説明

植物性食品を調製するための方法およびそれにより得られた植物性食品

本発明は、以下の工程を含む、植物性食品、好ましくは100%植物性および無グルテンの食品を調製するための方法である:
a)植物性タンパク質を、アルギン酸またはカラギーナンと混合させることによりタンパク質−親水コロイドの組成物を調製すること、b)工程a)の組成物を水溶性の二以上の原子価のイオンの溶液または懸濁液とブレンドし、それにより繊維性産物を得ること、c)工程b)において得られた繊維性産物をリンスすること、d)場合により、工程c)リンスした繊維性産物を濃縮すること、およびe)工程d)の繊維性産物を加工して、それにより該植物性食品を得ること。この方法は、繊維性産物の加工前に、非動物性の結合剤を、好ましくは粉末状で工程d)の繊維性産物とブレンドする追加工程を含むことを特徴とする。本発明は、本発明の方法を実施することにより入手可能な繊維性産物および植物性産物をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野本発明は、食品技術の分野、特に肉代用産物の調製に関する。本発明は、タンパク質ベースの繊維性の植物性食品、100%植物性および好ましくは無グルテンの食品を調製するための方法に向けられる。本発明は、植物性食品、ならびに100%植物性および好ましくは無グルテンの食品も提供する。
【0002】
背景
肉代用品は、主に特定の種類の肉の質感(texture)、風味および外観、ならびに/または化学的特性を含む、美的および官能特性に近づけた産物である。肉を使用しない食品の市場には、健康に関心の高い非菜食主義者、特定の食事規則に従う人、または菜食主義者および完全菜食主義者が含まれる。
【0003】
肉代用品を調製する当技術分野において、可能な限り厳密に天然肉を再現する努力が継続されている。小麦、米、(大)豆、菜種などの高純度な二次タンパク質源からの比較的安価なタンパク質材料を使用して、天然肉質感を疑似する産物を生産できることが長い間認識されている。しかし、重要な障害は、二次タンパク質源の材料に天然の慣れた腰の強い繊維性質感を与えることができないことであった。天然肉産物は、明確に認識され、強く好まれる確かな「食感」および「歯ごたえ」を与える質感を固有に持つ。
【0004】
二次タンパク質源の材料を処理して、質感化された産物を生産するための多くの方法が開発されている。
【0005】
例えば、NL 1 008 364は、タンパク質、植物由来の増粘剤、水を高温で混合して水性乳剤を形成する、肉代用産物を調製するための方法を開示する。次に乳剤を、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩を含むイオン溶液と混合して、繊維性産物を形成する。その後に、この繊維性産物を水でリンスし;余分な水を繊維性産物から取り除く。次に繊維性産物をさらに加工して、ソーセージ、バーガー、ペーストなどの食品を形成できる。
【0006】
肉代用産物の調製のための方法の別の例は、国際公開広報第2003/061400号において開示されており、タンパク質、例えば動物性タンパク質またはそれに由来する材料、金属カチオンと沈殿する親水コロイド、および水を高温度で、均質な混合物が形成するまで混合することを含む。次に混合物を金属カチオンの溶液と混合して、繊維性産物を形成する。得られた繊維性産物を特別な三次元形状にさらに成形できる。
【0007】
肉類似食品の調製のための方法のさらなる別の例がGB 1516733において開示されており、それは質感化されたタンパク質食品およびそれにより得られた食品の調製に向けられる。工程には、結合剤を含む溶液での特別な質感化されたタンパク質材料のコーティング、コーティング済み材料の成形および成形産物の加熱が含まれる。
【0008】
しかし、上記の方法の欠点は、繊維性産物の加工(例、成形)後に得られた食品が、肉産物のそれと明確に似た、確かな食感および/または歯ごたえを与える質感を有さないことである。
【0009】
上記の方法の別の重要な欠点は、得られた繊維性産物が満足できる結合特性を有さないことである。その結果として、そのような繊維性産物をバーガーなどの特定の三次元形状にプレスまたは成形することが困難であり、多くの場合、産物はその加工中に壊れる。
【0010】
加えて、場合によっては、これらの方法において、動物由来の成分を適用し、菜食主義者や完全菜食主義者などの特定の顧客群に適切ではない食品をもたらす。
【0011】
上記の観点から、当技術分野において、植物性食品を調製するための改良方法が依然として必要であることが明らかである。そのような改良方法は、使用が経済的で、容易かつ安全であり、食品に適切な栄養、官能および/または質感の特性を提供することが望まれる。
【0012】
したがって、上記の欠点の少なくとも一部を克服する方法を提供することが本発明の目的である。
【0013】
特に、植物性食品、特に100%植物性食品を調製するための改良方法を提供することが本発明の目的であり、該食品は改良された品質、栄養(例、タンパク質含量)、官能性(例、より良好な味)および質感(例、より良好な「食感」または「歯ごたえ」)の特性を示す。
【0014】
特定の三次元形状への加工が容易になり、植物性食品(例、バーガー)が消費前の加熱中に壊れないように、増大した結合特性を有する植物性食品を調製するための改良方法を提供することが本発明の別の重要な目的である。
【0015】
発明の概要
第1の局面において、本発明は、非動物性食品または植物性食品を調製するための方法を提供する。産物は、植物性タンパク質および親水コロイドを含む結合および加工済み繊維性産物である。方法は以下の工程を含む:
a)植物性タンパク質を、アルギン酸および/またはカラギーナンからなる群より選択される親水コロイドと混合させることによりタンパク質−親水コロイドの組成物を調製すること、
b)工程a)の組成物を水溶性の二以上の原子価のイオンの溶液または懸濁液とブレンドし、それにより繊維性産物を得ること、
c)工程b)において得られた繊維性産物のリンスすること、
d)場合により、工程c)のリンスした繊維性産物を濃縮すること、および
e)工程d)の繊維性産物を加工して、それにより該植物性食品を得ること。
【0016】
本発明は、特に、工程e)における繊維性産物の加工前に、非動物性または植物性の結合剤を工程d)の繊維性産物とブレンドする追加工程を含むことを特徴とする。
【0017】
好ましい態様において、非動物性または植物性の結合剤を粉末状で加えて、工程d)の繊維性産物を形成する。非動物性または植物性の結合剤は、粉末状で適用した場合、優れた結合特性を有する植物性食品の調製物をもたらすことが見出されている。粉末状で適用する非動物性または植物性の結合剤は、質感化された植物性食品のための優れた結合剤である。
【0018】
「非動物性食品」という用語は、動物由来の成分を含まない食品を指す。そのような食品は、非動物性原料にのみ由来する植物性成分および/または合成成分、例えば植物性原料に由来する合成成分を含みうる。非動物性食品は、非動物性結合剤または植物性結合剤を含みうる。
【0019】
「植物性食品」という用語は、植物由来の成分を本質的に含み、非動物由来の1以上の成分をさらに含みうる食品を指す。これに関連して使用する「本質的に」という用語は、60重量%まで、好ましくは70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%またはさらには100重量%までの植物性成分を含みうる食品を指す。換言すると、本発明の植物性食品は、40重量%未満、好ましくは30重量%、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、2重量%、または1重量%未満の非動物性成分を含みうる食品を指す。本発明の好ましい態様によると、植物性食品は100%植物性食品であり、動物由来の任意の成分を含まない。別の好ましい態様において、植物性食品は無グルテン食品である。さらに別の態様において、植物性食品は無グルテンおよび100%植物性の食品である。非動物性食品は、非動物性結合剤または植物性結合剤を含みうる。
【0020】
本発明の特定の態様において、「非動物性食品」および「植物性食品」という用語は本明細書において同義語として使用される。
【0021】
別の態様において、本発明は、本質的に植物性結合剤である非動物性結合剤が適用される非動物性食品を調製するための方法に向けられる。「非動物性結合剤」という用語は、動物由来の成分を含まない結合剤を指す。そのような結合剤は主成分として植物性成分を有する。本発明による非動物性結合剤は、例えば、限定はされないが、でんぶんおよび/またはガム(例、カルボキシメチルセルロース)などの非動物由来の1以上の成分をさらに含みうる。本発明による非動物性結合剤は、本質的に植物性タンパク質を含む。これに関連して使用する「本質的に」という用語は、60乾燥重量%を超える、好ましくは70乾燥重量%、80乾燥重量%、85乾燥重量%、90乾燥重量%、95乾燥重量%、98乾燥重量%、99乾燥重量%またはさらに100乾燥重量%を超える植物性タンパク質を含みうる非動物性結合剤を指す。換言すると、本発明の非動物性結合剤は、40乾燥重量%未満、好ましくは30乾燥重量%、20乾燥重量%、15乾燥重量%、10乾燥重量%、5乾燥重量%、2乾燥重量%、または1乾燥重量%未満の非動物性成分を含む結合剤を指す。
【0022】
「植物性結合剤」という用語は、植物性タンパク質を本質的に含み、例えば、限定はされないが、でんぶんおよび/またはガム(例、カルボキシメチルセルロース)などの非動物由来の1以上の成分をさらに含みうる結合剤を指す。これに関連して使用する「本質的に」という用語は、60重量%を超える、好ましくは70重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%またはさらには100重量%を超える植物性タンパク質を含みうる植物性結合剤を指す。換言すると、本発明の植物性結合剤は、30重量%未満、好ましくは20乾燥重量%、15乾燥重量%、10乾燥重量%、5乾燥重量%、2乾燥重量%、または1乾燥重量%未満の非動物性成分を含む結合剤を指す。
【0023】
本発明の特定の態様において、「非動物性結合剤」および「植物性結合剤」という用語は本明細書において同義語として使用される。
【0024】
本発明の好ましい態様によると、非動物性または植物性の結合剤は100%植物性結合剤であり、動物由来の任意の成分は含まない。別の好ましい態様において、非動物性または植物性の結合剤は無グルテン結合剤である。さらなる別の態様において、植物性食品は無グルテンおよび100%植物性の食品である。好ましい態様において、植物性結合剤は100%植物性タンパク質である。別の好ましい態様において、非動物性結合剤は100%植物性タンパク質である。
【0025】
本発明によると、方法は、肉産物のそれに似た繊維性構造を有する産物を調製するために提供される。本発明の方法を実施することにより得られる食品は、改良された栄養特性、例えば、高タンパク質含量および低脂肪含量、改良された官能特性、例えば、先行技術において利用可能な調製方法で調製された植物性産物よりも良好な味、良好な質感特性、特に良好な「食感」または「歯ごたえ」を示す。
【0026】
本発明は、改良された結合特性を有する植物性食品を調製するための方法も提供する。繊維性産物への植物由来の非動物性結合剤の添加により、ずっと良好に結合する食品を得ることができ、特定の三次元形状へのそのさらなる加工を容易にする。出願者は、得られた繊維性産物への植物性結合剤の添加によって食品のその後の加工性が大幅に改良されることを示した。さらに、出願者は、結合剤または植物性結合剤を粉末状で適用することにより、改良した結合特性を示す食品が得られ、それによってそのさらなる加工が大幅に容易になることを示した。
【0027】
本発明が、方法において適用されるすべての出発材料および原材料または溶液が非動物由来であり、したがって、動物質を含まない植物性食品を調製するための方法を提供することにさらに注目する。さらに好ましくは、食品を調製するために使用する出発材料ならびに得られた繊維性産物を結合するための結合剤は、植物に由来する。方法において使用する他の溶液および原材料は、動物に由来しない。したがって、本発明の方法によると、繊維性産物および植物性食品の完全な生産工程中で動物由来の化合物の汚染は避けられる。本発明は、このように、完全な調製方法中に動物由来の化合物による汚染が避けられる、植物性食品を調製するための方法を提供する。本発明の方法によって、菜食主義者または完全菜食主義者などの特定の消費者グループに特に適切な食品を調製できる。
【0028】
加えて、この方法の好ましい態様において、本発明の食品は無グルテンである出発材料から得られ、方法において適用される原材料および/または溶液はグルテンを含まない。本発明の方法により入手可能な本発明の食品は、したがって、グルテンアレルギーを患う人々にも特に適切である。
【0029】
別の局面において、本発明は、本発明の方法の工程a)、b)およびc)または工程a)、b)、c)およびd)を実施することにより入手可能な繊維性産物に関する。
【0030】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の方法を適用することにより入手可能な食品を提供する。植物性食品は、本明細書において定義する非動物性または植物性の結合剤とブレンドした繊維性産物である。本発明の方法で得られる本発明の食品は、最適な栄養および質感の特性を有し、良好な結合特性を示すため、任意の所望の三次元形状にさらに加工(形成)することが容易である。特に、食品は、上記の通り、改良された「食感」および「歯ごたえ」の知覚を提供することにより、改良された消化性、より良好な官能性および構造(質感、繊維)の特性を含む、改良された栄養特性を示す。
【0031】
本発明の特性をより良好に示すための洞察により、本発明の方法の一部の好ましい態様ならびに該方法を実施することにより得られる繊維性産物および植物性食品を以下に記載する。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、本質的に植物性食品である非動物性食品およびそのような産物を得るための方法に向けられる。この方法はまず繊維性産物の調製を含み、その後にそれは特定の適切な形状を有する食品に加工(形成)される。好ましい態様において、本発明は、100%植物性、好ましくは無グルテンの食品を調製するための方法を提供する。
【0033】
定義
「食品」という用語は、本明細書において広い意味で使用され、ヒトのための食物を対象とする。好ましくは、食品は、肉または魚の代用産物を指す。食品は、50重量%超、好ましくは70重量%超、より好ましくは85重量%超の(濃縮)繊維性産物を含む。食品は、固形状、例えば、バーガー、コロッケ、ナゲット、団子、スティック、ソーセージ、ピース、コルドンブルーのような詰め物をした産物(しかし、動物性タンパク質不含)、ミンチした植物性肉などの形状でありうる。
【0034】
本明細書において使用する「繊維性産物」という用語は、本発明の方法の工程a)、b)およびc)または工程a)、b)、c)およびd)を実施することにより入手可能であり、実質的に線維を含む産物を指す。これに関連する「実質的に」という用語は、50重量%超、好ましくは60重量%、70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%超またはさらに100重量%の繊維を含みうる産物を指す。
【0035】
「植物性」または「植物由来」という用語は、本明細書において、それらが指す産物が植物または植物の部分に由来する化合物を含むことを指示するために使用する。「100%植物性」という用語は、本明細書において、それらが指す産物が植物または植物の部分に由来する化合物のみを含むことを指示するために使用する。100%植物性産物は、動物由来の化合物を含まず、したがって、動物質を含まない。「非動物性」または「動物質を含まない」という用語は、本明細書において、それらが指す産物、原材料または溶液が動物由来の化合物を含まないことを指示するために使用する。
【0036】
本明細書において使用する「無グルテン」という用語は、グルテンタンパク質を含まない産物、原材料または溶液を指す。そのようなグルテンタンパク質は、一部の穀物、顕著には、小麦、ライムギおよびオオムギにおいて見出される。
【0037】
調製方法
工程a)第1工程において、本発明の方法は、植物性タンパク質を、いずれも金属カチオンと沈殿するアルギン酸またはカラギーナンと混合することによりタンパク質−親水コロイド組成物を調製することを含む。タンパク質−親水コロイド組成物は、懸濁剤または乳剤などの分散剤の形状で調製する。
【0038】
本発明の方法において使用する「植物性タンパク質」は、植物または植物の部分に由来し、実質的に動物質を含まないタンパク質である。この用語は、動物または魚、例えば、乳または乳製品(例、カゼイン、カゼイン塩、およびホエータンパク質)または卵(例、鶏卵アルブミン)、またはウシもしくは魚のゼラチンに由来するタンパク質を除外する。植物性タンパク質は、好ましくは、大豆(soya)(またはダイズ(soybean))、エンドウマメ、ルピナス、ナタネ、ジャガイモ、米、豆、またはトウモロコシを含む群より選択される植物に由来する。本発明において適用可能な植物性タンパク質を得ることのできる植物の特に好ましい例として、大豆、エンドウマメ、またはルピナスなどのマメ科の植物が挙げられる。
【0039】
好ましい態様において、工程a)において適用する植物性タンパク質は、100%植物性タンパク質、より好ましくは無グルテン100%植物性タンパク質である。
【0040】
植物性タンパク質は、工程a)において、乳(例、豆乳)、単離物、濃縮物または粉末の形状で適用できる。
【0041】
一例において、本発明の方法において出発材料として使用し、工程a)において適用する植物性タンパク質は、豆乳または全ダイズから調製される豆乳、または全脱脂ダイズから調製される豆乳の形状で適用される大豆タンパク質でよい。
【0042】
本発明において適用される親水コロイドは、好ましくは、カチオン、好ましくは原子価が少なくとも2の金属カチオンと沈殿する親水コロイドである。好ましくは、親水コロイドはポリサッカライドであり、それはカラギーナンおよびアルギン酸を含む群より選択される。
【0043】
好ましい態様において、親水コロイドはアルギン酸、好ましくはアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムまたはアルギン酸アンモニウムである。これらのアルギン酸は二以上の原子価の(金属)イオンとゲル化する。適切なアルギン酸の例は、(1%水溶液)中で100−1000mPa.s、より好ましくは400−600mPa.sの粘性を有するアルギン酸である。粘性は、Brookfield RVスピンドル、好ましくはスピンドルナンバー2および20rpmのスピンドルガードを伴うBrookfield粘度計タイプRV(例、RVT)を使用して20℃で測定できる。一例において、脱イオン水中に分散した1%アルギン酸は、10microS/cm未満の伝導率を有する。
【0044】
アルギン酸の単量体の基礎単位は、ベータ−D−マンヌロン酸(M)および(1,4)アルファ−L−グルロン酸(G)である。アルギン酸がゲル化する能力は、その分子構造における比率およびGブロックの長さにより決定される。3つの異なるM−またはG−ブロックプロファイルが、核磁気共鳴分析法(NMR)により決定できる:% MM、%MG&GMおよび%GG。それらの3つの割合の合計は100%である。好ましい態様において、本発明の方法において適用されるアルギン酸は、25%より高く、より好ましくは30%より高く、さらにより好ましくは45%より高く、最も好ましくは50%より高い%GGを含むアルギン酸である。アルギン酸の由来は、好ましくは海草、より好ましくはラミナリアヒペルボレア(Laminaria hyperborea)、またはラミナリアディギタータ(Laminaria digitata)、またはレッソニアトラベキュラタ(Lessonia trabeculata)、またはエクロニアマキシマ(Ecklonia maxima)の種の海草、さらにより好ましくはラミナリアヒペルボレアまたはレッソニアトラベキュラタの種の海草、最も好ましくはラミナリアヒペルボレアの種の海草の幹からのアルギン酸である。
【0045】
別の態様において、親水コロイドはカラギーナンである。本出願において適用するカラギーナンは、κカラギーナンもしくはιカラギーナンまたはκおよびιのカラギーナンのブレンドを含みうる。ιおよびκのカラギーナンは、二以上の原子価のイオン、例えばカルシウムイオンとゲルを形成できる。適用するカラギーナンは、場合により、少量のλカラギーナンを含みうる。
【0046】
植物性タンパク質は粉末状または分散状で適用でき、後者は植物性タンパク質粉末を水と混合することにより得ることができる。植物性タンパク質には、分散剤を混合または均質化する前、途中または後に、植物由来のオイル、植物由来の脂肪、糖、ビタミンおよび場合によりハーブなどの分散原材料をさらに加えてよい。好ましくは、工程a)において適用する植物性タンパク質は、乳剤状(例、大豆飲料)であり、より好ましくは部分脱脂乳剤状である。
【0047】
親水コロイド、および好ましくは、アルギン酸は、粉末状または水中での分散剤として使用できる。粉末状の植物性タンパク質を親水コロイド(例、アルギン酸)分散剤に加えることができる。あるいは、粉末状で、または水中での分散剤として提供する親水コロイドを、植物性タンパク質の分散剤または乳剤と混合する。均質な混合物または分散剤が得られるまで植物性タンパク質と親水コロイドを混合し、それは本明細書においてタンパク質−親水コロイド組成物とも表示される。
【0048】
別の態様において、本発明の方法は、タンパク質と親水コロイドを混合してタンパク質−親水コロイド組成物を形成する前に、本明細書において金属イオン封鎖剤とも表示される錯体形成剤を植物性タンパク質の分散剤または乳剤および/または親水コロイド分散剤に加える工程を含む。特定の場合において、植物性タンパク質の分散剤は、高レベルの二以上の原子価のイオン、例えば、限定はされないが、Ca2+、Mg2+、またはAl3+などを含み、植物性タンパク質の分散剤を親水コロイド分散剤と混合する時、またはその後に、粘性の高過ぎる組成物が作られうる、または、不必要なある種の繊維性物質が形成される。そのような問題を克服するために、植物性タンパク質の分散剤または乳剤および/または親水コロイド分散剤への金属イオン封鎖剤の添加が好まれうる。親水コロイドを粉末状の植物性タンパク質へ加える場合、金属イオン封鎖剤を植物性タンパク質の分散剤へ加えることができる。本発明において使用されうる金属イオン封鎖剤の非限定的な例として、リン酸、ポリリン酸、および/またはクエン酸が挙げられる。好ましくは、金属イオン封鎖剤は、本発明の二以上の原子価のイオンの50重量%超の濃度で適用される。有利に、金属イオン封鎖剤の添加は、タンパク質および親水コロイドの混合物をもたらし、不必要な繊維性物質は形成されない。後者は、タンパク質およびポリサッカライドのいずれも、好ましくはアルギン酸が、全体的に膨張でき、これによって工程b)後に結果として得られる繊維性産物の多汁性が増大することも意味する。
【0049】
親水コロイド(アルギン酸)と植物性タンパク質の間の比が重要である:最終組成物において添加量の成分の全体を実質的に取り込むことが目的である。好ましい態様において、本発明の方法は、したがって、親水コロイド/タンパク質の比が5と0.05の間であり、好ましくは2と0.1の間であり、最も好ましくは1.5と0.15の間であるタンパク質−親水コロイドを調製することを含む。
【0050】
上で定義する比は、工程b)の後で結果として得られる繊維性産物の最終的なかみ応え、多汁性および堅さのために極めて重大である。特に、とりわけ親水コロイドの濃度によって繊維性産物の水分含量、およびその質感の堅さおよび多汁性も決定される。過剰の親水コロイド、例えばアルギン酸を使用する場合、かみ応えまたはゴム質が高過ぎる。親水コロイド以外の他の成分、例えば植物性タンパク質が過剰に存在する場合、繊維性産物の堅さは低過ぎる、または、さらには、実質的に線維性産物は得られない。
【0051】
上記の方法工程により得られるタンパク質−親水コロイド組成物は、以下の特性によりさらに記載できる。好ましくは、タンパク質−親水コロイド組成物は、少なくとも3% w/w、好ましくは少なくとも5% w/w、より好ましくは少なくとも10% w/wの親水コロイド含量、好ましくはアルギン酸含量を有する。また、タンパク質−親水コロイド組成物は、少なくとも4% w/w、好ましくは少なくとも10% w/w、より好ましくは少なくとも20% w/wのタンパク質含量を有する。別の態様において、繊維性産物は、10% w/w未満、好ましくは7% w/w未満、より好ましくは4% w/w未満の脂肪含量、好ましくは植物性脂肪含量を有する。
【0052】
植物性タンパク質を親水コロイド、例えば、アルギン酸と混合することは、ミキサー、ブレンダー、スターラー、ホモジナイザーまたは任意の他の混合またはブレンディングの機器により、温度0℃と100℃の間、好ましくは4℃と95℃の間、より好ましくは10℃と85℃の間、最も好ましくは60℃超で、pH値2と10の間、好ましくは3と8の間、より好ましくは4と7の間、最も好ましくは5と7の間で、イオン強度500 mM未満、好ましくは100 mM未満、より好ましくは20 mM未満で実施できる。
【0053】
工程b)
第2の工程において、方法は、工程a)の組成物をイオン水溶液とブレンドし、それにより繊維性産物を得ることを含む。本発明の方法は、イオン溶液またはイオン分散剤の調製を含む。好ましくは、イオン溶液は、原子価が少なくとも2の溶液を含む。適切なイオン溶液の非限定的な例には、カルシウム、アルミニウムおよび/またはマグネシウムの塩、および好ましくはCaCl、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、MgCl、AlCl、またはCaSOの溶液、および好ましくはCaCl2溶液が含まれる。好ましくは、イオンの溶液または分散剤は、濃度0.1と30% w/wの間、好ましくは0.5と20% w/wの間および最も好ましくは1と10% w/wの間で適用される。イオン溶液の濃度は、総反応時間、および繊維の長さにも有益な効果を及ぼす。イオン溶液の適切な濃度の使用が重要である:濃度が高過ぎる場合、全ての親水コロイド(アルギン酸)との反応が早く進みすぎ、実質的に全ての親水コロイド、例えばアルギン酸が、(ほぼ)即座に反応し、特定の構造の形成を招き、それは好まれない。濃度が低過ぎる場合、親水コロイド、例えばアルギン酸との反応が遅く進みすぎ、長過ぎる反応時間を招き、それは経済的な不利点である。
【0054】
二以上の原子価のイオンの溶液または分散剤とタンパク質−親水コロイド組成物(分散剤)の比は、選んだイオンの原子価およびタンパク質−親水コロイド組成物(分散剤)の濃度に強く依存する。好ましくは、本発明の方法によると、イオン溶液をタンパク質−親水コロイド組成物と、イオン溶液/タンパク質−親水コロイド組成物の比0.05と5の間、好ましくは0.1と1の間、より好ましくは0.15と0.8の間、最も好ましくは0.2と0.5の間でブレンドする。
【0055】
イオンの溶液または分散剤を簡単に工程a)のタンパク質−親水コロイド組成物と混合できる。イオンの溶液または分散剤を連続的な撹拌または混合下でタンパク質−親水コロイド組成物と混合できる。好ましくは、イオン溶液をタンパク質−親水コロイド組成物と徐々に混合し、これによってイオン溶液をゆっくりと、または徐々に加える。この目的のために、この混合工程は、限定はされないが、パドルミキサーなどの機器において実施できる。
【0056】
あるいは、本発明の方法は、イオンの溶液または分散剤を工程a)のタンパク質−親水コロイド組成物に噴霧することを含みうる。イオン溶液をタンパク質−親水コロイド組成物に徐々に噴霧し、後者を連続的に撹拌、混合またはブレンドする。
【0057】
イオン溶液を混合または噴霧する場合、繊維性または塊の産物の徐々の形成に(視覚的に)注意する。イオンの溶液または分散剤の徐々の添加中でのタンパク質−親水コロイド組成物の混合、ブレンドまたは撹拌のスピードは、繊維性または塊の産物の形状または形成のために極めて重要である。このスピードが高い場合、多少短い繊維性または塊の物質が形成するが、低スピードでは、多少長い繊維性産物が形成する。
【0058】
タンパク質−親水コロイド組成物をイオンの溶液または分散剤と混合することは、温度0℃と100℃の間、好ましくは4℃と95℃の間、より好ましくは10℃と74℃の間、または15℃と35℃の間、最も20℃未満、pH値2と10の間、好ましくは3と8の間、より好ましくは4と7の間、最も好ましくは5と7の間で実施できる。
【0059】
工程c)
次の工程において、排液、ろ過、適度の圧搾または同様の技術によって余分な水またはイオン溶液を繊維性産物から除去する。繊維性産物は好ましくは複数回水または水溶液で十分に洗浄およびリンスし、未反応塩をさらに除去する。後者の手順は、結果として得られる食品のより良好で、ずっと中性で塩気の少ない味をもたらす。
【0060】
工程d)
次の工程において、工程c)のリンスした繊維性産物を濃縮する。場合により、その後の工程において、繊維性産物を小片または繊維に切ることができる。場合により、繊維性産物をさらに圧搾またはプレスし、より高い乾燥物にすることもできる。次の工程は、場合により、所望の乾燥物を得るための、リンスした繊維性産物の少なくとも部分乾燥も含みうる。
【0061】
d)とe)の間の工程本発明の方法は、繊維性産物の加工前に、非動物性結合剤、好ましくは植物性結合剤と工程d)の繊維性産物をブレンドする工程をさらに含む。本明細書において使用する「結合剤」という用語は、ほぐれた混合物またはほぐれた繊維またはほぐれた塊をくっつけることのできる成分を指す。
【0062】
上記の通り、非動物性結合剤という用語は、主成分として、すなわち、60乾燥重量%超、好ましくは70、80、90、95乾燥重量%超の植物性タンパク質を有し、場合により他の非動物性成分(でんぷんまたはガムなど)を含みうる。好ましくは、非動物性結合剤は植物性タンパク質のみを含み、より好ましくは、この植物性タンパク質の由来がマメ科の植物であり、最も好ましくは、それは大豆タンパク質である。
【0063】
非動物性結合剤または植物性結合剤は、このように、大豆(豆)、エンドウマメ、ルピナス、ナタネ、ジャガイモ、米または豆を含む群より選択される植物に由来する植物性タンパク質を本質的に含む。本発明において適用可能な植物性タンパク質が得られる植物の特に好ましい例として、大豆、エンドウマメ、またはルピナス、および最も好ましくは大豆などのマメ科の植物が挙げられる。一態様において、本発明の方法において適用される非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、方法の工程a)において適用される植物性タンパク質と同じである。別の態様において、本発明の方法において適用される非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、方法の工程a)において適用される植物性タンパク質と異なる。好ましい態様において、前記の非動物性結合剤または植物性結合剤は、植物性タンパク質、好ましくは100%植物性タンパク質、さらにより好ましくは無グルテン100%植物性タンパク質を含む。
【0064】
非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、好ましくは、少なくとも80乾燥重量%のタンパク質、より好ましくは少なくとも85乾燥重量%、少なくとも90乾燥重量%、少なくとも95乾燥重量%を含む。別の好ましい態様において、本発明は、非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる前記の植物性タンパク質が、10重量%未満、好ましくは7重量%未満、より好ましくは4(乾燥)重量%未満の脂肪を含む方法に関する。さらなる別の態様において、非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、少なくとも80無脂肪乾燥重量%のタンパク質、より好ましくは少なくとも85無脂肪乾燥重量%、少なくとも90無脂肪乾燥重量%、または少なくとも95無脂肪乾燥重量%のタンパク質を含む。
【0065】
本発明の好ましい態様において、非動物性結合剤または植物性結合剤は、植物性タンパク質単離物、植物性タンパク質粉末、および/または植物性タンパク質濃縮物を含む群より選択される植物性タンパク質を含む。本発明の結合剤中に含まれる適切な植物性タンパク質の例として、限定はされないが、例えば、大豆タンパク質単離物(SPI)、エンドウマメタンパク質単離物、大豆タンパク質粉末、エンドウマメタンパク質粉末、大豆タンパク質濃縮物(SPC)、または大豆タンパク質濃縮物が挙げられる。
【0066】
好ましい態様において、非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、ダイズタンパク質、好ましくは大豆タンパク質単離物(SPI)、大豆タンパク質粉末、および/または大豆タンパク質濃縮物(SPC)である。最も好ましくは、それは大豆タンパク質単離物である。
【0067】
ダイズタンパク質は2S、7S、11Sおよび15Sのタンパク質に分類できる。当業者に明らかなように、記号SはSvedbergを表示し、それは超遠心分離における粒子タイプの挙動を特性付けるために使用する物理単位である。粒子が大きいほどSvedberg値は高くなる。それは、合計1013 sまたは100 fsに達する時間の単位である。ダイズタンパク質を含む単離物、濃縮物および/または粉末は、これらの2S、7S、11S、および15Sのタンパク質の1つ、あるいは1以上の組み合わせを含むことができる。
【0068】
好ましい態様において、本発明の非動物性または植物性の結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、ダイズタンパク質単離物(SPI)である。該SPIは、好ましくは、7Sタンパク質よりも11Sタンパク質を多く含む。該SPIにおける11Sタンパク質の量と7Sタンパク質の量の比は、好ましくは1より高い。
【0069】
別の好ましい態様において、本発明の非動物性または植物性の結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、ダイズタンパク質濃縮物(SPC)である。前記SPCは、好ましくは、7Sタンパク質よりも11Sタンパク質を多く含む。前記SPCにおける11Sタンパク質の量と7Sタンパク質の量の比は、好ましくは1より高い。
【0070】
さらなる別の好ましい態様において、本発明の非動物性または植物性の結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、大豆タンパク質粉末(SPF)である。前記SPFは、好ましくは、7Sタンパク質よりも11Sタンパク質を多く含む。前記大豆タンパク質粉末における11Sタンパク質の量と7Sタンパク質の量の比は、好ましくは1より高い。
【0071】
ダイズタンパク質が7Sタンパク質よりも11Sタンパク質を多く含み、これによりSPI、SPCまたはSPFにおける11Sタンパク質の量と7Sタンパク質の量の比が1より高い、植物性タンパク質としてダイズタンパク質、好ましくはSPI、SPFまたはSPCを含む結合剤は、他の相対量のSクラスのタンパク質を有する、および特に7Sタンパク質よりも11Sタンパク質を少なく有する、植物性タンパク質としてダイズタンパク質を含む結合剤と比較して、いくつかの改良効果を提供することが示された。
【0072】
別の好ましい態様において、非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、ダイズタンパク質、好ましくは大豆タンパク質単離物(SPI)、大豆タンパク質粉末(SPF)、または大豆タンパク質濃縮物(SPC)であり、ここで前記の単離物、粉末または濃縮物は本質的に11Sタンパク質を含む。これに関連する「本質的に含む」という用語は、ダイズタンパク質、好ましくはSPI、SPCおよび/またはSPFを指すことを意図しており、ここで11Sタンパク質の総量は、30重量%超、好ましくは40重量%超、さらに好ましくは45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または98重量%超の11Sタンパク質を含む。
【0073】
非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、可能な限り少量のポリサッカライドを含む。植物性タンパク質は、可能な限り高い、可能な限り天然の、可能な限り非変性の機能性を有する。したがって、本発明の非動物性結合剤または植物性結合剤中に含まれる植物性タンパク質は、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、80%、90%、または95%のタンパク質分散指数(PDI)を有する。タンパク性分散性指数(PDI)は、標準条件下で水中に分散する総タンパク質の割合と定義される。PDIはAOCS公定法Ba 10−65を使用して測定でき、それは当業者に周知である。
【0074】
本発明の結合剤は優れた結合剤として機能し、熱凝固可能ゲルを形成しうる。結合剤は、タンパク質含有繊維を十分に結合し、最終的に加工される肉様産物の一定の形状を維持する。本発明の結合剤は、その優れた結合特性に起因するそのような効果を達成できる。
【0075】
好ましい態様において、非動物性結合剤または植物性結合剤は、本発明の方法において、5と15% w/wの間、好ましくは9と13% w/wの間の濃度で、繊維性産物に適用される。
【0076】
特に好ましい態様において、本発明は、粉末状の非動物性結合剤または植物性結合剤の繊維性産物への添加を含む。粉末状の非動物性または植物性の結合剤に、場合により、塩やハーブなどの他の原材料を添加できる。好ましい態様において、塩やハーブなどの他の原材料は、本発明の方法において、1と7% w/wの間、好ましくは3と5% w/wの間の濃度で、繊維性産物に適用される。好ましくは、結合剤は、15重量%未満、好ましくは12.5重量%未満、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは6重量%未満の水分含量を有する。
【0077】
本明細書において定義する非動物性または植物性の結合剤は、本発明の方法において粉末状で適用される場合、所望の形状の植物性食品を形成するために、本明細書において定義する繊維性産物を結合するのに非常に効果的であることが見出された。本明細書において使用する「粉末状」という用語は、粒子状で提供される結合剤を指す。
【0078】
本発明に従って、粉末状の結合剤と繊維性産物とのブレンディングによって最終産物、すなわち、植物性食品に改良した結合特性が付与されること、および、先行技術において示唆されている通り、粉末状の結合剤を使用した場合、可溶型の結合剤と比較し、より良好な結合特性を付与できることが示された。
【0079】
別の好ましい態様において、本発明は、本発明の方法工程d)後に直接的に得られる繊維性産物への粉末状の非動物性結合剤または植物性結合剤のブレンディングを含む。本発明に従って、繊維性産物は、好ましくは、結合剤を加える前に追加の(余分な)水で水和されない。その上、好ましくは繊維性産物への結合剤の添加後、繊維性産物に追加の水溶液(例、水)は加えない。
【0080】
驚くべきことに、本発明によると、適切な結合特性を得るために、本明細書において定義する粉末状結合剤とブレンドする前および/またはその後に繊維性産物に水溶液を加える必要はない。また、繊維性産物とブレンドする前に、結合剤を水和する必要はない。対照的に、方法の工程d)において得られる繊維性産物への本発明の粉末状の結合剤の添加によって優れた結合特性を示す産物がもたらされる。
【0081】
繊維性産物が50% w/wより高い水分含量、例えば50と90% w/wの間、好ましくは60と85% w/wの間、さらに好ましくは70と80% w/wの間の水分含量を含む場合、本発明の方法の工程a)からd)の実施後に得られる繊維性産物に結合剤を加えることができる。
【0082】
本発明の方法で得られる繊維性産物の水分含量は、粉末結合剤の適当な湿潤を提供するために十分である。出願者は、粉末結合剤と本発明の方法の工程d)において得られる繊維性産物とのブレンディングによって、ブレンディング工程の前後を問わず、繊維性産物への水溶液のさらなる添加なしに、改良した結合特性、および改良した官能性および質感の特製を示す植物性産物を調製できることをさらに示した。特に、肉の構造により似た構造を有する植物性食品を得ることができる。さらに、本発明の方法を適用することにより得られる繊維性産物、したがって植物性食品も改良された柔軟性および多汁性を有する。その上、本発明の方法によってより少量の結合剤を使用し、満足できる結合特性を得ることが可能になる。
【0083】
繊維性産物を非動物性または植物性の結合剤とブレンドすることは、ミキサー、ブレンダー、スターラー、ホモジナイザーまたは任意の他の混合またはブレンディングの機器により、温度0℃と100℃の間、好ましくは4℃と95℃の間、より好ましくは10℃と75℃の間;または15℃と35℃の間、最も好ましくはほぼ室温(これは経済的な利点である)で、pH値2と10の間、好ましくは3と8の間、より好ましくは4と7の間、最も好ましくは5.5と7の間で実施できる。
【0084】
工程e)
次の工程において、方法の上記の工程を実施することにより得られる繊維性産物をさらに加工し、その結果として、植物性食品の最終産物が得られる。
【0085】
一態様において、加工は、所望の三次元形状に繊維性産物を成形することを含む。適切な形状として、例えば、バーガー、コロッケ、ナゲット、団子、スティック、ソーセージ、ピースなどの形状が挙げられうる。そのような加工工程の結果として得られる産物は、本明細書において(成形)非加熱(熱処理していない)産物と表示する。
【0086】
非加熱産物は、そのままで、または、例えば、産物に植物由来の衣用生地を提供する、または産物にパン粉を付けるなど、場合によりさらなる処理を施して売ることができる。
【0087】
さらなる態様において、方法は、例えば、150℃と220℃の間の温度のオーブン中で、1から15分間成形した産物を加熱することをさらに含みうる。加熱は、蒸し、揚げ、調理、ベーキング、レンジ加熱またはそれらの組み合わせを含みうる。例えば、産物を150℃から180℃の温度で、30から60秒間揚げて、その後に産物を170℃の温度で5分間調理する。産物の中心の温度が約80℃から95℃、好ましくは少なくとも85℃、より好ましくは少なくとも90℃に達するように、後者の温度を選択する。そのような加熱加工工程の結果として得られる産物は、本明細書において、(成形済み)加熱済みまたは加熱処理済み産物と表記する。産物を加熱することにより、有利に、繊維性産物に加えた非動物性または植物性の結合剤が変性または凝集を受け、その結果として、繊維の互いの付着性が改良される。加えて、加熱工程は特に微生物学的観点からも有利であり、それによって産物の微生物汚染が低減され、それによりその保存期間が増大するためである。後者は、香辛料が存在する、香辛料自体が非常に高い細菌負荷を有する場合に非常に重要である。
【0088】
場合により、加熱産物は、加熱産物を冷却し、冷却済み産物をパックすることにより、さらに加工できる。適切なパッキング方法は真空パッキングを含みうるが、そこでは産物を真空下でプラスチック包装に置き、包装を密封する。別の包装方法として「調整気相包装(modified atmosphere packaging)」が挙げられ、それは包装の内部気相の組成物の調整の実行が含まれる。当分野において使用できる他の包装方法を用いてもよい。
【0089】
場合により、包装前に、冷却済み産物を追加の加熱−冷却サイクルにかけてよい。例えば、冷却済み産物をオートクレーブでき、その後にオートクレーブ済み産物を冷却する。
【0090】
繊維性産物
別の局面において、本発明は、本明細書において定義する、本発明の方法の工程a)、b)およびc)またはa)、b)、c)およびd)を実施することにより入手可能な繊維性産物に向けられる。繊維性産物は、植物性結合剤とブレンドされていない、および/または、加工されていない産物を指す。
【0091】
上記の方法工程により得られる繊維性産物は、以下の特性により記載できる。好ましくは、繊維性産物は、少なくとも8% w/w、好ましくは少なくとも10% w/w、より好ましくは少なくとも15% w/w、最も好ましくは少なくとも20% w/wのタンパク質含量を有する。別の態様において、繊維性産物は、10% w/w未満、好ましくは5% w/w未満、より好ましくは3% w/w未満の(植物性)脂肪含量を有する。
【0092】
好ましくは、繊維性産物は、50% w/wより高い水分含量、例えば、50と90%の間、好ましくは60と85% w/wの間、さらにより好ましくは70と80% w/wの間の水分含量を有する。
【0093】
本発明の繊維性産物は、本明細書において定義する、タンパク質を使用した繊維性の植物性食品を調製するための使用に特に適切である。本発明の繊維性産物は、肉製品(例、加工肉製品)において肉または肉由来原材料を部分的に置換できる。本発明の繊維性産物は、原材料/成分として食品中に使用することもできる。本発明の繊維性産物は、例えば、肉製品に加えることができる。産物を含む大豆タンパク質の肉産物への添加によって、脂肪、コレステロールおよびカロリーの減少による改良された栄養面での恩典がもたらされる。
【0094】
植物性食品
さらに別の局面において、本発明は、植物性食品、好ましくは100%植物性食品に向けられ、それは本明細書において記載する方法を実施することにより入手可能である。食品は、非加熱食品または加熱食品のいずれかを含みうる。
【0095】
本発明は、上記の方法により得られ、本明細書において定義する繊維性産物を含み、本明細書において定義する粉末状の非動物性または植物性の結合剤と結合した、植物性食品を提供する。
【0096】
上記の方法により得られる植物性食品は、以下の特性により記載できる。好ましくは、植物性食品は、少なくとも10% w/w、好ましくは少なくとも12% w/w、より好ましくは少なくとも15% w/wまたは20% w/wのタンパク質含量を有する。別の態様において、植物性食品は、10% w/w未満、好ましくは5% w/w未満、より好ましくは3% w/w未満の(植物性)脂肪含量を有する。さらに別の態様において、植物性食品は、15% w/w未満、好ましくは10% w/w未満の炭水化物含量を有する。
【0097】
表1は、本発明の方法を実施することにより得られる植物性食品の組成の例を表す。
【表1】

【0098】
本発明の食品は、すべての方法工程が条件下および/または動物質を含まない出発材料、原材料および溶液を使用して実施される方法を適用することにより得られる。これに関連する「動物質を含まない」という用語は、動物由来の成分を加えない出発材料、原材料および溶液を指す。したがって、最終食品は完全菜食主義者ならびに菜食主義の人々に適する産物である。その上、無グルテン出発材料、原材料および溶液の選択によって、小麦またはグルテンのアレルギーを患う人々に特に適切な食品を産生することが可能となり、この方法によって小麦またはグルテンを使用しない適切な食品を産生することが可能になる。本発明の植物性食品は、それらが良好な栄養特性を有することをさらに特徴とする;それらはカロリーおよび脂肪が低く、従来の肉産物よりも少量の飽和脂肪およびコレステロールを有する。その上、植物性食品は、弾力性、かみ応え、粘着性、湿り気などの質感特性を有し、天然肉のそれに相当する「歯ごたえ」およびレオロジーを得る。加えて、本発明の植物性食品は、有機産物、例えば、いわゆる「バイオ」産物でありうる。加えて、本発明の方法を実施することにより得られる植物性食品は、改良された結合特性を有し、すなわち、それはずっと良好に結合し、それによって特定の三次元形状へのそのさらなる加工が容易になり、それはその後のベーキングまたは調理の過程中を含む、植物性産物のその後の加工性および完全性を改良する。
【0099】
実施例
一例において、600 kgの豆乳および22 kgのアルギン酸を混合し、大豆−アルギン酸組成物を形成する。豆乳は5重量%のタンパク質および2.8重量%の脂肪を含む。その間に、20 kgの塩化カルシウムを200 kgの水に溶解することにより10% w/wの塩溶液を調製する。好ましくは、大豆−アルギン酸組成物に噴霧することにより、塩溶液をゆっくりと加え、ここで繊維性産物が形成する。繊維性産物を水または水溶液でリンスし、未反応カルシウム塩を除去し、約300 kgから500 kgの繊維性産物を産出するために、繊維性材料を漏出する。
【0100】
次の工程において、SPI、塩およびハーブを含む約50 kgの粉末性組成物を繊維性産物に加える。好ましくは、2 kgのでんぷんを繊維性産物に加えることができる。得られた生地を次にバーガーの形状に加工する。その後の工程は、植物由来の衣用生地および/またはパン粉およびコーンフレークなどの異なる種類の植物性フレークでのバーガーのコーティングを含む。バーガーを次に産物の中心の温度が約90℃に達するように、200℃の間の温度で約10分間加熱する、または、180℃のフライ専用鍋で約4分間事前に揚げる。加熱したバーガーを室温まで冷却し、その後にオートクレーブ−冷却サイクルを施す。最後に、バーガーをパックする。
【0101】
得られたバーガーは、改良された栄養特性を示し、例えば、高タンパク質含量および低脂肪含量、改良された官能特性、例えば、より良好な味、およびより良好な質感特性、特に、より良好な「食感」または「歯ごたえ」を示し、先行技術において利用可能な調製方法で調製されたバーガーと比較し、改良された結合特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性食品を調製するための方法であって:
a)植物性タンパク質を、アルギン酸および/またはカラギーナンからなる群より選択される親水コロイドと混合させることによりタンパク質−親水コロイドの組成物を調製すること、
b)工程a)の組成物を水溶性の二以上の原子価のイオンの溶液または懸濁液とブレンドし、それにより繊維性産物を得ること、
c)工程b)において得られた繊維性産物をリンスすること、
d)場合により、工程c)のリンスした繊維性産物を濃縮すること、および
e)工程d)の繊維性産物を加工して、それにより該植物性食品を得る工程を含み、
工程e)における繊維性産物の加工前に、非動物性結合剤を工程d)の繊維性産物とブレンドする追加工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
非動物性結合剤を粉末状で工程d)の繊維性産物に加える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
非動物性結合剤が15重量%未満の水分含量を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程a)において適用する植物性タンパク質が、大豆、エンドウマメ、ルピナス、ナタネ、ジャガイモ、豆、トウモロコシ、または米を含む群より選択される植物に由来する、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
親水コロイド/植物性タンパク質の比が5と0.05の間に含まれる、タンパク質−親水コロイド組成物を調製することを含む、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
工程b)が組成物へのイオン水溶液の混合または噴霧を含む、請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
イオン溶液を0.1〜30% w/wの間の濃度で適用される、請求項1から6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
イオン溶液を0.05と5の間のイオン溶液/組成物の比で適用する、請求項1から7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
非動物性結合剤が、大豆、エンドウマメ、ルピナス、ナタネ、ジャガイモ、豆、トウモロコシまたは米を含む群より選択される植物に由来する植物性タンパク質を本質的に含む、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
非動物性結合剤に含まれる植物性タンパク質が、植物性タンパク質単離物、植物性タンパク質粉末、および/または植物性タンパク質濃縮物を含む群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
非動物性結合剤に含まれる植物性タンパク質が、少なくとも80乾燥重量%のタンパク質を含む、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
非動物性結合剤に含まれる植物性タンパク質が、10乾燥重量%未満の脂肪を含む、請求項9、10、または11記載の方法。
【請求項13】
非動物性結合剤に含まれる植物性タンパク質が、少なくとも60%のタンパク質分散指数(PDI)を有する、請求項9から12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
非動物性結合剤が5と15% w/wの間の濃度で繊維性産物に適用される、請求項1から13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
産物の加工が、所望の三次元形状に産物を成形することを含む、請求項1から14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
150℃と220℃の間の温度で1から15分間成形した産物を加熱することをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項記載の方法の工程a)からc)またはa)からd)を実施することにより入手可能な繊維性産物。
【請求項18】
少なくとも8% w/wのタンパク質含量、および10% w/wより低い脂肪含量を有する、請求項17記載の繊維性産物。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項記載の方法を実施することにより入手可能な植物性食品。
【請求項20】
少なくとも10% w/wのタンパク質含量および10% w/w未満の脂肪含量を有する、請求項19記載の繊維性産物。

【公表番号】特表2010−507379(P2010−507379A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533796(P2009−533796)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061198
【国際公開番号】WO2008/049787
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509116875)ソーファイン・フーズ・ビーブイ (1)
【氏名又は名称原語表記】SOFINE FOODS BV
【Fターム(参考)】