説明

植物育成装置、植物生産システム及び植物生産方法

【課題】 効率的に植物を定植することが可能な植物育成装置、植物生産システム及び植物生産方法を提供する。
【解決手段】 実施形態の植物育成装置は、それぞれの中央に植物を保持する保持部を有する少なくとも2つの平板状の基板と、前記基板間を前記基板の面内に水平な少なくとも一方向に伸縮可能で接続し、前記基板間の間隔を可変できるとともに、当該間隔を保持可能な伸縮部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、植物育成装置、植物生産システム及び植物生産方法。
【背景技術】
【0002】
稲や麦、大豆などの一年生植物の収穫は限られた繁忙期に集中して行い、閑散期には収穫することができないために、年間を通しての収穫量には限度がある。これに対し、雰囲気が調節された施設内で植物を水耕栽培により育成する植物生産システムにより収穫量を増やすことが提案されているが、種子からある程度成育した植物を水耕に移動し、定植する定植段階において、多くの作業を必要とする。
【0003】
特に、植物を水耕に定植する際には、互いの成長を妨げないように隣接する植物同士の間隔を空ける必要があるため、田植え機などの大掛かりな装置を用いずに定植を行おうとする際に多大な労力をかける必要があり、植物の効率的な定植が行えないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−99852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
効率的に植物を定植することが可能な植物育成装置、植物生産システム及び植物生産方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の植物育成装置は、それぞれの中央に植物を保持する保持部を有する少なくとも2つの平板状の基板と、前記基板間を前記基板の面内に水平な少なくとも一方向に伸縮可能で接続し、前記基板間の間隔を可変できるとともに、当該間隔を保持可能な伸縮部材とを備える。
【0007】
上記の植物育成装置を備える植物生産システムにおいて、実施形態の植物育成システムは、筐体と、前記筐体内の雰囲気を検出する検出部と、前記検出部からの信号を基に前記筐体内の雰囲気を調節する雰囲気調節部と、前記筐体内に設置され、植物を水耕栽培するための培養液が貯液されている貯液部と、前記貯液部に養分を供給する供給部とを備える植物育成室を少なくとも2つ備える。また、植物育成室内において、前記植物育成装置は、前記貯液部の前記培養液面上に設置され、少なくとも2つの前記植物育成装置は、それぞれ異なる成育段階の植物を保持する。
【0008】
上記植物育成システムにおいて、実施形態の植物育成方法は、前記植物育成装置の隣接する前記基板同士の間隔を広げ、前記植物育成装置を前記貯液部の前記培養液面上に設置する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一の実施形態に係る植物生産システムの構成図。
【図2】植物育成室を側面から見た図。
【図3】第一の実施形態に係る植物育成装置の構成図。
【図4】貯液部と植物育成装置の関係を示す図。
【図5】伸縮部材の伸縮のメカニズムを説明する図。
【図6】第二の実施形態に係る植物生産システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0011】
(第一の実施形態)
図1は本実施形態に係る植物生産システム10を示す図である。なお、本実施形態においては、植物としては稲を育成する場合を例に説明を行う。
【0012】
図1において、植物生産システム10は、稲の苗を所定の大きさまで育成する苗育成室20と、植物育成室30a、b、c、d、e、f(まとめて植物育成部30)と、稲の収穫を行う収穫室40とから構成されている。
【0013】
苗育成室20は、稲の種子の発芽段階から、発芽した苗が十分生育するまでの所定の期間栽培するために使用される、苗専用の小型の育成室である。この苗育成室20内では、稲の種子は後述の植物育成装置50に保持され育成されている。苗育成室20には、棚の各段にLED照明や蛍光灯など人工照明が備えられている棚状の装置21が設置されている。植物育成装置50は上記の装置21の各段に設置されている。また、苗育成室20内の雰囲気(温度、湿度、培養液、二酸化炭素濃度など)は調節されることで、稲の発芽から生育に必要な条件を満たしている。
【0014】
ここで、所定の期間とは、苗の成育状態を基に都度決定されてもよいし、経験に基づいて予め定められてもよい。苗の成育には通常1ヶ月程度要するところ、本実施形態のように雰囲気の調節された苗育成室20内で育成することで、およそ20日程度で定植段階の稲を得ることができる。
【0015】
そして、上記のように定植段階まで成育した稲は、植物育成装置50に保持されたままの状態で、植物育成室のひとつへ、例えば人力で、もしくは自動搬送機構により移される。
【0016】
植物育成部30は、植物育成装置50に保持された稲を育成するための6つの植物育成室30a〜fを備える。図2は、植物育成室30a〜fを側面から見た状態を示す図である。
【0017】
植物育成室はそれぞれ、光を透過する天井及び壁面を有する筐体38と、筐体38内の温度、湿度、二酸化炭素濃度などの雰囲気を検出する雰囲気センサ37と、雰囲気センサ37からの信号を基に筐体38内の雰囲気を調節する雰囲気調節部31と、稲を水耕栽培するための培養液が貯液されている貯液部32と、前記貯液部32に養分を供給する供給部34と、貯液部32の培養液の液面上に設置され稲を保持した植物育成装置50とを備えている。
【0018】
さらに、植物育成室はそれぞれ、太陽光を培養液面上の植物育成装置50が保持する稲に集光するための鏡などの集光板35と、LED照明や蛍光灯などの人工照明36とを備えている。
【0019】
雰囲気調節部31は、温度や湿度を調節する空気調節機や二酸化炭素濃を調節する二酸化炭素調節機などの電気装置であり、植物育成室内の雰囲気を稲の各成育段階(例えば定植段階(定植から1ヶ月程度)、出穂段階(定植段階後1ヶ月程度)、収穫段階(出穂段階後1ヶ月程度)の3段階)に適する雰囲気に調節する。ここでの雰囲気には温度、湿度、二酸化炭素濃度などが含まれる。
【0020】
具体的には、雰囲気調節部31は、温度、湿度、二酸化炭素濃度などを測定可能な雰囲気センサ37からの測定情報を基に、これらが一定の値あるいは所定の範囲内に収まるように装置を制御する。
【0021】
上記の稲の各成育段階に適する雰囲気としては、予め経験的に得られている温度、湿度、二酸化炭素濃度などの値を用いることができる。
【0022】
なお、成育段階の定義としては、上記のように月単位に限定されるものではなく、定植からの時間経過を基準として定義することができる。
【0023】
温度に関しては、上記のような電気装置ではなく、冷房の際に細霧噴霧装置(図示せず)による水の気化熱を用いることや、暖房の際にヒートポンプ(図示せず)を用いることにより調節することも可能である。
【0024】
貯液部32は、稲を水耕栽培するための培養液を貯液する貯液槽である。ここでは大型の貯液槽1つから構成されることとするが、複数の貯液槽から構成されるものであってもよい。貯液部32に貯液される培養液には、稲の育成に必要な各種養分(硫酸アンモニウム、硝酸石灰、硝酸カリ、硫酸苦土、第一リン酸カリ、ケイ酸ソーダ、その他肥料等)が含まれている。
【0025】
この貯液部32の培養液面上には、稲を保持した植物育成装置50が設置され、水耕栽培により稲が育成されている。
【0026】
供給部34は、貯液部32に貯液される培養液へ必要な養分を逐次あるいは所定の期間毎に供給する。この際、貯液部32に貯液される培養液の成分(pHや各種養分の濃度など)を検出するためのセンサである成分センサ33を、例えば貯液部32の底面に備え、この成分センサ33が検出した培養液の成分を基に、それらが予め経験的に得られている稲の各生育段階に適する条件となるように、必要な養分を供給することも可能である。
【0027】
集光板35は、植物育成室30の内部の例えば壁面に設けられ、この集光版35により反射される太陽光は、植物育成室30内で貯液部32の培養液面上に設置される植物育成装置50が保持する稲に集光される。
【0028】
また、集光板35は、設置面に対して傾斜角度を自在に変化することが可能に取り付けられており、この傾斜角度を変化させることにより、稲に集光される太陽光の光量を制御することができる。
【0029】
本実施形態においては、例えば貯液部32に設けられる光量センサ41の情報を基に、光量が最大になるよう自動あるいは手動で傾斜角度を変化させることが可能である。
【0030】
人工照明36は、植物育成室の天井や壁面、あるいは床面などに設けられる、光量が調整可能なLED照明や蛍光灯などである。日中であっても曇りや雨天時などの悪天候時には、集光板35による十分な太陽光の集光を行うことができない。
【0031】
そこで、その際には人工照明36をONして人工照明36の光量を調整することで、貯液部32で水耕栽培される稲に照射される光量が常時一定となるよう、太陽光による光量の不足分を補うことができる。
【0032】
さらに、人工照明36を用いることで、たとえ夜間であっても、貯液部32の稲に光を照射することが可能となり、稲には昼夜を問わず、常時一定の光量の光を照射することができる。
【0033】
なお、人工照明36に関しては、稲に熱を与えず、なおかつ太陽光を遮らない位置に設けられることが好ましい。
【0034】
収穫室40には、図示しない固定式の収穫機が設置されている。植物育成室の収穫段階の稲は収穫室40に例えば人力で、もしくは自動搬送機構により運び込まれ、上記の収穫機により収穫が行われる。本実施形態のように、収穫機を固定式にすることで、輸送燃料が不要になるため二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0035】
なお、この収穫室40は、本実施形態のように1つでもよいし、植物生産システム10の規模に応じて、複数備えることも可能である。
【0036】
本実施形態の植物生産システム10では、一連の稲の育成に植物育成装置50を用いる。図3は本実施形態に係る植物育成装置50の構成を示す図((A)は収縮時、(B)は伸張時)である。この植物育成装置50は、図4に示すように貯液部32の培養液の液面上に設置することで、稲の水耕栽培を行うことができる。
【0037】
本実施形態において、植物育成装置50は、中央に稲を保持可能な保持部51を有する平板状の基板52と、基板52の側面に配置される伸縮部材53と、伸縮部材53の側面に設置されるフロート部54とを複数備える。
【0038】
隣接する基板52同士は、伸縮部材53を介して、図3中x軸及びy軸方向にそれぞれ間隔可変に接続され、複数の基板52が格子状に一体に連結されている。
【0039】
基板52は、例えば正方形の形状をした平板であり、その中央に保持部51を有している。この保持部51は、基板52を貫通する開口であり、例えばスポンジ等の内部に埋め込まれた稲の種子あるいは苗を保持部51の開口に詰めることで保持することができる。
【0040】
伸縮部材53は、基板52の側面(図3中x軸方向及びy軸方向に垂直な面)にそれぞれ設けられる、円筒形状の筒55と、この筒55の中心軸に位置するピストン56とが組み合わさった伸縮自在なシリンダ状の部材である。
【0041】
この伸縮部材53は、人力によりピストン56を押すことで縮小させることができ、また、人力によりピストン56を引くことで伸張させることができる。
【0042】
なお、以下の説明において、基板52をx軸方向に連結する伸縮部材53を伸縮部材53x、y軸方向に連結する伸縮部材53を伸縮部材53yとする。
【0043】
フロート部54は、植物育成装置50を貯液部32の培養液の液面上に浮遊させるために設けられている。
【0044】
フロート部54は、例えば中空の立方体の形状であり、上記の伸縮部材53の筒55の側面に備えられる。このフロート部54に発生する浮力により、植物育成装置50を貯液部32の培養液の液面上に浮遊させることが可能である。
【0045】
苗育成室20において、稲の種子及び苗を育成する際には、できるだけ密集させることで効率的に育成することが好ましい。そのため、植物育成室50に、稲の種子を保持させ、苗育成室20の装置21に設置する際には、伸縮部材53を例えば人力により縮小させる。
【0046】
この時、図3(A)に示すように、伸縮部材53の筒内55のピストン56が押されることで、伸縮部材53は収縮し、隣接する基板52同士の間隔は狭まる(図3(A)中では、収縮した状態の伸縮部材53a)。
【0047】
また、稲を保持する植物育成装置50を培養液面上に設置(以下、定植)する際には、隣接する稲同士、すなわち稲を保持する基板52同士の間隔を適切に空ける必要があることから、伸縮部材53を例えば人力により伸張させることで定植を行う。
【0048】
この時、図3(B)に示すように、伸縮部材53の筒内55のピストン56が引かれることで、伸縮部材53は伸張し、隣接する基板52同士の間隔は広がる(図3(B)中では、伸張した状態の伸縮部材53b)。
【0049】
本実施形態の植物育成装置50では、複数の基板52がそれぞれ隣接する基板52と伸縮部材53を介して接続され、複数の基板52が一体の構成となっている。したがって、本実施形態においては、植物育成装置50の一端の基板52を一時的に貯液部32の壁面などに固定して、それとは逆端の基板52を一方向に引っ張ることで、その方向に伸張する全ての伸縮部材53のピストン56が引かれ伸張することになる。
【0050】
この際のメカニズムについて図5を参照して説明する。なお、以下の説明では、図5中x軸方向を列、y軸方向を行とする。
【0051】
x軸方向に間隔を広げたい場合には、固定端のA列とは逆端の列(図5中右端のB列)の中心に位置する基板52Oをx軸方向右側に引っ張る。
【0052】
このとき、この基板52Oと同一の行(O行)のx軸方向全ての伸縮部材53xは連動して伸張する。さらに、y軸方向の伸縮部材53yにより、上記のO行の基板53は他の行の基板52と全ての列で連結され一体であるので、結果として、全ての行に関してx軸方向全ての伸縮部材53xが連動して伸張する。これにより、一つの基板52Oをx軸方向に一回引っ張ることで、x軸方向全ての伸縮部材52xを伸張させることが可能である。
【0053】
y方向に間隔を広げたい場合にも上記と同様、固定端のC行とは逆端のD行の中心に位置する基板52O’をy軸方向下側に一回引っ張ることで、y軸方向全ての伸縮部材52yを伸張させることが可能である。
【0054】
伸縮部材53x、53yを縮小させる際にも上記と同様、x軸及びy軸方向に中心の基板52O及び52O’をそれぞれ1回押すだけで、x軸及びy軸方向に基板52間の間隔を狭めることが可能となる。
【0055】
本実施形態においては、伸縮部材53が伸縮した状態において、フロート部54同士が接触してしまわないよう、伸縮部材53yの筒55の側面にフロート部54を設けているが、これに限られるものではない。
【0056】
なお、植物育成装置50の一部あるいは全体が、例えば気泡を含む構造の樹脂から形成されているなど、植物装置50自体で十分な浮力を得ることができる場合には、上記のフロート部54を備えない構成とすることも可能である。
【0057】
また、筒55からピストン56を抜くことで、伸縮部材53を分解し、基板52同士を連結状態から分裂することのできる構成とすることも可能である。
【0058】
上記のような植物育成装置50を用いることで、稲の植物生産システム10内での室間の移動が容易になり、定植の際に稲の間隔調整などを効率的に行うことができるために、稲の定植時の作業効率を向上させることが可能となる。
【0059】
上記のように、植物育成装置50を用いることで、稲の定植時の作業効率を向上させることが可能であるため、多大な労力をかけることなく、短い期間で植物育成室内の貯液部32に稲を定植することができる。
【0060】
そこで、本実施形態の植物生産システム10では、6つの植物育成室内の貯液部32の植物育成装置50では、それぞれ定植時期をずらし、異なる成育段階の稲を水耕栽培することで、1年間での稲の収穫量を増加させる。
【0061】
具体的には、表1に示すように、植物育成室30a、30b、30cではそれぞれ1ヶ月ずらして稲の定植が行われる。植物育成室30aでは1月上旬に稲の定植を行い、以後出穂、収穫を経て、3ヶ月おきに定植を行うことで1年間に4回の収穫を行うことができる。
【0062】
そして、植物育成室30bでは2月上旬に、30cでは3月上旬にそれぞれ1ヶ月ずらして稲の定植を行うことで、毎月いずれかの植物育成室30a、30b、30cにおいては収穫段階の稲が存在することになり、1年間に12回の収穫が可能となる。
【0063】
さらに、植物育成室30d、30e、30fでは、各月の下旬にそれぞれ1ヶ月ずらして稲の定植が行われる。すなわち、上記の植物育成室30a、30b、30cとは半月収穫時期をずらすことで、植物生産システム10全体では、月2回、年24回の収穫が可能となる。
【表1】

【0064】

以下、本実施形態の植物生産システム10における植物育成方法について詳細に説明する。
【0065】
種子の段階の稲は、まず伸縮部材53を縮小させた状態にある植物育成装置50(図3(A))の基板52の保持部51に保持される。そして、雰囲気が調節された苗育成室20において、20日程度生育することで、定植段階の稲を得る。
【0066】
この際、種子あるいは苗の段階の稲はサイズが小さいので、植物育成装置50を縮小させた状態にして密集させることで、この成育段階の稲は苗育成室20において効率的に育成することができる。
【0067】
上記のようにして得られる定植段階の稲は、植物育成装置50に保持されたままの状態で、すでに収穫室40へ稲を輸送し終えた植物育成室へと輸送される。そして、水耕栽培のために植物育成装置50を貯液部32の液面に設置する際に、植物育成装置50の周辺部に位置する基板52をx軸方向及びy軸方向に、例えば人力により引っ張ることで伸縮部材53を伸張させ、植物育成装置50における隣接する基板52同士の間隔を広げる(図3(B))。
【0068】
この状態で、植物育成室内の制御された雰囲気において、稲を定植段階から出穂段階を経て収穫段階になるまで成育する。
【0069】
これにより、間引きを行うことなく、保持部51に保持されている稲同士の間隔を適正に広げることができるために、稲がお互いの生育を妨げることを防ぐことができる。また、植物育成装置50ごと貯液部32の液面に浮遊させることができるので、稲の田植え工程を無くし省力化することができる。
【0070】
上記のように稲が収穫段階まで成育すると、植物育成装置50を貯液部32から引き上げ、植物育成装置50に保持されたままの状態で、人力で、もしくは自動搬送機構により収穫室40へ輸送される。
【0071】
そして、収穫室40へ搬送された稲は、収穫室40に固定されている収穫機により植物育成装置50に保持されたままの状態で刈り取られ収穫される。この際、植物育成装置50は、基板52同士を結合した状態のままであってもよいし、前述のように伸縮部材53の筒と軸とを分解することで、1つ1つの基板52が分裂した状態であってもよい。
【0072】
本実施形態の植物生産システム10では、以上説明した植物生産方法を、表1に示すスケジュールに沿って、それぞれの植物育成室30a〜fで実施する。これにより1つの植物育成室30では、年に4回稲の収穫を行い、6つの植物育成室30a〜fを備える植物生産システム10全体では、年に24回の収穫を行う。
【0073】
これにより、年間での稲の収穫量を増やすことができる。また、収穫段階の稲が年間で分散されることにより閑散期をなくすことができるために、植物生産システム10を効率的に使用することができるのに加え、収穫機を効率的に稼動させることができる。
【0074】
また、植物育成装置50を用いた稲の水耕栽培を行うことで、田植え機などの機械が不要になる。さらに、定植時の作業効率の向上を行うことができるので、稲の生産量を増やすことができ、その結果収穫量を増やすことができる。
【0075】

(第二の実施形態)
第一の実施形態の植物生産システム10では、貯液部32は独立した貯液槽であり、この貯液部32で水耕栽培され収穫段階まで成育した稲は、貯液部32から引き上げた後に人力で、もしくは自動搬送機構により収穫室40へ輸送される構成であった。
【0076】
これに対し、本実施形態の植物生産システム60では、図6に示すように、植物育成室80の貯液部(図示せず)は内部の培養液が流れるプールであり、この貯液部が収穫室90へ繋がっている点が異なる。
【0077】
本実施形態においては、稲は植物育成装置50に保持された状態で、貯液部を流れながら成育する。そして、収穫段階まで成育した稲は、収穫室90において植物育成室80に保持されたままの状態で貯液部から引き上げられ、図示しない収穫機により刈り取られ収穫される。
【0078】
この際、貯液部に設置した植物育成装置50は収穫室90へ流れていくために、貯液部の上流側では、順次新たな植物育成装置50を設置することができる。
【0079】
これにより、植物育成室80a、80b、80c、80d、80e、80fが一度に育成することのできる稲を増やすことが可能となるので、結果として年間での稲の収穫量を増やすことができる。
【0080】
なお、上記第一及び第二の実施形態の植物生産システム10、60では、植物として稲を例に説明を行ったが、一年生植物であり水耕栽培することのできる植物(稲や麦などのイネ科の植物の他にも、例えば大豆などのマメ科の植物など)であれば、植物育成室30、80内の雰囲気や培養液の条件を変化させることで容易に適用することが可能である。
【0081】
また、上記第一及び第二の実施形態においては、稲の成育段階を3段階として、植物生産システム10、60が植物育成室を6つ備えることで、1年回で24回の収穫を可能としたが、稲の成育段階及び植物育成室の数は上記に限定されるものではない。
【0082】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、植物生産システム10、60は、それぞれ異なる成育段階の稲を水耕栽培する複数の植物育成室30、80を備えることで、年間での稲の収穫量を増やすことができる。
【0083】
また、収穫段階の稲が年間で分散されることにより閑散期をなくすことができるため、植物生産システム10や収穫機などの設備を効率的に使用することができる。さらに、植物育成装置50を用いた稲の水耕栽培を行うことで、田植え機などが不要になるのに加え、定植時などの際に、作業効率の向上を行うことができるので、稲の生産量を増やすことができ、その結果収穫量を増やすことができる。
【符号の説明】
【0084】
10、60・・・植物生産システム
20・・・苗育成室
21・・・装置
30、80・・・植物育成室
30a、30b、30c、30d、30e、30f、80a、80b、80c、80d、80e、80f・・・植物育成室
31・・・雰囲気調節部
32・・・貯液部
33・・・成分センサ
34・・・供給部
35・・・集光板
36・・・人工照明
37・・・雰囲気センサ
38・・・筐体
40、90・・・収穫室
41・・・光量センサ
50・・・植物育成装置
51・・・保持部
52・・・基板
53・・・伸縮部材
54・・・フロート部
55・・・筒
56・・・ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの中央に植物を保持する保持部を有する少なくとも2つの平板状の基板と、
前記基板間を前記基板の面内に水平な少なくとも一方向に伸縮可能で接続し、前記基板間の間隔を可変できるとともに、当該間隔を保持可能な伸縮部材と、
を備える植物育成装置。
【請求項2】
前記基板あるいは前記伸縮部材のいずれか一方は、フロート部を備える請求項1記載の植物育成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の植物育成装置を備える植物生産システムにおいて、
筐体と、
前記筐体内の雰囲気を検出する検出部と、
前記検出部からの信号を基に前記筐体内の雰囲気を調節する雰囲気調節部と、
前記筐体内に設置され、植物を水耕栽培するための培養液が貯液されている貯液部と、
前記貯液部に養分を供給する供給部と、
を備える植物育成室を少なくとも2つ備え、
前記植物育成装置は、前記貯液部の前記培養液面上に設置され、少なくとも2つの前記植物育成装置は、それぞれ異なる成育段階の植物を保持する植物生産システム。
【請求項4】
各植物育成室は、
前記筐体内に設置され、前記植物育成装置が保持する前記植物に太陽光を集光する集光板と、
前記筐体内に設けられ、光量を調整可能な人工照明と、
をさらに備える請求項3記載の植物生産システム。
【請求項5】
請求項4記載の植物育成システムにおける植物生産方法であって、
前記集光板により前記植物育成装置が保持する前記植物に太陽光を集光し、前記人工照明の光量を調整することで前記植物に照射される光量を補う植物生産方法。
【請求項6】
請求項3または4記載の植物生産システムにおける植物生産方法、または請求項5記載の植物育成方法であって、
前記植物育成装置の隣接する前記基板同士の間隔を広げ、前記植物育成装置を前記貯液部の前記培養液面上に設置する植物生産方法。
【請求項7】
少なくとも2つの前記植物育成室内で、異なる成育段階の植物を保持する前記植物育成装置をそれぞれ用いることで、1年間で複数回、前記植物を収穫する請求項6記載の植物生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147714(P2012−147714A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8160(P2011−8160)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】