説明

植物育成構造体及び緑化システム

【課題】水栓の有無に関係なく植生を良好に生育可能であって、従来と比較して重量を軽くすることが可能な植物育成構造体及び緑化システムを提供すること。
【解決手段】横方向に連結可能なユニットタイプの植物育成構造体1は、水11を貯留可能なトレー状の貯水パレット4と、土壌13が敷設されるトレー状の複合グリッド6とを有している。植生に吸収されなかった水分は、重力によって土壌13内を浸透降下し、さらに複合グリッド6の貫通孔67を介して落下して貯水パレット4に貯留される。また、貯水パレット4内の水11は、支柱47内の不織布及び砂による毛細管現象を利用して、複合グリッド6上の土壌13側へ自動的に揚水,供給される。このような構成によれば、水栓が設けられていない箇所(たとえば既設構造物の屋上)や、植生に対して定期的に灌水することが困難な箇所であっても、良好に植生を生育することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結可能なユニットタイプの植物育成構造体、及び複数の当該植物育成構造体を連結して成る緑化システムに関し、特に薄層緑化に適した植物育成構造体及び緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市部においては、コンクリートやアスファルトなどの人工構造物が増加し、緑地や水面等が減少したことが原因で、地表面での熱吸収が行なわれなくなっている。加えて、エアコン等の人工的な排熱が増加したことで、都市に熱が溜まるという現象(ヒートアイランド現象)が世界中の多くの都市で確認されている。
【0003】
そこで、近年においては、ヒートアイランド現象を緩和する対策の1つとして屋上緑化が推奨されており、ある程度大きな面積を有する屋上については既に積極的に緑化が行われるようになっている。
【0004】
しかしながら、既存の建造物は必ずしも屋上緑化を考慮に入れて構築されているわけではないため、多くの場合、建物の屋上には水栓が設けられていない。そのため、そのような屋上に緑化システムを設置しても定期的に灌水できない場合が多く、植生を十分に生育することができないか、或いは生育できても枯らしてしまうといった問題があった。
【0005】
また、屋上を緑化するとなると、土や植物などの重みを支えるだけのコンクリートの強度が必要になる。ところが、既存の建造物は、構造上の理由により、屋上緑化に要する荷重が制限される場合が多い。そのため、屋上緑化に要する緑化システムは、単位面積当たりの重量を可能な限り軽くして、屋上に掛かる荷重を可能な限り低く抑える必要があった。
【0006】
さらに、緑化システム自体の重量を軽くすると屋上にかかる負荷は軽減されるが、一方で、軽量になった分だけ緑化システムが風によって吹き飛ばされ易くなるといった問題があった。特に、なにも遮るものがない高層ビルの屋上では強風が吹き荒れることが多いため、高層ビルの屋上を緑化するためにも風に対する上記問題点を解決する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上述した問題点に鑑み、本発明の目的は、水栓が設けられていない箇所であっても植生を枯らすことなく良好に生育することができ、従来と比較して単位面積当たりの重量が軽く、しかも、強風が吹き荒れても飛ばされることのない植物育成構造体を提供することにある。また本発明の他の目的は、上記植物育成構造体を用いた緑化システム(システムガーデン)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(8)記載の本発明によって達成される。
【0009】
(1) 複数の層から構成されており、横方向において連結可能なユニットタイプの植物育成構造体であって、
植物の生育に必要な水を貯留可能に構成されたトレー状の貯水層と、
植物の生育に必要な土壌を敷設可能に構成されており、当該土壌を支持する底板に複数の貫通孔が形成された土壌支持層と、
前記貯水層に貯留された水分を、毛細管現象を利用して、前記土壌支持層上の土壌へ自動的に供給するための水分伝達媒体と、を有しており、
前記土壌支持層は、当該土壌支持層の底面側と前記貯水層内の水面との間に空気層が形成されるように、前記貯水層の上側に積層され、
最上部の前記土壌支持層に敷設された土壌の上側に、植生層が形成されるようになっていることを特徴とする植物育成構造体。
【0010】
(2) 前記貯水層は、前記土壌支持層を支えるための略筒状の支柱を有しており、
前記支柱は、内空部と、当該貯水層に貯留された水を前記内空部に導くための水通り孔と、を有しており、
前記水分伝達媒体は、前記支柱の内空部に設けられていることを特徴とする上記(1)記載の植物育成構造体。
【0011】
(3) 前記トレー状の貯水層は、隔壁によって複数の貯水部屋に分割されていることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の植物育成構造体。
【0012】
(4) 前記支柱は、前記複数の貯水部屋のそれぞれに立設してあることを特徴とする上記(3)記載の植物育成構造体。
【0013】
(5) 前記複数の貯水部屋の底面には、それぞれ、貯留された水が支柱の方向へ流れるように勾配が付けられていることを特徴とする上記(4)記載の植物育成構造体。
【0014】
(6) 下部基礎上に設置した上記(1)乃至(5)の何れかに記載の植物育成構造体を、複数個横方向に隣接させて成る緑化システムであって、
前記複数の植物育成構造体は、連結装置によって、前記下部基礎に対して固定された状態で連結されていることを特徴とする緑化システム。
【0015】
(7) 前記連結装置は、
前記植物育成構造体の下面側と前記下部基礎との間に挟んだ状態で設けられた基礎台と、
隣接する植物育成構造体の間から上方に突き出るように前記基礎台上に設けられたボルトと、
前記ボルトのネジに対応したネジが形成された締付部材と、
前記ボルトに対して前記締付部材を締付けることによって前記下部基礎方向に移動するように設けられており、隣接する植物育成構造体を連結するための連結部材と、を有することを特徴とする上記(6)記載の緑化システム。
【0016】
(8) 前記連結装置は、
隣接する植物育成構造体の間から上方に突き出るように前記下部基礎に固定されたボルトと、
前記ボルトのネジに対応したネジが形成された締付部材と、
前記ボルトに対して前記締付部材を締付けることによって前記下部基礎方向に移動するように設けられており、隣接する植物育成構造体を連結するための連結部材と、を有することを特徴とする上記(6)記載の緑化システム。
【発明の効果】
【0017】
上記(1)記載の本発明によれば、土壌支持層に付与された水分は植生によって吸収される。そして、植生に吸収されなかった水分は、重力によって土壌内を下降し、さらに土壌支持層の貫通孔を介して下側の貯水層に落下して、そこで貯留される。また、貯水層に貯留された水は、水分伝達媒体(たとえば不織布や砂等)による毛細管現象を利用して、上側の土壌支持層の土壌へ自動的に供給される。
このように、本発明の植物育成構造体は、当該構造体内に水分を蓄えるとともに、この水分を構造体内で循環させて有効に再利用するようになっている。したがって、水栓が設けられていない箇所(たとえば既設構造物の屋上)や、植生に対して定期的に灌水することが困難な箇所であっても、本発明の植物育成構造体であれば、良好に植生を生育することが可能になる。
また、本発明によれば、重力によって浸透降下してきた水の貯水と、毛細管現象を利用した揚水とを繰り返して、植生に対する水分供給を行うようになっている。そのため、植生に対する煩雑な灌水作業を軽減させることができる。また、水の循環再利用を雨水だけで達成することができれば、無灌水で植物を維持することができるので、水分供給のための新たな灌水ラインを設ける必要もない。
さらに、本発明によれば、植物育成構造体内で水分を循環利用するようになっている。そのため、保水層(土壌)の厚みを薄くしても、植生に対して十分な水分を供給し続けることができる。その結果、植生や土壌を備えた状態の植物育成構造体全体の荷重を低く抑えて軽くすることができるので、荷重制限のある構造物(たとえば屋上)であっても、問題なく緑化することが可能になる。
さらに、本発明によれば、土壌支持層の底面側と貯水層内の水面との間に空気層が形成されるようになっている。そのため、発根した植生に対して十分な空気を供給することができる。
【0018】
上記(2)記載の本発明によれば、略筒状の支柱が、土壌支持層を支える機能と灌水パイプとしての機能とを兼ね備えるようになっている。その結果、貯水層から土壌支持層の土壌へ、より確実に揚水することが可能になる。
【0019】
上記(3)記載の本発明によれば、以下の優れた効果が達成される。
すなわち、下部基礎が傾斜している態様(たとえば勾配屋根を緑化する態様)においては、貯水層を複数の貯水部屋に分割しない場合では、貯水層内の片側にだけ水が溜まることとなる。そうなると、十分な量の水を貯留することができないので好ましくない。
一方、本発明のように、隔壁によって複数の貯水部屋に分割した場合には、各貯水部屋の片側に水が溜まることはあっても、すべての水が貯水層の片側に溜まることはない。そのため、上述した場合と比較すると、より多くの量の水を貯水層内に蓄えることが可能になる。
【0020】
上記(4)記載の本発明によれば、土壌支持層を支えるための支柱は、分割された複数の貯水部屋のそれぞれに設けられている。これにより、1本の支柱で支える場合と比較して、より安定的に土壌支持層を支えることができる。また、支柱には灌水パイプとしての機能を持たせているので、土壌支持層上の植生に対して、より均一かつ効率的に水分を供給することができる。
【0021】
上記(5)記載の本発明によれば、貯水層内に貯留された水の残りが僅かであっても、水は傾斜した底面を伝って、水分伝達媒体を備えた支柱の方へ自動的に流れるようになっている。その結果、貯水層内のすべての水を残すことなく有効に再利用することが可能になる。
【0022】
上記(6)記載の本発明によれば、緑化システムを成す複数の植物育成構造体は、連結装置によって、下部基礎に対して固定された状態で連結されている。そのため、植生及び水を備えた状態の植物育成構造体を薄くかつ軽量に構成して、薄層緑化に用いても、風によって吹き飛ばされることがないという優れた効果が達成される。このような効果は、特に、強いビル風が吹き荒れる都市部の屋上緑化にとって有効である。
また、緑化システムは複数のユニット(植物育成構造体)から構成されているので、ユニット毎に交換や修復作業を行うことができる。そのため、緑化システムの一部において破損が生じたり或いは植生が枯れたりしても、簡単かつ迅速に修復することができる。
【0023】
上記(7)記載の本発明によれば、ボルトに対して締付部材を締め付けるだけで、簡単に、下部基礎方向へ押圧した状態で植物育成構造体を連結することができる。
【0024】
上記(8)記載の本発明によれば、ボルトは所謂ロックボルトの如く下部基礎に固定されている。そのため、当該ボルトに対して締付部材を締め付けることによって、植物育成構造体を確実に下部基礎に対して固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
〔植物育成構造体の概略構成〕
まず最初に、図1及び図2に基づいて、本発明に係る植物育成構造体1の概略構成について説明する。
図1は、本発明に係る植物育成構造体1を正面方向から見た断面図である。
図2は、図1の植物育成構造体1を用いて植生を生育している様子を示す断面図である。
【0027】
植物育成構造体1は、複数の層から構成されており、横方向において連結可能なユニットタイプの構造体である。この植物育成構造体1は、図1に示すように、主として、プラスチック製の貯水パレット(貯水層)4と、プラスチック製の複合グリッド(土壌支持層)6の二層から構成されている。
なお、本実施形態では、貯水パレット4と複合グリッド6を別体のものとして示すが、これらを一体形成した態様も実施可能である。
【0028】
下側の層である貯水パレット4はトレー形状を有し、図2に示すように、植物の生育に必要な水(雨水を含む)11を貯留可能に構成されている。一方、上側の層である複合グリッド6はトレー形状を有し、その底板63には複数の貫通孔67が形成されている。そして、この複合グリッド6は、図2に示すように、植物の生育に必要な土壌13を敷設可能に構成されている。
【0029】
植物育成構造体1を実際に緑化に使用する際には、複合グリッド6は、当該複合グリッド6の底面側と貯水パレット4内の水面との間に常に空気層15が形成されるように、貯水パレット4の上側に積層される(図2参照)。そして、複合グリッド6に敷設された土壌13の上側において、植生層17が形成されるようになっている。
【0030】
なお、植生層17を成す植物の種類は特に限定されないが、たとえば、セダム類に属する植物を用いて植生層17を成すことが可能である。
【0031】
〔貯水パレット(貯水層)の構成〕
次に、図3及び図4に基づいて、植物育成構造体1の下側層を成す貯水パレット4の構成について詳細に説明する。
図3は、図1の植物育成構造体1の貯水パレット4を示す図である。この図3において、図3(A)は、貯水パレット4を示す上面図である。図3(B)は、図3(A)のa−a線に沿った断面図である。
図4は、図2に示す貯水パレット4の支柱47及びその周囲を示す拡大断面図である。
【0032】
貯水パレット4は略方形状に形成され、主として、底板41と、側壁43と、略十字形状の隔壁45と、4本の支柱47とから構成されている。底板41と側壁43はトレーを成しており、当該トレーの内側には水11を貯留することができるようになっている(図2参照)。
【0033】
上面から見て略十字状の隔壁45は、貯水パレット4の内側を、4つの貯水部屋49に等分している。これにより、傾斜した下部基礎(たとえば勾配屋根)に対して緑化を行う場合であっても、より多くの量の水を貯水パレット4内に蓄えることが可能になる。
【0034】
複合グリッド6を支えるための4つの支柱47は、各貯水部屋49のほぼ中央において、底板41に対して一体的に立設してある。支柱47を各貯水部屋49に設けることにより、1本の支柱で支える場合と比較して、より安定的に複合グリッド6を支えることができる。
【0035】
略筒状の支柱47は、上部が開口しており、内空部51と水通り孔53とを有している。また支柱47の上端側には、支柱47の長さ方向に延びる4つのスリット54が、等角度間隔で形成されている。支柱47の内側空間である内空部51には、図4に示すように、水分伝達媒体として不織布57及び砂59が積層状態で設けられている。不織布57は、水通り孔53を臨むように、内空部51の底側に敷設されている。砂59は、不織布57の上側において内空部51に充填してある。
【0036】
各貯水部屋49に貯留された水11は、水通り孔53を介して内空部51に引き込まれる(図4参照)。さらに、内空部51に引き込まれた水分は、不織布57及び砂59(水分伝達媒体)によって吸い上げられ、毛細管現象によって複合グリッド6上の土壌13へ自動的に供給されるようになっている(図2参照)。
【0037】
すなわち、不織布57及び砂59を備えた状態の略筒状の支柱47は、複合グリッド6を支える機能と灌水パイプとしての機能とを兼ね備えるようになっている。その結果、貯水パレット4から複合グリッド6の土壌13へ、毛細管現象を利用してより確実に揚水することが可能になる。
【0038】
なお、各貯水部屋49の底面(底板41)には、それぞれ、貯留された水が支柱47へ向かって流れるように勾配が付けられていてもよい。このような構成によれば、貯水パレット4内に貯留された水の残りが僅かであっても、水は傾斜した底面(底板41)を伝って、灌水パイプの役割を果たす支柱47の方へ自動的に流れるようになっている。その結果、貯水パレット4内のすべての水を残すことなく有効に再利用することが可能になる。
【0039】
〔複合グリッド(土壌支持層)の構成〕
次に、図5に基づいて、植物育成構造体1の上側層を成す複合グリッド6の構成について詳細に説明する。
図5は、図1の植物育成構造体1の複合グリッド6を示す図である。この図5において、図5(A)は、複合グリッド6を示す上面図である。図5(B)は、図5(A)のb−b線に沿った断面図である。
【0040】
複合グリッド6は略方形状に形成され、主として、側壁61と、底板63と、略十字形状の仕切り板65とから構成されている。側壁61と底板63はトレーを成しており、当該トレーの内側には土壌13を敷設できるようになっている(図2参照)。十字状の仕切り板65は、トレー状の複合グリッド6を4つの部屋71に等分している。
【0041】
土壌13を支持する各部屋71の底板41には、図5(B)に示すように、複数の貫通孔67が形成されている。さらに、底板41には、各部屋41のほぼ中央の位置において、穴73が形成されている。この穴73は、上述した貯水パレット4の支柱47の外径より僅かに大きな径を有しており、当該支柱47の先端側が挿入されるようになっている(図1参照)。
【0042】
仕切り板65によって分割されている各部屋71は、さらに、十字状の隔壁69によって4つの小部屋に等分されている(すなわち、複合グリッド6は16の小部屋を有している)。この十字状の隔壁69は、図5(B)に示すように、中央の交差した箇所が穴73の中心とほぼ一致するように設けられている。
【0043】
上述した構成を有する複合グリッド6は、図1に示すように貯水パレット4の上に積み重ねた状態で使用される。積み重ねる際には、複合グリッド6の支柱47の先端側(上端側)を、貯水パレット4の底板63に形成した穴73に挿入する。そのとき、複合グリッド6の十字状隔壁69を、支柱47に形成した4つのスリット54に嵌合させるようにする。これにより、4つの支柱47によって、複合グリッド6が安定的に支持されることとなる。
【0044】
〔植物育成構造体の作用〕
上述した構成によれば、複合グリッド6の土壌に付与された水分は植生によって吸収される。そして、植生に吸収されなかった水分は、重力によって土壌内を下降し、さらに複合グリッド6の貫通孔67を介して下側の貯水パレット4に貯留される。また、貯水パレット4に貯留された水は、水分伝達媒体である不織布57及び砂59による毛細管現象を利用して、上側の複合グリッド6の土壌へ自動的に供給される。
【0045】
〔植物育成構造体の効果〕
このように、植物育成構造体1は、当該構造体内に水分を蓄えるとともに、この水分を構造体内で循環させて有効に再利用するようになっている。したがって、水栓が設けられていない箇所(たとえば既設構造物の屋上)や、植生に対して定期的に灌水することが困難な箇所であっても、植物育成構造体1であれば、良好に植生を育成することが可能になる。
【0046】
また、重力によって浸透降下してきた水の貯水と、毛細管現象を利用した揚水とを繰り返して、植生に対する水分供給を行うようになっている。そのため、植生に対する煩雑な灌水作業を軽減させることができる。また、植生に対する水分供給のための新たな灌水ラインを設ける必要もない。
【0047】
さらに、植物育成構造体1内で水分を循環利用するようになっている。そのため、保水層(土壌13)の厚みを薄くしても、植生に対して十分な水分を供給し続けることができる。その結果、植生層17や土壌13を備えた状態の植物育成構造体1全体の荷重を低く抑えて軽くすることができるので、荷重制限のある構造物(たとえば屋上)であっても、問題なく緑化することが可能になる。
【0048】
〔緑化システムの構成〕
次に、図6及び図7に基づいて、複数の植物育成構造体1から成る緑化システム2の構成について説明する。
図6(A)は、連結した植物育成構造体1から成る緑化システム2を示す図である(中央の植物育成構造体以外は仮想線で示す)。
図6(B)は、図6(A)に示す植物育成構造体1を連結している連結装置8を詳細に示す拡大図である。
図7は、図6(A)に示す植物育成構造体1を連結している連結装置8を詳細に示す上面図である。なお、図6(B)は、図7のc−c線に沿った断面図である。
【0049】
緑化システム2は、下部基礎3(たとえば屋上,バルコニー等の既設構造物)の上に設置されるようになっており、横方向に隣接させた複数の植物育成構造体1から構成されている。複数の植物育成構造体1は、連結装置8によって、下部基礎3の方向に押圧された状態で連結されている。
【0050】
連結装置8は、主として、円形プレート状の基礎台81と、ボルト83と、ナット(締付部材)85と、連結金具(連結部材)87とから構成されている。
【0051】
円形プレート状の基礎台81は、図6(B)に示すように、植物育成構造体1の底面側と下部基礎3との間に挟んだ状態で設けられる。この状態で、基礎台81に一体的に設けられたボルト83の先端側は、隣接する植物育成構造体1の間から上方に突き出るようになっている。
【0052】
連結金具87は略キャップ形状を有しており、その中央にはボルト83が貫通できる程の孔が形成されている。この連結金具87は、ボルト83の先端側を貫通させた状態で、隣接する4つの植物育成構造体1を連結するようになっている。
【0053】
締付部材を成すナット85には、ボルト83のネジに対応したネジが形成されている。このナット85をボルト83に対して締付けると、当該ナット85と基礎台81との間にある連結金具87を下部基礎3の方向に押圧して移動させる。
【0054】
なお、連結装置の実施形態は上述したものに限定されない。たとえば、下部基礎に直接固定させたボルトを用いて、植物育成構造体を連結するようにしてもよい。
【0055】
〔緑化システムの効果〕
緑化システム2を成す複数の植物育成構造体1は、連結装置8によって、下部基礎3に対して固定された状態で連結されている。そのため、植生及び水を備えた状態の植物育成構造体2を薄くかつ軽量に構成して、薄層緑化に用いても、風によって吹き飛ばされることがないという優れた効果が達成される。
【0056】
また、緑化システム2は複数のユニット(植物育成構造体1)から構成されているので、ユニット毎に交換や修復作業を行うことができる。そのため、緑化システム2の一部において破損が生じたり或いは植生が枯れたりしても、簡単かつ迅速に修復することができる。
【0057】
以上、本発明に係る植物育成構造体及び緑化システムの実施形態について詳細に説明した。なお、本発明の実施形態は上述したものに限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において種々の改変が可能であることに留意されたい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、水栓が設けられていない箇所であっても植生を枯らすことなく良好に生育することができ、従来と比較して単位面積当たりの重量が軽く、しかも、強風が吹き荒れても飛ばされることのない植物育成構造体及び緑化システムを提供するのに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る植物育成構造体を正面方向から見た断面図である。
【図2】図1の植物育成構造体を用いて植生を生育している様子を示す断面図である。
【図3】図3(A)は貯水パレットを示す上面図であり、図3(B)は図3(A)のa−a線に沿った断面図である。
【図4】図2に示す貯水パレットの支柱及びその周囲を示す拡大断面図である。
【図5】図5(A)は複合グリッドを示す上面図であり、図5(B)は図5(A)のb−b線に沿った断面図である。
【図6】図6(A)は連結した植物育成構造体から成る緑化システムを示す図であり、図6(B)は図6(A)に示す植物育成構造体を連結している連結装置を詳細に示す拡大図である。
【図7】図6(A)に示す植物育成構造体を連結している連結装置を詳細に示す上面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 植物育成構造体
2 緑化システム
3 下部基礎
4 貯水パレット(貯水層)
6 複合グリッド(土壌支持層)
8 連結装置
11 水
13 土壌
15 空気層
17 植生層
41 底板
43 側壁
45 隔壁
47 支柱
49 貯水部屋
51 内空部
53 水通り孔
54 スリット
57 不織布(水分伝達媒体)
59 砂(水分伝達媒体)
61 側壁
63 底板
65 仕切り板
67 貫通孔
69 隔壁
71 部屋
73 穴
81 基礎台
83 ボルト
85 ナット(締付部材)
87 連結金具(連結部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層から構成されており、横方向において連結可能なユニットタイプの植物育成構造体であって、
植物の生育に必要な水を貯留可能に構成されたトレー状の貯水層と、
植物の生育に必要な土壌を敷設可能に構成されており、当該土壌を支持する底板に複数の貫通孔が形成された土壌支持層と、
前記貯水層に貯留された水分を、毛細管現象を利用して、前記土壌支持層上の土壌へ自動的に供給するための水分伝達媒体と、を有しており、
前記土壌支持層は、当該土壌支持層の底面側と前記貯水層内の水面との間に空気層が形成されるように、前記貯水層の上側に積層され、
最上部の前記土壌支持層に敷設された土壌の上側に、植生層が形成されるようになっていることを特徴とする植物育成構造体。
【請求項2】
前記貯水層は、前記土壌支持層を支えるための略筒状の支柱を有しており、
前記支柱は、内空部と、当該貯水層に貯留された水を前記内空部に導くための水通り孔と、を有しており、
前記水分伝達媒体は、前記支柱の内空部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の植物育成構造体。
【請求項3】
前記トレー状の貯水層は、隔壁によって複数の貯水部屋に分割されていることを特徴とする請求項1又は2記載の植物育成構造体。
【請求項4】
前記支柱は、前記複数の貯水部屋のそれぞれに立設してあることを特徴とする請求項3記載の植物育成構造体。
【請求項5】
前記複数の貯水部屋の底面には、それぞれ、貯留された水が支柱の方向へ流れるように勾配が付けられていることを特徴とする請求項4記載の植物育成構造体。
【請求項6】
下部基礎上に設置した請求項1乃至5の何れかに記載の植物育成構造体を、複数個横方向に隣接させて成る緑化システムであって、
前記複数の植物育成構造体は、連結装置によって、前記下部基礎に対して固定された状態で連結されていることを特徴とする緑化システム。
【請求項7】
前記連結装置は、
前記植物育成構造体の下面側と前記下部基礎との間に挟んだ状態で設けられた基礎台と、
隣接する植物育成構造体の間から上方に突き出るように前記基礎台上に設けられたボルトと、
前記ボルトのネジに対応したネジが形成された締付部材と、
前記ボルトに対して前記締付部材を締付けることによって前記下部基礎方向に移動するように設けられており、隣接する植物育成構造体を連結するための連結部材と、
を有することを特徴とする請求項6記載の緑化システム。
【請求項8】
前記連結装置は、
隣接する植物育成構造体の間から上方に突き出るように前記下部基礎に固定されたボルトと、
前記ボルトのネジに対応したネジが形成された締付部材と、
前記ボルトに対して前記締付部材を締付けることによって前記下部基礎方向に移動するように設けられており、隣接する植物育成構造体を連結するための連結部材と、
を有することを特徴とする請求項6記載の緑化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−101812(P2006−101812A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295450(P2004−295450)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000134604)株式会社ドコー (9)
【出願人】(500260609)
【Fターム(参考)】