説明

植物種子の搾油・ブリケット製造システム、および、植物種子の搾油・ブリケット製造方法

【課題】植物種子の搾油、および、その植物種子を原料としたブリケット製造を同時に行うことのできるシステムを提供すること。
【解決手段】本発明に係るシステムは、植物種子を破砕するための破砕機と、その破砕機から送られる破砕された植物種子を受け入れるブリケット成形筒と、ブリケット成形筒内の砕破された植物種子を搾油するための圧搾機とを備えている。このため、圧搾機で搾油するのと同時に、ブリケットの製造を同時に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物種子の搾油とブリケット製造のためのシステム、および、植物種子の搾油とブリケット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物種子の搾油方法、および、バイオマス含有ブリケットの製造方法は、それぞれ周知技術として知られており(例えば、特許文献1〜3参照)、そのための各装置も市販されている。開示されている従来の方法によると、バイオブリケットは、植物種子から搾油した後で、搾油された種子を成形して二段階で製造された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−331928号公報
【特許文献2】特開2006−517000号公報
【特許文献3】特開2004−18849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率の良い植物種子の搾油およびブリケット製造のためのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るシステムは、植物種子の搾油およびブリケット製造のためのシステムであって、前記植物種子を破砕するための破砕機と、前記破砕機で破砕された植物種子を受け入れるブリケット成形筒と、前記ブリケット成形筒内の破砕された植物種子を搾油するための圧搾機とを備えることを特徴とする。この圧搾機による搾油により、ブリケットの製造も同時に行われる。
【0006】
ここで、「ブリケット成形筒」の構造について、円筒形で、心棒を有し、前記破砕された植物種子を受け入れる側の一方の底は開放されていて、他方の底は孔を有する蓋を有し、前記孔は破砕された種子が通過しない大きさであることが好ましい。
【0007】
さらに、本発明に係るシステムにおいて、複数の前記ブリケット成形筒が円状に配置され、一つのブリケット成形筒が破砕された植物種子を受け入れた後、前記円状に配置されたブリケット成形筒の集合体が一方向へ回転し、当該ブリケット成形筒が前記圧搾機を受け入れることが好ましい。また、ブリケット成形筒の数は5本であることがより好ましい。
【0008】
本発明に係る製造方法は、植物油の搾油およびブリケット製造のための方法であって、植物種子を破砕する工程と、破砕された植物種子をブリケット成形筒に輸送する工程と、前記ブリケット成形筒内の前記破砕された植物種子を圧搾して搾油すると同時にブリケットを成形する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、効率の良い植物種子の搾油およびブリケット製造のためのシステムを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である、搾油・ブリケット製造システムの構成概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態である、破砕機の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態である、ブリケット成形筒の構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態である、圧搾機の挿入部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、図を参照し、詳細に説明する。
【0012】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0013】
本発明に係る植物種子の搾油・ブリケット製造システムは、破砕した植物種子から搾油するのと同時にブリケットの作製を行うためのシステムである。このシステムを用いることで、従来の方法に比較して、搾油およびブリケット製造の迅速化とコスト低減が可能となる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態としての、植物種子の搾油・ブリケット製造システム1の構成を示す図である。本システムは、植物種子を破砕するための破砕機2(図2)、ブリケット成形筒3(図3)、圧搾機4(図4)を備える。
【0015】
本システムの規模は、必要とする搾油量、および、製造するブリケットの大きさや数を考慮して当業者が任意に選択することができ、以下に説明する各機器を一つずつ備えていても、あるいは、複数備えていてもよい。
【0016】
本システムにおいて、植物種子は、破砕機2で破砕される。ここで、本システムが、植物種子の洗浄のための洗浄機、種子の乾燥のための乾燥機、異物除去のための篩等を併備し、破砕機2によって植物種子を破砕する前に、これらの機器のうち、一つ以上の機器で植物種子を処理してもよい。
【0017】
破砕機2は、通常植物や植物種子を切断・破砕するために通常用いられるものの中から、植物種子の大きさや望ましい破砕粒度を考慮して当業者が適宜選択することができる。搾油のために好ましい植物種子の破砕粒度は通常5〜10mmであり、例えば、回転刃や固定刃を有する破砕室と、その下部に破砕粒度を調節するための篩とを備えるウィレー粉砕機や、臼を備える臼式製粉機、2枚の破砕板によって種子を押しつぶすジョークラッシャー等により破砕することができるが、これらに限定されない。破砕機2について、破砕圧力、電動機の規模(kW)、内寸・外寸等は、当業者が適宜選択できる。破砕機2において、植物種子を破砕するための破砕部の材質は植物種子を破砕することができる範囲内で特に制限はなく、例えば、刃式の場合、マンガン鋼、ステンレス、タングステンカーバイド、酸化ジルコニウム等をはじめとする各種鋼や合金であってもよく、また、臼式の場合には、花崗岩、安山岩、フランス石をはじめとする天然石や自然混合石等であってもよい。
【0018】
植物種子について、植物の種類は、通常搾油やブリケット製造に用いられる周知の植物から、目的に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、ジャトロファ、大豆、菜種、トウモロコシ、胡麻、綿実、米、ひまわり、ブドウ等が挙げられるが、これらに限定されない。また、種子は単一種でも、2以上の異なる種を混合して使用してもよく、その配合は当業者が適宜選択できる。
【0019】
さらに、ブリケットの成形、移動、保存、および、燃料としての性質を考慮して、破砕された種子に植物種子以外の燃料成分や増粘成分を添加してもよい。この場合、破砕機2の前に混合槽を設置してその成分を混合しても、あるいは、破砕された種子にその成分を混合するように、破砕機2の後に混合槽を設置してもよい。植物種子以外の燃料成分としては、通常燃料に使用される石炭や、木材バガス、藁、トウモロコシの茎などのバイオマスが例示でき、また、増粘成分としては、石炭ピッチ、石油ピッチ、澱粉、粘土、カルボキシメチルセスロース等が例示できるが、これらに限定されない。ただし、これらの添加物の混合により、後の工程で搾油される植物油に不純物が混入した場合には、これを分離する工程を設けてもよい。
【0020】
次に、破砕機2で破砕された植物種子は、破砕機2の排出口5から排出され、ブリケット成形筒3に輸送される。図1に示すように排出口5と成形筒3は近接していることが好ましいが、排出口5と成形筒3の間が破砕された種子を輸送するための輸送管やベルトコンベア等で接続されていてもよい。排出口5からの破砕された種子の排出および輸送は、手動で行ってもよいが、工程の効率化のためには破砕機2が輸送のための設備を併備することが好ましい。例えば、スラリーポンプやギアポンプをはじめとする輸送ポンプ、あるいはスクリュー式押出機等が挙げられるが、破砕された種子をブリケット成形筒3へ輸送できる範囲内で制限されない。
【0021】
図3に示すように、このブリケット成形筒3は、筒形で、心棒6を有し、破砕された植物種子を受け入れる一方の側の底は開放されていて、もう一方の底は排油孔8を有する蓋7を有することが好ましい。排油孔8は、ブリケット成形筒3に送りこまれた破砕された種子が、事実上通過しない大きさであることが好ましく、例えば、ジャトロファの種子を粒度5〜10mm程度に破砕した場合、直径1〜3mmであることが好ましい。
【0022】
このブリケット成形筒3の胴部の材質は、筒状に加工可能で、なおかつ、破砕された植物種子を受け入れた後、搾油機によって植物種子を圧搾するために十分な強度を有する材質であれば制限はなく、例えば、マンガン鋼、ステンレス、タングステンカーバイド、酸化ジルコニウム等が挙げられる。ブリケット成形筒3の形状は筒状であれば、特に制限されず、円筒形であっても、あるいは、三角形、四角形や六角形をはじめとする多角形の角筒形であってもよく、また、心棒数は一本であっても複数であってもよい。ブリケット成形筒3の直径、内寸、外寸等は製造するブリケットの用途を考慮して当業者が適宜選択することができる。
【0023】
蓋における排油孔の形状について、後の工程で搾油される種子の油を排出し、なおかつ、破砕された種子を保持できる範囲内で制限されず、円や楕円等の丸みを帯びた形状、三角形、四角形や六角形等の多角形、あるいは、細長いスリット状や星形等から当業者が任意に選択できる。この排油孔8の配置は、蓋のいずれの部位であってもよく、複数存在する場合には、均等に存在していても、偏在していてもよい。このように、破砕された種子は、ブリケット成形筒3に輸送され、充填される。
【0024】
破砕機2による植物種子を破砕する工程、および、破砕された植物種子をブリケット成形筒に輸送する工程を行う温度、湿度、気圧等の環境は、種子の破砕および輸送が適切に行える範囲内で制限がないが、例えば、過剰な加温による油の酸化等が起こらないように調節されていることが好ましい。このため、必要に応じて、破砕機周囲に温度を調節するための冷却機等を備えていてもよい。
【0025】
圧搾機4はブリケット成形筒3に挿入され、圧搾を行うための挿入部9を有している。圧搾機4は、ブリケット成形筒3内に送りこまれた破砕された植物種子を常法に従った圧力(通常、最大600kg/cm程度)で圧搾することによって搾油するのと同時に、その搾油された植物種子が成形筒の有する心棒数と同数の孔をもつ筒形に成形される。従って、圧搾機挿入部9は、ブリケット成形筒3の凹凸を反転させた形状であることが好ましい。すなわち、図4に示すように、挿入部9はブリケット成形筒3と同形の柱状であって、ブリケット成形筒3が心棒6を有する位置に筒状の孔10を有していることが好ましい。ただし、挿入部9の形状はこれに限定されず、例えば、種子を圧搾する部分がブリケット成形筒3の横断面と同形のディスクであって、このディスクがブリケット成形筒3の心棒を通すための孔を有し、さらにこのディスクをブリケット成形筒3に押し込むための支柱を備えていてもよい。このとき、搾油された植物油は、ブリケット成形筒3の底にある排油孔8から採取することができる。
【0026】
この搾油された植物油を受け入れるための搾油槽11を、排油孔8の下部に併備してもよい。
【0027】
なお、ブリケット成形筒3内部に受け入れられ、ブリケット成形筒内に送りこまれた種子を圧搾するという機能を果たすため、挿入部9の外径はブリケット成形筒より小さいことが必要であって、圧搾工程で種子が漏れ出すことがないように、ブリケット成形筒内部に隙間なく受け入れられる外径であることが好ましい。
【0028】
圧搾機4の作動、すなわち挿入部9の圧搾動作は手動で行ってもよいが、制御装置12を併備させて挿入部9を自動的に制御してもよい。圧搾動作を制御装置により行う場合、制御装置は、ブリケット成形筒3に挿入部9を挿入し、圧搾動作後、挿入部をブリケット成形筒から抜き出すという一連の動作を行うことのできる周知の制御装置から当業者が適宜選択することができ、例えば、ピストンポンプ等が挙げられるが、これに制限されない。このように何らかの制御装置を備える場合、その制御装置の稼働に必要となる周辺機器を併備していてもよい。
【0029】
ブリケット成形筒内の破砕された植物種子を圧搾すると同時にブリケットを成形する工程を行う温度、湿度、気圧等の環境は、本工程を適切に行うことができる範囲内で制限がないが、例えば、搾油効率を考慮すると適度な加温を行うことが好ましい。加温温度は搾油する植物種子の種類により、当業者が適宜選択することができるが、通常オリーブでは約50℃、ゴマでは約60℃、ジャトロファでは約70℃等を例示できる。このため、必要に応じて圧搾機やブリケット成形筒周囲に温度を調節するための加温機等を備えてもよい。
【0030】
ここで、搾油およびブリケット製造の効率化のために、本発明に係る製造システムは複数のブリケット成形筒3を備えていてもよく、その場合、ブリケット成形筒が互いに隣接して円状に配置され、このブリケット成形筒3が一方向へ回転するように設計してもよい。
【0031】
例えば、図1にあるように、本発明の製造システムがブリケット成形筒3を5本備える場合、第1のブリケット成形筒3が破砕機2から破砕された種子を受け入れた後、円状に配置されたブリケット成形筒3が一方向へ回転し、挿入部9を第1のブリケット成形筒3が受け入れる。ブリケット成形筒3は一方向に回転し続け、破砕機の前に到達したブリケット成形筒に順に破砕された種子を送りこむ。破砕された種子を送り込まれたブリケット成形筒は、回転することによって圧搾機4の前に到達したとき、挿入部9を受け入れる。この工程が繰り返されることによって、植物種子の破砕及び圧搾を効率よく行うことができる。
【0032】
この場合、ブリケット成形筒の回転は手動で行ってもよいが、ブリケット製造の効率化を考慮すると電動機等の制御装置13を併備させて回転を自動的に制御してもよい。その場合、制御装置13は周知の装置から当業者が適宜選択して用いることができる。5本のブリケット成形筒が、制御装置13に接続した軸14の周囲に配置されている構成を図1に示す。
【0033】
このように本発明の製造システムが複数のブリケット成形筒3を備える場合、破砕機2が破砕された種子の排出口を複数有していてもよく、さらに、圧搾機4あるいは挿入部9が複数備えられていてもよい。本システムがこの構成を有することによって、複数のブリケット成形筒3が破砕された種子を破砕機2から同時に受け入れ、複数のブリケット成形筒3内の種子が複数の圧搾機により同時に搾油されることが可能となり、搾油およびブリケット製造の効率化を図ることができる。
【0034】
本発明に係る、植物油の搾油およびブリケット製造システムによって製造されるブリケットの水分含有量や油分含有量は、そのブリケットの使用目的に合わせて当業者が適宜決定することができる。所定の水分含有量や油分含有量を有するブリケットを製造するために、本発明に係る製造方法の各工程において、当業者が適宜調節工程を加えることができる。例えば、ブリケットがガス化発電設備等におけるガス化に使用される場合、ブリケットの水分含有量は15%以下であることが好ましい。この場合、成形されたブリケットを周知の乾燥法により乾燥させて水分含有量を調節しても、原料となる種子を破砕する前に乾燥させて水分含有量を調節しても、あるいは、本システムにおけるその他の工程において水分含有量を調節してもよい。なお、乾燥法は当業者に周知の乾燥法から適宜選択でき、例えば、天日干ししても、周知の除湿機や乾燥機を用いても、制限はない。
【符号の説明】
【0035】
1 植物種子の搾油・ブリケット製造システム
2 破砕機 3 ブリケット成形筒
4 圧搾機 5 排出口
6 心棒 7 蓋
8 排油孔 9 挿入部
10 挿入部の孔 11 搾油槽
12 制御装置 13 制御装置
14 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物種子の搾油およびブリケット製造のためのシステムであって、
前記植物種子を破砕するための破砕機と、
前記破砕機で破砕された植物種子を受け入れるブリケット成形筒と、
前記ブリケット成形筒内の破砕された植物種子を搾油するための圧搾機とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記ブリケット成形筒が、円筒形で、心棒を有し、前記破砕された植物種子を受け入れる側の一方の底は開放されていて、他方の底は孔を有する蓋を有し、
前記孔は破砕された種子が通過しない大きさであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムであって、
複数の前記ブリケット成形筒が円状に配置され、
一つのブリケット成形筒が前記破砕された植物種子を受け入れた後、前記円状に配置されたブリケット成形筒が一方向へ回転し、当該ブリケット成形筒が前記圧搾機の挿入部を受け入れることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、5本の前記ブリケット成形筒を備えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
植物油の搾油およびブリケット製造方法であって、
植物種子を破砕する工程と、
破砕された植物種子をブリケット成形筒に輸送する工程と、
前記ブリケット成形筒内の前記破砕された植物種子を圧搾して搾油すると同時にブリケットを成形する工程とを含むことを特徴とする製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−248390(P2010−248390A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100176(P2009−100176)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】