶液の有機物の金属塩濃度を高くし、短時間で植物を緑色にし、その後に、調整液で色調を調整することにより、自然な発色の植物を短時間で処理できる特長がある。
【0026】
還元糖には、ブドウ糖、果糖、ソルビトル等が使用できる。還元剤にはアスコルビン酸、エリソルビン酸等が使用できる。調整液は、還元糖や還元剤の濃度を高くして、色調を晒れた色にできる。調整液の還元糖と還元剤の濃度は、植物を理想的な色調にする濃度に調整される。たとえば、還元糖または還元剤の濃度は、100ppm〜5%、好ましくは、200ppm〜1%、さらに好ましくは、300ppm〜3000ppmに調整される。
【実施例1】
【0027】
塩蔵して退色したワラビを下記のように処理して緑色を復元させる。
(1) 有機金属塩溶液にワラビを浸漬して緑色に復元する処理
有機金属塩溶液は、下記のようにして製作する。
1リットルの水に、グルコン酸の復塩である、グルコン酸−亜鉛−乳酸からなる有機酸の金属塩を添加して、Zn濃度を10ppmとする有機金属塩溶液の溶液とする。
【0028】
この有機金属塩溶液を90℃に加熱して、150gのワラビを浸漬する。浸漬された全てのワラビは、約5分経過すると変色が開始される。5〜15分浸漬した後、ワラビを有機金属塩溶液から取り出す。
【0029】
(2) 緑色に復元したワラビを調整液に浸漬して色調を調整して色止めする処理
調整液は、下記のようにして製作する。
1リットルに水に、
クエン酸………………………1000mg
還元糖…………………………1000mg
還元剤……………………………500mg
を添加して溶解させる。
【0030】
還元糖にブドウ糖を、還元剤にアスコルビン酸を使用して調整液とし、調整液を60〜65℃に加温し、加温された調整液に、(1)の処理の完了したワラビを有機金属塩溶液から取り出して浸漬する。ワラビは、この調整液に30分〜1時間浸漬して、色止めする。
【0031】
その後、調整液からワラビを取り出し、一晩から一昼夜、清水に浸漬して塩抜きして葉緑素を緑色にした食品とする。処理されたワラビを、30日清水に浸漬すると、水は緑色に変色せず、また、ワラビの鮮明な緑色は変色しなかった。
【実施例2】
【0032】
1リットルの水に、Znの濃度が2ppmとなるように、グルコン酸−亜鉛−乳酸からなる有機酸の金属塩の添加量を調整し、かつワラビをたらの芽とする以外、実施例1と同じようにして、退色したたらの芽を自然な緑色に変色できる。
【実施例3】
【0033】
さらに、1リットルの水にグルコン酸−亜鉛−乳酸からなる有機酸の金属塩を添加して、Zn濃度を1ppmとし、かつワラビを山ぜりとする以外、実施例1と同じように処理すると、退色した山ぜりは薄い緑色になった。さらに、この実施例において、有機酸の金属塩の添加量を亜鉛濃度が0.5ppmとするように調整して、山ぜりを処理すると山ぜりは淡い緑色に変色した。
【実施例4】
【0034】
使用する有機酸の金属塩を、グルコン酸−亜鉛−乳酸から、グルコン酸−亜鉛−アスコルビン酸とし、ワラビをキュウリとする以外、実施例1と同様にしてキュウリを処理すると、キュウリは自然な緑色に変色した。
【実施例5】
【0035】
使用する有機酸の金属塩を、グルコン酸−銅−乳酸に変更する以外、実施例1と同様にしてワラビを処理すると、ワラビは鮮明な緑色に変色された。
【実施例6】
【0036】
さらに、1リットルの水に、Zn濃度を20ppmとなるようにグルコン酸−亜鉛−乳酸を添加して有機金属塩溶液を製作する以外、実施例1と同じように処理すると、退色したワラビは速やかに鮮明な緑色になった。この実施例においては、高濃度な有機金属塩溶液を使用してワラビを速やかに緑色に変色できるので、ワラビを溶液に浸漬する時間を5分として鮮明な緑色に変色できる。
【実施例7】
【0037】
1リットルの水に、Cu濃度を3ppmとする量のグルコン酸−銅−乳酸を添加して有機金属塩溶液とする以外、実施例1と同じようにして、退色したワラビを美しい緑色に変色させることができる。有機酸の金属塩の添加量を、Cu濃度が0.5ppm〜3ppmのワラビの変色を試験すると、Cu濃度が1ppmよりも少なくなると緑色が次第に薄くなり、0.5ppmよりも少ないとほとんど変色しなくなる。
【実施例8】
【0038】
1リットルの水に、グルコン酸−亜鉛−乳酸に加えて、2gの乳酸カルシウムを添加する以外、実施例1と同じようにして、退色したワラビを緑色に変色される。この実施例で得られたワラビは、有機金属塩溶液に添加しているカルシウムの作用で、有機金属塩溶液に浸漬して加熱される工程で柔らかくなるのが防止されて、緑色に変色された。
【実施例9】
【0039】
グルコン酸−亜鉛−乳酸に代わって、アスコルビン酸亜鉛を使用する以外、実施例1と同じようにすると、退色したワラビは鮮明な緑色に変色される。
【実施例10】
【0040】
グルコン酸−亜鉛−乳酸に代わって、グルタミン酸亜鉛を使用する以外、実施例3と同じようにして、退色した山ぜりを鮮明な緑色に変色される。
【実施例11】
【0041】
グルコン酸−亜鉛−アスコルビン酸に代わって酢酸亜鉛を使用する以外、実施例4と同じようにして、退色したキュウリを鮮明な緑色に変色される。
【実施例12】
【0042】
ワラビを浸漬する有機金属塩溶液の温度を50〜100℃とする以外、実施例1と同じように処理して、退色したワラビを緑色に変色させることができる。有機金属塩溶液の温度を50〜60℃とする場合、変色が開始される時間は遅くなるので、浸漬時間を20〜60分と長くして鮮明な緑色に変色できる。
【実施例13】
【0043】
褐変した竹の箸を下記のように処理して、竹の緑色を復元させる。
(1) 有機金属塩溶液に竹の箸を浸漬して緑色に復元する処理
有機金属塩溶液は、下記のようにして製作する。
1リットルの水に、Zn濃度が30ppmとなるように酢酸亜鉛を添加して酢酸亜鉛の水溶液とする。
【0044】
酢酸亜鉛の水溶液を80℃に加熱して、竹の箸を浸漬し、15〜25分浸漬して緑色に変色させた後、有機金属塩溶液から取り出す。
【0045】
(2) 緑色に復元した竹の箸を、水洗する処理
緑色になった竹の箸を有機金属塩溶液から取り出し、24時間水洗した後、乾燥させる。
【実施例14】
【0046】
酢酸亜鉛に代わって酢酸銅を使用する以外、実施例13と同じようにして、退色した竹を鮮明な緑色に変色させる。
【実施例15】
【0047】
桜餅に使用する褐変した桜の葉を、下記のように処理して緑色を復元させる。
(1) 有機金属塩溶液に桜の葉を浸漬して緑色に復元する処理
有機金属塩溶液は、下記のようにして製作する。
1リットルの水に、Zn濃度が10ppmとなるようにグルコン酸−亜鉛−乳酸を添加して有機金属塩溶液とする。
【0048】
この有機金属塩溶液を80℃に加熱して、桜の葉を浸漬し、5〜10分浸漬した後、桜の葉を有機金属塩溶液から取り出す。
【0049】
(2) 緑色に復元した桜の葉を調整液に浸漬して色調を調整して色止めする処理
調整液は、下記のようにして製作する。
1リットルに水に、
クエン酸………………………1000mg
還元糖…………………………1000mg
還元剤…………………………1000mg
を添加して溶解させる。
【0050】
還元糖にブドウ糖を、還元剤にビタミンCを使用して調整液とし、調整液を60〜65℃に加温し、加温された調整液に、(1)の処理の完了した桜の葉を有機金属塩溶液から取り出して浸漬する。桜の葉は、この調整液に約1時間浸漬して、色止めする。
【0051】
その後、調整液から桜の葉を取り出し、清水で洗浄する。処理された桜の葉は、30日経過後も緑色が退色しなかった。
【0052】
以上の実施例は、有機金属塩溶液に添加する有機酸の金属塩に、Znを含有する有機酸の金属塩、Cuを含有する有機酸の金属塩を使用したが、本発明は、これ等の有機酸の金属塩に代わって、あるいはこれ等の有機酸の金属塩に加えて、Feを含有する有機酸の金属塩、Mgを含有する有機酸の金属塩、Seを含有する有機酸の金属塩、Moを含有する有機酸の金属塩、Crを含有する有機酸の金属塩、Mnを含有する有機酸の金属塩、Niを含有する有機酸の金属塩のいずれかを使用して、退色した植物を緑色に変色させることができる。有機金属塩溶液は、異なる金属を含有する複数種の有機酸の金属塩を添加することができ、また金属イオンを添加することもできる。有機酸の金属塩と金属イオンを添加している有機金属塩溶液は、有機酸の金属塩の作用で植物を緑色に変化できるので、金属イオンの濃度を低くして植物を自然な緑色に変色できる。
【0053】
さらに、以上の実施例は、褐変した植物の緑色を復元する方法を例示した。ただ、本発明の方法は、緑色が褐変した植物を処理するのではなくて、緑色をしている植物を処理して、緑色が退色するのを防止することもできる。それは、植物に亜鉛を添加することにより、植物の葉緑素に含まれるマグネシウムが失われて褐変するのを防止できるからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸と、グルタミン酸と、酢酸と、有機酸の復塩とのいずれかからなる有機酸と、植物の葉緑素に作用して緑色に処理する葉緑素緑化金属との化合物である有機酸の金属塩を溶解してなる有機金属塩溶液に植物を接触させて、植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法。
【請求項2】
葉緑素緑化金属が、ZnとCuとFeとMgのいずれかである請求項1に記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法。
【請求項3】
有機酸の復塩が、グルコン酸と乳酸の復塩、グルコン酸とアスコルビン酸の復塩、グルコン酸とグルタミン酸の復塩、グルコン酸と酢酸の復塩、アスコルビン酸と乳酸の復塩、アスコルビン酸とグルタミン酸の復塩、アスコルビン酸と酢酸の復塩のいずれかである請求項1に記載される
【請求項4】
葉緑素緑化金属が、Zn、Se、Mo、Cr、Mn、Niのいずれかの金属である請求項1に記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法。
【請求項5】
植物を接触させる有機金属塩溶液の金属濃度が0.5ppm以上である請求項1ないし4のいずれかに記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法。
【請求項6】
植物を接触させる有機金属塩溶液の温度が15℃〜100℃である請求項1ないし5のいずれかに記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法。
【請求項7】
有機金属塩溶液を植物に接触させる時間が1分以上である請求項1ないし6のいずれかに記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法。
【請求項8】
有機金属塩溶液を植物に接触させる時間が60分以下である請求項1ないし7のいずれかに記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法。
【請求項9】
有機金属塩溶液がカルシウムを含有する請求項1ないし8のいずれかに記載される植物の緑色を復元しあるいは緑色に保存する方法。

【公開番号】特開2008−307008(P2008−307008A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159565(P2007−159565)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(596109169)
【Fターム(参考)】