説明

植生コンクリートブロック

【課題】 河川の堤防などの法面に敷設されるコンクリートブロックの表面に蒔いた種子を発芽・生育させることが出来る植生コンクリートブロックの提供。
【解決手段】 内部に雨水を貯める貯水槽6を有し、正面版1には上記貯水槽6へ連通する取水穴14を貫通して設け、そして正面版1にはコンクリート層10と吸水層11、及び植生基盤層12の3層にて構成し、上記貯水槽6の底にはコンクリート層10を貫通して吸水層11へ達する連通穴13を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の堤防や道路の法面などに設けられる植生コンクリートブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、法面表面側に植物の植生機能を付与したコンクリートブロックが各種提案されている。しかし、コンクリートブロック表面に蒔いた種子を発芽させ、それを生育させることは容易でない。すなわち、雨が降らない時期が続くならば、発芽することが出来ず、仮に発芽しても枯れてしまう。そこで、ブロック内部に貯水槽を設け、該貯水槽に溜まった雨水を表面に滲み出して発芽・生育させるように工夫したブロックが知られている。
【0003】
特開平11−181775号に係る「植生ブロック」は、法面保護ブロックであって、植物の植生機能を備えると共に貯水槽を内蔵し、栽培土に自動給水を行うことが出来るように構成している。すなわち、上面開放の箱状をなし、ブロック内部の下部に貯水槽を備え、中段に仕切板を設けて貯水槽上を覆うと共に仕切板上方を栽培土を充填した植生部とし、仕切板に上下貫通孔を設け、この孔に嵌合し、砂を充填した孔あき管毛細管揚水装置を貯水槽内に垂下し、ブロックの前面側に、溢水、注水、検水を兼ねた斜貫通孔を設けている。
【0004】
従って、仕切板の上部に設けた植生部へは管毛細管揚水装置を介して貯水槽内の水を吸上げて植物を生育させることが出来る。しかし、該植生ブロックはブロック表面に植物を生育させるものではない。
【0005】
特開平10−168911号に係る「植栽ブロック」は、夏期などにおいても、コンクリートブロックの表面に埋設した植生基材に生育した植物へその生育に必要な量の水を供給するものであり、コンクリートから成るブロック本体の表面に、ポーラスコンクリートなどから成る植生基材を設け、ブロック本体の裏側に施工した砕石などからなる通水性埋め込み層中に集水桝を埋設している。この集水桝と植生基材とをブロック本体内に埋設した通水管により連通させる。植栽ブロックの裏側の土壌中の水が集水桝に集まり、通水管を通って植生基材へ給水され、この植生基材に植えられた植物に水が供給される。
【0006】
この植栽ブロックは水を貯める集水桝を別に必要とし、該集水桝からコンクリートブロック本体の植生基材へ水を導く為の通水管を設けなくてはならず、その構造は複雑化すると共に、施工コストは高くなる。又、特開2004−49119号に係る「植生コンクリート基盤」は、コンクリート基体と一体に形成された植栽層を有するもので、植栽層は培土資材とコンクリートの混合固化物で構成している。
【特許文献1】特開平11−181775号に係る「植生ブロック」
【特許文献2】特開平10−168911号に係る「植栽ブロック」
【特許文献3】特開2004−49119号に係る「植生コンクリート基盤」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、コンクリートブロックに植物を生育させるように工夫したものは従来から知られている。本発明は従来のコンクリートブロックに比較して、発芽・生育する機能が優れると共に、施工は従来の一般的なコンクリートブロックと同じように行うことが出来る植生コンクリートブロックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る植生コンクリートブロックは内部に貯水槽を設けている。そしてブロック上部に取水穴(取水溝)を形成し、該取水穴から雨水が上記貯水槽へ流れ込むことが出来る構造と成っている。そして、コンクリートブロックの正面には吸水層を設け、該吸水層の上には植生基盤層を有し、上記貯水槽と吸水層が連通穴を介して連結している。
【0009】
そこで、正面を流れる雨水は上記取水穴から貯水槽へ流れ込むことが出来、雨水は貯水槽に貯められる。貯水槽の雨水は連通穴から吸水層に吸収されると共に毛細管現象にて吸水層全体に浸透し、積層されている植生基盤層を湿らせることが出来る。従って、植生基盤層に蒔かれた種子は適度な湿りで発芽し、そして生育することが可能と成る。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコンクリートブロックは内部に貯水槽を有している為に、表面を流れる雨水は取水穴(取水溝)から該貯水槽に流れ込むことが出来る。従って、貯水槽に貯まった水は連通穴を介して吸水層に触れ、その結果、毛細管現象にて吸水層全体に行き渡ることになる。そして、該吸水層の上に積層されている植生基盤層に水分を供給することが出来、植生基盤層に蒔かれた種子を発芽させ、発芽した芽は生育することが出来る。雨が降る度に貯水槽に雨水が貯まり、晴天時にはこの雨水が植生基盤層の植物を生育する水として使用され、コンクリートブロック面を緑の植物で覆うことが可能と成る。
【実施例】
【0011】
図1は本発明に係る植生コンクリートブロックを表す実施例である。該植生コンクリートブロックは正面版1、背面版2、側面版3,3にて形成され、正面版1は底面4に対して垂直ではなく後方へ傾斜している。ところで、本発明の植生コンクリートブロックは底面版5を有していて、正面版1と背面版2及び両側版3,3にて囲まれた貯水槽6を形成している。この貯水槽6に雨水を貯めて、これを正面版1に設けている植生基盤層に蒔いた種子を発芽させると共に生育させることが出来るように水分を補給することが出来る。
【0012】
該植生コンクリートブロックは河川の堤防などの法面に敷設され、該植生コンクリートブロックに降った雨は植生コンクリートブロックの正面7を流れ落ち、この際に該雨水は上記貯水槽6へ流れ込むことが出来る。そこで、正面版1の上面8には切欠き溝9が形成され、積み上げられた上部のコンクリートブロック底面4との間には取水穴が作られ、この穴から雨水は流れ込む。
【0013】
しかし、取水穴は必ずしも正面版上面に切欠き溝9を形成する場合に限らず、正面版上部に貫通した取水穴を設けることも可能である。そして、取水穴から雨水と共に細かい砂や泥が流れ込まないようにフイルターを備えることも出来る。
【0014】
図2は正面版1の断面を示している。正面版1は同図に示すようにコンクリート層10と吸水層11、及び植生基盤層12の3層で構成され、吸水層11はコンクリート層10の上面に、植生基盤層12は吸水層11の上面に夫々重合して形成されている。そして、貯水槽6の底には連通穴13が設けられていて、該連通穴13は上記吸水層11に面している。すなわち、連通穴13はコンクリート層10を貫通して吸水層11まで延びている。
【0015】
従って、吸水層11では貯水槽6に貯まっている水を吸収すると共に毛細管現象によって上昇し、吸水層全体に浸透することが出来る。その為に、該吸水層11の上面に積層された植生基盤層12へ水分が浸透し、該植生基盤層12を湿らせることが出来、植生基盤層12に蒔かれた種子は発芽することが出来る。さらに、発芽した種子は大きく生育することが出来、植生コンクリートブロックの正面版1は緑色の植物にて覆われる。
【0016】
ところで、上記吸水層11、植生基盤層12を構成する成分は限定しないことにするが、例えば、吸水層11としてポーラスモルタルを用いることが出来、又植生基盤層12としてポーラスコンクリートが使用できる。そして、植生基盤層12に種子を単独で吹付けても付着しない為に、該植生基盤層12の表面に種子層を形成する。例えば、種子と土と接着剤を混合したものであれば、上記植生基盤層12に吹き付けることで付着することが出来る。
【0017】
図3は本発明の植生コンクリートブロックを積み上げた場合の縦断面を表している。植生コンクリートブロック表面7に降った雨水は該表面7を流れ、該植生コンクリートブロック上面8に形成した切欠き溝9の取水穴14から貯水槽6へ流れ込むことが出来る。従って、水は貯水槽6が一杯になるまで貯まることが出来、この貯水槽6の水は底に形成された連通穴13を介して吸水層11に達し、毛細管現象によって該吸水層11を上昇し、吸水層全体に浸透する。
【0018】
そして、吸水層11に上面に積層された植生基盤層12を湿らせ、植生基盤層12に吹付けられた種子に水分が与えられる。その結果、種子は発芽し、生育することになるが、貯水槽6に雨水が存在する限り植生基盤層12が乾燥することはなく、生育した植物が枯れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のコンクリートブロックを表す実施例。
【図2】コンクリートブロックの正面版の断面図。
【図3】コンクリートブロックを積み上げた場合の縦断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 正面版
2 背面版
3 側版
4 底面
5 底面版
6 貯水槽
7 正面
8 上面
9 切欠き溝
10 コンクリート層
11 吸水層
12 植生基盤層
13 連通穴
14 取水穴





















【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の堤防や道路などの法面に敷設されるコンクリートブロックにおいて、内部に雨水を貯める貯水槽を有し、正面版には上記貯水槽へ連通する取水穴を貫通して設け、そして正面版にはコンクリート層と吸水層、及び植生基盤層の3層にて構成し、上記貯水槽の底にはコンクリート層を貫通して吸水層へ達する連通穴を形成したことを特徴とする植生コンクリートブロック。
【請求項2】
上記貯水槽は正面版と背面版、及び両側版、それに底面版にて構成した請求項1記載の植生コンクリートブロック。
【請求項3】
上記吸水層はコンクリート層の上面に積層され、植生基盤層は吸水層の上面に積層された請求項1、又は請求項2記載の植生コンクリートブロック。
【請求項4】
上記取水穴として正面版の上面に切欠き溝として形成した請求項1、請求項2、又は請求項3記載の植生コンクリートブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−83630(P2006−83630A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270655(P2004−270655)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(593158179)株式会社ミルコン (18)
【Fターム(参考)】