説明

植物育成装置

【課題】 植物の生育速度を速めたいというニーズに応えるため、根とその周辺を暖めることが考えられる、これに対処するために栄養水そのものを暖めて循環させようとすると、栄養水のタンクに雑菌が繁殖し植物に悪影響を及ぼす。
【解決手段】 植物育成装置として内部に熱媒体が流通する空間が区画形成された中空容器により構成し、上面が開口した凹状部とこの凹状部を形成する壁部内に形成された前記空間に外部から前記熱媒体が導入される入口及び他端に連通し前記熱媒体を導出する出口とを備えているようにした。加えて、熱媒体を前記空間に循環供給する熱媒体循環機構を備えているようにした。また、前記凹状部は、内底面が個別の植物育成ポットを収容可能とし、植物育成用の栄養水プールとして構成されるようにした。さらに、前記凹状部は、植物育成用の土壌を収容可能とする空間とに構成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱媒体が身近に存在する状況で、ブロー成形品の中空部に熱媒体を通すことで、植物の生育速度を速めようとする植物育成装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の植物育成装置には、ボイラーから熱媒体配管を通して植物・種苗育成用テーブルを暖めることで植物ポットや種苗バットを暖めるシステム(特許文献1参照)。また、容器内に熱交換機を配し容器内の土壌を冷温水を制御することで土壌環境を制御する装置(特許文献2参照)さらに、ブロー成形の容器内に水を配し、随時適量に水の供給ができる植木鉢(特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−204565号 公報
【特許文献2】特開2002−330641号 公報
【特許文献3】特開2004−8100号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物の生育速度をさらに速めたいというニーズに応えるため、根とその周辺を暖めることが考えられる。これに対処するために栄養水そのものを暖めて循環させようとすると、栄養水のタンクに雑菌が繁殖し植物に悪影響を及ぼす。循環させる栄養水の水質の問題解決に対応できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、(1) 植物育成装置として内部に熱媒体が流通する空間が区画形成された中空容器により構成され、前記中空容器は、上面が開口した凹状部と、この凹状部を形成する壁部内に形成された前記空間と、この空間の一端に連通し外部から前記熱媒体が導入される入口及び他端に連通し前記熱媒体を導出する出口とを備えているようにした。
(2) 加えて、(1)に記載の植物育成装置であって、前記入口に熱媒体を供給する一方、前記空間から前記出口を通して導出した熱媒体を前記入口に供給することで、熱媒体を前記空間に循環供給する熱媒体循環機構を備えているようにした。
(3) (1)又は(2)に記載の植物育成装置であって、前記凹状部は、内底面が個別の植物育成ポットを収容可能とする平底に形成され、かつ、植物育成用の栄養水が貯留される栄養水プールとして構成されているようにした。
(4) さらに、(1)又は(2)に記載の植物育成装置であって、前記凹状部は、植物育成用の土壌を収容可能とする空間とに構成されているようにした。
【発明の効果】
【0006】
植物の成長スピードの向上に根とその周辺を暖めることをブロー成形品の中空部分に熱媒体を循環させることで実現する。また栄養水と温水を完全に分離することで、栄養水タンクに繁殖する雑菌による悪影響を最小限に抑えることができる。同時に、熱媒体回路の熱媒体は管内を詰まらせるような異物や重金属が無ければ水質を問題にしなくても良いため、管理は容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】凹状部と平面底を備えた植物育成装置の斜視図
【図2】中空容器である育苗・育成バットの断面図
【図3】鉢の中の根と土壌を暖める植物育成装置の斜視図
【図4】中空容器である鉢状体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の一実施形態を、図1及び図2に示す。
熱媒体13を熱媒体タンク2に一時保管し、そこからポンプ3で中空容器5である凹状部6に栄養水が循環している育苗・育成バットに、熱媒体を入口9から供給することで植物の根16とその周辺を30℃〜40℃前後に暖める。暖めるには育苗・育成バットの中の湯をほぼ均一にしかも早い速度で循環させるため、吐出量の比較的大きなポンプを設置し、育苗・育成バットの中空の内部に仕切りや突起14を施している。バットの出口10から出てきた熱媒体は戻り配管8を流通し熱媒体タンクに戻る。熱媒体タンクはオーバーフローした媒体をタンク外に逃がす調節配管4を設けてある。
図3及び図4も同様の考えで、熱媒体を熱媒体タンク2に一時保管し、そこからポンプ3で土壌25を入れた中空容器である植木鉢26に供給することで植物の根とその周辺を30℃〜40℃前後に暖める。バットの出口10から出てきた熱媒体は戻り配管8を流通し熱媒体タンクに戻る。熱媒体タンクはオーバーフローした媒体をタンク外に逃がす調節配管4を設けてある。直接植木鉢内の植物の根とその周辺の土壌を暖めるものである。
【0009】
「実施形態の効果」
この装置により、施設園芸や植物工場、あるいは家庭菜園、趣味の室内植物栽培にも寄与する。施設園芸や植物工場では種蒔きから採取までの時間を短縮できるメリットが得られる。家庭菜園では温暖な地域の草花の栽培が可能になる。趣味の室内植物栽培では従前では栽培できなかった熱帯植物も栽培可能になる道が開かれる。
【符号の説明】
【0010】
1 熱媒体注入パイプ
2 熱媒体タンク
3 モーター・ポンプ
4 湯量調節パイプ
5 中空容器(育苗・育成バット:ブロー成形品)
6 凹状部(中空容器内壁)
7 熱媒体送り配管
8 熱媒体戻り配管
9 入口
10 出口
11 熱媒体循環装置
13 熱媒体が流通する空間
14 熱媒体の流れ調整と変形防止の仕切りおよび突起
15 凹部を形成する壁部 (中空容器外壁)
16 バット内に張り出した植物の根
17 栄養水
18 栄養水供給配管
19 植物育成ポット
25 土壌
26 中空容器(植木鉢:ブロー成形品)
28 凹状部(中空容器内壁)
29 凹部を形成する壁部(中空容器外壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体が流通する空間が区画形成された中空容器により構成され、前記中空容器は、上面が開口した凹状部と、この凹状部を形成する壁部内に形成された前記空間と、この空間の一端に連通し外部から前記熱媒体が導入される入口及び他端に連通し前記熱媒体を導出する出口とを備えていることを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の植物育成装置であって、前記入口に熱媒体を供給する一方、前記空間から前記出口を通して導出した熱媒体を前記入口に供給することで、熱媒体を前記空間に循環供給する熱媒体循環機構を備えている植物育成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の植物育成装置であって、前記凹状部は、内底面が個別の植物育成ポットを収容可能とする平底に形成され、かつ、植物育成用の栄養水が貯留される栄養水プールとして構成されている植物育成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の植物育成装置であって、前記凹状部は、植物育成用の土壌を収容可能とする空間とに構成されている植物育成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170345(P2012−170345A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32711(P2011−32711)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(711001826)
【Fターム(参考)】