説明

椎間プロテーゼ

【課題】人体の骨格中の椎間板の代替物として使用される椎間プロテーゼ、特に、回動並びに横方向及び前後方向の傾動を可能にする椎間プロテーゼを提供する。
【解決手段】椎間プロテーゼは、例えば、球面キャップの形状の第一の結合部材が形成される第一のプロテーゼ板10と、結合状態で球面キャップ51が係合する、例えば、中空球殻54が形成される第二のプロテーゼ板20とからなる。生理学的に好ましい椎間板代替物を実現するために、プロテーゼ板に直交する軸周りに両プロテーゼ板相互の回転動が、例えば3度と著しく制限される。回転動の制限は、結合部材上の機械的制止物の形態の可動制限手段によってなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一のプロテーゼ板と第二のプロテーゼ板を有する、人体の骨格中で椎間板の代替物として使用される椎間プロテーゼであって、第一及び第二のプロテーゼ板いずれにも、互いに組み合わさる表面部材をもつ結合部材が形成されており、これにより、結合部材は、結合した状態で、第一及び第二の板の広がりに対して実質的に直交する軸に対して、回転並びに横方向及び前後方向の傾動を可能にする椎間プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
椎間プロテーゼあるいはまた椎間板プロテーゼは、例えば、特許文献1から知られる。そこに記載された椎間板プロテーゼは、第一のプロテーゼ板と第二のプロテーゼ板、及び第一のプロテーゼ板と第二のプロテーゼ板の間に配置され、これらとは別途に形成されるプロテーゼ・コアからなる。プロテーゼ板の一方は、球殻形の凹部を有し、これにより、プロテーゼ・コアの球面部分がこの凹部内に係合する。第二のプロテーゼ板は実質的に平らな凹部を有し、その中に球面部分とは反対側にある実質的に平面なプロテーゼ・コアの部分が係合し、これにより、プロテーゼ・コアの平面部は第二のプロテーゼ板の凹部内で滑動できる。第一及び第二のプロテーゼ板を椎間域に隣接する脊椎骨表面にそれぞれ位置させた後、プロテーゼ・コアを別途に挿入することができる。プロテーゼ板が相互に傾いているとき、第二のプロテーゼ板の凹部内でプロテーゼ・コアは横方向へ変位可能である。プロテーゼ・コアは球状形成物であるため、第一のプロテーゼ板は第二のプロテーゼ板に対してプロテーゼ板の表面に対して実質的に直交する回転軸周りに無制限に回転動することができる。
【0003】
身体自体の欠陥のある若しくは病原性の要素または器官に取って代わる代替要素としての機能を果たす身体インプラントは、置き換えられる要素または器官の本来備わる特性をできるだけ厳密に生理的に模倣するように意図される。椎間板の代替物として機能するように意図される椎間インプラントの場合には、したがって、身体に本来備わる機能をインプラントによって最適に模倣することができるように、かつ一般に患者の健康にとって有害である非生理的作用が起こらないように、椎間板の機能および構造をできるだけ実物そっくりに模倣することが求められる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1642553号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、したがって、椎間板の生理的機能及び性質にできるだけ近づいた、インプラントによって新たな疾患が誘発されることを避けるために非生理的作用を発生させない椎間プロテーゼを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、人体の骨格中で椎間板の代替物として使用される椎間プロテーゼであって、椎間プロテーゼは、第一のプロテーゼ板と第二のプロテーゼ板を有し、これにより、第一及び第二のプロテーゼ板の各々に、互いに組み合わさる表面部材をもつ結合部材が形成され、これにより、結合部材は、結合した状態で、第一及び第二の板の広がりに対して実質的に直交する軸に対して、回転並びに横方向及び前後方向の傾動を可能にし、これにより、回転動を所定の最大値に制限する可動制限手段があることを特徴とする椎間プロテーゼによる発明にしたがって解決される。
【0006】
回転動を制限する可動制限手段により、人の椎間板に近似する椎間インプラントが作り出される。本発明による椎間プロテーゼでは回転動を制限することによって、従来の椎間板代替物で発生する人の骨格内の脊椎関節にかかる過度の応力が回避される。このようにして、運動分節全体の安定性の点で明らかな改善が達成され、ひいては本発明による椎間インプラントを装着した患者の健康が明らかに改善される。
【0007】
好適な実施形態では、回転動の最大所定値は5度であり、好ましくは3度である。本発明による椎間インプラントによる回転可動制限のこの独特の制限の結果、本発明による椎間インプラントを装着した患者が胴体をねじる動きをする場合に、それに伴い脊柱に生じるねじれは、多数の椎間域に分散され、回転を制限されない一つの椎間域によってだけ主として吸収されることはないので、この椎間域における靱帯、筋肉及び関節複合体に過大な応力がかかることを回避できる。
【0008】
さらに別の好適な実施形態によれば、互いに組み合わされて形成される、結合部材の表面部材は、一方は、第一のプロテーゼ板に設けられる球面であるとともに、第二のプロテーゼ板に配置される、それと合わさる中空球殻面である。好ましくはプロテーゼ板に一体的にそれぞれ形成される結合部材をこのように形成した結果、所望の最大運動範囲にわたって最適な結合が達成され、これは単一の結合部材によって全ての方向で回転動と傾動の両方を最も簡単な手法で実現する。
【0009】
ある好適な実施形態によれば、結合部材をこのように形成した場合、可動制限手段は、球面キャップ上のタブ形オーバーラップとして形成されるとともに、中空球殻面に形成される対応する所定の切欠きとして形成され、この切欠きについて、回転角度の最大値が設定される。二つのプロテーゼ板が相互に回転する動きをするとき、タブ形オーバーラップが、許容された所定の最大回転域の端で、対応する相手側の切欠きに当たることによって、球面キャップ上に形成されたタブ形オーバーラップは、結合状態における二つのプロテーゼ板の可能な回転動を制限する。ただし、切欠きはより大きく形成されることになる。タブ形オーバーラップの幅を適切に選択することによって、または切欠きの幅を適切に選択することによって、球面キャップのサイズに依存して、回転の振れの最大を所定値に制限することができる。タブ形オーバーラップの高さの形成を選択することによって、同時に中空球殻面に形成された切欠きの深さを適切に対応して選択することによって、球面キャップの中心点に対してタブ形オーバーラップが配置されている方向における二つのプロテーゼ板相互の最大傾きを所定値に制限することが、結合状態において、同様にさらに可能である。
【0010】
さらに別の好適な実施形態では、互いに対向した位置にある二つのオーバーラップが設けられ、オーバーラップは、結合状態で、中空球殻面の、互いに対向した位置にある対応する二つの切欠きに係合する。このようにして、動きに対する特に確実な機械的制限が達成され、これはまた、回転動に加えて、脊椎関節の曲げまたは伸ばしの形で二つのプロテーゼ板が相互に傾動する場合にも高い確度で回転動の制限を保証する。このように、生理的な動きのシーケンスとして起こる可能性があり、椎間域によって吸収されなければならない非常に複雑な動きの場合にも、動きを吸収することの確実な制限が保証され、このことにより、非生理的動きのシーケンスが確実に回避される。
【0011】
ある好適な実施形態では、前後方向の傾きの場合に、結合状態での傾動が15度の値に相当する最大値に制限されるように、可動制限手段は形成される。横方向の傾動の制限についての最大値は、好ましくは6度である。
【0012】
人の骨格内に挿入された本発明による単純な構成の椎間プロテーゼによる、体軸に対する横方向と前後方向の両方における動きを可能にするために、中空球殻の縁部が対向するプロテーゼ板に当たる前にプロテーゼ板に形成される球面キャップが対向するプロテーゼ板に形成された中空球殻面に対して所定の傾き角度にわたり傾くことができるように、球面キャップは対応する中空球殻面よりも大きくなるように形成される。中空球殻の前面は、所定の傾斜をもつように形成されるので、中空球殻の前面が当たるときに、対向するプロテーゼ板に対してぴったりと当たること(flat hitting)が起こる。中空球殻の前縁部は、好ましくは、平らな表面となる。この場合の横方向の傾きの制止は中空球殻の前縁部によって決まり、前/後方向の傾きの制止は対応する切欠き内のタブ形オーバーラップの高さによって決まる。これを進展させる中で、横方向と前/後方向の両方において様々な最大傾き角度が結果的に可能となる。
【0013】
好ましくは、第一と第二のプロテーゼ板の間に弾性部材がさらに設けられ、弾性部材は二つのプロテーゼ板相互の動きを緩衝する効果を果たす。同時に、すべての方向における二つのプロテーゼ板相互の傾動を緩衝するように、結合部材を実質的に包み込むように弾性部材を形成することが特に好ましい。
【0014】
この場合、結合部材を包み込む弾性緩衝部材は、二つのプロテーゼ板の傾動の結果としてプロテーゼ板間の距離が縮まる領域で常に押圧力を受ける。弾性部材に押圧応力だけかかり、引張応力はかからないように、弾性部材を一方のプロテーゼ板にだけ取り付けることが可能である。しかし、好ましくは、弾性部材は両方のプロテーゼ板に固定され、その結果、一方では最適な緩衝効果を生むように押圧応力と引張応力が存在し、同時に、回転動の緩衝も結果として得られる。最後に、この実施形態では、結合部材をその周囲から分離するようにシーリングすることも可能である。椎間域の大部分には体物質や体液は存在しないので、生理学的根拠に照らしてこのシーリングはどうしても必要ではないかもしれないとしても、このアプローチは結合システムのより進歩的な改良と信頼性を達成することができよう。
【0015】
さらに別の実施形態では、横方向及び前後方向のどちらにも傾動があるとき、第一のプロテーゼ板の部材またはそこに形成された結合部材が、最大傾き時に、第二のプロテーゼ板またはそこに形成された対応する結合部材の領域に当たる領域の各々は、好ましくは層状弾性材料から製造される制止緩衝手段を備える。このようにして、プロテーゼ板の材料及び結合部材の材料に損傷または割れを引き起こす可能性がある過度の機械的応力がかかるのを避け、患者を不安にさせることもある、部材同士が当たるときに生じる可能性がある何らかの音が排除される。
【0016】
第一及び第二のプロテーゼ板は、有利には、コバルト‐クロム合金、チタンまたは埋め込み用スチールで製造される。骨に面するプロテーゼ板の面をチタン・プラズマ及び/またはヒドロキシアパタイト・コーティングによりコーティングすることにより、プロテーゼ板のオッセオインテグレーション(骨性結合)の向上が確実にされる。結合部材の磨耗を減少させるために、結合部材をセラミックから製造することも可能である。
【0017】
さらに別の好適な実施形態では、結合部材から離れて面している面のそれぞれに凸形状または湾曲が設けられるようにプロテーゼ板は製造される。このようにして、外科的視点から特に容易である手法で椎間インプラントを椎間空間に挿入することができる。通常かなりの長さで突き出ているピンまたはバー(burr)で、最新技術による椎間インプラントに使用され、隣接する椎骨体部に深く係合するものと比較して、凸形状または湾曲としてのみ形成されている、椎骨体部に対するプロテーゼ板の定着部は、やはり、骨格へのプロテーゼ板の固定の十分な確実性をもたらす一方、やはり、椎間インプラントを取り外し、代替品と取り替えることができる、ずっと容易で、また整形手術を可能にする配置を可能にする。特に好適な実施形態では、各プロテーゼ板の凸形表面は、椎間域における椎骨体部の内側の形状に適合される。外科的視点から、本発明による椎間インプラントは、外科手術の過程で患者の脊柱を対応領域中で強く曲げることにより、結果的に非常に容易に挿入可能である。このように曲げる結果、該当の椎間域中に外側へ向いて開く空隙ができることによって、各プロテーゼ板の凸形外側面を有する本発明による椎間インプラントは外科医によって容易に空隙へ挿入することができる。一方、最新技術によるプロテーゼ板は個々に挿入しなければならず、その後に結合部材を脊柱にすでに固定された二つのプロテーゼ板の間の所定の位置に別途取り付けなければならない。この実施形態における本発明によるプロテーゼ板の進展は、したがって、各プロテーゼ板に結合部材を一塊で成形できるようにする。このようにすれば、椎間インプラントの単純化が可能になり、それはインプラントの信頼性の向上とインプラントの製造コストの削減につながる。
【0018】
さらに別の好適な実施形態によれば、互いに組み合わさる、結合部材の表面部材は、第一及び第二のプロテーゼ板が相互に傾いている場合、同時にこれと対応する並進運動がなされるように適切に形成される。具体的には、結合部材の組み合わさる表面部材のこのような形成は、対応する中空球殻面内に部分的に保持される球面キャップの使用を含む。二つのプロテーゼ板が相互に傾いている場合、中空球殻面は球面キャップの表面に沿い、球面キャップ上を自由に動くことによって、このとき、対向するプロテーゼ板に対して中空球殻面上に形成されたプロテーゼ板のある種の並進運動が傾きながら起こる。
【0019】
並進運動は、球面キャップの半径の選択によって生理的に適当な範囲に調整され得る。球面キャップの半径は、好ましくは、第一のプロテーゼ板の前/後方向の広さの0.5〜0.8倍である。
【0020】
最後に、さらに別の有利である実施形態では、球面キャップと中空球殻面の座面との間にライニングが施され、このライニングは薄い層状弾性材料からなることができる。
【0021】
好適なものとして説明した前述の特徴の各々は、本発明による椎間インプラント個別に設けることもでき、あるいは特許請求項1に記載されるように、これらの特徴をいかようにも組み合わせることができる。
【0022】
本発明はさらに詳細に説明され、実施形態を用いて以下に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明をさらに詳しく説明し、図を用いて以下に説明する。導入として、先ず椎間インプラントの生理学的な背景を説明する。
【0024】
本発明による椎間インプラントは、椎間板の代替物として機能する。身体自体の椎間板は、二つの端板の間にコロイド状のコアと繊維リングを有する構造物である。椎間板は二つの椎骨体の間にあり、したがって、脊柱の運動及び安定システムの基本要素として生理的に役割を果たす運動分節の一部である。傷ついていなければ、椎間板は、脊柱を安定に保つ機能と、繊維リングの特殊な構造によりもたらされる、運動分節の可動性を制御する機能と、椎骨体間の距離を維持することによって、やはり可動性の制御をもたらす機能と、脊柱の軸方向の応力がかかる場合に緩衝する機能とを有する。自然のままの椎間板は、したがって、傾きだけでなく軸回転に関して、制限され緩衝される二つの椎骨体の間の相対的な動きを与える。けれども、運動システムの可動性は人生の過程において変化する。曲げ、伸び及び横の動きは椎間板の変性につれて制限されてくるが、回転動は椎間板の変性過程において増加する。
【0025】
本発明の開発中に、とりわけ回転動は運動システムの解剖学的に及び生理学的に正しい可動性にとって特殊な重要性をもつことが認識された。したがって、椎間板、脊椎関節及び靱帯の複合体並びに筋肉組織の連携における運動分節の運動可能性の生理学的な制御が、椎間プロテーゼという人工的なインプラントを考慮する場合にも必要である。
【0026】
最新技術から知られた椎間プロテーゼは、脊柱の運動分節に対する十分な制御を実現してはいない。一つの問題は、とりわけ、椎間インプラントが過度な可動性を許し、その結果、手術によって数がすでに減少した可能性があり、磨耗によってすでに変化をきたした可能性もある靱帯に過度の応力がかかることである。
【0027】
本発明によるアプローチは、人体の骨格中の椎間板の代替物としての椎間プロテーゼを提供することからなり、前記プロテーゼは、患部である椎間域と、生理的動きのシーケンスに関与する靱帯系、骨格系及び筋肉系との両方の靱帯系を保護するために制御された可動性をもたらす。したがって、可動性の制御は、特に椎間プロテーゼが退行性変化をきたした場合の椎間板代替物として使用されることから、椎間板代替物の設計において極めて重要である。よって、本発明による椎間インプラントを備えた運動分節では大幅に制限された回転可動性が実現されるので、著しく改良されたインプラントが本発明による椎間プロテーゼによって創出される。これは、関連する靱帯への負担を低減することにつながり、かつ最新技術から既知であり、最大限の回転可動性を有するモデルの場合には明らかに過大な負荷がかかっていた脊椎関節をサポートすることにつながる。椎間板代替物としての本発明による椎間プロテーゼは、調和した動きのシーケンスを確実にするために、脊椎関節との相互作用に加わる能力をもつ。本発明による椎間プロテーゼは、生理的動きのシーケンスを創造するだけでなく、緩衝インレーが結合システムにさらに使用される場合に脊柱での軸方向の動きの緩衝機能も創造する。結合部材は、球面キャップを完全に包み込みはしない中空球殻面にはまる球面キャップとして形成されるので、傾き/傾動に伴う並進運動も実現される。
【0028】
図1には、組み立てた状態の本発明による椎間プロテーゼが示される。椎間プロテーゼ1は、第一のプロテーゼ板10と第二のプロテーゼ板20を具備する。第一及び第二のプロテーゼ板の間には弾性緩衝部材30が設けられる。傾きのない状態で、第一のプロテーゼ殻10、第二のプロテーゼ殻20及び弾性緩衝部材30は、全く透き間のない結合した状態で嵌合される。弾性緩衝部材30は、第一及び第二のプロテーゼ板10と20の側面とともに、いずれも継ぎ目が実質的に平坦である端縁を形成する。
【0029】
図2の分解図は、プロテーゼ板10に形成された結合部材の第一の部分を示す。結合部材のこの部分は、その側部に二つのタブ状オーバーラップ52と53が形成された球面キャップ51を具備する。結合部材の別の部分は、第二のプロテーゼ板20に形成され、前記部分はタブ形オーバーラップ52と53を保持するための切欠き55と56が内側に形成されている中空球殻54を有する。切欠き55、56の寸法は、結合状態でタブ形オーバーラップ52と53が、一つのタブ状オーバーラップの側面が対応する切欠きの内側面に当たるまで、一方のプロテーゼ板の他方に対する所定の角度付近での回転ねじりを可能にする遊びをもつように、タブ形オーバーラップ52と53に適合される。タブ状オーバーラップの寸法に照らして、結合状態で第一及び第二のプロテーゼ板がプロテーゼ板10または20の表面に直交する軸周りに最大3度の回転動が可能であるように切欠きは形成される。球面キャップ51の外自由表面は、中空球殻54によってできる対応する空洞よりも大きくなるような寸法にされる。
【0030】
弾性緩衝部材30は、その長さにわたり実質的に同じ厚さをもち、第一及び第二のプロテーゼ板に形成された結合要素を保持可能な開口31を中央領域に有する。弾性緩衝部材30の厚さは、第一及び第二のプロテーゼ板が互いに平行であるとき、第一及び第二の基板10と20の内側表面11と21に緩衝部材がその間に透き間なしに置かれるように選択される。
【0031】
弾性緩衝部材は、第一の及び/または第二のプロテーゼ板に、例えば、取り付け可能なナブ(nub)などの特殊な成形物を用いて取り付けることができる。弾性緩衝部材の第一の及び/または第二のプロテーゼ板への取り付けはまた、第一及び第二のプロテーゼ板の内側表面11と21上の適当な突起物、例えば、対応するように適する弾性部材の切欠き(図示しない)に適切に固定可能である鳩尾状形成物、きのこ形形成物等を用いてなすことができる。
【0032】
図3の描画には、可動制限手段の制止当接面付近の別の緩衝部材が示される。平坦な弾性緩衝オーバーレイ71と72及び73と74が、タブ形オーバーラップ52と53のそれぞれの側面上において第一のプロテーゼ板10に設けられ、これらのオーバーレイは回転動を制限するための回転制止物としての役目を果たす。同様に、平坦な弾性緩衝コーティング75、76、77、78を第二のプロテーゼ板20に形成された中空球殻54の切欠き55と56の内側側面のそれぞれに設けることができる。平坦な弾性緩衝オーバーレイ79がさらに、中空球殻54の前縁部57に設けられる。さらに続いて、平坦な弾性緩衝オーバーレイ80を第一のプロテーゼ板10の球面キャップ51の辺縁に施すことができる。弾性緩衝オーバーレイ79と80は、傾動を制止する場合に制止当接面を弾性的に衝撃から保護する。
【0033】
図4の断面図は、中空球殻の前縁面57と第一のプロテーゼ板の内側表面11の間に間隙が残るように、中空球殻54が球面キャップ51を部分的に保持することを図示する。この間隙があるため、第一のプロテーゼ板10の第二のプロテーゼ板20に対する傾きが所定の値まで可能であり、好適な実施形態では横方向で最大値10度に制限される。
【0034】
図5は、本発明による椎間プロテーゼを断面で示し、これは前/後方屈曲の場合の第一及び第二のプロテーゼ板相互の並進変位及び傾きを図示する。図2ですでに見られたように、弾性緩衝部材30の開口31によって形成される壁が、図5の断面図の横方向の壁の厚さと比較して、前後位置において極めて薄く引き伸ばされることが見てとれる。さらに、前方屈曲の場合に第一及び第二のプロテーゼ板10と20が相互に最大に傾いた状態で動きが制止されていることが見られる。中空球殻は球面キャップ上を前方(図では右)へ滑動するため、第一のプロテーゼ板に対して第二のプロテーゼ板は、全体的に前方向に平行移動する。中空球殻54側の切欠き55と56の内側表面は、タブ形オーバーラップ52と53の上頂面の上にぴったり配置されるよう傾斜が付けられる。前への屈曲及び後ろへの伸びを意味する、前後方向の第一及び第二のプロテーゼ板相互の最大傾きは、タブ形オーバーラップ52と53の上頂面上での切欠き55と56の内側表面の支持により決まる。図示した例では、最大屈曲は10度である。脊柱のどの椎間域に椎間プロテーゼを挿入すべきかに応じて、最大屈曲は10度と15度の間である。中空球殻の縁部57と第一のプロテーゼ板の内側表面の支持によって決まる横方向の最大屈曲は、同じく脊柱の挿入位置に依存して、好ましくは、5度と6度の間である。
【0035】
図4に見てとれるように、第一及び第二のプロテーゼ板10と20の外側表面12と22は凸面形状に形成され、前記外側表面12と22は結合部材と反対側にある。この凸面により、椎間プロテーゼを椎間板代替物として骨格に挿入する場合に、第一及び第二のプロテーゼ板10と20の体積の一部が隣接する脊椎骨の骨縁部の内側にある。このようにして、本発明による椎間プロテーゼの自己ロッキング効果が実現される。第一及び第二のプロテーゼ板の外側表面12と22の凸面形状または湾曲は、相補的な内側表面トポロジー(図示せず)によって、内側脊椎骨表面の身体構造上の形状に有利に適合される。このようにして、椎間域へのプロテーゼ板のさらに良好な嵌合が保証される。
【0036】
図6には、中空球殻の縁部57と第一のプロテーゼ板の内側表面11の間の間隙が示される部分X(図4に示す)の拡大図が示される。最大屈曲時に前縁面57が第一のプロテーゼ板10の内側表面上の緩衝部材80に当接して制止される際に、弾性緩衝部材30の横方向変位とともにその全面にわたるサポートがなされるように、中空球殻54の前縁部57は、第二のプロテーゼ板の内側表面に向かう方向に傾斜が付けられている。
【0037】
図7は、前方から見た椎間プロテーゼの側面図を示す。この描画では、別の平坦な制止緩衝物84がタブ形オーバーラップ52の上側制止当接面上に形成される。図示した実施形態では、二つのプロテーゼ板相互による前方向への最大傾き時、タブ形オーバーラップ52の上側制止面84とタブ形オーバーラップの横に隣接するプロテーゼ板10の内側表面の両方に当接して制止が起こる。プロテーゼ板10の内側表面には緩衝部材80が同様に存在する。しかし、この制止は、緩衝部材84が設けられたタブの上面に当接制止する制限によってのみ達成されてもよい。この場合、様々な方向で調整可能である最大停止角度を制限していないので、前後の角度と横左右の角度のそれぞれに対して異なる最大傾き角度を調整可能である。タブ形オーバーラップの上面が前後方向の最大傾き角度の終端制限のための唯一の制止面として使用される場合において、さらに、横方向の傾きも同時に発生するとき制止当接域においてより広いサポート面を得るために、タブ形オーバーラップの上面及び対応する切欠きの内側面を適宜に湾曲させて形成することが有利である。
【0038】
図8は、後方から見た本発明による椎間プロテーゼの側面図を示す。図示した実施形態では、さらに、第一のプロテーゼ板10は、プロテーゼ板に直交する軸60を周りに最大回転角度まで、第二のプロテーゼ板20に対して回転される。同時に、中空球殻54の前縁部57がタブ形オーバーラップ53の両側の平坦な制止緩衝物80上に位置するように、第二のプロテーゼ板20は第一のプロテーゼ板10に対して後方向へ傾く。タブ形オーバーラップ53の側面の平坦な制止緩衝物74は、中空球殻54側の切欠き56の内側面上に位置する。この構成では、緩衝部材30は結合部材の両側で圧力を受ける。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態を述べてきたが、本発明は図示した可動制限のための機械的解決策または二つのプロテーゼ板の結合に基本的に限定されないことは当業者には明らかである。例えば、中空球殻側にタブを配置することができ、対応する切欠きは球面キャップに設けられる。結合部材にそれぞれ設けた、縁部にある一対の切欠きとタブ形オーバーラップの代わりに、この目的のために球面キャップと中空球殻面において中心に配置された独立した複数の切欠きとタブ形突起を有することも可能である。実質的に矩形ブロック形状として示したタブ及び切欠きの形状は本発明にとって重要なことではなく、二つのプロテーゼ板相互の回転動を制限するために非対称性がありさえすれば、これに代えて、他の型のタブ及び切欠きの形状も考えられることは当業者には明らかである。
【0040】
可動制限部材は、第一及び第二のプロテーゼ板上の結合要素から切り離すようにして形成または作成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による椎間インプラントの三次元の全体図
【図2】図1に示した椎間インプラントの分解図
【図3】開いた状態の本発明による椎間インプラント
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図
【図5】前傾時の図1のV−V線に沿った断面図
【図6】図4の部分領域Xの拡大図
【図7】本発明による椎間インプラントの前方向から見た側面図
【図8】椎間インプラントの傾き及び回転時の後方向から見た側面図
【符号の説明】
【0042】
1 椎間プロテーゼ
10 第一のプロテーゼ板
11 第一のプロテーゼ板の内側表面
12、22 第一のプロテーゼ板の外側表面
20 第二のプロテーゼ板
21 第二のプロテーゼ板の内側表面
22 第二のプロテーゼ板の外側表面
30 緩衝部材
51 球面キャップ
52、53 タブ状オーバーラップ
54 中空球殻
55、56 中空球殻側の切欠き
57 前縁部
60 軸
71、72、73、74 タブ状オーバーラップ上の緩衝オーバーレイ
75、76、77、78 切欠き側面上の緩衝オーバーレイ
79 前縁部上の弾性緩衝オーバーレイ
80 球面キャップ辺縁の弾性緩衝オーバーレイ
82 間隙部
84 タブ状オーバーラップ上の制止緩衝物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のプロテーゼ板(10)と第二のプロテーゼ板(20)を有する、人体の骨格中で椎間板の代替物として使用される椎間プロテーゼ(1)であって、第一及び第二のプロテーゼ板いずれにも、互いに組み合わさる表面部材をもつ結合部材(51、54)が形成されており、結合部材は、結合した状態で、第一及び第二の板の広がりに対して実質的に直交する軸(60)に対して、回転並びに横方向及び前後方向の傾動を可能にする椎間プロテーゼ(1)において、回転動を所定の最大値に制限する可動制限手段(52、53、55、56)があることを特徴とする椎間プロテーゼ(1)。
【請求項2】
前記所定の最大値は、5度の好ましくは3度の回転角度である、請求項1に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項3】
互いに組み合わされて形成されている、前記結合部材の表面部材は、一方で、第一のプロテーゼ板(10)上に設けられている球面キャップ(51)を具備するとともに、第二のプロテーゼ板(20)に付けられている、それと合わさる中空球殻面(54)を具備している、請求項1または2に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項4】
少なくとも一つのタブ形オーバーラップ(52、53)が球面キャップの裾部に形成されており、このオーバーラップは、結合状態で、回転角度の対応する所定の最大値を制限し、中空球殻面に形成されている切欠き(55、56)に係合する、請求項3に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項5】
互いに対向した位置にある二つのオーバーラップ(52,53)が球面キャップに設けられており、このオーバーラップは、結合状態で、中空球殻面の、互いに対向した位置にある、対応する二つの切欠きに係合する、請求項4に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項6】
前記可動制限手段は、前後方向の傾動が15度の所定値に制限されるように形成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項7】
前記結合部材は、結合状態で横方向の傾動を所定の最大値に制限するように適切に形成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項8】
横方向の傾動の制限の最大値は6度である、請求項7に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項9】
互いに組み合わされて形成されている、前記結合部材の前記表面部材は、第一のプロテーゼ板(10)に設けられている球面キャップ(51)と、第二のプロテーゼ板(20)に付けられる、それと合わさる中空球殻面(54)とを具備しており、球面キャップは中空球殻面に部分的に保持される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項10】
前記中空球殻(54)の前面(57)が、各々がプロテーゼ板に向く方向に傾斜を付けられるように形成されている、請求項9に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項11】
好ましくは実質的に結合部材を包み込む弾性部材(30)が、第一及び第二のプロテーゼ板の間に設けられている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項12】
前記弾性部材(30)は、第一及び第二のプロテーゼ板の少なくとも一方に取り付けられている、請求項11に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項13】
制止緩衝手段(71−78)が、回転動及び/または傾動を制止する領域に設けられている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項14】
前記制止緩衝手段は、層状弾性材料から製造される、請求項13に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項15】
前記第一及び第二のプロテーゼ板は、コバルト‐クロム合金から製造される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項16】
前記第一及び第二のプロテーゼ板は、チタンから製造される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項17】
前記第一及び第二のプロテーゼ板は、セラミックから製造される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項18】
互いに組み合わさる前記表面部材は、チタン・プラズマ及び/またはヒドロキシアパタイトによって少なくとも部分的にコーティングされている、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項19】
前記第一及び第二のプロテーゼ板の少なくとも一方は、結合部材から離れて面している面(12、22)に凸面形状を有するように形成されている、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項20】
前記第一及び第二のプロテーゼ板は、結合部材から離れて面している面(12、22)において、脊椎骨の椎間表面に対応して設計され、当該表面と相補的である表面トポロジーを有している、請求項19に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項21】
互いに組み合わさる、前記結合部材の前記表面部材は、結合状態で前後方向の第一及び第二のプロテーゼ板の並進運動を可能にするように形成されている、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。
【請求項22】
前記結合部材の二つの部分の各々は、第一及び第二のプロテーゼ板とそれぞれ一体に形成されている、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の椎間プロテーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−246199(P2008−246199A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−55323(P2008−55323)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(500366439)
【Fターム(参考)】