説明

植物油を原料とする自動車用燃料(BDF)の製造方法及び製造装置

【目的】 比較的簡単な処理で、低温流動性を有する安定な自動車燃料を生産する自動車燃料の製造方法の実現を課題とする。
【構成】 原料油をプラズマ化して活性化するするプラズマ工程15と、オゾン処理して脂肪酸を低分子化するオゾン処理工程15と、固体アルカリ触媒の元でメチルエステル化するメチルエステル化工程17とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物油を原料とする自動車用燃料(BDF)の製造方法及び製造装置に関し、特に低分子化とメチルエステル化を連続して実施する自動車用燃料(BDF)の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油を原料とする自動車用燃料(BDF)の製造方法は、従来からアルカリ触媒法を筆頭にいろいろな方法が発表されている。しかし、それぞれ、以下の点で問題がある。
(1)アルカリ触媒法
植物油中のグリセリンをアルカリ触媒を用いてメチル基などと置換する方法。
この方法は、遊離脂肪酸に対して無力であるばかりでなく、出来上がった製品に含まれるアルカリ成分の除去のために多量の水が必要である。また、解離したグリセリンの処理も必要である。
長所としては設備が簡単であるという点が挙げられるが、出来上がった製品の性能は原料油の脂肪酸組成に依存し、低温で凝結しやすい油では出来上がった製品も同様に凝結してしまうなどの欠点がある。
・ オゾン酸化法
植物油中の脂肪酸をオゾンにより酸化分解して分子を細かくする方法であるが、原料
油とイオンとの接触方法に問題があり効果的な酸化反応が得られにくい。
・ 超臨界メチル反応法
高温高圧環境において原料油とメチルアルコールを接触させて原料油をメチルエステ
ル化するもので、高温高圧の得られる特殊な装置を必要とし、しかも処理に多大なエネルギーが必要であるなどの欠点がある。
・ 微生物酵素法
微生物由来の酵素リパーゼを用いて原料油を直接エステル化する方法であるが、処理
速度が遅く実用的ではない。
これらの他にもいろいろな方法が提案され、また発表されてきたが、実用化に適した方法は皆無であり、またすでに事業化している技術であっても特定の油種でなければ燃料化できないなどの欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような問題を解決するため、比較的簡単な処理で、原料植物油を高活性化した上で効率的に低分子化し、さらにメチルエステル化することによって、低温流動性を与えて安定な自動車燃料を生産する自動車燃料の製造方法と製造装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような問題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、自動車燃料を製造するにおいて、原料油をプラズマ化して活性化するするプラズマ工程と、オゾン処理して脂肪酸を低分子化するオゾン処理工程と、固体アルカリ触媒の元でメチルエステル化するメチルエステル化工程とを有することを特徴とする。
これにより、原料油の脂肪酸を効率的に低分子化し、さらにメチルエステル化することで、低温流動性を確保した安定な自動車燃料を供給することが可能な自動車燃料の製造方法を実現することができる。
【0005】
また、このような問題を解決するため、本発明の請求項2に記載の発明は、原料油を処理して自動車燃料を製造する自動車燃料の製造装置において、原料油をプラズマ化して活性化するするプラズマ処理手段と、オゾン処理して脂肪酸を低分子化するオゾン処理手段とを有し、その両手段がこの順で連続して処理を実施するように構成されていることを特徴とする。
これにより、原料油に連続一貫してプラズマ処理とオゾン処理とを行って低分子化することができ、多量、一貫生産に適した自動車燃料の製造装置を実現することができる。
【0006】
このような問題を解決するため、本発明の請求項3の発明は、エステル化処理手段をさらに有することを特徴とする。
ここで、本発明の請求項4の発明では、前記エステル化処理手段は、内部に触媒材料をコーティングした部材を有することを特徴とする。
また、本発明の請求項5の発明では、前記触媒材料をコーティングした部材は攪拌用の羽根(ステータ)であることを特徴とする。
これらにより、触媒を用いたエステル化処理を効率的に行うことができ、多量、一貫生産に適した自動車燃料の製造装置を実現することができる。
【0007】
このような問題を解決するため、本発明の請求項6の発明では、前記エステル化処理手段はグリセリンを分離膜で分離除去する膜分離手段を有することを特徴とする。
また、請求項7の発明では、前記分離膜はポリプロピレン膜であることを特徴とする。
これらにより、親水性のポリプロピレン膜を用いて容易にグリセリンを分離することができ、効率的な処理が可能な自動車燃料の製造装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上に述べたように、本発明の自動車燃料の製造方法及び製造装置では、原料油をプラズマ処理により高活性化した上で、オゾンと接触させて脂肪酸を効率的に低分子化し、さらに固体アルカリ触媒を用いてメチルエステル化することによって、低温流動性を有する自動車燃料を効率的に多量生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の自動車燃料の製造方法と製造装置を図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明では、プラズマ処理により原料油を高活性化した上で、オゾンと接触させて脂肪酸を効率的に低分子化し、さらに固体アルカリ触媒を用いてメチルエステル化することを特徴とするもので、従来低温流動性を確保するのが困難とされてきたパーム油などの油種にあっても安定な自動車燃料化が可能である。また、油種によってはエステル化をせずにそのまま自動車燃料とすることも可能であり、いずれも低温時においても凝結が起こらないなどの特徴を有する。
【0011】
本発明は、持続的に再生可能な植物油を原料とする自動車燃料の製造方法に関するもの
で、製造にあたって炭酸ガスの発生が少なく、使用にあっても大気中の炭酸ガスが増加することがない。また、原料が植物由来であることから石油資源のように枯渇することもなく、石油資源のない地域にあっても自動車燃料を提供することができる。
本発明で言うところの自動車燃料とはディーゼルエンジンの燃料を意味する。本来ディーゼルエンジンは窒素酸化物等の排出が少なくエネルギー効率がよいという特徴を持っている。また、機構的に丈夫で長持ちすることから過酷な条件で使用されることが多く、建設機械、貨物自動車、船舶、鉄道車両、発電機などに利用されてきた。しかし、黒煙を撒き散らすなどの理由で排ガスに対する規制が強化されてきており、排ガス浄化用の触媒装置の装着が義務付けられている。
【0012】
これに対し、植物油原料の自動車燃料は分子中に酸素を持っているため、黒煙の発生がきわめて少なく、潤滑性もすぐれているので振動や騒音も大幅に少なくなる。また、価格についても、産油国周辺事情による石油価格の上昇により軽油も重油も例外なく高騰している現状では、本発明の植物油原料の自動車燃料を用いたほうが経済的にも得策と考えられるようになってきている。
また、本発明の自動車燃料の原料(植物油)は農作物として生産されるので、工業的に立ち遅れた国々、地域であっても、十分生産可能で、農業の振興、雇用の確保など多方面にわたって好影響を及ぼす。
以上のように、本発明の属する産業分野は産業界全体に及び、また炭酸ガスの発生を抑制して地球の温暖化を阻止するという観点からも分野を超えて社会全体に寄与するものである。
【0013】
本発明の製造方法は原料油である植物油を加熱濾過して不純物を除去した後にプラズマ反応装置にて脂肪酸の分解を行い、次いでゼオライト濾過装置により副次生成物を濾過する第1の工程と、一次処理された油を固体アルカリ触媒を用いてメチルエステル化する第2の工程とに分けられる。
【0014】
図1は、本発明の自動車用燃料の製造工程を示す模式図である。
本製造工程では、原料油10に対して、第1の工程11と第2の工程12とが施工され
て自動車用燃料(BDF)13が製造される。第1の工程11は、加熱濾過工程14、プラズマ酸化工程15とゼオライト濾過工程16とからなり、第2の工程12は、エステル化処理工程17、洗浄工程18と乾燥工程19とからなる。
【0015】
(第1の工程の説明)
一般に自動車燃料に供される原料油10は、価格の点から低品位のものが多く、繊維素
や澱粉蛋白質などを含んでいるので濾過装置により不純物を除去する必要があるが、ココ
ナツオイルやパームオイルなどは比較的高温(摂氏10℃付近)で凝結してワックス状に
なってしまうので加熱融解してからでないと濾過できない。
加熱融解の方法はどのような方式でもかまわないが、図2に示す融解装置20を用いる
ことにより安全且つ効果的に融解することができる。
【0016】
融解装置20は固形ワックス状の原料油を投入しやすい口径の大きな原料油投入口2
2を持ち、加熱媒体注入ジャケット24つきのステンレス容器で、この容器に、固形ワックス状の原料油を投入しジャケットに約80℃の熱水を熱水入口26から熱水出口27に対して流して原料油を融解する。
【0017】
装置20に付属する攪拌モータ21と攪拌羽根23とからなる攪拌装置は原料油10
が融解し始めたら作動させる。攪拌装置は原料油10の融解を早め完全融解させるために有効で、攪拌モータ21の回転速度は毎分50〜60rpmで緩速攪拌する。
十分に融解した原料油は原料油出口25から取り出して濾過装置に導入する。
濾過装置は繊維素や澱粉質、蛋白質などの固形物を除去するもので、濾過精度50ミク
ロン程度のフィルターを用いる。フィルターの種類はカートリッジ型あるいはバッグ型など、取り扱いが容易で所定の精度があればどのような方式のもでも可能である。
【0018】
図3は原料油31の改質方法を示す模式図である。前述のとおり原料油31はいろいろ
な種類の脂肪酸を含んでおり、分子量の大きな脂肪酸が低温流動性を悪化させる要因となっていることが知られている。本発明は原料油中の比較的分子量の大きな脂肪酸(たとえばC12以上のもの)をプラズマ処理によって高活性化し、次いでオゾンにより酸化分解させることを特徴とするものである。
【0019】
図3の(1)は加熱融解濾過処理の終わった原料油で、(2)はプラズマ放電を行うための不活性ガス(キャリアガス)である。本発明においては不活性ガスにアルゴンガスを用いる。後続する工程でオゾン処理を行うので不活性ガスの代わりに酸素を使用すると得策のように思われがちだが、その場合分子量の低い脂肪酸の酸化分解比率が多くなりかえって効率が悪くなる。
スタチックミキサー(3)は原料油(1)とキャリアガス(2)とを混合するために使用するもので、必ずしもスタチックミキサー(3)を使用しなければならないということはなく、タービンポンプを用いた動力混合装置などであっても差し支えない。
【0020】
キャリアガスの混合された原料油は(4)のプラズマ活性化処理により高活性化される。
プラズマ活性化処理に使用される装置は図4に示した構造で、誘電体でつくられた筒状の容器41の中心部に金属製の励起電極42が内装され、容器41の外側には容器41に密接してアース電極45が形成され、中心の励起電極42とアース電極45との間に、高周波高電圧電源43から高周波高電圧(20〜40KHz、5,000〜12,000V)の交流電界を加える。これにより管内にプラズマ放電が発生する。
容器の上方の入り口からは原料油と不活性ガス46が装置内に注入され、注入された原料油は高エネルギーに励起された不活性ガスプラズマと高速度の衝突を繰り返し微細な霧状になる。このとき分子量の大きな分子ほど衝突の確率も多く、プラズマから受けるエネルギーも大きくなる。
【0021】
オゾン処理装置(5)はプラズマ活性化処理装置(4)の後に連結されているので霧状
に高活性化された油は、そのままオゾン処理装置(6)に導入される。オゾン処理装置内では脂肪酸とオゾンとが反応してオゾニドを生成する反応(A)と、脂肪酸と生成時に副次的に生成する原子状の酸素により飽和脂肪酸が不飽和脂肪酸となる脱水素化反応(B)、そして脂肪酸の炭素鎖そのものが分断されて低分子化する酸化分解反応(C)がほぼ同時に進行するものと考えられるが、前段のプラズマ処理により高度に活性化のなされた油の場合は、(B)の脱水素化反応と(C)の酸化分解反応が全体の90%以上を占め、オゾニドの生成はきわめて少なくなることが確かめられている。
【0022】
図5は、オゾン処理装置の構造で、図4のプラズマ処理装置と類似した構造となってお
り、容器の口径を同じくすることによりプラズマ処理装置とオゾン処理装置とを上下に連
結して使用することが可能となる。
すなわち、誘電体でつくられた筒状の容器51の中心部に金属製の励起電極52が内装され、容器51の外側にはアース電極55が形成され、中心の励起電極52とアース電極55との間に、高周波高電圧電源53から高周波高電圧の交流電界が加えられる。これにより管内にプラズマ放電が発生する。
これにより、プラズマ処理により活性化された油を、高活性化を維持したままオゾン処
理することが可能となり、処理効率がよくなるなど合理的且つ効果的な処理が行える。
図6は、プラズマ処理装置とオゾン処理装置とを連結して1つの装置とした構造のプラ
ズマ酸化処理装置の構造である。
【0023】
(6)のゼオライト濾過は、化学吸着と物理濾過および固体酸処理の三つの機能を併せ持つ濾過方式で、濾材にゼオライトを使用することが特徴である。
ゼオライトはシリコンとアルミニウムを主成分とする鉱物で、結晶構造に微細な空隙が
あり、空隙の大きさに整合する物質を吸着する性質(選択吸着性)がある。また結晶構造
中に水素原子が露出したプロトンポイント(酸点)を持つため強力な酸としてもはたらく。
本発明では、プラズマ活性化ならびにオゾン酸化処理のあとにゼオライト濾過工程を組
込むところに大きな特徴があり、副次的に生成ずる不要な物質(例えば過酸化脂質など)
を高精度に除去して原料油の改質効果を飛躍的に高めるものであるが、使用する装置その
ものの構造は一般的な濾過装置となんら変わらない。
【0024】
(第2の工程の説明)
第1の工程にて改質された原料油は、第2の工程でメチルエステル化される。
冒頭にも記述したが油種によってはメチルエステル化せずに第1の工程で改質しただけ
でも自動車用燃料として十分に使用できるものもあるが、軽油や重油に代替できる品質を
確保する上では、メチルエステル化するとなお好ましい。
【0025】
図7は本発明のエステル化処理のフローである。第1の工程で改質された油(1)とメ
チルアルコール(2)とをスタチックミキサー(3)で混合して、所要の温度に加熱して触媒装置(4)に導入する。
触媒装置(4)は図8に示すごとくスタチックミキサーに類似した構造で、触媒をコー
ティングしたステーター(羽根82)が筒状容器81に内装されており、メチルアルコールと混合された油が流通すると触媒と接触してグリセリンとメチル基が置換されて脂肪酸メチルエステルとなる。
【0026】
このとき、触媒装置に内装されるステーター(羽根)82は、回転方向が異なる羽根(9
0度捩り)を交互に直列に配したものでバイナリーの分散係数を持つスタチックミキサーであるが、この羽根の表面に触媒をコーティングすることにより触媒装置として機能するものである。
触媒は、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、錫、亜鉛、銅、鉄、銀、マンガン、
シリコン、ニッケル、ベリリウムなどの酸化物を一種類以上使用してステーター表面にコ
ーティングする。
【0027】
触媒のコーティング方法は、一次焼成の終わったステーターを前記触媒材料の懸濁液に
浸し、ステーター表面に懸濁粒子を吸着させて液から引き上げ自然乾燥させる工程を何度
か繰り返して所定の厚さに仕上げる。所定の厚さに触媒材料で覆われたステーターは電気
炉に入れて所定の温度で焼成する。
なお、ここではステーター(羽根)82に触媒のコーティングを行うように示したが、
た問えば容器81の内面に触媒コーティングを行っても良い。
【0028】
図9は膜分離装置の構造を示す模式図である。
膜分離装置(5)はポリプロピレン膜(親水性分離膜)91の疎水性を利用した油水分
離装置で、親水性のグリセリン94は膜を通過できるが疎水性のメチルエステル93は膜
を通過できずに膜91の手前に滞留する。
図9の分離膜装置を複数段通過させることにより、グリセリン94が完全に除去された
メチルエステル93が得られるので、これを水で洗浄して水溶性成分を洗い流し、乾燥させることにより植物油原料の自動車燃料(BDF)が完成する。
【実施例】
【0029】
[実施例1] ココナツCNOからBDFをつくる例。
ココナツを搾汁して油水分離した粗製油(CNO)を原料とするBDFの製法について
の実施例を、図10に沿って述べる。
ココナツCNO100をジャケット加熱水温度80℃で40℃にして融解し(101)、
濾過精度50μmのPPカートリッジフィルタ2段で濾過する(102)。
ついで、原料油流量1lに対して10lのArガスを注入して、印加電圧7kV、周波
数100kHzでプラズマ処理を行う(103)。続いて、酸素注入量3l、印加電圧7k
V、周波数100kHzでオゾン処理を行う(104)。さらに、モルデライト50kg、濾過圧力0.5MPaでゼオライト濾過を行う(105)。
続いて、10kg換算のCaO触媒を用い、ミキサー段数12段としてエステル化処理(106)を行い、PP油水分離膜を4段用い、圧力0.5MPaでグリセリン分離(107)を行った後、水洗(108)と乾燥(109)とを行って、ココナツBDFを製造した(110)。
【0030】
[実施例2] キャリアガスと原料油流量の関係。
図11は、プラズマ放電管の特性をキャリアガスと原料油流量の関係で試験したデータ
の一例で、プラズマ処理によってココナツ油が改質されてゆく様子が示されている。
すなわち、口径30mm、長さ700mmの管では油注入量が毎分10ml程度であれ
ばキャリアガスの注入量に比例して改質が進むが、毎分20mlを超えると改質効率が低
下することがわかる。
この試験では改質前のCNOに含まれるC12の量をノーマライズして100%とし、
キャリアガス注入量を変えてそれぞれ1回処理した結果のC12の残存量を調べたもので
ある。
なお、同図には記載されていないが、プラズマ処理だけではC18、C16はあまり減
らないが、オゾン処理を併用することによりC12以上が効果的に減少し油質が大幅に改質されることがわかった。
【0031】
[実施例3] 固体アルカリ触媒の性能試験。
図12に、固体アルカリ触媒の性能を試験した結果を示している。
(1)供試原材料等
原料油(ココナツCNO):10ml
メチルアルコール:100ml
触媒材料:酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄
酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マンガン、酸化ニッケル
をそれぞれ1g
(2)試験方法
原料油10mlとメチルアルコール90mlとを混合して10mlずつ試験管に取り分け、それぞれの試験管に触媒材料を10mlずつ投入して震盪装置にセットする。
震盪装置の作動時間はそれぞれ30分間とし、1分ごとに触媒1mgずつ投入しpHを計測して記録する。
(3)結果
この試験の目的はココナツCNOに含まれる脂肪酸を置換するのに必要なアルカリ触媒の量を算出することを目的としているが、pHがアルカリに変わる直前までの触媒総投入量が少ない物質ほど触媒としての性能が高いわけで、この試験の結果は、酸化カルシウムがもっとも優れており、ついで酸化マグネシウムが優れていることがわかった。また、それら以外の物質もアルカリ触媒として機能することは確認できたが、単独で使用するよりも組み合わせて使用すると効果があることもわかった。
【0032】
(1)本発明のプラズマ処理およびオゾン処理方法は、原料油が誘電体であるところに着目した技術で、プラズマ放電管内において原料油は高周波高電圧の交流電界により高速度で加速振動して微細な霧状になり、不活性ガスプラズマと高速度で衝突を繰り返すことにより、高分子成分が低分子化成分と比較して、より多くのエネルギーを獲得することになり、後続するオゾン処理装置内でのオゾンとの反応がスムーズに進行する。
オゾン処理工程の前段に、プラズマ処理工程を置く理由は以上のとおりであるが、前段にプラズマ処理工程を置かずに直接オゾン処理工程のみを行った場合においても原料油の改質は可能である。しかし、原料油中の低分子成分がより多くオゾン酸化を受けてしまい、改質油の収量が減ってしまう。(実験では20%近くロスがでることを確認している。)
【0033】
(2)オゾン処理工程の後段にゼオライト濾過工程を組み込むのは、前記改質工程において酸化分解生成物である炭化水素等を除去するためのもので、必ずしもこの工程を置かずともメチルエステル化は可能であるが、エステル化の後段で遊離炭化水素等の不純物を除去するのは、処理工程が複雑になるばかりか経費が余計に掛かり、あまり得策ではない。
ゼオライトは結晶構造中に微細な空隙が無数に開いており、この空隙に見合った構造や分子量の物質を吸着捕捉するので便利である。また、ゼオライトの結晶空隙は前記選択吸着捕捉だけでなく、自身が吸着補足した物質を触媒する作用をも併せ持ち、低分子量の炭化水素を重合して高分子の炭化水素に変える働きもする。(メチルアルコールを高圧高温下でゼオライトに圧入通過させることによりガソリンに類似した炭化水素を合成することができる。)
このため改質油の収量が大幅に減るようなことはなく、ゼオライトの目詰まりがおきにくい理由でもある。
【0034】
(3)ポリプロピレン(PP)は疎水性の(というより親油性が高い)合成樹脂で、この樹脂の繊維はオイルフェンスやオイルトラップなどに好適に利用されているが、本発明ではグリセリンとメチルエステルを分離するのに用いている。
グリセリンはメチルエステルより比重が重いので静置しておけば自然に分離はするが高精度に分離するには長時間を要し工業的には向かない。また遠心分離機による機
械的に分離することも可能であるが、連続的に大量に分離するには装置が大型化しコ
ストが高くなるため、必ずしも合理的な方法であるとは言えない。
本発明の分離装置は市販のPP樹脂フィルムを延伸してきわめて薄いフィルムに加工したPP膜を用いている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
先にも述べたように、本発明によると、植物油を原料にして、黒煙の発生が極めて少なく、潤滑性に優れた自動車燃料を製造することができる。本発明で得られる自動車用燃料は、広範な産業分野で、従来の石油系の燃料に代わって利用することができ、且つ、炭酸ガスの発生が少なく地球温暖化を阻止することができる。従って、本発明は、広範な分野で高い利用の可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の自動車燃料製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の自動車燃料製造装置の原料油融解装置の構成を示す外観図である。
【図3】本発明の自動車燃料製造方法における高活性化、酸化分解処理工程の内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の自動車燃料製造装置のプラズマ活性化処理装置の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の自動車燃料製造装置のオゾン処理装置の構成を示す説明図である。
【図6】本発明の自動車燃料製造装置のプラズマ活性化処理装置とオゾン処理装置とを連結して一体化した構成を示す説明図である。
【図7】本発明の自動車燃料製造方法におけるエステル化処理の工程を示すフローチャートである。
【図8】本発明の自動車燃料製造装置のスタチックミキサー方触媒装置の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の自動車燃料製造方法の膜分離装置の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例として示すココナツCNOからBDFを作る製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図11】本発明の自動車燃料製造装置のプラズマ活性化処理におけるキャリアガスの注入量と原料油の流量の関係の測定試験結果を示すグラフである。
【図12】本発明の自動車燃料製造装置での固体アルカリ触媒の性能試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10 原料油
11 第1の工程
12 第2の工程
13 BDF
20 原料油融解装置
21 攪拌モータ
22 原料油投入口
23 攪拌羽根
24 加熱ジャケット
25 原料油出口
26 熱水入口
27 熱水出口
41、51 筒状誘電体容器
42、52 励起電極
43、53 高周波高電圧電源
44、54 プラズマ放電
45、55 アース電極
46 原料油+キャリアガス
56 活性化処理油+不活性ガス
57 酸素
58 オゾン処理油+不活性ガス+廃オゾン
59 改質油+不活性ガス+廃オゾン+副次生成物
81 筒状容器
82 触媒をコーティングした羽根
91 親水性分離膜
92 粗製エステル
93 メチルエステル
94 グリセリン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油をプラズマ化して活性化するするプラズマ工程と、オゾン処理して脂肪酸を低分子化するオゾン処理工程と、固体アルカリ触媒の元でメチルエステル化するメチルエステル化工程とを有することを特徴とする自動車燃料の製造方法。
【請求項2】
原料油を処理して自動車燃料を製造する自動車燃料の製造装置において、
原料油をプラズマ化して活性化するするプラズマ処理手段と、オゾン処理して脂肪酸を低分子化するオゾン処理手段とを有し、その両手段がこの順で連続して処理を実施するように構成されていることを特徴とする自動車燃料の製造装置。
【請求項3】
エステル化処理手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の自動車燃料の製造装置。
【請求項4】
前記エステル化処理手段は、内部に触媒材料をコーティングした部材を有することを特徴とする請求項3に記載の自動車燃料の製造装置。
【請求項5】
前記触媒材料をコーティングした部材は攪拌用の羽根(ステータ)であることを特徴とする請求項4に記載の自動車燃料の製造装置。
【請求項6】
前記エステル化処理手段はグリセリンを分離膜で分離除去する膜分離手段を有することを特徴とする請求項3に記載の自動車燃料の製造装置。
【請求項7】
前記分離膜はポリプロピレン膜であることを特徴とする請求項6に記載の自動車燃料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−332199(P2007−332199A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163287(P2006−163287)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(306016785)
【Fターム(参考)】